特許第6963698号(P6963698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6963698-蓄電システム及び管理方法 図000002
  • 特許6963698-蓄電システム及び管理方法 図000003
  • 特許6963698-蓄電システム及び管理方法 図000004
  • 特許6963698-蓄電システム及び管理方法 図000005
  • 特許6963698-蓄電システム及び管理方法 図000006
  • 特許6963698-蓄電システム及び管理方法 図000007
  • 特許6963698-蓄電システム及び管理方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963698
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】蓄電システム及び管理方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20211028BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20211028BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   H02J7/00 Q
   H01M10/44 P
   H01M10/48 P
   H01M10/48 301
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-570989(P2020-570989)
(86)(22)【出願日】2020年9月3日
(86)【国際出願番号】JP2020033388
(87)【国際公開番号】WO2021084901
(87)【国際公開日】20210506
【審査請求日】2021年1月8日
(31)【優先権主張番号】特願2019-196481(P2019-196481)
(32)【優先日】2019年10月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】福田 竜也
(72)【発明者】
【氏名】竹中 哲也
【審査官】 坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−43438(JP,A)
【文献】 特開平9−172744(JP,A)
【文献】 特開2004−120856(JP,A)
【文献】 特開2013−31359(JP,A)
【文献】 特開2007−330045(JP,A)
【文献】 特開2014−110692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/36
H01M10/42−10/48
H02J 7/00− 7/12
7/34−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの電力変換装置に対してn個(nは2以上)の蓄電装置が並列で接続され、前記n個の蓄電装置が全体として非常用に確保すべき最低残容量Pを特定する下限充電状態が定められた蓄電システムであって、
個々の蓄電装置の容量を計測するメンテナンスモードを有する制御部を備え、
前記制御部は、前記メンテナンスモードにおいて、
前記n個の蓄電装置がそれぞれ満充電された状態から放電を開始し、
容量を計測する対象となる対象蓄電装置以外の(n−1)個の蓄電装置の残容量として前記最低残容量P以上である残容量Paを確保した状態で、前記対象蓄電装置以外の蓄電装置を解列し、前記対象蓄電装置の放電を完了させて前記対象蓄電装置の容量を計測する、蓄電システム。
【請求項2】
前記制御部は、容量計測済みの前記対象蓄電装置の残容量がPa/(n−1)になるまで前記対象蓄電装置を充電した後、前記対象蓄電装置を解列し、容量が未計測の蓄電装置のうち、容量を計測する対象となる2番目の対象蓄電装置を接続し、前記2番目の対象蓄電装置の放電を完了させて前記2番目の対象蓄電装置の容量を計測するプロセスを実行する、請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記制御部はメンテナンスモードが終了したのち、残容量がPa/(n−1)に揃った状態で前記n個の蓄電装置を並列接続する、請求項1または2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記メンテナンスモードを開始後の経過時間が、前記メンテナンスモードを実行可能な許容時間を超過したとき、前記蓄電装置の容量を計測するプロセスを停止する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記蓄電装置の温度が所定温度未満である場合に、前記蓄電装置の容量を計測するプロセスを停止する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【請求項6】
