特許第6963847号(P6963847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6963847
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】検温消毒装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/18 20060101AFI20211028BHJP
   B05B 12/12 20060101ALI20211028BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20211028BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   A61L2/18
   B05B12/12
   B05C11/10
   B05C11/00
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-173196(P2020-173196)
(22)【出願日】2020年10月14日
【審査請求日】2020年10月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506291313
【氏名又は名称】株式会社エーワン
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】福間 二郎
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第111449634(CN,A)
【文献】 中国実用新案第210810999(CN,U)
【文献】 韓国登録特許第10−1751677(KR,B1)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0059354(KR,A)
【文献】 中国特許出願公開第111189559(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第1444022(CN,A)
【文献】 特開2000−060764(JP,A)
【文献】 特開2018−186841(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0234858(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/18
B05B 12/12
B05C 11/10
B05C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と当該第1の部材と対向し当該第1の部材に対して上方に位置する第2の部材とを有し、手を挿入することが想定された第1の開口部と当該第1の開口部の反対側に当該第1の開口部と対向して位置する第2の開口部とを備えた空間を形成する空間形成部と、
前記空間内の前記第2の開口部側に位置し前記第1の開口部から挿入された手が前記空間内で所定の位置に配置されたこと検知する手検知部と、
前記所定位置に配置された手のひらに消毒液を噴射し、前記消毒液の噴射口が前記第1の部材に設けられた消毒液噴射部と、
前記手検知部に対して前記第1の開口部側に配置され、前記所定位置に配置された手の甲の検温を行い、前記第2の部材に設けられた検温部と、
各部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記手検知部が前記所定の位置に手が配置されたことを検知した後に前記検温部で手の甲の検温を行い、その後、前記消毒液噴射部から前記消毒液を噴射する制御を行い、
前記噴射口から前記消毒液を噴射すると前記第2の部材に当たることで人の顔にかからないように構成されてい
検温消毒装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検温部で検温した値が一定条件を満たしている場合に前記消毒液噴射部から前記消毒液を噴射する制御を行う、請求項1記載の検温消毒装置。
【請求項3】
所定の報知を行う報知部をさらに備え、
前記制御部は、前記検温部で検温した値が一定条件を満たしたか否かの情報を前記報知部から報知する制御を行う、請求項1又は請求項2に記載の検温消毒装置。
【請求項4】
前記空間形成部の前記空間に手を挿入する方向を挿入方向として、前記手検知部は、前記検温部および前記消毒液噴射部よりも前記挿入方向の下手側に配置される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の検温消毒装置。
【請求項5】
