【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の態様に基づき、以下のステップを含む超音波撮像方法を提供する。
超音波信号を生体へ送信するステップと、
前記生体内の流路に沿って流れている流体から反射された反射超音波信号を、第1の方向の解像度限界を有する超音波送受信機システムを用いて受信するステップと、
受信した前記反射超音波信号を用いて所定時間内の連続する複数の画像を表す画像データを生成するステップであって、各々の画像は前記流路に沿って流れている前記流体から反射された前記反射超音波信号内に干渉によって生じるスペックルパターンを含むステップと、
前記画像データに対してピーク鮮鋭化操作を行い、所定時間内の連続する複数の高解像度画像を表すデータを生成するステップであって、各々の高解像度画像は、前記超音波送受信機システムの前記第1の方向の前記解像度限界よりも高精細な前記第1の方向の解像度を有し、かつ、それぞれのピーク鮮鋭化されたスペックルパターンを含むステップと、
そして、
前記所定時間内の連続する複数の高解像度画像を表すデータに合成操作を適用し、前記所定時間内の連続する複数の高解像度画像から、前記流体の前記流路がピーク鮮鋭化されたスペックルパターンの重ね合わせによって表される出力画像を表すデータを生成するステップ。
【0010】
本発明は、第2の態様に基づき、以下のような入力部と処理サブシステムを含む超音波撮像システムを提供する。
前記入力部は、超音波送受信機システムからのデータを受信し、該データは、第1の方向に最大解像度を有する所定時間内の連続する複数の画像を表し、各々の画像は、生体内の流路に沿って流れている流体から反射された反射超音波信号の中の干渉によって生じるスペックルパターンを含み、
そして、
前記処理サブシステムは、
前記画像データに対してピーク鮮鋭化操作を行い、所定時間内の連続する複数の高解像度画像を表すデータを生成し、各々の高解像度画像は、前記第1の方向に、前記第1の方向における前記最大解像度よりも高精細な解像度を有し、ピーク鮮鋭化されたスペックルパターンをそれぞれ含み、そして、
前記所定時間内の連続する複数の高解像度画像を表す前記データに合成操作を行い、前記所定時間内の連続する複数の高解像度画像から、前記流体の流路が、前記ピーク鮮鋭化されたスペックルパターンの重ね合わせによって表される出力画像を表すデータを生成する。
【0011】
したがって、本願発明によれば、生体内を移動する流体からのスペックルパターンが、有効解像度の改善をすることができるピーク鮮鋭化操作を用いて鮮鋭化され、そして複数の画像フレームにわたって重ね合わせられることは、当業者には容易に理解できるであろう。それによって、前記流体流路を示す出力画像を、(少なくとも一方向の)解像度が前記データを生成した前記超音波送受信機システムの(前記一方向の)前記解像度限界よりも高精細な解像度で生成することができる。この高解像度の撮像は、連続する画像の非常に短いシーケンスの一つを使用して、上述した従来の手法よりもはるかに迅速に行うことができる。上記手法をリアルタイムで実行して、ライブビデオを生成することさえできる。また、造影剤を生体内に注入する必要はない(しかし、注入することを禁止する訳ではない)。
【0012】
対象となる生体は人、動物、植物、又は他の任意の生体とすることができる。好ましい実施形態の組では、生体は人間の成人又は乳児である。流体は任意の液体又は気体とすることができる。流体は、好ましくは密度の異なる複数の領域を含む。流体は、媒体中に一つ又は複数の気体若しくは液体の気泡、又は固体粒子を含むことができ、該気泡又は固体粒子は第1の密度又は平均密度を有し、前記媒体は第2の異なる密度又は平均密度を有する。この場合、流体は、超音波によって映し出されたときに特徴的なスペックルパターンを呈する可能性がある。複数の好ましい実施形態では、流体は血液である。超音波が血液中の血液細胞を反映する前記方法によって、超音波を用いて撮像したときに、血液に対して特徴的なスペックルパターンを与えることができる。
【0013】
