特許第6963717号(P6963717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 八幡電気産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6963717-鉄道車両の火災報知システム 図000002
  • 特許6963717-鉄道車両の火災報知システム 図000003
  • 特許6963717-鉄道車両の火災報知システム 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963717
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】鉄道車両の火災報知システム
(51)【国際特許分類】
   B61D 37/00 20060101AFI20211028BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20211028BHJP
   G08B 25/01 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   B61D37/00 G
   G08B17/00 C
   G08B25/01 D
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-131193(P2017-131193)
(22)【出願日】2017年7月4日
(65)【公開番号】特開2019-14306(P2019-14306A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】592066860
【氏名又は名称】八幡電気産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100105407
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】今村 洋一
(72)【発明者】
【氏名】山本 聡
(72)【発明者】
【氏名】木下 寛幸
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−008566(JP,A)
【文献】 特開2009−177745(JP,A)
【文献】 特開2004−326360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 37/00
G08B 17/00
G08B 25/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の客室に設置された放送用のスピーカと、
前記鉄道車両内に敷設された前記スピーカ用の配線と、
前記スピーカ用の配線を介して前記客室への放送用の音声信号を前記スピーカに接続する放送装置と、
前記スピーカ用の配線に接続され、火災要因を検知した場合に検知通知信号を出力する検知器と、
前記鉄道車両の乗務員室に設置された報知装置と、
を含み、
前記検知器は、前記スピーカ用の配線を介して供給される電力を受けて駆動し、
前記放送装置は、前記検知通知信号を前記スピーカ用の配線を介して受信し
前記スピーカ、前記スピーカ用の配線、前記放送装置、前記検知器は、編成をなす前記鉄道車両毎に設けられており、前記報知装置は、前記編成中の前記乗務員室を有する鉄道車両に設置された放送装置に接続されており、
前記放送装置間は、連絡用の音声回線を介して接続されており、
前記乗務員室を有する鉄道車両に設置された放送装置は、前記スピーカ用の配線又は前記連絡用の音声回線から前記検知通知信号が入力された場合に、その入力された前記検知通知信号に基づいて、前記報知装置に前記火災要因の検知を報知させる
鉄道車両の火災報知システム。
【請求項2】
前記乗務員室を有する鉄道車両に設置された放送装置は、前記スピーカ用の配線から前記検知通知信号が入力された場合に、その入力された前記検知通知信号に基づき前記火災要因の検知を知らせる信号を生成し、生成した信号を前記乗務員室と異なる第2の乗務員室に設置された第2の報知装置と接続された放送装置へ前記連絡用の音声回線を通じて伝達する
請求項1に記載の鉄道車両の火災報知システム。
【請求項3】
前記検知器は煙センサと温度センサとの少なくとも一方を含む
請求項1又は2に記載の鉄道車両の火災報知システム。
【請求項4】
前記検知通知信号は可聴周波数帯域より高い周波数を有する
請求項1からのいずれか1項に記載の鉄道車両の火災報知システム。
【請求項5】
前記検知器は、前記スピーカ用の配線に重畳された直流を駆動用の電力として前記スピーカ用の配線から取り出す電源回路を含む
