特許第6963767号(P6963767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963767
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20211028BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20211028BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20211028BHJP
   H01M 50/109 20210101ALI20211028BHJP
   H01M 50/153 20210101ALI20211028BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20211028BHJP
   H01M 50/167 20210101ALI20211028BHJP
【FI】
   H01M10/0585
   H01M10/052
   H01M10/0562
   H01M50/109
   H01M50/153
   H01M50/184 E
   H01M50/167
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2021-500130(P2021-500130)
(86)(22)【出願日】2020年8月31日
(86)【国際出願番号】JP2020032856
(87)【国際公開番号】WO2021040044
(87)【国際公開日】20210304
【審査請求日】2021年6月4日
(31)【優先権主張番号】特願2019-156633(P2019-156633)
(32)【優先日】2019年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100194777
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 憲治
(72)【発明者】
【氏名】川端 雄介
(72)【発明者】
【氏名】藤本 晃広
(72)【発明者】
【氏名】大塚 拓海
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−170071(JP,A)
【文献】 特開2005−56827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/052
H01M 10/0562
H01M 50/109
H01M 50/153
H01M 50/184
H01M 50/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と筒状側壁部とを有する外装缶と、
平面部と周壁部とを有し、前記外装缶に対向する封口缶と、
前記外装缶と前記封口缶との間に収容され、正極材層と負極材層と前記正極材層と前記負極材層との間に配置される固体電解質層とを含む発電要素とを備え、
前記平面部と前記周壁部とは、曲面部を介して連続して形成され、
前記発電要素の外周面の上端と前記平面部の内面及び前記曲面部の内面の第1の境界との間に、第1の隙間が形成され、
前記第1の隙間は、該第1の隙間が最大となる位置において径方向に2.0mm以下の幅を有する、全固体電池。
【請求項2】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記平面部の内面の直径と前記発電要素の直径との差は、2.0mm以下である、全固体電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の全固体電池であって、
前記第1の隙間は、径方向に0.01mm以上の幅を有する、全固体電池。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の全固体電池であって、さらに、
前記周壁部は、曲面部側の基端部と、前記基端部の外径よりも大きく形成された開口端側の拡径部と、前記基端部と前記拡径部との間の段部とを有する、全固体電池。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の全固体電池であって、さらに、
前記筒状側壁部と前記周壁部との間に配置されるガスケットを備え、
前記ガスケットは、前記底部と前記周壁部の開口端との間に配置され、前記周壁部から径方向内側に突出するガスケット底部を有し、
前記発電要素の外周面と前記ガスケット底部の内周面との間に、第2の隙間が形成され、
前記第2の隙間は、該第2の隙間が最大となる位置において径方向に2.0mm以下の幅を有する、全固体電池。
【請求項6】
請求項5に記載の全固体電池であって、
前記ガスケット底部の内周面の内径と前記発電要素の直径との差は、2.0mm以下である、全固体電池。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の全固体電池であって、
前記第2の隙間は、径方向に0.01mm以上の幅を有する、全固体電池。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の全固体電池であって、
前記底部と前記平面部との間には、前記発電要素が複数直列に積層されて収容され、
