(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで説明される吸入酸素分配システム100は、患者(例えば、人間の幼児)に対する吸入酸素分配を自動的に制御する方法を実行するものである。
【0014】
説明されるシステム(および方法)は、既存のシステムおよび方法に比べひとつ以上の利点を与える。第1に、説明されるシステムは、所望のSpO
2範囲を効率的に目標として、酸素の過剰吸入を避ける。第2に、説明されるシステムは、例えばV/Q比の変化および肺内のシャントによるSpO
2逸脱に迅速に応答することできる。第3に、説明されるシステムは、PaO
2−SpO
2関係内の非線形性を補償する(ここで、PaO
2は、動脈中酸素の分圧を意味し、例えば、PaO
2は、S字形曲線の線形部分におけるSpO
2の各1%のステップ変化に対して、1〜2mmHgだけ変化するが、漸近線の方向へさらに向かって20mmHg以上だけ変化する。)第4に、説明されるシステムは、FiO
2調節に対する個人の変更可能なSpO
2応答を補償するべく異なる個人に対して、FiO
2−SpO
2曲線のシフト(ここで、右側シフトは、減少する換気−かん流(V/Q)比に対応する)およびシャント(肺の内部に酸素が加えられない状態での、人体にポンピングされる血液の割合または比)の異なる個人の混合に対応して、異なるように応答することができる。第5に、説明されるシステムは、パフォーマンス計測に基づいてその利得を調節することができる。
【0015】
図1に示すように、システム100は、制御装置10、オキシメータ20、および、呼吸サポートデバイス30を有する。
【0016】
制御装置11は、吸入酸素分配を自動的に制御するように構成されている。
【0017】
オキシメータ20は、患者40の動脈酸素飽和(SpO
2)値を測定し、制御装置10にSpO
2値を表す出力信号を送信する。オキシメータ20の出力信号により表されるSpO
2値は、制御装置10の観点から入力SpO
2値とも呼ばれる。
【0018】
オキシメータ20は、アナログまたはデジタルデータ出力を有する。
【0019】
オキシメータ20からの入力SpO
2値に基づいて、制御装置10は、出力吸入酸素濃度(FiO
2)値を決定し、決定された出力FiO
2値を表すFiO
2信号を出力する。
【0020】
制御装置10からの出力FiO
2信号は、呼吸サポートデバイス30に送信される。呼吸サポートデバイス30は、FiO
2入力に応答することができるシステムである。すなわち、呼吸サポートシステムは、FiO
2の所望の値を受信しかつ実行することができる。呼吸サポートデバイス30は、空気酸素混合機、機械的人工呼吸器、持続的気道陽圧(CPAP)ドライバー、または、大流量鼻カニューラサポートまたは小流量酸素分配用のフロージェネレータの形式であってよい。
【0021】
呼吸サポートデバイス30は、混合ガス(決定されたFiO
2を有するわずかに吸入された酸素)を患者40に分配する。吸入酸素分配システム100は、さらに、補助患者モニタリングシステム50、および、呼吸回路モニタリングシステム60を有する。
【0022】
補助患者モニタリングシステム50は、患者40を監視し、患者の状態を表す信号を出力する。補助患者モニタリングシステム50は、心肺モニターまたは呼吸モニターの形式の監視デバイスを含む。
【0023】
呼吸回路モニタリングシステム60は、呼吸サポートデバイス30の出力、すなわち、患者に分配されるべき吸収酸素の割合を監視する。それは、モニタリング結果を表す信号を出力する。呼吸回路モニタリングシステム60は、酸素アナライザーおよび付加的に圧力トランスデューサーの形式のデバイスを有する。
【0024】
補助患者モニタリングシステム50および呼吸回路モニタリングシステム60からの出力は、制御装置10に送信される。制御装置10は、補助患者モニタリングシステム50および呼吸回路モニタリングシステム60から送信された信号および入力SpO
2に基づいて出力FiO
2値を決定する。
【0025】
図2に示すように、制御装置10は、スタンドアロンのデバイスである。制御装置10は、入力SpO
2値に基づいて出力FiO
2値を決定するコントローラ11と、入力SpO
2値を表す信号を受信し、かつ、決定された出力FiO
2値を表す信号を出力する入力/出力インターフェース12を有する。入力/出力インターフェース12は、補助患者モニタリングシステム50および/または呼吸回路モニタリングシステム60からの入力も受信する。
【0026】
コントローラ11は、ここで説明する方法の各工程を実行するひとつ以上のデジタルマイクロコントローラまたはマイクロプロセッサを含む、電子制御装置の形式である。コントローラ11は、方法の各ステップを実行するように構成されたひとつ以上の特定用途向け集積回路および/またはフィールドプログラマブルゲートアレイを有する。
【0027】
制御装置10は、受信した入力SpO
2値を記録するメモリ13をさらに有する。メモリ13は、ここで説明する方法のステップを定義する機械読み取り可能インストラクションを格納し、方法のひとつ以上のステップを実行するべく、コントローラ11によって読み出されかつ実行される。
【0028】
制御装置10はまた、ユーザ(例えば、ベッドサイドの介護者)にさまざまな情報を示すユーザインターフェースを表示し、ユーザインターフェースを通じてユーザによって入力されたインストラクションを受信するユーザインターフェースディスプレイ14を有する。受信したユーザ入力は、コントローラ11へ送信される。
【0029】
制御装置10は、データ収集デバイス(DAQ)15を有し、それは、システム100の他のコンポーネントから送信された信号/データを収集する。
【0030】
オキシメータ20は、パルスオキシメータ21を有する。パルスオキシメータ21は、患者40のSpO
2を測定し、制御装置10へSpO
2値を表す出力信号を送信する。パルスオキシメータ21はさらに、(1)スプリアスのSpO
2値と潜在的に関連する小さい値を有する酸素測定波形の拍動性のメトリックであるかん流指数、(2)SpO
2プレチスモグラフ波形(Pleth)を測定する。かん流指数を表す出力信号、および、SpO
2プレチスモグラフ波形を表す出力信号は、パルスオキシメータ21から制御装置10へ送信される。パルスオキシメータ21は、さらに、SpO
2プレチスモグラフ波形から導出された心拍数(HR
Pleth)を測定し、それを制御装置10へ送信する。
【0031】
呼吸サポートデバイス30は空気酸素混合機31を有する。決定された出力FiO
2値を表す信号は、制御装置10から空気酸素混合機31にカスタム設置されたサーボモーター32に方向付けられ、それにより、環状ギア機構を介して、混合機FiO
2選択ダイヤルの自動回転が可能となる。サーボモーター32およびギアシステムは、十分なトルクおよび精度を有し、FiO
2への微小な調節(例えば、最小値±0.5%)を正確かつ繰り返し行うことができる。サーボモーター32は、混合機ダイヤルが手動で回せるように低いホールドトルクを有してもよい。この手動の介入は、ポジションセンサーによって検出され、FiO
2がもはや自動制御されない手動モードへの切り替えを生じさせる。
【0032】
FiO
2の自動制御の最初において、サーボモーターキャリブレーションがチェックされ、必要に応じて変更される。サーボモーターキャリブレーションは、必要ならば長期使用中に周期的にチェックおよび/または変更可能である。
【0033】
制御装置10は、FiO
2セレクタダイヤルの位置(サーボFiO
2)のサーボモーター32からのフィードバック信号を使って、出力FiO
2値の変更がサーボモーター32によって正しく実行されたことを確認する。
【0034】
図2に示すように、補助患者モニタリングシステム50は、呼吸モニター51および心肺モニター52を含む。呼吸モニター51は、患者40の呼吸を監視し、かつ、患者40の呼吸速度を表す信号を出力する。心肺モニター52は、患者40の心電図(ECG)を監視し、心電図モニタリングから導出された心拍数(HR
ecg)を表す信号を出力する。呼吸モニター51および心肺モニター52からの出力は、制御装置10へ送信される。
【0035】
呼吸回路モニタリングシステム60は、酸素アナライザー61および圧力トランスデューサー62を含む。酸素アナライザー61は、空気酸素混合機31の出力、すなわち、患者40に分配されるべき混合ガスを監視し、測定FiO
2を表す信号を制御装置10へ出力する。圧力トランスデューサー62は、CPAP回路の吸入リム内の圧力を変換し、CPAP回路圧力を表す信号を制御装置10へ出力する。
【0036】
制御装置10から送られた出力FiO
2値の変化が自動空気酸素混合機31によって正しく実行されたことの確認は、酸素アナライザー61を使った、空気酸素混合機31からの出力FiO
2の測定に基づいている。酸素アナライザー61からの情報(測定FiO
2)は、アナログ信号からデジタル化され、さらに選択されたフロー時間遅延(それは、5秒か、他の適当な値であってよく、システムセットアップの時間に選択または決定される)だけオフセットされて、ガスフローの時間、および、混合機の下流平衡を補償する。
【0037】
オキシメータ20、補助患者モニタリングシステム50および吸入酸素モニタリングシステム60からのこれらの入力信号に基づいて、制御システム10は出力FiO
2値を決定する。
【0038】
オキシメータ20、補助患者モニタリングシステム50および呼吸回路モニタリングシステム60からの入力SpO
2以外の入力は、付加的入力と呼ばれる。上述したように、付加的入力は、測定FiO
2、CPAP回路圧力、呼吸速度、かん流指数、プレチスモグラフ波形、HR
PlethおよびHR
ecgを含む。
【0039】
制御装置10は、音声および/または視覚アラームをトリガーするために、コントローラ11により制御されるアラームユニットをさらに有する。例えば、サーボFiO
2または測定FiO
2のいずれかの出力FiO
2値からの逸脱が許容限界を超えた場合(それぞれ、1および2%)、アラームがトリガーされる。ひとつの例において、それぞれ5および10%の逸脱の発生に対して、高レベルアラームおよび手動モードへの切り替えが実行される。
【0040】
また、代替的に、制御装置10は、スタンドアロンデバイスではなく、他のデバイスにマウントされるか一体化されてもよい。例えば、制御装置10は、オキシメータ20内に一体化されてよく、または、呼吸サポートデバイス30内に一体化されてもよい。
【0041】
以下で詳細に説明するように、コントローラ11は、早産児に対する自動酸素制御用に適応されかつ構成されたフィードバック形式のコアコンポーネントを有する。フィードバックコントローラは、入力制御信号、および、フィードバックコントローラ内の内部制御値(項とも呼ばれる)に基づいて、出力制御信号を生成するための機械的、デジタルおよび/または電子的回路を有する。内部制御値は、
(a)入力の現在値に基づいて出力を調節する即時制御値、
(b)入力の先行または過去の値に基づいて出力を調節する累積制御値、
(c)入力の予測未来値に基づいて出力を調節する予測制御値、
の合計を含む。
【0042】
吸入酸素分配を自動的に制御する方法は、
(a)患者に対する複数の入力酸素飽和(SpO
2)値を表す信号を受信する工程と、
(b)入力SpO
2値および目標SpO
2値に基づいて制御値を生成する工程と、
(c)制御値および基準吸入酸素濃度(rFiO
2)値に基づいて、出力吸入酸素濃度(FiO
2)値を生成する工程と
を有する。
【0043】
制御値は、現在の入力SpO
2値と目標SpO
2値との比較に関連する即時制御値を含む。即時制御値は、入力SpO
2値、目標SpO
2値、および、即時利得係数に基づいて生成される。
【0044】
制御値はさらに、入力SpO
2値および目標SpO
2値との間の累積関係に基づいて生成された累積制御値を含む。入力SpO
2値および目標SpO
2値との間の累積関係は、入力SpO
2値と目標SpO
2値との間の差の累積であってよい。累積制御値は、入力SpO
2値および目標SpO
2値に基づいて生成され、累積利得係数により調節されてよい。
【0045】
制御値はさらに、入力SpO
2値と目標SpO
2値との間の予測関係に基づいて生成される予測制御値を含む。予測関係は、入力SpO
2値と目標SpO
2値との間の差の時間微分であってよい。予測制御値は、入力SpO
2値、目標SpO
2値、および、予測利得係数に基づいて生成される。
【0046】
フィードバックコントローラは、即時制御値、累積制御値、予測制御値およびrFiO
2値に基づいて制御値を生成し、かつ、出力FiO
2値を決定する。