前記制御部は、前回のメンテナンスモード実行時に容量が未計測の蓄電装置がある場合に、次回のメンテナンスモード実行時において、当該蓄電装置の容量の計測を優先的に実行する請求項4または5に記載の蓄電システム。
【請求項7】
1つの電力変換装置に対してn個(nは2以上)の蓄電装置が並列で接続され、前記n個の蓄電装置が全体として非常用に確保すべき最低残容量Pを特定する下限充電状態が定められた蓄電システムで用いる管理方法であって、
個々の蓄電装置の容量を計測するメンテナンスモードにおいて、
前記n個の蓄電装置がそれぞれ満充電された状態から放電を開始するステップと、
容量を計測する対象となる対象蓄電装置以外の(n−1)個の蓄電装置の残容量として前記最低残容量P以上である残容量Paを確保した状態で、前記対象蓄電装置以外の蓄電装置を解列し、前記対象蓄電装置の放電を完了させて前記対象蓄電装置の容量を計測するステップと、
を備える、管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電システム及び管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1つの電力変換装置(PCS;Power Conditioning System)に対して2以上の蓄電装置が並列で接続された蓄電システムが知られている。このような蓄電システムにおいて、通常の運転状態とは別に設けられるメンテナンスモード(容量測定モード)において蓄電装置の容量を測定する動作が実行される場合がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019−158397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示のある態様は、1つの電力変換装置に対してn個(nは2以上)の蓄電装置が並列で接続され、前記n個の蓄電装置が全体として非常用に確保すべき最低残容量Pを特定する下限充電状態が定められた蓄電システムであって、個々の蓄電装置の容量を計測するメンテナンスモードを有する制御部を備え、前記制御部は、前記メンテナンスモードにおいて、前記n個の蓄電装置がそれぞれ満充電された状態から放電を開始し、容量を計測する対象となる対象蓄電装置以外の(n−1)個の蓄電装置の残容量として前記最低残容量P以上である残容量Paを確保した状態で、前記対象蓄電装置以外の蓄電装置を解列し、前記対象蓄電装置の放電を完了させて前記対象蓄電装置の容量を計測する。
【0005】
本開示の他の態様は、1つの電力変換装置に対してn個(nは2以上)の蓄電装置が並列で接続され、前記n個の蓄電装置が全体として非常用に確保すべき最低残容量Pを特定する下限充電状態が定められた蓄電システムで用いる管理方法であって、個々の蓄電装置の容量を計測するメンテナンスモードにおいて、前記n個の蓄電装置がそれぞれ満充電された状態から放電を開始するステップと、容量を計測する対象となる対象蓄電装置以外の(n−1)個の蓄電装置の残容量として前記最低残容量P以上である残容量Paを確保した状態で、前記対象蓄電装置以外の蓄電装置を解列し、前記対象蓄電装置の放電を完了させて前記対象蓄電装置の容量を計測するステップと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係る蓄電システムを示す図である。
図2図2は、実施形態に係る蓄電装置の容量を説明するための図である。
図3図3は、実施形態に係る2以上の蓄電装置の充電及び放電を説明するための図である。
図4図4は、蓄電装置が3個の場合における容量の推移を示す模式図である。
図5図5は、蓄電装置が3個の場合における容量の推移を示す模式図である。
図6図6は、蓄電装置が2個の場合における制御部の動作を示すフローチャートである。
図7図7は、蓄電装置が2個の場合における制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下において、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものである。
【0008】
(蓄電システム)
以下において、実施形態に係る蓄電システムについて図1を参照しながら説明する。図1に示すように、蓄電システム100は、2以上の蓄電装置110と、2以上のセンサ111と、2以上の切替部120と、PCS(Power Conditioning System)130と、センサ131と、制御部210と、管理部220と、出力部230と、記憶部240と、を有する。
【0009】
蓄電装置110は、電力を蓄積する装置である。具体的には、蓄電装置110は、電力を蓄積する2以上の蓄電セルを有する。2以上の蓄電セルは、互いに直列で接続されるセルストリングを構成する。蓄電装置110は、互いに並列で接続される2以上のセルストリングを有していてもよい。蓄電装置110は、2以上の蓄電セルのそれぞれに接続された放電抵抗を有しており、蓄電セルから放電抵抗への放電によって、2以上の蓄電セルの電圧値のバラツキを抑制する機能(以下、セルバランス機能)を有していてもよい。蓄電セルの電圧値は、蓄電装置110の充電又は放電を繰り返すことによって均一化される。
