(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロファイバーのように吸水性を有する繊維は細くて柔軟性が高いため、使用するうちにへたってしまい、ブラシのごみを掻き取る機能が低下することがある。本発明の目的は、吸水性を有するブラシ毛のへたりを抑制することができるブラシ及び回転ブラシを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するブラシは、繊維により構成される複数のブラシ毛と、前記複数のブラシ毛を保持する基材と、を備え、前記繊維として、吸水性を有する第1繊維と、前記第1繊維より剛性の高い第2繊維と、を含むことを要旨とする。
【0006】
この構成によれば、第1繊維によって吸水性を確保し、剛性の高い第2繊維によってブラシ毛のへたりを抑制することができる。したがって、吸水性を有するブラシ毛のへたりを抑制することができる。
【0007】
上記構成のブラシは、前記第1繊維と前記第2繊維とが合糸された前記ブラシ毛を備えることが好ましい。
この構成によれば、第1繊維と第2繊維を偏り無くブラシ毛の全体に分布させることができる。これにより、ブラシ毛のへたりを効果的に抑制することができる。
【0008】
上記構成のブラシは、前記第1繊維により構成される前記ブラシ毛である第1ブラシ毛と、前記第2繊維により構成される前記ブラシ毛である第2ブラシ毛と、を備え、前記第1ブラシ毛と前記第2ブラシ毛とは、それぞれ異なる列をなして並び、前記第1ブラシ毛の列数は、前記第2ブラシ毛の列数よりも多いことが好ましい。
【0009】
この構成によれば、第1ブラシ毛と第2ブラシ毛とが異なる列をなして並ぶので、第2繊維の配置の自由度が高い。また、吸水性を有する第1ブラシ毛の列数が多いので、ブラシの吸水性が高い。
【0010】
上記構成のブラシにおいて、前記第1繊維はマイクロファイバーであり、前記第2繊維は吸水性を有することが好ましい。
この構成によれば、マイクロファイバーに加えて、第2繊維が吸水性を有することにより、ブラシ毛の吸水性を高めることができる。マイクロファイバーは速乾性を有するので、濡れたブラシ毛が乾きやすい。
【0011】
上記構成のブラシにおいて、前記第2繊維は、中空繊維であることが好ましい。
この構成によれば、中空繊維の毛細管力によって、ブラシ毛の吸水性を高めることができる。
【0012】
上記構成のブラシにおいて、前記第2繊維は、中心部分にカーボンを含有する樹脂部を有することが好ましい。
この構成によれば、樹脂部の徐電効果により、乾いた状態でブラシを使用した場合の静電気の発生を抑制することができる。
【0013】
上記構成のブラシにおいて、前記第2繊維は、捲縮繊維であることが好ましい。
この構成によれば、捲縮繊維からなる第2繊維の復元性により、ブラシ毛のへたりを効果的に抑制することができる。
【0014】
上記課題を解決する回転ブラシは、回転体及び前記回転体に固定されるブラシを備える回転ブラシであって、前記ブラシは、繊維により構成される複数のブラシ毛を備え、前記繊維として、吸水性を有する第1繊維と、前記第1繊維より剛性の高い第2繊維と、を含むことを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、上記ブラシと同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
上記ブラシ及び回転ブラシによれば、吸水性を有するブラシ毛のへたりを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、ブラシ及び回転ブラシの実施形態について、図を参照して説明する。本実施形態のブラシは、電気掃除機の回転ブラシとして使用する事例である。
【0019】
