特許第6963793号(P6963793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963793
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】呼吸機能検査装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/087 20060101AFI20211028BHJP
   A61B 5/093 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   A61B5/087
   A61B5/093
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-159886(P2017-159886)
(22)【出願日】2017年8月23日
(65)【公開番号】特開2019-37339(P2019-37339A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2019年4月4日
【審判番号】不服2020-17955(P2020-17955/J1)
【審判請求日】2020年12月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597009275
【氏名又は名称】株式会社フクダ産業
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(72)【発明者】
【氏名】飛ヶ谷 喜憲
【合議体】
【審判長】 福島 浩司
【審判官】 蔵田 真彦
【審判官】 井上 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−95034(JP,A)
【文献】 特開2013−153886(JP,A)
【文献】 特開2007−229101(JP,A)
【文献】 特開2017−86704(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0052414(KR,A)
【文献】 実開昭57−48902(JP,U)
【文献】 米国特許第(US,A)5816246
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/00-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸に伴う可動体の移動に応じた信号が、微分回路により直流成分がカットされ、A/Dコンバータによりアナログ信号からディジタル信号に変換される信号に基づいて呼吸流量を計測する呼吸流量計測手段と、前記可動体の移動に応じた信号が、A/Dコンバータによりアナログ信号からディジタル信号に変換された信号に基づいて呼吸容量を計測する呼吸容量計測手段と、を備える呼吸機能検査装置であって、
基準容量の較正用ポンプの動作に伴い前記呼吸容量計測手段により計測された実測容量と、前記基準容量とに基づいて、前記呼吸容量計測手段により計測される呼吸容量を対象とする較正係数である第1較正係数を算出する第1較正係数算出手段と、
前記較正用ポンプの動作に伴い前記呼吸流量計測手段により計測された実測流量に基づいて算出された算出容量と、前記基準容量とに基づいて、前記呼吸流量計測手段により計測される呼吸流量を対象とする較正係数である第2較正係数を算出する第2較正係数算出手段と、を備える、
呼吸機能検査装置。
【請求項2】
呼吸に伴う可動体の移動に応じた信号が、微分回路により直流成分がカットされ、A/Dコンバータによりアナログ信号からディジタル信号に変換される信号に基づいて呼吸流量を計測する呼吸流量計測手段と、前記可動体の移動に応じた信号が、A/Dコンバータによりアナログ信号からディジタル信号に変換された信号に基づいて呼吸容量を計測する呼吸容量計測手段と、を備える呼吸機能検査装置であって、
基準容量の較正用ポンプの動作に伴い前記呼吸容量計測手段により計測された実測容量と、前記基準容量とに基づいて、前記呼吸容量計測手段により計測される呼吸容量を対象とする較正係数である第1較正係数を算出する第1較正係数算出手段と、
前記較正用ポンプの動作に伴い前記呼吸流量計測手段により計測された実測流量と、前記較正用ポンプの動作に伴い前記呼吸容量計測手段により計測された実測容量に基づいて算出された算出流量とに基づいて、前記呼吸流量計測手段により計測される呼吸流量を対象とする較正係数である第2較正係数を算出する第2較正係数算出手段と、を備える、
呼吸機能検査装置。
【請求項3】
呼吸に伴う可動体の移動に応じてロータリーエンコーダから出力されるパルス信号の間隔に基づいて呼吸流量を計測する呼吸流量計測手段と、前記可動体の移動に応じてロータリーエンコーダから出力されるパルス信号に基づいて呼吸容量を計測する呼吸容量計測手段と、を備える呼吸機能検査装置であって、
基準容量の較正用ポンプの動作に伴い前記呼吸容量計測手段により計測された実測容量と、前記基準容量とに基づいて、前記呼吸容量計測手段により計測される呼吸容量を対象とする較正係数である第1較正係数を算出する第1較正係数算出手段と、
前記較正用ポンプの動作に伴い前記呼吸流量計測手段により計測された実測流量に基づいて算出された算出容量と、前記基準容量とに基づいて、前記呼吸流量計測手段により計測される呼吸流量を対象とする較正係数である第2較正係数を算出する第2較正係数算出手段と、を備える、
呼吸機能検査装置。
【請求項4】
呼吸に伴う可動体の移動に応じてロータリーエンコーダから出力されるパルス信号の間隔に基づいて呼吸流量を計測する呼吸流量計測手段と、前記可動体の移動に応じてロータリーエンコーダから出力されるパルス信号に基づいて呼吸容量を計測する呼吸容量計測手段と、を備える呼吸機能検査装置であって、
基準容量の較正用ポンプの動作に伴い前記呼吸容量計測手段により計測された実測容量と、前記基準容量とに基づいて、前記呼吸容量計測手段により計測される呼吸容量を対象とする較正係数である第1較正係数を算出する第1較正係数算出手段と、
前記較正用ポンプの動作に伴い前記呼吸流量計測手段により計測された実測流量と、前記較正用ポンプの動作に伴い前記呼吸容量計測手段により計測された実測容量に基づいて算出された算出流量とに基づいて、前記呼吸流量計測手段により計測される呼吸流量を対象とする較正係数である第2較正係数を算出する第2較正係数算出手段と、を備える、
呼吸機能検査装置。
【請求項5】
請求項1〜から選択される何れかの呼吸機能検査装置であって、
前記第1較正係数算出手段は、前記第1較正係数として、呼気用の第1較正係数と、吸気用の第1較正係数と、をそれぞれ算出し、
前記第2較正係数算出手段は、前記第2較正係数として、呼気用の第2較正係数と、吸気用の第2較正係数と、をそれぞれ算出する、
呼吸機能検査装置。
【請求項6】
請求項1〜から選択される何れかの呼吸機能検査装置であって、
被験者の呼気に含まれる二酸化炭素ガスを吸収する吸収剤を収納した収納ケースが設置される第1の呼吸経路と、
前記収納ケースが設置されない第2の呼吸経路と、を含み、
前記較正用ポンプは前記第2の呼吸経路に接続可能である、
呼吸機能検査装置。
【請求項7】
請求項の呼吸機能検査装置であって、
前記較正用ポンプを前記第2の呼吸経路に接続するよう報知する接続報知手段を備える、
呼吸機能検査装置。
【請求項8】
請求項1〜から選択されるいずれかの呼吸機能検査装置であって、
前記較正用ポンプは、操作部を手動で第1方向に移動させることによって、当該操作部の移動距離に応じた容量の空気を前記呼吸機能検査装置に供給することが可能であり、前記操作部を手動で第2方向に移動させることによって、当該操作部の移動距離に応じた容量の空気を前記呼吸機能検査装置から排出させることが可能であり、
前記第1較正係数を算出する場合と、前記第2較正係数を算出する場合の何れの場合も、前記操作部を前記第1方向に移動させる第1速度と、前記操作部を前記第2方向に移動させる第2速度とを報知する移動報知手段を備える、
呼吸機能検査装置。
【請求項9】
請求項の呼吸機能検査装置であって、
前記移動報知手段は、前記第1較正係数を算出する場合と、前記第2較正係数を算出する場合の何れの場合も、前記第1速度を異ならせて前記操作部を複数回前記第1方向に移動させるための報知を行い、前記第2速度を異ならせて前記操作部を複数回前記第2方向に移動させるための報知を行う、
呼吸機能検査装置。
【請求項10】
請求項の呼吸機能検査装置であって、