【0047】
フィードバックコントローラにおいて、エラーは、セットポイントからのプロセス信号の逸脱として定義される。フィードバックコントローラは、比例積分微分(PID)コントローラであってよい。
【0048】
PIDフィードバックコントローラは、多くの方法によって強化される。肺機能不全の深刻さの測定は、現在の酸素要求の自動評価によって周期的に得られる。即時制御値の強化は、肺機能不全の深刻さ、目標範囲内でのエラー減衰、および、低酸素症の間のエラー上限規定に基づく変調を含む。累積制御値の強化は、被積分関数の大きさ上限規定、非線形PaO
2−SpO
2関係の補償、および、室内気中の被積分関数増加の制限を含む。
【0049】
PIDコントローラに対して、各瞬間の操作された信号出力の値は、エラー、その積分およびその微分に比例しており、各ケースで異なる乗算係数、すなわち、即時利得係数、累積利得係数、および、予測利得係数(K
p、K
i、K
dとそれぞれ呼ぶ)を有する。PIDフォードバックコントローラに対して、即時制御値は、比例項とも呼ばれ、累積制御値は積分項とも呼ばれ、予測制御値は微分項とも呼ばれる。それら3つは、PID項と呼ばれる。
【0050】
ここで説明する吸入酸素分配を自動的に制御するための方法において、即時制御値は、カレントの入力SpO
2値および目標SpO
2との間の差に関連したエラー値に、即時利得係数を乗算することにより生成される。エラー値は、エラー(e)、すなわち、カレントの入力SpO
2値と目標SpO
2値との間の差を決定することにより、生成される。代替的に、エラー値は、カレントの入力SpO
2値を目標のSpO
2値と比較する他の適当な数学的方法によって生成されてもよい。
【0051】
PIDコントローラに対して、SpO
2の入力値(有効信号と仮定して)と、選択した目標範囲の中間点(例えば、目標範囲だ91〜95%であれば、中間点は93%)との間の数値差がエラー(e)として使用されてよい。
【0052】
また、累積制御値は、入力SpO
2値と目標SpO
2値との間の差の累積に、累積利得係数を乗算することにより生成される。例えば、累積制御値は、エラー値の合計に、デジタル信号用の累積利得係数を乗算することにより生成されるか、エラー値の積分にアナログ信号用の累積利得係数を乗算することにより生成される。代替的に、累積制御値は、入力SpO
2値と目標SpO
2値との間の累積関係を生じさせる他の適当な数学的方法によって生成されてもよい。
【0053】
PIDコントローラに対して、被積分関数(∫edτ)は、すべてのエラー(以下で説明される制限を受ける)の合計または積分である。PID制御内の積分項は、一定の状態エラーを克服する利点に役立つ。
【0054】
また、予測制御値は、連続エラー値(デジタル信号に対して)の間の時分割された差、または、エラー値(すなわち、入力SpO
2値と目標SpO
2値との間の差)の微分係数(アナログ信号に対して)に、予測利得係数を乗算することにより生成される。代替的に、予測制御値は、入力SpO
2値と目標SpO
2値との間の予測関係を生じさせる他の適当な数学的方法によって生成されてもよい。
【0055】
PIDコントローラに対して、微分係数(de/dt)は、先行の5秒間にわたる直線回帰によるSpO
2勾配であり、PID制御において、未来エラーの予測をもたらす。
【0056】
例えば、PID項の各々の合計は、ΔFiO
2として表される(以下の方程式(1)で示す)。
【0057】
上述したように、出力FiO
2値(患者に分配されるべきFiO2)は、制御値、および、基準吸入酸素濃度(rFiO
2)値に基づいて決定される。
【0058】
ある実施形態において、出力SpO
2値は、以下の方程式(2)で示すような、対応する制御値および対応するrFiO
2値の合計である。
【0059】
例えば、FiO
2は、ΔFiO
2およびrFiO
2の合計である(以下の方程式(2)で示す)。さらに、FiO
2は、±0.5%に丸められ、かつ、21と100%の間の値に強制される。すなわち、21%未満の任意の値は、21%まで切り上げられ、100%を超える任意の値は、100%まで切り下げられる。
【数1】
【数2】
【0060】
rFiO
2値は、カレントのベースラインの酸素要求を表し、それは患者の肺機能不全の深刻さを示す。それは、予測値または値の範囲であるか、ユーザ入力によって選択されてもよい。例えば、rFiO
2値は、21%と60%との間の数、または、100%までの任意の他の適当な数として予め定められる。rFiO
2値は、以下で詳細に説明するように、初期値を有し、時間にわたって周期的に修正される。決定を繰り返すための時間間隔は固定されるか(例えば、30分から2時間の任意の間隔)、または、代替的に決められていない。こうして、呼吸器機能不全を有する患者に発生するベース酸素要求の徐々の変化を検出し、対応することが可能になる。
【0061】
ある実施形態において、即時利得係数は、−2と−0.2の間として選択された初期値、例えば、−1を有する。
【0062】
ある実施形態において、累積利得係数は、−0.25と−0.005との間として選択された初期値、例えば、−0.0125を有する。
【0063】
ある実施形態において、予測利得係数は、−2と−0.25との間として選択された初期値、例えば、−1を有する。
【0064】
K
p、K
i、K
dの各々の値は、予め定められた基準値または値範囲に基づいて決定される。例えば、K
p、K
i、K
dは、基準値、または、早産児からのデータを使ったシミュレーション研究から導出された値の範囲に基づいて決定される。係数の各々の値は、負であってもよく、それは、PID項が協力してエラーを訂正するように作用することを意味する。係数値の例示的範囲は、K
pが−2から−0.2、K
iが−0.25から−0.005、K
dが−2から−0.25であり、例えば、K
pが−1、K
iが−0.0125、K
dが−1である。以下で詳細に説明するように、K
pの固定値は、肺機能不全の深刻さに応じて修正されてよく、自動制御中の自己調節プロセスを通じてさらに改善される、例えば、30から60分毎(または、例えば10分以上かつ120分以下の適当な評価に対して十分な他の適当な時間間隔)に1回修正される。
【0065】
ある実施形態において、即時制御値が修正されてよい。
【0066】
ある実施形態において、方法は、
目標SpO
2範囲に基づいて、目標SpO
2値を決定する工程をさらに有し、
カレントの入力SpO
2値が目標SpO
2範囲内にあるとき、アッテネータが即時利得係数に適応され、
アッテネータは、カレントの入力SpO
2値および目標SpO
2範囲の中間点に基づいて生成される。
【0067】
アッテネータは、カレントの入力SpO
2値と目標SpO
2範囲の中間点との間の差に比例する比の乗数である。
【0068】
また、カレントの入力SpO
2値が目標のSpO
2値より小さいときには、カレントの入力SpO
2値と目標SpO
2値との間の差に関連するエラー値が、選択された最大差において上限規定される。
【0069】
PID制御に対して、比例項の決定は、入力SpO
2値が目標のSpO
2範囲内に存在する場合に修正される。
【0070】
システム100は、目標範囲の中間点を目標とし、この値からの任意の逸脱をエラー(e)として定義する。目標範囲内のいずれかのSpO
2値が許容されるという認識において、目標範囲の中間点からの逸脱に関連するエラーは、中間点からの距離に比例する比乗数K
pfmによって減少される(目標範囲減衰)。例えば、中間点(例えば、91〜95%)から±2のスパンを有する目標範囲に対して、|e|=1に対する0.25の比乗数K
pfmがK
pに適用され、|e|=2に対する0.5の比乗数K
pfmが適用される。
【0071】
また、SpO
2モニタリングの相対的不正確さが80%以下の値で与えられると、負のエラーが、例えば比例項の決定に対して15%に、上限規定される。
【0072】
ある実施形態において、累積制御値が修正されてよい。
【0073】
ある実施形態において、動脈酸素の分圧(PaO
2)とSpO
2との間の非線形な予め定められた関係に基づいて、
非線形重み付け補償が累積制御値に
適用されてもよい。
【0074】
さらに、累積制御値は、制御値を選択した最大制御値に上限規定するように修正されてよい。
【0075】
PID制御に対して、積分項が修正されてもよい。
【0076】
絶え間ない低酸素症の場合、積分項はFiO
2を益々増分するという認識において、PIDコントローラから出力される最大ΔFiO
2をユーザによって設定された値(それは、±30〜40%であり、すなわち、rFiO
2より30〜40%上または下)に制限するよう被積分関数の大きさに制限が設定される。オーバーシュートとしての低酸素症イベントに続く、酸素過剰症(すなわち、補助酸素時の目標範囲を超えたSpO
2)において、高いSpO
2値でのエラーは、許容値からのPaO
2の逸脱と同様に比例しない(すなわち、非線形なPaO
2−SpO
2関係)。このため、被積分関数が負のまま(すなわち、ΔFiO
2を増加させる傾向)である限り、エラー乗数は、関連するΔPaO
2値に比例する正のエラーに適用される。ひとつの実施形態において、被積分関数は負のままである間、訂正されたエラーは、各反復により被積分関数に付加される。エラー乗数を表1に示す。
【0078】
エラー乗数は、急速に増加する負の被積分関数をゼロに戻す効果を有し、したがって、オーバーシュートを軽減する。
【0079】
また、ある実施形態において、累積制御値を生成することは、(i)カレントの出力FiO
2値が室内気レベルであり、かつ、(ii)カレントの入力SpO
2値が目標SpO
2値を超えるときに、累積制御値の増加を制限することを含む。
【0080】
被積分関数が正である場合(すなわち、ΔFiO
2が減少する傾向)、FiO
2のセットが室内気(21%)を超えたままである間にのみ、さらに正のエラーが被積分関数に付加される。室内気(すなわち、FiO
2=21%)の場合、目標範囲を超えるSpO
2の連続値は、絶え間のない酸素過剰症を表すとはもはや考えられず、正のエラーは被積分関数に付加されない。すなわち、これらの正のエラー値はヌルまたはゼロとなる。これは、次の低酸素症の発現に対する積分項から適切な応答を遅延させる正の被積分関数の確立を避けることができる。
【0081】
ある実施形態において、予測制御値が修正されてよい。
【0082】
ある実施形態において、すべての負のSpO
2勾配決定期間の間に、入力SpO
2値が選択されたSpO
2閾値より上だった場合に、予測制御値は、ヌルとなる。
【0083】
PID制御に対して、微分項が修正されてよい。例えば、微分項は、酸素過剰症の間に修正されてよい。
【0084】
ある実施形態において、最近の5個のSpO
2値の全てがセットポイントを超えた場合に(酸素過剰症)、負のSpO
2勾配がヌルとなる。したがって微分項によるΔFiO
2の圧力上昇は、酸素過剰症において回避される。
【0085】
図3は、以下の説明するような修正を含む、比例項、積分項、および微分項を生成するコントローラ11によって実行されるプロセス300を示す。
【0086】
図3に示すように、ステップS302において、エラー(e)の値は、以下の方程式3に示すように、入力SpO
2値と目標SpO
2値との間の数値差として決定される。
【数3】
【0087】
次に、ステップS304において、比例項が以下のステップを使って修正される。
【0088】
(a)エラーの値に基づいて、比乗数K
pfmの値を以下のように選択する。
もし、|e|≦1(すなわち、エラーが目標範囲の25%より小さいかまたは等しく、したがって、入力SpO
2値が目標範囲内にあり、かつ、目標SpO
2値の近く)であれば、K
pfm=0.25、
他に、もし、|e|≦2(すなわち、エラーが目標範囲の25%より大きいが、目標範囲の50%より小さいか等しく、したがって、入力SpO
2値は目標SpO
2値に近くはないが、目標範囲内にある)であれば、K
pfm=0.5、
その他(すなわち、エラーが目標範囲の50%より大きく、したがって、入力SpO
2値が目標範囲の外側にある)の場合には、K
pfm=1。
【0089】
(b)CPAP回路圧力および呼吸速度に基づいてK
pfmを以下のように調節する。
もし、CPAP回路圧力=低であれば、K
pfm=2*K
pfm(すなわち、回路圧力の減少が2倍のK
pfmを導く)、
他に、もし、呼吸停止期間が5から15秒であれば、30秒間、K
pfm=2*K
pfm(すなわち、呼吸停止が、30秒間、2倍のK
pfmを生じさせる)。
【0090】
(c)低酸素症の間に、比例項エラー上限規定を以下のように適応する。
もし、e>−1.5%(すなわち、患者が低酸素症)であれば、比例項エラーe