前記第1の隙間は、前記平面部の最も近くに配置される発電要素の外周面の上端と前記平面部の内面及び前記曲面部の内面の第1の境界との間に形成され、
前記第2の隙間は、前記底部の最も近くに配置される発電要素の外周面と前記ガスケット底部の内周面との間に形成される、全固体電池。
【請求項9】
請求項4に記載の全固体電池であって、
前記底部と前記平面部との間には、前記発電要素が複数直列に積層されて収容され、
前記基端部の内面は、前記曲面部の内面から連続して形成される周側面と該周側面から前記段部の内面まで連続して形成される曲率面との間に第2の境界を有し、
前記発電要素のうち前記平面部の最も近くに配置されるのが正極材層である場合、前記平面部の内面から前記第2の境界までの高さは、前記平面部の内面から前記平面部に最も近い負極材層の外周面の上端までの高さよりも小さく、
前記発電要素のうち前記平面部の最も近くに配置されるのが負極材層である場合、前記平面部の内面から前記第2の境界までの高さは、前記平面部の内面から前記平面部に最も近い正極材層の外周面の上端までの高さよりも小さい、全固体電池。
【請求項10】
請求項9に記載の全固体電池であって、
前記周側面は、軸方向において前記平面部から離れるにしたがって径方向外方に広がる、全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
全固体電池、特に固体電解質として硫化物系固体電解質を用いた全固体電池は、電池内部に水分が侵入すると電池特性が劣化する。そのため、全固体電池は、外部からの水分の侵入に強い構造である必要がある。
【0003】
従来、特開2019−21428号公報は、固体電解質層を有するコイン型電池を開示している(特許文献1)。従来のコイン型電池は、金属製封口板(封口缶)の側壁部が平板部から鉛直に折れ曲がり、その側壁部の縁端部が外側に折り合わされている。また、封口缶の側壁部と金属製ケース(外装缶)の側壁部との間にはガスケットが配置されている。外装缶の縁端部は、折り合わされた封口缶の側壁部の先端の方向へ内部側に向くように湾曲し、カシメられている。
【0004】
従来のコイン型電池は、外装缶と封口缶とをカシメることにより、外部からの水分が侵入しにくい構造になっている。しかしながら、従来のコイン型電池は、封口缶の折り合わされた縁端部の先端面が狭いため、先端面の上方から外装缶の縁端部をカシメても適切なカシメ圧力を掛けることができない。そのため、従来のコイン型電池は、外装缶と封口缶とのカシメが不足し、外部から水分が侵入するおそれがあった。
【0005】
一方で、特開2017−162771号公報は、全固体電池ではないものの、封口缶の側壁部に段部を設けた電池を開示している(特許文献2)。従来の電池は、外装缶の縁端部が封口缶の側壁部に設けた段部の方向へ湾曲し、外装缶と封口缶とをカシメている。そのため、この電池は、充分なカシメ圧力を掛けて外装缶と封口缶とをカシメることができ、外部からの水分の侵入を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019−21428号公報
【特許文献2】特開2017−162771号公報
【発明の概要】
【0007】
しかしながら、通常、全固体電池は、電池内部に硬質の発電要素を配置する構造であるため、封口缶の形状によっては容易に発電要素の位置決めができず、発電要素の位置ズレが生じ得る。このような発電要素の位置ズレは、外装缶と封口缶とのカシメ不良の原因となる。特許文献1のコイン型電池は、封口缶の平板部と積層体(発電要素)との間に加圧部材が構成されている。このコイン型電池は、封口缶の内部に発電要素を配置する際、加圧部材の周端部よりも径方向外側に発電要素の一部がはみ出すと、外装缶と封口缶とをカシメる際に発電要素が傾斜し得る。そのため、従来のコイン型電池は、加圧部材に対する発電要素の位置決めに失敗し、位置ズレが生じると、外装缶と封口缶とのカシメ不良が生じ得るという問題があった。すなわち、従来のコイン型電池は、発電要素の位置決め及び位置ズレについては考慮されていなかった。
【0008】
また、特許文献2の電池は、封口缶の周壁部に段部を設けることにより充分なカシメ圧力で外装缶と封口缶とをカシメることができる。しかしながら、特許文献2の電池は、全固体電池ではなく、発電要素の位置決め及び位置ズレについては考慮されていなかった。
【0009】
そこで、本開示は、発電要素を容易に位置決めして適切に配置し、発電要素の位置ズレを抑制することにより、カシメ不良を生じさせることなく外装缶と封口缶とを充分にカシメることができ、外部からの水分の侵入を防止することができる全固体電池を提供することを課題とする。
【0010】
上記課題を解決するために、本開示は次のように構成した。すなわち、本開示に係る全固体電池は、底部と筒状側壁部とを有する外装缶を備えてよい。全固体電池は、平面部と周壁部とを有し、外装缶に対向する封口缶を備えてよい。全固体電池は、外装缶と封口缶との間に収容され、正極材層と、負極材層と、正極材層と負極材層との間に配置される固体電解質層とを含む発電要素を備えてよい。平面部と周壁部とは、曲面部を介して連続して形成されてよい。発電要素の外周面の上端と平面部の内面及び曲面部の内面の第1の境界との間に、第1の隙間が形成されてよい。第1の隙間は、第1の隙間が最大となる位置において径方向に2.0mm以下の幅を有してよい。
