【実施例1】
【0012】
以下、実施例1のシンセサイザーの操作面について説明する。本実施例において操作面1は、操作者からみて鍵盤の奥に位置し、各種操作子や表示器などが配置される領域に配置されるものとする。
【0013】
図1に示すように本実施例のシンセサイザーの操作面1は、パネル11によってその前面が覆われている。パネル11の後述する表示部16に対応する部分は透明な外観となっている。パネル11は例えば樹脂製とすればよい。パネル11の正面には、概念として、操作の方向を表す所定の操作軸(同図の破線)が操作軸の方向と直行する方向に複数配列されているものと考える。これらの各操作軸は、前述の各ドローバーに対応するため、操作軸は全部で9本あることになる。
【0014】
図2は、上述のパネル11を取り外した状態における本実施例のシンセサイザーの基板面の概略平面図である。同図に示すようにパネル11の背面側の基板17上に複数のセンサ12が、各操作軸に対して一列に、対応する操作軸に沿って配置されている。同図に示すようにセンサ12は菱形の銅箔パターン12aと、銅箔パターン12aを所定の間隔を空けて取り囲むように形成された銅箔パターン12bを含み、銅箔パターン12bから銅箔パターン12aに向かって電気力線が発生している。指の近接により銅箔パターン12bから銅箔パターン12aに向かう電気力線が指によって遮蔽されるため、図示しないセンサICが銅箔パターン12aに入る電気力線の減少を検出することにより、指の近接を検知することができる。各銅箔パターン12aの中央には孔19が設けられる。後述する光源からの光が孔19を通りパネル11を透過して、操作者に視認される。各センサ12は、操作の度合いの何れかに対応しているものとする。例えば、同図の例において、センサ12は各操作軸上に8つずつ配置されているが、これらが操作の度合いを表す各度数にそれぞれ対応し、例えば図中最も下部(操作者から見て最も手前側)に位置するセンサ12は、操作の度合いが最大(例えば度数=8)であることに対応し、図中最も上部(操作者から見て最も奥側)に位置するセンサ12は、操作の度合いが最小(例えば度数=1)であることに対応する。
【0015】
センサ12はそれぞれ、操作者の指の近接を検知することができる。本実施例においてセンサ12は静電容量式センサ(静電容量式スイッチ)とした。センサ12として感圧センサなどを用いてもよい。
【0016】
パネル11の背面側には、それぞれが操作の度合いの何れかに対応する複数の表示部16が設けられる。表示部16は、センサ12と同様に操作軸に沿って一列に配置される。表示部16は、例えば光源としてもよい。光源として、例えばLED光源などを用いることができる。表示部16は、液晶画面の一部であってもよい。
【0017】
図3に示すように、パネル11の正面の各操作軸上に、操作者が指でなぞることにより、操作の度合いの切り替わりを操作者に知覚させる凸部13が形成される。凸部13により、操作者は目視によらなくても、操作の度合いの切り替わりを理解することができる。凸部13の好適な形状については後述する。操作軸の配列方向をx軸、操作軸の延伸方向をy軸と定義した場合、凸部13のy軸における座標は、各操作軸の8つのセンサそれぞれの出力値から補間して決定される。具体的には、最大出力のセンサとその上下のセンサのうち出力の大きいセンサとの間を補間することにより決定される。
【0018】
図4、
図5に示すように、パネル11の正面には、各操作軸に沿って、溝14が形成される。操作者は溝14を指でなぞることにより、操作の方向を知覚することができる。本実施例では、溝14は操作軸に対称な二つの緩斜面を含み、その断面が倒立した扁平な二等辺三角形となるように形成されている。これにより、溝14をなだらかな形状とし、操作者の指にフィットするようにした。溝14の形状は、任意の形状としてよい。例えば、指全体が挿入できるようなサイズとせずに、各操作軸に沿って延伸する細いスリット形状としてもよい。また、操作軸の方向を知覚させるためには、溝14以外の形状も考えられる。例えば
図4に破線で示すように、パネル11の正面の、隣り合う二つの操作軸から等距離な位置に、各操作軸と並行に延伸されるレール15を形成してもよい。この場合、操作者はレール15を指でなぞることにより、操作の方向を知覚することができる。溝14とレール15を組み合わせた構成としてもよい。
【0019】
なお
図4における溝14の断面は、
図1の4−4−断面における断面形状であり、後述する操作軸に沿った傾斜面の最も深い部分に位置するのに対し、
図5における溝14の断面は、
図1の5−5−断面における断面形状であり、当該傾斜面の中ほどに位置するため、
図5における溝14の断面は、
図4における溝14の断面よりも浅くなっている。
【0020】
図6を参照して、パネル11の正面に形成される凸部13の好適な形状について説明する。同図に示すように、凸部13は、上述の操作軸における、操作者から離れていく方向(図中の矢印aが示す方向)と対向する(向き合う)第1の傾斜面131と、上述の操作軸における、操作者に近づいていく方向(図中の矢印bが示す方向)と対向する(向き合う)第2の傾斜面132を含むように構成され、第1の傾斜面131は、第2の傾斜面132よりも緩やかに形成されていれば好適である。例えば、操作面やパネル11の平坦な面に対する第1の傾斜面131の傾斜角をθ
1、第2の傾斜面132の傾斜角をθ
2とした場合に、θ
1<θ
2とすれば好適である。
【0021】
上述の傾斜面の条件が好適となる理由について説明する。操作者に凸部13を明確に認識させるためには、凸部13をある程度明確に突出させる必要があるが、凸部13の傾斜面を険しくしすぎた場合、スムーズな運指の妨げになる可能性がある。一方、凸部13の傾斜面を緩やかにしすぎた場合、運指がスムーズになる反面、操作者が凸部13の存在を知覚できなくなる可能性がある。凸部13の形状に関してはこのようなトレードオフが存在する。
【0022】