好ましい実施形態では、流体は血液だけである(すなわち、造影剤を含まない)が、いくつかの実施形態では、流体(例えば、血液)は、例えば医者が注入した、マイクロバブル又は粒子等の超音波造影剤を含むことができる。造影剤の使用は、血液からの信号の対ノイズ比を大きくすることができる。これは、マイクロバブルの非線形散乱特性を利用することによって行うことができ、周囲の組織からの信号を減衰させるための高域通過クラッタフィルタリングの必要性をなくすることができる。このことは、反射信号が弱い、非常に小さな血管を撮影するときに、特に有利である。
【0014】
流体の流路に制限はない(例えば、大きな流体領域内の乱流も可能)が、血管のような管によって制限されることが好ましい。このような場合、流体の流路を撮像することは、管の内腔自体を撮像することと等しい。この管の壁の厚さが無視可能なくらい薄い場合、流体の流路を撮像することは管自体を撮像することと等しい。
【0015】
出力画像を表すデータは、メモリに格納することができ、又は、ユーザに、例えば電子ディスプレイ、又は印刷した紙の上に表示することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、超音波撮像システムの入力部は、(例えば、別個の超音波診断装置から出力された)一連の画像を表すデータを受信するために、USB接続、WiFi接続、又はイーサネット(登録商標)接続等の接続部を有する。他の実施形態では、超音波撮像システムは、好ましくは、超音波信号の特定の組(例えば、特定の周波数及び/又は特定のデュレーションを有する組)について、前記最大分解能に等しい前記第1の方向の分解能限界を有する超音波送受信機システムを有する。
【0017】
超音波送受信機システムの解像度限界は、超音波送受信機システムの特定の構成に固有のものである。この解像度限界は、例えば、送信された超音波信号の周波数及び/又はデュレーションに依存する。これらのパラメータは可変、例えばユーザにより設定可能である。
【0018】
前記解像度限界は、軸方向又は長手方向の限界の場合があり、又は、角度方向又は横方向の限界の場合がある。該解像度限界は、送信した超音波信号に対する送受信機システムの回折限界の場合がある。高解像度撮像は、超解像撮像とすることができる。解像度限界は直角座標系(例えば、走査結果変換ステップの後の直線状の幅又は高さ)において決定することができるが、超音波送受信機システムの固有の座標系(例えば、走査結果の任意の変換前の角度距離又は軸方向距離)において決定することが好ましい。本明細書においては、超音波撮像システムの解像度限界に関する言及は、超音波撮像システムによって超音波送受信機システムから受信したデータの最大解像度と等価に扱うことができることを理解されたい。
【0019】
いくつかの実施形態では、超音波送受信機システムは、それぞれ異なる方向における2つの、互いに異なる分解能限界(例えば、軸方向の分解能限界及び角度方向の分解能限界)を有することができる。この場合、各々の高解像度画像は、好ましくは、(第1の方向とは異なる)第2の方向に第2の解像度を有し、該第2の方向における前記送受信機システムの第2の分解能限界よりも高精細である方がよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、ピーク鮮鋭化操作は、撮像平面内で、流体の流路に対して垂直な方向に画像データの解像度を高める。流路が撮像平面内で完全に軸方向又は完全に横方向に延びていない場合、この操作は軸方向及び横方向の両方における解像度を高める。
【0021】