【0011】
本開示に係る全固体電池によれば、発電要素を容易に位置決めして適切に配置し、発電要素の位置ズレを抑制することにより、カシメ不良を生じさせることなく外装缶と封口缶とを充分にカシメることができ、外部からの水分の侵入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態に係る全固体電池の構造を示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る全固体電池の構造を示す断面図である。
図3図3は、第2実施形態に係る全固体電池の構造を示す断面図である。
図4図4は、第2実施形態に係る全固体電池の構造を示す断面図である。
図5図5は、第3実施形態に係る全固体電池の構造を示す断面図である。
図6図6は、第3実施形態に係る全固体電池の構造を示す断面図である。
図7図7は、第4実施形態に係る全固体電池の構造を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
全固体電池は、底部と筒状側壁部とを有する外装缶を備えてよい。全固体電池は、平面部と周壁部とを有し、外装缶に対向する封口缶を備えてよい。全固体電池は、外装缶と封口缶との間に収容され、正極材層と、負極材層と、正極材層と負極材層との間に配置される固体電解質層とを含む発電要素を備えてよい。平面部と周壁部とは、曲面部を介して連続して形成されてよい。発電要素の外周面の上端と平面部の内面及び曲面部の内面の第1の境界との間に、第1の隙間が形成されてよい。第1の隙間は、第1の隙間が最大となる位置において径方向に2.0mm以下の幅を有してよい。
【0014】
第1の隙間を形成したことにより、発電要素を容易に位置決めして封口缶の内部に配置でき、位置ズレを抑制することができる。これにより、全固体電池は、カシメ不良を生じさせることなく、外装缶と封口缶とを充分にカシメることができ、その結果、外部からの水分の侵入を防止することができる。
【0015】
平面部の内面の直径と発電要素の直径との差は、2.0mm以下であってよい。これにより、より確実に発電要素を容易に位置決めでき、発電要素の位置ズレを抑制することができる。
【0016】
第1の隙間は、径方向に0.01mm以上の幅を有してよい。これにより、発電要素が曲面部の内面に接触せず、発電要素の損傷を抑制することができる。
【0017】
周壁部は、曲面部側の基端部と、基端部の外径よりも大きく形成された開口端側の拡径部と、基端部と拡径部との間の段部とを有してよい。これにより、筒状側壁部の径方向に対して略垂直の方向、すなわち縦方向に、段部に対して十分なカシメ圧力を掛けることができる。
【0018】
全固体電池は、さらに、筒状側壁部と周壁部との間に配置されるガスケットを備えてよい。ガスケットは、底部と周壁部の開口端との間に配置され、周壁部から径方向内側に突出するガスケット底部を有してよい。発電要素の外周面とガスケット底部の内周面との間に、第2の隙間が形成されてよい。第2の隙間は、第2の隙間が最大となる位置において径方向に2.0mm以下の幅を有してよい。第2の隙間を形成したことにより、発電要素の外装缶側においても、発電要素を容易に位置決めして封口缶の内部に配置でき、位置ズレをより確実に抑制することができ、より確実に外部からの水分の侵入を防止することができる。
【0019】
ガスケット底部の内周面の内径と発電要素の直径との差は、2.0mm以下であってもよい。これにより、より確実に発電要素を容易に位置決めでき、発電要素の位置ズレを抑制することができる。
【0020】
第2の隙間は、径方向に0.01mm以上の幅を有してよい。これにより、発電要素がガスケットの内周面に接触せず、発電要素の損傷を抑制することができる。
【0021】
全固体電池は、底部と平面部との間に、発電要素が複数直列に積層されて収容されてよい。第1の隙間は、平面部の最も近くに配置される発電要素の外周面の上端と平面部の内面及び曲面部の第1の境界との間に形成されてよい。第2の隙間は、底部の最も近くに配置される発電要素の外周面とガスケット底部の内周面との間に形成されてよい。これにより、発電要素を複数直列に積層した全固体電池であっても、カシメ不良を生じさせることなく、外装缶と封口缶とを充分にカシメることができ、外部からの水分の侵入を防止することができる。
【0022】
全固体電池は、前記底部と前記平面部との間に前記発電要素が複数直列に積層されて収容されてよい。基端部の内面は、曲面部の内面から連続して形成される周側面と周側面から段部の内面まで連続して形成される曲率面との間に第2の境界を有してよい。発電要素のうち平面部の最も近くに配置されるのが正極材層である場合、平面部の内面から第2の境界までの高さは、平面部の内面から前記平面部に最も近い負極材層の外周面の上端までの高さよりも小さくてよい。発電要素のうち平面部の最も近くに配置されるのが負極材層である場合、平面部の内面から前記第2の境界までの高さは、平面部の内面から平面部に最も近い正極材層の外周面の上端までの高さよりも小さくてよい。これにより、短絡を防止することができる。
【0023】
全固体電池は、軸方向において前記平面部から離れるにしたがって径方向外方に広がってよい。これにより、より確実に短絡を防止することができる。
【0024】
(第1実施形態)
