(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1で開示されるシステムは、電力の供給対象である負荷の消費電力が大きい場合、より大容量の平滑コンデンサを設ける必要があるため、複数の平滑コンデンサを設けたり、より大型の平滑コンデンサを設けたりする必要がある。このため、特許文献1で開示されるシステムだけでは、負荷の消費電力が大きい場合に回路規模の大型化を招きやすく、消費電力が大きくなるほどこの問題は顕著となる。
【0006】
本発明は上記した課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、電源部からの電力供給が途絶えた場合であっても、他の電力供給源からの電力を電力供給対象に対して即座に供給することができる構成を、より簡易に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様である車載用のバックアップ回路は、
電源部から電力が供給される経路である電源部側導電路と、
第1電力供給対象へ電力を供給する経路である第1負荷側導電路と、
第2電力供給対象へ電力を供給する経路である第2負荷側導電路と、
前記電源部とは異なる電力供給源である蓄電部と、を有し、
前記電源部から前記電源部側導電路を介してなされる電力供給が所定の正常状態である場合に、前記電源部から前記電源部側導電路及び前記第1負荷側導電路を介して前記第1電力供給対象に電力が供給されるとともに前記電源部から前記電源部側導電路及び前記第2負荷側導電路を介して前記第2電力供給対象に電力が供給される車載用電源システムに用いられる車載用のバックアップ回路であって、
前記蓄電部に電気的に接続される蓄電部側導電路と、
所定の中間導電路と、
前記電源部側導電路に印加された電圧を降圧又は昇圧して前記蓄電部側導電路に出力電圧を印加する第1動作と、前記蓄電部側導電路に印加された電圧を降圧又は昇圧して前記電源部側導電路に出力電圧を印加する第2動作とを行う第1電圧変換部と、
前記電源部側導電路と前記蓄電部側導電路との間において前記第1電圧変換部と並列に設けられる抵抗部と、
前記蓄電部側導電路に印加された電圧を昇圧又は降圧して前記中間導電路に出力電圧を印加する電圧変換動作を行う第2電圧変換部と、
前記中間導電路と前記第2負荷側導電路との間に設けられ、前記中間導電路の電位が前記第2負荷側導電路の電位よりも所定電位差以上に高い第1状態である場合に前記中間導電路から前記第2負荷側導電路へと電流が流れることを許容し、前記第1状態が解除された第2状態である場合に前記中間導電路から前記第2負荷側導電路へと電流が流れることを制限する素子部と、
前記第1電圧変換部及び前記第2電圧変換部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
所定の充電開始条件の成立に応じて前記第1電圧変換部に前記第1動作を開始させ、前記第1動作中に所定の充電停止条件が成立したことに応じて前記第1動作を停止させ、
所定の第1バックアップ条件の成立に応じて前記第2電圧変換部に電圧変換動作を行わせ、
前記第2電圧変換部に電圧変換動作を行わせているときに所定の第2バックアップ条件が成立したことに応じて前記第1電圧変換部に前記第2動作を行わせる構成であり、
前記制御部が前記第2電圧変換部に電圧変換動作を行わせているときに前記電源部側導電路と前記蓄電部側導電路とが前記抵抗部を介して導通する構成である。
【0008】
本発明の第2態様である車載用のバックアップ装置は、上記車載用のバックアップ回路と、上記蓄電部とを含む。
【発明の効果】
【0009】
第1態様の車載用のバックアップ回路が適用される車載用電源システムでは、電源部から電源部側導電路を介してなされる電力供給が所定の正常状態である場合、電源部からの電力が第1電力供給対象及び第2電力供給対象に供給される。
一方、何らかの原因によって電源部からの電力供給が途絶えても、バックアップ回路において第2電圧変換部が電圧変換動作を行っている最中であれば、蓄電部からの電力供給に基づき、中間導電路から第2負荷側導電路に即座に電力を供給することができるため、第2負荷側導電路を即座にバックアップすることができる。