いくつかの実施形態では、超音波送受信機システムは三次元画像データを生成することができる。ピーク鮮鋭化操作を三次元画像データに適用して、3D高解像度画像の一つのシーケンスの一つを表すデータを生成し、各々の3D高解像度画像の前記第1の方向における解像度を前記超音波送受信機システムの前記第1の方向の解像度限界よりも精細にすることができる。各々の3D高解像度画像は、前記第1の方向とは異なるさらに別の方向の解像度を有し、該別の方向の解像度は、超音波送受信機システムの前記別の方向の解像度限界よりも精細にすることができる。前記さらに別の方向は、好ましくは横方向である。各々の高解像度画像は、好ましくは、前記第1の方向及び前記さらに別の方向とは異なる第2の方向の解像度を有し、該第2の方向の解像度は、前記超音波送受信機システムの前記第2の方向における解像度限界よりも精細である。いくつかの実施形態では、前記さらに別の方向の解像度限界は、前記第1の方向の解像度限界と等しくすることができ、又は前記第2の方向の解像度限界と等しくすることができる。これは、例えば、2つの直交する横軸が共通の解像度限界を有する場合にあたる。
【0022】
超音波撮像システムは、所定時間内の連続する複数の画像を表す前記データを生成するように構成することができる。このとき、入力は、超音波送受信機システムと処理サブシステムとの間の、撮像システム内の内部インターフェースの一部を形成することになる。超音波撮像システム又は超音波送受信機システムは、超音波信号を生体内に送信するために一つ又は複数の超音波トランスデューサを含むことができる。超音波送受信機システムは、生体内の流路に沿って流れる流体から反射された超音波信号を受信するために一つ又は複数の超音波トランスデューサを含むことができる。超音波送受信機システムは、受信した超音波信号を表すデータから、例えば、一つ又は複数の超音波トランスデューサからのアナログRF信号から、画像の時系列シーケンスの一つを表すデータを生成するためのプロセッサ又は他の手段を含むことができる。このプロセッサ又は他の手段は、前述の処理サブシステムの一部、又は該処理サブシステムとは別のものとすることができる。超音波撮像システムは、超音波を送信及び/又は受信するための一つ又は複数の超音波トランスデューサを有する携帯式スキャナ装置を含むことができる。超音波撮像システムは、LCDモニタ等の電子ディスプレイを有することができる。
【0023】
所定時間内の連続する複数の画像を表すデータは、好ましくは、振幅情報を含む。振幅情報は従来の技術を用いて取得することができる。スペックルパターンは、散乱した波面間の強め合う干渉と弱め合う干渉によって、前述のような画像内に常に発生する。しかし、従来から、スペックルは望ましくないノイズと考えられている。スペックルを除去するシステムもある。逆に、本発明はスペックルパターンを積極的に利用して超解像撮像を実現する。
【0024】
スペックルパターンは、従来は、スペックルパターンの移動を時系列で追跡することによって生体内の組織の動きを分析するために使用されてきた。しかしながら、前述のような動きの解析は本願発明とは全く異なっており、本願発明は流路の超解像画像の生成に関する。例えば、標準的な解像度の画像で(すなわち、高解像度の画像ではない)血流を視覚化するためにスペックルパターンを使用することは特許文献1に記載されており、この特許文献1では、処理されたスペックルパターンを組織の従来の画像と組み合わせて表示する。
【0025】
画像のシーケンスの一つを時系列で表すデータは、好ましくは一組の値、好ましくは画素値の配列を表す一組の値を含む。各画素は、超音波送受信機システムからの信号の振幅値を表すことができる。複数の画素を(例えば、走査変換工程の後では)長方形にすることができるが、好ましくは、送受信機システムの幾何形状によって決定される形状を有することができ、例えば、各画素は平行四辺形又は環状扇形である。画像データは、ビーム成形され、かつ複素復調されたI/Qデータサンプルから導出することができる。あるいは、前記処理は、複素復調されていない実数値のRFデータに対して実行することもできる。受信した超音波信号は、周波数又は位相に関するデータを生成するために使用することもできる。この周波数又は位相に関するデータは、画像データのドップラベース処理に使用することができる。
【0026】
高解像度画像の第1又は第2の方向における解像度は、一対の隣接する画素間の最小間隔、最大間隔、又は平均間隔とすることができる。方向と間隔は、適切な座標系、例えば、送受信機システムの固有座標系、又はデカルト座標等の座標系において与えられる。前記画像データ内の少なくとも一つの方向に対しては、画素間隔は均一であることが好ましい。
