(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
家庭内に構築した有線もしくは無線のネットワークを用いて、音楽や動画等のコンテンツを再生する利用形態が普及している。特に、パーソナルコンピュータ(PC: Personal Computer)やネットワーク接続ストレージ(NAS: Network Attached Storage)等に記憶されたオーディオファイルを、家庭内のネットワークを経由して伝送し、専用のオーディオ機器で再生する利用形態は、「ネットワークオーディオ」と呼ばれている(例えば、非特許文献1参照)。以下、ネットワークオーディオに対応したオーディオ機器を「ネットワークオーディオ再生装置」とも呼ぶ。ネットワークオーディオを実現するためのプロトコルとして、UPnP(Universal Plug and Play)やUPnP AVが利用されている(例えば、非特許文献2参照)。また、ネットワークオーディオに対応した機器の相互接続を容易にするためのガイドラインとして、DLNA(Digital Living Network Alliance)が策定されている。
【0003】
一方、インターネットを経由してコンテンツをストリーミング配信するコンテンツ配信サービスが普及している。従来よりも高音質なハイレゾ音源を配信するコンテンツ配信サービスも提供されている(例えば、非特許文献3参照)。また、コンテンツ配信サービスから配信されるコンテンツを再生する機能を備えたネットワークオーディオ再生装置も利用されている。
【0004】
図1は、DLNAに準拠したネットワークオーディオシステムの構成例である。この例のネットワークオーディオシステムは、再生制御装置1とネットワーク再生装置2とからなる。再生制御装置1とネットワーク再生装置2は、それぞれネットワーク(LAN)に接続され、相互に通信可能に設定される。再生制御装置1は、ネットワークオーディオで再生するためのオーディオファイルを記憶し、ネットワーク再生装置2に対してオーディオファイルの再生等の操作を行う装置である。ネットワーク再生装置2は、再生制御装置1からの操作に従って、再生制御装置1が記憶するオーディオファイルをネットワーク経由で要求し、そのオーディオファイルをストリーミング再生するネットワークオーディオ再生装置である。
【0005】
再生制御装置1のコンテンツ記憶部10には、1個以上のオーディオファイルが記憶されている。再生制御装置1が備えるディスプレイ等の出力装置には、コンテンツ記憶部10に記憶されたオーディオファイルの一覧が表示される。表示の形態は、例えば、曲名順、登録日順、アーティスト単位、アルバム単位、ジャンル単位、プレイリスト単位等、予め付与されている分類情報に基づいて、ユーザが目的のオーディオファイルを探し易い形態とされる。ネットワークオーディオのユーザは、再生制御装置1の出力装置に表示されたオーディオファイルの一覧の中から再生したい1個以上のオーディオファイルを選択し、再生を開始する操作を行う。再生制御装置1の再生指示部11は、ユーザが選択したオーディオファイルを一意に識別するアドレス情報を含む再生指示信号をネットワーク再生装置2へ送信する。アドレス情報は、例えば、URI(Uniform Resource Identifier)形式で表現される。ネットワーク再生装置2は、再生指示信号に含まれるアドレス情報が示すオーディオファイルを求める要求信号を、再生制御装置1へ送信する。再生制御装置1のデータ伝送部12は、ネットワーク再生装置2から要求信号を受け取り、その要求信号が求めるオーディオファイルをネットワーク再生装置2へストリーミング伝送する。ストリーミング伝送のプロトコルは、例えば、HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)等を用いる。ネットワーク再生装置2は、再生制御装置1からストリーミング伝送されるオーディオファイルに基づいて音響信号を生成し、その音響信号をアンプやスピーカ等へ出力する。
【0006】
図2は、DLNAに準拠したネットワークオーディオシステムの他の構成例である。この例のネットワークオーディオシステムは、再生制御装置1とネットワーク再生装置2に加え、ネットワーク記憶装置3を含む。再生制御装置1とネットワーク再生装置2とネットワーク記憶装置3は、それぞれネットワーク(LAN)に接続され、相互に通信可能に設定される。再生制御装置1は、ネットワーク再生装置2に対する再生等の操作のみを行う。ネットワーク記憶装置3は、ネットワークオーディオで再生するためのオーディオファイルを記憶し、ネットワーク再生装置2からの要求に応じてオーディオファイルをストリーミング伝送するメディアサーバまたはネットワーク接続ストレージ等の外部記憶装置である。
