(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の冷却孔列の前記第1開口中心線は、軸方向下流方向に向かうと共に、軸方向に隣接して配置された前記冷却孔列の前記第1開口中心線との軸方向の間隔が拡大する
請求項1から8のいずれか一項に記載のタービン静翼。
前記複数の冷却孔列の前記第1開口中心線又は前記第2開口中心線のいずれかが、前記第1領域から前記第4領域の内の少なくとも一つの領域を起点に前記前縁端部又は前記負圧面側端部に向けて放射状に延伸する、
請求項6から10のいずれか一項に記載のタービン静翼。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、添付図面に基づき説明する。
【0010】
《ガスタービンの構成》
タービン静翼が適用されるガスタービンの構成について、
図1を参照して説明する。なお、
図1は、タービン静翼24が適用される一実施形態のガスタービン1を示す概略構成図である。
【0011】
図1に示すように、一実施形態に係るガスタービン1は、圧縮空気を生成するための圧縮機2と、圧縮空気及び燃料を用いて燃焼ガスGを発生させるための燃焼器4と、燃焼ガスGによって回転駆動されるタービン6と、を備える。発電用のガスタービン1の場合、タービン6には不図示の発電機が連結され、タービン6の回転エネルギーによって発電が行われるようになっている。
【0012】
ガスタービン1における各構成について、
図1を用いて説明する。
圧縮機2は、圧縮機車室10と、圧縮機車室10の入口側に設けられ、空気を取り込むための吸気室12と、圧縮機車室10及び後述するタービン車室22を共に貫通するように設けられたロータ8と、圧縮機車室10内に配置された各種の翼と、を備える。各種の翼は、吸気室12側に設けられた入口案内翼14と、圧縮機車室10側に固定された複数の圧縮機静翼16と、圧縮機静翼16に対して軸方向に交互に配列されるようにロータ8に植設された複数の圧縮機動翼18と、を含む。なお、圧縮機2は、不図示の抽気室等の他の構成要素を備えていてもよい。このような圧縮機2において、吸気室12から取り込まれた空気は、複数の圧縮機静翼16及び複数の圧縮機動翼18を通過して圧縮されることで圧縮空気が生成される。圧縮空気は圧縮機2から軸方向下流側の燃焼器4に送られる。
【0013】
燃焼器4は、ケーシング20内に配置される。
図1に示すように、燃焼器4は、ケーシング20内にロータ8を中心として環状に複数配置されている。燃焼器4には燃料と圧縮機2で生成された圧縮空気とが供給され、燃料を燃焼させることによって、タービン6の作動流体である高温高圧の燃焼ガスGを発生させる。発生した燃焼ガスGは燃焼器4から軸方向下流側のタービン6に送られる。
【0014】
タービン6は、タービン車室(ケーシング)22と、タービン車室22内に配置された各種のタービン翼と、を備える。各種のタービン翼は、タービン車室22側に固定された複数のタービン静翼24と、タービン静翼24に対して軸方向に交互に配列されるようにロータ8に植設された複数のタービン動翼26と、を含む。
タービン6において、ロータ8は、軸方向に延在し、タービン車室22から排出された燃焼ガスGは、軸方向の下流側の排気車室28に排出される。
図1では、図示の左側が軸方向上流側であり、図示の右側が軸方向下流側である。また、以下の説明では、単に径方向と記載した場合、ロータ8に直交する方向を表す。また、周方向と記載した場合、ロータ8の回転方向を表す。径方向は、翼高さ方向と呼ぶ場合もある。
【0015】
タービン動翼24は、タービン静翼24とともにタービン車室22内を流れる高温高圧の燃焼ガスGから回転駆動力を発生させるように構成される。この回転駆動力がロータ8に伝達され、ロータ8に連結された不図示の発電機が駆動される。
【0016】
タービン車室22の軸方向下流側には、排気車室28を介して排気室29が連結されている。タービン6を駆動した後の燃焼ガスGは、排気車室28及び排気室29を通って外部へ排出される。
【0017】
《タービン静翼の構成》
図2は、タービン静翼24の斜視図を示す。
図2に示すように、タービン6の静翼24は、翼高さ方向に延びる翼体40と、翼体40の翼高さ方向の外側及び内側の両端にシュラウド60を有する。シュラウド60は、翼体40の翼高さ方向の外側に形成されている外側シュラウド60aと、翼体40の翼高さ方向の内側に形成されている内側シュラウド60bと、からなる。翼体40は、燃焼ガスGが流れる燃焼ガス流路47内に配置されている。外側シュラウド60aは、ロータ8廻りに環状に形成された燃焼ガス流路47の翼高さ方向の外側の位置を画定している。内側シュラウド60bは、環状の燃焼ガス流路47の翼高さ方向の内側の位置を画定している。
【0018】
静翼40の外側シュラウド60aのうち、翼体40の後縁43側には、タービン静翼24をタービン車室22に支持するためのフック76が設けられている。タービン静翼24のフック76は、外側シュラウド60aの後縁43側の周壁62に設けられている。
【0019】
図2に示すように、翼体40は、翼高さ方向に延在して、翼高さ方向の外側でフィレット部46を介して外側シュラウド60aに接続し、翼高さ方向の内側でフィレット部46を介して内側シュラウド60bに接続している。翼体40は、外側シュラウド60a及び内側シュラウド60bと一体となってタービン静翼24を形成している。
【0020】
図3は、燃焼ガス流路47に対して反流路側である翼高さ方向の外側から外側シュラウド60aを見た平面断面を示す。以下の説明では、外側シュラウド60a側を一例として説明する。
図2及び
図3に示すように、外側シュラウド60aにフィレット部46を介して接続する翼体40は、翼形状を形成する。翼体40は、軸方向上流端に前縁42を有し、軸方向下流端に後縁43を有している。翼体40は、翼面41の周方向を向く面のうち、凸面状を形成する負圧面44と、凹面状を形成する正圧面45とを有している。負圧面44及び正圧面45は、前縁42及び後縁43で接合し、一体となって一つの翼体40を形成している。なお、以下の説明では、周方向で翼体40の正圧面45側を腹側、翼体40の負圧面44側を背側と呼ぶこともある。
【0021】
翼体40は、翼高さ方向に延び、翼体40の内部空間を冷却空気Acが流れる翼体キャビティ51(第1キャビティ)を備えている。翼体キャビティ51は、外側シュラウド60aから内側シュラウド60bまでの翼高さ方向に延在し、前縁42から後縁43までの間に複数の内部空間が連なって形成されている。
図2及び
図3に示す実施形態では、翼体40の前縁42と後縁43とを結ぶ前縁−後縁方向に3つの翼体キャビティ51(翼体前縁キャビティ52、翼体中間キャビティ53、翼体後縁キャビティ54)を配置した例を一例として示している。
【0022】
翼体キャビティ51は、一端が負圧面44側の翼壁40bの内壁62aに接続し、他端が正圧面45側の翼壁40bの内壁62aに接続する複数の翼体仕切リブ49により複数の内部空間に区分けされている。翼体キャビティ51は、翼体40の前縁42側で、翼体仕切リブ49を介して、翼体40の前縁42側に配置された翼体前縁キャビティ52と、翼体前縁キャビティ52の軸方向下流側に隣接して配置された翼体中間キャビティ53に区分けされている。また、同様に、翼体キャビティ51は、翼体40の後縁43側では、翼体仕切リブ49を介して翼体中間キャビティ53と、翼体中間キャビティ53の軸方向下流側に隣接して配置された翼体後縁キャビティ54に区分けされている。
【0023】
それぞれの翼体キャビティ51は、互いに連通することなく、外側シュラウド60a又は内側シュラウド60bのいずれか一方のシュラウド60に開口し、他方の翼体キャビティ51の翼体端部40aは蓋56等を設け、閉塞されている。全ての翼体キャビティ51は、外側シュラウド60a又は内側シュラウド60bのいずれか一方から冷却空気Acを供給され、翼体40を冷却して、翼面41から燃焼ガス流路47に排出される。なお、翼体キャビティ51は、互いに連通してサーペンタイン流路を形成し、翼体前縁キャビティ52の翼高さ方向の一方の開口56aから冷却空気Acが供給され、翼体中間キャビティ53及び翼体後縁キャビティ54を流れ、後縁43に形成された図示されていない冷却通路から燃焼ガス流路47に排出されてもよい。
【0024】
図4は、
図3のA−A線に沿った翼体40の翼体前縁キャビティ52及び翼体前縁キャビティ52廻りの外側シュラウド60aの断面を示す。
図2、
図3及び
図4に示すように、外側シュラウド60aは、外側シュラウド60aの底面を形成する底板69と、底板69の外周縁の全周に形成され、底板69の内表面70から翼高さ方向に立設する周壁62と、底板69と周壁62により形成される凹部75を複数のキャビティ80に区分けする仕切リブ73と、キャビティ80(凹部75)を翼高さ方向の外側の外側キャビティ82(第3キャビティ)と翼高さ方向の内側の内側キャビティ83(第4キャビティ)と、に区分けする衝突板85と、から構成されている。
【0025】
キャビティ80に配置される衝突板85は、外側キャビティ82と内側キャビティ83を連通する複数の貫通孔86を有する。外側キャビティ82は、凹部75の一部を構成し、外側シュラウド60aで1つの空間を形成する。一方、内側キャビティ83は、凹部75が衝突板85で翼高さ方向に複数の空間に区分けされ、衝突板85を間に挟んで外側キャビティ82の翼高さ方向の内側に配置されている。
【0026】
周壁62は、軸方向上流側の前縁42側に形成された前縁端部64と、前縁端部64に対して軸方向下流側に対向して配置され、後縁43側の周方向に延在する後縁端部65と、周方向の翼体40の負圧面44側の端部に形成された負圧面側端部66と、負圧面側端部66に対して周方向に対向して配置され、翼体40の正圧面45側の端部に形成された正圧面側端部67と、から構成されている。
【0027】