前記空間形成部は前記消毒液噴射部から噴射され消毒を行ったあとの余剰の消毒液が前記空間形成部の外側へ排出される排出構造を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の検温消毒装置。
【請求項6】
前記空間形成部は筒状に設けられる環状部分を有し、
前記環状部分の一部を前記第1の部材、前記環状部分の他の一部を前記第2の部材として、前記第2の部材が前記第1の部材に対して高位に設けられる、請求項1記載の検温消毒装置。
【請求項7】
前記空間形成部の前記空間に手を挿入する方向を挿入方向として、前記環状部分の筒の延在方向は前記挿入方向の下手側に向けて斜め下方である、請求項6記載の検温消毒装置。
【請求項8】
床に配置可能であって上下方向に延在する支柱と、
前記支柱の内部に設けられ、前記消毒液を収容するタンクと、
前記支柱の内部に設けられ、前記タンクから前記消毒液噴射部へ前記消毒液を供給するポンプと、
をさらに備え、
前記空間形成部は前記支柱の上端に配置される、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の検温消毒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検温とともに手の消毒を行うことができる検温消毒装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防疫や衛生上の観点から、施設・店舗などの建物の入口や入室前には、手の消毒とともに検温を行うことが多い。特許文献1には、手を挿入できる広さを有する収納部に、手を一度挿入する動作により、手を挿入したことを感知するセンサーが手を感知して手に送風して乾燥させるブロワーの作動と、消毒液を噴霧して消毒することをあわせて行えるような手消毒乾燥装置が開示される。
【0003】
また、特許文献2には、箱様筐体が、ユーザの手が消毒のために差し入れられる2つの開口部を持ち、手で接触することなく作動する噴霧ノズルによる消毒液自動噴霧機能を備える自動手洗装置が開示される。この自動手洗装置では、噴霧ノズルからの消毒液の噴射が正しい場所、すなわち、指先、指および手のひら部分に正確に向けられ、開口部が卵型で縦長の楕円形であり、手を消毒中に正しい位置に促すよう実質的に均等に成形された凹部を含む構成になっている。
【0004】
特許文献3には、歩行者の手指に消毒液を供給する手指消毒器であって、上面と前面および後面とがそれぞれ開口して延在し、歩行者の手の通過を許容する雨樋状の本体部と、本体部の開口の近傍に設けられ、開口から本体部の消毒空間に侵入した手指を検出するセンサと、センサより歩行者の進行方向の前方側の本体部の側板部の内面に設けられ、センサの検出に応じて消毒液を噴射する噴射ノズルと、消毒液を噴射ノズルから噴射させるポンプと、を備える手指消毒器が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−031011号公報
【特許文献2】特表2012−501686号公報
【特許文献3】特開2020−025771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
建物や部屋に入ろうとする人に対して検温を行う場合、担当者が手持ちの温度測定器によって1人ずつ体温を測定したり、赤外線画像を取り込むことで人の体温を測定したりすることが行われる。また、手の消毒については、手動ポンプ式では手でポンプを作動させて消毒液を噴霧したり、電動ポンプ式では手をノズルの下にかざすことで消毒液を自動的に噴射したりすることが行われる。このような検温と手の消毒との両方を行う作業については、なるべく人員や時間をかけずに円滑に行うことが望まれる。
【0007】
本発明は、検温および手の消毒の両方を自動的かつ円滑に行うことができる検温消毒装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の部材と当該第1の部材と対向し当該第1の部材に対して上方に位置する第2の部材とを有し、手を挿入することが想定された第1の開口部と当該第1の開口部の反対側に当該第1の開口部と対向して位置する第2の開口部とを備えた空間を形成する空間形成部と、前記空間内の前記第2の開口部側に位置し前記第1の開口部から挿入された手が前記空間内で所定の位置に配置されたこと検知する手検知部と、前記所定位置に配置された手のひらに消毒液を噴射し、前記消毒液の噴射口が前記第1の部材に設けられた消毒液噴射部と、前記手検知部に対して前記第1の開口部側に配置され、前記所定位置に配置された手の甲の検温を行い、前記第2の部材に設けられた検温部と、各部の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記手検知部が前記所定の位置に手が配置されたことを検知した後に前記検温部で手の甲の検温を行い、その後、前記消毒液噴射部から前記消毒液を噴射する制御を行い、前記噴射口から前記消毒液を噴射すると前記第2の部材に当たることで人の顔にかからないように構成されている検温消毒装置である。