しかも、上記バックアップ回路は、所定期間には第1電圧変換部の第1動作によって蓄電部を迅速に充電することができ、第2電圧変換部が電圧変換動作を行っているときには電源部側導電路と蓄電部側導電路とが抵抗部を介して導通する構成であるため、内部消費や自己放電が生じても抵抗部を介して蓄電部へ充電電流を供給することができ、蓄電部の充電電圧の低下を抑えることができる。ゆえに、第2電圧変換部が電圧変換動作を行っている最中に蓄電部の充電電圧をより高く維持することができ、電源部からの電力供給が途絶えたときに蓄電部の充電電圧が不足する事態を回避しやすくなる。
更に、第2電圧変換部に電圧変換動作を行わせているときに所定の第2バックアップ条件が成立した場合には、第1電圧変換部に第2動作を行わせ、蓄電部からの電力供給に基づく電力を第1電力供給対象に対しても供給することが可能となる。つまり、電源部からの電力供給が途絶えた場合に、第2電力供給対象に対しては即座に電力を供給し、第1電力供給対象に対しては第2バックアップ条件の成立に応じて電力を供給するように、優先順位を定めた方式でバックアップ動作を行うことができる。
【0010】
第2態様の車載用のバックアップ装置によれば、第1態様の車載用のバックアップ回路と同様の効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、本発明の望ましい例を示す。但し、本発明は以下の例に限定されない。
【0013】
バックアップ回路は、電源部が満充電状態であり且つ正常状態であるときに中間導電路に所定電圧が印加された場合に第2状態となる構成であってもよい。そして、制御部は、所定電圧を中間導電路に印加するように第2電圧変換部に電圧変換動作を行わせる構成であってもよい。
このように構成されたバックアップ回路は、電源部が満充電状態のときに第2電圧変換部が電圧変換動作を行っても、中間導電路から第2負荷側導電路に電流が流れないため、第2電圧変換部による電圧変換動作中の電力消費を抑えることができる。そして、このように電力消費を抑えながら準備を継続しつつ、電源部からの電力供給が途絶えた場合には中間導電路を介して即座に電力を供給することができる。
【0014】
バックアップ回路は、アノードが電源部側導電路及び第1負荷側導電路に電気的に接続されるとともにカソードが第2負荷側導電路に電気的に接続される第1ダイオードと、アノードが中間導電路に電気的に接続されるとともにカソードが第2負荷側導電路に電気的に接続される第2ダイオードと、を備えていてもよい。そして、第2ダイオードが素子部として構成されていてもよい。
このように構成されたバックアップ回路は、第2負荷側導電路の電圧が一定値(第2電圧変換部によって目標とされる所定電圧から第2ダイオードでの電圧降下分を差し引いた値)よりも高い状態から低い状態に変化した場合に第2ダイオードを介して即座に電流が供給されるようになり、簡易な構成でシームレス性がより高いバックアップ動作が可能となる。
更に、第2負荷側導電路と電源部側導電路との間に第1ダイオードが介在するため、電源部側導電路で地絡等が発生して電源部側導電路の電圧が急低下した場合に第2負荷側導電路から電源部側導電路に電流が流れ込むことを防ぐことができ、第2ダイオードを介してなされるバックアップ中に第2負荷側導電路の電圧が低下してしまうことを防ぐことができる。よって、第2電力供給対象をより一層安定的にバックアップすることができる。
【0015】
第2電圧変換部は、第1電圧変換部よりも電力容量が小さい電圧変換部であってもよい。
このように構成されたバックアップ回路は、第1電圧変換部によって蓄電部を充電する場合には、電力容量の大きい第1電圧変換部によってより大きな充電電流を流すことができるため、迅速に充電電圧を高めることができ、第2電圧変換部を動作させて電源失陥に備える場合には、電力容量が相対的に低い第2電圧変換部の動作を継続するようにして効率的に準備することができる。
【0016】
第2電力供給対象は、第1電力供給対象への電力供給が停止状態となった場合に所定の指示情報を出力する構成をなしていてもよい。そして、制御部は、第2電圧変換部に電圧変換動作を行わせているときに第2電力供給対象から指示情報を取得したことを第2バックアップ条件の成立として第1電圧変換部に第2動作を行わせるように機能してもよい。