【0010】
図1では、蓄電装置110として、蓄電装置110A〜蓄電装置110Cが例示されている。2以上の蓄電装置110は、1つのPCS130に対して並列で接続される。
【0011】
センサ111は、蓄電装置110の出力端に設けられており、蓄電装置110の状態を検出する。蓄電装置110の状態は、蓄電装置110の出力端の電圧値を含む。蓄電装置110の状態は、蓄電装置110から放電される電力の電流値を含んでもよく、蓄電装置110に充電される電力の電流値を含んでもよい。
【0012】
ここで、“出力端”という用語は、蓄電装置110の放電における電力の出力端を意味する。従って、“出力端”とは、蓄電装置110の充電における電力の入力端と同義である。以下において、説明の便宜から、蓄電装置110の放電において、電力が出力される側を“出力端”と称し、電力が入力される側を“入力端”と称する。
【0013】
図1では、センサ111として、センサ111A〜センサ111Cが例示されている。センサ111Aは、蓄電装置110Aの状態を検出する。同様に、センサ111Bは、蓄電装置110Bの状態を検出し、センサ111Cは、蓄電装置110Cの状態を検出する。
【0014】
切替部120は、蓄電装置110とPCS130との間の電気的な接続を切り替える。具体的には、切替部120は、蓄電装置110とPCS130とを接続する電力線の接続又は切断を切り替える。以下においては、蓄電装置110とPCS130とが電気的に接続された状態を“ON”と称し、蓄電装置110とPCS130とが電気的に切断された状態を“OFF”と称する。特に限定されるものではないが、切替部120は、機械的なリレー機構であってもよい。切替部120は、スイッチング素子によって構成されるリレー回路であってもよい。
【0015】
図1では、切替部120として、切替部120A〜切替部120Cが例示されている。切替部120Aは、蓄電装置110AのON/OFFを切り替える。同様に、切替部120Bは、蓄電装置110BのON/OFFを切り替え、切替部120Cは、蓄電装置110CのON/OFFを切り替える。
【0016】
PCS130は、蓄電装置110から放電される直流電力を交流電力に変換し、蓄電装置110に充電される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置である。PCS130の入力端は、電力線を介して蓄電装置110と接続される。PCS130の出力端は、電力系統に電力線を介して接続される。PCS130の出力端は、蓄電システム100を含む施設に設けられる装置(他の分散電源又は負荷など)に電力線を介して接続されてもよい。ここで、PCS130は、蓄電システム100が電力系統から解列された状態(以下、自立運転状態)において、施設に設けられる装置とPCS130とを接続する端子(自立端子)を有してもよい。
【0017】
センサ131は、PCS130の出力端に設けられており、PCS130の状態を検出する。PCS130の状態は、PCS130の出力端の電圧値を含む。PCS130の状態は、蓄電装置110の放電においてPCS130から出力される電力の電流値を含んでもよく、蓄電装置110の充電においてPCS130に入力される電力の電流値を含んでもよい。
【0018】
制御部210は、少なくとも1つのプロセッサを含んでもよい。少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(IC)によって構成されてもよく、通信可能に接続された複数の回路(集積回路及び又はディスクリート回路(discrete circuits)など)によって構成されてもよい。
【0019】
制御部210は、蓄電システム100に設けられる構成と信号線を介して接続される。ここでは、制御部210は、センサ111、PCS130及びセンサ131と信号線を介して接続される。制御部210は、PCS130の制御によって蓄電装置110の充電又は放電を制御する。制御部210は、センサ111から蓄電装置110の状態を取得する。制御部210は、センサ131からPCS130の状態を取得する。
【0020】
管理部220は、蓄電システム100に関する情報を管理する。例えば、管理部220は、不揮発性メモリなどのメモリ又は/及びHDD(Hard disc drive)などの記憶媒体によって構成される。具体的には、管理部220は、2以上の蓄電装置110のそれぞれに対応する2以上の個別充電状態(以下、個別SOC(SOC;State of Charge))を特定する情報を管理する。管理部220は、蓄電システム100の全体充電状態(以下、全体SOC)を特定する情報を管理する。なお、SOCの詳細については後述する(図2を参照)。
【0021】
