【実施例】
【0016】
最初に
図1、
図2に基づいて本発明の貯湯給湯システム1の全体構成について説明する。
貯湯給湯システム1は、ヒートポンプ式熱源機2と、貯湯給湯ユニット3と、太陽光発電装置4を備えている。貯湯給湯ユニット3は、ヒートポンプ式熱源機2の貯湯運転により加熱された湯水を貯留する貯湯タンク11と、燃焼式熱源機12と、給湯使用予測に基づいて必要貯湯熱量(必要熱量)を給湯使用時刻までに貯湯タンク11に貯留するように貯湯運転を制御する制御部13(制御手段)等を備えている。ヒートポンプ式熱源機2は、制御部13からの貯湯運転の指令に基づいて、外気から吸熱して湯水を加熱し、この加熱した湯水を貯湯タンク11に貯留する。
【0017】
太陽光発電装置4は、太陽光で発電するソーラーパネル5が発電した直流電力をまとめるために接続された接続箱6と、接続箱6からの直流電力を交流電力(発電電力)に変換するために接続されたパワーコンディショナ7と、パワーコンディショナ7からの発電電力を家庭内の使用箇所に分配可能なように接続された分電盤8で構成されている。分電盤8は、商用電源線9からの交流電力(商用電力)も家庭内の使用箇所に分配する。パワーコンディショナ7から供給される発電電力を家庭内に分配して余った電力は、分電盤8から商用電源線9を介して外部に送って売電する。
【0018】
分電盤8から分配される電力の一部は電源線3aを介して貯湯給湯ユニット3に供給され、貯湯給湯ユニット3から電源線2aを介してヒートポンプ式熱源機2に駆動用の電力が供給される。尚、ヒートポンプ式熱源機2及び貯湯給湯ユニット3は、分電盤8から分配される発電電力及び商用電力を夫々単独で使用して、又はこれらを併用して駆動可能である。
【0019】
貯湯給湯ユニット3は、ヒートポンプ式熱源機2で加熱して貯湯タンク11に貯留した湯水を給湯や浴槽29の湯張りに使用する。また、貯湯タンク11の湯水を給湯できない高温給湯や浴槽29の追焚運転等の場合に、燃焼式熱源機12において燃料を燃焼させて加熱した湯水を給湯や追焚運転等に使用する。
【0020】
貯湯タンク11の上部には、貯湯タンク11に貯留した湯水を出湯するための出湯通路14が接続されている。出湯通路14は湯水混合弁15に接続され、湯水混合弁15に供給する湯水の出湯温度を検知するための出湯温度センサ14aが配設されている。また、貯湯タンク11の下部には、貯湯タンク11に上水源から上水を供給するための給水通路16が接続されている。給水通路16には、上水源から供給される上水の給水温度を検知するための給水温度センサ16aが配設されている。
【0021】
湯水混合弁15は、出湯通路14の湯水と、給水通路16から分岐して湯水混合弁15に上水を供給可能に接続されたバイパス通路17の上水を混合し、その混合比率を調整可能である。湯水混合弁15には給湯通路18が接続され、湯水混合弁15で混合された湯水は、給湯通路18を流通して図示外の給湯栓等に給湯される。また、湯水混合弁15で混合された湯水は、給湯通路18から分岐して追焚回路32に接続する湯張り通路19を介して浴槽29に湯張り可能である。給湯通路18には、給湯温度を検知するための給湯温度センサ18aが配設されている。
【0022】
貯湯タンク11の下部にはヒートポンプ式熱源機2に湯水を供給する上流加熱通路21aが接続され、このヒートポンプ式熱源機2で加熱された湯水を貯湯タンク11に供給する下流加熱通路21bが貯湯タンク11の上部に接続されて、貯湯タンク11とヒートポンプ式熱源機2の間で沸き上げポンプ22により湯水が循環可能な循環加熱回路21が形成されている。上流加熱通路21aにはヒートポンプ式熱源機2の入水温度を検知する温度センサ23aが配設され、下流加熱通路21bにはヒートポンプ式熱源機2の出湯温度を検知する温度センサ23bが配設されている。
【0023】