【0027】
データに対するピーク鮮鋭化は、非線形圧縮(例えば、対数圧縮)、ダイナミックレンジ調整、画素値の量子化、走査変換、又は他のディスプレイ・レンダリング処理等の操作がデータに対して行われる前に行われ、この段階で振幅情報が失われないようにすることが好ましい。本明細書において「画素」及び「画像」と言及する場合、上述のような操作が既に前記データに適用されていることを必ず示唆しているわけではない。
【0028】
画像データは、画像データを生成するために使用された前記処理の少なくとも一部の操作の間、第1及び/又は第2の方向において、超音波送受信機システムの解像度限界よりも、それぞれの方向に2倍以上の倍率(例えば、10、20倍、又はそれ以上の倍率)だけ高精細な解像度(例えば、画素間隔)を有することが好ましい。特に、ピーク鮮鋭化操作の後の高解像度画像データは、好ましくは、超音波送受信機システムの解像度限界よりも2倍、10倍、20倍、又はそれ以上高精細な解像度を有する。
【0029】
画像データにおける上述のようなオーバーサンプリングは、本来、送信する超音波信号に対する空間分解能が、超音波送受信機システムの回折で制限される要素よりも高い空間分解能で測定結果を出力するビームフォーマを使用することによって実現することができる。しかしながら、他の実施形態では、超音波撮像システムは、受信した画像データを処理して(例えば、画像データをリサンプリングすることによって)、画像データ内に追加の補間画素を生成する。この処理は、例えば、(処理サブシステム内で)ピーク鮮鋭化操作を画像データに適用する前に、又はピーク鮮鋭化操作の一部として、行うことができる。任意の適切な公知の補間方法を使用することができる。画像データ内の前記追加の補間画素は、後続の画像処理操作において超解像出力画像を生成することに役立つ。
【0030】
所定時間内の連続する複数の画像は、任意の適切なフレームレート、例えば、100Hz以上1000Hz以内、又はそれ以上のレートにすることができる。前記フレームレートは、撮像対象の流体の典型的な速度に基づいて決めることができる。前記フレームレートは、ユーザ入力によって決定することができる。同様に、前記所定時間内の連続する複数の画像の画像フレームの数は、撮像対象によって変化してもよいし、又は、ユーザ設定可能にしてもよい。
【0031】
前記画像の時系列シーケンスの一つを表すデータは、好ましくは、フレーム間高域通過パスフィルタ、すなわちクラッタフィルタでフィルタリングされる。このフィルタリングは、好ましくは、ピーク鮮鋭化操作が画像データに適用される前に、好ましくは処理サブシステムによって実行される。前記フィルタリングは、生体内で静止又はゆっくりと(例えば、一つ又は複数の方向に閾値速度未満で)動いている生体内の物質、例えば、血管の壁、又は、筋肉、脂肪等の物質による寄与成分を減衰させる。画像データの前記フィルタリングは、フィルタリングしなければ、移動する流体の超解像画像を毀損する恐れがある静止又は低速移動しているクラッタを削減又は除去することができる。このことは、一般的に、スペックルパターンが生体内のいくつかの静的反射体からの信号と比較して相対的に微弱であるため、有用である。上記のようなフィルタリングは、造影剤を使用しないときに特に有用である。
【0032】
従来から存在するクラッタフィルタは、どれでも使用することができる。前記クラッタフィルタリングは、一つ又は複数の受信超音波信号から決定される周波数又は位相に関する情報(例えば、ドップラシフト情報)を使用することができる。一組の実施形態において、一つ又は複数のパワードップラ画像を表すデータが生成される。画像面に垂直な方向の動きがゼロ、又は、ほぼゼロであるものを表す画素値をフィルタに通すときに、前記画像面に平行に移動する流体に関する有用なデータまで除去する可能性があるので、この有用なデータを減少させないように注意する必要がある。血液の場合には、血液細胞の三次元形状は、典型的には、血液の流れの方向に垂直な非ゼロのドップラ応答を返し、この応答を利用して、例えば前記ドップラ応答の速度より遅い速度で動く組織からの信号だけを減衰させるようにクラッタフィルタを調整することによって、血液からの信号が除去されることを防ぐことができる。