底板69は、翼高さ方向の燃焼ガス流路47の内側で燃焼ガスGに接する外表面(ガスパス面)71と、外表面(ガスパス面)71とは翼高さ方向の反対側の反流路側で、翼高さ方向の外側を向く内表面(反流路面)70と、を備えている。底板69は、詳細は後述する複数の冷却孔89を備えている。冷却孔89は、底板69を翼高さ方向に貫通し、冷却孔89を介して内側キャビティ83と外表面71に面する燃焼ガス流路47に連通している。翼体40の翼高さ方向の外側(内側シュラウド60bの場合は、翼高さ方向の内側)の端部は、外側シュラウド60aの底板69の内表面70から、翼高さ方向の外側又は内側にわずかに突出している翼体端部40aを有する。
【0028】
図3に示すように、外側シュラウド60aの負圧面44側の前縁42側の領域は、断面が底板69の内表面70から外表面(ガスパス面)71とは反対側の反流路側に突出する突起状の複数の仕切リブ73を備えている。本実施形態においては、仕切リブ73は、シュラウド60の凹部75内に形成された翼体40の前縁42側の翼体端部40aと前縁端部64を接続する前縁仕切リブ73aと、翼体40の翼体端部40aと負圧面側端部66を接続する負圧面側中間仕切リブ73bと、を含む。外側シュラウド60aの負圧面44側の前縁42側の領域には、前縁仕切リブ73a及び負圧面側中間仕切リブ73bを配置することにより、翼体端部40aと前縁端部64と負圧面側端部67と前縁仕切リブ73aと負圧面側中間仕切リブ73bに囲まれた空間である負圧面側前縁キャビティ81(第2キャビティ)の一部を構成する内側キャビティ83が形成される。従って、内側キャビティ83は、翼高さ方向の外側において、衝突板85の貫通孔86を介して外側キャビティ82に連通し、翼高さ方向の内側において、底板69の冷却孔89を介して燃焼ガス流路47に連通している。
【0029】
内側シュラウド60bの構成は、上述した外側シュラウド60aの構成とほぼ同様の構成である。すなわち、
図3及び
図4に示す構造は、外側シュラウド60aの例であるが、内側シュラウド60bの構成も、
図3及び
図4に示す構造を適用できる。従って、内側シュラウド60bの各構成の名称及び符号は、特段の説明がある場合を除き、外側シュラウド60aの各構成の説明をそのまま流用してもよい。以下の
図4から
図8を用いた説明においても、特段の説明がある場合を除き、外側シュラウド60aに係る説明は、内側シュラウド60bにも適用可能である。なお、内側シュラウド60bの場合、外側シュラウド60aの翼高さ方向の外側は、翼高さ方向の内側と読み替え、翼高さ方向の内側は、翼高さ方向の外側と読み替える。
【0030】
一般に、タービン静翼24の翼高さ方向の両端のシュラウド60に挟まれた燃焼ガス流路47を形成する領域は、軸方向上流側からタービン静翼24に流入する高温の燃焼ガスGが翼面41及びガスパス面71に沿って流れるため、シュラウド60のガスパス面71が過熱される。特に、前縁42側の負圧面44側のガスパス面71は、正圧面45側と比較して燃焼ガスGの流速が早まるため、過熱の傾向が顕著である。従って、シュラウド60の燃焼ガスGからの熱損傷を抑制するための冷却手段が要求される。以下の説明では、タービン静翼24のシュラウド60の負圧面側前縁キャビティ81の冷却構造について、いくつかの実施形態を説明する。以下の実施形態の説明にあたっては、外側シュラウド60aと内側シュラウド60bを包含するシュラウド60として説明する。従って、特段の説明のない限り、シュラウド60は、外側シュラウド60aと内側シュラウド60bの両方に適用できるものとする。
【0031】
《第1実施形態》
本実施形態におけるシュラウド60の負圧面側前縁キャビティ81廻りの冷却構造は、
図3、
図4及び
図5に示される。なお、
図5、
図6及び
図7は、外側シュラウド60aを翼高さ方向の内側のガスパス面(外表面)71側から見た負圧面44側の前縁42側の平面断面を示し、
図4のB−B線に沿った断面図である。
本実施形態の冷却構造は、複数の貫通孔86を備えた衝突板85と、複数の冷却孔89を備えた底板69と、衝突板85の翼高さ方向の外側に形成された外側キャビティ82と、衝突板85の翼高さ方向の内側に形成された内側キャビティ83と、から構成される。これらの構成の組合せにより、シュラウド60は、衝突板85に形成された貫通孔86を介して外側キャビティ82から供給された冷却空気Acが、内側キャビティ83に噴出して底板69の内表面70に衝突し、内表面70をインピンジメント冷却(衝突冷却)するインピンジメント冷却構造と、インピンジメント冷却後の冷却空気Acが底板69に形成された冷却孔89を介して燃焼ガス流路47に排出する過程で、底板69の外表面(ガスパス面)71を冷却するフィルム冷却構造と、を組み合わせた冷却構造が形成される。
図3、
図4、
図5及び
図9に基づき、負圧面側前縁キャビティ81のインピンジメント冷却とフィルム冷却を組合わせた冷却構造について、以下に具体的に説明する。
【0032】
シュラウド60の負圧面側前縁キャビティ81の外表面(ガスパス面)71には、翼体40の翼面41に沿って、翼面41を囲むように複数の冷却孔89が配置されている。シュラウド60の負圧面側前縁キャビティ81には、複数の冷却孔89を備えた複数の冷却孔列90が、翼体40の翼体キャビティ51の負圧面44側の翼面41の外周を囲むように、所定の間隔を空けて翼面41の曲面の変化に沿って配置されている。複数の冷却孔列90は、軸方向下流側に向かうと共に次第に軸方向に対する傾きを変えて形成されている。
図5に示す冷却孔列90(91、92、93、94)は、軸方向上流側から下流側に向けて、第1冷却孔列91、第2冷却孔列92、第3冷却孔列93及び第4冷却孔列94から構成されている。それぞれの各冷却孔列91、92、93、94は、それぞれが複数の冷却孔89を備える。なお、各冷却孔列91、92、93、94を構成する複数の冷却孔89の内で、第3冷却孔列93及び第4冷却孔列94を構成する冷却孔89の符号は、最も翼面41に接近する冷却孔89と最も翼面41から離れた冷却孔89のみに符号を表示し、他の冷却孔89の符号の表示は省略している。
【0033】
各冷却孔列91、92、93、94の構成は、最も翼面41に接近した位置に配置された冷却孔89を基準にして、翼体40の翼面41側から前縁端部64又は負圧面側端部66に向かって、所定間隔を維持して配置された複数の冷却孔89から構成される。ここで、冷却孔89の入口開口89aの中心と出口開口89bの中心を結ぶ直線を冷却孔中心線FLとすれば、冷却孔89が延伸する方向は、冷却孔中心線FLが延伸する方向と一致する。上述のように、タービン静翼24の前縁42側のガスパス面71に軸方向上流側から流入する燃焼ガスGは、翼体40の翼面41に沿って、負圧面44側及び正圧面45側を流れる。翼体40の負圧面44側の翼面41は、凸状の曲面を形成し、軸方向下流側に向かうと共に、翼面41の形状が変化する。従って、翼面41に沿って流れる燃焼ガスGは、翼体40の翼面41の曲面の変化に伴なって流れ方向が変化する。一方、シュラウド60の底板69の冷却孔89から燃焼ガス流路47に排出される冷却空気Acは、燃焼ガスGの流れを乱さないように、流れ方向が変化する燃焼ガスGの流れに沿った方向に排出することが望ましい。従って、複数の冷却孔列90を形成する複数の冷却孔89は、軸方向下流側に向かうと共に燃焼ガスGの流れ方向の変化に合わせて、次第に軸方向に対する傾きを変えるように配置される。すなわち、複数の冷却孔列90を形成する複数の冷却孔89の冷却孔中心線FLの軸方向線ALに対する傾きは、軸方向下流側に向かうと共に次第に小さくなる。
【0034】
ここで、
図5を参照しながら、冷却孔列90(91、92、93、94)の構成を説明する。上述のように、
図5に示す各冷却孔列91、92、93、94は、最も翼面41に近い冷却孔89の位置を基準にして、最も翼面41に接近している冷却孔89の位置から前縁端部64又は負圧面側端部66に向かって、翼面41から離間する方向に、同一の冷却孔列90を構成する複数の冷却孔89が、同一の間隔及び同一の軸方向線ALに対する傾きを維持しつつ延在する構成が望ましい。また、各冷却孔列91、92、93、94の群が延伸する方向は、後述する燃焼ガスGの等圧線IBLが延在する方向に平行に配置することが望ましい。
【0035】
図5に示すように、上述の冷却孔89の冷却孔中心線FLは、冷却孔列90を形成するそれぞれの各冷却孔列91、92、93、94を構成する複数の冷却孔89の入口開口89aの中心と出口開口89bの中心を結ぶ直線状の実線で示される。各冷却孔列91、92、93、94を形成する複数の冷却孔89は、各冷却孔列91、92、93、94が配置される複数の冷却孔89の翼面41に接近する位置から前縁端部64又は負圧面側端部66に向かう方向に対して、互いに隣接する冷却孔89の出口開口89bの中心を結ぶ破線で示された直線状の第1開口中心線OL1を有する。また、同様に、同一の冷却孔列90を形成する複数の冷却孔89は、各冷却孔列91、92、93、94が配置される複数の冷却孔89の翼面41に接近する位置から前縁端部64又は負圧面側端部66に向かう方向に対して、互いに隣接する冷却孔89の入口開口89aの中心を結ぶ破線で示された直線状の第2開口中心線OL2を有する。第1開口中心線OL1と第2開口中心線OL2を総称して、開口中心線OLと呼ぶ。
【0036】
冷却孔89の構造は、
図5に示す冷却孔のC部詳細として
図8に示されている。
図8のC部詳細に示すように、底板69に形成された冷却孔89は、内表面70に開口する入口開口89aと外表面(ガスパス面)71に開口する出口開口89bを有する。入口開口89aの位置より軸方向下流側の後縁43側の位置に出口開口89bが形成されている。 冷却孔89の底板69の内表面70又は外表面(ガスパス面)71に対する傾きは同一であり、冷却孔89の入口開口89aと出口開口89bを結ぶ冷却孔89の長さに相当する冷却孔中心線FLの長さも同一である。
【0037】
ここで、本実施形態における冷却孔列90を定義すれば、冷却孔列90は、最も翼面41に近い冷却孔89の位置を基準にして、最も翼面41に接近している冷却孔89の位置から前縁端部64又は負圧面側端部66に向かって、翼面41から離間する方向に延びている。複数の冷却孔89からなる各冷却孔列91、92、93、94は、同一の間隔及び同一の軸方向線ALに対する傾きを維持しつつ延在する複数の冷却孔89の一つの群と見ることができる。更に、同一の冷却孔列91、92、93、94を構成する複数の冷却孔89の冷却孔中心線FLは、同一の冷却孔列91、92、93、94の中では、互いに平行に同一の間隔及び同一の軸方向線ALに対する傾きを維持して配列されている。また、同一の冷却孔列91、92、93、94を形成する複数の冷却孔89の第1開口中心線OL1と第2開口中心線OL2は、互いに平行に形成され、冷却孔中心線FLに対して同一の傾きを備えて延伸している。なお、冷却孔中心線FLの第1開口中心線OL1に対する傾きは、軸方向のいずれの位置においても、同一の冷却孔列91、92、93、94においては、同じ傾きを維持することが望ましい。