前記移動報知手段は、前記第1較正係数を算出する場合と、前記第2較正係数を算出する場合とで、それぞれの前記第1速度が共通となるような報知を行い、それぞれの前記第2速度が共通となるような報知を行う
呼吸機能検査装置。
【請求項11】
請求項または10の呼吸機能検査装置であって、
前記第1較正係数を算出する場合と、前記第2較正係数を算出する場合の何れの場合も、前記較正用ポンプの動作に基づく実測流量と実測容量との関係を示すフローボリューム曲線を表示する表示手段を備える、
呼吸機能検査装置。
【請求項12】
請求項11の呼吸機能検査装置であって、
前記表示手段は、
容量軸と流量軸からなるグラフに前記フローボリューム曲線を表示し、
前記第1較正係数を算出する場合と、前記第2較正係数を算出する場合の何れの場合も、前記操作部を第1方向に移動させる場合に、それぞれの第1速度について、原点位置から前記容量軸の正方向側であって前記流量軸の正方向側に向かうフローボリューム曲線を表示し、前記操作部を第2方向に移動させる場合に、それぞれの第2速度について、原点位置から前記容量軸の正方向側であって前記流量軸の負方向側に向かうフローボリューム曲線を表示する
呼吸機能検査装置。
【請求項13】
請求項1〜12から選択される何れかの呼吸機能検査装置であって、
前記第1較正係数と前記第2較正係数を記憶する記憶手段と、
前記第1較正係数の時間推移と前記第2較正係数の時間推移を表示する時間推移表示手段を備える、
呼吸機能検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸容量を計測可能な呼吸機能検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1に示すように、被験者の呼吸に応じてシリンダ内のピストンが移動し、その移動量に基づいて被験者の呼吸容量を計測する呼吸機能検査装置が提案されている。
【0003】
また、特許文献2には、フローセンサ式の呼吸流量計測装置を較正するために、ファンを回転させてフローセンサに被測気体を供給すると共に当該ファンの回転数を示す回転数信号を出力するファンモータを備える較正装置を用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−106946号公報
【特許文献2】特許第5886060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療機関においては、簡素な較正装置を用いた簡易な較正方法が要求されるにもかかわらず、従来の技術では、較正装置自体が簡素なものとはいえず較正方法も複雑であった。
【0006】
本発明の目的は、呼吸機能検査装置の較正を簡素化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は以下の手段によって解決される。
【0008】
手段1の発明は、
呼吸容量(ボリューム)を計測可能な呼吸容量計測手段(ローリングシール型スパイロメータ12)を備える呼吸機能検査装置(1)であって、
基準容量(3L)の較正用ポンプ(300)の動作に伴い前記呼吸容量計測手段により計測される比較容量(較正時の実測ボリューム)に基づいて、前記呼吸容量計測手段により計測される呼吸容量を較正可能な容量較正手段(較正時の実測ボリュームと、既知である較正用ポンプ300の容量とに基づいてボリューム較正係数を算出するCPU140)を備える、呼吸機能検査装置である。
【0009】
手段2の発明は、
呼吸容量(ボリューム)を計測可能な呼吸容量計測手段(ローリングシール型スパイロメータ12)を備える呼吸機能検査装置(1)であって、
呼吸流量(フロー)を計測可能な呼吸流量計測手段(微分回路131、アンプ132、、ADC133b、及びCPU140、又は、ロータリーエンコーダ及びCPU140)と、
基準容量(3L)の較正用ポンプ(300)の動作に伴い前記呼吸流量計測手段により計測される流量(較正時の実測フロー)に基づいて算出された算出容量(較正時の実測フロー積分値)に基づいて、前記呼吸流量計測手段により計測される呼吸流量を較正可能な流量較正手段(較正時の実測フロー積分値と、既知である較正用ポンプ300の容量とに基づいてフロー較正係数を算出するCPU140)と、
を備える、呼吸機能検査装置である。
【0010】
手段3の発明は、
呼吸容量(ボリューム)を計測可能な呼吸容量計測手段(ローリングシール型スパイロメータ12)を備える呼吸機能検査装置(1)であって、
呼吸流量(フロー)を計測可能な呼吸流量計測手段(微分回路131、アンプ132、、ADC133b、及びCPU140、又は、ロータリーエンコーダ及びCPU140)と、
基準容量(3L)の較正用ポンプ(300)の動作に伴い前記呼吸容量計測手段により計測される比較容量に基づいて、前記呼吸容量計測手段により計測される呼吸容量を較正可能な容量較正手段(較正時の実測ボリュームと、既知である較正用ポンプ300の容量とに基づいてボリューム較正係数を算出するCPU140)と、
基準容量(3L)の較正用ポンプ(300)の動作に伴い前記呼吸流量計測手段により計測される流量(較正時の実測フロー)に基づいて算出された算出容量(較正時の実測フロー積分値)に基づいて、前記呼吸流量計測手段により計測される呼吸流量を較正可能な流量較正手段(較正時の実測フロー積分値と、既知である較正用ポンプ300の容量とに基づいてフロー較正係数を算出するCPU140)と、
を備える、呼吸機能検査装置である。
【0011】
手段4の発明は、
手段2又は3の呼吸機能検査装置であって、
前記算出容量(較正時の実測フロー積分値)は、前記呼吸流量計測手段により計測された呼吸流量の積分(実測フロー)に基づいて算出される、呼吸機能検査装置である。
【0012】
手段5の発明は、
呼吸容量(ボリューム)を計測可能な呼吸容量計測手段(ローリングシール型スパイロメータ12)を備える呼吸機能検査装置(1)であって、
呼吸流量(フロー)を計測可能な呼吸流量計測手段(微分回路131、アンプ132、、ADC133b、及びCPU140、又は、ロータリーエンコーダ及びCPU140)と、
基準容量(3L)の較正用ポンプ(300)の動作に伴い前記呼吸容量計測手段により計測される容量(較正時の実測ボリューム)に基づいて算出された算出流量(較正時の実測ボリューム微分値)に基づいて、前記呼吸流量計測手段により計測される呼吸流量を較正可能な流量較正手段(較正時の実測フローと、較正時の実測ボリューム微分値に基づいてフロー較正係数を算出するCPU140)と、
を備える、呼吸機能検査装置である。
【0013】
手段6の発明は、
手段5の呼吸機能検査装置であって、
前記算出流量(実測ボリュームの微分値)は、前記呼吸容量計測手段により計測された呼吸容量(較正時の実測ボリューム)の微分に基づいて算出される、呼吸機能検査装置である。
【0014】
手段7の発明は、
手段2〜6から選択される何れかの呼吸機能検査装置であって、
前記呼吸流量計測手段(微分回路131、アンプ132、、ADC133b、及びCPU140)は、被験者の呼吸に応じた移動部(ピストン123)の移動距離(ポテンショメータ125により検出されるピストン123の移動距離)に基づいて呼吸流量(実測フロー)を計測可能である、呼吸機能検査装置である。
【0015】
手段8の発明は、
手段7の呼吸機能検査装置であって、
前記呼吸流量計測手段(微分回路131、アンプ132、、ADC133b、及びCPU140)は、前記移動部(ピストン123)の移動距離に応じた信号が入力される微分回路(131)を含む、呼吸機能検査装置である。
【0016】
手段9の発明は、
手段2〜8から選択される何れかの呼吸機能検査装置であって、
前記呼吸流量計測手段(ロータリーエンコーダ及びCPU140)は、被験者の呼吸に応じた移動部の移動速度(ピストン123の中心軸方向の移動速度が遅ければ、ロータリーエンコーダから出力されるパルスの間隔(パルスの出力周期)が長くなり、ピストン123の中心軸方向の移動速度が速ければ、ロータリーエンコーダから出力されるパルスの間隔(パルスの出力周期)が短くなる)に基づいて呼吸流量(実測フロー)を計測可能である、呼吸機能検査装置である。
【0017】
手段10の発明は、
手段1〜9から選択されるいずれかの呼吸機能検査装置であって、
前記呼吸容量計測手段(ローリングシール型スパイロメータ12)は、被験者の呼吸に応じた移動部(ピストン123)の移動距離(ポテンショメータ125により検出されるピストン123の移動距離)に基づいて呼吸容量(実測ボリューム)を計測可能である、呼吸機能検査装置である。