出力部230は、管理部220によって管理される情報を出力する。具体的には、出力部230は、全体SOCを特定する情報を出力する。出力部230は、個別SOCを特定する情報を出力してもよい。特に限定されるものではないが、出力の形態は、表示であってもよく、音声であってもよい。例えば、出力部230は、ディスプレイによって構成されてもよく、スピーカによって構成されてもよい。或いは、出力部230は、通信モジュールによって構成されており、管理部220によって管理される情報を外部装置に送信してもよい。通信モジュールは、IEEE802.11a/b/g/n、ZigBee、Wi−SUN、LTEなどの規格に準拠する無線通信モジュールであってもよく、IEEE802.3などの規格に準拠する有線通信モジュールであってもよい。外部装置は、パーソナルコンピュータ、スマートフォンなどのユーザ端末であってよく、蓄電システム100を含む施設に設けられるEMS(Energy Management System)であってもよい。
【0022】
記憶部240は、管理部220によって管理される情報をログとして記憶する。記憶部240は、不揮発性メモリなどのメモリ又は/及びHDD(Hard disc drive)などの記憶媒体によって構成される。記憶部240は、全体SOCの推移をログとして記憶する。記憶部240は、個別SOCの推移をログとして記憶してもよい。記憶部240は、PCS130の運転状態(充電、放電、待機など)の推移をログとして記憶してもよい。
【0023】
(蓄電装置の容量)
以下において、実施形態に係る蓄電装置110の容量について図2を参照しながら説明する。
【0024】
図2に示すように、蓄電装置110の容量は、蓄電装置110の劣化抑制等の観点から、蓄電装置110の使用が制限される使用不可容量を含む。閾値TH1は、使用不可容量(上限側)を特定する閾値であり、閾値TH2は、使用不可容量(下限側)を特定する閾値である。蓄電装置110の容量は、災害などの緊急事態に対応するために非常容量(BCP(Business Continuity Plan)容量)を含む。閾値TH3は、BCP容量を特定する閾値である。
【0025】
以下においては、蓄電装置110の全体容量は、使用不可容量を除いた容量であるものとして説明を進める。緊急事態以外の平常状態では、BCP容量が用いられないため、蓄電装置110から放電可能な容量(放電可能容量)は、蓄電装置110に蓄積された電力(蓄電残量)からBCP容量を除いた値である。蓄電装置110に充電可能な容量(充電可能容量)は、全体容量から蓄電残量を除いた値である。なお、蓄電残量及び使用不可容量(下限側)の合計については、便宜的に蓄電容量と称する。
【0026】
蓄電装置110のSOCは、TH1とTH2との間の容量(すなわち、蓄電装置110の全体容量)を基準として定められてもよい。具体的には、蓄電装置110のSOCは、蓄電装置110の全体容量に対する蓄電装置110の蓄電容量の比率で表される。上限SOCは、上述した閾値TH1によって特定される。下限SOCは、閾値TH3によって特定される。
【0027】
このようなケースにおいて、SOCの測定方法は、SOCとOCV(Open Circuit Voltage)との関係を表す曲線(以下、SOC−OCV曲線)を用いた方法であってもよい。このような方法では、蓄電装置110の出力端の電圧値の検出によってSOCを測定することができる。但し、SOCの測定方法は、これに限定されるものではなく、蓄電装置110の充電又は放電に伴う電流の積算を用いた方法であってもよい。
【0028】
さらに、蓄電装置110の定期的なメンテナンスによって、全体容量の再測定が行われる。具体的には、満充電状態から所定放電状態まで蓄電装置110の放電を行うことによっての再測定が行われる。所定放電状態とは、BCP容量の放電が行われた状態である。但し、使用不可容量(下限側)の放電までは行われない。SOC−OCV曲線を用いてSOCが測定される場合には、このようなメンテナンスによって、上限SOC及び下限SOCに相当する電圧値が再定義される。メンテナンス時のより詳細な動作については後述する。
【0029】
図2では、1つの蓄電装置110の容量及びSOCについて説明したが、互いに並列で接続された2以上の蓄電装置110の容量及びSOCについても同様である。従って、その詳細については省略する。
【0030】
(充電及び放電)
以下において、実施形態に係る2以上の蓄電装置110の充電及び放電について図3を参照しながら説明する。ここでは、蓄電装置110A〜蓄電装置110Cの全てがONである前提で説明する。
【0031】
図3では、蓄電装置110Cの蓄電残量に相当する電圧値が最大電圧値(VMAX)であり、蓄電装置110Bの蓄電残量に相当する電圧値が最小電圧値(VMIN)であり、蓄電装置110Aの蓄電残量に相当する電圧値がVMAXとVMINとの間の中間電圧値(VMID)であるケースを例示する。
【0032】
このようなケースにおいて、2以上の蓄電装置110の横流によって生じる蓄電装置110の劣化を抑制するために、VMAXとVMINとの差異(VDIF)が閾値(THDIF)である状態において、2以上の蓄電装置110の充電又は放電が行われる。
【0033】
図3に示すように、2以上の蓄電装置110の充電又は放電によって、各蓄電装置110の電圧のバラツキ(上述したVDIF)は縮小してもよい。但し、各蓄電装置110の内部抵抗のバラツキによってVDIFが拡大する可能性もある。さらに、各蓄電装置110の充電又は放電が行われずに時間が経過した場合には、自然放電などによってVDIFが拡大することも考えられる。