【0038】
図5に示すように、軸方向上流側から下流側に配置された複数の冷却孔列90(91、92、93、94)を比較した場合、軸方向下流側に向かうと共に、各冷却孔列91、92、93、94を形成する複数の冷却孔89の群が延びる方向は、第1開口中心線OL1及び第2開口中心線OL2が延伸する方向と一致し、軸方向下流側に向かうと共に、軸方向に対する傾斜が大きくなり、軸方向線ALに対する傾きが小さくなる。また、冷却孔列90の冷却孔89の冷却孔中心線FLを比較した場合、各冷却孔列91、92、93、94を形成する複数の冷却孔89の群の冷却孔中心線FLが延びる方向は、構成する各冷却孔89の冷却孔中心線FLが延びる方向と一致し、軸方向下流側に向かうと共に、軸方向に対する傾きが小さくなり、軸方向線ALに対する傾きが小さくなる。更に、各冷却孔列91、92、93、94の第1開口中心線OL1及び第2開口中心線OL2も、軸方向下流側に向かうと共に、軸方向に対する傾斜が大きくなり、軸方向線ALに対する傾きが小さくなる。
【0039】
例えば、最も軸方向上流側に配置された第1冷却孔列91は、翼面41に最も接近する冷却孔91aを基準にして、前縁端部64又は負圧面側端部66に向かって、同一の間隔及び同一の冷却孔中心線FLの軸方向に対する傾きを備えた5つの冷却孔91a、91b、91c、91d、91eで構成されている。一方、第1冷却孔列91に対して軸方向下流側に隣接して配置された第2冷却孔列92は、翼面41に最も接近する冷却孔92aを基準にして、負圧面側端部66に向かって、同一の間隔及び同一の冷却孔中心線FLの軸方向に対する傾きを備えた5つの冷却孔92a、92b、92c、92d、92eで構成されている。また、第1冷却孔列91の第1開口中心線OL1は、後述する燃焼ガスGの等圧線IBL1に平行に配置され、第2冷却孔列92の第1開口中心線OL1は、燃焼ガスGの等圧線IBL2に平行に配置されている。
【0040】
第1冷却孔列91と第2冷却孔列92を比較した場合、第2冷却孔列92の第1開口中心線OL1は、第1冷却孔列91の第1開口中心線OL1より軸方向に対する傾斜が大きくなり、軸方向線ALに対する傾きが小さくなる。また、第2冷却孔列92の冷却孔中心線FLは、第1冷却孔列91の冷却孔中心線FLより軸方向に対する傾斜が大きくなり、軸方向線ALに対する傾きが小さくなる。
すなわち、後述する燃焼ガスGの等圧線IBLは、軸方向下流側に向かい、且つ、負圧面側端部66に接近すると共に、軸方向に対する傾斜が大きく、軸方向線ALに対する傾きが小さくなる。一方、各冷却孔列91、92、93、94の開口中心線(第1開口中心線OL1)は、燃焼ガスGの等圧線IBLに平行に配置することが望ましい。従って、各冷却孔列91、92、93、94の延在する方向である開口中心線OL及び冷却孔中心線FLは、燃焼ガスGの等圧線IBLの軸方向線ALに対する傾きの変化と共に、各冷却孔列91、92、93、94の開口中心線(第1開口中心線OL1)の軸方向線ALに対する傾きを変えることが望ましい。すなわち、各冷却孔列91、92、93、94の開口中心線OL及び冷却孔中心線FLは、軸方向下流側に向かうと共に、軸方向線ALに対する傾きは次第に小さくなる。ここで、冷却孔列90を構成する複数の冷却孔89の開口中心線OL(第1開口中心線OL1、第2開口中心線OL2)又は冷却孔中心線FLの軸方向線ALに対する傾き又は角度とは、前縁42を通り軸方向に延伸する軸方向線ALに対して、開口中心線OL又は冷却孔中心線FLと軸方向線ALとが交差する位置より軸方向下流側の位置から開口中心線OL又は冷却孔中心線FLを見た場合、反時計廻りの方向に軸方向線ALと開口中心線OL又は冷却孔中心線FLがなす傾き又は角度を意味する。
【0041】
それぞれの冷却孔列90を構成する複数の冷却孔89の数及び配置は、シュラウド60のガスパス面71のメタル温度等を勘案して選定される。
図5に示す実施形態は、負圧面側前縁キャビティ81に、4つの冷却孔列90(第1冷却孔列91、第2冷却孔列92、第3冷却孔列93、第4冷却孔列94)を軸方向上流側から下流方向に所定間隔を空けて配置した態様である。冷却孔列90は、4つの冷却孔列90の例に限らず、3つ以下でも良いし、5つ以上の冷却孔列90の配置でもよい。また、
図5に示す各冷却孔列91、92、93、94を構成する冷却孔89の数は、一例であって、例えば、第1冷却孔列91及び第2冷却孔列92を構成する冷却孔89の数は、5つ以上であっても良いし、4つ以下であってもよい。
第3冷却孔列93及び第4冷却孔列94の冷却孔89の数は、3つ以上を配置してもよい。
【0042】
次に、ガスパス面71に形成される冷却孔89の配置と燃焼ガス流路47を流れる燃焼ガスGの圧力分布との関係を以下に説明する。
図5には、シュラウド60の負圧面44側の前縁42のガスパス面71を流れる燃焼ガスGの圧力分布の一部が示されている。燃焼ガスGの圧力(静圧)の等圧線IBLは、鎖線で示されている。タービン静翼24に流入する燃焼ガスGは、前縁42から後縁43までの負圧面44側及び正圧面45側の燃焼ガス流路47を流れる過程で、圧力が低下する。燃焼ガスGの等圧線IBLは、例えば、タービン静翼24の負圧面44側の翼面41を起点Xaとし、周方向に隣接する図示していないタービン静翼24の正圧面45側の翼面41を終点とする緩やかな曲線で描かれる。
ここで、等圧線IBLとは、燃焼ガス流路47を流れる燃焼ガスGの圧力(静圧)が同じ圧力を示す位置を繋ぐ曲線を意味する。
【0043】
燃焼ガスGの等圧線IBLの一例として
図5に示される等圧線IBL1は、翼体40の翼面41上の起点Xaと負圧面側端部66の端面に配置された中間点Xbを結び、鎖線で示された緩やかな曲線で示される。等圧線IBL1は、等圧線の全長の一部を示したものであり、図示されていないが、中間点Xbから更に隣接するタービン静翼24の正圧面45側の翼面41まで延びる曲線である。燃焼ガスGの圧力(静圧)は、ガスパス面71の軸方向下流側に向かうと共に低下する。起点Xaから中間点Xbに向かう等圧線IBL1は、軸方向下流側へ向かい、且つ、翼面41から離間し、負圧面側端部66に接近すると共に、軸方向に対する傾斜が大きく、軸方向線ALに対する傾きが小さくなる。
図5において、等圧線IBL1と、等圧線IBL1より軸方向下流側に形成された等圧線IBL2を比較した場合、等圧線IBL1より等圧線IBL2の圧力(静圧)が低下している。また、ガスパス面71の燃焼ガスGの流れが、軸方向下流側へ向かい、負圧面側端部66に接近すると共に、等圧線IBL1と等圧線IBL2の間の軸方向の間隔が拡大する。この等圧線IBLの軸方向の間隔が広がる傾向は、翼面41の起点Xa近傍での軸方向の間隔は小さく、翼面41から離間すると共に次第に軸方向の間隔が広がり、中間点Xbの近傍で最も広くなる。等圧線IBLの軸方向に対する傾きは、翼面41の近傍での変化は大きいが、翼面41から離れる共に負圧面側端部66の中間点Xbまでの間の変化は小さい。
【0044】
図5において、複数の冷却孔列90の内の最も軸方向上流側の前縁端部64に接近して配置されている第1冷却孔列91を一例に、冷却孔列90の配置と燃焼ガスGの等圧線IBLとの関係を説明する。第1冷却孔列91は、5つの冷却孔89(91a、91b、91c、91d、91e)の群で構成され、翼面41に接近する位置から等間隔に負圧面側端部66の方向に配列されている。第1冷却孔列91近傍の燃焼ガスGの等圧線IBLの一例として等圧線IBL1を挙げることが出来る。等圧線IBL1は、翼体40の前縁42側の負圧面44側の翼面41上の起点Xaから負圧面側端部66の端面上の中間点Xbまで緩やかな曲線を描いて形成されている。
【0045】
一方、第1冷却孔列91の複数の冷却孔89の配置は、第1冷却孔列91の複数の冷却孔89の出口開口89bを結ぶ第1開口中心線OL1が、等圧線IBL1と大略平行になるように設定されている。但し、等圧線IBL1は緩やかな曲線を描くため、冷却孔89の開口中心線OL(第1開口中心線OL1)を厳密に等圧線IBL1に平行に配置するには、開口中心線OLも直線ではなく、曲線にすることが望ましい。しかしながら、冷却孔89は、機械加工又は放電加工で形成するため、加工作業の簡略化の点から、第1開口中心線OL1が直線となるように、複数の冷却孔89を配置することが望ましい。従って、
図5において、翼体40の前縁42側の翼面41上の起点Xaから負圧面側端部66の中間点Xbまで延びる等圧線IBL1に対して、その近傍に配置された第1冷却孔列91の複数の冷却孔89の第1開口中心線OL1は、最も翼面41側に接近して配置された冷却孔91aと翼面41から負圧面側端部66の方向に隣接する冷却孔91bの2つの冷却孔89を選定し、冷却孔91aと冷却孔91bの出口開口89bの中心を結び、等圧線IBL1に沿って平行に伸びる直線状の第1開口中心線OL1を選定することが望ましい。
【0046】
上記の説明は、翼面41に最も近い冷却孔91aと隣接する冷却孔91bを選択したが、同一の冷却孔列90の隣接する他の2つの冷却孔89の組合せを選択してもよい。すなわち、同一の第1冷却孔列91を構成する他の冷却孔89の組合せである冷却孔91d及び冷却孔91eから定まる第1開口中心線OL1が、等圧線IBL1に平行になるように第1冷却孔列91の冷却孔89の配置を選定してもよい。同一の冷却孔列90の隣接する2つの冷却孔89の出口開口89bに基づき直線状の第1開口中心線OL1を簡易的に選択することは、シュラウド60の冷却性能面の改善と加工作業の簡略化の両面から望ましい選択である。この考え方は、第2開口中心線OL2の選定においても同様である。また、第2開口中心線OL2の選定の際に用いる隣接する2つの冷却孔89は、第1開口中心線OL1を選定する際に用いた2つの隣接する冷却孔89の組合せが望ましい。
【0047】