【0018】
手段11の発明は、
手段1〜10から選択されるいずれかの呼吸機能検査装置であって、
被験者の呼気に含まれる二酸化炭素ガスを吸収する吸収剤を収納した収納ケース(5)が設置される第1の呼吸経路(X1)と、
前記収納ケースが設置されない第2の呼吸経路(X2)と、を含み、
前記較正用ポンプは前記第2の呼吸経路に接続可能である、
呼吸機能検査装置である。
【0019】
手段12の発明は、
手段11の呼吸機能検査装置であって、
前記較正用ポンプを前記第2呼吸経路(X2)に接続するよう報知する接続報知手段(ディスプレイ14)を備える、
呼吸機能検査装置である。
【0020】
手段13の発明は、
手段1〜12から選択されるいずれかの呼吸機能検査装置であって、
前記較正用ポンプ(300)は、操作部(把持部332)を手動で第1方向(前方(押し込む方向))に移動させることによって、当該操作部の移動距離に応じた容量の空気(3L)を前記呼吸機能検査装置(シリンダ室211)に供給することが可能であり、
前記操作部を前記第1方向に移動させる第1速度(何秒かけてロッド330を0Lの位置から3Lの位置まで押し込むか)を報知する第1移動報知手段(ディスプレイ14)を備える、
呼吸機能検査装置である。
【0021】
手段14の発明は、
手段13の呼吸機能検査装置であって、
前記第1移動報知手段(ディスプレイ14)は、前記第1速度(ロッド330を0Lの位置から3Lの位置まで押し込むときの速度)を異ならせて前記操作部を複数回(例えば5回)前記第1方向に移動させるための報知を行う、
呼吸機能検査装置である。
【0022】
手段15の発明は、
手段1〜14から選択されるいずれかの呼吸機能検査装置であって、
前記較正用ポンプ(300)は、操作部(把持部332)を手動で第2方向(後方(引っ張る方向))に移動させることによって、当該操作部の移動距離に応じた容量の空気(3L)を前記呼吸機能検査装置(シリンダ室211)から排出させることが可能であり、
前記操作部を前記第2方向に移動させる第2速度(何秒かけてロッド330を3Lの位置から0Lの位置まで引っ張るか)を報知する第2移動報知手段(ディスプレイ14)を備える、
呼吸機能検査装置である。
【0023】
手段16の発明は、
手段15の呼吸機能検査装置であって、
前記第2移動報知手段(ディスプレイ14)は、前記第2速度(ロッド330を3Lの位置から0Lの位置まで引っ張るときの速度)を異ならせて前記操作部を複数回(例えば5回)前記第2方向に移動させるための報知を行う、
呼吸機能検査装置である。
【0024】
手段17の発明は、
手段1〜16から選択される何れかの呼吸機能検査装置であって、
較正係数(CPU140が算出したボリューム較正係数、CPU140が算出したフロー較正係数)を記憶する較正係数記憶手段(ROM)と、
較正係数の時間推移(ボリューム較正係数の時間推移グラフ、フロー較正係数の推移グラフ)を表示する較正係数表示手段(ディスプレイ14)と、
を備える、
呼吸機能検査装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、呼吸機能検査装置の較正を簡素化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本実施形態の呼吸機能検査装置の外観を示し、(a)は正面図、(b)は平面図である。
図2図2は、図1の呼吸機能検査装置の開閉扉を開いた状態を示す斜視図である。
図3図3は、ローリングシール型スパイロメータの構成を示す説明図である。
図4図4は、ボリューム及びフローを測定するための構成を示す説明図である。
図5図5は、較正用ポンプの側面図であり、(a)は本体部に対してロッドを最大限伸ばした状態を示す図であり、(b)は本体部に対してロッドを最大限縮めた状態を示す図である。
図6図6は、ボリューム較正時における較正用ポンプの動作とフローボリューム曲線との関係を示す説明図である。
図7図7は、ボリューム較正を実行する際にディスプレイに表示されるガイド情報の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、複数のフローボリューム曲線に基づいてボリューム較正係数を決定する例を示す説明図である。
図9図9は、フロー較正時における較正用ポンプの動作とフローボリューム曲線との関係を示す説明図である。
図10図10は、フロー較正を実行する際にディスプレイに表示されるガイド情報の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、複数のフローボリューム曲線に基づいてフロー較正係数を決定する例を示す説明図である。
図12図12は、フロー較正前のフローボリューム曲線とフロー較正後のフローボリューム曲線との比較例を示す説明図である。
図13図13は、実測フローに基づくフローボリューム曲線と、実測ボリューム微分値に基づくフローボリューム曲線との比較例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本実施形態の呼吸機能検査装置を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態の呼吸機能検査装置の外観を示し、(a)は正面図、(b)は(a)の平面図である。図2図1の呼吸機能検査装置の開閉扉を開いた状態を示す斜視図である。図1図2に示すように、本発明の呼吸機能検査装置1は、筐体である本体部11と、本体部11に内蔵されたローリングシール型スパイロメータ12等から構成される。本体部11の上面には、キーボード13、ディスプレイ14、プリンタ15、マウス16が載置され、本体部11の内部には制御部(図示せず)が備えられている。本体部11の左側面には、開閉扉17が蝶番によって開閉可能に取り付けられ、開閉扉17を閉じてローリングシール型スパイロメータ12を遮蔽する。
【0028】
図1に示すように、開閉扉17の側面には上下方向に長い凹部18が形成され、この凹部18に、二酸化炭素ガスを吸収する吸収剤が収納された収納ケース5が着脱可能に取り付けられる。また、図1及び図3に示すように、開閉扉17の外壁17bには、凹部18と対向する位置に吸気チューブ接続口38b及び呼気チューブ接続口39b、並びに、呼吸チューブ接続口40bがそれぞれ設けられている。また、図2に示すように、開閉扉17の内壁17aには、吸気口38a及び呼気口39a、並びに、呼吸気口40aがそれぞれ設けられている。
【0029】
図3は本実施形態の呼吸機能検査装置1のローリングシール型スパイロメータ12周辺の概略の構造を示す説明図である。図3に示すように、ローリングシール型スパイロメータ12は、円筒状のシリンダ121と、軸受け用のスライドベアリング122により支持されるピストン123を備え、シリンダ121とピストン123との間はシリコン製のローリングシール124で密閉されている。ローリングシール124の一端はシリンダ121の内壁面に接合され、他端はピストン123の側面に接合されている。ピストン123の移動に追随してローリングシール124が湾曲することで、シリンダ121とピストン123との隙間の密閉状態が維持される。ピストン123が移動すると、ポテンショメータ125でピストン123の中心軸126の軸方向の移動距離を検出する。
【0030】
図2及び図3に示すように、シリンダ121の開口部周囲の壁面には、シリコン製のクッション部材212が接合されており、シリンダ121の開口部が、環状のクッション部材212によって囲まれる構成となっている。図3に示すように、クッション部材212は、開閉扉17が閉じられると、開閉扉17の内壁17aと接触して変形することにより、開閉扉17を閉じたときの衝撃を緩和する。また、クッション部材212は、開閉扉17の内壁17aと密着することにより、開閉扉17の内壁17aとシリンダ121の開口部周囲の壁面との隙間を埋める。これにより、開閉扉17の内壁17aとクッション部材212とによって、シリンダ121内のシリンダ室211が密閉される。被験者の吸気時には、シリンダ室211のガスが被験者に供給され(被験者がシリンダ室211のガスを吸入し)、被験者の呼気時には、被験者の呼気がシリンダ室211に吐出される。即ち、開閉扉17が閉じられたときのシリンダ室211は、被験者の呼吸空間として機能する。
【0031】
図3に示すように、開閉扉17の内壁17aには、吸気口38a、呼気口39aが設けられている。また、開閉扉17の外壁17bには、吸気チューブ接続口38b、呼気チューブ接続口39bが設けられている。