このバックアップ回路が適用される車載用電源システムでは、電源部からの電力供給が途絶えた場合に第1電力供給対象への電力供給が停止状態となるため、第2電力供給対象は、この停止状態に応じて所定の指示情報を出力するように動作する。このようなシステムを前提とし、制御部は、第2電圧変換部に電圧変換動作を行わせているときに第2電力供給対象から指示情報を取得したことに応じて第1電圧変換部に第2動作を行わせるため、電源部からの電力供給が途絶えた場合にその状態を早期に検出し、蓄電部からの電力供給に基づく電力を第1電力供給対象に供給することが可能となる。
しかも、電源部からの電力供給が途絶えても、第2電力供給対象に対してシームレス性の高いバックアップ動作を即座に行うことができるため、第2電力供給対象に対する電力不足によって「第1電力供給対象への電力供給が停止状態となったこと」を検出できないような事態を防ぐことができ、制御部に対して第2動作を開始させるためのトリガをより確実に与えやすくなる。よって、電源部からの電力供給が途絶えても、第1電力供給対象に対して第1電圧変換部を利用した電力供給をより早期に且つより確実に開始しやすくなる。
【0017】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1について説明する。
実施例1の車載用のバックアップ回路1(以下、バックアップ回路1ともいう)は、
図1で示す車載用電源システム100(以下、電源システム100ともいう)の一部をなすものである。車載用電源システム100は、電源部91、蓄電部93、電源部側導電路71、蓄電部側導電路72、第1負荷側導電路61、第2負荷側導電路62、バックアップ回路1などを備える。バックアップ回路1及び蓄電部93は、バックアップ装置3を構成する。
【0018】
電源システム100は、電源部91又は蓄電部93を電力供給源として第1電力供給対象81及び第2電力供給対象82に電力を供給し得るシステムとして構成されている。バックアップ回路1は、電源部91から電源部側導電路71を介してなされる電力供給が所定の正常状態である場合に、電源部91から電源部側導電路71及び第1負荷側導電路61を介して第1電力供給対象81に電力が供給されるとともに電源部91から電源部側導電路71及び第2負荷側導電路62を介して第2電力供給対象82に電力が供給される。
【0019】
なお、以下の説明では、「電源部91の出力電圧が所定閾値以上であり、電源部91からの電力供給に基づいて電源部側導電路71に印加される電圧が所定閾値以上である場合」を「電源部から電源部側導電路71を介してなされる電力供給が所定の正常状態である場合」とする。具体的には、上記「所定閾値」は、第2電圧変換部12によって出力される後述の「所定電圧」よりも高い値である。
【0020】
電源部91は、第1電力供給対象81及び第2電力供給対象82へ電力を供給するための主電源となる部分であり、例えば、鉛バッテリ等の公知の車載バッテリとして構成されている。電源部91は、高電位側の端子が電源部側導電路71に電気的に接続され、低電位側の端子が図示しないグラウンド部に電気的に接続されており、電源部側導電路71に対して所定の出力電圧(以降、+B電圧ともいう。)を印加する。
【0021】
蓄電部93は、電源部91とは異なる電力供給源として構成されるとともに、少なくとも電源部91からの電力供給が途絶えたときに電源となる部分である。蓄電部93は、高電位側の端子が蓄電部側導電路72に電気的に接続され、低電位側の端子が図示しないグラウンド部に電気的に接続されており、蓄電部側導電路72に対して所定の出力電圧を印加する。蓄電部93は、例えば、電気二重層キャパシタ(EDLC)等の公知の蓄電手段によって構成されている。なお、蓄電部93の満充電時の電圧は、電源部91の満充電時の電圧よりも小さい値である。
【0022】
電源部側導電路71は、電源部91に電気的に接続された配線部であり、電源部91から電力が供給される経路である。電源部側導電路71には、電源部91の高電位側の端子の電圧(出力電圧)が印加される。
【0023】
蓄電部側導電路72は、蓄電部93に電気的に接続された配線部であり、蓄電部93に対する充電電流が供給される経路であるとともに、蓄電部93からの放電電流が供給される経路でもある。蓄電部側導電路72には、蓄電部93の高電位側の端子の電圧(充電電圧)が印加される。
【0024】
第1負荷側導電路61は、第1電力供給対象81に電気的に接続された配線部であり、第1電力供給対象81へ電力を供給する経路である。
【0025】