上述のように、冷却孔列90の複数の冷却孔89の配置は、シュラウド60を形成する底板69のメタル温度及熱応力等が許容値内に納まるように選定する。また、冷却孔89及び冷却孔列90の軸方向に対する傾きの選定は、ガスパス面71を流れる燃焼ガスGの等圧線IBLとの関係を考慮しつつ選定することが望ましい。上述のように、シュラウド60の冷却構造は、衝突板85によるインピンジメント冷却と底板69の冷却孔89によるフィルム冷却の組合せからなり、その2つの組合せを適用することにより、シュラウド60の底板69の燃焼ガスGからの熱損傷が抑制されている。
図4に示すように、外部からシュラウド60に供給された冷却空気Acは、外側キャビティ82に供給され、衝突板85に形成された貫通孔86を介して内側キャビティ83に供給される。冷却空気Acは、衝突板85の貫通孔86を通る過程で減圧される。また、冷却空気Acは、貫通孔86から内側キャビティ83に流入する過程で噴流となり、床板69の内表面70に衝突し、内表面70をインピンジメント冷却(衝突冷却)する。内表面70をインピンジメント冷却後の冷却空気Acは、底板69に形成された冷却孔89からガスパス面71側の燃焼ガス流路47に排出する過程で、ガスパス面71をフィルム冷却している。
【0048】
負圧面側前縁キャビティ81に配置された冷却孔列90の冷却孔89の配置が、シュラウド60の冷却に影響を与える特徴的な要素は、冷却孔89によるフィルム冷却である。上述のように、タービン静翼24の燃焼ガス流路47に流入した燃焼ガスGは、シュラウド60のガスパス面71を軸方向下流側に流下する過程で、等圧線IBLの変化に示すように圧力(静圧)が低下する。一方、シュラウド60の内側キャビティ83から冷却孔89を介して燃焼ガス流路47中に排出される冷却空気量は、冷却孔89の入口開口89aと出口開口89bとの差圧、つまり、冷却孔89の内側キャビティ83と燃焼ガス流路47の差圧(圧力差)に左右される。
燃焼ガスGがガスパス面71を流れる過程における燃焼ガスGの圧力降下の違いにより、冷却孔列90の冷却孔89を流れる冷却空気量に違いが生ずる。冷却孔89の上流側の入口開口89aが接続する内側キャビティ83は、同一の空間内である限り、同一の圧力が維持される。一方、冷却孔89の下流側の出口開口89bが接続するガスパス面71側の燃焼ガスGの圧力は、軸方向下流側に向かうと共に低下する。従って、冷却孔列90の複数の冷却孔89の配置によっては、同一の冷却孔列90を構成する複数の冷却孔89の中でも、冷却孔89の差圧(圧力差)の違いが発生し、排出する冷却空気量のばらつきを生ずる可能性がある。冷却孔列90を構成する複数の冷却孔89の冷却空気量のばらつきは、不均一なフィルム冷却を生じ、底板69の不均一なメタル温度分布を生ずる原因になる。この点を改善するため、同一の冷却孔列90を構成する複数の冷却孔89の第1開口中心線OL1が、各冷却孔列91、92、93、94近傍の燃焼ガスGの等圧線IBLに大略平行になるように、同一の冷却孔列90の複数の冷却孔89の配置を選定することが望ましい。同一の冷却孔列90の複数の冷却孔89の配置を、冷却孔列90の第1開口中心線OL1と燃焼ガスGの等圧線IBLが大略平行となるように設定すれば、同一の冷却孔列90を構成する複数の冷却孔89は同一の差圧を維持することできる。同一の冷却孔列90の複数の冷却孔89の差圧を同一とすれば、同一の冷却孔列90の複数の冷却孔89からガスパス面71に排出される冷却空気量が均一化され、同一の冷却孔列90の複数の冷却孔89の位置から軸方向下流側のフィルム冷却が均一化される。その結果、シュラウド60のガスパス面71の温度分布が平準化され、底板69の熱損傷が抑制され、底板69の不均一な温度分布により生ずる熱応力が低減される。
【0049】
上述のように、燃焼ガスGの圧力(静圧)は、軸方向下流に向かうと共に低下するが、燃焼ガスGの等圧線IBLの軸方向の間隔は、軸方向下流に向かうと共に拡大する傾向にある。従って、等圧線IBLに平行に配置された各冷却孔列91、92、93、94の第1開口中心線OL1の軸方向の間隔も、軸方向下流に向かうと共に次第に拡大する。その結果、各冷却孔列91、92、93、94の複数の冷却孔89から軸方向下流側のガスパス面71が均一に冷却される。
【0050】
図5に示すように、燃焼ガスGの等圧線IBLは、軸方向下流側に向かい、負圧面側端部66に接近すると共に、軸方向に対する傾斜が大きくなる。従って、複数の冷却孔列90の直線状の第1開口中心線OL1の軸方向の傾きも、軸方向下流側に向かうと共に、等圧線IBLの変化に合わせて軸方向に対する傾斜が大きく、軸方向線ALに対する傾きが次第に小さくなる。その結果、
図5に示すように、複数の冷却孔列90の第1開口中心線であって、最も翼面41に接近する冷却孔89(91a、92a、93a、94a)の位置に対して負圧面端部66とは周方向の反対側の前縁42側に延びる第1開口中心線OL1は、軸方向下流側に向かうと共に、軸方向線ALに対する傾きが小さくなる。一方、前縁42の位置を中心として、前縁42の位置より軸方向上流側に形成されたフィレット部46の外縁46aに内接する破線で示す円状の前縁領域42a(第1領域)を想定した場合、複数の冷却孔列90の第1開口中心線OL1は、前縁領域42a(第1領域)を通る。別の見方をすれば、負圧面側前縁キャビティ81に形成されている複数の冷却孔89から構成される複数の冷却孔列90(91、92、93、94)は、前縁42を中心として形成された円状の前縁領域42a(第1領域)を起点として、冷却孔列90を構成する複数の冷却孔89の内の冷却孔列90が延伸する負圧面側端部66の方向に互いに隣接する少なくとも2つの冷却孔89の出口開口89bを結ぶ第1開口中心線OL1を備える。すなわち、負圧面側前縁キャビティ81に形成されている複数の冷却孔89から構成される複数の冷却孔列90の内の少なくとも1つの冷却孔列90の第1開口中心線OL1は、前縁42を中心とする前縁領域42a(第1領域)を起点とし、同一の冷却孔列90を構成する複数の冷却孔89の出口開口89bの中心を結び、負圧面側端部66まで延びる直線で形成される。かかる冷却孔列90の第1開口中心線OL1の配置が成立する理由は、負圧面側前縁キャビティ81に形成する複数の冷却孔列90が、翼体40の翼面41に沿って翼面41を囲むように放射状に配置され、各冷却孔列91、92、93、94の第1開口中心線OL1が、燃焼ガスGの等圧線IBLに平行に配置される関係を維持しつつ、軸方向線ALに対する傾きが軸方向下流側に向かうと共に小さくなることによる。
【0051】
燃焼ガスGの等圧線IBLが、本実施形態の冷却孔列90の配置に影響する特徴的な要素として、冷却孔列90の第1開口中心線OL1と等圧線IBLが平行な位置関係を有する点に加えて、前述のように、冷却孔列90の冷却孔中心線FLの軸方向に対する傾きがある。
図5に示すように、シュラウド60の前縁42側の負圧面44側のガスパス面71を流れる燃焼ガスGは、凸状の曲面を有する翼面41に沿って流れる。負圧面側前縁キャビティ81に形成されている複数の冷却孔89が配置されている領域は、軸方向上流側から下流側に向かうと共に、翼体40の翼面41が負圧面側端部66に接近し、翼面41の曲面の軸方向線ALに対する傾きが次第に小さくなる領域である。この領域においては、複数の冷却孔89の開口中心線OLが延びる方向に対して、冷却孔中心線FLは、開口中心線OLに対して直交する方向より翼面41側に傾く方向に配置されている。 また、複数の冷却孔列90の開口中心線OLは、軸方向下流側に向かうと共に、軸方向線ALに対する傾きが小さくなるので、同一の冷却孔列90の冷却孔中心線FLも、軸方向下流側に向かうと共に軸方向線ALに対する傾きが小さくなる。なお、各冷却孔列91、92、93、94の冷却孔89の冷却孔中心線FLが開口中心線OL(第1開口中心線OL1)となす傾き又は角度は、軸方向のいずれの位置でも同一の傾き又は角度に維持されることが望ましい。同一の冷却孔列90の冷却孔中心線FLの開口中心線OLに対する傾きが維持されず、冷却孔列90の軸方向の位置によって、冷却孔中心線FLが翼面41側へ過度に傾斜する場合は、冷却孔89から排出される冷却空気Acの流れが、燃焼ガスGの流れを乱すことになる。
【0052】
ここで、冷却孔列90の第1開口中心線OL1と第2開口中心線OL2の位置関係について、第1冷却孔列91を一例に挙げて説明する。上述のように、同一の冷却孔列90を構成する複数の冷却孔89の冷却孔中心線FLは、同一の長さ及び同一の傾きを備えている。従って、
図5に示すように、第1冷却孔列91の第1開口中心線OL1が、前縁領域(第1領域)42aを起点とする直線とすれば、同一の冷却孔列90の複数の冷却孔89の入口開口89aを結ぶ前縁42側に延びる第2開口中心線OL2も直線で形成される。
また、同一の第1冷却孔列91の第2開口中心線OL2は、前縁42を通る軸方向線AL上の前縁42の位置より軸方向上流側の所定位置にある上流側前縁領域(第2領域)42bを起点とする直線で形成される。ここで、上流側前縁領域(第2領域)42bとは、前縁42の位置より軸方向上流側の軸方向線AL上にあり、第1冷却孔列91の冷却孔中心線FLの軸方向長さに相当する距離にある位置を中心に、前縁領域46aと同じ半径の破線で示す円状に形成された領域を言う。
【0053】
上記の説明は、第1冷却孔列91を中心に、冷却孔89の配置とその機能、作用及び効果を説明したが、他の冷却孔列90(92、93、94)の冷却孔89の配置の選定も、上記の第1冷却孔列91の場合と同様に設定できる。但し、他の冷却孔列90の開口中心線OLが、軸方向下流側に向かうと共に、軸方向線ALに対する傾きが変化するのは、上述の通りである。従って、全ての冷却孔列90の開口中心線OLの内、少なくとも一つの冷却孔列90の第1開口中心線OL1は、前縁領域(第1領域)42aを起点とし、第2開口中心線OL2は、上流側前縁領域(第2領域)42bを起点として、前縁端部64又は負圧面側端部66の方向に延伸する。上述の冷却孔89の配置を選定することにより、負圧面側前縁キャビティ81の適切な冷却が行われ、シュラウド60の底板69の熱損傷及び熱応力の発生が抑制される。また、適正な冷却孔89の配置により、冷却空気量が低減され、ガスタービンの効率が向上する。
【0054】
《第2実施形態》