以下、本開示の第1実施形態の全固体電池1について、図1を用いて具体的に説明する。まず、図1に示すように、全固体電池1は、基本的には、外装缶2と、封口缶3と、発電要素4と、ガスケット5とから構成されている。なお、本第1実施形態では、全固体電池1は、扁平形電池である。
【0025】
外装缶2は、円形状の底部21と、底部21の外周から連続して形成される円筒状の筒状側壁部22とを備える。筒状側壁部22は、縦断面視で、底部21に対して略垂直に延びるように設けられている。外装缶2は、ステンレスなどの金属材料によって形成されている。なお、外装缶2の形状は、円形状の底部21を備えた円筒形状に限られない。例えば、外装缶2の形状は、底部21を四角形状などの多角状に形成し、筒状側壁部22を底部21の形状に合わせた四角筒状などの多角筒状に形成してもよく、全固体電池1のサイズや形状に応じて、種々変更することができる。そのため、筒状側壁部22の形状は、円筒状だけでなく、四角筒状などの多角筒状も含むものである。
【0026】
封口缶3は、円形状の平面部31と、平面部31の外周から曲面部33を介して連続して形成される円筒状の周壁部32とを備える。封口缶3の開口は、外装缶2の開口と対向している。封口缶3は、ステンレスなどの金属材料によって形成されている。なお、封口缶3の形状は、円形状の平面部31を備えた円筒形状に限られない。例えば、封口缶3の形状は、平面部31を四角形状などの多角状に形成し、周壁部32を平面部31の形状に合わせた四角筒状などの多角筒状に形成してもよく、全固体電池1のサイズや形状に応じて、種々変更することができる。そのため、周壁部32の形状は、円筒状だけでなく、四角筒状などの多角筒状も含むものである。
【0027】
封口缶3の周壁部32は、曲面部33側の基端部32aと、基端部32aの外径よりも大きく形成された開口端側の拡径部32bと、基端部32aと拡径部32bとの間の段部32cとを有している。そのため、周壁部32は、基端部32aよりも拡径部32bが外側に広くなる段状に形成されている。
【0028】
外装缶2と封口缶3とは、発電要素4を内部空間に収容したのち、外装缶2の筒状側壁部22と封口缶3の周壁部32との間にガスケット5を介してカシメられる。具体的には、外装缶2と封口缶3とは、外装缶2と封口缶3の互いの開口を対向させ、外装缶2の筒状側壁部22の内側に封口缶3の周壁部32を挿入したのち、筒状側壁部22と周壁部32との間にガスケット5を介してカシメられる。筒状側壁部22の縁端部は、周壁部32の段部32cの方向へ内側に向くようにカシメられる。そのため、筒状側壁部22の縁端部は、筒状側壁部22の径方向に対して略垂直の方向、すなわち、縦方向へと充分にカシメられる。なお、全固体電池1の製造工程の詳細は、後述する。なお、なお、発電要素4と封口缶3の平面部31との間には、集電体を設けてもよい。発電要素4と外装缶2の底部21との間には、集電体を設けてもよい。
【0029】
封口缶3の平面部31と周壁部32とは、曲面部33を介して連続して形成されている。平面部31と周壁部32とは、金属製の平板材をプレス成形することによって形成される。その際、平面部31と周壁部32との間には、通常、曲面部33が形成される。曲面部33は、平面部31と曲面部33の境界から曲面部33と周壁部32との境界までの範囲をいう。曲面部33の内面は、平面部31の内面と曲面部33の内面の境界10から曲面部33の内面と基端部32aの内面との境界までの範囲をいう。すなわち、平面部31の内面と曲面部33の内面との境界10は、平面部31の内面の外周端に沿って形成されている。
【0030】
発電要素4は、外装缶2と封口缶3との間に収容され、正極材層41と負極材層42と固体電解質層43とを含んでいる。固体電解質層43は、正極材層41と負極材層42との間に配置されている。発電要素4は、外装缶2の底部21側(図示の下方)から正極材層41、固体電解質層43、負極材層42の順で積層されている。発電要素4は、円柱形状に形成されている。発電要素4は、外装缶2の底部21の内面に配置されている。よって、外装缶2は、正極缶として機能する。また、発電要素4は、封口缶3の平面部31の内面に接している。よって、封口缶3は、負極缶として機能する。なお、発電要素4は、円柱形状に限られず、直方体形状や多角柱形状等、全固体電池1のサイズや形状に応じて、種々変更することができる。また、外装缶2側に負極材層42を位置付け、封口缶3側に正極材層41を位置付けるように発電要素4を配置してもよい。その場合、外装缶2が負極として機能し、封口缶3が正極として機能する。
【0031】
正極材層41は、リチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質として、平均粒径3μmのLiNi0.6Co0.2Mn0.2と、硫化物固体電解質(LiPSCl)と、導電助剤であるカーボンナノチューブとを質量比で55:40:5の割合で含有した180mgの正極合剤を直径10mmの金型に入れて円柱形状に成形した正極ペレットである。なお、正極材層41は、発電要素4の正極材層として機能することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、オリビン型複合酸化物等であってもよく、これらを適宜混合したものであってもよい。また、正極材層41のサイズや形状は、円柱形状に限定されるものではなく、全固体電池1のサイズや形状に応じて種々変更可能である。