【0032】
吸気口38aには、ゴムチューブ73Cの一端が接続され、吸気チューブ接続口38bには、ゴムチューブ73Cの他端が接続されている。即ち、ゴムチューブ73Cによりシリンダ室211から本体外部に吸気を通過させるための、吸気口38aから吸気チューブ接続口38bに連なる吸気経路が形成されている。
【0033】
また、呼気口39aには、ゴムチューブ73Aの一端が接続され、ゴムチューブ73Aの他端は、凹部18に取り付けられた収納ケース5の呼気出口5Aと接続される。また、収納ケース5の呼気入口5Bには、ゴムチューブ73Bの一端が接続され、呼気チューブ接続口39bには、ゴムチューブ73Bの他端が接続されている。このように、収納ケース5が凹部18に接続されたときに、呼気口39aと呼気チューブ接続口39bとが、収納ケース5(収納ケース5内の二酸化炭素ガス吸収剤)を介して流体的に接続されることになる。即ち、ゴムチューブ73A及び73B、並びにこれらと接続される収納ケース5により、本体外部からシリンダ室211に呼気を通過させるための、呼気チューブ接続口39bから呼気口39aに連なる呼気経路が形成されている。
【0034】
被験者の吸気が通過する吸気管81及び被験者の呼気が通過する呼気管82に分岐した呼吸チューブ80には、支部に設けられた三方弁85を介してマウスピース(MP)が接続される。吸気チューブ接続口38bには、吸気管81の一端が接続され、吸気管81の他端は三方弁85の吸気弁(不図示)と流体的に接続されている。また、呼気チューブ接続口39bには、呼気管82の一端が接続され、呼気管82の他端は三方弁85の呼気弁(不図示)と流体的に接続されている。
【0035】
呼吸チューブ80に接続されたマウスピースを介して被験者が吸気を行うと、三方弁85の吸気弁が開放され、ピストン123が手前方向(開口部方向)に移動してシリンダ室211の容量(呼吸空間の体積)が減少すると共に、シリンダ室211内のガスが吸気口38aから外部に流出し、ゴムチューブ73C及び吸気管81を通過して被験者に供給される。このときのピストン123の移動距離をポテンショメータ125が検出することにより、吸気量が電気信号に変換される。
【0036】
呼吸チューブ80に接続されたマウスピースを介して被験者が呼気を行うと、三方弁85の呼気弁が開放され、被験者の呼気は呼気管82通過し、呼気チューブ接続口39bからゴムチューブ73Bを通過して収納ケース5に到達し、収納ケース5を通過する際に吸収剤により二酸化炭素ガスが吸収され、さらにゴムチューブ73Aを通過して呼気口39aからシリンダ室211に吐出される。これに伴い、ピストン123が奥方向(開口部と反対方向)に移動してシリンダ室211の容量(呼吸空間の体積)が増加する。このときのピストン123の移動距離をポテンショメータ125が検出することにより、呼気量が電気信号に変換される。
【0037】
上記のように、吸気口38aと吸気チューブ接続口38bを流体的に接続するゴムチューブ73C、並びに、呼気口39aと収納ケース5を流体的に接続するゴムチューブ73A、収納ケース5、及び、収納ケース5と呼気チューブ接続口39bを流体的に接続するゴムチューブ73Bを含んで構成される呼吸経路を、呼吸経路X1と称する。
【0038】
例えば、機能的残気量(Functional Residual Capacity;FRC)、分時換気量(Minute Volume:MV)、基礎代謝率(Basal Metabolic Rate;BMR)、を測定する場合には、呼吸経路X1を使用する。また、高濃度酸素をシリンダ室211に供給した状態で肺活量(Vital Capacity;VC)、努力性肺活量(Forced Vital Capacity;FVC)、分時換気量(MV)を測定する場合にも、呼吸経路X1を使用する。
【0039】
また、図3に示すように、開閉扉17の内壁17aには、呼吸気口40aが設けられている。また、開閉扉17の外壁17bには、呼吸チューブ接続口40bが設けられている。呼吸気口40aには、二方弁75を介してゴムチューブ74の一端が接続され、呼吸チューブ接続口40bには、ゴムチューブ74の他端が接続されている。即ち、ゴムチューブ74により、シリンダ室211から本体外部に吸気を通過させ、呼吸気口40aから呼吸チューブ接続口40bに連なる吸気経路が形成されると共に、本体外部からシリンダ室211に呼気を通過させるための、呼吸チューブ接続口40bから呼吸気口40aに連なる呼気経路が形成されている。
【0040】
呼吸チューブ接続口40bには、呼吸チューブ90の一端が接続され、呼吸チューブ90の他端にはマウスピース(MP)が接続される。呼吸チューブ90に接続されたマウスピースを介して被験者が吸気を行うと、二方弁75の吸気弁が開放され、ピストン123が手前方向(開口部方向)に移動してシリンダ室211の容量(呼吸空間の体積)が減少すると共に、シリンダ室211内のガスが呼吸気口40aから外部に流出し、ゴムチューブ74及び呼吸チューブ90を通過して被験者に供給される。このときのピストン123の移動距離をポテンショメータ125が検出することにより、吸気量が電気信号に変換される。
【0041】
呼吸チューブ90に接続されたマウスピースを介して被験者が呼気を行うと、二方弁75の呼気弁が開放され、被験者の呼気は呼吸チューブ90通過し、さらに呼吸チューブ接続口40bからゴムチューブ74を通過し、呼吸気口40aからシリンダ室211に吐出される。これに伴い、ピストン123が奥方向(開口部と反対方向)に移動してシリンダ室211の容量(呼吸空間の体積)が増加する。このときのピストン123の移動距離をポテンショメータ125が検出することにより、呼気量が電気信号に変換される。
【0042】
上記のように、呼吸気口40aと呼吸チューブ接続口40bを流体的に接続するゴムチューブ74を含んで構成される呼吸経路を、呼吸経路X2と称する。例えば、高濃度酸素をシリンダ室211に供給しない通常状態で、肺活量(VC)、努力性肺活量(FVC)、最大換気量(MVV)を測定する場合には、呼吸経路X2を使用する。また、後述する較正用ポンプ300を用いてボリューム又はフローを較正する際にも、呼吸経路X2を使用する。
【0043】
次に、本実施形態におけるボリューム及びフローの測定方法に関して、図4を用いて説明する。前述したように、ピストン123の中心軸方向の移動距離をポテンショメータ125が検出すると、検出した移動距離に応じた信号が出力され、アンプ130により増幅される。アンプ130により増幅された信号はA/Dコンバータ133a(以下ではADC133aという)によりアナログ信号からディジタル信号に変換された後、CPU140により読み込まれる。このようにしてADC133aから出力される信号(ピストン123の中心軸方向の移動距離に対応した信号)をボリューム出力と称する。
【0044】
また、アンプ130により増幅された信号は微分回路131により直流成分がカットされ、アンプ132により増幅される。アンプ132により増幅された信号はA/Dコンバータ133b(以下ではADC133bという)によりアナログ信号からディジタル信号に変換され、CPU140により読み込まれる。このようにしてADC133bから出力される信号(ピストン123の中心軸方向の移動距離の時間変化に対応した信号)をフロー出力と称する。
【0045】
CPU140は、図示しないRAM、ROM、及び、表示制御部等と接続されており、ROMに記憶されている測定プログラムをRAMに読み込んで実行することにより、ボリューム及びフローを算出し、さらにボリューム及びフローの算出結果等に基づいて各測定項目に関する値を算出する。これらボリューム及びフロー、並びに各測定項目に関する値は、表示制御部によってディスプレイ14に表示可能であると共に、プリンタ15によりプリントアウトされて、医師や検査技師等が確認可能となっている。
【0046】
例えば、CPU140は、ボリューム出力と、既知であるピストン123の直径(円の面積)に基づいて、ボリューム(L)を算出可能である。このように、ボリューム出力に基づいて測定されるボリュームを実測ボリュームとも称する。また、CPU140は、所定期間(例えば1秒間)におけるフロー出力の時間平均と、既知であるピストン123の直径(円の面積)に基づいて、フロー(L/sec)を算出可能である。このように、フロー出力に基づいて測定されるフローを実測フローとも称する。このように、実測ボリュームは、ポテンショメータ125からの出力信号(ボリューム出力)に基づく計測値であり、実測フローは、ポテンショメータ125及び微分回路131からの出力信号(フロー出力)に基づく計測値である。
