特許第6963683号(P6963683)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中晶環境科技股▲ふん▼有限公司の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963683
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】セメント材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 9/04 20060101AFI20211028BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20211028BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20211028BHJP
   C04B 18/16 20060101ALI20211028BHJP
   C04B 22/16 20060101ALI20211028BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20211028BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20211028BHJP
   B01D 53/60 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   C04B9/04
   C04B18/08 Z
   C04B18/14 A
   C04B18/16
   C04B22/16 A
   C04B24/06 A
   C04B24/12 A
   B01D53/60
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-517909(P2020-517909)
(86)(22)【出願日】2018年8月29日
(65)【公表番号】特表2020-536032(P2020-536032A)
(43)【公表日】2020年12月10日
(86)【国際出願番号】CN2018103036
(87)【国際公開番号】WO2019062454
(87)【国際公開日】20190404
【審査請求日】2020年5月23日
(31)【優先権主張番号】201710918987.9
(32)【優先日】2017年9月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520101753
【氏名又は名称】中晶環境科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】童裳慧
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−520749(JP,A)
【文献】 特表2004−522688(JP,A)
【文献】 特開平10−057756(JP,A)
【文献】 特開2008−030017(JP,A)
【文献】 特表2006−501060(JP,A)
【文献】 特開昭52−081090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 9/04
C04B 18/08
C04B 18/14
C04B 18/16
C04B 22/16
C04B 24/06
C04B 24/12
B01D 53/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排煙吸収剤を用いて排煙を乾式脱硫脱硝して副生成物を生成する工程であって、前記排煙吸収剤は、ナノ金属酸化物10〜23重量部、ミクロン金属酸化物10〜23重量部および酸化マグネシウム40〜60重量部を含み、前記ナノ金属酸化物がFe、VおよびMnOを含み、前記ミクロン金属酸化物がFe、V及びMnOを含む工程(1)、および、
副生成物を、酸化マグネシウム、産業固形廃棄物及び添加剤と均一に混合してセメント材を得る工程であって、前記産業固形廃棄物が石炭フライアッシュ、スラグ粉、建築廃棄物粉末から選ばれた1種または複数種であり、前記添加剤がリン酸二水素塩、リン酸一水素塩、酒石酸、酒石酸塩又はアミノトリメチレンホスホン酸から選ばれた1種または複数種である工程(2)、