p=−15%(すなわち、比例項エラーを上限規定する)、
その他は、e
p=e
【0091】
(d)比例項を以下のように計算する。
比例項=P(t)=K
pfm*K
p*e
p
【0092】
比例項の修正の後、ロジックは、ステップS306に移行し、以下のステップを使って積分項を修正する。
【0093】
(a)血中酸素レベルとSpO
2の高い値との間の周知の関係(セベリングハウス方程式によって記述されるものを含む)を使って予め定めることが可能な非線形の予め定められた関係に基づいて、非線形補償乗数(K
s)を以下のように決定する。
もし、先行の積分項I(t−1)<0(すなわち、比積分関数が負のまま)で、かつ、e>0(すなわち、SpO
2が目標範囲を超える)場合で、
もし、SpO
2=92ならば、K
s=1.2、
他にもし、SpO
2=93ならば、K
s=1.4、
他にもし、SpO
2=94ならば、K
s=1.7、
他にもし、SpO
2=95ならば、K
s=2.2、
他にもし、SpO
2=96ならば、K
s=2.9、
他にもし、SpO
2=97ならば、K
s=4.4、
他にもし、SpO
2=98ならば、K
s=7.9、
他にもし、SpO
2=99ならば、K
s=20.1、
他にもし、SpO
2=100ならば、K
s=50、
その他は、K
s=1(すなわち、非線形補償乗数を、関連ΔPaO
2値に比例する正のエラーに適用する)
【0094】
(b)室内気中の被積分関数の増加を以下のように制限する。
もし、FiO
2=21%(すなわち、室内気)かつe>0であれば、dI=0(すなわち、正のエラーは被積分関数に付加されない)
その他は、dI=K
i*K
s*e
【0095】
(c)積分項を以下のように決定する。
積分項=I(t)=I(t−1)+dI
【0096】
(d)被積分関数の大きさを以下のように上限規定する。
もし|I(t)|>|ΔFiO
2の最大値/K
i|であれば、I(t)=(符号)*(ΔFiO
2の最大値/K
i)(すなわち、選択したΔFiO
2値に基づいて積分項の値を上限規定)
【0097】
積分項の修正の後、微分項が以下のステップを使ってステップS308で修正される。
【0098】
(a)微分項を以下のように評価する。
微分項=D(t)=K
d*de/dt、ここで、de/dtは5秒間にわたる直線回帰により決定される。
(b)負の
勾配および酸素過剰症に対して、以下のようにヌルとする。
もし、de/dt<0、(SpO
2(t)>目標SpO
2)、(SpO
2(t−1)>目標SpO
2)(SpO
2(t−2)>目標SpO
2)、(SpO
2(t−3)>目標SpO
2)、かつ、(SpO
2(t−4)>目標SpO
2)であれば、(すなわち、最近の5個のSpO
2値の全てがセットポイントを超えている)
D(t)=0(すなわち、負のSpO
2勾配はヌルとなる)
【0099】
また、制御値は、rFiO
2値にさらに基づいて生成されてよい。
【0100】
ある実施形態において、即時制御値(比例項)は、rFiO
2値にさらに基づいて決定される。
【0101】
即時制御値(比例項)は、rFiO
2値から決定された修正値により修正される。修正値は、rFiO
2との単調な関係を使って、すなわち、単調関数に基づいて決定される。例えば、K
pは予め定められた初期基準値から、または、そのカレント値から、rFiO
2値から決定された値だけ修正される。この修正値は、例えば、カレントのrFiO
2により示されるような肺機能不全の深刻さに比例するスケーリングファクタにより、rFiO
2を増加させるために即時制御値の有効値を増加させる、例えば、K
pの固定値は、対応する範囲の21%から60%のrFiO
2に対して、0.5から1.5の範囲のファクタだけ乗算される。(例えば、21%のrFiO
2に対して、スケーリングファクタは0.5であり、40%のrFiO
2に対して、スケーリングファクタは1.0であり、rFiO
2が21%から60%に変化するのに比例してスケーリングファクタは0.5から1.5まで線形的に変化する)。代替的に、スケーリングファクタは、即時制御値を修正する同等の修正値として実行されてもよい。この方法でのK
pの付加は、利得と肺機能不全の深刻さとの間の反比例関係を補償する。
【0102】
また、方法は、
パフォーマンス分析時間間隔の間に、複数の入力SpO
2値を表す信号を受信する工程と、
パフォーマンス分析時間間隔の間に受信した入力SpO
2値に基づいてパフォーマンス評価結果を生成する工程と、
パフォーマンス評価結果に基づいて、制御値を生成する工程
をさらに有する。
【0103】
また、即時利得係数は、パフォーマンス評価結果に基づいて修正される。
【0104】
ある実施形態において、K
pの値は、吸入酸素分配の自動制御中に繰り返し修正される。吸入酸素分配の自動制御のパフォーマンスの分析は、パフォーマンス分析時間間隔にわたって受信された入力SpO
2値に基づいて、周期的に実行され、パフォーマンス評価結果を生成し、K
pの値は、パフォーマンス評価結果に基づいて修正される。
【0105】
ある実施形態において、パフォーマンス評価結果は、パフォーマンス分析時間間隔内の入力SpO
2値が低酸素症の範囲にある低酸素時間間隔、パフォーマンス分析時間間隔内の入力SpO
2値が酸素過剰症の範囲にある酸素過剰時間間隔の少なくともひとつに基づいて生成される。
【0106】
また、ある実施形態において、パフォーマンス評価結果は、低酸素時間間隔に対する酸素過剰時間間隔の比に基づいて生成される。
【0107】
さらに、ある実施形態において、方法は、
目標SpO
2範囲に基づいて目標SpO
2値を決定する工程をさらに有し、
パフォーマンス評価結果は、
パフォーマンス分析時間間隔内の入力SpO
2値が目標SpO
2範囲内にある目標時間間隔、および
パフォーマンス分析時間間隔内の入力SpO
2値がエウポキシア(eupoxia)範囲にあるエウポキシア時間間隔であり、エウポキシア範囲は、入力SpO
2値が目標SpO
2範囲内または室内気において目標SpO
2範囲を超える範囲である、ところのエウポキシア時間間隔の少なくともひとつに基づいて生成される。
【0108】
パフォーマンス時間間隔は、固定された時間間隔であり、例えば、ユーザによって予め定められるか、設定される。パフォーマンス分析時間間隔は、60分であってよく、分析の前の最近60分内で記録されたSpO
2データに基づいて分析が実行される。代替的に、パフォーマンス分析時間間隔は、分析結果、または、ユーザにより入力されたインストラクションに基づいて、可変時間間隔であってよい(例えば、30分と2時間の間の任意の時間間隔)。
【0109】
分析は、一定間隔で実行される。例えば、分析は、30分ごとに一回実行される。分析は、連続的に実行されてもよく、または、ある時間間隔、例えば、2時間までの任意の適当な時間間隔の後に一回実行されてもよい。分析の頻度は、ユーザにより設定されてもよい。
【0110】
分析は、低酸素症(SpO
2<85%)で始まり、その分解能を超えるある時間間隔(2と10分の間の任意の選択された適当な時間間隔)で続く、時間ウインドウ内のすべてのイベントに対する応答に基づいている。
【0111】
低酸素症(80〜84%のSpO
2)および深刻な低酸素症(80%未満のSpO
2)の合計時間、ならびに、酸素を受け取ったときの酸素過剰症(97−98%)へのSpO
2オーバーシュートおよび深刻な酸素過剰症(99−100%)の時間間隔が、以下の
図4を参照して説明されるように計量される。
【0112】
これらのデータから、重みづけされたパフォーマンス係数が、低酸素症の時間に対する酸素過剰症の時間の比として導出され、その値は、1未満および1以上であり、それぞれ、アンダーパワーのK
pおよびオーバーパワーのK
pを示す。K
pのカレント値は、この分析の結果として30分ごとに±10%まで変更される。
【0113】
また、SpO
2が目標範囲内にあり、かつ、エウポキシア範囲(SpO
2が目標範囲または室内気において目標範囲を超える)にあった時間の比、ならびに、酸素における低酸素症および酸素過剰症の発生率が計算される。
【0114】
ある実施形態において、パフォーマンス評価結果が、コントローラ出力がエウポキシア割合の最小要求を実質的に下回ることを含め、ユーザによって調節され、50から80%の範囲に設定されるある条件と一致していない場合には、アラームがトリガーされる。
【0115】
図4は、以下で説明するパフォーマンス評価結果に基づいてK
pを修正するコントローラ11により実行されるプロセス400を示す。
【0116】
図4に示すように、プロセス400は、ステップS402において、自動制御の発生または先行パフォーマンス分析から30分が経過したか否かを判定する。
【0117】
判定結果がいいえの場合、プロセス400は終了する。もし、30分が経過したと判定された場合には、プロセス400は、ステップS404に移動し、以下のステップを使って、先行の60分の時間ウインドウにわたる制御のパフォーマンスに基づいて、パフォーマンス分析を実行する。
【0118】
(a)エウポキシア、低酸素症および酸素過剰症の範囲での時間の割合を計算する。
t
severe hypoxia: SpO
2<80%
t
hypoxia: 80%≦SpO
2≦84%
t
eupoxia:
目標範囲またはそれを超えるSpO
2、FiO
2=21%
t
hyperoxia: 酸素を受け取ったとき、97%≦SpO
2≦99%
t
severe hyperoxia: 酸素を受け取ったとき、99%≦SpO
2
(すなわち、低酸素症、深刻な低酸素症、酸素過剰症、深刻な酸素過剰症およびエウポキシアの合計時間を計量化する)
【0119】
(b)重みづけされたパフォーマンス係数を以下のように計算する。
C
performance=(t
severe hyperoxia+t
hyperoxia)/(t
hypoxia+t
severe hypoxia)
(すなわち、深刻な低酸素症を含む低酸素症の時間に対する深刻な酸素過剰症を含む酸素過剰症の時間の比、それぞれ力不足および力過剰なK
pを示す。)
【0120】
(c)新規なK
pを以下のように計算する。
もし、C
performance≦0.7なら、K
p=K
p*1.1
もし、0.7<C
performance≦0.85なら、K
p=K
p*1.05
もし、1.15≦C
performance≦1.3なら、K
p=K
p*0.95
もし、1.3≦C
performanceなら、K
p=K
p*0.9
(すなわち、時間の比率に基づいてK
pの値を変更する)
【0121】
(d)エウポキシア時間を以下のように計算する。
エウポキシア時間=(t
eupoxia×100)/t
total
(すなわち、SpO
2がエウポキシア範囲内にあった時間の割合)
もし、エウポキシア時間<目標に接近した目標範囲であれば、目標範囲接近=真実、とアラームする。(すなわち、自動制御が最小要求を下回った場合にアラームがトリガーされる)
【0122】
また、吸入酸素分配を自動的に制御するための方法は、
(a)rFiO
2評価時間間隔にわたる入力SpO
2値、および、それぞれの出力FiO
2値に基づいて、rFiO
2評価結果を生成する工程と、
rFiO
2評価結果に基づいてrFiO
2値を修正する工程をさらに有する。
【0123】
rFiO
2値は、初期値を有し、時間にわたって繰り返し修正される。
【0124】
ある実施形態において、分析は定期的に実行される。例えば、分析は、30分毎に一回実行され、それは、評価時間頻度と呼ばれる。分析は、30分と2時間との間の任意の適当な時間である時間間隔の後に一回実行される。評価時間頻度において、固定されたV/Q比および可変シャントが酸素供給のかく乱を生じさせたと仮定して、シフトする時間ウインドウ(評価時間間隔)内でセットのFiO
2とSpO
2との間の関係の分析が実行される。時間ウインドウは、60分であり、または、任意の適当な時間間隔である(30分から2時間で任意に選択される)。V/Qの値は、例えばV/Q比を計算する周知の方法および式を使って導出され、それからrFiO
2値は、酸素供給に対するその影響を克服するために修正される。これは、rFiO
2の新しい値となり、それは、先行の値の±10%内に強制される。したがってrFiO
2の急激な変更は避けられる。
【0125】
図5は、コントローラ11によって実行されるrFiO
2値を修正するプロセス500を示す。
【0126】
図5に示すように、プロセス500は、ステップS502において、自動制御が開始されたか、または、最新の時間基準FiO
2(rFiO
2)が更新されてから30分経過したかを判定する。
【0127】