【0009】
好適には、前記制御部は、前記検温部で検温した値が一定条件を満たしている場合に前記消毒液噴射部から前記消毒液を噴射する制御を行う。
【0010】
好適には、所定の報知を行う報知部をさらに備え、前記制御部は、前記検温部で検温した値が一定条件を満たしたか否かの情報を前記報知部から報知する制御を行う。
【0011】
好適には、前記空間形成部の前記空間に手を挿入する方向を挿入方向として、前記手検知部は、前記検温部および前記消毒液噴射部よりも前記挿入方向の下手側に配置される。
【0012】
好適には、前記空間形成部は前記消毒液噴射部から噴射され消毒を行ったあとの余剰の消毒液が前記空間形成部の外側へ排出される排出構造を有する。
【0013】
好適には、前記空間形成部は筒状に設けられる環状部分を有し、前記環状部分の一部を前記第1部分、前記環状部分の他の一部を前記第2部分として、前記第2部分が前記第1部分に対して高位に設けられる。
【0014】
好適には、前記空間形成部の前記空間に手を挿入する方向を挿入方向として、前記環状部分の筒の延在方向は前記挿入方向の下手側に向けて斜め下方である。
【0015】
床に配置可能であって上下方向に延在する支柱と、前記支柱の内部に設けられ、前記消毒液を収容するタンクと、前記支柱の内部に設けられ、前記タンクから前記消毒液噴射部へ前記消毒液を供給するポンプと、をさらに備え、前記空間形成部は前記支柱の上端に配置される検温消毒装置。
【0016】
上記検温消毒装置において、手検知部は検温部と一体型であってもよい。これにより、手検知部と検温部とが一つの構成で済むことになる。
【0017】
上記検温消毒装置において、空間形成部は、消毒液噴射部の消毒液の噴射口が設けられる第1部分と、第1部分と対向する第2部分とを有し、第1部分に設けられた噴射口から消毒液を噴射すると第2部分に当たることで人の顔にかからないように構成されることが好ましい。これにより、消毒液は第1部分側から第2部分側に向けて噴射され、空間形成部の外に消毒液が噴射されず、人の顔にかかるこることがなくなる。
【0018】
上記検温消毒装置において、空間形成部は筒状に設けられる環状部分を有し、環状部分の一部を第1部分、環状部分の他の一部を第2部分として、第2部分が第1部分に対して高位に設けられることが好ましい。これにより、消毒液を第1部分側(下側)から第2部分側(上側)に向けて噴射しても空間形成部の外には噴射されることがなくなる。
【0019】
上記検温消毒装置において、空間形成部の空間に手を挿入する方向を挿入方向として、環状部分の筒の延在方向は挿入入方向の下手側に向けて斜め下方であることが好ましい。これにより、噴射後の余剰の消毒液が環状部分から挿入方向の下手側に流れ、内部に溜まることが抑制される。
【0020】
上記検温消毒装置において、床に配置可能であって上下方向に延在する支柱と、支柱の内部に設けられ、消毒液を収容するタンクと、支柱の内部に設けられ、タンクから消毒液噴射部へ消毒液を供給するポンプと、をさらに備え、空間形成部が記支柱の上端に配置される構成であってもよい。これにより、支柱内にタンクおよびポンプを収容して、人が立っている際の手の高さに合わせて検温および消毒の機構を配置しやすくなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、検温および手の消毒の両方を自動的かつ円滑に行うことができる検温消毒装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、第1実施形態に係る検温消毒装置を例示する斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係る検温消毒装置を例示する断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る検温消毒装置の構成を例示するブロック図である。
図4図4は、第1実施形態に係る検温消毒装置の動作を例示するフローチャートである。
図5図5は、第1実施形態に係る検温消毒装置の使用状態の例を示す模式図である。
図6図6は、第2実施形態に係る検温消毒装置を例示する断面図である。
図7図7は、空間形成部の他の例を示す模式図である。
図8図8は、空間形成部の他の例を示す模式図である。