請求項1からのいずれか1項に記載の鉄道車両の火災報知システム。
【請求項6】
前記検知器は、前記スピーカ用の配線に重畳された交流から前記検知器の駆動用の直流を生成する電源回路を含む
請求項1からのいずれか1項に記載の鉄道車両の火災報知システム。
【請求項7】
前記交流は可聴周波数帯域より高い周波数を有する
請求項に記載の鉄道車両の火災報知システム。
【請求項8】
前記放送装置は、異常検知時には前記スピーカをマイクとして機能させ車内の音を集音し、前記スピーカ用の配線を介して伝達された音声信号を前記報知装置に出力する
請求項からのいずれか1項に記載の火災報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の火災報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両に搭載される車両機器として火災報知機を搭載し、その異常を監視することが提案されている(例えば特許文献1)。但し、鉄道車両の客室へ火災報知設備を設置する義務はなく、火災報知設備を有しない鉄道車両もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−053531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存車両に火災報知設備を設ける手法として、住宅用の火災報知設備を導入することが考えられる。住宅用に供される火災報知設備の設置方式には、電池駆動で単独型の火災警報器を住宅内の各所に設置する方式(第1の方式という)がある。第1の方式では、複数の火災報知器のうち、火災要因(煙や熱など)を検知した火災警報器のみが警報を出力する。
【0005】
或いは、それぞれ電池で駆動する無線通信機能付きの火災警報器を住宅内に複数設置する方式(第2の方式という)がある。第2の方式では、火災要因を検出した火災警報器が連動信号を無線で伝送し、連動信号を受けた火災警報器が警報を出力する。これによって、火災要因を検出した火災警報器だけでなく、他の火災警報器が連動して警報を出力することで第1の方式よりも広範囲に警報を報知し得る。
【0006】
しかし、第1の方式では、乗務員室(運転室や車掌室)から離れた車両の火災警報器が作動した場合に、運転手や車掌がその警報に気付くことができない場合が起こる可能性がある。第2の方式では、無線電波を使用するため、車両内の既存無線設備や外来電波との干渉回避や、敷設エリアの拡大に伴うシステムの複雑化といった問題がある。さらには、第1及び第2の方式では、火災警報器が電池駆動であるので、電池交換などのメンテナンスの煩雑さが伴う。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、検知器に電池駆動や無線通信を適用した場合の不利益がなく、導入にあたってのコストを抑えることのできる鉄道車両の火災報知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、鉄道車両の客室に設置されたスピーカに前記スピーカ用の配線を介して音声信号を接続する放送装置と、前記スピーカ用の配線に接続され、火災要因を検知した場合に検知通知信号を出力する検知器とを含み、前記検知器は、前記スピーカ用の配線を介して供給される電力を受けて駆動し、前記放送装置は、前記検知通知信号を前記スピーカ用の配線を介して受信することを特徴とする鉄道車両の火災報知システムである。
【0009】
本発明に係る鉄道車両の火災報知システムにおいて、前記放送装置は、前記検知通知信号に基づいて、前記放送装置に接続された報知装置に前記異常を報知させる構成としても良い。
【0010】
本発明に係る鉄道車両の火災報知システムにおいて、前記放送装置は、前記検知通知信号に基づき生成した前記異常を知らせる信号を生成し、生成した信号を乗務員への第2の報知装置と接続された第2の放送装置へ連絡用の音声回線を通じて伝達する構成としても良い。
【0011】
本発明に係る鉄道車両の火災報知システムにおいて、前記異常は火災要因を含む。火災要因は、熱及び煙等のいずれかまたは複数を含む。また、本発明に係る鉄道車両の火災報知システムにおいて、前記検知通知信号は可聴周波数帯域より高い周波数を有するように構成するのが好ましい。スピーカ用の配線に出力される放送音声との干渉や乗客へ聞こえてしまうことを回避するためである。
【0012】
本発明に係る鉄道車両の火災報知システムにおいて、前記検知器は、前記スピーカ用の配線に重畳された直流を駆動用の電力として前記スピーカ用の配線から取り出す電源回路を含むように構成しても良い。
