【実施例1】
【0012】
先ず、
図1から
図7を用いて、本発明の駐車管理システムの実施例1を説明する。
【0013】
図1は、本実施例の駐車管理システムの機能ブロック図である。ここに示すように、本実施例の駐車管理システムは、管制センタ1と車両制御装置2から構成されており、管制センタ1から車両制御装置2に、駐車場内の地図情報と駐車車両情報を送り、車両制御装置2では、それらの情報を基に目標駐車位置を決定するとともに、目標駐車位置または駐車場出口までの誘導経路を生成し、その誘導経路に従った自動運転を実現するものである。ここで、管制センタ1は、駐車場の近傍に設置しても良いし、遠隔地に設置しても良い。また、車両制御装置2は、車両に搭載されたものである。なお、管制センタ1と車両制御装置2の各々は、具体的には、CPU等の演算装置、半導体メモリ等の主記憶装置、ハードディスク等の補助記憶装置、および、通信装置などのハードウェアにより構成される計算機である。そして、補助記憶装置に記録されたデータベースを参照しながら、主記憶装置にロードされたプログラムを演算装置が実行することで、後述する各機能を実現するものであるが、以下では、このような周知技術を適宜省略しながら説明する。
【0014】
管制センタ1は、車両制御装置2に駐車場内での自動運転を実行させるために必要なデータを提供するものであり、
図1に示すように、駐車車両データベース11と、駐車場地図データベース12と、送受信部13と、から構成される。
【0015】
駐車車両データベース11は、駐車場内に駐車された各車両の大きさや駐車位置等を記録したものである。また、駐車場地図データベース12は、駐車場内の各駐車ブロックの位置と大きさと、空車スペースの位置と、各通路の位置と道幅、駐車場の入口と出口の位置等の情報を含む地図情報を記録したものである。送受信部13は、無線ネットワークを介して、車両制御装置2との間でデータを送受信するものであり、車両制御装置2に、駐車車両データベース11の情報や、駐車場地図データベース12の情報を送信し、また、車両制御装置2から、車両諸元情報(車両の大きさ、最小回転半径等の情報)や、当該車両の目標駐車位置や、駐車及び退場完了の通知等を受信するものである。
【0016】
一方、車両制御装置2は、それを搭載した車両に駐車場内での自動運転を実行させるためのものであり、駐車場入口から目標駐車位置までの誘導経路、あるいは、駐車位置から駐車場出口までの誘導経路を算出するとともに、図示しない操舵装置、駆動装置、制動装置等を制御することで、誘導経路に従った自動運転を実現する装置である。この車両制御装置2は、
図1に示すように、送受信部21、車両位置把握部22等を備えており、以下では、各々の詳細を順次説明する。
送受信部21は、管制センタ1から、駐車車両データベース11の情報や、駐車場地図データベース12の情報等を受信し、管制センタ1に、車両諸元情報や、目標駐車位置や、駐車及び退場完了の通知等を送信するものである。
【0017】
車両位置把握部22は、管制センタ1から受信した駐車場内の他車両位置を記録するものであり、地図情報所持部23は、管制センタ1から受信した駐車場内の地図情報を記録するものである。また、車両諸元データベース25は、自車両の大きさや、最小回転半径などの車両諸元情報を記録したものである。
【0018】
目標駐車位置決定部24は、車両位置把握部22と地図情報所持部23の情報から他車両が現在駐車していない空車スペースを探索し、探索した複数の空車スペースの中から、車両諸元データベース25から得た自車両の大きさ等に基づいて、自車両が駐車可能な大きさの空車スペースを抽出し、抽出した空車スペースの何れか(例えば、最も現在位置に近い空車スペース、最も建物の入口に近い空車スペース)を目標駐車位置に決定する。
【0019】
経路生成部26は、車両諸元データベース25から得た自車両の大きさ、最小回転半径等に基づいて、自車両の現在位置から目標駐車位置までの最適な誘導経路を生成する。車両制御部27は決定された誘導経路に従い、自車両の操舵装置、駆動装置などを制御し、オートバレーパーキングを行う。
【0020】
ここで、本実施例の経路生成部26は、
図1に示すように、経路候補生成部26aと、切り返しポイント生成部26bと、から構成されている。以下、各々の詳細を説明する。