図9図9は、空間形成部の他の例を示す模式図である。
図10図10は、空間形成部の他の例を示す模式図である。
図11図11は、空間形成部の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る検温消毒装置を例示する斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る検温消毒装置を例示する断面図である。
図3は、第1実施形態に係る検温消毒装置の構成を例示するブロック図である。
本実施形態に係る検温消毒装置1は、所定位置に手を挿入することで検温と消毒とを自動的に行う装置である。検温消毒装置1は、手Hを位置させる空間10aを形成する空間形成部10と、手Hを検知する手検知部20と、手Hの検温を行う検温部30と、手Hのひらに消毒液を噴射する消毒液噴射部40と、各部の動作を制御する制御部50と、を備える。
【0025】
空間形成部10は筒状に設けられる環状部分110を有する。環状部分110は手Hを挿入可能な開口を有している。開口のサイズは空間形成部10の空間10aに手Hを挿入しても空間形成部10の内側に接触しない程度(空間10aの中央辺りに手Hを載置しても空間形成部10に接触しない程度)の大きさである。空間形成部10は、大人の手Hは挿入できても、子供の頭は挿入できないサイズや形状になっている。例えば、開口のサイズは横約15センチメートル(cm)以上、約25cm以下程度、好ましくは20cm前後、縦約10cm以上、約20cm以下程度、好ましくは13cm前後である。
【0026】
本実施形態では、環状部分110は長円形状の開口を有する筒型になっており、筒型の延在方向を手Hの挿入方向に合わせて配置されている。本実施形態では、手Hの挿入方向は、挿入方向の下手側が水平に対して僅かに下がる方向となっている。傾斜の角度は、水平に対して約5度以上、45度以下程度、好ましくは15度程度である。これにより、空間形成部10の空間10aに手Hを自然に挿入できるようになる。また、空間形成部10内に噴射された消毒液が空間形成部10内に留まらず、傾斜の下方へ流れやすくなる。
【0027】
環状部分110は、環状部分110の一部である第1部分111と、他の一部である第2部分112とを有する。第1部分111は環状部分110の下側の部分であり、第2部分112は第1部分111と対向する上側(第1部分111に対して高位)の部分である。空間形成部10は、例えば支柱2の上端に配置される。支柱2は床に設置可能であって上下方向に延在する。
【0028】
手検知部20は空間形成部10に設けられ、空間形成部10の空間10aの所定位置に手Hが配置されたことを検知する。手検知部20には、例えば赤外線センサや光学センサが用いられる。ここで、手Hの所定位置とは、空間10a内で手Hを検温および消毒することが可能な位置のことをいう。手検知部20は、例えば環状部分110の第2部分112における手Hの挿入方向の下手側に配置され、手Hの指辺りを検知するように設けられているとよい。これにより、手Hを空間形成部10の空間10aの奥まで挿入したことを検知しやすくなる。
【0029】
検温部30は空間形成部10に設けられ、空間形成部10の空間10aの所定位置に配置された手Hの検温を行う。手検知部20には、例えば赤外線センサが用いられる。検温部30は、例えば環状部分110の第2部分112における手Hの挿入方向の上手側に配置され、少なくとも手Hの甲辺りを検温するように設けられている。
【0030】
ここで、本実施形態では手検知部20および検温部30を別体で設けているが、これらを一体型(1つのセンサによる共用や、1つのセンサモジュールによる共用)にしてもよい。これにより、手検知部と検温部とが一つの構成で済むことになる。
【0031】
消毒液噴射部40は空間形成部10に設けられ、空間形成部10の空間10aの所定位置に配置された手Hのひらに消毒液を噴射する。消毒液噴射部40は、例えば環状部分110の第1部分111に配置される。第1実施形態では消毒液噴射部40の噴射口40aが第1部分111に2つ設けられている。噴射口40aから噴射する消毒液は手Hのひらの広い範囲に吹き付けられる。
【0032】
支柱2には消毒液を収容するタンク80と、タンク80から消毒液噴射部40へ消毒液を供給するポンプ70とが設けられる。支柱2の中にタンク80およびポンプ70が設けられることで、検温消毒装置1の意匠性が高められる。
【0033】