貯湯タンク11の外周には、貯留された湯水の温度を検知する複数の貯湯温度センサ11a〜11dが上下方向に所定の間隔を空けて設けられている。これら貯湯温度センサ11a〜11d及び貯湯タンク11は、貯湯タンク11からの放熱を低減する図示外の保温材により覆われている。
【0024】
貯湯タンク11の湯水を燃焼式熱源機12で加熱するための燃焼加熱通路24が、出湯通路14から分岐されて燃焼式熱源機12に接続されている。燃焼式熱源機12で加熱した湯水を出湯するための燃焼出湯通路25は、燃焼加熱通路24の分岐部より下流側の出湯通路14に調整弁26を介して接続されている。調整弁26は、燃焼出湯通路25を通って出湯通路14に供給される湯水量を調整する。燃焼加熱通路24には、三方弁27と燃焼式熱源機12に湯水を送るためのポンプ28が配設されている。
【0025】
燃焼出湯通路25から分岐した熱交換器通路30は、三方弁27に接続されている。三方弁27は、貯湯タンク11の湯水又は熱交換器通路30の湯水を燃焼式熱源機12に供給可能となるように切換えられる。熱交換器通路30には熱交換器30aと開閉弁30bが配設されている。また、給水通路16から分岐した分岐通路部16bが熱交換器通路30の開閉弁30bと三方弁27の間に接続されている。熱交換器30aは、追焚ポンプ31の作動により追焚回路32を流れる浴槽29の湯水を燃焼式熱源機12で加熱した湯水との熱交換により加熱する追焚運転に使用される。
【0026】
ヒートポンプ式熱源機2は、圧縮機33、凝縮熱交換器34、膨張弁35、蒸発熱交換器36を冷媒配管により接続したヒートポンプ回路37を備えている。このヒートポンプ式熱源機2は、冷媒配管に封入された冷媒を圧縮機33で圧縮して昇温し、沸き上げポンプ22を駆動して循環加熱回路21を流通する湯水を凝縮熱交換器34において高温の冷媒との熱交換により加熱して貯湯タンク11に貯湯する。熱交換後の冷媒は、膨張弁35で膨張して外気より低温になり、蒸発熱交換器36で外気から吸熱した後、再び圧縮機33に導入される。
【0027】
蒸発熱交換器36は、外気温度を検知する外気温度センサ36aと送風機36bを備えている。また、ヒートポンプ式熱源機2は、圧縮機33、膨張弁35、送風機36b等を制御する補助制御部38を備えている。補助制御部38は、貯湯給湯システム1の主たる制御手段である制御部13に通信可能に接続され、制御部13の指令に基づいてヒートポンプ式熱源機2を制御する。
【0028】
制御部13は、分電盤8に通信可能に接続されて発電状況や売電可能な余剰電力の有無を受信する。この制御部13は、出湯温度センサ14a等の検知信号に基づいて給湯運転等を制御すると共に、過去の給湯使用における給湯量や各種温度、給湯使用時刻等の給湯履歴、及び発電状況履歴等を学習記憶している。そしてこの給湯履歴に基づいて将来の給湯使用予測を所定の時間間隔(例えば5分間隔)で繰り返し行い、発電状況履歴に基づいて季節や設置環境等によって変化する太陽光発電装置4の発電可能な時間帯の始時刻や終時刻(発電終了設定時刻te)を日毎に設定する。また、制御部13には、ユーザによる給湯設定温度の設定等の操作のための操作端末13aが通信可能に接続されている。操作端末13aは各種設定用のスイッチ等を複数備え、給湯設定温度や湯張り時刻等、各種入力設定が可能なように構成されている。操作端末13aから発電終了設定時刻teを設定するようにしてもよい。
【0029】
給湯使用予測では、予測した給湯使用量に基づいて必要貯湯熱量を演算し、この必要貯湯熱量の貯湯が予測した給湯使用時刻t4までに完了するように貯湯運転開始時刻t3を設定する。また、制御部13は、売電可能な余剰電力があるときには、この余剰電力を使用して貯湯運転が可能な場合に、設定された貯湯運転開始時刻t3より前に貯湯を開始する繰上げ貯湯運転を実行する。そして、予測した給湯使用時刻t4までに必要貯湯熱量の貯湯が完了するように制御する。この制御部13による貯湯の制御について、