を含むことを特徴とする前記セメント材の製造方法。
【請求項2】
工程(1)において、前記排煙吸収剤が乾燥粉末状であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(1)の乾式脱硫脱硝において、前記排煙における二酸化硫黄の含有量が300〜40,000mg/Nmであり、窒素酸化物の含有量が50〜600mg/Nmであり、酸素含有量が10〜18vol%であり、流速が2〜5m/sであり、かつ、温度が110〜200℃であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(1)において、前記排煙吸収剤は、ナノ金属酸化物12〜20重量部、ミクロン金属酸化物12〜20重量部および酸化マグネシウム42〜60重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ナノ金属酸化物におけるFe、V、MnOの重量比率が3〜5:3〜8:5〜10であり、前記ミクロン金属酸化物におけるFe、V、MnOの重量比率が3〜5:3〜8:5〜10であることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記ナノ金属酸化物におけるFe、V、MnOの重量比率が4〜5:5〜6:6〜7であり、前記ミクロン金属酸化物におけるFe、V5、MnOの重量比率が4〜5:5〜6:6〜7であることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
工程(2)において、副生成物、酸化マグネシウム、産業固形廃棄物、添加剤の重量比率は、100:50〜200:50〜150:3〜15であることを特徴とする請求項1〜のいずれ1項に記載の方法。
【請求項8】
工程(2)において、前記産業固形廃棄物は、重量比率が30〜80:30〜100であるスラグ粉、石炭フライアッシュからなる組成物から選ばれたものであることを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント材およびその製造方法に関し、特に乾式排煙脱硫脱硝法により製造されたセメント材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント材料は、インフラ建設において極めて重要であり、中国での現代化の発展に重要な基礎的な材料である。セメント産業のエネルギー消費は巨大なものであり、同時に、粉塵、CO2、SO2、NOX、廃水等の環境を汚染する多くの副生物も発生する。これらの汚染物質は、スモッグ、光化学ミスト、酸性雨等と密接に関係している。例えば、原料、燃料、セメント製品の貯蔵/搬送等の工程、また、材料の破砕、乾燥、粉砕、仮焼等の工程では、多量のダストを生成する。また、セメントの仮焼において、二硫化炭素や二酸化炭素を多量に生成し、環境汚染を著しく招く。
【0003】
また、中国のマグネシウム法による脱硫脱硝除塵後に得られた副生成物の利用率は、依然として非常に低く、副生成物の再利用は環境保全産業で検討されている課題となっている。この課題を解決することは環境保全事業に大きく貢献する。副生成物の再利用は排煙脱硫脱硝のコストを相殺できる。出願番号201510485072.4である中国特許出願には、石炭燃焼ボイラーの排煙はSNCR脱硝システムによって初期脱硝された後、煙道に入る。その後、除塵システムによって煙道ガス中の粉塵を除去し、さらに、煙道内に乾燥粉吸収剤を噴射することにより煙道ガスの二次浄化を行い、浄化された煙道ガスを濾過システムによって濾過した後、煙突から排出する乾式排煙脱硫脱硝除塵を総合的に浄化プロセスが開示されている。この浄化プロセスは全乾式脱硫、脱硝及び除塵の総合浄化プロセスであり、脱硫率は95%に達しているが、脱硝効率は75%程度しかなく、副生成物を十分に利用していない。また、出願番号201510304904.8の中国特許出願には、湿式吸収脱硫設備を利用するオゾンと過酸化水素の組み合わせによる酸化相乗作用により、排煙の同時に脱硫、脱硝、水銀除去、除塵、ミス除去の包括的な処理を同時に実現する排煙の総合処理方法が開示されている。