判定の結果がいいえであれば、プロセス500は終了する。自動制御が開始されたか、または最後の時間基準FiO
2(rFiO
2)が更新されてから30分経過したと判定された場合には、プロセス500は、ステップS504に移動し、rFiO
2値を以下のステップを使って更新する。
【0128】
(a)スライドウインドウ分析
FiO
2およびSpO
2のスライドウインドウ分析を60分実行し、V/Q比を取得し、V/Q比からrFiO
2を取得する。
【0129】
(b)rFiO
2を、以下のように、先行値の±10%以内に強制する。
もし、(rFiO
2−先行rFiO
2)/(先行rFiO
2)>0.1ならば、
rFiO
2=先行rFiO
2+(符号)(rFiO
2−先行rFiO
2)*0.1*先行rFiO
2
(すなわち、先行値の±10%以内に強制された新しいrFiO
2値を決定する。したがて、rFiO
2の急激な変更は避けられる)
【0130】
(c)自動制御の開始時に、FiO
2のカレントの値またはユーザにより入力された値を、rFiO
2値の初期値として使用する。
【0131】
また、吸入酸素分配を自動的に制御するための方法は、
(a)カレントの入力SpO
2値を階層検証法において複数の検証レベルのひとつに分類することにより、カレントの入力SpO
2値に基づいてSpO
2検証結果を生成する工程と、
(b)SpO
2検証結果に基づいて、出力FiO
2値を決定する工程と
をさらに有する。
【0132】
以下の階層検証レベルが採用される。
(a)レベルI:SpO
2入力が第1条件に一致すれば、SpO
2入力の不在に対応する。
(b)レベルII:SpO
2入力が第2条件に一致すれば、SpO
2入力が疑わしいことに対応する。
(c)レベルIII:SpO
2入力が第3条件に一致すれば、SpO
2入力が無効であることに対応する。
【0133】
また、ある実施形態において、方法は、
SpO
2プレチスモグラフ波形から導出される心拍数を表す信号、
心電図モニタリングから導出される心拍数を表す信号、および
かん流指数を表す信号
の少なくともひとつを受信する工程をさらに有し、
カレントの入力SpO
2値の検証は、
SpO
2プレチスモグラフ波形から導出される受信した心拍数、および
心電図モニタリングから導出される受信した心拍数、
受信したかん流指数
の少なくともひとつに基づいて判定される。
【0134】
SpO
2信号の検証に対して、以下の付随的な入力のいくつかまたはすべてが、デジタル信号として供給される。
(a)SpO
2プレチスモグラフ波形から導出される心拍数(HR
pleth)
(b)心電図モニタリングから導出される心拍数(HR
ecg)
(c)偽のSpO
2値に潜在的に関連する低い値を有する、オキシメトリ波形拍動性のメトリックであるかん流指数
【0135】
自動制御の開始において、およびその後の約24時間(かん流チェック時間間隔)、最適なかん流を表すかん流指数値が、プレチスモグラフ波形が安定しかつ信号が強いときに、記録される。かん流チェック時間間隔は、6時間から2日の任意に選択された時間間隔を含む、任意の適当な時間間隔であってよい。
【0136】
図6は、コントローラ11によって実行される、かん流指数値を決定するためのプロセス600を示す。
【0137】
図6に示すように、プロセス600は、ステップS602において、自動制御が開始されたかまたは最新のかん流指数を観測してから24時間経過したかを判定する。判定結果がいいえであれば、プロセス600は終了する。もし、自動制御が開始されたか、または、24時間経過したと判定された場合、処置600は、ステップS604に移行し、新規な最適かん流指数値、例えば、直近24時間の間の95番目の点を入力する。
【0138】
プレチスモグラフ波形、直近の10秒間(または、5秒から20秒の任意の選択された時間間隔を含む、任意の適当な時間間隔)にわたって記録されたプレチスモグラフ波形は、アナログ−デジタル変換器によりデジタル化されるアナログ信号として入力される。デジタルおよびアナログ信号は、データ取得デバイスを使って取得されてよい。
【0139】
波形分析は、パルスオキシメータからのプレチスモグラフ信号を分析することにより、SpO
2を検証し、有効プレチスモグラフ信号から予想される特性に一致することを確認する。評価方法は、信号の統計的特性の解析(例えば、平均および分散)、古典的な信号処理技術(例えば、自己相関)、論理アルゴリズム(ファジーロジックを含む)および、パターン認識技術(神経ネットワークを含む)の各々、または、組み合わせを含む。
【0140】
例えば、SpO
2プレチスモグラフ分析を実行するための例示的プロセスは以下のステップを含む。
(a)個々の患者から有効代表値プレチスモグラフトラッキングを周期的に取得する工程、
(b)2つの軸線方向に、カレントの入力SpO
2プレチスモグラフ信号を規格化する工程であって、その結果、振幅を通じて周期およびピークが代表プレチスモグラフトラッキングに対応する、工程、および
(c)複数の直線回帰によって2つの信号を、代表SpO
2プレチスモグラフ波形からカレントの信号の逸脱の指標を与える平均二乗誤差と比較する工程。
【0141】
代替的に、2つの信号は、例えば、線形判別分析または人工神経ネットワークのようなパターン認識を含む他の方法によって比較されてもよい。これらの方法を使用して、監視されたSpO
2信号が有効または無効として分類するのに使用されるように、有効または無効として分類されたSpO
2を有するプレチスモグラフ波形の記録の記録前データベースは、パターン認識のトレーニングおよび検証のために使用される。
【0142】
これらの付加的入力とともに、以下の階層検証法が採用される。
(a)レベルI:SpO
2値がゼロまたは数値ではない場合
(b)レベルII:両方の軸線方向への規格化の後、波形が一般的なプレチスモグラフ波形と一致しない場合
(c)レベルIII:
i.かん流指数が最適値の30%未満(または、他の適当な値、例えば、10%と50%との間の任意の値)であり、かつ、波形が疑わしいか、
ii.HR
Pleth−HR
ecgの絶対値が30bmp(または、他の適当な値、例えば、20bpmと50bpmの間の任意の値)より大きく、かつ、波形が疑わしいか、または
iii.SpO
2に急落(例えば、5秒間で15%を超えるか、または、SpO
2の突然かつ深い落下を表す他の適当な値、ここで、しばしばSpO
2の突然の落下は読み取りが疑わしいので、落下はある時間間隔の間、例えば、5秒間続く必要がある)が存在し、かつ、疑わしい波形、心拍数の食い違いまたはかん流指数の食い違いのいずれかを伴う(疑わしい低酸素症を示唆している)場合。
【0143】
図7は、コントローラ11により実行される階層検証プロセス700の例を示す。
【0144】
図7に示すように、ステップS702において、入力SpO
2値がゼロまたは非数値であるか否かが判定される。もし、はいであれば、フラグのレベル1が真として設定され(ステップS704)、プロセス700が終了する。
【0145】
もし入力SpO
2値がゼロまたは非数値でなければ、フラグのレベル1が偽として設定され(ステップS706)かつ、ステップS708において入力SpO
2信号がプレチスモグラフ波形との一致がテストされる。両方の軸線方向への規格化の後に、入力SpO
2信号の波形が一般的なプレチスモグラフ波形と一致しないと判定されれば、フラグのレベル2が真として設定され(ステップS712)、すなわち、SpO
2入力が疑わしいことになる。入力SpO
2信号の波形が一般的なプレチスモグラフ波形と一致すれば、フラグのレベル2は偽として設定される。
【0146】
次に、ロジックは、ステップS714に移行し、かん流指数が最適値の30%未満であるか否かが判定され、かん流指数が最適値の30%未満であればフラグのPI不一致が真として設定され(ステップS716)、または、そうでなければフラグのPI不一致が偽として設定される(ステップS718)。
【0147】
次に、ステップS724で、HR
Pleth−HR
ecgの絶対値が30bmpを超えるか否かを判定(ステップS720)するためのテストが実行される。もし、はいならば、フラグのHR不一致が真として設定され(ステップS722)、もしいいえならば、フラグのHR不一致が偽として設定される(ステップS724)。
【0148】
また、ステップS726において、レベルIII条件を満足するか否かが判定される。例えば、以下のロジックを使って、SpO
2値が無効であるか否かが判定される。
(PI不一致およびレベル2)または(HR不一致およびレベル2)または((SpO
2が5秒間で15%を超えて減少)かつ(レベル2またはPI不一致またはHR不一致))
【0149】
もし結果が正であれば、レベルIIIフラグが真として設定される(ステップS728)。すなわち、SpO
2入力は無効である。もし、結果が正でなければ、レベルIIIフラグが偽として設定される(ステップS730)。
【0150】
ある実施形態において、入力SpO
2値が無効(例えば、ミッシングまたは無効の信号のイベント)として判定されたとき、FiO
2はカレント値における出力SpO
2値、すなわち、以前に記録されたFiO
2値を保持するように設定される。持続するミッシングまたは無効の信号のイベントにおいて、以下に説明するアラームのトリガーを超えて、出力FiO
2値がrFiO
2の方向へ向けられる。
【0151】
図8は、コントローラ11によって実行される、SpO
2の有効性に基づいて出力FiO
2値を判定するためのプロセス800を示す。
【0152】
図8に示すように、ステップS802においてテストが実行され、入力SpO
2値がミッシングまたは無効であるか否かが判定される。もし、入力SpO
2値がミッシングまたは無効と判定されれば、出力FiO
2値はステップS806において先行の出力FiO
2値と同じに設定される。もし、ステップS802において、入力SpO
2値がミッシングまたは無効ではないと判定されれば、ロジックはステップS804に移行し、そこで、出力FiO
2値が、例えば以下のステップを使って、入力SpO
2値に基づいて決定される。
(a)ΔFiO
2を計算 ΔFiO
2=P(t)+I(t)+D(t)
(b)出力FiO
2値を計算 FiO
2=ΔFiO
2+rFiO
2
(c)もし、無呼吸が15秒を超えた場合、無呼吸中断を超えて30秒間、5%だけ出力FiO
2値を変更する
(d)出力FiO
2値を±0.5%に丸める
(e)FiO
2<21%ならば、出力FiO
2値=21%とし、FiO
2>100%ならば、出力FiO
2値=100%とする
【0153】
ある実施形態において、SpO
2がある時間間隔の間(例えば、低いSpO
2を有する赤ちゃんからの信号を連続的にミッシングすることを防止する30秒、または他の任意の適当な時間間隔)に無効だったと判定されたとき、アラーム(例えば、音声および/または視覚アラーム)が作動される。例えば、オキシメータプローブおよび接続をチェックするためのエラーメッセージとともにアラームが作動されるとき、アラームは音声アラームであり、アラームの音量は、数分ごと(例えば、2分)に増加する。
【0154】
ある実施形態において、有効SpO
2が検出されるとすぐに、アラームが停止され、即時制御値、累積制御値、予測制御値、および、基準吸入酸素濃度に基づいた出力FiO
2値の決定が再開される。
【0155】
また、吸入酸素分配を自動的に制御する方法は、
(a)呼吸速度を表す信号を受信する工程、
(b)呼吸速度にさらに基づいて、即時制御値を生成する工程
をさらに有する。
【0156】
ある実施形態において、呼吸速度は、呼吸モニターにリンクした腹部カプセルにより記録され、そこから検出された自発的呼吸毎のデジタルパルスがアナログ−デジタル変換器を介して自動コントローラへ導かれる。
【0157】
呼吸停止の発現(例えば、5から15秒の呼吸中断、または、同様な低酸素症イベントを予測するのに十分な任意の適当な時間間隔の呼吸中断)および、無呼吸(例えば、15秒より長いか、または、同様の低酸素症を予測するのに十分な任意の適当な時間間隔より長い)が識別される。
【0158】
K
pの値は、この付加的な入力に基づいて修正される。
【0159】
例えば、呼吸パルスは、呼吸の中断を超えるある時間間隔(例えば、30秒、または、任意の適当な時間間隔)の間に2倍のK
pを生じさせる。この調節を通じて、自動コントローラは、低酸素イベントが発生しても、それに対してより感度良く応答する。もし呼吸停止が明らかな無呼吸まで続けば、FiO
2は、基礎的なK
p値に比例して、2から8%一時的に増加される。
【0160】
加えて、吸入酸素分配を自動的に制御する方法は、
(a)回路圧力を表す信号を受信する工程、
(b)回路圧力にさらに基づいて、即時制御値を決定する工程