【0007】
ネットワークオーディオのユーザが再生を開始する操作を行うと、再生制御装置1の再生指示部11は、ユーザが選択したオーディオファイルを一意に識別するアドレス情報を求める要求信号を、ネットワーク記憶装置3へ送信する。ネットワーク記憶装置3の制御部31は、ユーザが選択したオーディオファイルのアドレス情報を再生制御装置1へ送信する。再生制御装置1の再生指示部11は、受信したアドレス情報を含む再生指示信号をネットワーク再生装置2へ送信する。ネットワーク再生装置2は、再生指示信号に含まれるアドレス情報が示すオーディオファイルを求める要求信号を、ネットワーク記憶装置3へ送信する。ネットワーク記憶装置3のデータ伝送部32は、ネットワーク再生装置2から要求信号を受け取り、その要求信号が求めるオーディオファイルをネットワーク再生装置2へストリーミング伝送する。ネットワーク再生装置2は、ネットワーク記憶装置3からストリーミング伝送されるオーディオファイルに基づいて音響信号を生成し、その音響信号をアンプやスピーカ等へ出力する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、図面中において同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【0015】
[第一実施形態]
図3に、第一実施形態のネットワークオーディオシステムの機能構成を例示する。第一実施形態のネットワークオーディオシステムは、再生制御装置1とネットワーク再生装置2とからなる。再生制御装置1とネットワーク再生装置2は、それぞれネットワーク(LAN)に接続される。このネットワークは、接続される各装置が相互に通信可能なように構成された回線交換方式もしくはパケット交換方式の通信網であり、例えば有線または無線のLAN(Local Area Network)を用いることができる。
【0016】
再生制御装置1は、例えば、中央演算処理装置(CPU: Central Processing Unit)、主記憶装置(RAM: Random Access Memory)などを有する公知又は専用のコンピュータに特別なプログラムが読み込まれて構成された特別な装置である。再生制御装置1は、例えば、中央演算処理装置の制御のもとで各処理を実行する。再生制御装置1に入力されたデータや各処理で得られたデータは、例えば、主記憶装置に格納され、主記憶装置に格納されたデータは必要に応じて中央演算処理装置へ読み出されて他の処理に利用される。再生制御装置1は、少なくとも一部が集積回路等のハードウェアによって構成されていてもよい。再生制御装置1が備える各記憶部は、例えば、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置、ハードディスクや光ディスクもしくはフラッシュメモリ(Flash Memory)のような半導体メモリ素子により構成される補助記憶装置により構成することができる。再生制御装置1は、具体的には、スマートフォンやタブレットのようなモバイル端末、もしくはデスクトップ型やラップトップ型のパーソナルコンピュータなどの、マウスやタッチパネル等の入力機能とディスプレイ等の出力機能とネットワークコントローラ等の通信機能を備えた情報処理装置である。
【0017】
ネットワーク再生装置2は、従来のネットワークオーディオ再生装置である。ネットワーク再生装置2は、少なくともネットワークを経由して特定のフォーマットのオーディオファイルをストリーミング再生する機能を備えていればよく、その他の機能は特に限定されない。
【0018】
第一実施形態の再生制御装置1は、
図3に例示するように、コンテンツ記憶部10、再生指示部11、データ伝送部12、仮想ファイル生成部13、およびフォーマット記憶部19を備える。すなわち、従来の再生制御装置との相違点は、仮想ファイル生成部13およびフォーマット記憶部19を備える点である。以降では、
図1に示した従来のネットワークオーディオシステムとの相違点を中心に説明する。
【0019】
フォーマット記憶部19には、ネットワーク再生装置2が再生可能なフォーマットの仕様が予め記憶されている。再生可能なフォーマットの仕様とは、具体的には、ファイルコンテナの種類、コーデックの種類、サンプリング周波数の範囲、量子ビット数の範囲、ビットレートの範囲、チャンネル数の範囲、等である。再生制御装置1が再生等の操作を行う対象とするネットワーク再生装置2が複数存在する場合には、ネットワーク再生装置2ごとに再生可能なフォーマットの仕様が記憶される。
【0020】