この方法は、大量のプロセス水を消費し、かつ大量の廃水を生成する必要がある。水不足地域では、上記の方法の適用が制限される。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、産業排水の過剰発生を防止し、排煙脱硫、脱硝、固形廃棄物の総合処理を可能とし、かつ、良好なセメント材を得ることができるセメント材の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、さらに性能要件を満足し、かつ産業固形廃棄物を有効に利用できるセメント材を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、排煙吸収剤を用いて排煙を乾式脱硫脱硝して副生成物を生成する工程であって、前記排煙吸収剤は、ナノ金属酸化物10〜23重量部、ミクロン金属酸化物10〜23重量部、および酸化マグネシウム40〜60重量部を含み、前記ナノ金属酸化物がSiO2、CaO、Fe2O3、Al2O3、CuO、V2O5およびMnO2から選ばれた1種または複数種であり、前記ミクロン金属酸化物がSiO2、CaO、Fe2O3、Al2O3、CuO、V2O5およびMnO2から選ばれた1種または複数種である工程(1)、および、
副生成物を、酸化マグネシウム、産業固形廃棄物及び添加剤と均一に混合してセメント材を得る工程であって、前記産業固形廃棄物が石炭フライアッシュ、スラグ粉末、建築廃棄物粉末から選ばれた1種または複数種であり、前記添加剤がリン酸二水素塩、リン酸一水素塩、酒石酸、酒石酸塩又はアミノトリメチレンホスホン酸から選ばれた1種または複数種である工程(2)、
を含む前記セメント材の製造方法を提供する。
【0007】
本発明における方法によれば、好ましくは、工程(1)において、前記排煙吸収剤が乾燥粉末状である。
【0008】
本発明における方法によれば、好ましくは、工程(1)における乾式脱硫脱硝において、前記排煙は、二酸化硫黄の含有量が300〜40,000mg/Nm3であり、窒素酸化物の含有量が50〜600mg/Nm3であり、酸素含有量が10〜18vol%であり、流速が2〜5m/sであり、かつ、温度が110〜200℃である。
【0009】
本発明における方法によれば、好ましくは、工程(1)において、前記排煙吸収剤は、ナノ金属酸化物12〜22重量部、ミクロン金属酸化物12〜20重量部、および酸化マグネシウム42〜60重量部を含む。
【0010】
本発明における方法によれば、好ましくは、工程(1)において、前記ナノ金属酸化物は、Fe2O3、V2O5およびMnO2を含み、前記ミクロン金属酸化物はFe2O3、V2O5及びMnO2を含む。
【0011】
本発明における方法によれば、好ましくは、前記ナノ金属酸化物におけるFe2O3、V2O5、MnO2の重量比率が3〜5:3〜8:5〜10であり、前記ミクロン金属酸化物におけるFe2O3、V2O5、MnO2の重量比率が3〜5:3〜8:5〜10である。
【0012】
本発明における方法によれば、好ましくは、前記ナノ金属酸化物におけるFe2O3、V2O5、MnO2の重量比率が4〜5:5〜6:6〜7であり、前記ミクロン金属酸化物におけるFe2O3、V2O5、MnO2の重量比率が4〜5:5〜6:6〜7である。
【0013】
本発明における方法によれば、好ましくは、工程(2)において、副生成物、酸化マグネシウム、産業固形廃棄物及び添加剤の重量比率は、100:50〜200:50〜150:3〜15である。
【0014】
本発明における方法によれば、好ましくは、工程(2)において、前記産業固形廃棄物は、重量比率が30〜80:30〜100であるスラグ粉、石炭フライアッシュからなる組成物から選ばれたものである。
【0015】
本発明は、さらに前記のいずれか1項の記載の方法で製造されたセメント材を提供する。
【0016】