図7に示すように、操作者が自身から離れていく方向(方向a)に指をなぞらせる場合、爪91が指の進行方向の先頭に位置する。よって方向aに対向する傾斜面が急峻であると、爪91が傾斜面に引っ掛かり、スムーズな運指の妨げになる場合がある。従って、方向aに対向する傾斜面は出来る限り緩やかに形成されていることが望ましい。一方、操作者が自身に近づいていく方向(方向b)に指をなぞらせる場合、指の腹92が指の進行方向の先頭に位置する。この場合、指の腹92は柔らかいため、方向bに対向する傾斜面が急峻であったとしても、スムーズな運指の妨げにならない場合が多い。
【0023】
以上のことから、操作者から離れていく方向と対向する第1の傾斜面131が、操作者に近づいていく方向と対向する第2の傾斜面132よりも緩やかに形成されていれば、凸部13がスムーズな運指の妨げになりにくくなり、かつ凸部13を操作者に明確に知覚させやすくする設計が容易になるため、好適である。
【0024】
なお、本実施例のシンセサイザーは、図示しない楽音制御部を含む。楽音制御部は、上述のセンサ12の出力に応じて楽音を制御する。楽音制御部は、楽音の制御とともに、指の近接を検知したセンサ12に対応する操作の度合いに基づいて、一個または複数個の表示部16を非表示から表示に、または表示から非表示に切り替える。
【0025】
例えば楽音制御部は、操作者が指で溝14をなぞる動きに追従するように、表示部16を非表示から表示、または表示から非表示に切り替える。
【0026】
操作者が一つのセンサ12に対応する領域のみをタップ(押下)した場合、楽音制御部はタップされたセンサ12に対応する表示部16を非表示から表示に、または表示から非表示に切り替え、タップされたセンサ12に対応する度数よりも小さな度数に対応する同一の操作軸上の表示部16に対してもタップされたセンサ12と同様の表示を実行する。例えば、操作者が度数gに該当するセンサ12に対応する領域のみをタップした場合、楽音制御部は度数gに対応する表示部16の表示切替(非表示から表示、表示から非表示)を行うだけでなく、度数gよりも小さい度数に対応する同一の操作軸上の表示部16に対して度数gに対応する表示部16の表示と同様の表示を実行する。上述したように表示部16を光源とした場合、上記の「表示」は点灯を意味し、上記の「非表示」は消灯を意味する。
【0027】
なお上述の実施例では、電子楽器であるシンセサイザーを例示したが、本発明の対象は電子楽器に限定されない。例えば本発明は、電気楽器(例えばエレキギター、エレキベース、電気ピアノ)においても同様に利用できる。
【0028】
<補記>
本発明の装置は、例えば単一のハードウェアエンティティとして、キーボードなどが接続可能な入力部、液晶ディスプレイなどが接続可能な出力部、ハードウェアエンティティの外部に通信可能な通信装置(例えば通信ケーブル)が接続可能な通信部、CPU(Central Processing Unit、キャッシュメモリやレジスタなどを備えていてもよい)、メモリであるRAMやROM、ハードディスクである外部記憶装置並びにこれらの入力部、出力部、通信部、CPU、RAM、ROM、外部記憶装置の間のデータのやり取りが可能なように接続するバスを有している。また必要に応じて、ハードウェアエンティティに、CD−ROMなどの記録媒体を読み書きできる装置(ドライブ)などを設けることとしてもよい。このようなハードウェア資源を備えた物理的実体としては、汎用コンピュータなどがある。
【0029】
ハードウェアエンティティの外部記憶装置には、上述の機能を実現するために必要となるプログラムおよびこのプログラムの処理において必要となるデータなどが記憶されている(外部記憶装置に限らず、例えばプログラムを読み出し専用記憶装置であるROMに記憶させておくこととしてもよい)。また、これらのプログラムの処理によって得られるデータなどは、RAMや外部記憶装置などに適宜に記憶される。
【0030】
ハードウェアエンティティでは、外部記憶装置(あるいはROMなど)に記憶された各プログラムとこの各プログラムの処理に必要なデータが必要に応じてメモリに読み込まれて、適宜にCPUで解釈実行・処理される。その結果、CPUが所定の機能(上記、…部、…手段などと表した各構成要件)を実現する。
【0031】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。また、上記実施形態において説明した処理は、記載の順に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されるとしてもよい。
【0032】
既述のように、上記実施形態において説明したハードウェアエンティティ(本発明の装置)における処理機能をコンピュータによって実現する場合、ハードウェアエンティティが有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記ハードウェアエンティティにおける処理機能がコンピュータ上で実現される。
【0033】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。具体的には、例えば、磁気記録装置として、ハードディスク装置、フレキシブルディスク、磁気テープ等を、光ディスクとして、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM(Random Access Memory)、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)等を、光磁気記録媒体として、MO(Magneto-Optical disc)等を、半導体メモリとしてEEP−ROM(Electronically Erasable and Programmable-Read Only Memory)等を用いることができる。
【0034】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0035】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記録媒体に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0036】
また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、ハードウェアエンティティを構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。