【0033】
他の実施形態では、フィルタリングは、ドップラシフト情報に基づかずに、画像シーケンスの所定時間における高域通過フィルタリングのステップを含むことができ、例えば、フレーム間の差分処理を使用して変化の遅い情報を画像シーケンスの一つから除去するステップを含むことができる。しかしながら、好ましくは、より高精度なクラッタフィルタリング手法を、追加して、又は代替的に使用することができる。
【0034】
フィルタは、閾値速度未満の速度で動く物質からの信号を減衰させ、閾値速度より速い速度で動く物質からの信号は減衰させないようにできる。このような閾値速度は、明示的に(例えば、ユーザ設定可能な、デジタルメモリに格納される値に基づいて)設定することができるか、又は、フィルタリング操作中に、例えば、組み込みの又は条件に応じて調整可能な遮断条件に基づいてクラッタフィルタを適用して、必然的に決まる場合がある。閾値速度は、画像面内の動き、又は画像面に垂直な動き、又は他の任意の方向の速度成分、又は三次元の実際の速度に適用することができ、かつ、生体内の他の場所、又は、携帯式スキャナ装置のような、超音波送受信機システムの構成要素に対して、独立して又は相対的に適用することができる。
【0035】
ピーク鮮鋭化操作は、画像データを生成するために使用される超音波送受信機システムの解像度限界よりも高精細な解像度で出力を生成することにより、画像データの有効解像度をあげることができる。ピーク鮮鋭化操作は、入力された複数の画素値に基づいて(例えば、複数画素入力ウィンドウに作用して)一つの出力画素値を算出することができるが、複数の実施形態の好ましい組では、他の画素には無関係に画像データの各々の画素に作用する。
【0036】
ピーク鮮鋭化操作は、(オーバーサンプリングされた)画像データ内の画素値(すなわち振幅値)に非線形関数を適用するステップを含むか、又は非線形関数から構成されることが好ましい。このピーク鮮鋭化操作は、好ましくは、非極値(好ましくは比較的小さい値)を増幅するよりも、画像データ内の極値(好ましくは比較的大きい値)を大きく増幅する。
【0037】
前記関数は、冪関数又は多項式関数、例えばf(x)=a+b・X
nとすることができ、ここで、べき数のnは1より大きい方が好ましい。前記関数は指数関数、例えばf(x)=a+b
X、すなわち、指数項を含むことができ、ここで、基底bは好ましくは1より大きい値である。前記関数の一次導関数は、ピーク鮮鋭化操作を画像データに適用する前に画像データに存在していた画素値の範囲にわたって単調増加することが好ましい。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態では、ピーク鮮鋭化操作は、画素の強度値に冪関数を適用する処理、たとえば、各画素値を元の画素値の8乗に置き換える処理(y=x
8)を含む。8乗の冪関数は、血管を撮像するときに特に良い結果が得られることがわかっている。しかしながら、もちろん、2、4、6、10、12、又はそれ以上の指数、又は2から12の範囲内にある他の指数を使用することも可能である。他の非線形関数を使用することもできる。例えば、元の値が閾値レベルを超える前記画素の値を増加させる量を、元の値が閾値レベルより低い前記画素の値を変更する量より大きくする(例えば、閾値レベルより低い画素は元のままにおいておき、閾値レベルを超える前記画素を線形係数によって増加させる)ような関数を使用することができる。
【0039】
ピーク鮮鋭化操作に加えて、合成操作を(正規化された)データに適用する前に、かつ、好ましくは処理サブシステムにより、正規化操作を高解像度画像データに適用することが好ましい。該正規化操作は、好ましくは、画像データから成る一つの画像フレーム内の複数の局所的ピーク値の大きさのばらつきを低減する(すなわち、各々の画像における最も大きい局所最大値と最も小さい局所最大値との間の差を小さくする)。この正規化操作は、好ましくは、ピーク鮮鋭化操作の後に、すなわち高解像度画像データに対して実行される。このようにして、比較的弱いピークを、比較的強いピークに対して相対的に強調することができる。これによって、より多くのピーク値を、結果として得られる出力画像に反映させることが可能になる。