図3のフローチャートに基づいて説明する。図中のSi(i=1,2,・・・)はステップを表す。
【0030】
最初にS1において、余剰電力があるか否か判定する。S1の判定がYesの場合はS2に進み、S1の判定がNoの場合はS1に戻る。次にS2において、現在の時刻t1から予測した給湯使用時刻t4までの時間αが第1所定時間T1(例えば3時間)以下か否か判定する。S2の判定がYesの場合はS3に進み、S2の判定がNoの場合はS1に戻る。次にS3において、給湯使用予測に基づいて設定した貯湯運転開始時刻t3よりも前の時刻t1に貯湯を開始する繰上げ貯湯運転を開始してS4に進む。
【0031】
次にS4において、余剰電力が有るか否か判定する。S4の判定がYesの場合はS5に進み、S5において現在時刻が発電終了設定時刻teより前か否か判定する。S5の判定がYesの場合は余剰電力を使用して貯湯が完了できる見込みがあるので、S6に進んで繰上げ貯湯運転を継続してS7に進む。そしてS7において、繰上げ貯湯熱量が給湯使用予測に基づき設定された必要貯湯熱量と同等になって貯湯が完了したか否か判定する。S7の判定がYesの場合はS8に進んで繰上げ貯湯運転を終了し、S7の判定がNoの場合はS4に戻る。
【0032】
一方、S4の判定がNoの場合にはS9に進み、S9において繰上げ貯湯運転を継続した場合の貯湯完了時刻t2が発電終了設定時刻teより前か否か判定する。S9の判定がYesの場合は余剰電力ありの状態に戻る見込みがあるので、繰上げ貯湯運転を継続可能なようにS5に進み、S9の判定がNoの場合は繰上げ貯湯運転を停止するためにS10に進む。そしてS10において必要貯湯熱量から余剰電力がなくなった時刻tvまでの繰上げ貯湯熱量を差し引いた残必要貯湯熱量(未貯留熱量)を演算し、給湯使用時刻t4までに残必要貯湯熱量を貯湯するための貯湯運転開始時刻t3’を設定する。
【0033】
次にS11において、余剰電力がなくなった時刻tvと残必要貯湯熱量の貯湯運転開始時刻t3’の時間差βが第2所定時間T2(例えば1時間)以下か否か判定する。S11の判定がYesの場合は繰上げ貯湯運転を継続可能なようにS5に進み、S11の判定がNoの場合はS13に進んで繰上げ貯湯運転を停止してS14に進む。
【0034】
また、S5の判定がNoの場合はS12に進み、S12において繰上げ貯湯運転を継続した場合の放熱ロスが、ヒートポンプ式熱源機2の再起動による起動ロスより小さいか否か判定する。放熱ロスは、貯湯タンク11からの放熱によって減少する熱量である。起動ロスは、同じ電力でヒートポンプ式熱源機2を駆動した場合に、安定駆動時に貯留できる熱量と、起動から安定駆動に至るまでの運転効率が低い状態で貯留できる熱量との差分相当の貯湯できない熱量である。S12の判定がYesの場合にS6に進み、S12の判定がNoの場合にはS13に進んで繰上げ貯湯運転を停止してS14に進む。
【0035】
次にS14において、給湯使用時刻t4までに残必要貯湯熱量を貯湯するための貯湯運転開始時刻t3’になったか否か判定する。S14の判定がYesの場合はS15に進んで貯湯運転を行ってS16に進み、S16において残必要貯湯熱量の貯湯が完了したか否か判定する。S16の判定がYesの場合はS8に進んで貯湯を終了し、S16の判定がNoの場合はS15に戻る。また、S14の判定がNoの場合は貯湯運転開始時刻t3’までS14の判定を繰り返すことになる。
【0036】
上記の貯湯制御を行ったときの貯湯を
図4〜
図7のタイムチャートに基づいて説明する。時刻t1において、給湯使用時刻t4までの時間αが第1所定時間T1以下であり、且つ余剰電力があるため必要貯湯熱量の貯湯運転開始時刻t3より前に繰上げ貯湯運転を開始する(