制御部50は、例えば支柱2の内部に設けられる。制御部50は、手検知部20で手Hを検知した後、所定のタイミングで検温部30での手Hの検温と、消毒液噴射部40からの層毒液の噴射とを制御する。例えば、制御部50は、手検知部20で手Hを検知した後、検温部30で手の検温を行い、その後、ポンプ70に指示を与えてタンク80から消毒液噴射部40へ消毒液を供給し、噴射口40aから消毒液を噴射する制御を行う。制御部50によって、手Hの検温を行った後に消毒液を噴射するようにタイミングを制御することで、消毒液の噴射による検温への影響が抑制される。
【0034】
検温消毒装置1には報知部60が設けられていてもよい。報知部60は、例えば空間形成部10に設けられる。報知部60は、光、音、文字(数字)等の表示によって報知を行う。例えば、制御部50は、検温部30で検温した値が一定条件を満たしたか否かの情報を報知部60から報知する制御を行うようにしてもよい。一例として、環状部分110の開口部分を縁取るように報知部60が設けられており、検温の値が一定値(例えば、37.5℃)を越えた場合には報知部60が赤色に光り、一定値以下の場合には報知部60が緑色に光るようになっている。検温の値が一定値を越えた場合には報知部60が赤色に光るとともに警告音を発するようにしてもよい。報知部60は表示装置(液晶表示装置など)を有していてもよく、表示装置に検温の結果(体温の値)を表示してもよい。
【0035】
なお、検温消毒装置1の各種設定については、携帯端末などのアプリケーションソフトウェアによって行うようにしてもよい。例えば、アプリケーションソフトウェアで報知に関する一定条件(温度閾値)や報知の種類(発光色や音の種類など)、電源のON/OFFなどを行い、携帯端末の通信機能を用いて設定を制御部50に送るようにしてもよい。また、制御部50は、携帯端末に検温した値や消毒液の残量などの情報を携帯端末に送信し、アプリケーションソフトウェアで表示するようにしてもよい。アプリケーションソフトウェアに報知部60の機能を持たせてもよい。
【0036】
(検温消毒装置の動作)
図4は、第1実施形態に係る検温消毒装置の動作を例示するフローチャートである。
先ず、ステップS101に示すように、手Hを検知したか否かの判断を行う。手Hの検知は手検知部20によって行われる。空間形成部10における空間10aの所定位置まで手Hを挿入すると、手検知部20によって手Hの検知が行われる。所定位置まで手Hが挿入されないと手検知部20による手Hの検知は行われない。これにより、不要な検温や消毒を行うことが回避される。
【0037】
手検知部20によって手Hを検知した場合、ステップS102に示すように、手Hの検温を行う。検温は、検温部30によって行われる。
【0038】
次に、ステップS103に示すように、制御部50は、検温部30による検温の結果が一定条件を満たすか否かの判断を行う。一定条件を満たさなかった場合(ステップS103でNo)、ステップS104へ進み、報知部60から報知(警告)を行う。例えば、検温の結果が予め設定された温度(例えば、37.5℃)よりも高い場合、報知部60から報知(警告)を行う。これにより、体温が高い人に対する対応を迅速に行うことができる。
【0039】
一定条件を満たしている場合(ステップS103でYes)、ステップS105へ進み、消毒液噴射部40から手Hのひらに向けて消毒液を噴射する。制御部50は、消毒液噴射部40から消毒液を噴射している間、時間を計数する。
【0040】
次に、ステップS106に示すように、制御部50は、消毒液噴射部40から消毒液を噴射している時間が一定時間経過したか否かを判断する。一定時間を経過していなかった場合(ステップS106でNo)、そのまま消毒液噴射部40からの消毒液の噴射を継続する。一定時間を経過した場合(ステップS106でYes)、ステップS107に示すように消毒液の噴射を停止する。その後、ステップS108に示すように報知部60から報知(完了)を行う。
【0041】
次に、ステップS109に示すように、処理終了か否かの判断を行い、終了しない場合(ステップS109でNo)、ステップS101へ戻り、以降の処理を繰り返す。一方、終了する場合(ステップS109でYes)、処理を終了する。
【0042】
このような検温消毒装置1によって、空間形成部10の空間10aに手Hを位置させることで検温部30による手Hの検温と、消毒液噴射部40から手Hのひらに向けた消毒液を噴射とを行うことができる。これにより、空間形成部10の空間10aに手Hを入れる一度の動作で、検温から消毒までの一連の処理を自動的に行うことができるようになる。なわち、空間形成部10の空間10a内で検温および消毒を完結させることができる。
【0043】
また、検温消毒装置1では、空間形成部10の空間10aの所定位置に手Hを入れた状態を手検知部20で検知してから検温および消毒を行うため、手Hが空間10aに十分に挿入されていない状態で検温および消毒を進めてしまうことがない。したがって、手Hの検温位置を安定化させて検温の精度を高めることができる。また、手Hのひらに対して十分な消毒液をかけることができ、消毒の確実性を高めることができる。