をさらに有する。
【0161】
持続的気道陽圧(CPAP)呼吸サポートを受ける幼児に対して、CPAP回路の吸入リム内の圧力が変換され、デジタル信号として入力される。
【0162】
例えば、回路圧力の、プラトー値のある割合(例えば、20%と50%との間の任意の選択した値を含む)より下のレベルまでの低下は、2倍のK
p値を導き、30秒後に、回路圧力の減少を表すアラームのトリガーを導く。回路圧力の完全な損失(<1cmH
2O、すなわち、本質的に圧力の分配が存在しない)は、回路圧力の損失を表すより高いレベルのアラームをトリガーする。
【0163】
ある実施形態において、方法は、
手動のオアーバーライド入力を受信する工程と、
制御値に代わって手動のオーバーライド入力に基づいて、出力FiO
2値を決定する工程と
をさらに有する。
【0164】
また、制御装置10は、自動制御モードおよび手動制御モードを有してよい。自動制御モードは、あるユーザ入力(すなわち、手動オーバーライド入力)のもとで手動制御に切り替えられ、所望により後に自動モードに復帰される。
【0165】
例えば、ユーザ(例えば、ベッドサイドのスタッフ)は、制御装置10を手動モードに切り換えることができ、その結果、コントローラ11は、出力FiO
2値を変更せず、酸素供給は完全に手動制御下に置かれる。
【0166】
手動制御モードは、ユーザインターフェースディスプレイ14に表示されるユーザインターフェースにおける手動オーバーライド入力を通じて選択される。それは、FiO
22内の変更を生成するコントローラの機能の一時的な停止(例えば、30秒間)、または、非選択状態となるまでの連続的な手動操作のいずれかであってよい。
【0167】
手動制御モードは、自動空気酸素混合機上でFiO
2選択ダイヤルを回転することにより、すなわち、自動制御に対する停止(例えば、30秒または任意の選択された適当な時間間隔の停止)をトリガーする手動オーバーライド入力を与えることにより、選択されてもよい。
【0168】
停止の後の第1の反復において、すなわち、手動制御モードからの復帰において、被積分関数は、その後再開される自動制御により、出力FiO
2値がサーボFiO
2のカレント値(すなわち、ユーザ選択した)と等しく設定されるように調節される。
【0169】
図9は、コントローラ11によって実行される、手動制御モードと自動制御モードとの間を切り替えるためのプロセス900を示す。
【0170】
図9に示すように、最初に、ステップS902において、サーボFiO
2入力が手動で変更されたか否か、すなわち、手動オーバーライド入力を受信したか否かを判定するためのテストが実行される。もしはいであれば、手動オーバーラードモードが、ステップS904で開始される。もし、サーボFiO
2入力が手動で変更されなかったならば、ロジックは、ステップS906に移行し、手動モード制限時間が時間切れしたか否かが判定される。もし、手動モード制限時間が時間切れしたら、制御装置10は、ステップS908において、自動制御モードに復帰するように設定される。もし、手動モード制限時間が時間切れしていなければ、プロセス900は終了する。
【0171】
また、ひとつ以上のアラームが、自動制御中にある条件の下でトリガーされる。
【0172】
例えば、アラーム(例えば、音声および/または視覚アラーム)は、制御装置10内に含まれてよく、急速に上昇するFiO
2、ΔFiO
2の最大値への到達、30秒を超えるSpO
2信号のミッシングまたは無効、2分を超える長期の無呼吸または回路圧力の損失、およびシステム誤動作をベッドサイドのスタッフに警告する。これらのアラームは、NICUにおいて標準的なベッドサイドモニター内のアラームセットに、付加、一体化、または置換されてよい。
【0173】
図10は、コントローラ11によって実行される、さまざまな上述した信号をモニターすることに基づいてアラームを制御するプロセス1000を示す。
【0174】
図10に示すように、ステップS1002において、以下のステップを使って、アラームを作動させるプロセスが実行される。
(a)もし、ミッシング信号=真、であれば、アラームは、ミッシング信号アラームを作動させる。
(b)もし、低酸素症=真、であれば、アラームは低酸素症アラームを作動させる。
(c)もし、回路圧力低下=真、であれば、アラームは回路圧力低下アラームを作動させる。
(d)もし、回路圧力損失=真、であれば、アラームは回路圧力損失アラームを作動させる。
(e)もし、サーボFiO
2不一致=真、であれば、アラームは、サーボFiO
2不一致アラームを作動させる。
(f)もし、サーボFiO
2エラー=真、であれば、アラームは、サーボFiO
2エラーアラームを作動させる。
(g)もし、測定FiO
2不一致=真、であれば、アラームは、測定FiO
2不一致アラームを作動させる。
(h)もし、測定FiO
2エラー=真、であれば、アラームは、測定FiO
2エラーアラームを作動させる。
(i)もし、目標範囲接近=真、であれば、アラームは、目標範囲接近アラームを作動させる。
【0175】
次に、プロセス1000はステップS1004に移行し、アラームは以下のステップを使ってリセットされる。
(a)もし、アラーム(ミッシング信号)=偽、であれば、ミッシング信号アラームが解除される。
(b)もし、アラーム(低酸素症)=偽、であれば、低酸素症アラームが解除される。
(c)もし、アラーム(回路圧力低下)=偽、であれば、回路圧力低下アラームが解除される。
(d)もし、アラーム(回路圧力損失)=偽、であれば、回路圧力損失アラームが解除される。
(e)もし、アラーム(サーボFiO
2不一致)=偽、であれば、サーボFiO
2アラームが解除される。
(f)もし、アラーム(サーボFiO
2エラー)=偽、であれば、サーボFiO
2ハイアラームが解除される。
(g)もし、アラーム(測定FiO
2不一致)=偽、であれば、測定FiO
2アラームが解除される。
(h)もし、アラーム(測定FiO
2エラー)=偽、であれば、測定FiO
2ハイアラームが解除される。
(i)もし、アラーム(目標範囲接近)=偽、であれば、目標範囲接近アラームが解除される。
【0176】
ステップS1004が完了した後、プロセス1000は終了する。
【0177】
また、上述したように、制御装置10は、ユーザインターフェースディスプレイを有してよく、それは、ユーザ(例えば、ベッドサイドの介護者)に対してさまざまな情報を示し、かつ、ユーザインターフェースに基づいてユーザによって入力されたインストラクションを受信するユーザインターフェースを表示する。受信したユーザ入力は、その後、コントローラ11に送信される。
【0178】
ユーザインターフェースディスプレイ14に表示されるユーザインターフェース200の一つの例が、
図11に示される。ユーザインターフェース200は、以下を含む。
(a)最近の入力SpO
2値および最近の出力FiO
2値を表示する数値SpO
2/FiO
2表示領域A01、
(b)入力SpO
2値および出力FiO
2値の傾向を図形的に表示するグラフィカルSpO
2/FiO
2表示領域A02、
(c)SpO
2信号を生成するのに使用されるオキシメータのタイプを選択するユーザのための、オキシメータタイプ選択領域A03、
(d)リアルタイムで、目標SpO
2を表示し、ユーザが変更できるようにするためのSpO
2目標範囲設定領域A04、
(e)リアルタイムでΔFiO
2の値を示し、ユーザがその制限を変更できるようにするための最大Δ設定領域A05、
(f)それを押すことで、制御装置10が、自動制御モードと手動制御モードとの間を切り替えることが可能な、手動制御モードボタンB06、
(g)それを押すことで、制御装置10がオンまたはオフするオン/オフボタンB07、
(h)ある条件下で視覚アラーム情報を表示することを含む、制御装置10の動作状態を表示する状態表示領域A08、
(i)rFiO
2の最も直近の値を表示する基準FiO
2表示領域A09、
(j)エウポキシアにおける時間の割合を表示するエウポキシア時間表示領域A10、
(k)例えば、光インジケータにより、サーボFiO
2または測定FiO
2が出力FiO2値と一致するか否かを示す、FiO
2フィードバック表示領域A11、
(l)例えば、光インジケータにより、入力SpO
2値が有効であるか否かを示す、有効SpO
2表示領域A12、
(m)例えば、光インジケータにより、呼吸速度および呼吸回路圧力を表す信号が制御装置10内に入力されたか否かをそれぞれ示す、付加的入力表示領域A13およびA14
【0179】
ある実施形態に従うコントローラ11によって実行される吸入酸素分配を自動的に制御するための方法の一般的制御プロセスが、
図12のフローチャートに示される。
【0180】
図12に示すように、制御プロセスが開始されたとき、制御装置10への入力はステップS1202で処理される。
【0181】
図13は、ステップS1202における入力を処理する例示的ステップS1300を示す。入力は、入力ユニットから読み取られ(ステップS1302)、その後検証される(ステップS1304)。入力の検証の後に、手動オーバーライド評価が実行される(ステップS1306)。
【0182】
ステップS1302における入力を読み取る例示的ステップが
図14に示される。
図14に示すように、ステップS1402において、患者に対する複数の入力酸素飽和度(SpO
2)値を表す信号を含む入力信号が受信される。入力信号は、SpO
2、HR
pleth、呼吸速度、CPAP回路圧力、サーボFiO
2、測定FiO
2、最大ΔFiO
2、目標SpO
2、目標範囲接近目標を含む。
【0183】
ステップS1304における入力の検証の例示的ステップが、
図15に示される。最初に、入力境界の検証がステップS1502において実行され、その後、ステップS1504においてかん流指数状態が更新される。その後、SpO
2の階層検証がステップS1506において実行される。また、ステップS1508において、SpO
2の階層検証の結果に基づいて、および、サーボFiO
2または測定FiO
2が許容限界を超えてFiO
2セットから逸脱するか否かに基づいて、アラームがトリガーされる。
【0184】
ステップS1508においてアラームを動作させるために、以下のステップを使用する。
【0185】
(a)SpO
2信号が30秒を超える間、レベル1またはレベル3であれば、ミッシング信号=真、のアラームを作動させる。
もし、SpO
2信号が2分を超える間、レベル1またはレベル3であれば、ミッシング信号のアラームの音量を増加させ、オキシメータプローブおよび接続をチェックするようエラーメッセージを表示する。
【0186】
(b)もし、|(設定FiO
2−サーボFiO
2)/(設定FiO
2)|>1%、であれば、サーボFiO
2不一致=真、であるとしてアラームを作動させる。
もし、|(設定FiO
2−サーボFiO
2)/(設定FiO
2)|>5%、であれば、サーボFiO
2エラー=真、であり、かつ、手動モード=真、であるとしてアラームを作動させる。
【0187】
(c)もし、|(設定FiO
2−測定FiO
2)/(設定FiO
2)|>2%、であれば、測定FiO
2不一致=真、であるとしてアラームを作動させる。
もし、|(設定FiO
2−測定FiO
2)/(設定FiO
2)|>10%、であれば、測定FiO
2エラー=真、かつ、手動モード=真、であるとしてアラームを作動させる。
【0188】
さらに、
図16は、ステップS1502における入力境界の検証の例示的ステップを示す。
【0189】
図16に示すように、まず、有効入力境界がステップS1602で設定される。例えば、IB(1)−IB(9)に対する有効入力境界は、以下のように設定される。
IB(1) SpO
2: 0≦SpO
2≦100%
IB(2) HR
pleth: 0≦HR
pleth≦300bpm
IB(3) かん流指数: 0≦かん流指数≦10
IB(4) プレチスモグラフ波形: 0≦プレチスモグラフ波形≦5V
IB(5) HR
ecg: 0≦HR
ecg≦300bpm
IB(6) 呼吸速度: 0≦呼吸速度≦150/分
IB(7) CPAP回路圧力: 0≦CPAP回路圧力≦20cmH
2O
IB(8) サーボFiO
2: 21%≦サーボFiO
2≦100%
IB(9) 測定FiO
2: 21%≦測定FiO
2≦100%
【0190】
次に、ステップS1604、S1608、S1616のループを通じて、各IB(i)の入力値が有効入力値境界の外側にあるか否かの判定が為される。もし無ければ、ループは、次のIB(i)を判定するべく進む。もしあれば、ロジックはステップS1610に移行し、そこで、直近のIB(i)の有効値がカレントのIB(i)の代わりに使用される。ステップS1610の後、延長タイムアウトが発生したか否かの判定するテストがステップS1612で実行される。もしはいなら、ステップS1614において、入力タイムアウトフラグITO(i)が設定され、ロジックは、ステップS1616に進み、次のIB(i)を処理するか、入力境界評価を終了する。