以下の説明は、シュラウド60の負圧面側前縁キャビティ81廻りの冷却構造の第2実施形態に係り、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
図6は、シュラウド60の本実施形態の平面断面を示し、
図4のB−B線に沿った平面図である。
図7は、
図6に示すシュラウド60の本実施形態の平面図の一部を示す詳細図である。
本実施形態の冷却構造は、前述のシュラウド60に形成された冷却孔列90の複数の冷却孔89の第1実施形態の構造に対して、冷却孔89の配置を変えた実施形態に関する。本実施形態を構成する冷却構造は、第1実施形態におけるインピンジメント冷却構造とフィルム冷却構造の組合せに対して、フィルム冷却構造を構成する複数の冷却孔89の配置の考え方が、第1実施形態と異なる構成である。なお、
図3及び
図4に示すインピンジメント冷却構造は、本実施形態にも適用される。
【0055】
図6に示す本実施形態の冷却孔列95は、軸方向上流側から下流側に向けて、第1冷却孔列96、第2冷却孔列97、第3冷却孔列98及び第4冷却孔列99から構成されている。それぞれの各冷却孔列96、97、98、99は、それぞれが複数の冷却孔89を備える。
図6では、本実施形態に係る複数の冷却孔列95(96、97、98、99)の複数の冷却孔89の配置を実線で示すと共に、比較のために、下記に説明する第1実施形態の変形例である複数の冷却孔列90a(91、92、93、94)の複数の冷却孔89の配置を破線で示している。
本実施形態においても、シュラウド60の負圧面側前縁キャビティ81のガスパス面71に配置された複数の冷却孔列95を構成する冷却孔列の数及び各冷却孔列96、97、98、99を構成する冷却孔89の数は、第1実施形態と同じ構成である。
【0056】
前述のように、
図5に示す第1実施形態は、複数の冷却孔列90の実線で示された複数の冷却孔89が、各冷却孔列91、92、93、94の第1開口中心線OL1近傍の燃焼ガスGの等圧線IBL1に大略平行になるように冷却孔89の配置を選定している。しかし、燃焼ガス温度の違い等の異なるガスタービンの運転条件の下では、シュラウド60のガスパス面71の高温部分が第1実施形態よりも広がり、翼面41に更に接近する位置まで冷却を強化したい場合がある。そのような場合、第1実施形態の冷却孔列90を構成する複数の冷却孔89の開口中心線OL(第1開口中心線OL1、第2開口中心線OL2)の延伸する方向は維持したまま、各冷却孔列91、92、93、94の複数の冷却孔89の群の位置を、第1実施形態よりも更に翼面41に接近させて配置したい場合がある。第1実施形態の変形例は、第1実施形態の冷却孔列90の複数の冷却孔89の配置を、更に翼面41に接近させた態様が、冷却孔列90aの冷却孔89の配置である。
【0057】
しかしながら、冷却孔89の加工は、機械加工又は放電加工により、底板69を貫通する孔加工をガスパス面71側から内側キャビティ83側に向かって行なう場合がある。そのような孔加工を行う場合、各冷却孔列90a(91、92、93、94)の最も翼面41に接近する冷却孔89の位置及びその冷却孔中心線FLの延伸する方向によっては、翼体40が障害になり、冷却孔89の加工が困難な場合がある。このような冷却孔89の加工時の翼体40との干渉を回避するため、冷却孔89の延伸する方向を幾分変更して、冷却孔89の冷却孔中心線FLの軸方向に対する傾きを修正する方が望ましい場合がある。
【0058】
上述の考え方に基づき、第1実施形態の変形例である冷却孔列90aの冷却孔89の配置と、変更後の本実施形態の冷却孔列95の複数の冷却孔89の配置が、比較して
図6に示されている。変形例の冷却孔列90aは、仮想の冷却孔列である。
図6に示された冷却孔89の配置は、第1実施形態の変形例である冷却孔列90aの複数の冷却孔89を破線で示した配置と、本実施形態の冷却孔列95(96、97、98、99)の複数の冷却孔89を実線で示した配置を比較して示した図である。
【0059】
図6及び
図7に示す第1実施形態の変形例である冷却孔列90a(91、92、93、94)は、第1実施形態の各冷却孔列91、92、93、94を構成する複数の冷却孔89の数及び各冷却孔列91、92、93、94の各群が延びる方向並びに冷却孔列90が延びる方向の冷却孔89の間隔及び冷却孔中心線FLの軸方向の傾きは維持したまま、第1実施形態の各冷却孔列91、92、93、94の冷却孔89の各群を翼面41側に移動した配置である。従って、第1実施形態の変形例を構成する各冷却孔列90a(91、92、93、94)の開口中心線OL(第1開口中心線OL1、第2開口中心線OL2)の位置及び延伸する方向は、第1実施形態と同じである。また、変形例を構成する各冷却孔列90a(91、92、93、94)の複数の冷却孔89の冷却孔中心線FLの軸方向に対する傾き及び冷却孔列90a(91、92、93、94)の各群が延在する方向の冷却孔89の間隔並びに冷却孔中心線FLの開口中心線OLに対する傾きも、第1実施形態と同じである。
【0060】
図6及び
図7を参照しながら、第1実施形態の変形例である冷却孔列90aの冷却孔89の配置を本実施形態の冷却孔列95の冷却孔89の配置に変更する考え方を説明する。上述のように、第1実施形態の変形例を示す各冷却孔列90a(91、92、93、94)の最も翼面41に接近する冷却孔89(91aa、92aa、93aa、94a)は、冷却孔89の孔加工の際、翼体40との干渉を回避するため、冷却孔89の軸方向に対する傾きを修正することが望ましい。但し、第4冷却孔列94は、冷却孔列90aの中で最も軸方向の下流側に配置され、冷却孔中心線FLの軸方向線ALに対する傾きが、軸方向上流側の他の冷却孔89(91aa、92aa、93aa)より小さく、翼体40との干渉の可能性が小さい。従って、第4冷却孔列94の翼面41に最も近い冷却孔94aの傾きは変更せずに、変形例の冷却孔94aの配置を維持している。
【0061】
一方、変形例の他の冷却孔列90a(91、92、93)の最も翼面41に接近する冷却孔89は、加工時の翼体40との干渉を避けるため、変形例の冷却孔列90aの第1冷却孔列91の冷却孔91aa、第2冷却孔列92の冷却孔92aa、第3冷却孔93の冷却孔93aaの軸方向に対する傾きを変更している。このような手順で、翼面41に最も接近する冷却孔89の位置を変更した後の冷却孔89の配置が、本実施形態の各冷却孔列95(96、97、98、99)の最も翼面41に接近させた冷却孔89(96a、97a、98a、99a)である。なお、本実施形態の第4冷却孔列99の冷却孔99aは、第1実施形態の変形例の冷却孔列90aの第4冷却孔列94の冷却孔94aと同じ配置になり、位置の変更はない。
図6に示す本実施形態の第4冷却孔列99の構成は、変形例の冷却孔列90aの第4冷却孔列94と同じ構成であるため、構成する冷却孔89の符号は、本実施形態の翼面41に最も接近する冷却孔99aと、最も翼面41から離れた冷却孔99cのみを表示し、変形例の冷却孔89の符号の表示は省略している。
【0062】
次に、本実施形態の冷却孔列95の最も翼面41に接近する冷却孔89(96a、97a、98a、99a)の位置を設定した後、各冷却孔列96、97、98、99の翼面41から離れる方向に配置する他の冷却孔89の位置を選定する。その場合、各冷却孔列96、97、98、99を構成する冷却孔89は、配置を変更後の最も翼面41に接近する冷却孔89(96a、97a、98a、99a)を基準に、冷却孔89(96a、97a、98a、99a)と同じ軸方向に対する傾きを備え、第1実施形態の変形例の冷却孔列90aの冷却孔89と同一の間隔及び同一の冷却孔中心線FLの傾き及び間隔で配置され、前縁端部64又は負圧面側端部66に向かって翼面41から離れる方向に形成される。
【0063】
次に、各冷却孔列96、97、98、99が延在する方向は、第1実施形態の各冷却孔列91、92、93、94が延在する方向、すなわち、変形例の各冷却孔列90a(91、92、93、94)の開口中心線OL(第1開口中心線OL1、第2開口中心線OL2)が延伸する方向と同じ方向とせずに、第1実施形態の各冷却孔列91、92、93、94より軸方向上流側であって、軸方向に対する傾きが大きく、軸方向線ALに対する傾き角が大きくなる配列とすることが望ましい。本実施形態の各冷却孔列96、97、98、99の冷却孔89の開口中心線OL(第1開口中心線OL1、第2開口中心線OL2)を、第1実施形態の各冷却孔列91、92、93、94の開口中心線OLと同一の方向に延在させた場合、開口中心線OLに対する冷却孔中心線FLの傾きが、第1実施形態の冷却孔中心線FLの傾きより更に翼面41側に傾斜させることになり、過度に傾斜された冷却孔89から排出される冷却空気の流れが、翼面41に沿って流れる燃焼ガスGの流れを乱すことになるからである。
【0064】
一方、本実施形態の各冷却孔列96、97、98、99の冷却孔89の配置を、第1実施形態の各冷却孔列91、92、93、94の冷却孔89の位置より軸方向上流側であって、軸方向に対する傾きが大きくなる配列とする場合、第1実施形態の冷却孔列90の開口中心線OLに対して、開口中心線OLの近傍の燃焼ガスGの等圧線IBLが延伸する方向より軸方向上流側に離れ、開口中心線OLと等圧線IBLの平行関係が幾分崩れる。しかし、等圧線IBLより更に軸方向上流側の他の等圧線IBLに大略平行に開口中心線OLが形成されるため、各冷却孔列ごとの冷却孔89から排出される冷却空気量の変動は小さく抑えられる。上記の冷却孔89の配置の変更の考え方に基づき、本実施形態の冷却孔列95(96、97、98、99(94))の冷却孔89の配置が選定される。なお、第4冷却孔列99は、第1実施形態の変形例の第4冷却孔列94と同じ配置であり、変更する必要はない。なお、本実施形態の冷却孔列95の開口中心線OLは、
図7において、冷却孔列96、97の第1開口中心線OL1及び第2開口中心線OL2が示されている。冷却孔列98、99の開口中心線OLは、
図6において、第1開口中心線OL1のみが表示されている。冷却孔列98、99の第2開口中心線OL2は、他の冷却孔列と同様に、第1開口中心線OL1と平行し、冷却孔89の入口開口89aの中心を繋ぎ、中間前縁領域42dを起点に負圧面側端部66まで延びる直線と考えてよい。
【0065】
次に、