【0013】
本発明に係る鉄道車両の火災報知システムにおいて、前記検知器は、前記スピーカ用の配線に重畳された交流から前記検知器の駆動用の直流を生成する電源回路を含むように構成しても良い。この場合、前記交流は可聴周波数帯域より高い周波数を有するのが好ましい。
【0014】
本発明に係る鉄道車両の火災報知システムにおいて、前記放送装置は、前記スピーカで集音され、前記スピーカ用の配線を介して伝達された音声信号を前記報知装置に出力するように構成するのが好ましい。
【0015】
本発明に係る火災報知システムにおいて、前記検知器は、他の検知器で生成された検知信号を前記スピーカの配線から受信した場合に火災要因の検知を示す情報を前記客室内に出力するようにしても良い。この場合、複数の検知器が客室に設置されている環境下で、いずれかの検知器が火災要因を検知した場合に、残りの検知器が火災要因の検知がなくとも上記情報を出力し、客室内の乗客に火災要因の検知を知らせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、検知器に電池駆動や無線通信を適用した場合の不利益がなく、導入にあたってのコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は火災報知システムが搭載された鉄道車両の構成例を示す図である。
図2図2は検知器及び放送装置の第1形態を示す。
図3図3は検知器及び放送装置の第2形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る鉄道車両の火災報知システムを説明する。実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。検知対象の車両内の異常は、例えば火災であり、検知対象の火災要因は、熱や煙等の少なくとも一つである。但し、検知対象の異常は、火災以外に、例えば、特定の音などセンサで検知可能な他の要因にも適用できる。
【0019】
以下に説明する実施形態では、火災報知システムの一例として、火災要因を異常として検知する火災報知システムについて説明する。火災報知システムは、煙報知システムと呼ばれることもある。実施形態では、火災の要因として熱や煙等の少なくとも一つを検知す
る検知器(火災警報器)を含む火災報知システムについて説明する。
【0020】
火災報知設備(火災報知システム)を鉄道車両に導入するにあたっては、火災要因を検知したい場所に設置する検知器と、検知器が火災要因を検知したことを乗務員へ報知する報知部(例えば監視警報器)を設置する。これらの機器以外に、設置する機器への電力供給線と、検知器及び監視警報器間の通信線を要する。さらには、監視警報器が検知警報を車両内(他車両または同車両)にいる乗務員へ通知するための通信線も必要となり得る。これらの各線を敷設するコストは少なくない。また、敷設のためのスペースも必要となる。
【0021】
配線の敷設に係る問題解決のために、電池駆動の検知器を火災報知システムに適用することが考えられる。しかし、電池交換などのメンテナンスの煩雑さや良好な電波環境の維持・管理に係る手間が生じる。実施形態では、鉄道車両が備える既設のスピーカ(SP)配線及び連絡線を利用し、追加配線の敷設なく導入可能な火災報知システムについて説明する。
【0022】
実施形態では、検知器(火災警報器)は既設のSP配線上に設置される。SP配線は放送音声出力だけでなく、検知器への電力供給および検知通知信号(火災要因の検知を通知するための信号)の伝送に利用される。
【0023】
火災報知システムの導入は、例えば、鉄道車両が備える車内放送システムへの構成及び機能の付加、或いは構成又は機能の付加によって行われる。例えば、車内放送システムには以下の機能が付加される。
・SP配線に対して各検知器へ駆動電力を供給するためのDC(直流)電圧重畳機能。
・検知器が発する検知通知信号の受信機能。
・火災要因の検知結果を警報として乗務員へ通知する為に、連絡線へ警報出力する機能。
なお、SP配線を用いた検知器との通信方式はSP配線上で通信が行われる限りにおいて限定されない。もっとも、検知通知信号はスピーカから出力されても聞こえない(非可聴音の周波数)の信号にするのが好ましい。
【0024】
検知器は以下の機能を備える。
・SP配線に供給されたDC電圧を検知器の駆動電力としてSP配線上の音声信号と弁別して取り出す機能。
・煙や熱等の監視対象に応じたセンサ(検知)機能。
・検知通知信号をSP配線に出力する機能。
【0025】
なお、上記したDC電圧重畳機能及びDC電圧を取り出す機能の代わりに、以下の機能を備えても良い。
・SP配線に対して各検知器に駆動用の電力を供給するための電源用のAC(交流)信号の送信機能。