【0191】
すべてのIB(i)が検証されたとき、ロジックはステップS1618に移行し、例えば、以下のステップを使って、CPAP回路圧力のカレントの値に基づいてアラームを作動すべきか否かが判定される。
【0192】
a.回路圧力が範囲内にあることの検証
もし、CPAP回路圧力がプラトー値の50%未満であれば、CPAP回路圧力=低、(すなわち、もし回路圧力がプラトー値の50%未満であれば、回路圧力が低いと判定する)
もし、CPAP回路圧力が1cmH
2O未満であれば、CPAP回路圧力=損失、(すなわち、もし、回路圧力がプラトー値の1cmH
2Oより低ければ、回路圧力は完全に損失したと判定)
【0193】
b.CPAP回路圧力アラームの作動
もし、CPAP回路圧力が30秒を超えて低ければ、回路圧力低下のアラームを作動させる。(すなわち、30秒以上の間、回路圧力が50%以下であった場合、アラームをトリガーする。)
【0194】
ステップS1504において、かん流指数状態を更新することは、上述した
図6に示すプロセスを採用する。
【0195】
ステップS1506において、SpO
2の階層検証は、上述した
図7に示すプロセスを採用する。
【0196】
ステップS1306において、手動オーバーライド評価は、上述した
図9に示すプロセスを採用する。
【0197】
ステップS1202において、入力を処理した後、ステップS1204において自動制御が実行され、入力SpO
2値に基づいてFiO
2値が決定される。
【0198】
図17は、ステップS1204における自動制御の例示的ステップを示す。
図17に示すように、自動制御が開始されると、ステップS1702において周期的付加処理が最初に実行される。
【0199】
ステップS1702における周期的付加処理の例示的ステップは、
図18のフローチャートに示されている。
図18に示すように、周期的付加処理は、ステップS1802において基準FiO
2を更新し、かつ、ステップS1804においてパフォーマンス分析を更新することを含む。それらは、上述した
図5および
図4に示す例示的プロセスをそれぞれ採用する。
【0200】
ステップS1702における周期的付加処理の後、PID項がステップS1704で生成される。上述した
図3に示すような例示的プロセスがステップS1704により採用されてもよい。
【0201】
ステップS1706において、出力FiO
2値が、PID項、rFiO
2値および入力SpO
2値の有効性に基づいて決定される。上述した
図8に示すような例示的プロセスが、ステップS1706において出力FiO
2値を決定するために採用される。
【0202】
ステップS1708において、デバイスが手動モードに切り換えられたか否かが検出される。もし、デバイスが手動モードに切り換えられたことが検出されると、出力FiO
2値は、ユーザ(ベッドサイドのスタッフ)によって選択されたFiO
2値と等しくなるように設定される。
【0203】
ステップS1710において、制御プロセスは、ひとつ以上のアラームがトリガーされる必要があるか否かを判定し、それに従いアラームを制御する。上述した
図10に示す例示的プロセスが、ステップS1710によって採用される。
【0204】
図12において、ステップS1204の後、決定されたFiO
2値は、出力として設定され、ステップS1205において出力ユニットへ送信される。例えば、制御プロセスは、受信した入力SpO
2および更新した出力を含むデータを表示して、ディスプレイを更新し、更新データを反映させる(ステップS1208)。
【0205】
ディスプレイの更新の後、制御プロセスは、既存の自動制御を指示するユーザ入力が検出されたか否かを検出する(ステップS1210)。もし、検出されなければ、制御プロセスは、ステップ1202に進み、再び、ステップS1202からS1210を繰り返す。もし既存の自動制御を指示するユーザ入力が検出されたら、制御処理は終了する。
【0206】
また、上述したある実施形態において吸入酸素分配を自動的に制御するための方法が制御装置10により実行されるが、当該方法は、ソフトウエア、ハードウエア、ファームウエア、ソフトウエア、ハードウエア、および/またはファームウエアの組みあわせ、および/または、他のメカニズムの形式で実行されてもよい。例えば、当該方法は、例えば、コーディングツールを使って生成される機械読み取り可能コードにおいて、コンピュータまたはマイクロコンピュータを実行するステップにより実行されてもよい。ソフトウエアは、制御装置、オキシメータ、または、呼吸サポートデバイスと一体化されるか、それにインストールされてよい。ここで説明する信号は、電子信号であり、格納値は、電子的にアクセス可能な不揮発性ストレージ内に格納される。
【0207】
ここで説明するのは、吸入酸素分配を自動的に制御するための装置である。
【0208】
当該装置は、患者に対する複数の入力酸素飽和(SpO
2)値を表す信号を受信する入力ユニット、受信した入力SpO
2値を記録するメモリ、入力SpO
2値に基づいて出力吸入酸素濃度(FiO
2)値を決定するコントローラ、および、決定された出力FiO
2値を出力する出力ユニットを有する。
【0209】
コントローラは、入力SpO
2値および目標SpO
2値に基づいて制御値を生成、制御値および基準吸入酸素濃度(rFiO
2)値に基づいて出力FiO
2値を生成する。上述したように、制御値は、入力SpO
2値、目標SpO
2値、および即時利得係数に基づいて生成された即時制御値、入力SpO
2値、目標SpO
2値、および、累積利得係数に基づいて生成される累積制御値、入力SpO
2値、目標SpO
2値、および予測利得係数に基づいて生成される予測制御値を含み、即時利得係数は、rFiO
2値に基づいて決定され、動脈酸素分圧(PaO
2)とSpO
2との間の所定の非線形関係に基づいて
非線形重み付け補償が累積制御値に
適用される。
【0210】
例えば、装置は、
図2に示すような制御装置10の構成を有する。
【0211】
ここで説明されるシステムは、吸入酸素分配を自動的に制御するためのシステムである。当該システムは、ひとつ以上の酸素飽和度モニタリングデバイス、および、ひとつ以上の吸入酸素制御デバイス、制御デバイス、および、ひとつ以上の酸素飽和度モニタリングデバイスと制御デバイスとの間で通信、および、ひとつ以上の吸入酸素制御デバイスと制御デバイスとの間の通信を可能にするネットワークを有する。
【0212】
制御デバイスは、ネットワークを通じて、ひとつ以上の酸素飽和度モニタリングデバイスの各々から患者に対する複数の入力酸素飽和(SpO
2)値を表す信号を受信し、入力SpO
2値および目標SpO
2値に基づいて制御値を生成し、制御値および基準吸入酸素濃度(rFiO
2)値に基づいて出力吸入酸素飽和(FiO
2)値を生成し、決定された出力FiO
2値をネットワークを通じて対応する吸入酸素制御デバイスに送信することにより、吸入酸素分配を制御する。上述したように、制御値は、入力SpO
2値、目標SpO
2値、および即時利得係数に基づいて生成された即時制御値、入力SpO
2値、目標SpO
2値、および、累積利得係数に基づいて生成された累積制御値、および、入力SpO
2値、目標SpO
2値、および、予測利得係数に基づいて生成された予測制御値を含み、即時利得係数は、rFiO
2値に基づいて決定され、動脈酸素の分圧(PaO
2)およびSpO
2との間の予め定められた非線形関係に基づいて、
非線形重み付け補償が累積制御値に適用される。
【0213】
このようにして、制御デバイスは、ネットワークに接続された酸素飽和モニタリングデバイスおよび吸入酸素制御デバイスのひとつ以上のペアとともにネットワーク内で使用される。これにより、遠隔サイトにおける、パフォーマンスのリアルタイムの自動制御が可能となり、大規模なデータ収集が可能にある。中央制御装置はまた、制御プロセスの調節または修正を単純化する。
【実施例】
【0214】
以下に説明するのは、吸入酸素分配を自動的に制御する方法に関連する例示的実験、および、対応する実験結果である。
【0215】
<第1の実施例>
(方法)
第1の例において、比例積分微分(PID)コントローラが、(i)非線形SpO
2−PaO
2関係を補償し、(ii)肺機能不全の深刻さに適応し、(iii)目標範囲内にエラーを減衰させることにより、強化される。
【0216】
酸素制御方法は、処理プラットフォーム(ラップトップコンピュータ)、デバイス入力および出力、サーボ制御空気酸素混合機、および、コンピュータスクリーン上に表示されるユーザインターフェースからなるスタンドアロン装置で実施された。制御インストラクションは、グラフィカル・プログラミング言語(Austinによる、LabVIEW2010、National Instruments、USA)で記述され、機械読み取り可能なインストラクションとしてラップトップコンピュータ内にアップロードされた。
【0217】
インストラクションは、比例積分微分(PID)コントローラを与えた。PID制御に対して、エラーは、セットポイントからの処理信号の逸脱として定義される。各瞬間での操作された信号出力の値は、エラー、その積分、およびその微分に比例し、それぞれの場合に異なる乗数係数を有する(K
p、K
i、K
d)。この場合、エラー(e)はSpO
2の入力値(有効信号と仮定して)と選択した目標範囲の中間点(例えば、目標範囲91〜95%で中間点93%)との間の数値差であった。被積分関数(∫edτ)は、すべてのエラーの和(以下に示す制限を受ける)であり、PID制御内の積分項は、一定の状態エラーを克服する利点に役立つ。微分係数(de/dt)は、先行する5秒間にわたって直線回帰によるSpO
2勾配であり、PID制御は未来のエラーの予測を与える。反復の各々においてプロセスの出力は、PID項の各々の和であるΔFiO
2であった(方程式4)。分配されるべきFiO
2(設定FiO
2)は、ΔFiO
2と基準FiO
2値(rFiO
2)の和であり、カレントのベースライン酸素要求をあらわす(方程式5)。設定FiO2
2、±0.5%に丸められ、21と100%の間の値に強制される。
【数4】
【数5】
【0218】
PiD制御プロセスは、各秒で繰り返すループ内にあり、FiO
2変更は、必要により1秒で為される。K
p、K
iおよびK
dに対する値の範囲は、広汎なシミュレーション研究から導出された。本例で使用されたK
p、K
iおよびK
dの値は、K
pが−1、K
iが−0,0125、K
dが−1であった。K
pの値は、−0.5と−1との間の範囲内で、肺機能不全の深刻さに応じて適応された(以下を参照)。
【0219】
PIDコントローラの修正は、制御されたシステムのある特異体質を収容するように適応される。目標範囲内のSpO
2値に関連するエラーは、目標範囲の中間点からの距離に比例する比乗数を適用することにより減少した(目標範囲減衰)。また、80%以下の値でSpO
2モニタリングの相対的不正確が与えられれば、負のエラーは13%に上限規定された。これらのエラー調節は、比例項の計算にのみ適応された。
【0220】
積分項の取り扱いに対してある修正が実行された。長期の低酸素症のイベントにおいて、積分項が徐々にFiO
2を増分するという認識において、その大きさは、最大ΔFiO
2をrFiO
2の40%上まで制限するべく、上限規定された。酸素過剰症(酸素供給時において目標範囲を超えたSpO
2)において、それは、オーバーシュートとして低酸素症に続き、高SpO
2値におけるエラーは、許容値からのPaO
2の同様の逸脱と比例しない(
図19)。
【0221】
これを克服するために、セバリングハウス補償が採用され、それにより、酸素過剰の間、積分項が正(すなわち、ΔFiO
2を増加させる傾向)である限り、入力される正のエラーにエラー乗数が適応された(以下の表2を参照)。積分項の決定において、積分項がゼロに減少するまで、正のSpO
2エラーにエラー乗数が適応された。エラー乗数の値は、セバリングハウス方程式から導出された。室内気において、目標範囲を超えるSpO
2の連続値が絶え間ない酸素過剰症を表すとはもはや考えられないとき、積分項は変更されなかった。
【0222】
【表2】
【0223】
微分項計算は、酸素過剰症においても修正され、その結果、最近の5つのSpO
2値のすべてがセットポイントを超えた場合には、負のSpO
2勾配がヌル(すなわち、0に等しい)とされた。したがって微分項によるΔFiO
2の上方の圧力は、酸素過剰症において回避された。