図7を参照しつつ、本実施形態の冷却孔列95の配置及び配置変更の具体的な考え方を以下に説明する。
図7は、
図6に示す本実施形態の冷却孔列95の内の第1冷却孔列96及び第2冷却孔列97の組合せと、第1実施形態の変形例の冷却孔列90aの第1冷却孔列91及び第2冷却孔列92の組合せを抜粋して、冷却孔89の配置を比較して示した詳細図である。第1実施形態の変形例の冷却孔列90aの第1冷却孔列91は、複数の冷却孔89(91aa、91bb,91cc、91dd,91ee)で構成され、第2冷却孔列92は、複数の冷却孔89(92aa、92bb,92cc、92dd,92ee)で構成されている。本実施形態の第1冷却孔列96は、複数の冷却孔89(96a、96b、96c、96d、96e)で構成され、第2冷却孔列97は、複数の冷却孔89(97a、97b、97c、97d、97e)で構成されている。
【0066】
第1実施形態の変形例である冷却孔列90aの第1冷却孔列91の冷却孔89(91aa、91bb,91cc、91dd,91ee)を例に挙げて、冷却孔89の配置の変更の具体的な考え方を説明する。上述のように、冷却孔89を孔加工する際の翼体40との干渉を回避する必要性があるのは、最も翼面41に接近する冷却孔91aaである。
図7に示すように、冷却孔91aaの孔加工時の翼体40との干渉を回避するためには、冷却孔91aaの出口開口89bの位置を中心にして、冷却孔91aaの軸方向に対する傾きが、更に翼面41に接近する側の反時計回りの方向に角度α1だけ回転させた変更をすることが望ましい。変更後の新たな冷却孔89の位置が、本実施形態の冷却孔列95の第1冷却孔列96の最も翼面に接近する実線で表示された冷却孔96aの位置に相当する。
【0067】
本実施形態における第1冷却孔列96を構成する複数の冷却孔89の群の配置は、上述の配置の修正方法に基づき変更された最も翼面41に近い冷却孔96aの位置を基準にして、翼面41側から前縁端部64の方向に、冷却孔96aと同じ軸方向に対する傾きと、第1実施形態と同じ冷却孔89の間隔を維持して配置される。第1冷却孔列96が延在する方向は、燃焼ガスGの等圧線IBL1が延伸する方向より軸方向上流側の等圧線IBL1から離れた方向である。この方向は、第1開口中心線OL1と等圧線IBL1が平行関係を有する方向からは幾分外れるが、第1開口中心線OL1は等圧線IBL1より軸方向上流側の等圧線IBL3に大略平行に形成される。また、第1冷却孔列96の冷却孔中心線FLの開口中心線OL(第1開口中心線OL1)に対する傾き(角度)は、第1実施形態の第1冷却孔列91の冷却孔中心線FLの開口中心線OL(第1開口中心線OL1)に対する傾きと同一とすることが望ましい。
【0068】
本実施形態の第1冷却孔列96が延在する方向を、変形例の冷却孔列90aの第1冷却孔列91の第1開口中心線OL1が延伸する方向と同じとせずに、第1冷却孔列91より軸方向上流側であって、軸方向に対する傾きが大きくなる方向の配列とし、第1実施形態の第1冷却孔列91の冷却孔中心線FLの開口中心線OL(第1開口中心線OL1)に対する傾きと同一とする理由は、上述のように、冷却孔89の冷却孔中心線FLの開口中心線OLに対する傾きを同一に維持して、翼面41側へ過度に傾斜された冷却孔89から排出される冷却空気の流れが、燃焼ガスGの流れを乱すことを回避するためである。
【0069】
本実施態の第1冷却孔列96を構成する冷却孔89(96a、96b、96c、96d、96e)の数は、第1実施形態と同様である。本実施形態における第1冷却孔列96を構成する冷却孔89の群は、第1実施形態の第1冷却孔列91と比較して、軸方向に対する傾きが大きくなる方向に配置され、軸方向上流側の前縁端部64に接近する側に形成される。
【0070】
次に、第1実施形態の変形例の第1冷却孔列91の軸方向下流側に隣接して配置された第2冷却孔列92の冷却孔89の配置の変更の考え方も、第1冷却孔列91と同様である。変形例の冷却孔列90aの第2冷却孔列92の冷却孔89(92aa、92bb,92cc、92dd,92ee)を孔加工する際の翼体40との干渉を回避する必要性があるのは、最も翼面41に接近する冷却孔92aaである。
図7に示すように、冷却孔92aaの孔加工時の翼体40との干渉を回避するためには、冷却孔92aaの出口開口89bの位置を中心にして、冷却孔92aaの軸方向に対する傾きが、更に翼面41に接近する側に角度α2だけ回転させた方向に変更することが望ましい。変更後の新たな冷却孔89の位置が、本実施形態の第2冷却孔列97の最も翼面に接近する実線で表示された冷却孔97aの位置に相当する。本実施形態における第2冷却孔列97を構成する冷却孔89の配置は、上述の設定された冷却孔97aの位置を基準にして、翼面41側から負圧面側端部66の方向に、冷却孔97aと同じ軸方向に対する傾きと、第1実施形態と同じ冷却孔89の間隔を維持して配置されている。第2冷却孔列97を構成する冷却孔89(97a、97b、97c、97d、97e)の数は、第1実施形態と同様である。本実施形態における第2冷却孔列97は、第1実施形態の第2冷却孔列92と比較して、軸方向に対する傾きが大きくなる方向に配置され、軸方向上流側で前縁端部64に接近する側に形成される。なお、本実施形態の第1冷却孔列96と同様に、第2冷却孔列97においても、冷却孔中心線FLの開口中心線OL(第1開口中心線OL1)に対する傾きは、第1実施形態の第2冷却孔列92の冷却孔中心線FLの開口中心線OL(第1開口中心線OL1)に対する傾きと同一とすることが望ましい。
【0071】
第1実施形態の変形例の第3冷却孔列93及び第4冷却孔列94の配置を修正して、本実施形態の第3冷却孔列98及び第4冷却孔列99の冷却孔89の配置を選定する考え方も、上述の考え方と同様である。但し、本実施形態の第4冷却孔列99の配置は、変形例の第4冷却孔列94と同じ配置が維持され、修正の必要がない。なお、本実施形態の各冷却孔列96、97、98、99を構成する冷却孔89の数及び冷却孔列の数は、ガスタービンの運転条件によっては、第1実施形態と異なる数であってもよい。
【0072】
上述のように、第1実施形態の変形例の冷却孔列90aの冷却孔89の配置を変更して、本実施形態の冷却孔列95の冷却孔89の配置を選定する際、最も翼面41に接近する冷却孔89の出口開口89bの位置を中心に反時計方向に回転させて新たな冷却孔列95の複数の冷却孔89の配置を決定する。冷却孔89の配置を反時計方向に回転させることで、第1実施形態の冷却孔列90の第1開口中心線OL1と等圧線IBLの平行関係が崩れるが、配置変更後の本実施形態の冷却孔列95の第1開口中心線OL1と上流側の他の等圧線IBLとの平行関係が維持されるので、各冷却孔列96、97、98、99の冷却孔89から排出される冷却空気量は均一化され、冷却空気量の変動は小さい。
【0073】
また、第1実施形態の冷却孔列90と同様に、本実施形態の冷却孔列95においても、冷却孔列95を構成する複数の冷却孔89の冷却孔中心線FLの開口中心線OL(第1開口中心線OL1、第2開口中心線OL2)に対する傾きは、軸方向のいずれの位置においても、同一とすることが望ましい。軸方向の冷却孔列95の位置の違いで、冷却孔中心線FLの開口中心線OLに対する傾きを変えると、冷却孔中心線FLを翼面41側に過度に傾けたり、反翼面41側に過度に傾けることになり、冷却孔89から排出される冷却空気Acの流れが、燃焼ガスGの流れを乱すことになり、望ましくないからである。
【0074】
上述のように、本実施形態の冷却孔列95の冷却孔89の配置は、第1実施形態の変形例の冷却孔列90aの冷却孔89の配置に基づき、変形例の各冷却孔列90a(91、92、93、94の最も翼面41に接近する冷却孔89(91aa、92aa,93aa、94aa)の出口開口89bの位置を中心にして、各冷却孔列90a(91、92、93、94)の群を反時計方向に回転させて本実施形態の各冷却孔列96、97、98、99の配置を選定している。なお、各冷却孔列96、97、98、99の反時計回りの方向に回転させる角度は、軸方向下流側の冷却孔列95ほど小さくなる。その結果、最も翼面41に接近する冷却孔89の出口開口89b又は入口開口89aを通る本実施形態の各冷却孔列96、97、98、99の開口中心線OL(第1開口中心線OL1、第2開口中心線OL2)は、変形例の各冷却孔列90a(91、92、93、94)の開口中心線OLより、軸方向に対する傾きが大きく、軸方向線ALに対する傾きが大きくなる。また、各冷却孔列96、97、98、99の開口中心線OL(第1開口中心線OL1、第2開口中心線OL2)が、その延伸する方向の負圧面側端部66とは周方向の反対側の翼体40の前縁42側の軸方向線ALと交差する点Y1、Y2は、変形例の各冷却孔列90a(91、92、93、94)の開口中心線OL(第1開口中心線OL1、第2開口中心線OL2)が軸方向線ALと交差する点Y3,Y4より、後縁43側に配置される。なお、点Y3は、前縁42と一致する。
【0075】
第1実施形態の各冷却孔列91、92、93、94の開口中心線OLが軸方向線ALと交差する位置は、第1実施形態の変形例の各冷却孔列90a(91、92、93、94)の開口中心線OL(第1開口中心線OL1、第2開口中心線OL2)が軸方向線ALと交差する位置である点Y3、Y4と一致するので、本実施形態の各冷却孔列96、97、98、99の冷却孔89の開口中心線OL(第1開口中心線OL1、第2開口中心線OL2)が軸方向線ALと交差する位置である点Y1、Y2は、第1実施形態の冷却孔列90の開口中心線OLが交差する位置より後縁43側に配置される。なお、第1実施形態の冷却孔列90の第1開口中心線OL1が軸方向線ALと交差する位置である点Y3は、前縁42の位置と一致するので、本実施形態の冷却孔列95の第1開口中心線OL1が軸方向線ALと交差する位置である点Y1は、前縁42の位置より後縁43側に配置される。
【0076】
本実施形態の冷却孔列95の第1開口中心線OL1の内の少なくとも2つの冷却孔列の第1開口中心線OL1が軸方向線ALと交差する点Y1は、前縁42より後縁43側の翼体前縁キャビティ52内の下流側前縁領域42c(第3領域)内に配置される。従って、本実施形態の冷却孔列95の第1開口中心線OL1は、前縁42より軸方向下流側の下流側前縁領域42cを起点として、冷却孔列95を構成する少なくとも2つの隣接する冷却孔89の出口開口89bの中心を結び、前縁端部64又は負圧面側端部66まで延びる直線で形成されている。