【0034】
(メンテナンス時の管理)
上述したように、本実施形態の蓄電システム100では、1つの電力変換装置(PCS130)に対してn個(nは2以上)の蓄電装置110が並列で接続され、n個の蓄電装置110が全体として非常用に確保すべき最低残容量P(総BCP容量)を特定する下限充電状態が定められている。
【0035】
蓄電システム100において、制御部210は、個々の蓄電装置110の容量を計測するメンテナンスモードを有する。制御部210は、当該メンテナンスモードにおいて、n個の蓄電装置110がそれぞれ満充電された状態から放電を開始し、容量を計測する対象となる対象蓄電装置以外の(n−1)個の蓄電装置110の残容量として最低残容量P(kWh)以上である残容量Paを確保した状態で、対象蓄電装置以外の蓄電装置110を解列し、対象蓄電装置の放電を完了させて対象蓄電装置の容量を計測する。このように、本実施形態の蓄電システム100では、メンテナンスモードではない通常運転状態において、n個の蓄電装置110の残容量として最低残容量Pが確保されるが、メンテナンスモードにおいては、対象蓄電装置以外の(n−1)個の蓄電装置110の残容量として最低残容量P以上である残容量Paが確保される。
【0036】
さらに、制御部210は、容量計測済みの対象蓄電装置の残容量がPa/(n−1)になるまで対象蓄電装置を充電した後、対象蓄電装置を解列し、容量が未計測の蓄電装置110のうち、容量を計測する対象となる2番目の対象蓄電装置を接続し、2番目の対象蓄電装置の放電を完了させて2番目の対象蓄電装置の容量を計測するプロセスを実行する。この後、Pa/(n−1)になるまで2番目の対象蓄電装置を充電する。
【0037】
なお、各蓄電装置110の残容量については、各蓄電装置110の電圧を測定し、得られた電圧値、並びに上限SOC及び下限SOCに相当する電圧値に基づいて算出することができる。
【0038】
制御部210は、メンテナンスモードを開始後の経過時間が、メンテナンスモードを実行可能な許容時間を超過したとき、蓄電装置110の容量を計測するプロセスを停止してもよい。
【0039】
また、制御部210は、蓄電装置110の温度が所定温度未満である場合に、当該蓄電装置110の容量を計測するプロセスを停止してもよい。具体的には、蓄電装置110にそれぞれ温度センサを設置し、温度センサで得られた温度を制御部210に入力する。制御部210は、所定温度未満の温度の蓄電装置110がある場合に、当該蓄電装置110の容量を計測するプロセスを停止する。
【0040】
制御部210は、前回のメンテナンスモード実行時に容量が未計測の蓄電装置110がある場合に、次回のメンテナンスモード実行時において、当該蓄電装置110の容量の計測を優先的に実行してもよい。ここで、前回のメンテナンスモード実行時に容量が未計測の蓄電装置110がある場合とは、上述した動作により、前回のメンテナンスモードにおいて容量を計測するプロセスが停止された蓄電装置110がある場合を含む。この場合には、全ての蓄電装置110の容量を計測するプロセスが前回のメンテナンスモード実行時に一旦中断し、通常運転状態後の次回のメンテナンスモードにおいて再開される。
【0041】
制御部210はメンテナンスモードが終了したのち、残容量がPa/(n−1)に揃った状態でn個の蓄電装置110を並列接続する。
【0042】
図4および図5は、n=3の場合の蓄電装置110の容量の推移を示す模式図である。図4および図5では、上述した残容量Paが最低残容量Pであるケースを例示する。図4に示すように、3個の蓄電装置110がともに満充電(TH1)の状態から、蓄電装置110A、蓄電装置110Bおよび蓄電装置110Cの放電を開始し、蓄電装置110Bおよび蓄電装置110Cで最低残容量Pを確保できる状態まで放電を継続する。このとき、蓄電装置110の容量はP/(n−1)=P/2となる。続いて、図1に示した切替部120Bおよび切替部120Cにより、それぞれ蓄電装置110Bおよび蓄電装置110Cを解列した(OFFにした)後、容量がTH2になるまで蓄電装置110Aを放電させる。以上の動作終了後、TH1−TH2を算出することにより、蓄電装置110Aの全体容量が計測される。
【0043】
次に、図5に示すように、蓄電装置110Aを容量P/2まで充電した後、図1に示した切替部120Aにより蓄電装置110Aを解列し、切替部120Bにより蓄電装置110Bを接続し(ONにし)、容量がTH2になるまで2番目の対象蓄電装置となる蓄電装置110を放電する。以上の動作終了後、TH1−TH2を算出することにより、蓄電装置110Bの全体容量が計測される。蓄電装置110Bを容量P/2まで充電した後、蓄電装置110Cについても、蓄電装置110Bと同様な動作により、全体容量が計測された後、容量P/2まで充電される。
【0044】
(管理方法)
以下において、実施形態に係る管理方法について図6および図7を参照しながら説明する。図6および図7では、蓄電装置が2個の場合(蓄電装置A、蓄電装置Bとする)における制御部210の動作について説明する。