【0224】
カレントのrFiO
2に比例するスケーリングファクタを適用することにより肺機能不全の深刻さに応じてK
pが修正される、付加的アプローチが調査された。K
p修正は、21%から40%の対応範囲内のrFiO
2に対して、0.5から1.0の範囲のファクタを、K
pの現在値に乗算することにより実行された。このようなK
pの適用は、この割合において観測された肺機能不全の深刻さと利得との間に逆比例関係を認識する。
【0225】
制御プロセスへのプライマリ入力SpO
2は、アナログまたはデジタル出力を有する任意のオキシメータから供給される。臨床前テストに対して、SpO
2は、早産児における酸素供給のシミュレーションから導出された。制御プロセスからの出力は、空気酸素混合機および人工呼吸器を含む、所望の値のFiO
2を受信しかつ実行する任意のデバイスに送信される。臨床前テストに対して、出力FiO
2は、酸素供給シミュレータにリンクされた。
【0226】
(臨床前テスト)
3つの強化特徴の寄与が調査された。a)セバリングハウス補償、b)K
p適用、および、c)目標範囲減衰、を有するPID制御のすべての順列のパフォーマンスが酸素供給のシミュレーションを使って評価された。持続的気道陽圧において16人の早産児の各々からFiO
2およびSpO
2の1Hz記録(24時間)が換気/かん流比およびシャントに対する連続値に変換された。オリジナル記録のSpO
2平均時間は2から4秒であり、データ抽象化およびシミュレーションの間に平均化されなかった。V/Qおよびシャントの連続は、自動化された酸素コントローラ内のテストの下でコントローラにリンクされ、SpO
2の一連のユニーク値が生成された。SpO
2目標範囲は、91〜95%に設定された。積分項以外(すなわち、比例微分、PD)のコントローラの機能、および、FiO
2調節後に30秒ロックアウトを有する完全強化されたコントローラの機能もまた試験された。後者の分析に対して、PID係数の複数の順列が、パフォーマンスを最適化するために試された。
【0227】
シミュレーション中に生成された16個のSpO
2シーケンスの各々に対して、以下の酸素供給状態における時間の割合が計算された。すなわち、目標範囲のSpO
2、エウポキシア(目標範囲、または、室内気の場合の目標範囲を超えるSpO
2)、SpO
2<80%、SpO
2<85%、目標範囲の上または下、96%を超える酸素中、98%を超える酸素中。長期の低酸素症(SpO
2<85%)および酸素過剰症(酸素が96%を超えるSpO
2)の発現の頻度が識別され、SpO
2オーバーシュートの頻度と同様に、SpO
2<85%の低酸素症イベントに続く2分間にわたって少なくとも60秒間目標範囲の上のSpO
2読み取りとして定義される。SpO
2不安定性は、SpO
2係数の変化(CV)、頻度、および、目標範囲外の発現の平均間隔を使って評価された。これらのデータは、SpO
2オーバーシュート以外に対して、メジアンおよび四分位範囲(IQR)として要約され、ここで、データは、プールされかつ各制御プロセスに対してひとつの値として表現される。制御パフォーマンスは、フリードマンのノンパラメトリック反復測定(ANOVAとダンのポストホックテスト)を使ってメジアンの比較により評価された。単純化のために、比較は、次の集合に限定された。a)ひとつの強化ファクタを有するか有しないPID(セバリングハウス補償/K
p適応/目標範囲減衰)、b)ひとつの強化ファクタの減算を有するか有しない強化PID、c)30秒ロックアウト/PDとPID/強化PID/PIDとの比較。オリジナル記録からの手動制御によるSpO
2目標に関連するサマリーデータもまた生成されたが、与えられた異なるSpO
2ターゲット範囲(88〜92%)に対して統計的比較はされなかった。
【0228】
(結果)
シミュレーションで使った記録は、30.5週のメジアン妊娠期間(IQR27.5〜31週)で生まれ、出生体重1320(910〜1860)グラム、および、生後2(0〜5.3)日の16人の早産児から取ったものである。幼児は、かなりの程度のSpO
2不安定性を有し、4時間ごとに、3.1(1.6〜9.9)回発現の頻度で、低酸素症(SpO
2<80)の症状が発現した。記録の時間において、CPAP圧力レベルは、7.0(6.5〜8.0)cmH
2Oであり、ベースラインFiO
2範囲は、0.21〜0.61であった。ミッシングSpO
2データの除去の後、記録は22(20から26)時間の間のものであった。
【0229】
シミュレーションテストにおいて、PIDコントローラの異なる成分の相補関数が明確であった。PIDコントローラへのK
p適用および目標範囲減衰の別々の付加は、エウポキシア時間を改善したが、一方セバリングハウス補償は酸素過剰症の発現を減少させた(表3および4参照)。全体的に、3つの強化のすべてを有するPIDコントローラのパフォーマンスが他の組みあわせに対して優れていた。目標範囲減衰がない場合、エウポキシア時間は、完全に強化されたPIDに対するよりも長い傾向があった(表3参照)。低酸素症および酸素過剰症の発現は、K
p適応なしで、最も効果的に消去された(表4参照)。強化されたコントローラからのセバリングハウス補償の除去は低酸素症を最小化したが、酸素過剰症のより多くの時間、および、より多くの発現を周期的に導いた(表3および4参照)。強化コントローラは、すべての点において、各FiO
2変化の後の30秒のロックアウト期間を有するコントローラよりも良く、PDコントローラよりもかなり良かった(表3および4参照)。
【0230】
SpO
2記録の安定性はまた、強化特徴の異なる順列によりかなり変化した(表5参照)。記録中のSpO
2CV値は全体的に個々の例に見られる不安定性を反映した(例えば、強化コントローラからK
p適応が除去された状態で)。SpO
2CVは、強化コントローラ(およびいくつかの他の組みあわせ)により最小化され、これらの状況下において比較的安定であることを示唆している。30秒のロックアウトを有するPIDおよびPDコントロールの両方は、目標範囲の上下の発現がより長く続いて、SpO
2安定性を減少させた(表5参照)。
【0231】
PIDコントローラへの各強化特徴の別々の付加は、利益を示した。強化コントローラは、より少ない強化を有するPIDコントローラより、所望のSpO
2範囲において最適な時間の組みあわせおよび低酸素症および酸素過剰症の回避を伴って、全体的に良いパフォーマンスを示した。このコントローラは、30秒のロックアウトを有するものより良いパフォーマンスを有し、PDコントロールよりかなり良いパフォーマンスを有した。
【0232】
強化PIDコントローラは、必要ならば一秒間に一回までFiO
2を調節しながら、SpO
2逸脱に対して早急に応答することができた。低酸素症または酸素過剰症イベントに対する初期応答は、酸素正常状態となるまで積分項により決定されるより緩和されたFiO
2調節を伴って、大部分、比例項および微分項のドメインであった。
【0233】
少なくともシミュレーションにおいて、強化PIDコントローラは、長期の低酸素症および酸素過剰症の発現を緩和するのに非常に効果的であった。PIDコントローラに対するセバリングハウス補償の付加は、酸素過剰症イベント(オーバーシュートを含む)を克服するのに役だった。強化コントローラからそれを除去することはその再発を生じさせた。
【0234】
まとめると、酸素供給シミュレーションを使った上記臨床前テストにおいて、強化コントローラは、所望のSpO
2範囲を目標としかつ、酸素供給過剰を避けるのに非常に効果的であった。
【0235】
【表3】
予め特定されたSpO
2範囲内の時間割合(全時間の%)の比較、メジアン (四分位範囲)、カラム内統計比較 (フリードマン ANOVA with Dunn’s ポストホックテスト)、 a:bからの差, P<0.05、 c:dからの差、 e:fからの差、 g:hからの差、i:jからの差、k:lからの差、 PID: 比例積分微分、K
p: 比例係数、 SC: セバリングハウス補償、 TRA:目標範囲減衰
【0236】
【表4】
低酸素症および酸素過剰症発現(>30秒および>60秒間隔)の連続頻度およびオーバーシュートの頻度の比較、カラム内統計比較 (フリードマン ANOVA with Dunn’s ポストホックテスト)、 a:bからの差、 P<0.05, c:dからの差、 e:fからの差、 g:hからの差、*:16個のすべての記録に対してプールされたオーバーシュート発現のデータ. 表3に従う省略、オーバーシュートの定義に対する上述した方法を参照
【0237】
【表5】
SpO
2 不安定性の指標. メジアン (四分位範囲)、カラム内統計比較 (フリードマン ANOVA with Dunn’s ポストホックテスト)、 a:bからの差、 P<0.05、 c:dからの差、 e:fからの差、 g:hからの差、 i:jからの差、 PID: 比例積分微分、 K
p: 比例係数、 SC: セバリングハウス補償、TRA:目標範囲減衰
【0238】
<第2の実施例>
(方法)
第2の実施例において、実施例1の強化PIDコントローラが酸素制御デバイス内に組み込まれ、臨床評価によってテストされた。
【0239】
図20に示すように、自動酸素制御方法を組み込むデバイスは、ラップトップコンピュータ、自動空気酸素混合機、およびアナログ−デジタル(AD)コンバータを組み込むデータ入出力デバイス(USB−6008、National Instruments, Austin, USA)から成るスタンドアロン装置であった。コントローラは、標準的な心肺モニター(Drager Infinity, Drager Medical Systems Inc, Notting Hill, Australia)から、SpO
2(マシモオキシメトリプローブ, Masimo Corp, Irvine, California)、心電図信号から決定される心拍数(HR
ecg)、および、プレチスモグラフ心拍数(HR
pleth)を含むデジタル入力を受信した。SpO
2平均は、すぐに(2〜4秒)設定された。FiO
2は、呼吸回路(Teledyne)の近位リム内のセンサーを介して測定され、ADコンバータを介してデバイスに入力された。コントローラから導出されたFiO
2の所望の値は空気酸素混合機(Bird Ultrablender, Carefusion, Seven Hills, NSW)にカスタムマウントされたサーボモーター(model HS-322HD, Hitec RCD USA, Poway, USA)に方向付けられた。それにより、環状ギア機構を通じて混合機のFiO
2選択ダイヤルの自動回転が可能になる。サーボモーターおよびギアシステムは、FiO
2に対して小さい調節(最小値±0.5%)を正確かつ繰り返し行うことが可能な十分なトルクおよび精度を有した。サーボモーターは、混合機のダイヤルが手動で回すことが可能であるように、低い保持トルクを有する。この手動介入は、ポジションセンサーによって検出され、FiO
2がもはや自動制御の下にはない(以下を参照)ところの手動モードへの切り替えを生じさせた。各研究の最初において、サーボモーターキャリブレーションがチェックされ、必要なら変更された。
【0240】
自動制御方法は、早産児の自動酸素制御に対してPID制御を適切に適用するべく、比例項、積分項、および微分項の決定における強化を有するPID制御プロセスから成る。比例項の強化は、肺機能不全の深刻さ、目標範囲内の間のエラー減衰、および低酸素症の間のエラー上限規定に基づく変調を含む。積分項の強化は、被積分関数の大きさの上限規定、PaO
2−SpO
2の非線形関係の補償、および、室内気における被積分関数増加の制限を含む。
【0241】
PID制御プロセスは、1秒ごとに1回以内のループを繰り返した。したがって当該方法は、早産児においてごく頻繁な、酸素供給の急激な変化を検出し応答するように設計された。PID係数の値の範囲は、すべての係数に対して異なる値の複数の順列が試験されるように、早産児からのデータを使った広範囲なシミュレーション研究から導出された。実施例で使用されたK
p、K
i、およびK
dの値は、K
pが−1、K
iが−0.0125、およびK
dが−1であった。K
pの値は、−0.5と−1との間の範囲内で、肺機能不全の深刻さに応じて適応された。
【0242】
非数値SpO
2値は、ミッシングとして取り扱われ、その場合、HR
ecgおよびHR
plethの値が30bpmを超えて異なるところのSpO
2であった。ミッシングSpO
2値のイベントにおいて、FiO
2は、カレント値に保持された。コントローラの全機能は、有効信号が回復した後に直ちに再開された。
【0243】
自動制御の間に、ベッドサイドのスタッフは、混合機のFiO