ここで、下流側前縁領域42cとは、軸方向線AL上に配置され、前縁領域42aと同一の半径を有する円状の領域を意味する。
【0077】
次に、冷却孔列95の第2開口中心線OL2は、第1開口中心線OL1と平行に、第1開口中心線OL1より冷却孔89の長さだけ離して軸方向上流側に配置されている。従って、冷却孔列95の第2開口中心線OL2の内の少なくとも2つの冷却孔列の第2開口中心線OL2が軸方向線ALと交差する点Y2は、第1開口中心線OL1が軸方向線ALと交差する点YIの位置より前縁42側であって、翼体前縁キャビティ52内の中間前縁領域42d(第4領域)内に配置される。ここで、中間前縁領域42dとは、軸方向線AL上に配置され、前縁領域42aと同一の半径を有する円状の領域であって、前縁領域42aと下流側前縁領域42cの間に配置される。
【0078】
冷却孔列95の内の少なくとも2つの冷却孔列の第2開口中心線OL2は、下流側前縁領域42cの中心位置より冷却孔89の長さだけ軸方向上流側の位置に形成された円状の中間前縁領域42dを起点として、第1開口中心線OL1に平行に、冷却孔列95を構成する少なくとも2つの隣接する冷却孔89の入口開口89aの中心を結び、前縁端部64又は負圧面側端部66まで延びる直線で形成される。なお、第2開口中心線OL2を形成する少なくとも2つの隣接する冷却孔89は、第1開口中心線OL1を選定する際の同じ冷却孔89の組合せとすることが望ましい。
なお、下流側前縁領域42c及び中間前縁領域42dが配置される中心位置である点Y1及びY2の位置は、第1実施形態の変形例の冷却孔列90aの配置を本実施形態の冷却孔列95に変更する際の冷却孔中心線FLの傾き角αによって変動する。
【0079】
上述の本実施形態の冷却孔列95の冷却構造によれば、第1実施形態の冷却孔列90の冷却構造と比較して翼面41に更に接近する位置に複数の冷却孔89からなる群を配置して、シュラウド60のガスパス面71の熱損傷及び熱応力の発生を抑制し、ガスパス面71が適正に冷却される。また、冷却空気量も低減され、ガスタービンの効率も向上する。
【0080】
《第3実施形態》
上述の第1実施形態及び第2実施形態に示すタービン静翼24の冷却方法の手順について、
図9に基づき説明する。
図9に示すように、タービン静翼24の翼体40の負圧面側前縁キャビティ81の冷却方法は、シュラウド60の外側キャビティ82に冷却空気Acを供給する工程S1と、冷却空気Acを衝突板85の貫通孔86で減圧し、内側キャビティ83に冷却空気Acを供給する工程S2と、冷却空気で底板69をインピンジメント冷却する工程S3と、冷却空気で底板69のガスパス面71をフィルム冷却する工程S4と、を含んでいる。
【0081】
シュラウド60の負圧面側前縁キャビティ81の外側キャビティ82に冷却空気Acを供給する工程S1では、冷却空気Acは、タービン静翼24の外部のケーシング20又はタービン車室22からシュラウド60に供給される(S1)。
【0082】
冷却空気Acを衝突板85の貫通孔86で減圧する工程S2では、衝突板85に形成された複数の貫通孔86を介して内側キャビティ83に排出する過程で、内側キャビティ83の圧力が減圧される(S2)。
【0083】
冷却空気Acで底板69をインピンジメント冷却する工程S3では、衝突板85の複数の貫通孔86を介して内側キャビティ83に噴出した冷却空気Acは、底板69の内表面70に衝突して、内表面70をインピンジメント冷却(衝突冷却)する(S3)。
【0084】
冷却空気Acで底板69をフィルム冷却する工程S4では、底板69の内表面70をインピンジメント冷却した後の冷却空気Acを、底板69に形成された複数の冷却孔89に供給し、冷却孔89の出口開口89bから燃焼ガス流路47に排出する過程で、シュラウド60の底板69のガスパス面71をフィルム冷却している(S4)。なお、上述のように、複数の冷却孔89の冷却孔列90、95の第1開口中心線OL1は、燃焼ガスGの等圧線IBLに沿って平行に配置される。従って、冷却孔列90、95を構成する複数の冷却孔89の各群の上流側が入口開口89aを介して接続する内側キャビティ83と、下流側の出口開口89bを介して接続する燃焼ガス流路47と、の間の差圧(圧力差)が略同一になり、冷却孔列90、95を構成する複数の冷却孔89の各群から排出される冷却空気量が、同一の流量に均一化される。
【0085】
本実施形態のタービン静翼24の冷却方法によれば、底板69に形成された複数の冷却孔89の冷却孔列90、95の第1開口中心線OL1を、燃焼ガスGの等圧線IBLに沿って平行に配置して、内側キャビティ83の内圧変動を安定させている。また、複数の冷却孔89の冷却孔列90、95の第1開口中心線OL1は、燃焼ガスGの等圧線IBLに沿って平行に配置することにより、冷却孔列90、95の複数の冷却孔89の上流側が接続する内側キャビティ83と、下流側が接続する燃焼ガス流路47の差圧(圧力差)を略同一の差圧となるように冷却孔89の配置を選定している。その結果、冷却孔列90、95の複数の冷却孔89から排出される冷却空気量が、一定化され、均一化される。従って、冷却孔89からの過剰な冷却空気量の排出が抑制され、冷却空気量の低減が可能になる。また、冷却孔列90、95の冷却孔89から排出される冷却空気量を均一化させて、底板69のメタル温度の分布を均一化して、シュラウド60の底板69の熱応力の発生が抑制される。
【0086】
上述の実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0087】
上記の各実施形態に記載の内容は、以下のように把握される。
(1)第1の態様に係るタービン静翼は、翼体と、前記翼体の翼高さ方向の端部に形成されたシュラウドと、前記翼体と前記シュラウドを接合するフィレット部と、を備えるタービン静翼であって、前記シュラウドは、燃焼ガス流路に接する底板と、前記底板の周縁に沿って前記翼高さ方向に延びる周壁と、前記周壁と前記底板に囲まれた空間を形成する凹部と、を含み、前記周壁は、前記翼体の前縁側に延在する前縁端部と、前記翼体の負圧面側の前縁から後縁に延びる負圧面側端部と、を含み、前記シュラウドは、前記シュラウドの負圧面側前縁領域に形成され、前記底板に形成された複数の前記冷却孔を備え、前記複数の冷却孔は、第1端が前記底板に形成された入口開口に接続し、第2端が前記底板のガスパス面に形成されて前記入口開口より軸方向下流側に形成された出口開口に接続し、前記翼体の翼面から周方向の前記前縁端部又は前記負圧面側端部に向けて所定間隔をあけて配置され、前記入口開口と前記出口開口を結ぶ冷却孔中心線の軸方向に対する傾きが同一に維持され、前記複数の冷却孔の前記出口開口の中心を結ぶ直線状の第1開口中心線と、前記冷却孔の前記入口開口の中心を結ぶ直線状の第2開口中心線と、が互いに平行に形成された一組の冷却孔列を形成し、前記冷却孔列が、軸方向上流側から下流側に向けて前記翼面に沿って複数配置され、前記複数の冷却孔列の前記冷却孔の前記冷却孔中心線の傾きが、軸方向下流側に向かうと共に小さくなる。
【0088】
上記(1)に記載のタービン静翼によれば、シュラウドの負圧面側前縁領域に翼面に沿って複数の冷却孔列を配置し、複数の冷却孔列の冷却孔中心線の軸方向に対する傾きが、軸方向下流側に向かうと共に小さくなっている。一方、ガスパス面を流れる燃焼ガスは、翼面に沿って軸方向下流側に流れ、燃焼ガスの等圧線の軸方向に対する傾きは、翼面に沿って軸方向下流側に向かうと共に小さくなる。
従って、等圧線の軸方向に対する傾きが小さくなると共に、各冷却孔列の冷却孔中心線の傾きも翼面に沿って軸方向下流側に向けて小さくなり、各冷却孔列は、燃焼ガスの等圧線に平行に形成されている。従って、各冷却孔列の冷却孔から排出される冷却空気量が均一化され、ガスパス面が適正に冷却され、冷却空気量も低減される。
また、冷却孔から排出される冷却空気の流れも燃焼ガスの流れ方向に沿って排出され、燃焼ガス流を乱さない。従って、ガスタービンの空力性能への影響が抑制される。
【0089】
(2)第2の態様に係るタービン静翼は、前記シュラウドは、前記翼体の前縁を中心に前記フィレット部の外縁に内接し円状に形成された第1領域を備え、前記第1開口中心線が、前記第1領域を起点に延伸する、
【0090】
上記(2)に記載のタービン静翼によれば、冷却孔列を構成する複数の冷却孔の第1開口中心線が、第1領域を起点に延伸するので、燃焼ガスの等圧線に略平行に形成され、冷却孔列から排出される冷却空気量が均一化される。
【0091】
(3)第3の態様に係るタービン静翼は、前記シュラウドは、前記翼体の内部に形成された第1キャビティ内に配置され、前記翼体の軸方向線上の前記前縁より軸方向下流側に配置され、前記翼体の前記前縁を中心に前記フィレット部の外縁に内接する円状に形成された領域に相当する大きさの第3領域を備え、前記冷却孔列の内、少なくとも2つの前記冷却孔列の前記第1開口中心線が、前記第3領域を起点に延伸する。
【0092】
上記(3)に記載のタービン静翼によれば、冷却孔の穴加工時の翼体との干渉を回避するため、冷却孔の傾きを翼面の傾きに近づける冷却孔の配置からなる冷却構造においては、少なくとも2つの冷却孔列の第1開口中心線が、第3領域を起点に延伸するので、それぞれの冷却孔列の第1開口中心線が、燃焼ガスの等圧線に略平行に形成され、冷却孔列から排出される冷却空気量が均一化される。また、冷却孔の加工が容易になる。
【0093】
(4)第4の態様に係るタービン静翼は、前記シュラウドは、前記翼体の前記前縁より軸方向上流側の軸方向線上の前記第1領域と同じ半径の円状に形成された第2領域を備え、
前記第2開口中心線が、前記第2領域を起点に延伸する。
【0094】
上記(4)に記載のタービン静翼によれば、冷却孔列を構成する複数の冷却孔の第2開口中心線が第1開口中心線に平行に軸方向上流側に形成され、第2開口中心線が、第2領域を起点に延伸するので、第2開口中心線も燃焼ガスの等圧線に略平行に形成され、冷却孔列から排出される冷却空気量が均一化される。
【0095】