本発明における方法は、企業の排煙の通常の脱硫脱硝を確実に解決した上、企業内で生成する産業固形廃棄物を有効に活用し、物質移動及び輸送のコストを節約し、かつ、廃棄物を有効に利用して宝物に交換することができる。乾式排煙脱硫脱硝は、産業廃液の大量生成を回避することができ、また、得られた副生成物は硫酸塩と硝酸塩を主成分とし、これらを有効に利用することにより、セメント材のコストを大幅に低減することができる。得られたセメント材は、低コストであり、従来の325#、425#、525#セメントを直接に替えることが可能である。本発明の好ましい態様によれば、従来の脱硫及び脱硝技術の効率が低く、副生成物のリサイクル価値が低く、更には高価な処理を要するという鉄鋼冶金企業、石炭燃焼発電企業が長期間悩んでいる課題を解決することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0018】
本発明のセメント材の製造方法は、脱硫脱硝工程(1)、混合工程(2)を含む。以下、詳しく説明する。
【0019】
<脱硫脱硝工程>
排煙吸収剤を用いて排煙を乾式脱硫脱硝して副生成物を形成する。排煙の脱硫脱硝は、当業界の汎用な設備で行ってもよく、ここでは省略する。本発明における前記排煙吸収剤は、ナノ金属酸化物10〜23重量部、ミクロン金属酸化物10〜23重量部および酸化マグネシウム40〜60重量部を含む。ナノ金属酸化物は、SiO2、CaO、Fe2O3、Al2O3、CuO、V2O5およびMnO2から選ばれた1種または複数種であってもよい。ミクロン金属酸化物はSiO2、CaO、Fe2O3、Al2O3、CuO、V2O5およびMnO2から選ばれた1種または複数種であってもよい。好ましくは、排煙吸収剤がナノ金属酸化物12〜22重量部、ミクロン金属酸化物12〜20重量部および酸化マグネシウム42〜60重量部を含んでもよい。より好ましくは排煙吸収剤がナノ金属酸化物15〜22重量部、ミクロン金属酸化物15〜20重量部および酸化マグネシウム45〜60重量部を含んでもよい。排煙吸収剤の各成分を前記範囲に制御することにより、その脱硝効果が効果的に改善できるため、副生成物の安定性およびセメント材の安定性を確保できる。
【0020】
本発明における排煙吸収剤において、ナノ金属酸化物の粒子径は、10〜100nmであってもよく、より好ましくは20〜90nmである。ミクロン金属酸化物の粒子径は1〜500μmであってもよく、好ましくは10〜100μmである。前記の粒子径の異なる金属酸化物と酸化マグネシウムとの組合せにより、排煙から二酸化硫黄と窒素酸化物を効果的に除去でき、さらに副生成物を安定的に形成できるため、セメント材の製造安定性に有利である。
【0021】
本発明における排煙吸収剤において、前記ナノ金属酸化物はCaO、Fe2O3、CuO、V2O5およびMnO2から選ばれた1種または複数種であってもよく、前記ミクロン金属酸化物はCaO、Fe2O3、CuO、V2O5およびMnO2から選ばれた1種または複数種であってもよい。例えば、ナノ金属酸化物は、好ましくはFe2O3、V2O5およびMnO2を含み、ミクロン金属酸化物は、好ましくはFe2O3、V2O5およびMnO2を含む。本発明の1つの実施形態によれば、前記ナノ金属酸化物におけるFe2O3、V2O5およびMnO2の重量比は3〜5:3〜8:5〜10であり、前記ミクロン金属酸化物におけるFe2O3、V2O5およびMnO2の重量比は3〜5:3〜8:5〜10である。
【0022】
排煙におけるSO2およびNOは排煙と共に排煙吸収剤の表面へ到達し、その表面に吸着させ、ナノスケールおよびミクロンスケールのV2O5は、排煙中のSO2とO2を結合してSO3に転化することを触媒し、ナノスケールおよびミクロンスケールのFe2O3およびMnO2は、排煙中のNOとO2を結合してNO2に転化することを触媒し、接触酸化後のSO3およびNO2は酸化マグネシウムなどの吸着材と作用して硫酸塩及び硝酸塩を生成し、酸化されていない少量のSO2、NOガスは、酸化マグネシウムなどの吸着剤と作用して、亜硫酸塩および亜硝酸塩を生成する。
【0023】
本発明の1つの実施形態によれば、前記ナノ金属酸化物において、Fe2O3、V2O5、MnO2の重量比は4〜5:5〜6:6〜7であり、前記ミクロン金属酸化物において、Fe2O3、V2O5、MnO2の重量比は4〜5:5〜6:6〜7である。
【0024】