ネットワークオーディオのユーザが再生を開始する操作を行うと、仮想ファイル生成部13は、ユーザが選択したオーディオファイルをコンテンツ記憶部10から読み出し、そのオーディオファイルからフォーマットを取得する。オーディオファイルのフォーマットは、通常、オーディオファイルのヘッダーから取得することができる。また、仮想ファイル生成部13は、ネットワーク再生装置2が再生可能なフォーマットをフォーマット記憶部19から取得する。そして、仮想ファイル生成部13は、オーディオファイルのフォーマットとネットワーク再生装置2が再生可能なフォーマットとに基づいて、変換先のフォーマットを決定する。変換先のフォーマットは、ネットワーク再生装置2が再生可能なフォーマットであればどのようなものでもよいが、例えば、オーディオファイルのフォーマットからの変換効率が最も良いことや、変換した後に最も音質が高くなることを基準として決定すればよい。最後に、仮想ファイル生成部13は、ユーザが選択したオーディオファイルのフォーマットを変換先のフォーマットに変換した仮想ファイルを生成する。
【0021】
なお、仮想ファイル生成部13が生成する仮想ファイルは、データ伝送部12によりストリーミング伝送される一時的なものであるから、オーディオファイル全体を一度に変換するのではなく、伝送前の所定のサイズのオーディオファイルのみを変換して、主記憶装置等の一時的な記憶領域に構築する。また、データ伝送部12によりストリーミング伝送された部分は、伝送が完了したら順次一時的な記憶領域から消去する。
【0022】
再生指示部11は、仮想ファイル生成部13が生成した仮想ファイルを一意に識別するアドレス情報を含む再生指示信号をネットワーク再生装置2へ送信する。ネットワーク再生装置2は、再生指示信号に含まれるアドレス情報が示す仮想ファイルを求める要求信号を、再生制御装置1へ送信する。データ伝送部12は、ネットワーク再生装置2から要求信号を受け取り、その要求信号が求める仮想ファイルをネットワーク再生装置2へストリーミング伝送する。以降の処理は、従来のネットワークオーディオシステムと同様である。
【0023】
上記のように構成することにより、第一実施形態の再生制御装置1によれば、オーディオファイルのフォーマットがネットワーク再生装置2の再生可能なフォーマットに変換されるため、オーディオファイルのフォーマットとネットワーク再生装置2の再生可能なフォーマットとが合致していない場合であっても、確実にそのオーディオファイルを再生することが可能となる。
【0024】
[第一実施形態の変形例]
第一実施形態のネットワークオーディオシステムは、ネットワークオーディオで再生するためのオーディオファイルを再生制御装置1が記憶する構成としたが、第一実施形態の変形例のネットワークオーディオシステムは、ネットワーク記憶装置3がオーディオファイルを記憶する構成である。
【0025】
変形例のネットワークオーディオシステムは、
図4に例示するように、再生制御装置1とネットワーク再生装置2に加え、ネットワーク記憶装置3を含む。再生制御装置1とネットワーク再生装置2とネットワーク記憶装置3は、それぞれネットワーク(LAN)に接続され、相互に通信可能に設定される。
【0026】
変形例の再生制御装置1は、再生指示部11、データ伝送部12、仮想ファイル生成部13、およびフォーマット記憶部19を備える。すなわち、従来の再生制御装置との相違点は、仮想ファイル生成部13およびフォーマット記憶部19を備える点である。変形例のネットワーク記憶装置3は、コンテンツ記憶部10、制御部31、およびデータ伝送部32を備える。すなわち、変形例のネットワーク記憶装置3は、従来のネットワーク記憶装置と同様である。以降では、第一実施形態のネットワークオーディオシステムとの相違点を中心に説明する。
【0027】
ネットワークオーディオのユーザが再生を開始する操作を行うと、再生指示部11は、ユーザが選択したオーディオファイルを一意に識別するアドレス情報を求める要求信号を、ネットワーク記憶装置3へ送信する。ネットワーク記憶装置3の制御部31は、ユーザが選択したオーディオファイルのアドレス情報を再生制御装置1へ送信する。再生指示部11は、受信したアドレス情報が示すオーディオファイルを求める要求信号を、ネットワーク記憶装置3へ送信する。ネットワーク記憶装置3のデータ伝送部32は、再生制御装置1から要求信号を受け取り、その要求信号が求めるオーディオファイルを再生制御装置1へストリーミング伝送する。仮想ファイル生成部13は、ネットワーク記憶装置3からストリーミング伝送されたオーディオファイルからフォーマットを取得する。以降、仮想ファイル生成部13は、第一実施形態と同様に、ユーザが選択したオーディオファイルから仮想ファイルを生成する。以降の処理は、第一実施形態のネットワークオーディオシステムと同様である。