【0044】
消毒液を噴射する際、手Hが環状部分110に挿入されており、しかも環状部分110の第2部分112によって上方がカバーされるため、消毒液が空間形成部10の外側に漏れる(吹き出す)ことはない。したがって、消毒液が第1部分111から上方に噴射されても手Hや第2部分112に当たり、人の顔にかかることはない。
【0045】
また、制御部50は、検温部30で検温した値が一定条件を満たしている場合に消毒液噴射部40から消毒液を噴射する制御を行うため、検温で一定条件を満たしていない場合には消毒を行わずに報知(警告)を行うなど、検温結果に対する対応を迅速に進めることができる。
【0046】
また、検温消毒装置1において、消毒液噴射部40は環状部分110の第1部分111に設けられ、下側から上側の手Hのひらに向けて消毒液を噴射する。このため、手Hのひらを下側に向けた自然な姿勢で消毒液が手Hのひらにかけられることになる。一方、手検知部20および検温部30は環状部分110の第2部分112に設けられる。すなわち、手検知部20および検温部30が上側に配置されるため、余剰の消毒液が手検知部20や検温部30に付着しにくく、消毒液による手検知部20および検温部30への影響を抑制することができる。
【0047】
ここで、空間形成部10は消毒液噴射部40から噴射され消毒を行ったあとの余剰の消毒液が空間形成部10の外側へ排出される排出構造を有することが好ましい。排出構造としては、噴射口40aがその周囲に対して高く設けられている構造(例えば、第1部分111を僅かに隆起させた部分に噴射口40aを設ける構造)や、環状部分110の第1部分111が傾斜している構造が挙げられる。これにより、噴射後の余剰の消毒液が空間形成部10の内側に溜まることが抑制される。
【0048】
(使用状態の例)
図5は、第1実施形態に係る検温消毒装置の使用状態の例を示す模式図である。
検温消毒装置1は、支柱2によって空間形成部10の高さが設定される。図5に示す例では、立っている使用者が手Hを自然に空間形成部10の空間10aに挿入することができる高さに設定される。また、空間形成部10の環状部分110は、手Hの挿入方向の下手側に下がるように傾斜している。したがって、腕を上げず、手首をあまり曲げることなく自然に手Hを空間10aに挿入することができる。
【0049】
手Hを空間10aに挿入して手検知部20により手Hが所定位置まで挿入されたことを検知すると、検温部30によって手Hの検温を行い、検温後に連続して消毒液噴射部40から消毒液を手Hのひらに噴射して消毒を行う。これにより、空間形成部10の空間10aに手Hを挿入するだけで、検温から消毒までの一連の処理を行うことができる。
【0050】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る検温消毒装置を例示する断面図である。
第2実施形態に係る検温消毒装置1Bは、複数の検温部30を備えた構成である。複数の検温部30の例として、第1検温部31および第2検温部32は環状部分110の第2部分112に設けられ、第3検温部33は環状部分110の第1部分111に設けられる。第1検温部31および第2検温部32は手Hの甲を検温し、第3検温部33は手Hのひらを検温する。
【0051】
複数の検温部30はいずれも環状部分110の手Hの挿入方向の上手側(手検知部20および消毒液噴射部40よりも挿入方向の上手側)に配置される。これにより、手Hが空間10aの奥まで挿入された状態で手Hの甲およびひらの部分を適切に検温することができる。
【0052】
制御部50は、複数の検温部30による検温の結果から体温とみなす値を推定する。すなわち、手Hの甲を検温した第1検温部31および第2検温部32の値と、手Hのひらを検温した第3検温部33の値とのそれぞれを引数として所定の演算式を用いて体温を推定する。推定した体温の値が一定条件を満たすか否かによって、消毒液の噴出や報知部60による報知を制御する。
【0053】
第2実施形態に係る検温消毒装置1Bによれば、複数の検温部30による手Hの甲およびひらの検温によって高精度に体温を推定することができ、推定した体温に基づき適切な消毒を行うことができる。
例えば、複数の検温部30が検出した体温のうち最も高い体温の値が一定条件を満たすか否かによって、消毒液の噴出や報知部60による報知を制御する。
【0054】
(空間形成部の他の例)
図7から図11は、空間形成部の他の例を示す模式図である。
以下に説明する空間形成部10の例は、上記説明した第1実施形態に係る検温消毒装置1および第2実施形態に係る検温消毒装置1Bのいずれにも適用可能である。