(5)第5の態様に係るタービン静翼は、前記シュラウドは、前記第1キャビティ内に配置され、前記翼体の前記軸方向線上の前記前縁より軸方向下流側で前記第3領域より軸方向上流側に配置され、前記第3領域と同一半径の円状に形成された第4領域を備え、前記冷却孔列の内、少なくとも2つの前記冷却孔列の前記第2開口中心線が、前記第4領域を起点に延伸する。
【0096】
上記(5)に記載のタービン静翼によれば、冷却孔列を構成する複数の冷却孔の第2開口中心線が第1開口中心線に平行に軸方向上流側に形成され、第2開口中心線が、第4領域を起点に延伸するので、第2開口中心線も燃焼ガスの等圧線に略平行に形成され、冷却孔列から排出される冷却空気量が均一化される。
【0097】
(6)第6の態様に係るタービン静翼は、前記第1開口中心線又は前記第2開口中心線は、前記第1開口中心線又は前記第2開口中心線が延伸する方向に隣接する少なくとも2つの冷却孔により形成されている。
【0098】
上記(6)に記載のタービン静翼によれば、冷却孔列の第1開口中心線又は第2開口中心線は、第1開口中心線又は第2開口中心線が延伸する方向に隣接する少なくとも2つの冷却孔により形成されているので、冷却孔の加工が容易になる。
【0099】
(7)第7の態様に係るタービン静翼は、前記冷却孔中心線は、前記第1開口中心線又は前記第2開口中心線と直交する方向より前記翼面の側に傾いている。
【0100】
上記(7)に記載のタービン静翼によれば、冷却孔の冷却孔中心線が、第1開口中心線又は第2開口中心線と直交する方向より翼面側に傾いているので、冷却孔から排出される冷却空気は、ガスパス面を流れる燃焼ガスの流れを乱すことがない。
【0101】
(8)第8の態様に係るタービン静翼は、前記冷却孔列の前記冷却孔中心線の前記第1開口中心線に対する傾きは、軸方向のいずれの位置の前記冷却孔列においても、同一の傾きが維持される。
【0102】
上記(8)に記載のタービン静翼によれば、冷却孔列の冷却孔中心線の第1開口中心線に対する傾きを、軸方向のいずれの位置にある冷却孔列についても同じ傾きを維持するので、冷却孔から排出される冷却空気が、ガスパス面を流れる燃焼ガスの流れを乱すことがない。
【0103】
(9)第9の態様に係るタービン静翼は、前記複数の冷却孔列の前記第1開口中心線は、軸方向下流方向に向かうと共に、軸方向に隣接して配置された前記冷却孔列の前記第1開口中心線との軸方向の間隔が拡大する。
【0104】
上記(9)に記載のタービン静翼によれば、第2キャビティにおける燃焼ガスの等圧線の間隔は、軸方向下流方向に向かうと共に拡大する。一方、各冷却孔列の第1開口中心線は、燃焼ガスの等圧線に平行に配置されている。従って、軸方向下流方向に向かうと共に、冷却孔列の第1開口中心線の間隔も拡大し、冷却空気が排出されるガスパス面が均一に冷却される。
【0105】
(10)第10の態様に係るタービン静翼は、前記冷却孔列の複数の前記冷却孔は、前記第1開口中心線又は前記第2開口中心線が延伸する方向に同一の間隔を維持して配置されている。
【0106】
上記(10)に記載のタービン静翼によれば、冷却孔列を構成する冷却孔が、第1開口中心線又は第2開口中心線が延伸する方向に同一の間隔を維持して配置されているので、冷却空気が排出されるガスパス面が均一に冷却される。
【0107】
(11)第11の態様に係るタービン静翼は、前記複数の冷却孔列を構成する複数の前記冷却孔の群は、前記第1領域から前記第4領域の内の少なくとも一つの領域を起点に前記前縁端部又は前記負圧面側端部に向けて放射状に広がる。
【0108】
上記(11)に記載のタービン静翼によれば、複数の冷却孔列を構成する複数の冷却孔の群が、第1領域から第4領域の内の少なくとも一つの領域を起点に前記前縁端部又は前記負圧面側端部に向けて放射状に延伸する。その結果、冷却孔列を構成する冷却孔の群が、翼面の傾きと共に放射状に広がるので、ガスパス面が均一に冷却され、排出する冷却空気の流れが燃焼ガス流の流れを乱すことがない。
【0109】
(12)第12の態様に係るタービン静翼は、前記複数の冷却孔列の前記第1開口中心線又は前記第2開口中心線のいずれかが、前記第1領域から前記第4領域の内の少なくとも一つの領域を起点に前記前縁端部又は前記負圧面側端部に向けて放射状に広がる。
【0110】
上記(12)に記載のタービン静翼によれば、複数の冷却孔列を第1開口中心線又は第2開口中心線のいずれかが、第1領域から第4領域の内の少なくとも一つの領域を起点に前縁端部又は負圧面側端部に向けて放射状に広がる。その結果、冷却孔列の第1開口中心線又は第2開口中心線が、翼面の傾きと共に放射状に広がるので、ガスパス面が均一に冷却され、排出する冷却空気の流れが燃焼ガス流の流れを乱すことがない。
【0111】
(13)第13の態様に係るタービン静翼は、前記シュラウドは、前記翼体と、前記前縁端部を接続する前縁仕切リブと、前記翼体と前記負圧面側端部を接続する負圧面側仕切リブと、により前記凹部が区分けされ、前記翼体の外壁面と、前記前縁仕切リブと、前記負圧面側仕切リブとに囲まれて形成された第2キャビティを含み、前記第2キャビティを前記翼高さ方向の外側に形成される第3キャビティと前記第3キャビティの内側に形成される第4キャビティと、に区分けし、前記第3キャビティと前記第4キャビティとを連通する複数の貫通孔を備えた衝突板と、を含む。
【0112】
上記(13)に記載のタービン静翼によれば、シュラウドは、翼体と、前縁端部を接続する前縁仕切リブと、翼体と負圧面側端部を接続する負圧面側仕切リブと、により凹部が区分けされ、翼体の外壁面と、前縁仕切リブと、負圧面側仕切リブで形成された第2キャビティを含む。更に、シュラウドは、第2キャビティを前記翼高さ方向の外側に形成される第3キャビティと前記第3キャビティの内側に形成される第4キャビティと、に区分けされ、前記第3キャビティと前記第4キャビティとを連通する複数の貫通孔を備えた衝突板を含む。その結果、衝突板を介して内側シュラウドに供給された冷却空気により、底板の内表面のインピンジメント冷却と、底板の冷却孔によるガスパス面のフィルム冷却の組合せにより、底板が効果的に冷却される。
【0113】
(14)第14の態様に係るタービン静翼は、前記シュラウドは、前記翼体の前記翼高さ方向の外側の端部に形成された外側シュラウドと、前記翼体の前記翼高さ方向の内側の端部に形成された内側シュラウドと、からなる。
【0114】
(15)第15の態様に係るガスタービンは、請求項1から13のいずれか一項に記載のタービン静翼と、前記タービン静翼が設けられる燃焼ガス流路を流れる燃焼ガスを生成する燃焼器と、を備える。
【0115】
上記(15)に記載のガスタービンでは、タービン静翼の熱応力が低減され、信頼性が向上する。また、冷却空気量が低減され、ガスタービンの効率が向上する。
【0116】
(16)第16の態様に係るタービン静翼の冷却方法は、翼体と、前記翼体の翼高さ方向の端部に形成されたシュラウドと、を備え、前記シュラウドは、燃焼ガス流路に接する底板と、前記底板の周縁に沿って前記翼高さ方向に形成される周壁と、前記周壁と前記底板に囲まれた空間を形成する凹部と、前記底板と前記翼体と前記周壁を接続する複数の仕切リブと、により前記凹部を区分けし、前記負圧面側前縁領域に形成された第2キャビティと、前記第2キャビティを前記翼高さ方向の外側に形成される第3キャビティと前記第3キャビティの内側に形成される第4キャビティとに区分けし、前記第3キャビティと前記第4キャビティとを連通する複数の貫通孔を備えた衝突板と、を備え、前記底板の内表面に形成された入口開口を介して前記第4キャビティに連通し、前記底板のガスパス面に形成された出口開口を介して燃焼ガス流路に連通する複数の冷却孔を有する冷却孔列を備えたタービン静翼の冷却方法であって、外部から前記第3キャビティに冷却空気を供給する工程と、前記冷却空気が、前記負圧面前縁キャビティに配置された前記衝突板に形成された前記貫通孔を介して、前記第3キャビティから前記第4キャビティに供給され、前記第4キャビティの冷却空気の圧力を減圧する工程と、前記冷却空気が前記底板の内表面をインピンジメント冷却する工程と、前記底板に形成され、燃焼ガスの等圧線に平行に配置された第1開口中心線を備えた前記冷却孔列を構成する複数の前記冷却孔から前記冷却空気を前記燃焼ガス流路に排出し、前記ガスパス面をフィルム冷却する工程と、を含む。
【0117】
上記(16)に記載のタービン静翼の冷却方法によれば、シュラウドは、シュラウドの負圧面側領域に衝突板を有する第2キャビティを備え、外部から供給された冷却空気は、衝突板の貫通孔を介して減圧され、底板の内表面をインピンジメント冷却する。また、冷却孔列を形成する冷却孔の出口開口を結ぶ第1開口中心線が、燃焼ガス流の等圧線に平行に配置されているので、冷却孔列を構成する冷却孔の出口開口における圧力が同一圧力に維持され、冷却孔の上流側に接続する第4キャビティの内圧変動が抑制される。従って、冷却孔から排出される冷却空気量が安定し、ガスパス面が適正に冷却され、冷却空気量が低減される。
【解決手段】翼体と、前記翼体の翼高さ方向の端部に形成されたシュラウドと、前記翼体と前記シュラウドを接合するフィレット部と、を備えるタービン静翼であって、前記シュラウドは、燃焼ガス流路に接する底板と、前記底板の周縁に沿って前記翼高さ方向に延びる周壁と、前記周壁と前記底板に囲まれた空間を形成する凹部と、を含む。前記周壁は、前記翼体の前縁側に延在する前縁端部と、前記翼体の負圧面側の前縁から後縁に延びる負圧面側端部と、を含。前記シュラウドは、前記シュラウドの負圧面側前縁領域に形成され、前記底板に形成された複数の前記冷却孔を備える。前記複数の冷却孔は、第1端が前記底板に形成された入口開口に接続し、第2端が前記底板のガスパス面に形成されて前記入口開口より軸方向下流側に形成された出口開口に接続し、前記翼体の翼面から周方向の前記前縁端部又は前記負圧面側端部に向けて所定間隔をあけて配置される。前記入口開口と前記出口開口を結ぶ冷却孔中心線の軸方向に対する傾きが同一に維持され、前記複数の冷却孔の前記出口開口の中心を結ぶ直線状の第1開口中心線と、前記冷却孔の前記入口開口の中心を結ぶ直線状の第2開口中心線と、が互いに平行に形成された一組の冷却孔列を構成する。前記冷却孔列が、軸方向上流側から下流側に向けて前記翼面に沿って複数配置され、前記複数の冷却孔列の前記冷却孔の前記冷却孔中心線の傾きが、軸方向下流側に向かうと共に小さくなる。