【0047】
(較正用ポンプ300)
このように、被験者の呼吸に応じて移動部であるピストン123が移動し、そのときの移動量に基づいて実測ボリューム及び実測フローを測定可能となっている。このようにして測定される、実測ボリューム及び実測フローに関しては、図5に示す較正用ポンプ300を用いた較正によって、より正確な値を得ることができる。
【0048】
図5は、較正用ポンプ300の外観を示す図である。較正用ポンプ300は、円筒状の本体部310と、細長い棒状のロッド330から構成されている。本体部310の前面310aには、前述した呼吸チューブ90(呼吸チューブ接続口40b)と本体部310とを接続するための略円筒状の接続部320が設けられている。この接続部320の先端には、本体部310内の空間と連通する空気穴321が形成されている。
【0049】
また、本体部310の下部には、前面側に脚部311,311が接合され、後面側に脚部312が接合されている。半球状の脚部311,311,及び312は、何れも弾力性を有する材料、例えばシリコーンゴム等により形成されている。脚部311,311は、本体部310における円筒の下端(円形の断面における最下点)を中心として相対する位置に設けられている。脚部312は、本体部310における円筒の下端(円形の断面における最下点)に設けられている。従って、平坦な場所に本体部310を置いたときには、脚部311,311、及び脚部312の3点によって本体部310が支持される。
【0050】
本体部310の後面310bには、その中心にロッド330を挿通させるための挿通孔が形成されており、その挿通孔の壁面とロッド330の外周面とが接触した状態で、ロッド330を摺動させることが可能となっている。ロッド330の一端側(前面側)は、本体部310内のラバーストッパーに固定されており、ロッド330の他端側(後面側)には、把持部332が接合されている。また、ロッド330の長手方向(本体部310の軸方向)には0Lから3.0Lまで0.5L毎に目盛りが表記されており、3.0Lの位置にはフランジ331が固定されている。
【0051】
なお、本体部310の前面310a及び後面310bには、それぞれ、ストラップ315を通して固定するためのストラップ固定部313、314が設けられている。ストラップ315の一端側をストラップ固定部313に固定し、他端側をストラップ固定部314に固定することで、持ちにくい円筒状の本体部310ではなく、ストラップ315を持って容易に較正用ポンプ300を移動させることができる。
【0052】
図5(a)の例は、ロッド330を本体部310に対して最も伸ばした状態(本体部310内のラバーストッパー(不図示)がこれ以上は後面310b側に移動できない状態)を示している。この状態では、ロッド330の外周に表記された「0L」の目盛りが見えているため、本体部310内の空気は全く外部(シリンダ室211)に供給されていない状態にあり、また、これ以上は、外部の空気を本体部310内に吸入させることができない状態にある。
【0053】
この図5(a)の状態から、把持部332を掴んでロッド330を前方側に押し込み、フランジ331を後面310bに接触させると、これ以上はロッド330を押し込めない状態(本体部310内のラバーストッパー(不図示)がこれ以上は前面310a側に移動できない状態)となる。このとき、図5(b)に示すように、ロッド330の外周に表記された「3.0L」の目盛りのみが見えている状態となり、図5(a)に示される状態から3.0Lの空気を外部(シリンダ室211)に供給したことになる。
【0054】
また、図5(b)の状態から、把持部332を掴んでロッド330を後方側に引っ張り、図5(a)の状態に戻すと、再びロッド330の外周に表記された「0L」の目盛りが見えている状態となる。このとき、図5(b)に示される状態から3.0Lの空気を外部(シリンダ室211)から吸入したことになる。
【0055】
(ボリューム較正)
次に、図5に示した較正用ポンプ300を用いて、ローリングシール型スパイロメータ12を備える呼吸機能検査装置1により測定されるボリュームを較正する方法に関して説明する。まず、図6(1)に示すように、検査実施者は、呼吸チューブ90の他端に較正用ポンプ300の接続部320を接続する。このとき、ロッド330を最大限伸ばした状態(「0L」の目盛りが見ている状態)とする。また、CPU140は、横軸が実測ボリューム、縦軸が実測フローとなるグラフをディスプレイ14に表示させる。
【0056】
次いで、図6(2)に示すように、検査実施者は、ロッド330を前方に押し込む。このとき、CPU140は、実測フロー及び実測ボリュームに基づくフローボリューム曲線をグラフ上に表示させる。この段階では実測ボリュームの増加に伴い実測フローも正の方向(呼気方向)に増加する。次いで、図6(3)に示すように、ロッド330を最大限押し込んだ状態(フランジ331が後面310bに接触している状態であり、「3.0L」の目盛りのみが見えている状態)としたときに、実測ボリュームの増加が停止すると共に、実測フローが0L/sとなる。CPU140は、このときの実測ボリュームの最終値を、較正時の実測ボリューム(呼気)としてRAMに記憶させる。
【0057】
次いで、図6(4)に示すように、検査実施者は、ロッド330を後方に引っ張る。このとき、CPU140は、実測フロー及び実測ボリュームに基づくフローボリューム曲線をグラフ上に表示させる。この段階では実測ボリュームの増加に伴い実測フローも負の方向(吸気方向)に増加する。次いで、図6(5)に示すように、ロッド330を最大限伸ばした状態(「0L」の目盛りが見ている状態)としたときに、実測ボリュームの増加が停止すると共に、実測フローが0L/sとなる。CPU140は、このときの実測ボリュームの最終値を、較正時の実測ボリューム(吸気)としてRAMに記憶させる。
【0058】
CPU140は、較正用ポンプ300の既知の容量(3.0L)と、比較データとなる較正時の実測ボリューム(呼気及び吸気)とに基づいて、ボリューム較正係数を算出する。具体的には、[3.0(L)÷比較データの平均値]に基づいてボリューム較正係数を算出する。そして、以降の呼吸機能検査では、[測定された実測ボリューム×ボリューム較正係数]を較正後のボリュームとして記憶すると共に、ディスプレイ14に表示する。
【0059】
このように、較正用ポンプ300を用いてボリュームの較正を行う場合には、ロッド330を操作する速度(発生させるフロー)を異ならせて、複数の実測フローに関するフローボリューム曲線を取得して、それら複数のフローボリューム曲線に基づいてボリュームの較正を行うことが好ましい。以下に示す例では、±0.5L/s、±1.0L/s、±1.5L/s、±3.0L/s、及び、±6.0L/sの5組(計10通り)のフローに関するフローボリューム曲線を取得して、ボリュームの較正を行うものとする。
【0060】
本実施形態において、CPU140は、検査実施者がキーボード13又はマウス16等の入力装置において、ボリューム較正を行うための操作(例えば、「ボリューム較正」と表示されたアイコンにマウスのポインタを合わせてクリックする操作)を行ったことに基づいて、ボリューム較正プログラムを実行する。
【0061】
ボリューム較正プログラムが実行されると、図7のS100に示すように、「ボリューム較正を行います。3L較正用ポンプを呼吸経路X2に接続して下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。このとき、呼吸経路X2の画像と共に、較正用ポンプ300の接続部320を呼吸チューブ90に接続する様子を示した画像がディスプレイ14に表示されるようにしても良い。このような表示によって、検査実施者は、較正用ポンプ300を接続すべき呼吸経路(及び接続箇所)を容易に把握して、呼吸機能検査装置1と較正用ポンプ300とを適切に接続することができる。
【0062】
次いで、S111に示すように、「較正用ポンプのロッドを6秒かけて押して下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、0.5L/sの呼気に相当するフロー(+0.5L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を0Lの位置から3Lの位置まで押し込むことで、較正時の実測ボリューム(呼気1)が比較データとして記憶される。
【0063】