第2負荷側導電路62は、第2電力供給対象82に電気的に接続された配線部であり、第2電力供給対象82へ電力を供給する経路である。
【0026】
第1電力供給対象81は、1以上の車載用負荷によって構成されており、具体的には、1以上の公知の車載用電気部品として構成されている。第1電力供給対象81は、電源部91からの電力供給が途絶えた場合でも電力供給が望まれる電気部品が好適例であり、例えば、第2電力供給対象82よりもバックアップの緊急性が低い電気部品(例えば、モータなどの車載用アクチュエータ)を第1電力供給対象81とすることができる。この第1電力供給対象81は、上述した正常状態のときには電源部91から供給される電力に基づいて動作し、正常状態ではない異常状態のときには後述する第1電圧変換部11を介して供給される電力に基づいて動作し得る。
【0027】
第2電力供給対象82は、1以上の車載用負荷によって構成されており、具体的には、公知の車載用電気部品として構成されている。第2電力供給対象82は、電源部91からの電力供給が途絶えた場合でも電力供給が望まれる電気部品が好適例であり、例えば、第1電力供給対象81よりもバックアップの緊急性が高く、電力供給が途切れないようにバックアップすることが望まれる電気部品(第2電力供給対象82を制御するECUなど(例えば、シフトバイワイヤ制御システムや電動パーキングブレーキシステムなどの電子制御システムにおけるECU等))を第1電力供給対象81とすることができる。第2電力供給対象82は、上述した正常状態のときには電源部91から供給される電力に基づいて動作し、異常状態のときには後述する第2電圧変換部12を介して供給される電力に基づいて動作し得る。
【0028】
次に、バックアップ回路1について詳述する。
バックアップ回路1は、蓄電部93と共にバックアップ装置3を構成する部分である。バックアップ回路1は、少なくとも電源部91からの電力供給が途絶えたときに蓄電部93からの放電を迅速に行うように機能する装置である。バックアップ回路1は、主として、中間導電路54、第1ダイオード21、第2ダイオード22、第1電圧変換部11、第2電圧変換部12、抵抗部32などを備える。
【0029】
第1電圧変換部11は、例えば公知の昇降圧型DCDCコンバータとして構成され、電源部側導電路71に印加された電圧を降圧して蓄電部側導電路72に出力電圧を印加する第1動作と、蓄電部側導電路72に印加された電圧を昇圧して電源部側導電路71に出力電圧を印加する第2動作とを行いうる。第1電圧変換部11は、第2電圧変換部12よりも電力容量が大きい電圧変換部であり、第2電圧変換部12よりも大きな電流を出力し得る構成となっている。
【0030】
第2電圧変換部12は、例えば公知の昇圧型DCDCコンバータとして構成され、蓄電部側導電路72に印加された電圧を昇圧して中間導電路54に出力電圧を印加する電圧変換動作を行いうる。第2電圧変換部12は、第1電圧変換部11よりも電力容量が小さい電圧変換部となっている。
【0031】
中間導電路54は、第2電圧変換部12の出力電圧が印加される導電路であり、一端側が第2電圧変換部12に電気的に接続され、他端側が第2ダイオード22のアノードに電気的に接続されている。
【0032】
抵抗部32は、例えば公知の抵抗器として構成され、電源部側導電路71と蓄電部側導電路72との間において第1電圧変換部11と並列に設けられており、第1電圧変換部11を介さずに電源部91から供給される電力を蓄電部93に供給し得る経路となっている。抵抗部32の一端は、電源部側導電路71及び第1負荷側導電路61に電気的に接続され、抵抗部32の他端は、蓄電部側導電路72を介して蓄電部93の高電位側の端子に電気的に接続されている。
【0033】
第1ダイオード21は、アノードが電源部側導電路71に電気的に接続され、カソードが第2負荷側導電路62及び第2ダイオード22のカソードに電気的に接続されている。第1ダイオード21は、電源部側導電路71から第2負荷側導電路62への電流の流れ込みを許容し、第2負荷側導電路62から電源部側導電路71への電流の流れ込みを遮断する。例えば、電源部側導電路71に地絡等の異常が発生しても、第2負荷側導電路62から電源部側導電路71へは電流が流れ込まないようになっている。
【0034】