【0021】
先ず、経路候補生成部26aでは、自車両の現在位置から目標駐車位置までの誘導経路の候補を生成し、自車両がその誘導経路候補を通行可能か、車両諸元データベース25の情報と地図情報を基に判断する。この判断は、車両諸元データベース25から得た、自車両の全幅、全長、最小回転半径などの車両諸元情報と、車両位置把握部22から得た、他車両の駐車位置、大きさ等の情報と、地図情報所持部23から得た、駐車場内の道幅、壁、白線等の情報に基づいて、自車両が他車両、壁、白線に接触せずに、その誘導経路候補を通行できるかを確認することで行う。そして、その誘導経路候補が通行可能と判断できた場合には、その候補を誘導経路として車両制御部27に出力する。この場合、切り返しポイント生成部26bは利用されない。
【0022】
一方、生成された誘導経路候補が通行不可能と判断された場合には、切り返しポイント生成部26bは、誘導経路候補上に切り返しポイントを生成し、切り返しポイントで車両の進行方向を変更した場合に、誘導経路候補が通行可能か、車両諸元データベース25の情報を基に判断する。切り返しを行うことで通行可能と判断した場合には、切り返しポイントを含む誘導経路候補を誘導経路として車両制御部27に出力する。
【0023】
入退場判断部28は、自車両が駐車場に入庫する場合、自車両が目標駐車位置に到着したときに、車両制御部27による自動運転が終了したと判断し、送受信部21を介して管制センタ1に、駐車完了の通知を送る。なお、自車両が駐車場から出庫する場合においても、自車両が駐車場出口に到着したときに、車両制御部27による自動運転が終了したと判断し、送受信部21を介して管制センタ1に、出庫完了の通知を送る。
【0024】
<自動運転による入庫動作>
次に、
図2のフローチャートを用いて、車両制御装置2が、自車両を駐車場内の目標駐車位置に自動誘導するオートバレーパーキングの手順を説明する。
車両制御装置2によるオートバレーパーキングは、ドライバが携帯端末や車載ナビゲーション等を用いて管制センタ1に駐車場の利用を通知することで開始される。自車両が予定した駐車場入口に到着すると、車両制御装置2は、管制センタ1から駐車車両データベース11と駐車場地図データベース12の情報を受信する。そして、駐車車両データベース11からの情報は車両位置把握部22に記憶され、駐車場地図データベース12からの情報は地図情報所持部23に記憶される(ステップS1)。
【0025】
次に、目標駐車位置決定部24は、車両位置把握部22に記憶された情報から空車スペースを探索し(ステップS2)、探索した空車スペースが、車両諸元データベース25から把握した自車両の大きさで駐車可能なスペースであるかを判断する(ステップS3)。
そして、探索した空車スペースが自車両の大きさより狭く駐車不可能と判断した場合は、他の空車スペースを探索する。一方、探索した空車スペースが自車両の大きさより広く駐車可能と判断した場合は、当該空車スペースを目標駐車位置に決定する(ステップS4)。
【0026】
目標駐車位置が決定されると、経路生成部26の経路候補生成部26aは、駐車場入口から目標駐車位置までの誘導経路候補を一つ生成する(ステップS5)。なお、ここで生成される誘導経路候補は、例えば、最短距離の経路や、交通量の少ない経路であるが、他の基準により誘導経路候補を生成しても良い。そして、自車両の諸元情報や地図情報を参照しながら、自車両が目標駐車位置まで、壁、白線、他車両に接触せずに当該の誘導経路候補を通行可能か判断する(ステップS6)。通行可能な誘導経路と判断できた場合は、当該の誘導経路候補を誘導経路として決定する(ステップS9)。
【0027】
一方、当該の誘導経路候補が通行不可能と判断した場合、経路生成部26の切り返しポイント生成部26bは、経路候補上の交差点となる箇所に切り返しポイントを生成し、切り返しポイントにて車両の向きを前進から後退に変更した誘導経路候補を再生成する(ステップS7)。そして、切り返しポイントを含む経路候補であれば通行可能か判断し(ステップS8)、通行可能と判断できた場合は、切り返しポイントを含む当該経路候補を誘導経路に決定する(ステップS9)。なお、ステップS8で通行不可能と判断された場合は、ステップS2に戻り、他の空車スペースを探索する。
【0028】