・SP配線に供給されたAC信号を、音声信号と弁別し、整流してDC電源を生成する機能。
【0026】
図1は火災報知システムが搭載された鉄道車両の構成例を示す図である。図1には、車両102、車両103、及び車両104が例示されている。車両102及び車両104は先頭車両であり、車両103は中間車両である。車両103以外の中間車両は車両103と同じ構成を有するので図示が省略されている。車両102及び車両104のそれぞれは乗務員室(運転室)105及び客室106を有し、車両103は客室106を有している。なお、1編成をなす車両の数は1以上の適宜の数で良い。
【0027】
車両102、車両103及び車両104を含む全ての車両に亘って、連絡線101a,101bが敷設されている。連絡線101a,101bには複数の放送装置10が接続されている。図1の例では放送装置10が1車両に1台設けられているが、2以上設けられても良い。
【0028】
車両102、103、104を含む各車両には、放送装置10に接続されたSP配線100が敷設されている。乗務員室105にある放送装置10(放送装置10a、放送装置10c)には、インターホン32とスピーカ33とが接続される。
【0029】
車両102の乗務員室105aにいる乗務員と、車両104の乗務員室105bにいる乗務員とはそれぞれの車両にあるインターホン32及び放送装置10を用いて乗務員間の通話を行うことができる。乗務員間の通話(音声通信)に係る音声は、連絡線101a,101bを用いて放送装置10aと放送装置10cとの間を送受信される。
【0030】
インターホン32からは、客室への放送用の音声を入力できる。例えば車両102のインターホン32から入力された音声の信号は、放送装置10a及び連絡線101a及び101bを介して他の車両(車両103、車両104)に設置された放送装置10b及び放送装置10cで受信される。
【0031】
音声の信号を連絡線101a,101bから受信した放送装置10は自身に接続されたSP配線100に音声の信号を出力する。これによって、SP配線100に接続された各スピーカ34から音声が出力(放送)される。
【0032】
SP配線100は本発明に係る「スピーカ用の配線」の一例である。連絡線101a,101bは本発明に係る「連絡用の音声回線」の一例である。インターホン32やスピーカ33は、本発明に係る「報知装置」の一例である。
【0033】
SP配線100には1以上のスピーカ34が必要数接続される。SP配線100には、さらに、検知器(火災警報器)20が接続される。図1では、1つのSP配線100に対して2つの検知器20が接続されている。但し、検知器20の接続数は1以上の数から必要数を選択できる。各検知器20は、同車両の放送装置10からSP配線100を介して供給される電力を用いて駆動する。
【0034】
例えば、車両103で火災要因(例えば、熱及び煙の少なくとも一方)が検知器20により検知された場合を仮定する。検知器20は火災要因を検知すると、SP配線100を介して車両103内の放送装置10bへ向けて検知通知信号を出力する。このとき、検知器20毎に検知通知信号の仕様(フォーマット、或いは内容に含める情報)を変えることで、火災要因が検知された場所を通知することもできる。
【0035】
車両103の放送装置10bは、例えば、通常の連絡動作を行い、連絡線101a,101bに警報音声の信号を出力する。警報音声は、本発明に係る「火災要因の検知を知らせる信号」の一例である。警報音声の信号は、乗務員のいる車両102の放送装置10aや車両104の放送装置10cに送られる。放送装置10aや放送装置10cは、警報音声の信号に基づく音声を、放送装置10aや放送装置10cに接続されたモニタ用のスピーカ33とインターホン32の少なくとも一方から出力させる。これによって、警報(異常(火災要因)の検知)が乗務員へ通知(報知)される。なお、放送装置10bからの警報音声の信号を受信する放送装置10(放送装置10a,放送装置10cの他、車両103以外の中間車両にある放送装置(図示せず)を含む)がSP配線100を介して接続されたスピーカ34から警報音声を出力するようにしてもよい。この場合、火災要因が検知された車両以外の車両にいる乗客が鉄道車両(編成)内のどこかで火災要因が検知された
ことを知ることができる。
【0036】
検知器20が火災要因を検出した車両103の放送装置10bは、自身の号車情報(車両識別情報の一例)と検知箇所を警報音声の信号に含めても良い。この場合、スピーカ33とインターホン32やスピーカ33から、号車番号と検知箇所を示す音声が出力される。これによって、乗務員にどの車両のどこで火災要因が検知されたのかを知らせることができる。放送装置10a及び放送装置10cのそれぞれは、放送装置10bから見て第2の報知装置(インターホン32,スピーカ33)と接続された第2の放送装置として動作する。