【0040】
正規化操作は、好ましくは、画像データ内の複数の画素の値を、各々の画素の近傍(核)にある複数の画素の値に基づいて増減するステップを含む。複数の実施形態の好ましい組の一つでは、高解像度画像データ内の各画素の値を、該画素の近傍にある前記高解像度画像データ内の複数の画素の値の代表値(平均値、又は中央値、オプションで一つの重みパターンに応じて重み付けした値)で除算する。前記近傍の大きさ又は形状は一定にすることができる。重みパターンは、前記近傍にある各画素に対して増減の重み付けをすることができる。例えば、分離可能又は放射型の二次元ハミング窓を表す重みを使用することができる。
【0041】
前記近傍は、円形等の任意の適切な形状にすることができるが、計算効率を考慮して、好ましくは長方形(例えば正方形)にする方がよい。前記近傍は、任意の適切なサイズにすることができるが、好ましくは、少なくとも一つの方向において、超音波送受信機システムの解像度限界とほぼ同じ大きさにする方がよく、例えば、前記解像度限界の3分の1、2分の1、若しくは、4分の3以上、かつ/又は、前記解像度限界の125%未満、2倍未満、若しくは3倍未満の最大寸法(例えば幅)にすることが好ましい。前記解像度限界とほぼ同じ大きさのカーネルを使用してデータを正規化することによって、次の合成操作をデータに適用した後に、血流の非常に鮮明な画像が得られることがわかった。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記正規化操作は、所定時間内の複数の画像フレームにわたって一つ又は複数の画素値を平均するステップを含むことができる。例えば、一つの画素の近傍の平均値は、その平均値によって画素値を増減する前に、連続する2つ以上の画像にわたって平均化することができる。これは、画像シーケンスの一つにおけるちらつき防止に役立ち、特に、複数の出力画像をビデオとして生成、表示する場合に望ましい。
【0043】
重要なことは、ピーク鮮鋭化操作及びオプションの正規化操作は、対数圧縮又は量子化されたデータではなく、生の振幅データに直接適用することが好ましいことである。したがって、ピーク鮮鋭化操作及び正規化操作は、ビットマップ画像のような、サイズ調整され量子化された画素データに適用される従来の画像処理操作とは、全く異なっている。
【0044】
前記合成操作は、好ましくは、出力画像内の各画素について、所定時間内の連続する複数の高解像度画像の全体又は一部分にわたって存在する、その各画素の複数の値の代表値(平均値又は中央値、又は、オプションでそれらを重み関数によって重み付けした値)を計算するステップを含む。出力画像内の一つの画素の値は、この代表値と等しくすることができる。代替的には、前記代表値を使用して、一つ又は複数の追加の演算を適用して、前記出力画像を表すデータを生成することができる。例えば、前記データは、ディスプレイ上にレンダリングするために、対数圧縮、及び/又はダイナミックレンジ調整、及び/又は空間的な拡大若しくは縮小、及び/又は量子化することができる。
【0045】
ピーク鮮鋭化された複数のスペックルパターンを、所定時間内の平均を使用して重ね合わせることにより、流体の流路が出力画像内で見えるようになる。これは、夜空の長時間露光写真が地球の自転による星の流路を示し、又は滝の長時間露光写真がその流れの流路を強調することと同様な手法である。
【0046】
この重ね合わせ効果は、流体が画像面と略平行に流れるときにフレーム間で比較的一定のスペックルパターンを示す、血液のような特定の流体に対してさらに高めることができる。この場合、前記合成操作によって、出力画像内にスペックルの軌跡を生成し、血管に沿った流れの定性的に表示することによって画像の有用性を高めることができる。いくつかの実施形態では、複数のフレームにわたって一つ又は複数の要素の動きを追跡することに基づき、速度解析操作を実行して、スペックルパターン内の流体の速度又は速度ベクトルについての定量的推定値を決定することができる。他の実施形態では、速度情報はドップラ周波数シフト情報に基づいて決定することができる。速度情報は、取得する方法に関係なく、例えば色の重ね合わせとして、出力画像内に反映することができる。