図1に示すように、電気掃除機11は、床Fの清掃をする時の姿勢を基準にして、本体部50と、本体部50から下方に延びる接続パイプ13と、接続パイプ13の先に接続されるヘッド51と、本体部50から上方に延びる把持部52と、を備える。本実施形態の電気掃除機11は、ヘッド51が本体部50の下方に固定されたアップライト型であるが、ヘッド51が本体部50とホースで連結されたキャニスター型の電気掃除機11であってもよい。
【0020】
ヘッド51は、接続パイプ13の先端側に取り付けられたケース12と、ケース12内に収容される回転ブラシ22と、回転ブラシ22を回転させるモータ18と、モータ18の回転を回転ブラシ22に伝達する回転ベルト23と、を備える。ケース12の底には、床Fに向けて開口する吸込口14が形成されている。ヘッド51には、床F上での移動を補助するためのローラー55を設けてもよい。
【0021】
電気掃除機11は、本体部50内に清掃用流体を収容するタンク53を備えるとともに、タンク53からヘッド51まで延びる清掃用流体の流路54を備えてもよい。清掃用流体は、例えば水であり、水と洗剤との混合液であってもよい。この場合、流路54の先端を回転ブラシ22の近くに配置して、タンク53に収容した清掃用流体を回転ブラシ22に噴射するとよい。清掃用流体で回転ブラシ22を濡らすと、床Fを水拭きすることができる。清掃用流体は、蒸気として回転ブラシ22または床Fに噴射してもよい。
【0022】
図2に示すように、流路54は、回転ブラシ22の軸方向の両端に振り分けて、
図2に破線で示すように、清掃用流体を軸方向の両端側から回転ブラシ22に向けて噴射するとよい。
【0023】
図3に示すように、回転ブラシ22は、円筒状の回転体31と、回転体31に固定されるブラシ32とを備える。回転体31は、例えば金属または樹脂によって形成される。ブラシ32は、繊維により構成される複数のブラシ毛34と、複数のブラシ毛34を保持する基材33と、を有する。基材33が基布の場合、ブラシ毛34が基布の表面に立設するパイルを形成してもよい。ブラシ毛34は、繊維として、吸水性を有する第1繊維35(
図5参照)と、第1繊維35より剛性の高い第2繊維36(
図6参照)と、を含む。
【0024】
ブラシ32は、例えば、帯状の基材33を回転体31に螺旋状に巻き付けて、基材33の裏面を回転体31の外周面に固定するとよい。ブラシ32は、接着剤または両面テープなどで回転体31の外周面に貼り付けてもよいし、網目状の回転体31に基布からなる基材33を縫い付けてもよい。あるいは、回転体31を基材として、回転体31にブラシ毛34を直接固定してもよい。
【0025】
図4に示すように、ブラシ毛34は、合糸機60により第1繊維35と第2繊維36とを合糸することによって形成してもよい。合糸機60は、2種の糸を撚って撚糸とする加工機であってもよいし、2種の糸を撚らずに引き揃えて引き揃え糸とする加工機であってもよい。
【0026】
第1繊維35は、例えばマイクロファイバーである。マイクロファイバーは、1デニール以下の極細の繊維であり、毛細管力による吸水性及び速乾性を有する。その他、吸水性を有する第1繊維35として、綿またはアセテート繊維などを使用してもよい。
【0027】
第2繊維36は、吸水性を有することが好ましい。第2繊維36は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはナイロンからなる。第2繊維36の直径は、例えば、0.02〜0.05mm程度にすることができる。第1繊維35は、第2繊維36よりも吸水性が高いことが好ましい。
【0028】
第1繊維35と第2繊維36の合糸からなるブラシ毛34は、先端を切り揃えると繊維が開いて束状になり、第1繊維35の中に一定の間隔で第2繊維36が混在した状態になる。このようなブラシ毛34における第1繊維35と第2繊維36の比率(断面占有率)は、2:1よりも第1繊維35の割合を多くして、吸水性を確保することが好ましい。例えば、第1繊維35と第2繊維36の比率(断面占有率)を5:1〜10:1にすると、ブラシ毛34の吸水性が高くなるので、好ましい。
【0029】