本発明の1つの具体的な実施形態によれば、排煙吸収剤は酸化マグネシウム60重量部、ナノ金属酸化物20.5重量部およびミクロン金属酸化物18.5重量部を含み、前記ナノ金属酸化物におけるFe2O3、V2O5、MnO2、CaOの重量比は4:5:6:190であり、前記ミクロン金属酸化物におけるFe2O3、V2O5、MnO2、CaOの重量比は4:5:6:170である。
【0025】
本発明において、前記排煙吸収剤は乾燥粉末状であってもよい。これにより、排煙吸収剤と排煙とを直接に混合し、さらに排煙からSO2やNOXを除去することができるため、大量のプロセス水を必要とせずに排煙の脱硫脱硝を行うことができ、しかも大量の産業廃液を生成することがない。例えば、排煙吸収剤の乾燥粉と予めに脱塵した後、排煙を煙道で十分に混合した後、アブソーバーに供給して脱硫脱硝処理を行って、脱硫脱硝後の排煙を煙突から排出する。
【0026】
前記排煙吸収剤を用いて乾式排煙脱硫脱硝を行う。乾式脱硫及び脱硝において、前記排煙における二酸化硫黄含有量は300〜40,000mg/Nm3であり、好ましくは500〜30,000mg/Nm3であり、より好ましくは600〜5,000mg/Nm3である。窒素酸化物の含有量は50〜600mg/Nm3であってもよく、好ましくは100〜500mg/Nm3であり、より好ましくは450〜500mg/Nm3である。酸素ガスの含有量は10〜18vol%であってもよく、好ましくは15〜18vol%である。流速は2〜5m/sであってもよく、温度は110〜200℃である。好ましくは、前記排煙の流速は2.5〜3.5m/sであり、かつ温度は135〜140℃である。前記排煙のパラメータはいずれも排煙入口のパラメータであり、排煙出口のパラメータは、実際の脱硫脱硝状況に応じて設定する。上記のプロセスパラメータを採用することにより、品質の安定した副生成物を得ることに有利であるため、セメント材の安定生産に寄与する。
【0027】
<混合工程>
副生成物、酸化マグネシウム、産業固形廃棄物および添加剤を均一になるように混合して前記セメント材を得る。本発明において、副生成物、酸化マグネシウム、産業固形廃棄物および添加剤を、それぞれ200メッシュ以上、好ましくは250メッシュ以上に予め研磨した後混合し、あるいは、副生成物、酸化マグネシウム、産業固形廃棄物および添加剤を均一になるように混合して混合物を得、そして得られた混合物を200メッシュ以上、好ましくは250メッシュ以上に研磨し、あるいは、研磨された副生成物、酸化マグネシウム、産業固形廃棄物および添加剤を混合し、さらに研磨してセメント材を得る。
【0028】
本発明において、副生成物、酸化マグネシウム、産業固形廃棄物、添加剤の重量比は、100:50〜200:50〜150:3〜15である。好ましくは、これらの重量が100:100〜150:100〜130:5〜8である。これにより、セメント材の総合的な性能を十分に確保することができる。
【0029】
本発明において、前記産業固形廃棄物は、石炭フライアッシュ、スラグ粉または建築廃棄物粉末から選ばれた1種または複数種であり、好ましくは石炭フライアッシュおよび/またはスラグ粉である。本発明におけるスラグ粉の実例として、ボールミル粉砕した後の炉スラグ、鉱石スラグ、鉄鋼スラグまたは鉄スラグを含むがこれらに限定されない。石炭フライアッシュは石炭燃焼に排煙から集められた微細な灰であり、石炭フライアッシュは石炭燃焼発電所から排出される主な固形廃棄物である。鉱石スラグは、製鉄、製鋼プロセスから排出される鉱石スラグである。建築廃棄物粉末は、建築破棄物を原料として粉砕して得られた産業固形廃棄物である。前記産業固形廃棄物を採用することにより、品質の安定したセメント材を得ることに有利である。産業固形廃棄物の粒子度は、好ましくは200メッシュ以上であり、より好ましくは250メッシュ以上である。本発明の1つの実施形態によれば、前記産業固形廃棄物は粒子度200メッシュ以上のスラグ粉および石炭フライアッシュから選ばれたものである。
【0030】
本発明において、前記添加剤はリン酸二水素塩、リン酸一水素塩、酒石酸、酒石酸塩又はアミノトリメチレンホスホン酸から選ばれた1種または複数種であり、好ましくはリン酸二水素塩またはリン酸一水素塩である。具体的な実例として、リン酸二水素ナトリウムまたはリン酸一水素ナトリウムを含むがこれらに限定されない。前記添加剤を用いることにより、セメント材の総合的な性能を十分に確保することができる。