【0028】
[第二実施形態]
第一実施形態およびその変形例では、ユーザが選択した個々のオーディオファイルをネットワーク再生装置が再生可能なフォーマットへ変換する構成を説明した。第二実施形態では、ユーザが複数のオーディオファイルを選択し、連続再生する構成を説明する。
【0029】
例えば、ライブアルバムのように、一つのコンサートやライブ等を複数のオーディオファイルに分割して収録されている場合、曲間が途切れてしまうと臨場感を損ねてしまうことになる。このような状況を避けるために、複数の連続するオーディオファイルを、曲間を開けずに再生するギャップレス再生と呼ばれる機能が利用されている。また、複数のオーディオファイルを選択したときに、前の曲の末尾をフェードアウトしつつ次の曲の先頭をフェードインすることで、自然な曲の切り替わりを演出するクロスフェード再生と呼ばれる機能が利用されている。しかしながら、ギャップレス再生やクロスフェード再生に対応しているネットワーク再生装置は一部の機種のみであり、これらの機能に対応していないネットワーク再生装置は多い。
【0030】
第二実施形態の再生制御装置1は、複数のオーディオファイルを連続再生するときに、仮想ファイル生成部13が、複数のオーディオファイルを結合した単一の仮想ファイルを生成する。具体的には、ネットワークオーディオのユーザが複数のオーディオファイルを選択して再生を開始する操作を行うと、仮想ファイル生成部13は、ユーザが選択した複数のオーディオファイルをコンテンツ記憶部10から読み出し、各オーディオファイルからフォーマットを取得する。また、仮想ファイル生成部13は、ネットワーク再生装置2が再生可能なフォーマットをフォーマット記憶部19から取得する。そして、仮想ファイル生成部13は、各オーディオファイルのフォーマットとネットワーク再生装置2が再生可能なフォーマットとに基づいて、変換先のフォーマットを決定する。仮想ファイル生成部13は、ユーザが選択した各オーディオファイルのフォーマットを変換先のフォーマットに変換しつつ順番に結合した単一の仮想ファイルを生成する。
【0031】
ギャップレス再生を行うためには、フォーマット変換後のオーディオファイルの結合部分に無音部分や音飛びが発生しないように調整を行う。また、クロスフェードを行うためには、前のオーディオファイルの末尾のボリュームレベルを漸減させ、かつ、次のオーディオファイルの先頭のボリュームレベルを漸増させつつ、前のオーディオファイルの末尾と次のオーディオファイルの先頭が重複するように合成する。選択された複数のオーディオファイルに異なる音源のファイルが含まれる場合などには、各オーディオファイルのボリュームレベルが異なっていることがある。その場合、フォーマット変換を行う際に、ボリュームレベルを均一化する変換を同時に行ってもよい。
【0032】
単一の仮想ファイルのヘッダーには、各オーディオファイルをフォーマット変換し、すべて結合したときのサイズを設定する必要がある。しかしながら、単一の仮想ファイルのフォーマットが、例えばFLAC等の可逆圧縮(ロスレス圧縮)を伴うものである場合、最終的な仮想ファイルのサイズが事前に計算できない場合もある。その場合には、仮想ファイルのフォーマットで定められた最大のサイズを設定すればよい。
【0033】
ここでは、再生制御装置1がオーディオファイルを記憶している構成を想定して説明したが、第二実施形態の構成はネットワーク記憶装置3がオーディオファイルを記憶している構成であっても適用することが可能である。この場合、ネットワークオーディオのユーザが複数のオーディオファイルを選択して再生を開始する操作を行うと、再生指示部11が、複数のオーディオファイルをネットワーク記憶装置3に要求し、仮想ファイル生成部13が、ネットワーク記憶装置3からストリーミング伝送された複数のオーディオファイルから単一の仮想ファイルを生成するように構成すればよい。
【0034】
[第三実施形態]
第三実施形態は、コンテンツ配信サービスから配信されたコンテンツを再生するネットワークオーディオシステムである。インターネットを経由したストリーミング再生に対応したネットワーク再生装置は存在するが、必ずしも対応が十分ではない場合がある。例えば、ネットワーク再生装置は伝送速度のゆらぎを吸収するためのバッファを搭載していることが通常であるが、インターネットを経由して伝送する場合には伝送速度のゆらぎが大きくなるため、バッファサイズが十分ではない可能性がある。また、近年では従来よりも高品質なハイレゾ音源を配信するコンテンツ配信サービスが提供されているが、ハイレゾ音源はファイルサイズが大きく、ユーザはより高い音質を期待しているため、インターネットを経由したハイレゾ音源のストリーミング再生では、よりサイズが大きいバッファが必要とされる。