【0032】
負極材層42は、リチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質として、LTO(LiTi12、チタン酸リチウム)と、硫化物固体電解質(LiPSCl)と、カーボンナノチューブとを重量比で50:45:5の割合で含有した300mgの負極合剤を円柱形状に成形した負極ペレットである。なお、負極材層42は、発電要素4の負極材層として機能することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、金属リチウム、リチウム合金、黒鉛、低結晶カーボンなどの炭素材料や、SiO、LTO(LiTi12、チタン酸リチウム)等であってもよく、これらを適宜混合したものであってもよい。また、負極材層42のサイズや形状は、円柱形状に限定されるものではなく、全固体電池1のサイズや形状に応じて種々変更可能である。
【0033】
固体電解質層43は、60mgの硫化物固体電解質(LiPSCl)を円柱形状に成形したものである。なお、固体電解質層43は、特に限定はされないが、イオン伝導性の点から他のアルジロダイト型などの硫黄系固体電解質であってもよい。硫黄系固体電解質を用いる場合には、正極活物質との反応を防ぐために、正極活物質の表面をニオブ酸化物で被覆することが好ましい。また、固体電解質層43は、水素化物系固体電解質や酸化物系固体電解質等であってもよい。また、固体電解質層43のサイズや形状は、円柱形状に限定されるものではなく、全固体電池1のサイズや形状に応じて種々変更可能である。
【0034】
本第1実施形態では、外装缶2の底部21と封口缶3の平面部31との間に、1つの発電要素4が収容されている。
【0035】
この発電要素4の外周面の上端と上述の境界10との間には、平面視において環状の隙間g1が形成されている。隙間g1は、径方向に1.0mm以下の幅を有する。図1に示すように、隙間g1は、図中において左右に形成されている。そのため、隙間g1の合計は最大でも2.0mm以下となる。このように発電要素4の外周面の上端と境界10との間に隙間g1が形成されたことにより、発電要素4は、封口缶3の内部に配置する際に、容易に位置決めされる。すなわち、発電要素4は、境界10の直径、すなわち平面部31の内面の直径よりも2.0mm以下の小さい直径の円柱状に形成されている。言い換えると、発電要素4の直径は、平面部31の内面の直径よりも小さく、平面部31の内面の直径と発電要素4の直径との差は、2.0mm以下である。そのため、発電要素4は、封口缶3の基端部32aの内部に嵌め込まれるようにして、封口缶3の内部に容易に位置決めして配置される。
【0036】
また、隙間g1は、1.0mm以下という僅かな幅で形成されている。そのため、発電要素4は、封口缶3の内部に配置される際、または、外装缶2と封口缶3とをカシメる際の位置ズレが抑制される。
【0037】
隙間g1の幅は、1.0mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.1mm以下とするのがよい。すなわち、隙間g1の幅が広すぎると、発電要素4の位置決めが困難になり、また、位置ズレが生じるおそれがあるためである。さらに、隙間g1の幅が広すぎると、電池全体に占める発電要素4の割合が小さくなり、電池容量が小さくなるためである。一方、発電要素4の外周面の上端と境界10とを一致させる、すなわち、隙間g1をなくすと、封口缶3の内部に発電要素4を配置する際に、また、外装缶2と封口缶3とをカシメる際に、発電要素4の外周面の上端は、曲面部33の内面に接触しやすくなる。そのため、曲面部33の内面に接触した発電要素4は、損傷するおそれがある。そのため、隙間g1の幅は、0.01mm以上、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.09mm以上とするのがよい。
【0038】
このように、発電要素4の外周面の上端と境界10との間に隙間g1が形成されたことにより、全固体電池1は、発電要素4の損傷を抑制しながら、発電要素4を容易に位置決めして封口缶3の内部に配置でき、位置ズレを抑制することができる。これにより、全固体電池1は、カシメ不良を生じさせることなく、外装缶2と封口缶3とを充分にカシメることができ、その結果、外部からの水分の侵入を防止することができる。したがって、隙間g1の幅は、発電要素4の位置決めの容易さ、位置ズレの抑制及び発電要素4の損傷の抑制を考慮し、いわゆる遊びを確保した上記の幅とするのがよい。
【0039】
このような隙間g1の幅による遊びは、発電要素4の僅かな位置ズレを許容し、大きな位置ズレを抑制する。したがって、この隙間g1の幅において発電要素4が僅かに位置ズレした場合、図2に示すように、隙間g1の幅は、その幅が最大となる位置において2.0mm以下となる。平面部31の内面の直径と発電要素4の直径との差が2.0mm以下であるためである。このように、隙間g1の幅は、発電要素4の僅かな位置ズレを考慮した場合、その幅が最大となる位置でも2.0mm以下としたことにより、発電要素4の大きな位置ズレを抑制できるとともに、この僅かな隙間g1の幅によって発電要素4を容易に位置決めすることができる。この幅が最大となる位置における隙間g1の幅は、2.0mm以下、好ましくは、1.0mm以下、より好ましくは0.2mm以下とするのがよい。なお、図2に示すように、発電要素4の位置ズレが2.0mmである場合には、発電要素4の外周面の上端と境界10との間の一部には隙間g1が形成されない。そのため、外装缶2と封口缶3とをカシメる際に発電要素4の損傷を抑制するという観点からすれば、上述の通り、0.01mm以上、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.09mm以上の幅を有する隙間g1を設けるのがよい。