【0031】
本発明の1つの実施形態によれば、前記産業固形廃棄物は重量比30〜80:30〜100のスラグ粉と石炭フライアッシュからなる組成物であり、好ましくは重量比40〜70:40〜90のスラグ粉と石炭フライアッシュからなる組成物である。
【0032】
<セメント材>
前述した方法により、セメント材を安定して製造することができる。セメント材は、「接着剤」とも呼ばれ、物理的、化学的作用により、スラリーから強固な石様体に変化する材料をいう。セメント材は、ある機械的強度を有する一体材料となるように、他の粒子状または塊状の材料を結合させることができる。各原料およびその配合割合は、前述の通りであるため、ここではその説明を省略する。これらの原料において、副生成物は、排煙吸収剤を用いて排煙を乾式脱硫脱硝することにより得られるものである。排煙吸収剤及び乾式脱硫脱硝方法は、前述の通りである。
【0033】
本発明における製品は、製品の総合的な性能を改善するために、好ましくは下記の配合の原料、すなわち、重量比100:50〜200:50〜150:3〜15、好ましくは100:100〜150:100〜130:5〜8の副生成物、酸化マグネシウム、産業固形廃棄物および添加剤からなるものである。産業固形廃棄物は重量比30〜80:30〜100のスラグ粉と石炭フライアッシュからなる組成物から選ばれたものであり、好ましくは重量比40〜70:40〜90のスラグ粉と石炭フライアッシュからなる組成物である。
【0034】
本発明におけるセメント材は、28日間熟成した後の圧縮強さが60〜100MPa、曲げ強度が10〜20MPa、吸水率が3〜10%であってもよく、好ましくは圧縮強度が66〜80MPa、曲げ強度が15〜18MPa、吸水率が5〜8%である。
【0035】
以下の製造例および実施例において、特に明記しない限り、「部」は重量部を示した。
【0036】
以下の実施例において、セメント材の性能はGB/T50448-2008に従って測定し、水とセメント材との比率0.35でサンプルを製造した。そのうち、密度および吸水率はいずれも28日間熟成した後の測定結果であった。
【0037】
製造例1
下記の表に記載の原料を均一になるように混合し、排煙吸収剤を得た。ナノスケールの粒子径は20nmであり、ミクロンスケールの粒子径は10μmであった。
【0038】
【0039】
実施例1〜3
(1)製造例1の排煙吸収剤を用いて排煙の乾式脱硫脱硝を行った。流速は2.5m/sであり、酸素含有量は15vol%であり、排煙入口の他のパラメータ、排煙出口のパラメータは、表2および表3に示した。
【0040】
(2)200メッシュ以上の副生成物、酸化マグネシウム、200メッシュ以上の産業固形廃棄物(石炭フライアッシュ、スラグ粉)および添加剤(リン酸二水素ナトリウム)を均一になるように混合して前記セメント材を得た。
【0041】
【0042】
【0043】
セメント材の物料配合比率および性能測定結果は、表4および表5に示した。
【0044】
【0045】
【0046】
実施例4〜6
(1)製造例1の排煙吸収剤を用いて排煙乾式脱硫脱硝を行った。流速は2.5m/s、酸素含有量は15vol%であり、排煙入口の他のパラメータ、排煙出口のパラメータは表6及び表7に示した。
【0047】
(2)200メッシュ以上の副生成物と酸化マグネシウム、200メッシュ以上の産業固形廃棄物(石炭フライアッシュ、スラグ粉)および添加剤(リン酸二水素ナトリウム)を均一になるように混合して前記セメント材を得た。
【0048】
【0049】
【0050】
セメント材物料配合比率および性能測定結果は、表8及び表9に示した。
【0051】
【0052】
【0053】
実施例1〜6は、同じ種類の脱硫脱硝剤を用い、作業状態が異なるが、脱硫率がいずれも99%以上であり、脱硝率が90%以上、除塵率が99%以上、得られた副生成物の組成成分がほぼ一致し、セメント材性質が安定していた。酸化マグネシウムの使用量を減少すると、力学的性能は低下した。
【0054】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者が思いつく任意の変形、改良、置換等を本発明の範囲に含まれるものとする。