経路生成部26が目標駐車位置までの誘導経路を決定すると、車両制御部27は、決定された誘導経路に従い、自車両の速度や操舵角などを制御しオートバレーパーキングを行う(ステップS10)。そして、目標駐車位置への駐車が完了すると(ステップS11)、入退場判断部28は、管制センタ1が保持する駐車車両データベース11と駐車場地図データベース12のデータを更新するため、送受信部21を介して、駐車完了通知、自車両の駐車位置、自車両の大きさ等を送信する。
【0029】
次に、
図3から
図6を用いて、上述した、本実施例のオートバレーパーキング実行時の自車両の挙動を具体的に説明する。
【0030】
図3は、自車両3が自動運転により駐車場4の目標駐車位置5に駐車するオートバレーパーキングの一例を示す図であり、通路幅に対し、自車両3が小さい、或いは、最小回転半径が小さい等の理由により、目標駐車位置5の近傍までの前進走行に障害がない状況を示している。このような誘導経路が採用されるのは、
図2のステップS6で、経路候補生成部26aが生成した誘導経路候補を通行可能と判断し、切り返しポイント生成部26bが切り返しポイントを生成しなかった場合である。この場合、ステップS9では、経路候補生成部26aが生成した誘導経路候補をそのまま誘導経路6に採用する。この結果、駐車場入口から目標駐車位置5の近傍までは破線で示す前進誘導経路6a上を走行し、そこから目標駐車位置5へは一点鎖線で示す後進誘導経路6b上を走行する経路で、オートバレーパーキングが実行される。
【0031】
一方、
図4も
図3と同様に、自車両3が自動運転により駐車場4の目標駐車位置5に駐車する一例を示す図であるが、この例では、通路幅に対し、自車両3が大きい、或いは、最小回転半径が大きい等の理由により、目標駐車位置5の近傍までの前進走行、または、目標駐車位置5の近傍での進行方向転換に障害がある状況を示している。このような誘導経路が採用されるのは、
図2のステップS6で、経路候補生成部26aが生成した誘導経路候補を通行不可能と判断し、ステップS7で、切り返しポイント生成部26bが交差点上に切り返しポイント7を生成し、さらに、ステップS8で、切り返しポイント7の利用により誘導経路候補の通行が可能と判断された場合である。この場合、ステップS9では、経路候補生成部26aが生成した誘導経路候補に、切り返しポイント生成部26bが生成した切り返しポイント7を付加した経路を、誘導経路6として採用する。この結果、駐車場入口から切り返しポイント7までは破線で示す前進誘導経路6a上を走行し、切り返しポイント7で自車両の進行方向を前進から後進に変更する切り返し誘導経路6c上を走行し、そこから目標駐車位置5へは一点鎖線で示す後進誘導経路6b上を走行する経路で、オートバレーパーキングが実行される。
【0032】
図5は、自車両3が自動運転により駐車場4の目標駐車位置5に駐車する他の例を示す図である。この例では、目標駐車位置5への移動時に右折するが、車両の最小回転半径より小さい箇所を曲がるため、切り返しが必要となる状況を示している。この例における切り返しポイント7は、
図4と同等の手順により生成されるものであるが、その目的が相違する。すなわち、
図4の切り返しポイント7は自車両3の進行方向を変更するためのものであったが、
図5の切り返しポイント7は狭い通路での右左折を実現するためのものである。例えば、駐車場入口から切り返しポイント7までは前進誘導経路6a
1上を前進し、切り返しポイント7では切り返し誘導経路6cのように切り返すことで車両進行方向を変えずに右折し、切り返しポイント7から目標駐車位置5の近傍までは誘導経路6a
2上を前進する経路でオートバレーパーキングが実行される。
【0033】
さらに、
図6は、自車両3が自動運転により駐車場4の目標駐車位置5に駐車する他の例を示す図である。この例では、駐車車両8が大きくはみ出して駐車しているため、目標駐車位置5の近傍で方向転換する通常の誘導経路では、自車両3の前方右側と駐車車両8の前方右側に接触する可能性がある状況である。このような場合であっても、管制センタ1から駐車車両8の駐車位置の異常が予め通知されていれば、駐車場入口のゲート9の通過直後の位置に切り返しポイント7を生成し、切り返しポイント7で自車両3の進行方向を前進から後進に変更しておくことで、駐車車両8に接触しない誘導経路で目標駐車位置5までのオートバレーパーキングを実現することができる。