2ダイヤルを手動で回転することにより制御デバイスをオーバーライドすることができた。これは、設定FiO
2とサーボモーター内のポジションセンサーによって検出されるFiO
2値との間の不一致の検出を通じて手動オーバーライドを信号化する。手動オーバーライドになると、FiO
2に対する最後の手動変更の30秒後に、自動制御はユーザが選択したFiO
2で再開した。デバイスは、もし必要であれば、ベッドサイドのスタッフからのインストラクションのリサーチタームによって手動制御モードにロック可能であった。
【0244】
(臨床試験)
研究は、ロイヤル・ホバート病院の新生児および小児科集中治療室において実行された。装置は、毎年、妊娠期間が32週未満の約70人の早産児を治療しており、この患者グループに対して可能であればいつでも持続的気道陽圧(CPAP)および高流量鼻カヌラ(HFNC)を含む非侵襲的呼吸サポートを使う精神を有する。酸素療法の滴定に対するSpO
2目標範囲は、以前の88〜92%から、90〜94%に更新された。
【0245】
妊娠期間が37週未満でかつ生後4月未満の早産児は、もし研究期間の開始時に非侵襲的呼吸サポート(CPAPまたはHFNC)を受け、かつ、補助酸素を受け取っていれば、研究に適していた。重大な不安定性または先天性異常(動脈管開存症以外の心奇形を含む)を有する幼児は除外された。
【0246】
これは、自動酸素制御の4時間の予測介入研究であった。それは、合計で8時間(自動制御の前後の4時間)の標準的な手動制御の2つの隣接期間と比較された。持ち越し効果を避けるために、研究期間の間に15分間のインターバルが存在した。研究者は、自動制御期間中に居合わせたが、臨床システムの誤作動が生じなければベッドサイドの医療スタッフと干渉しなかった。自動制御の期間中、介護者は、混合機のダイヤルを回すことにより、制御デバイス出力を、研究で使用されるカスタマイズされた空気酸素混合機にオーバーライドすることができた。手動制御の記録中に、ベッドサイドの介護者は、標準的なSpO
2目標範囲(90〜94%)を有するSpO
2目標への通常のアプローチを使うように指示された。以前の研究に基づいて、手動制御によって、この範囲の上限が優先的に目標にされた。自動制御がSpO
2範囲の中間点を目標とすることが与えられれば、自動制御中に目標範囲は91〜95%に設定され、手動および自動SpO
2ヒストグラムがオーバーラップすることが予測される。手動および自動研究期間の両方に対して、アラーム設定は下限値が89%で上限値が96%で同一であった。
【0247】
研究の前に、オキシメトリプローブは、導管の後の位置に配置され、医療的必要性または継続的なSpO
2信号の低下が生じなければ、3つの研究期間の間に移動されなかった。可能であればデータ記録時間以外となるように、ケア時間がスケジュールされた。自動制御に対して、基準FiO
2(rFiO
2)の一定値が、直近の基本的補助酸素要求に基づいて、各幼児に選択された。
【0248】
妊娠期間、出生体重、研究時の呼吸サポートのレベルおよび臨床状態の詳細を含む、関連する人口統計および臨床データが幼児ごとに記録された。SpO
2およびFiO
2は、手動および自動制御の両方の間に1Hzで記録された。これらの記録の分析により、SpO
2係数の変化、目標範囲の外にある発現の数および平均時間間隔を評価することで、各幼児のSpO
2不安定性が評価可能となった。また、以下の酸素供給状態の各々の時間の割合が確認された。目標範囲のSpO
2、エウポキシア(目標範囲のSpO
2、または、室内気において目標範囲より上のSpO
2)、アラーム範囲(89〜96%)のSpO
2、および、80%未満のSpO
2、酸素が80〜84%、85〜88%、97〜98%、および、98%超過。これらの値を計算するために、ミッシングSpO
2信号の時間間隔中のデータの除外後の時間に分母は使用可能であった。低酸素症および酸素過剰症の長期の発現の頻度が、SpO
2オーバーヘッドの頻度として識別され、SpO
2<85%である低酸素症のイベントに続く2分間にわたって、少なくとも60秒間、目標範囲の上のSpO
2読み取りとして定義された。手動および自動記録の間のFiO
2調節の回数が、それぞれの場合の平均酸素露出(平均FiO
2)として決定された。
【0249】
データは他に記載がなれば、メジアンおよび四分位範囲(IQR)として表現された。比較は、ウィルコクスンマッチペアテストを使って、自動制御時間と手動性制御時間との間に実行された。これらの分析のために、手動制御時間からの分析データはプールされるが、付加的に、幼児ごとに、最適な手動制御時間(すなわち、エウポキシアにおいて時間の最大の割合を有する2時間以上の手動記録間隔)がコンパレータとしても使用された。一次結果は、エウポキシアにおける時間の割合であった。研究用に選択されたサンプルサイズは、コントローラのパフォーマンスの最初の医療経験を増やし、かつ、十分な数の対象者の安全性を増加させるための必要性に主に基づいていた。45人の幼児の以前の研究において、我々は、酸素が30±15%(平均±SD)であるべき場合、目標範囲内の時間の割合を発見した。本研究における対となる自動制御値と手動制御値との間の差に対して類似の標準的逸脱を仮定すると、20人の幼児のサンプルにより、80%のパワーおよび0.05のαエラーを有する手動時間と自動時間との間のエウポキシア時間における10%の差の検出が可能となった。
【0250】
(結果)
研究は、2015年5月から12月に実施された。参加した幼児(n=20)は、妊娠期間のメジアンが27.5週(IQR 26〜30週)で、かつ、出生体重が1130(940〜1400)グラムであった。20人の幼児のうち15人(75%)が男児であった。幼児は、生後8.0(1.8〜3.4)日で研究され、訂正された妊娠年齢は31(29〜33)月経後週で、赤ちゃんの体重は1400(1120から1960)グラムであった。CPAPについて研究された幼児(n=13)に対して、記録の開始時の圧力レベルは6(5〜8)cmH
2Oであった。HFNCについて研究された幼児(n=7)に対して、開始流量は6(5.5〜6.5)L/minであった。すべてのケースにおいて、看護師と患者の比率は1:2であった。
【0251】
手動制御の2つの隣接期間からのデータは、18人の幼児から入手可能であり、自動制御直後の挿管の必要およびデータロギングの失敗が第2の手動制御データ記録(ひとつのケースごと)の利用不可能の理由であった。ミッシング信号の割合は、第1手動、自動、および第2手動記録のそれぞれにおいて、2.9(0.5〜5.4)%、1.7(0.7〜3.4)%。および、1.5(0.8〜7.1)%であり、分析用に使用可能な時間は3.8(3.7〜4.0)、3.8(3.7〜3.9)および4.0(3.8〜4.0)時間残された。
【0252】
図21Aおよび
図21Bは、手動および自動制御中の同じ幼児からの2時間の記録を示す。それは、以下のSpO
2(実線、Y軸:%飽和度)およびFiO
2(破線、Y軸:%酸素)のサンプル記録を含む。
(A)幼児5は、27週の妊娠期間で生まれ、生後40日で研究され、高流量鼻カヌラ(6L/min)で、手動制御で、エウポキシア時間59%(
図21A参照)
(B)幼児5は、自動制御でエウポキシア時間79%、全体を通じて29%に設定されたrFiO
2で自動制御された状態でエウポキシア時間82%(
図21B参照)
【0253】
図21Aおよび
図21Bは、FiO
2の手動制御中(
図21A)および自動制御中(
図21B)の、SpO
2の典型的な変動性を明らかにしている。それは、自動制御中(
図21B)にはさほど顕著ではなかった。
図21Aおよび
図21Bに示す例示的データは、コントローラによって作成されたFiO
2の急速な応答、および、目標範囲(灰色の帯で示す)での時間の増加を示す。
【0254】
図22において、黒棒は手動制御、白棒は自動制御を示し、Tは目標範囲内のSpO
2を示し、目標範囲は手動制御に対して90〜94%であり、自動制御に対して91〜95%である。プールされたSpO
2データの周波数ヒストグラムは、自動制御により、目標範囲内の時間の割合の実質的な増加を示し、低酸素症および酸素過剰症の両方の値が手動制御に比べ下に示されている。手動制御中のSpO
2目標プロファイルは、目標範囲の上端において曲線のピークを有するように見える。対照的に、期待した通り、自動制御は選定した目標範囲の中間点(すなわち、SpO
2:93%)を目標にした。補助酸素を受け取ったとき、プールされたデータ内のメジアンSpO
2は、手動および自動制御の両方に対して93%であった。
【0255】
酸素供給は、自動制御中、目標範囲を下回りかつ80%を下回るわずかなSpO
2逸脱を有し、手動制御に比べ目標範囲の外側のすべての発現がより短い時間間隔である状態で、かなりより安定していた。SpO
2係数の変動もまたかなり異なっていた(手動制御では3.8(3.2〜4.7)%、自動制御では2.3(1.8〜3.0%、P<0.0001))。
【0256】
手動制御時間と比較すると、自動制御は、目標およびエウポキシア範囲において、それぞれ23%および25%のより多くの時間を生じさせた(表6参照)。アラーム範囲(89〜96%)内に費やす時間もまたより多かった。自動制御は、酸素供給の両極においてかなりの時間を減少させ、SpO
2<80%の低酸素症およびSpO
2>98%の酸素過剰症を実質的に消滅させた。低酸素症および酸素過剰症のより短い範囲の所要時間もまた減少された。
【0257】
これらの発見は、低酸素症および医源性の酸素過剰症の長期的発現の分析に映し出された。その両方は手動制御中に適度な頻度で発生するが(表7参照)、自動制御中には明らかにまれであった。いずれの自動制御記録においても、オーバーシュートの発現は識別されなかった。
【0258】
図23において、最適な手動制御時間に対するエウポキシアの時間の個人の値が自動制御と比較され、水平棒はメジアンであり、エウポキシアは目標範囲のSpO
2、または、室内気で目標範囲を超えるSpO
2である。最適な2つの手動制御時間に対して測定されたとき、自動制御の明白な利益が存在し、最適な手動制御および自動制御に対して、エウポキシア範囲の時間がそれぞれ60(50〜72)%および81(76〜90)%であった(P<0.0001)。また、自動制御は、各個人の研究において、より良いSpO
2目標に関連し、2.2から55%のエウポキシア時間範囲において相対的な改善が見られた(
図23参照)。
【0259】
手動制御時間中、少なくとも1%のFiO
2調節がベッドサイドのスタッフにより一時間ごとに2.3(1.3から3.4)回為された。自動制御中、0.5%のFiO
2最小変化が、サーボモーターによって周期的(全体として毎分9.9変更)に作動され、毎時64(49〜98)の頻度で、少なくとも1%の測定FiO
2への変更が発生した。自動制御の再、20個の記録のすべてにおいて、全部で18回の手動調節が実行され(毎時0.24回調節)、手動調節の比から90%だけの減少が手動制御中に観測された(毎時2.3回)。自動制御中の個々の患者の手動調節の最大数は、4時間の記録で4回だった(すなわち、毎時1回)。顕著なシステム機能障害は発生しなかった。
【0260】
酸素要求のメジアン値(平均FiO
2)は、第1手動、自動、および、第2手動記録のそれぞれに対して、27(25〜30)%、27(25〜30)%、および26(24〜31)%であった。酸素要求は、自動といずれかの手動記録との間で差はなかった(P>0.05、ウィルコクスンマッチペアテスト)。
【0261】
要するに、強化PIDコントローラは、SpO
2目標において所望のSpO
2範囲内で25%以上、日常的な手動制御より効果的であった。極端な酸素供給は大幅に回避され、長期的な低酸素症および酸素過剰症は、実質的に消滅した。効果的な酸素制御が、吸入酸素調節の手動フラクションがほとんどなく、酸素への同様の露出で達成された。
【0262】
【表6】
手動および自動制御に対して、予め特定されたSpO
2範囲内の時間割合(全利用可能時間の%)の比較、2つの隣接する期間からプールされた手動制御データ、メジアン (四分位範囲)、*:ウィルコクスンマッチペアテスト
【0263】
【表7】
手動および自動制御間の低酸素症および酸素過剰症発現(>30秒および>60秒間隔)の連続頻度の比較、2つの隣接する期間からプールされた手動制御データ、メジアン (四分位範囲)、*:ウィルコクスンマッチペアテスト
【0264】
添付した図面を参照して説明したように、本願発明の態様から離れることなく、多くの修正が可能であることは当業者の知るところである。
【0265】
関連出願
本願は、ここに参考文献として組み込む、2015年11月10日に出願したオーストラリア国仮特許出願第2015904621号の優先権を主張する。