【0047】
熱ノイズは、流体のスペックルパターンに類似したスペックルパターンを作り出す可能性があるが、典型的には流体のスペックルパターンより小さい振幅を有するパターンである。熱ノイズのスペックルパターンはフレームごとに独立しているので、所定時間内での平均化によって熱ノイズのスペックルパターンは減衰するので、出力画像内の流体流路と容易に区別することができる。
【0048】
ノイズは、前記出力画像を従来技術のパワードップラ画像と組み合わせることによって(例えば、2個の画像内に存在する各々の画素の平均値を求めることによって)、さらに低減することができる。この理由は、パワードップラ画像ではノイズの値が小さいからである。
【0049】
いくつかの実施形態では、連続する出力画像フレームを生成することができる。これらの画像フレームは、例えばディスプレイスクリーン上にビデオとして表示することができる。フレーム間のスペックルパターンがある程度一致している状態においては、前記合成操作は、各出力画像フレームについて、複数の高解像度画像から成る一つのシーケンスの中にある、前記各出力画像フレームを生成するために使用される一つの画像に、該シーケンスの中にある他のどの画像よりも高い重みが与えられるように実行される。好ましくは、この画像は、各々の出力画像フレームに対し、前記シーケンスの一つの中で同じ位置になる(例えば、常に、前記高解像度画像のシーケンスの一つの真ん中の画像になる)。このようにして、ビデオの各フレームにおいて、スペックルパターンの鮮明なビューが、前記スペックルパターンの所定時間内の平均のぼやけたパターンに重ね合わされる。前記ぼやけたパターンは前記ビデオ内の血管の形状を正確に表示し、一方、前記スペックルパターンの連続するクリアなビューは、ビデオを見ている人に、血管に沿って流れる流体の動きを表示する。これは臨床医に対し、血管を見るための特に有用な方法を提供することがわかる。
【0050】
フィルタリング操作、ピーク鮮鋭化操作、正規化操作、及び合成操作は、別個の操作として説明してきたが、単一のアルゴリズム、機能、又は処理ブロックによって、これらの操作のうちの2つ以上を実行することができることが、わかるであろう。いくつかの数学関数によって、これらの操作の2つ以上を単一の操作にまとめることができる。理解を容易にするために、これらの操作を特定の順序で実行するように説明したが、実際には、条件によって適切な場合には、異なる順序で実行してもよく、2つ以上の操作を並行して実行することもできる。
【0051】
当業者には理解されるように、超音波撮像システム、及びその処理サブシステムは、一つ又は複数のプロセッサ、DSP、ASIC、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、入力、出力等を含むことができる。前記操作のうちのいくつか又はすべては、メモリに格納され、前記処理サブシステム内の一つ又は複数のプロセッサ上で動作するソフトウェアによって、又はその制御下で実行することができる。超音波撮像システムは、単一の装置にすることができ、又は、分散させることができ、例えば、一つ又は複数の操作を生体から離れた、リモートサーバ等で実行することができる。前記操作は必ずしも互いに時間的に近接して実行する必要はない。特に、超音波信号は、第1の時間に取得され、その後、数日経った後の時間に処理することができる。
【0052】
本明細書に記載した、いずれの発明の態様又は実施形態の特徴も、適切な条件の下で、本明細書に記載した、発明の他のいずれの態様又は実施形態にも適用することができる。異なる実施形態又は実施形態の組を参照する場合、これらは必ずしも区別されるわけではなく重複してもよいことを理解されたい。