次いで、S112に示すように、「較正用ポンプのロッドを6秒かけて引いて下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、0.5L/sの吸気に相当するフロー(−0.5L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を3Lの位置から0Lの位置まで引っ張ることで、較正時の実測ボリューム(吸気1)が比較データとして記憶される。また、較正用ポンプ300の操作に応じて、図8に示すように、1組目のフローボリューム曲線1が取得され、ディスプレイ14に表示される。
【0064】
次いで、S121に示すように、「較正用ポンプのロッドを3秒かけて押して下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、1.0L/sの呼気に相当するフロー(+1.0L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を0Lの位置から3Lの位置まで押し込むことで、較正時の実測ボリューム(呼気2)が比較データとして記憶される。
【0065】
次いで、S122に示すように、「較正用ポンプのロッドを3秒かけて引いて下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、1.0L/sの吸気に相当するフロー(−1.0L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を3Lの位置から0Lの位置まで引っ張ることで、較正時の実測ボリューム(吸気2)が比較データとして記憶される。また、較正用ポンプ300の操作に応じて、図8に示すように、2組目のフローボリューム曲線2が取得され、ディスプレイ14に表示される。
【0066】
次いで、S131に示すように、「較正用ポンプのロッドを2秒かけて押して下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、1.5L/sの呼気に相当するフロー(+1.5L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を0Lの位置から3Lの位置まで押し込むことで、較正時の実測ボリューム(呼気3)が比較データとして記憶される。
【0067】
次いで、S132に示すように、「較正用ポンプのロッドを2秒かけて引いて下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、1.5L/sの吸気に相当するフロー(−1.5L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を3Lの位置から0Lの位置まで引っ張ることで、較正時の実測ボリューム(吸気3)が比較データとして記憶される。また、較正用ポンプ300の操作に応じて、図8に示すように、3組目のフローボリューム曲線3が取得され、ディスプレイ14に表示される。
【0068】
次いで、S141に示すように、「較正用ポンプのロッドを1秒かけて押して下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、3.0L/sの呼気に相当するフロー(+3.0L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を0Lの位置から3Lの位置まで押し込むことで、較正時の実測ボリューム(呼気4)が比較データとして記憶される。
【0069】
次いで、S142に示すように、「較正用ポンプのロッドを1秒かけて引いて下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、3.0L/sの吸気に相当するフロー(−3.0L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を3Lの位置から0Lの位置まで引っ張ることで、較正時の実測ボリューム(吸気4)が比較データとして記憶される。また、較正用ポンプ300の操作に応じて、図8に示すように、4組目のフローボリューム曲線4が取得され、ディスプレイ14に表示される。
【0070】
次いで、S151に示すように、「較正用ポンプのロッドを0.5秒かけて押して下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、6.0L/sの呼気に相当するフロー(+6.0L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を0Lの位置から3Lの位置まで押し込むことで、較正時の実測ボリューム(呼気5)が比較データとして記憶される。
【0071】
次いで、S152に示すように、「較正用ポンプのロッドを0.5秒かけて引いて下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、6.0L/sの吸気に相当するフロー(−6.0L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を3Lの位置から0Lの位置まで引っ張ることで、較正時の実測ボリューム(吸気5)が比較データとして記憶される。また、較正用ポンプ300の操作に応じて、図8に示すように、5組目のフローボリューム曲線5が取得され、ディスプレイ14に表示される。
【0072】
このようにして、較正時の実測ボリューム(吸気1〜吸気5)、較正時の実測ボリューム(呼気1〜呼気5)の5組(合計10個)の比較データが取得される。CPU140は、これらの比較データの平均値と、既知である較正用ポンプ300の容量(3.0L)に基づいて、ボリューム較正係数を決定する。図8に示すように、本例では、[3.0(L)÷比較データの平均値]が0.983となることから、ボリューム較正係数を、0.983と決定している。そして、以降の呼吸機能検査では、[測定された実測ボリューム×0.983]を較正後のボリュームとして記憶すると共に、ディスプレイ14に表示する。
【0073】
以上のようにしてボリューム較正係数が決定されると、S160に示すように、「ボリューム較正が終了しました」というメッセージがディスプレイ14に表示される。
【0074】
このように、較正用ポンプ300を呼吸機能検査装置1の呼吸経路X2に接続して操作することによってボリューム較正が可能となっており、簡素な装置及び簡素な手順によりボリューム較正を実現している。また、較正用ポンプ300の操作手順をガイドする機能を設けることによって、検査実施者に適切な操作を行わせて、正確なボリューム較正を行うことが可能となっている。
【0075】
なお、図8の例では、吸気に関する較正時の実測ボリューム(吸気1〜吸気5)及び呼気に関する較正時の実測ボリューム(呼気1〜呼気5)の合計10個の比較データに基づいて、吸気及び呼気に関して共通(1つ)のボリューム較正係数を決定しているが、吸気用のボリューム較正係数と、呼気用のボリューム較正係数とを別に決定するようにしても良い。具体的には、吸気に関する較正時の実測ボリューム(吸気1〜吸気5)のみを比較データとして、[3.0(L)÷比較データの平均値]により吸気用のボリューム較正係数を決定する。また、呼気に関する較正時の実測ボリューム(呼気1〜呼気5)のみを比較データとして、[3.0(L)÷比較データの平均値]により呼気用のボリューム較正係数を決定する。
【0076】
(フロー較正)
次に、図5に示した較正用ポンプ300を用いて、ローリングシール型スパイロメータ12を備える呼吸機能検査装置1により測定されるフローを較正する方法に関して説明する。まず、図9(1)に示すように、検査実施者は、呼吸チューブ90の他端に較正用ポンプ300の接続部320を接続する。このとき、ロッド330を最大限伸ばした状態(「0L」の目盛りが見ている状態)とする。また、CPU140は、横軸が実測フローの積分値、縦軸が実測フローとなるグラフをディスプレイ14に表示させる。
【0077】
次いで、図9(2)に示すように、検査実施者は、ロッド330を前方に押し込む。このとき、CPU140は、実測フロー及び実測フローの積分値に基づくフローボリューム曲線をグラフ上に表示させる。この段階では実測フローが正の方向(呼気方向)に増加することに伴い、実測フローの積分値も増加する。次いで、図9(3)に示すように、ロッド330を最大限押し込んだ状態(フランジ331が後面310bに接触している状態であり、「3.0L」の目盛りのみが見えている状態)としたときに、実測フローが0L/sとなることに伴い、実測フローの積分値の増加が停止する。CPU140は、このときの実測フローの積分値の最終値を、較正時の実測フロー積分値(呼気)としてRAMに記憶させる。