第2ダイオード22は、素子部の一例に相当し、アノードが中間導電路54に電気的に接続されるとともにカソードが第2負荷側導電路62及び第1ダイオード21のカソードに電気的に接続されている。この第2ダイオード22は、中間導電路54と第2負荷側導電路62との間に設けられ、中間導電路54の電位が第2負荷側導電路62の電位よりも所定電位差以上に高い第1状態である場合(具体的には、中間導電路54の電位が第2負荷側導電路62の電位よりも高く、且つ電位差が第2ダイオード22での電圧降下分Vfよりも大きい場合)に中間導電路54から第2負荷側導電路62へと電流が流れることを許容し、第1状態が解除された第2状態である場合に中間導電路54から第2負荷側導電路62へと電流が流れることを制限する。
【0035】
制御部30は、第1電圧変換部11及び第2電圧変換部12の動作を制御する部分である。制御部30は、例えばマイクロコンピュータとして構成されており、CPU等の演算装置、ROM又はRAM等のメモリ、AD変換器等を有している。制御部30は、電源部91又は蓄電部93から電力が供給される。制御部30は、第1電圧変換部11及び第2電圧変換部12のそれぞれに対して個別に制御信号を出力し得る構成をなし、第1電圧変換部11及び第2電圧変換部12の電圧変換動作を個別に制御し得る。更に、制御部30は、第2電力供給対象82と通信し得る。また、制御部30は、電源部側導電路71の電圧を検出する電圧検出器(図示省略)の検出値を取得することができ、蓄電部側導電路72の電圧を検出する電圧検出器(図示省略)の検出値を取得することもでき、中間導電路54の電圧を検出する電圧検出器(図示省略)の検出値を取得することもできる。つまり、制御部30は、電源部側導電路71、蓄電部側導電路72、中間導電路54のそれぞれの電圧を特定し得る。なお、制御部30が、電源部側導電路71、蓄電部側導電路72、中間導電路54のそれぞれを流れる電流の大きさや向きを特定し得る構成であってもよい。
【0036】
次にバックアップ回路1の動作について説明する。
バックアップ回路1は、例えば、
図2で示すバックアップ制御を行っていないときには、制御部30が第1電圧変換部11及び第2電圧変換部12のいずれの動作も停止させる。なお、第1電圧変換部11及び第2電圧変換部12の動作停止中には、蓄電部93の充電電圧は所定の第1充電電圧以下となる。
【0037】
制御部30は、このように第1電圧変換部11及び第2電圧変換部12をいずれも停止させているときに所定の充電開始条件が成立した場合(例えば、電源部側導電路71に設けられたスイッチ95がオフ状態からオン状態に切り替えられる場合)に、
図2で示すバックアップ制御を開始し、ステップS1にて第1電圧変換部11による上記第1動作を開始させ、第1電圧変換部11の電圧変換動作によって蓄電部93に充電電流を供給する。なお、
図3のように、スイッチ95がオン状態に切り替わった直後から、電源部91からの電力が第1電力供給対象81及び第2電力供給対象82に供給され、電源部91からの電力供給が正常状態であれば、
図3のような電力供給が所定の終了条件が成立するまで(例えば、スイッチ95がオフ状態に切り替わるまで)継続する。
【0038】
制御部30は、ステップS1の後、所定の充電停止条件が成立したか否か(例えば、蓄電部93の充電電圧が上記第1充電電圧よりも高い所定の第2充電電圧に達したか否か)を判定し、充電停止条件が成立した場合には、ステップS3にて第1電圧変換部11の電圧変換動作(第1動作)を停止させる。
【0039】
制御部30は、ステップS3で第1電圧変換部11の動作を停止させた後、ステップS4にて第2電圧変換部12の電圧変換動作を開始させる。
図2の例では、ステップS3で第1電圧変換部11の動作を停止させることが「所定の第1バックアップ条件の成立」であり、制御部30は、このように第1バックアップ条件が成立したことに応じて、ステップS4にて第2電圧変換部12に電圧変換動作を開始させる。制御部30は、ステップS4で第2電圧変換部12の電圧変換動作を開始させた場合、中間導電路54に所定電圧を印加させるように第2電圧変換部12の電圧変換動作(蓄電部側導電路72に印加された直流電圧を昇圧して中間導電路54に印加する昇圧動作)を制御する。第2電圧変換部12が電圧変換動作を行っているときに目標値とされる「所定電圧」は、電源部91が満充電状態であり且つ正常状態(電源部側導電路71の電圧が所定閾値以上である場合)に電源部側導電路71に印加される電圧よりも低い電圧である。そして、このように制御部30が第2電圧変換部12に電圧変換動作を行わせているときには、電源部側導電路71と蓄電部側導電路72とが抵抗部32を介して導通するため、蓄電部93の充電電圧が電源部91の充電電圧よりも低い場合には、電源部91から抵抗部32を介して蓄電部93へと充電電流が少しずつ供給される。