【0035】
第三実施形態のネットワークオーディオシステムは、
図5に例示するように、再生制御装置1とネットワーク再生装置2とコンテンツ配信サービス4とからなる。再生制御装置1とネットワーク再生装置2は、それぞれネットワーク(LAN)に接続される。コンテンツ配信サービス4はインターネットに接続されている。ネットワーク(LAN)はインターネットに接続されているため、再生制御装置1とネットワーク再生装置2とコンテンツ配信サービス4は相互に通信可能である。
【0036】
第三実施形態の再生制御装置1は、第一実施形態の変形例の再生制御装置と同様に、再生指示部11、データ伝送部12、および仮想ファイル生成部13を備え、さらにバッファ部14を備える。再生制御装置1は、さらにフォーマット記憶部19を備えていてもよい。コンテンツ配信サービス4は、コンテンツ記憶部10、制御部41、およびデータ伝送部42を備える。コンテンツ配信サービス4は、ネットワーク記憶装置3と備えるべき機能は同様であるが、データ伝送部がインターネットを経由してストリーミング伝送することを想定したプロトコルを用いる点が異なっている。コンテンツ配信サービス4のデータ伝送部42は、例えば、MPEG-DASHやプログレッシブダウンロード等を用いてコンテンツのストリーミング伝送を行う。
【0037】
再生制御装置1は、コンテンツ配信サービス4からストリーミング伝送されるオーディオファイルをバッファ部14に蓄積する。仮想ファイル生成部13は、バッファ部14に蓄積されたオーディオファイルから、第一実施形態と同様に、仮想ファイルを生成する。このとき、データ伝送部12は、バッファ部14に蓄積されたオーディオファイルが所定のデータ量を超えるまで、ネットワーク再生装置2へのストリーミング伝送を開始しない制御を行う。十分な量のデータがバッファに蓄積される前にネットワーク再生装置2が再生を開始すると、バッファ内のデータが枯渇して音切れが発生する危険性が高まるからである。
【0038】
なお、ネットワーク再生装置2は、数秒分(数メガバイト)程度のバッファを備えることが一般的であるが、バッファ部14は、十秒から一分(数十メガバイト)程度のサイズとすればよい。
【0039】
上記のように構成することにより、第三実施形態の再生制御装置1によれば、インターネットを経由して配信されるコンテンツをストリーミング再生するには不十分なバッファしか搭載していないネットワーク再生装置2であっても、安定した再生を行うことが可能となる。
【0040】
[第三実施形態の変形例]
第三実施形態のネットワークオーディオシステムは、コンテンツ配信サービスから配信されるコンテンツが予め登録されているオンデマンド再生と呼ばれる形態を想定していた。第三実施形態の変形例は、インターネットを経由してコンテンツ配信サービスにアップロードされるコンテンツをリアルタイムにストリーミング配信するライブ配信と呼ばれる形態を想定したネットワークオーディオシステムである。
【0041】
変形例のネットワークオーディオシステムは、
図6に例示するように、再生制御装置1とネットワーク再生装置2とコンテンツ配信サービス4に加え、ライブ配信端末5を含む。再生制御装置1とネットワーク再生装置2は、第三実施形態と同様に、インターネットに接続されたネットワーク(LAN)に接続される。コンテンツ配信サービス4とライブ配信端末5はインターネットに接続されている。
【0042】
変形例のコンテンツ配信サービス4は、制御部41およびデータ伝送部42を備える。コンテンツ配信サービス4がライブ配信とオンデマンド再生を同時に可能とする場合には、さらにコンテンツ記憶部10を備える。ライブ配信端末5は、コンテンツ生成部51を備える。
【0043】
変形例の再生制御装置1は、第三実施形態の再生制御装置と同様に、再生指示部11、データ伝送部12、仮想ファイル生成部13、およびバッファ部14を備える。再生制御装置1は、さらにフォーマット記憶部19を備えていてもよい。変形例の再生制御装置1は、第三実施形態の再生制御装置と備えるべき機能は同様であるが、バッファ部14のサイズが第三実施形態よりも大きく設定されている点が異なっている。
【0044】
ライブ配信端末5のコンテンツ生成部51は、ライブ配信者の操作に応じてライブ配信するためのコンテンツを生成し、インターネットを経由してコンテンツ配信サービス4へアップロードする。
【0045】