【0055】
図7に示す空間形成部10は、円筒型の環状部分110を有している。使用者は手Hを環状部分110に挿入することで、検温および消毒を行うことができる。図7に示す環状部分110では開口が略円形になることから、手Hを挿入しやすい。また、環状部分110に手Hを入れて消毒する際、手Hの表裏を返しやすいため、手Hのひらや手Hの甲に万遍なく消毒液を吹き付けることができる。
【0056】
図8に示す空間形成部10は、アーチ型の囲い部120と、囲い部120の下に配置される本体部130とを有している。囲い部120は2つの支柱2から延在するように一体に設けられており、意匠性が高められている。本体部130には消毒液噴射部40の噴射口40aが設けられる。また、本体部130には手形を模したガイドマークMが設けられている。使用者は手HをこのガイドマークMに合わせて配置することで、検温および消毒を行うことができる。本体部130が傾斜していることで、噴射された消毒液が跳ね返って本体部130の表面に付着しても流れ落ちることになる。
【0057】
図9に示す空間形成部10は、屋根部140と、屋根部140の下に配置される本体部130とを有している。本体部130は支柱2の上方に支柱2と一体に設けられる。本体部130には消毒液噴射部40の噴射口40aが設けられる。使用者は手Hを本体部130の上に配置することで、検温および消毒を行うことができる。本体部130が傾斜していることで、噴射された消毒液が跳ね返って本体部130の表面に付着しても流れ落ちることになる。
【0058】
図10に示す空間形成部10は、屋根部150と、屋根部150の下に配置される本体部130とを有している。本体部130は支柱2の上方に支柱2と一体に設けられる。本体部130には消毒液噴射部40の噴射口40aが設けられる。使用者は手Hを本体部130の上に配置することで、検温および消毒を行うことができる。本体部130が傾斜していることで、噴射された消毒液が跳ね返って本体部130の表面に付着しても流れ落ちることになる。
【0059】
図11に示す空間形成部10は、U字型のガイド部160を有している。U字型のガイド部160では前後方向および上方が開口している。ガイド部160の一方側の立設部161には消毒液噴射部40の噴射口40aが設けられ、他方側の立設部162には手検知部20および検温部30が設けられる。使用者は手HをU字型のガイド部160に挿入することで、検温および消毒を行うことができる。ガイド部160におけるU字型の底の部分に傾斜を設けてもよい。これにより、噴射された消毒液が跳ね返ってガイド部160の底に付着しても流れ落ちることになる。U字型のガイド部160では前後および上方に開口が設けられるため、使用者が手Hを入れやすいとともに、検温および消毒が終了した後に手Hを抜きやすい。
【0060】
以上説明したように、実施形態に係る検温消毒装置1によれば、検温および手の消毒の両方を自動的かつ円滑に行うことができる可能となる。
【0061】
なお、上記に本実施形態およびその適用例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施形態またはその適用例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0062】
1…検温消毒装置,1B…検温消毒装置,2…支柱,10…空間形成部,10a…空間,20…手検知部,30…検温部,31…第1検温部,32…第2検温部,33…第3検温部,40…消毒液噴射部,40a…噴射口,50…制御部,60…報知部,70…ポンプ,80…タンク,110…環状部分,111…第1部分,112…第2部分,120…囲い部,130…本体部,140…屋根部,150…屋根部,160…ガイド部,161…立設部,162…立設部,H…手,M…ガイドマーク
【要約】
【課題】検温および手の消毒の両方を自動的かつ円滑に行うことができる検温消毒装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様は、手Hを位置させる空間10aを形成する空間形成部10と、空間形成部10の空間10aの所定位置に手Hが配置されたことを検知する手検知部20と、所定位置に配置された手Hの検温を行う検温部30と、所定位置に配置された手Hのひらに消毒液を噴射する消毒液噴射部40と、各部の動作を制御する制御部50と、を備え、手検知部20と、検温部30と、消毒液噴射部40とが空間形成部10に設けられている、検温消毒装置1である。
【選択図】図1
図1
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図11