【0040】
制御部30は、ステップS4で第2電圧変換部12の動作を開始させた後、ステップS5にて指示情報を取得したか否かを判定する。
【0041】
電源システム100では、第1電力供給対象81への電力供給が停止状態となった場合に第2電力供給対象82が制御部30に対して所定の指示情報を出力する構成となっている。例えば、スイッチ95がオン状態となっているときに第2電力供給対象82が第1負荷側導電路61の電圧(電位)を監視し、第1負荷側導電路61の電圧(電位)が一定値未満に低下した場合に制御部30に対して所定の指示情報を出力し、第1負荷側導電路61の電圧(電位)が一定値以上であれば制御部30に対して上記指示情報を出力しないようになっている。
【0042】
制御部30は、ステップS4で第2電圧変換部12の電圧変換動作を開始させてから、ステップS5又はS6でYesとなるまでの間(即ち、所定の動作停止条件が成立するか、指示情報を取得するまでの間)、第2電圧変換部12に電圧変換動作を行わせながら指示情報を監視し、第2電圧変換部12に電圧変換動作を行わせているときに第2電力供給対象82から指示情報を取得した場合、ステップS7で第1電圧変換部11に第2動作を開始させる。
【0043】
上述したように、電源システム100では、スイッチ95がオン状態のときに電源部91からの電力供給が正常状態である場合、
図3のように第1電力供給対象81及び第2電力供給対象82に対する電力供給が継続する。しかし、電源部91からの電力供給が大幅に低下又は停止した場合(例えば、
図4のように電源部側導電路71において断線や地絡が発生した場合)、電源部側導電路71を介しての電力供給は急低下又は停止し、第1負荷側導電路61の電圧も低下する。そして、第1負荷側導電路61の電圧が所定値以下に低下した場合、これに応じて第2電力供給対象82から制御部30へ指示情報が送信され、制御部30は、この指示情報に応じて、第1電圧変換部11に第2動作を行わせることになる。なお、このときの「所定値」は、中間導電路54に印加される上記「所定電圧」よりも低い値であり、0よりも大きい値である。但し、第1負荷側導電路61の電圧が所定値以下に低下してから第1電圧変換部11の第2動作によって十分な電圧が供給されるまでの間、電源部側導電路71を介しての電力供給は低下又は停止してしまうが、
図4の(1)の矢印のように、第1負荷側導電路61の電圧が所定値以下に低下した直後から中間導電路54を介して即座に電力が供給されるため、第2電圧変換部12に対する電力供給は途切れずに済む。このように、矢印(1)の経路で即座に電力供給を行ってから、それほど時間をあけずに
図4の矢印(2)の経路でも電力供給が開始されるため、第1電力供給対象81に対する電力供給も早期に行い得る。なお、この例では、制御部30が第2電力供給対象82から指示情報を取得したことが「所定の第2バックアップ条件が成立したこと」であり、制御部30は、第2電圧変換部12に電圧変換動作を行わせているときに「所定の第2バックアップ条件が成立したこと」に応じて第1電圧変換部11に第2動作を行わせる構成となっている。
【0044】
一方、制御部30がステップS4で第2電圧変換部12に電圧変換動作を開始させてから指示情報を取得することなく所定の動作停止条件が成立した場合、制御部30は、ステップS8で第2電圧変換部12の電圧変換動作を停止させ、ステップS9において蓄電部93の充電電圧が上記第1充電電圧となるまで蓄電部93を放電させる。所定の動作停止条件は、例えば、「スイッチ95がオン状態からオフ状態に切り替わったこと」などである。なお、ステップS9で放電動作を行った後には、第1電圧変換部11及び第2電圧変換部12のいずれも停止状態となる。
【0045】
次に、バックアップ回路1の効果を例示する。