【0034】
<自動運転による出庫動作>
次に、
図7のフローチャートを用いて、駐車ブロック内に駐車していた自車両3が、車両制御装置2によって駐車場出口まで自動運転される場合の手順を説明する。
図7に示す出庫動作も、
図2のオートバレーパーキングと同様に、ドライバが携帯端末等で管制センタ1に出庫通知を行うことで開始される。オートバレーパーキングと出庫動作の大きな違いは、自車両3の目的地が、空車スペースではなく、駐車場出口である点にある。このため、
図7では、
図2のステップS2〜S5、S11に代え、後述する、ステップS2a、S4a、S5a、S11aを実行する。
【0035】
すなわち、ステップS2aでは、経路生成部26は、地図情報保持部23から駐車場出口の位置情報を取得する。ここで、駐車場出口が複数存在する場合は、各々の位置情報を取得しておく。そして、ステップS4aでは、自車両3の現在の駐車位置に最も近い駐車場出口、または、次の目的地に向かうのに最も適した駐車場出口を選択し、ステップS5aで、現在の駐車位置から選択した駐車場出口までの誘導経路候補を生成する。上述したステップS6からステップS10の処理を経て、自車両3が駐車場出口に到達すると、ステップS11aでは、入退場判断部28は、管制センタ1が保持する駐車車両データベース11と駐車場地図データベース12のデータを更新するため、送受信部21を介して、出庫完了通知、自車両3が出庫した駐車ブロック位置を送信する。
【0036】
以上で説明した本実施例の駐車管理システムによれば、車両諸元に基づいて目標駐車位置を決定するとともに、車両諸元に基づいて目標駐車位置または駐車場出口までの誘導経路上に切り返しポイントを設定し、その誘導経路に従って車両を自動運転させることができる。これにより、自動運転による入庫時または出庫時の自車両停止による渋滞の発生を抑制できるとともに、駐車場の利用効率を向上させることもできる。
【実施例2】
【0037】
次に、
図8を用いて、本発明の実施例2の駐車管理システムを説明する。なお、実施例1との共通点は重複説明を省略する。
【0038】
図8は、本実施例の駐車管理システムにおける、管制センタ1aと、車両制御装置2aの機能ブロック図である。実施例1の
図1との比較から明らかなように、本実施例では、管制センタ1aに目標駐車位置決定部24と経路生成部26を設けたことに伴い、車両制御装置2aでは、車両位置把握部22、地図情報所持部23、目標駐車位置決定部24、経路生成部26を省略している。このような構成とした結果、
図2または
図7のステップS9における誘導経路決定処理は、車両制御装置2aの車両諸元データベース25からのデータを受信した管制センタ1aで実行され、車両制御装置2aの車両制御部27は管制センタ1aから受信した誘導経路に従って自車両3を制御する。
【0039】
本実施例の構成とした場合、自動運転による入出庫時の自車両3の挙動は、実施例1で説明したものと基本的には同等であるため、同様の効果が得られるが、以下に挙げる利点もある。
【0040】
すなわち、実施例1では、各々の車両の車両制御装置2が独自に目標駐車位置や誘導経路等を決定するため、各車両が同じ目標駐車位置を決定したり、特定の通路に各車両の駐車経路が集中したりする場合もあるが、本実施例では、管制センタ1aが各車両の目標駐車位置や誘導経路等を集中して管制するため、各車両の目標駐車位置を分散させたり、通行する通路を分散させたりすることで、駐車場内の渋滞の発生をより効果的に抑制することができる。
【0041】
また、実施例1では、各車両に搭載可能な比較的安価で低速の演算装置により目標駐車位置決定部24と経路生成部26を実現する必要があるが、本実施例では、管制センタ1aに設置される比較的効果で高速の演算装置により目標駐車位置決定部24と経路生成部26を実現している。この結果、目標駐車位置や誘導経路の決定を、より素早く、より的確に実行できる。
【0042】
さらに、管制センタ1aが各駐車ブロックの空き状況を逐次把握できる場合は、誘導経路上を自動運転中の車両に対し、新たに発生した空車スペースを目標駐車位置とした新たな誘導経路を提供し、これによりオートバレーパーキングに要する時間を短縮することもできる。