【0040】
次に、第1実施形態の全固体電池1の製造工程について、図1を参照しながら具体的に説明する。
【0041】
まず、プレス成形によって外装缶2と封口缶3とを準備する。この際、封口缶3の平面部31と周壁部32との間には、曲面部33が形成される。
【0042】
次に、封口缶3の周壁部32にガスケット5を射出成形によって形成する。なお、ガスケット5は、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン樹脂又はポリフェニレンサルファイド樹脂等の樹脂材料によって構成されている。
【0043】
次に、封口缶3の開口側を上方に向け、封口缶3の内部に発電要素4を配置する。この際、発電要素4の外周面の上端と境界10との間には、上述の幅を有する隙間g1が形成される。これにより、発電要素4の損傷を抑制しながら、封口缶3の内部に発電要素4容易に位置決めして配置し、位置ズレを抑制できる。
【0044】
次に、封口缶3の開口側と外装缶2の開口側とを対向させ、外装缶2の筒状側壁部22が封口缶3の周壁部32よりも外側になるようにして、封口缶3の開口側を外装缶2によって被覆する。
【0045】
この際、外装缶2の筒状側壁部22と封口缶3の周壁部32との間には、ガスケット5が配置されている。そして、外装缶2の筒状側壁部22の縁端部を封口缶3の段部32cの方向に向けるようにして、外装缶2と封口缶3とをカシメる。上述の通り、発電要素4が位置決めされて封口缶3の内部に配置され、位置ズレを抑制することができるため、この方法によって得られた全固体電池1は、カシメ不良を生じさせずに、充分なカシメ圧力で外装缶2と封口缶3とをカシメることができる。その結果、全固体電池1は、外部からの水分の侵入を防止することができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態の全固体電池1について、図3を用いて具体的に説明する。なお、第1実施形態に係る全固体電池1と共通する構成については説明を省略し、異なる構成についてのみ具体的に説明する。
【0047】
第2実施形態に係るガスケット5は、ガスケット底部51を有する。ガスケット底部51は、筒状側壁部22と周壁部32との間に配置されたガスケット5から連続して形成されている。ガスケット底部51は、外装缶2の底部21と封口缶3の周壁部32の拡径部32bとの間に配置され、拡径部32bから径方向内側に突出している。ガスケット底部51は、発電要素4の外周面に対向する内周面51aを有している。
【0048】
ガスケット底部51の内周面51aと発電要素4の外周面との間には、隙間g2が形成されている。隙間g2の幅は、発電要素4の位置ズレを抑制するため、1.0mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.1mm以下とするのがよい。隙間g2は、図中において左右に形成されている。そのため、隙間g2の合計は最大でも2.0mm以下となる。発電要素4は、ガスケット51の内周面51aの内径よりも2.0mm以下の小さい直径の円柱状に形成されている。言い換えると、発電要素4の直径は、ガスケット51の内周面51aの内径よりも小さく、ガスケット51の内周面51aの内径と発電要素4の直径との差は、2.0mm以下である。また、ガスケット底部51の内周面51aと発電要素4の外周面とを接触させる、すなわち、隙間g2をなくすと、発電要素4の外周面は、外装缶2と封口缶3とをカシメる際、後述するように平坦ではないガスケット底部51の内周面51aに接触して損傷するおそれがある。さらに、隙間g2が狭すぎると、発電要素4を全固体電池1の内部空間に挿入する際、発電要素4がガスケット底部51に引っ掛かり、発電要素4又はガスケット5が損傷するおそれがあるため、生産効率が悪化する。したがって、隙間g2の幅は、0.01mm以上、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.09mm以上とするのがよい。
【0049】
このように、発電要素4の外周面とガスケット底部51の内周面51aとの間に隙間g2を形成したことにより、発電要素4の下端側においても、発電要素4の損傷を抑制しながら、発電要素4を容易に位置決めして封口缶3の内部に配置でき、位置ズレをより確実に抑制することができる。このように、第2実施形態の全固体電池1は、発電要素4の下端側においても位置ズレを抑制でき、カシメ不良を生じさせることなく、外装缶2と封口缶3とを充分にカシメることができ、より確実に外部からの水分の侵入を防止することができる。
【0050】
また、ガスケット底部51の内周面51aは、通常、図示のように垂直方向に均一な面に形成されておらず、例えば、図示の下端側の方が上端側よりも径方向内側に突出していたり、逆に、上端側の方が径方向内側に突出していたりして平坦ではない場合がある。そのため、本明細書において、隙間g2の幅は、ガスケット底部51の内周面51aのうち最も径方向内側に突出した部分と発電要素4の外周面との幅をいうものとする。