【0078】
次いで、図9(4)に示すように、検査実施者は、ロッド330を後方に引っ張る。このとき、CPU140は、実測フロー及び実測フローの積分値に基づくフローボリューム曲線をグラフ上に表示させる。この段階では実測フローが負の方向(吸気方向)に増加することに伴い、実測フローの積分値も増加する。次いで、図9(5)に示すように、ロッド330を最大限伸ばした状態(「0L」の目盛りが見ている状態)としたときに、実測フローが0L/sとなることに伴い、実測フローの積分値の増加が停止する。CPU140は、このときの実測フローの積分値の最終値を、較正時の実測フロー積分値(吸気)としてRAMに記憶させる。
【0079】
CPU140は、較正用ポンプ300の既知の容量(3.0L)と、比較データとなる較正時の実測フロー積分値(呼気及び吸気)とに基づいて、フロー較正係数を算出する。具体的には、[3.0(L)÷比較データの平均値]に基づいてフロー較正係数を算出する。そして、以降の呼吸機能検査では、[測定された実測フロー×フロー較正係数]を較正後のフローとして記憶すると共に、ディスプレイ14に表示する。
【0080】
このように、較正用ポンプ300を用いてフローの較正を行う場合には、ロッド330を操作する速度(発生させるフロー)を異ならせて、複数の実測フローに関するフローボリューム曲線を取得して、それら複数のフローボリューム曲線に基づいてフローの較正を行うことが好ましい。以下に示す例では、±0.5L/s、±1.0L/s、±1.5L/s、±3.0L/s、及び、±6.0L/sの5組(計10通り)のフローに関するフローボリューム曲線を取得して、フローの較正を行うものとする。
【0081】
本実施形態において、CPU140は、検査実施者がキーボード13又はマウス16等の入力装置において、フロー較正を行うための操作(例えば、「フロー較正」と表示されたアイコンにマウスのポインタを合わせてクリックする操作)を行ったことに基づいて、フロー較正プログラムを実行する。
【0082】
フロー較正プログラムが実行されると、図10のS200に示すように、「フロー較正を行います。3L較正用ポンプを呼吸経路X2に接続して下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。このとき、呼吸経路X2の画像と共に、較正用ポンプ300の接続部320を呼吸チューブ90に接続する様子を示した画像がディスプレイ14に表示されるようにしても良い。このような表示によって、検査実施者は、較正用ポンプ300を接続すべき呼吸経路(及び接続箇所)を容易に把握して、呼吸機能検査装置1と較正用ポンプ300とを適切に接続することができる。
【0083】
次いで、S211に示すように、「較正用ポンプのロッドを6秒かけて押して下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、0.5L/sの呼気に相当するフロー(+0.5L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を0Lの位置から3Lの位置まで押し込むことで、較正時の実測フロー積分値(呼気1)が比較データとして記憶される。
【0084】
次いで、S212に示すように、「較正用ポンプのロッドを6秒かけて引いて下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、0.5L/sの吸気に相当するフロー(−0.5L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を3Lの位置から0Lの位置まで引っ張ることで、較正時の実測フロー積分値(吸気1)が比較データとして記憶される。また、較正用ポンプ300の操作に応じて、図11に示すように、1組目のフローボリューム曲線1が取得され、ディスプレイ14に表示される。
【0085】
次いで、S221に示すように、「較正用ポンプのロッドを3秒かけて押して下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、1.0L/sの呼気に相当するフロー(+1.0L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を0Lの位置から3Lの位置まで押し込むことで、較正時の実測フロー積分値(呼気2)が比較データとして記憶される。
【0086】
次いで、S222に示すように、「較正用ポンプのロッドを3秒かけて引いて下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、1.0L/sの吸気に相当するフロー(−1.0L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を3Lの位置から0Lの位置まで引っ張ることで、較正時の実測フロー積分値(吸気2)が比較データとして記憶される。また、較正用ポンプ300の操作に応じて、図11に示すように、2組目のフローボリューム曲線2が取得され、ディスプレイ14に表示される。
【0087】
次いで、S231に示すように、「較正用ポンプのロッドを2秒かけて押して下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、1.5L/sの呼気に相当するフロー(+1.5L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を0Lの位置から3Lの位置まで押し込むことで、較正時の実測フロー積分値(呼気3)が比較データとして記憶される。
【0088】
次いで、S232に示すように、「較正用ポンプのロッドを2秒かけて引いて下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、1.5L/sの吸気に相当するフロー(−1.5L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を3Lの位置から0Lの位置まで引っ張ることで、較正時の実測フロー積分値(吸気3)が比較データとして記憶される。また、較正用ポンプ300の操作に応じて、図11に示すように、3組目のフローボリューム曲線3が取得され、ディスプレイ14に表示される。
【0089】
次いで、S241に示すように、「較正用ポンプのロッドを1秒かけて押して下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、3.0L/sの呼気に相当するフロー(+3.0L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を0Lの位置から3Lの位置まで押し込むことで、較正時の実測フロー積分値(呼気4)が比較データとして記憶される。
【0090】
次いで、S242に示すように、「較正用ポンプのロッドを1秒かけて引いて下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、3.0L/sの吸気に相当するフロー(−3.0L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を3Lの位置から0Lの位置まで引っ張ることで、較正時の実測フロー積分値(吸気4)が比較データとして記憶される。また、較正用ポンプ300の操作に応じて、図11に示すように、4組目のフローボリューム曲線4が取得され、ディスプレイ14に表示される。
【0091】
次いで、S251に示すように、「較正用ポンプのロッドを0.5秒かけて押して下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、6.0L/sの呼気に相当するフロー(+6.0L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を0Lの位置から3Lの位置まで押し込むことで、較正時の実測フロー積分値(呼気5)が比較データとして記憶される。
【0092】
次いで、S252に示すように、「較正用ポンプのロッドを0.5秒かけて引いて下さい。」というメッセージがディスプレイ14に表示される。即ち、6.0L/sの吸気に相当するフロー(−6.0L/sのフロー)を発生させるための操作が指示される。検査実施者が、指示された速度に従ってロッド330を3Lの位置から0Lの位置まで引っ張ることで、較正時の実測フロー積分値(吸気5)が比較データとして記憶される。また、較正用ポンプ300の操作に応じて、図11に示すように、5組目のフローボリューム曲線5が取得され、ディスプレイ14に表示される。