【0045】
メンテナンスモードが開始されると、満充電(容量TH1)の蓄電装置A、蓄電装置Bの放電が行われる(S10)。
【0046】
続いて、放電により蓄電装置Bの容量が残容量Paに達したかが判定される(S20)。蓄電装置Bの容量が残容量Paに達していない場合には(S20のno)、放電が継続される。蓄電装置Bの容量が残容量Paに達している場合には(S20のyes)、リレーなどの切替部を用いて蓄電装置BをOFFにする(S30)。
【0047】
続いて、蓄電装置Aの放電が行われる(S40)。放電により蓄電装置Aの容量がTH2に達したかが判定される(S50)。蓄電装置Aの容量がTH2に達していない場合には(S50のno)、放電が継続される。蓄電装置Aの容量がTH2に達している場合には(S50のyes)、蓄電装置Aの容量が計測される(S60)。
【0048】
続いて、蓄電装置Aの充電を開始し(S70)、蓄電装置Aの容量が残容量Paに達したかが判定される(S80)。蓄電装置Aの容量が残容量Paに達していない場合には(S80のno)、放電が継続される。蓄電装置Aの容量が残容量Paに達している場合には(S80のyes)、リレーなどの切替部を用いて蓄電装置AをOFFにし、蓄電装置BをONにする(S90)。
【0049】
続いて、蓄電装置Aにより残容量Paを確保した状態で、蓄電装置Bの放電が行われる(S100)。続いて、放電により蓄電装置Bの容量がTH2に達したかが判定される(S110)。蓄電装置Bの容量がTH2に達していない場合には(S110のno)、放電が継続される。蓄電装置Bの容量がTH2に達している場合には(S110のyes)、蓄電装置Bの容量が計測される(S120)。
【0050】
続いて、蓄電装置Bの充電を開始し(S130)、蓄電装置Bの容量が残容量Paに達したかが判定される(S140)。蓄電装置Bの容量が残容量Paに達していない場合には(S140のno)、放電が継続される。蓄電装置Bの容量が残容量Paに達している場合には(S140のyes)、リレーなどの切替部を用いて蓄電装置AをONにする(S150)。
【0051】
(作用及び効果)
以上説明した蓄電システム100によれば、メンテナンスモードにおいて、容量を測定する対象となる対象蓄電装置以外の蓄電装置により最低残容量P以上である残容量Paを確保した状態で、対象蓄電装置の容量を下げる操作を行うことにより、最低残容量Pを確保しつつ対象蓄電装置の容量を測定することができ、非常時などの電力供給に対応することが可能になる。
【0052】
また、メンテナンスモードが終了したのち、残容量がPa/(n−1)に揃った状態でn個の蓄電装置を並列接続することにより、メンテナンスモード終了後に最低残容量Pを確保した状態で速やかに通常運転状態に移行することができる。
【0053】
また、メンテナンスモードの経過時間が所定の条件を満たさない場合に蓄電装置の容量を計測するプロセスを停止することにより、決められた時間経過後に通常運転状態への移行を確実なものとすることができる。メンテナンスモードの蓄電装置の温度が所定の条件を満たさない場合に蓄電装置の容量を計測するプロセスを停止することにより、蓄電装置の容量の計測をより正確に行うことができる。この場合、前回のメンテナンスモードで計測が中断された蓄電装置の容量を次回のメンテナンスモードで優先的に計測することにより、容量が未計測の蓄電装置をなくし、各蓄電装置の容量を的確に把握することができる。
【0054】
[その他の実施形態]
本開示は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この開示を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0055】
実施形態では特に触れていないが、制御部210、管理部220、出力部230及び記憶部240の少なくともいずれか1つは、PCS130でもよく、蓄電システム100を含む施設に設けられるEMSに設けられてもよい。EMSは、クラウドサービスによって提供されてもよい。
【0056】
実施形態では特に触れていないが、蓄電システム100に設けられる信号線は、有線であってもよく、無線であってもよい。
【0057】
実施形態では特に触れていないが、制御部210は、管理部220で管理される全体SOCに基づいて、蓄電システム100の充電又は放電を制御してもよい。例えば、制御部210は、全体SOCが上限SOCに達した場合に、蓄電システム100の充電を停止してもよい。同様に、制御部210は、全体SOCが下限SOCに達した場合に、蓄電システム100の放電を停止してもよい。
【0058】
蓄電装置の容量を計測するプロセスを停止する条件として、メンテナンスモード実行時の現在時刻が所定の時刻(たとえば、午前6時や日の出の時刻)になったときとしてもよい。
なお、日本国出願第2019−196481(2019年10月29日)の全内容が参照により本願明細書に組み込まれている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7