【0051】
また、固体電解質層43の周端部は、図3に示すように、正極材層41の外周面と負極材層42の外周面とから径方向に突出して構成される場合がある。その際、段部32cの下面とガスケット底部51の上面との間に形成されたスペースに固体電解質層43の周端部を収容することができる。このように、第2実施形態の全固体電池1によれば、段部32cの下面とガスケット底部51の上面との間に形成されたスペースを有効に利用することもできる。なお、第2実施形態の固体電解質層43は、第1実施形態と同様に、正極材層41及び負極材層42と同径に形成されてもよい。逆に、第1実施形態の固体電解質層43の周端部は、第2実施形態と同様に、正極材層41の外周面と負極材層42の外周面とから径方向に突出して構成されてもよい。
【0052】
図4に示すように、第2実施形態の隙間g2は、第1実施形態の隙間g1と同様に遊びを有する。このような隙間g2の幅による遊びは、発電要素4の僅かな位置ズレを許容し、大きな位置ズレを抑制する。したがって、この隙間g2の幅において発電要素4が僅かに位置ズレした場合、図4に示すように、隙間g2の幅は、その幅が最大となる位置において2.0mm以下となる。ガスケット底部51の内周面51aの内径と発電要素4の直径との差が2.0mm以下であるためである。このように、隙間g2の幅は、発電要素4の僅かな位置ズレを考慮した場合、その幅が最大となる位置でも2.0mm以下としたことにより、発電要素4の大きな位置ズレを抑制できるとともに、この僅かな隙間g2の幅によって発電要素4を容易に位置決めすることができる。この幅が最大となる位置における隙間g2の幅は、2.0mm以下、好ましくは、1.0mm以下、より好ましくは0.2mm以下とするのがよい。 なお、図4に示すように、発電要素4の位置ズレが2.0mmである場合には、発電要素4の外周面とガスケット5の内周面51aとの間の一部には隙間g2が形成されない。そのため、外装缶2と封口缶3とをカシメる際に発電要素4の損傷を抑制するという観点からすれば、上述の通り、0.01mm以上、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.09mm以上の幅を有する隙間g2を設けるのがよい。また、上述した径方向への突出する固体電解質層43の径方向の長さは、その幅が最大となる位置における隙間g2の幅に応じて適宜決定される。
【0053】
(第3実施形態)
次に、本開示の第3実施形態の全固体電池1について、図5を用いて具体的に説明する。第1実施形態と第2実施形態の全固体電池1と共通する構成については説明を省略し、第1実施形態と第2実施形態の全固体電池1とは異なる構成についてのみ具体的に説明する。
【0054】
第3実施形態の全固体電池1は、外装缶2と封口缶3との間に2つの発電要素4が直列に積層されて収容されている。図示のように、上側の発電要素4は、封口缶3の平面部31に隣接している。また、下側の発電要素4は、外装缶2の底部21に隣接している。2つの発電要素4の間には、集電シート6が配置されている。この全固体電池1は、いわゆるバイポーラ型の全固体電池1である。一般的に、発電要素4はそれぞれ、正極材層41、負極材層42及び固体電解質層43が所定の圧力で固められている。そのため、正極材層41、負極材層42及び固体電解質層43は、通常、それぞれ別個に位置ズレすることはない。しかし、バイポーラ型の全固体電池1は、2つの発電要素4が集電シート6を介して上下に載置されているにすぎない。そのため、2つの発電要素4は、それぞれ別個に位置ズレするおそれがある。なお、上側の発電要素4と封口缶3の平面部31との間には、集電体を設けてもよい。下側の発電要素4と外装缶2の底部21との間には、集電体を設けてもよい。
【0055】
図示のように、上側の発電要素4の外周面の上端と境界10との間には、隙間g1が形成されている。隙間g1の幅は、発電要素4の位置決めを容易にし、位置ズレを抑制するため、1.0mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.1mm以下とするのがよい。また、隙間g1の幅は、発電要素4の損傷を抑制するため、0.01mm以上、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.09mm以上とするのがよい。また、下側の発電要素4の外周面とガスケット底部51の内周面51aとの間には、隙間g2が形成されている。隙間g2の幅も、1.0mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.1mm以下とするのがよく、0.01mm以上、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.09mm以上とするのがよい。
【0056】