【0093】
このようにして、較正時の実測フロー積分値(吸気1〜吸気5)、較正時の実測フロー積分値(呼気1〜呼気5)の5組(合計10個)の比較データが取得される。CPU140は、これらの比較データの平均値と、既知である較正用ポンプ300の容量(3.0L)に基づいて、フロー較正係数を決定する。図11に示すように、本例では、[3.0(L)÷比較データの平均値]が0.921となることから、フロー較正係数を、0.921と決定している。そして、以降の呼吸機能検査では、[測定された実測フロー×0.921]を較正後のフローとして記憶すると共に、ディスプレイ14に表示する。
【0094】
以上のようにしてフロー較正係数が決定されると、S260に示すように、「フロー較正が終了しました」というメッセージがディスプレイ14に表示される。
【0095】
このように、較正用ポンプ300を呼吸機能検査装置1の呼吸経路X2に接続して操作することによってフロー較正が可能となっており、簡素な装置及び簡素な手順によりフロー較正を実現している。また、較正用ポンプ300の操作手順をガイドする機能を設けることによって、検査実施者に適切な操作を行わせて、正確なフロー較正を行うことが可能となっている。
【0096】
なお、図11の例では、吸気に関する較正時の実測フロー積分値(吸気1〜吸気5)及び呼気に関する較正時の実測フロー積分値(呼気1〜呼気5)の合計10個の比較データに基づいて、吸気及び呼気に関して共通(1つ)のフロー較正係数を決定しているが、吸気用のフロー較正係数と、呼気用のフロー較正係数とを別に決定するようにしても良い。具体的には、吸気に関する較正時の実測フロー積分値(吸気1〜吸気5)のみを比較データとして、[3.0(L)÷比較データの平均値]により吸気用のフロー較正係数を決定する。また、呼気に関する較正時の実測フロー積分値(呼気1〜呼気5)のみを比較データとして、[3.0(L)÷比較データの平均値]により呼気用のフロー較正係数を決定する。
【0097】
図12は、較正前の実測フローに基づくフローボリューム曲線と、較正後のフローに基づくフローボリューム曲線との比較図である。フロー較正係数を決定した後に、図10及び図11で示したように較正用ポンプ300を呼吸機能検査装置1と接続して、ガイドに従って操作を行うことにより、[実測フロー×フロー較正係数]により較正後のフローが得られるようになる。そして、較正後のフローを積分することにより、較正前の実測フローの積分値と比較して、較正用ポンプ300の容量(3.0L)により近い値が得られることになる。
【0098】
(実測ボリューム微分値を用いたフロー較正)
上記の実施形態では、比較データとなる較正時の実測フロー積分値と、既知である較正用ポンプの容量(3L)に基づいて、フロー較正係数を決定するようにしている。このような方式に限らず、較正時の実測フローと、較正時の実測ボリューム微分値とに基づいてフロー較正係数を決定するようにしても良い。具体的には、図9及び図10に示したように、較正用ポンプ300を用いてフローを発生させるための操作を行う。この際に、CPU140が、較正時のボリューム出力に基づいて計測した実測ボリュームを微分する計算を行う。そして、算出した実測ボリューム微分値と、微分回路131から出力された信号(フロー出力)に基づいて計測された実測フローと、に基づいて、フロー較正係数を決定するものとする。
【0099】
例えば、図13に示すように、CPU140が算出した較正時の実測ボリューム微分値(ピーク値)と、較正時のフロー出力に基づいて計測された実測フロー(ピーク値)と、に基づいて[実測ボリューム微分値(ピーク値)÷実測フロー(ピーク値)]によりフロー較正係数を決定する。図13に示す例では、較正用ポンプ300のロッド330を0Lの位置から3Lの位置まで2秒かけて押し込んだ場合、即ち、約1.5L/sの呼気に相当するフローを生じさせた場合における、呼気用のフロー較正係数を示している。この場合には、実測ボリューム微分値のピーク値が1.51L/sであり、実測フローのピーク値が1.62L/sとなったことから、[1.51L/s÷1.62L/s]=0.932がフロー較正係数となっている。
【0100】
このように、CPU140は、比較データとなる較正時の実測フローと、較正時の実測ボリューム微分値に基づいて、フロー較正係数を決定する。なお、前述したように、呼気用のフロー較正係数と吸気用のフロー較正係数とを別に決定するようにしても良い。また、発生させるフローを異ならせて複数回の較正を行い、その平均値をフロー較正係数として決定するようにしても良い。
【0101】
(ロータリーエンコーダによる実測フローの計測)
上記の例では、ピストン123の中心軸方向の移動距離をポテンショメータ125が検出すると、検出した移動距離に応じたアナログ信号が出力され、その信号を微分回路により処理する(直流成分をカットする)ことで、ピストン123の中心軸方向の移動距離の時間変化(フロー)に対応したアナログ信号とした後、さらにADC133bによりディジタル信号に変換して、CPU140に読み込ませるようにしている。このような構成に限らず、例えば、ピストン123の中心軸方向の移動に伴い回転軸が回転するロータリーエンコーダを用いて実測フローを得るようにしても良い。即ち、ピストン123の中心軸方向の移動に伴う回転軸の回転速度をロータリーエンコーダにより検出して、ロータリーエンコーダから出力される回転速度に応じたパルス信号を、ピストン123の中心軸方向の移動距離の時間変化(フロー)に対応したディジタル信号として、CPU140に読み込ませるようにしても良い。
【0102】
例えば、ピストン123の中心軸方向の移動速度が遅ければ、ロータリーエンコーダから出力されるパルスの間隔(パルスの出力周期)が長くなり、ピストン123の中心軸方向の移動速度が速ければ、ロータリーエンコーダから出力されるパルスの間隔(パルスの出力周期)が短くなることにより、CPU140では、パルスの間隔(パルスの出力周期)に基づいて実測フローを得ることが可能である。また、ロータリーエンコーダから出力されるパルスを、位相が異なる2相出力としておくことで、呼気(順方向)のフローと吸気(逆方向)のフローを区別することも可能である。例えば、回転軸が順方向に回転している場合には、一方のパルスの立ち上がり時に他方のパルスがONの状態であり、回転軸が逆方向に回転している場合には、一方のパルスの立ち上がり時に他方のパルスがOFFの状態であるように位相差を設けておくと良い。
【0103】
(較正係数の時間推移)
上記の実施形態において算出したボリューム較正係数を、較正時の条件(日時、気温、湿度等)と共に時系列データとしてROMに記憶しておき、CPU140が、ボリューム較正係数の時間推移をグラフ形式でディスプレイ14に表示させるようにしても良い。例えば、1年分(365日分)のボリューム較正係数の時系列データをグラフ形式でディスプレイ14に表示させることで、気温、湿度等の要因により、ボリューム較正係数がどのように変動するか(ボリューム出力の安定性、較正前の実測ボリュームの安定性)を把握することが可能となる。
【0104】
同様に、上記の実施形態において算出したフロー較正係数を、較正時の条件(日時、気温、湿度等)と共に時系列データとしてROMに記憶しておき、CPU140が、フロー較正係数の時間推移をグラフ形式でディスプレイ14に表示させるようにしても良い。例えば、1年分(365日分)のフロー較正係数の時系列データをグラフ形式でディスプレイ14に表示させることで、気温、湿度等の要因により、フロー較正係数がどのように変動するか(フロー出力の安定性、較正前の実測フローの安定性)を把握することが可能となる。
【0105】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されることはない。本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内での変更が可能なことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0106】
1…呼吸機能検査装置
11…本体部
12…ローリングシール型スパイロメータ
13…キーボード
14…ディスプレイ
123…ピストン
131…微分回路
140…CPU
300…較正用ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13