図3のS1〜S3参照)。そして、
図4に示す第1の例のように、繰上げ貯湯運転実行中に余剰電力がなくなることなければ、必要貯湯熱量と同等の繰上げ貯湯熱量の貯湯が時刻t2において完了し、貯湯を終了する(
図3のS4〜S8参照)。
【0037】
図5に示す第2の例のように、繰上げ貯湯運転実行中の時刻tvに余剰電力がなくなっても、繰上げ貯湯運転を継続した場合の貯湯完了時刻t2が発電終了設定時刻teより前なので、商用電力により、又は余剰電力がある状態に戻れば余剰電力も使用して繰上げ貯湯運転を継続する(
図3のS9参照)。そして、必要貯湯熱量と同等の繰上げ貯湯熱量の貯湯が時刻t2において完了し、貯湯を終了する。
【0038】
図6に示す第3の例のように、繰上げ貯湯運転実行中の時刻tvで余剰電力がなくなり、繰上げ貯湯運転を継続した場合の貯湯完了時刻t2が発電終了設定時刻teより後であっても、時刻tvから貯湯運転開始時刻t3’までの時間差βが第2所定時間T2以下であれば、繰上げ貯湯運転を継続する(
図3のS11参照)。時刻t3’でヒートポンプ式熱源機2を起動するときの起動ロスが貯湯完了時刻t2から給湯使用時刻t4までの放熱ロスより大きいので、貯湯運転を継続することにより運転効率の悪化を回避している。
【0039】
図7に示す第4の例のように、繰上げ貯湯運転実行中の時刻tvで余剰電力がなくなり、繰上げ貯湯運転を継続した場合の貯湯完了時刻t2が発電終了設定時刻teより後であって、時刻tvから貯湯運転開始時刻t3’までの時間差βが第2所定時間T2より長い場合には、起動ロスより放熱ロスが大きくなるため貯湯運転を停止する(
図3のS11,S13参照)。そして残必要貯湯熱量の貯湯運転を貯湯運転開始時刻t3’に開始する。
【0040】
本発明の貯湯給湯システム1の作用、効果について説明する。
貯湯給湯システム1は、予測した給湯使用に必要な必要貯湯熱量を貯湯運転によって貯湯タンク11に貯留し、太陽光発電装置4の発電電力に売電可能な余剰電力がある場合にその余剰電力を使用して貯湯運転を行うことができる。余剰電力を使用する貯湯運転の場合には、現在の時刻t1から予測した給湯使用時刻t4までの時間αが第1所定時間T1以下のときに繰上げ貯湯運転を行うので、貯湯タンク11における貯留時間を短くして放熱による湯水の温度低下を小さくすることができ、貯留した湯水が無駄にならない。
【0041】
繰上げ貯湯運転の実行中に天候等により余剰電力がなくなった場合には、商用電源から供給される電力で繰上げ貯湯運転を継続すれば、太陽光発電装置4の設置環境によって異なる発電可能な時間帯の終了時刻を設定した発電終了設定時刻teまでに貯湯が完了するときには、繰上げ貯湯運転を継続する。繰上げ貯湯運転継続中に再び余剰電力ありの状態になればその余剰電力を使用して貯湯運転可能であると共に、貯湯運転が断続的に行われることを回避してヒートポンプ式熱源機2の運転効率の悪化を防ぐことができる。
【0042】
また、発電終了設定時刻teまでに貯湯が完了しないときには、繰上げ貯湯運転を停止し、必要貯湯熱量のうち未貯留の残必要貯湯熱量の貯湯運転開始時刻t3’まで待機する。これにより、商用電力を使用して繰上げ貯湯運転により貯留した湯水の給湯使用時刻t4までの放熱による温度低下を防止可能である。発電終了設定時刻teまでに繰上げ貯湯運転による貯湯が完了しないときであっても、余剰電力がなくなった時刻tvから必要熱量のうちの未貯留熱量である残必要貯湯熱量を貯留する貯湯運転開始時刻t3’までの時間差βが第2所定時間T2以下である場合には、繰上げ貯湯運転を停止しない。これによりヒートポンプ式熱源機2の起動ロスによる運転効率の悪化を防ぐことができる。
【0043】
その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態をも包含するものである。