図5に示すように、第1繊維35であるマイクロファイバーは、繊維の断面が複数のパーツに分かれることにより、より細い繊維となる分割繊維であってもよい。分割繊維は、
図5に例示した形状に限らず、任意の分割態様に変更することができる。マイクロファイバーの分割後の直径は、例えば、0.002mm程度にすることができる。
【0030】
分割繊維は、例えば、異なる性質の2種の樹脂35a,35bを結合させることにより、異なる樹脂35a,35bの間で分割を生じさせる複合糸である。異なる樹脂35a,35bとしては、例えば、PETとナイロンとを採用することができる。この場合、PETよりもナイロンの方が耐摩擦性及び復元性に優れるため、PETよりもナイロンの割合(断面占有率)を多くすることが好ましい。
【0031】
図6に示すように、第2繊維36は、外周面に複数(例えば8つ)の溝36aを設けることにより、断面中心から延びる複数(例えば8つ)の突出部36bを形成するとよい。このようにすると、溝36aが毛細管となり、第2繊維36が吸水性を有することができる。突出部36bは、基端と先端の間の中間部分がふくらむように断面花弁形状にすると、溝36aの幅が狭くなるので、毛細管力を高めることができる。
【0032】
次に、本実施形態の回転ブラシ22及びブラシ32の作用を説明する。
ブラシ毛34は第1繊維35を含むので、吸水性を有する。タンク53から供給される清掃用流体をブラシ毛34が吸収すると、ブラシ32で床Fを水拭きすることができる。
【0033】
第1繊維35であるマイクロファイバーは速乾性を有するので、ブラシ毛34が吸収した清掃用流体が蒸発すれば、ブラシ32で床Fを乾拭きすることができる。また、ブラシ毛34が乾いた状態のときには、床Fにこぼれた液体をブラシ32で拭き取ることができる。
【0034】
ブラシ毛34は剛性の高い第2繊維36を含むので、柔軟性の高い第1繊維35がへたりにくい。ブラシ32は、第2繊維36の剛性により、床Fに付着した汚れを掻き取ることができる。
【0035】
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1−1)ブラシ32は、第1繊維35によって吸水性を確保し、剛性の高い第2繊維36によってブラシ毛34のへたりを抑制することができる。したがって、吸水性を有するブラシ毛34のへたりを抑制することができる。
【0036】
(1−2)ブラシ32は、第1繊維35と第2繊維36とが合糸されたブラシ毛34を備えるので、第1繊維35と第2繊維36を偏り無くブラシ毛34の全体に分布させることができる。これにより、ブラシ毛34のへたりを効果的に抑制することができる。
【0037】
(1−3)第1繊維35であるマイクロファイバーに加えて、第2繊維36が吸水性を有することにより、ブラシ毛34の吸水性を高めることができる。
(1−4)マイクロファイバーは速乾性を有するので、濡れたブラシ毛34が乾きやすい。
【0038】
(第2実施形態)
図7に示すように、本実施形態のブラシ32は、第1実施形態で説明した第1繊維35により構成されるブラシ毛34である第1ブラシ毛34Fと、第2繊維36により構成されるブラシ毛34である第2ブラシ毛34Sと、を備える。
【0039】
第1ブラシ毛34Fと第2ブラシ毛34Sとは、それぞれ異なる列をなすように並べてもよい。例えば、基材33がX軸方向及びY軸方向に延びるとともにブラシ毛34F,34Sが基材33からZ軸方向に延びる場合に、Y軸方向に並ぶ複数のブラシ毛34が列をなし、X軸方向に第1ブラシ毛34Fの列と第2ブラシ毛34Sの列とが並ぶようにするとよい。第1ブラシ毛34Fの列数は、第2ブラシ毛34Sの列数よりも多いことが好ましい。
【0040】
第1ブラシ毛34Fの列は、第2ブラシ毛34Sの列で両側から挟むように配置すると、第1ブラシ毛34Fのへたりを効果的に抑制できる。例えば、X軸方向に並ぶ複数列(例えば6列)の第1ブラシ毛34Fを第1ブラシ部とし、X軸方向に並ぶ複数列(例えば2列)の第2ブラシ毛34Sを第2ブラシ部とする場合、X軸方向において第1ブラシ部を第2ブラシ部で挟むように配置するとよい。