【0037】
<第1形態>
図2は検知器20及び放送装置10の第1形態を示す。放送装置10は、DC重畳回路11を含む。DC重畳回路11は、検知器20へ駆動用の電力を供給するために、SP配線100にDC電圧を重畳する(図2中の破線矢印S1を参照)。DC重畳回路11はSP配線100により伝達される音声信号に影響を与えないように、音声信号帯域(例えば、8kHz以下の帯域)に対して高いインピーダンスを備える。また、放送装置10は、制御部12と、音源回路14と、増幅器15と、AF増幅器(低周波増幅器)16と、AF増幅器17と、スイッチ18とを含む。スイッチ18はリレーでも半導体スイッチでもよい。
【0038】
放送装置10の制御部12は、メモリを用いてプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)などを含む。制御部12は、SP配線100へのDC重畳制御、検知
器20から出力される検知通知信号の受信、乗務員への警報発信処理などを行う。
【0039】
制御部12は、検知通知信号の受信を契機に音源回路14及び増幅器15を制御して警報音の信号を生成及び増幅して出力する制御を行う。警報音の信号は、連絡線101a,101bに出力され、報知装置(インターホン32,スピーカ33)と接続された他の放送装置10に伝達される。他の放送装置10は、警報音の音声を報知装置から出力させる。これによって、乗務員に火災要因の検知を報知することができる。放送装置10a及び放送装置10cのように、報知装置(インターホン32,スピーカ33)が接続されている場合には、警報音の信号はその接続されている報知装置から出力される。
【0040】
また、制御部12は、検知通知信号の受信を契機に、接点(スイッチ18)を、インターホン32や連絡線101a,101bからの放送音声を増幅するAF増幅器16とSP配線100との結線状態から、SP配線100とAF増幅器17との結線状態に切り替える制御を行う。このときスピーカ34はマイクとして機能し、集音した車内の音声信号(図2中の一点鎖線矢印S3を参照)をAF増幅器17で増幅する。増幅された音声信号は、モニタ音声として、インターホン32,スピーカ33,連絡線101a,101bのうちの少なくとも一つに出力され、同車両に存する乗務員や他の車両に存する乗務員が聴取することができる。インターホン32,スピーカ33は、スピーカ34で集音されたモニタ音声の出力部として機能する。
【0041】
検知器20は、検知入出力部21と、制御部22と、センサ23と、電源回路24と、報知器25とを含む。電源回路24は、SP配線100からDC電圧だけを取り出し、検知器20の電源(駆動用電力)を生成する。電源回路24からの電力は検知器20の各部に給電される。
【0042】
センサ23は、煙、熱などの異常(火災要因)を検知する。センサ23は、煙センサや高温を検知する温度センサなどの少なくとも一つを含む。センサ23は、検知対象の異常に応じた物理量や現象を検知する煙センサや温度センサ以外のセンサを含むことができる
【0043】
制御部22は、センサ23が火災要因を検知した場合に(センサ23の出力が火災要因の発生を示す場合に)検知通知処理を行う。制御部22は、メモリ及びメモリに記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)などを含む。制御部22は
火災要因の検知を放送装置10に通知するための信号である検知通知信号を生成し、検知入出力部21を介して出力する。
【0044】
検知通知信号は検知入出力部21からSP配線100に送出され、SP配線100を介して放送装置10に伝達される(図2中の破線矢印S2を参照)。検知通知信号は、例えば、非可聴音の周波数f(例えばf>20kHz)を有するトーン信号を適用する。非可聴音(20Hz〜20kHzの可聴周波数帯域外の信号)の採用によって、検知通知信号がスピーカ34に伝達されても、検知通知信号に対応する音声は乗客に聞こえない。すなわち、スピーカ34から検知通知信号に対応する可聴音が客室に出力されるのを回避できる。但し、可聴周波数帯域の信号を適用する場合もあり得る。
【0045】
検知器20は、必要に応じて報知器25を有することができる。報知器25は、センサ23を用いて火災要因を検知した場合に音や光を出力するスピーカ,ブザー,LED(発光ダイオード)などを含むことができる。報知器25の動作は、例えば制御部22によって制御される。