ネットワークオーディオのユーザがライブ配信コンテンツを視聴する操作を行うと、再生指示部11は、ユーザが選択したライブ配信コンテンツを一意に識別するアドレス情報を求める要求信号を、コンテンツ配信サービス4へ送信する。コンテンツ配信サービス4の制御部41は、ユーザが選択したライブ配信コンテンツのアドレス情報を再生制御装置1へ送信する。再生指示部11は、受信したアドレス情報が示すライブ配信コンテンツを求める要求信号を、コンテンツ配信サービス4へ送信する。コンテンツ配信サービス4のデータ伝送部42は、再生制御装置1から要求信号を受け取り、その要求信号が求めるライブ配信コンテンツを再生制御装置1へストリーミング伝送する。以降の処理は、第三実施形態のネットワークオーディオシステムと同様である。
【0046】
第三実施形態のデータ伝送部12は、バッファ部14に蓄積されたオーディオファイルが所定のデータ量を超えるまで、ネットワーク再生装置2へのストリーミング伝送を開始しない制御を行ったが、変形例のデータ伝送部12は、第三実施形態よりも多いデータ量がバッファ部14に蓄積されるまで、ネットワーク再生装置2へのストリーミング伝送を開始しない制御を行う。オンデマンド再生では、コンテンツ記憶部10に記憶されたオーディオファイルから先読みすることができるため、バッファ部14に蓄積されたデータ量が減少したときに回復することが可能である。一方、ライブ配信では、ライブ配信端末5からアップロードされるコンテンツをリアルタイムに配信するために先読みすることができず、バッファ部14に蓄積されたデータ量が減少しても回復することができない。そのため、ライブ配信の場合には、ストリーミング伝送を開始する前に、より多くのデータがバッファ部14に蓄積されているように制御する。これにより、ライブ配信コンテンツであっても、安定した再生が可能となる。
【0047】
[第四実施形態]
コンテンツ配信サービスから配信されるコンテンツは、違法コピーを防止するために、デジタル著作権管理(DRM: Digital Rights Management)を適用していることが一般的である。インターネットを経由したストリーミング再生に対応したネットワーク再生装置では、コンテンツ配信サービスの提供事業者が配布するソフトウェア開発キット(SDK: Software Development Kit)を用いてデジタル著作権管理を解除しながらストリーミング再生を行う。第四実施形態は、デジタル著作権管理を始めとしたセキュリティを考慮したネットワークオーディオシステムである。
【0048】
第四実施形態の再生制御装置1は、コンテンツ配信サービスの提供事業者が配布するソフトウェア開発キットを用いて、コンテンツ配信サービス独自の接続仕様を実装する。そのため、第四実施形態の再生制御装置1には、予め各コンテンツ配信サービスのアカウント情報を設定しておき、任意のタイミングで各コンテンツ配信サービスへログインする。また、再生制御装置1の出力装置に一覧表示されるコンテンツは、そのアカウント情報で再生可能なコンテンツとなる。
【0049】
仮想ファイル生成部13は、コンテンツ配信サービス4からストリーミング伝送されたオーディオファイルのデジタル著作権管理を解除しながら、仮想ファイルを生成する。この仮想ファイルはデジタル著作権管理で保護されていないため、コンテンツ配信サービスから許諾を受けていないユーザであっても再生可能である。そのため、仮想ファイルの漏洩を防止する仕組みが必要となる。
【0050】
第四実施形態のネットワークオーディオシステムは、仮想ファイルの漏洩防止のために、以下四点の機能を導入する。第一に、再生指示部11が、仮想ファイルを一意に識別するアドレス情報を生成する際、推測され難いランダムな文字列でファイル名の部分を生成する。ファイル名は、例えば、UUID(Universally Unique Identifier)形式で表現される。第二に、仮想ファイルのファイル名は、新たに再生を開始する操作が行われるたびに新たに生成し、以前に使用していたものは破棄する。第三に、データ伝送部12が、予め登録されたネットワーク再生装置2以外からの要求信号は拒否する。第四に、データ伝送部12が、ネットワーク再生装置2がストリーミング再生を行っている間に受け取った要求信号を、送信元がネットワーク再生装置2からのものであっても拒否する。これらの機能により、仮想ファイル生成部13が生成した仮想ファイルは、コンテンツの再生を開始する操作を行ってから再生が終了するまでの間に、予め登録されたネットワーク再生装置2からの1回のストリーミング再生でのみ再生制御装置1の外部に伝送されることになる。したがって、デジタル著作権管理が解除された仮想ファイルが漏洩するリスクを低減することができる。
【0051】
[第五実施形態]