【0041】
図8に示すように、本実施形態の第2繊維36は、中心部にカーボンを含む樹脂からなる樹脂部36cを有する。この第2繊維36は、カーボンを含む樹脂部36cの徐電効果により、乾いた状態でブラシ32を使用した場合の静電気の発生を抑制することができる。
【0042】
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(2−1)第1ブラシ毛34Fと第2ブラシ毛34Sとが異なる列をなして並ぶので、第2繊維36の配置の自由度が高い。
【0043】
(2−2)第2ブラシ毛34Sが列をなして並ぶので、ブラシ毛34の掻き取り性能が高い。
(2−3)吸水性を有する第1ブラシ毛34Fの列数が多いので、ブラシ32の吸水性が高い。
【0044】
(2−4)第2繊維36が有する樹脂部36cの徐電効果により、乾いた状態でブラシ32を使用した場合の静電気の発生を抑制することができる。
(変更例)
上記実施形態は、以下に示す変更例のように変更してもよい。上記実施形態に含まれる構成は、下記変更例に含まれる構成と任意に組み合わせることができる。下記変更例に含まれる構成同士は、任意に組み合わせることができる。
【0045】
・
図9に示すように、第2繊維36は、中心部に中空部36dを有する中空糸であってもよい。この構成によれば、中空部36dで生じる毛管力により、第2繊維36の吸水性を向上させることができる。
【0046】
・第2繊維36は、捲縮繊維であってもよい。この構成によれば、捲縮繊維からなる第2繊維36の復元性により、ブラシ毛34のへたりを効果的に抑制することができる。
・ブラシ毛34は、複数種類の第1繊維35を含んでもよいし、複数種類の第2繊維36を含んでもよい。
【0047】
・第1実施形態のブラシ毛34が
図8に示す第2繊維36を含んでもよいし、第2実施形態のブラシ毛34が
図6の第2繊維36を含んでもよい。
・ブラシ32は、第1繊維35と第2繊維36の合糸であるブラシ毛34(
図4参照)と、第1繊維35により構成される第1ブラシ毛34Fと、第2繊維36により構成される第2ブラシ毛34Sと、を備えてもよい。
【0048】
・ブラシ32は、第1繊維35と第2繊維36の合糸であるブラシ毛34(
図4参照)と、第1繊維35により構成される第1ブラシ毛34Fと、を備えてもよい。
・ブラシ32は、第1繊維35と第2繊維36の合糸であるブラシ毛34(
図4参照)と、第2繊維36により構成される第2ブラシ毛34Sと、を備えてもよい。
【0049】
・第2繊維36は、吸水性を有さなくてもよい。この場合、ブラシ毛34における第2繊維36の比率(断面占有率)は、第2繊維36が吸水性を有する場合よりも、小さいことが好ましい。
【0050】
・ブラシ32は、板、棒またはワイヤーなどに取り付けて回転しないブラシとして使用してもよいし、他の部材に固定することなく単独で使用してもよい。回転しないブラシ32は、例えば、床Fなどを清掃するためのモップに用いることができる。
【0051】
・第2実施形態のブラシ32は、第1実施形態で説明した回転体31に取り付けて、回転ブラシ22としてもよい。
・ブラシ32を回転体31に巻き付ける場合には、必ずしも螺旋状に巻き付けなくてもよく、ブラシ32の長手方向が回転体31の軸方向に延びるように巻き付けてもよいし、ブラシ32の短手方向が回転体31の軸方向に延びるように巻き付けてもよい。
【0052】
・ブラシ32を回転体31に螺旋状に巻き付ける場合には、複数のブラシ32を回転体31の軸方向に並べて巻き付けてもよい。
・ブラシ32または回転ブラシ22は、清掃用流体を収容するタンク53を備えない電気掃除機11に適用されてもよい。
【0053】
・基材33は経糸と緯糸とを織ってなる基布であってもよいし、不織布であってもよい。また、基材33として、木材、金属または剛性を有する樹脂等を採用し、これらにブラシ毛34を植毛したり接着したりすることによって、ブラシ32を形成してもよい。