【0046】
図1図2に示すように、1つのSP配線100に対して複数の検知器20が接続される場合がある。この場合、複数の検知器20でそれぞれ火災要因が検知され検知通知信号がSP配線100に出力される(重なり検知)ことが起こり得る。これに鑑み、検知入出力部21がSP配線100上の検知通知信号の有無を監視し、SP配線100から検知通知信号を検出した場合には、自検知器20からの検知通知信号は出力しないようにする。或いは、検知器20毎に異なる周波数を有する検知通知信号を使用すれば、放送装置10が周波数から検知器20を識別可能とすることもできる。なお、検知器20は、SP配線100から他の検知器20が出力した検知通知信号を検出したことを契機に自身の有する報知器25を作動させる構成としても良い。これにより、火災要因を検知した検知器20だけが自身の有する報知器25を作動させる場合に比べて火災要因が検知されたことを報知する範囲を広げることができる。
【0047】
さらに、検知器20の検知入出力部21と放送装置10の制御部12の間で非可聴信号によるFSKを用いた通信を行えば、より複雑な制御も可能とできる。
【0048】
<第2形態>
図3は検知器20及び放送装置10の第2形態を示す。第2形態では、第1形態におけるDC電圧をSP配線100に重畳する構成に代えて、AC信号をSP配線100に出力する構成を採用する。以下、第2形態について、第1形態との相違点を中心に説明する。
【0049】
放送装置10は、検知器20へ駆動用の電力を供給するために、SP配線100に電源用のAC信号を出力する(図3中の破線矢印S11を参照)。図2に示したようなDC重畳回路11は有しない。電源用のAC信号は制御部12で生成され、AF増幅器16及びスイッチ18を経てSP配線100へ出力される。
【0050】
AC信号として、例えば20kHzを超える可聴周波数帯域外の信号を適用する。これにより、AC信号に対応する可聴音がスピーカ34から出力されるのを回避できる。但し、可聴周波数帯域の信号を適用する場合もあり得る。
【0051】
第2形態でも、検知通知信号がSP配線100を介して検知器20から放送装置10へ伝送される(図3中の破線矢印S2を参照)。しかし、第2形態では、電源生成用AC信号がSP配線100に重畳されている。このため、検知通知信号の周波数f2が電源生成用AC信号の周波数f1より高くなるようにして干渉を回避する。または、電源生成用AC信号と検知通知信号の出力タイミングを時分割処理する事でも干渉回避することができる。
【0052】
検知器20の電源回路24Aは、SP配線100に重畳されたAC信号を整流し、検知器20の駆動用のDC電源を生成する。電源回路24Aからの電力は検知器20の各部に給電される。
【0053】
放送装置10は、SP配線100の出力からAC信号を遮断するフィルタ回路13を有する。フィルタ回路としてハイパスフィルタ(HPF)が設けられる。フィルタ回路13を通過した検知通知信号だけが制御部12に入力される。以上の構成以外の構成は、第1形態と同じであるので説明を省略する。なお、第1及び第2形態では、放送装置10が検知器20の駆動用の電力をSP配線100を介して供給しているが、放送装置10以外の装置がSP配線100を介して供給しても良い。
【0054】
実施形態によれば、鉄道車両が有する既設のSP配線100と連絡線101a,101bとを利用し、新規に配線を敷設することなく検知器20を客室内に配置し、火災報知意システムを低コストで構築することができる。すなわち、火災報知システムの導入に係るコストを抑えることができる。SP配線や連絡線は鉄道車両が一般的に備える設備であるので、多くの既存車両での導入が可能となる。
【0055】
検知器20は、放送装置10からSP配線100を介して供給される電力を用いて駆動するため、電池方式の場合のデメリット(電池交換等のメンテナンスの煩雑さ)はない。また、SP配線100を介して検知通知信号が伝達されるので、無線方式の採用時におけるシステム複雑化や管理の手間も回避できる。
【0056】
なお、上記した第1形態及び第2形態における連絡線101a及び101bは、アナログ方式で音声信号を伝達するものであるが、連絡線101a及び101bがディジタル方式で音声信号を伝達するように構成してもよい。その他、本発明の目的を逸脱しない範囲において、実施形態にて説明した構成は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
10・・・放送装置
11・・・DC重畳回路
20・・・検知器
32・・・インターホン
33,34・・・スピーカ
100・・・SP配線
102,103,104・・・車両
図1
図2
図3