上記の各実施形態では、ネットワーク再生装置2を再生制御装置1から操作することを前提とした形態を説明した。しかしながら、ネットワーク再生装置2は本体に備えられたボタンやダイヤル等の操作部により操作することも可能である。ネットワーク再生装置2の本体上で操作した場合でも、コンテンツの再生を開始するまでの動作を除き、従来のネットワーク再生装置と同様の動作となるが、コンテンツ配信サービス4からライブ配信コンテンツを再生しているときに、ポーズ(一時停止)の操作が行われた場合には、注意が必要である。
【0052】
第四実施形態で示したように、コンテンツ配信サービス4からライブ配信コンテンツを再生している場合、ネットワーク再生装置2が備えるバッファと、再生制御装置1が備えるバッファ部14に、再生前のライブ配信コンテンツが蓄積されている。このとき、ネットワーク再生装置2が備える操作部でポーズの操作が行われると、ライブ配信コンテンツの再生は停止するが、2つのバッファには再生前のライブ配信コンテンツが蓄積されたままとなる。また、ライブ配信コンテンツはリアルタイムに配信されるものであるから、バッファがいっぱいになるとそれ以降のコンテンツはどこにも記憶されない。この状態で、ポーズを解除する操作が行われると、まず、バッファに蓄積されているコンテンツの再生が再開する。上記のとおりバッファ部14は一分程度まで蓄積することが可能であるため、その時間だけポーズ前に再生していたコンテンツの続きが再生される。その後、バッファ部14に蓄積されていたコンテンツの再生が終了すると、その時点でリアルタイムに配信されているコンテンツが再生されることになる。すなわち、ポーズを解除してから一分程度続きのコンテンツが再生されてから、突然現在配信されている箇所へ移動する動作となってしまう。このような動作はユーザからすると想定外の動作であり、違和感がある。
【0053】
このような動作を防止するために、ネットワーク再生装置2が備える操作部でポーズの操作が行われた場合、再生指示部11は、ストリーミング再生を停止することを指示する信号をネットワーク再生装置2へ送信する。これに伴い、バッファ部14に蓄積されていたコンテンツは破棄される。ネットワーク再生装置2は、通常、ストリーミング再生が停止するとバッファをクリアする動作を行う。その後、ネットワーク再生装置2が備える操作部で再生を再開する操作が行われると、停止する前に再生していたライブ配信コンテンツの再生を開始する操作となる。このとき、ネットワーク再生装置2のバッファにも再生制御装置1のバッファ部14にも過去のコンテンツは蓄積されていないため、現在配信されている箇所から再生が開始する。
【0054】
このように構成することにより、第五実施形態の再生制御装置1によれば、ネットワーク再生装置2が備える操作部からポーズの操作が行われた場合であっても、再生再開後に再生箇所が飛ぶような不自然な動作を防止することができる。
【0055】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計の変更等があっても、この発明に含まれることはいうまでもない。実施の形態において説明した各種の処理は、記載の順に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。
【0056】
[プログラム、記録媒体]
上記実施形態で説明した各装置における各種の処理機能をコンピュータによって実現する場合、各装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムを
図7に示すコンピュータの記憶部1020に読み込ませ、制御部1010、入力部1030、出力部1040などに動作させることにより、上記各装置における各種の処理機能がコンピュータ上で実現される。
【0057】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。
【0058】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD-ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0059】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記憶装置に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0060】
また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、本装置を構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。