上記バックアップ回路1が適用される車載用電源システム100では、電源部91から電源部側導電路71を介してなされる電力供給が所定の正常状態である場合、電源部91からの電力が第1電力供給対象81及び第2電力供給対象82に供給される。一方、何らかの原因によって電源部91からの電力供給が途絶えても、バックアップ回路1において第2電圧変換部12が電圧変換動作を行っている最中であれば、蓄電部93からの電力供給に基づき、中間導電路54から第2負荷側導電路62に即座に電力を供給することができるため、第2負荷側導電路62を即座にバックアップすることができる。
【0046】
しかも、上記バックアップ回路1は、所定期間には第1電圧変換部11の第1動作によって蓄電部93を迅速に充電することができ、第2電圧変換部12が電圧変換動作を行っているときには電源部側導電路71と蓄電部側導電路72とが抵抗部32を介して導通する構成であるため、内部消費や自己放電が生じても抵抗部32を介して蓄電部93へ充電電流を供給することができ、蓄電部93の充電電圧の低下を抑えることができる。ゆえに、第2電圧変換部12が電圧変換動作を行っている最中に蓄電部93の充電電圧をより高く維持することができ、電源部91からの電力供給が途絶えたときに蓄電部93の充電電圧が不足する事態を回避しやすくなる。
【0047】
更に、制御部30は、第2電圧変換部12に電圧変換動作を行わせているときに所定の第2バックアップ条件が成立した場合に、第1電圧変換部11に第2動作を行わせるため、蓄電部93からの電力供給に基づく電力を第1電力供給対象81に対しても供給することが可能となる。つまり、電源部91からの電力供給が途絶えた場合に、第2電力供給対象82に対しては即座に電力を供給し、第1電力供給対象81に対しては第2バックアップ条件の成立に応じて電力を供給するように、優先順位を定めた方式でバックアップ動作を行うことができる。
【0048】
更に、バックアップ回路1は、電源部91が満充電状態であり且つ正常状態であるときに中間導電路54に所定電圧が印加された場合に上記第2状態となる構成であり、制御部30は、上記所定電圧を中間導電路54に印加するように第2電圧変換部12に電圧変換動作を行わせる構成である。このように構成されたバックアップ回路1は、電源部91が満充電状態のときに第2電圧変換部12が電圧変換動作を行っても、中間導電路54から第2負荷側導電路62に電流が流れないため、第2電圧変換部12による電圧変換動作中の電力消費を抑えることができる。そして、このように電力消費を抑えながら準備を継続しつつ、電源部91からの電力供給が途絶えた場合には中間導電路54を介して即座に電力を供給することができる。
【0049】
バックアップ回路1は、アノードが電源部側導電路71及び第1負荷側導電路61に電気的に接続されるとともにカソードが第2負荷側導電路62に電気的に接続される第1ダイオード21と、アノードが中間導電路54に電気的に接続されるとともにカソードが第2負荷側導電路62に電気的に接続される第2ダイオード22と、を備える。そして、第2ダイオード22が素子部として構成されている。このように構成されたバックアップ回路1は、第2負荷側導電路62の電圧が一定値(第2電圧変換部12によって目標とされる所定電圧から第2ダイオード22での電圧降下分を差し引いた値)よりも高い状態から低い状態に変化した場合に第2ダイオード22を介して即座に電流が供給されるようになり、簡易な構成でシームレス性がより高いバックアップ動作が可能となる。更に、第2負荷側導電路62と電源部側導電路71との間に第1ダイオード21が介在するため、電源部側導電路71で地絡等が発生して電源部側導電路71の電圧が急低下した場合に第2負荷側導電路62から電源部側導電路71に電流が流れ込むことを防ぐことができ、第2ダイオード22を介してなされるバックアップ中に第2負荷側導電路62の電圧が低下してしまうことを防ぐことができる。よって、第2電力供給対象82をより一層安定的にバックアップすることができる。
【0050】
更に、バックアップ回路1は、第1電圧変換部11によって蓄電部93を充電する場合には、電力容量の大きい第1電圧変換部11によってより大きな充電電流を流すことができるため、迅速に充電電圧を高めることができ、第2電圧変換部12を動作させて電源失陥に備える場合には、電力容量が相対的に低い第2電圧変換部12の動作を継続するようにして効率的に準備することができる。
【0051】