このように、上側に配置された発電要素4の外周面の上端と境界10との間に隙間g1を形成したことにより、上側の発電要素4は、封口缶3の内部に配置する際に、その損傷を抑制しながら容易に位置決めされるとともに、位置ズレが抑制される。また、下側に配置された発電要素4の外周面とガスケット底部51の内周面51aとの間に隙間g2を形成したことにより、生産効率が悪化することなく、下側の発電要素4は、外装缶2と封口缶3とをカシメる際、その損傷を抑制しながら下側の発電要素4の位置ズレが抑制される。これにより、バイポーラ型の全固体電池1であっても、カシメ不良を生じさせることなく、外装缶2と封口缶3とを充分にカシメることができ、外部からの水分の侵入を防止することができる。
【0057】
また、バイポーラ型の全固体電池1は、上側の発電要素4と下側の発電要素4の直径が異なる場合がある。その場合、下側の発電要素4の直径が上側の発電要素4の直径より大きい。これにより、全固体電池1の電池容量を大きくすることができる。このように上下の発電要素4の直径が異なる場合であっても、隙間g1を形成したことにより、上側の発電要素4の損傷を抑制しながら、上側の発電要素4を容易に位置決めして封口缶3の内部に配置することができ、位置ズレを抑制することができる。また、隙間g2を設けたことにより、下側の発電要素4の損傷を抑制しながら位置ズレを抑制することができる。
【0058】
図6に示すように、第3実施形態の隙間g1及び隙間g2は、第1実施形態の隙間g1及び第2実施形態の隙間g2と同様に遊びを有する。そのため、発電要素4が僅かに位置ズレした場合、図6に示すように、隙間g1及び隙間g2の幅は各々、その幅が最大となる位置において2.0mm以下となる。第3実施形態の隙間g1及び隙間g2は、第1実施形態の隙間g1及び第2実施形態の隙間g2と同様であるため、詳しい説明は省略する。なお、上側の発電要素4と下側の発電要素4の直径が異なる場合であっても、隙間g1及び隙間g2の幅は各々、その幅が最大となる位置において2.0mm以下となる。
【0059】
なお、第3実施形態の全固体電池1は、3つ以上の発電要素4を積層してもよい。
【0060】
(第4実施形態)
次に、本開示の第4実施形態の全固体電池1について、図7を用いて具体的に説明する。第4実施形態の全固体電池1は、基本的には第3実施形態の全固体電池1と共通する。そのため、第3実施形態の全固体電池1と共通する構成については説明を省略し、第3実施形態の全固体電池1とは異なる構成についてのみ具体的に説明する。
【0061】
基端部32aの内面は、曲面部33の内面から連続して形成される周側面34と、周側面34から段部32cの内面まで連続して形成される曲率面35とを有している。図7に示すように、断面視において、周側面34は直線であり、曲率面35は周側面34の段部32c側の端部から径方向外方に曲がる曲線である。基端部32aは、周側面34と曲率面35との間に境界11を有している。図7に示す高さh1は、平面部31の内面から境界11までの高さである。すなわち、高さh1は、平面部31の内面から境界11までの軸方向の長さである。
【0062】
図7に示すように、高さh1は、高さh2よりも小さい。高さh2は、平面部31の内面から平面部31に最も近い正極材層41の外周面の上端までの軸方向の長さである。換言すれば、高さh2は、平面部の内面から平面部に最も近い固体電解質層43と正極材層41との境界までの軸方向の長さである。なお、封口缶3の平面部31と平面部31に最も近い負極材層42との間には集電体を設けてもよい。これにより、バイポーラ型の全固体電池1は、封口缶3の周壁部32が正極材層41に接触しにくくなり、短絡を防止することができる。バイポーラ型の全固体電池1は、複数の発電要素4が直列に積層されている。そのため、限られた全固体電池1の内部空間において、各々の発電要素4の負極材層42、固体電解質層43の厚みは小さくなる。短絡防止という観点から、平面部31の内面から平面部31に最も近い負極材層42の外周面の上端までの高さh2に応じて高さh1を規定することにより、バイポーラ型の全固体電池であっても短絡を防止することができる。
【0063】
周側面34は、軸方向において平面部31から離れるにしたがって、径方向外方に広がっている。例えば、周側面24は、径方向外方に傾斜するテーパ面である。これにより、軸方向において、周側面34の段部32c側の端部が発電要素4から径方向外方に離れていくため、より確実に短絡を防止することができる。
【0064】
第4実施形態では、発電要素4のうち負極材層42を平面部31の最も近くに配置させたが、正極材層41を平面部31の最も近くに配置させて発電要素4を積層することもできる。その場合、平面部31の内面から平面部31に最も近い負極材層42の外周面の上端までの高さh2よりも高さh1を小さくすることにより、短絡を防止することできる。また、軸方向において平面部31から離れるにしたがって周側面34を径方向外方に広がるように形成することにより、より確実に短絡を防止することができる。
【0065】
以上、実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 全固体電池
2 外装缶、21 底部、22 筒状側壁部
3 封口缶、31 平面部、32 周壁部、32a 基端部、32b 拡径部、32c 段部、33 曲面部、34 周側面、35 曲率面
4 発電要素、41 正極材層、42 負極材層、43 固体電解質層
5 ガスケット、51 ガスケット底部、51a 内周面
6 集電シート
10 境界、11 境界
g1、g2 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7