また、バックアップ回路1が適用される車載用電源システム100は、電源部91からの電力供給が途絶えた場合に第1電力供給対象81への電力供給が停止状態となり、第2電力供給対象82は、この停止状態に応じて所定の指示情報を出力するように動作する。一方、バックアップ回路1の制御部30は、第2電圧変換部12に電圧変換動作を行わせているときに第2電力供給対象82から指示情報を取得した場合、第1電圧変換部11に第2動作を行わせるように動作する。このような構成であるため、電源部91からの電力供給が途絶えた場合にその状態を早期に検出し、蓄電部93からの電力供給に基づく電力を第1電力供給対象81に対しても供給することが可能となる。
しかも、電源部91からの電力供給が途絶えても、第2電力供給対象82に対してシームレス性の高いバックアップ動作を即座に行うことができるため、第2電力供給対象82に対する電力不足によって「第1電力供給対象81への電力供給が停止状態となったこと」を検出できないような事態を防ぐことができ、制御部30に対して第2動作を開始させるためのトリガをより確実に与えやすくなる。よって、電源部91からの電力供給が途絶えても、第1電力供給対象81に対して第1電圧変換部11を利用した電力供給をより早期に且つより確実に開始しやすくなる。
【0052】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0053】
実施例1では、電源部91に鉛バッテリを用いているが、この構成に限定されず、本明細書のいずれの例においても、鉛バッテリに代えて又は鉛バッテリと併用して電源部91に他の電源手段(公知の他の蓄電手段や発電手段など)を用いてもよい。電源部91を構成する電源手段の数は1つに限定されず、複数の電源手段によって構成されていてもよい。
【0054】
実施例1では、蓄電部93に電気二重層キャパシタ(EDLC)を用いているが、この構成に限定されず、本明細書のいずれの例においても、蓄電部93にリチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、ニッケル水素充電池などの他の蓄電手段を用いてもよい。また、蓄電部93を構成する蓄電手段の数は1つに限定されず、複数の蓄電手段によって構成されていてもよい。
【0055】
実施例1では、蓄電部93の充電電圧が電源部91の充電電圧よりも低くなる構成を例示したが、蓄電部93の充電電圧が電源部91の充電電圧と同程度であってもよく、蓄電部93の充電電圧が電源部91の充電電圧よりも高くてもよい。蓄電部93の充電電圧が電源部91の充電電圧よりも高い構成では、第1電圧変換部11は、電源部側導電路71に印加された電圧を昇圧して蓄電部側導電路72に出力電圧を印加するように第1動作を行い、蓄電部側導電路72に印加された電圧を降圧して電源部側導電路71に出力電圧を印加するように第2動作を行うようにしてもよい。また、第2電圧変換部12は、蓄電部側導電路72に印加された電圧を降圧して中間導電路54に印加するように電圧変換動作を行ってもよい。
【0056】
実施例1では、制御部30が第2電力供給対象82から指示情報を取得したことが「所定の第2バックアップ条件が成立したこと」であったが、制御部30が電源部側導電路71の電圧を監視し、「電源部側導電路71の電圧が所定値以下に低下したことを制御部30が検出したこと」を、「所定の第2バックアップ条件が成立したこと」としてもよい。
【0057】
実施例1では、スイッチ95がオフ状態からオン状態に切り替わったことを「所定の充電開始条件の成立」としたが、例えば、蓄電部93の充電電圧が所定充電電圧以下に低下したことを「所定の充電開始条件の成立」とし、
図2の制御を開始するようにしてもよい。
【0058】
実施例1では、ステップS3で第1電圧変換部11の動作が停止したことが「所定の第1バックアップ条件の成立」であったが、第1電圧変換部11の第1動作中に蓄電部93の充電電圧が所定充電電圧(例えば、蓄電部93の満充電時の充電電圧よりも低い値)に達したことを「所定の第1バックアップ条件の成立」としてもよい。
【0059】
実施例1では、蓄電部93の充電電圧が第2充電電圧に達したことを「充電停止条件の成立」としたが、蓄電部側導電路72を流れる充電電流が所定電流値以下に低下したことを「充電停止条件の成立」としてもよい。
【0060】
実施例1では、スイッチ95について具体的に限定していないが、スイッチ95は、車両の始動スイッチ(イグニッションスイッチ等)であってもよく、車両の始動スイッチに連動してオンオフ動作するスイッチであってもよく、始動スイッチとは別のスイッチであってもよい。