特許第6963852号(P6963852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6963852遠心ポンプ羽根車の円柱羽根の吸入側曲面の加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963852
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】遠心ポンプ羽根車の円柱羽根の吸入側曲面の加工方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/28 20060101AFI20211028BHJP
【FI】
   F04D29/28 R
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2020-569908(P2020-569908)
(86)(22)【出願日】2020年5月18日
(65)【公表番号】特表2021-521381(P2021-521381A)
(43)【公表日】2021年8月26日
(86)【国際出願番号】CN2020090769
(87)【国際公開番号】WO2020238669
(87)【国際公開日】20201203
【審査請求日】2020年12月14日
(31)【優先権主張番号】201910455788.8
(32)【優先日】2019年5月29日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517405840
【氏名又は名称】江▲蘇▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 啓華
(72)【発明者】
【氏名】康 順
(72)【発明者】
【氏名】張 為棟
(72)【発明者】
【氏名】▲イェン▼ 召旭
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0284812(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0319822(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面から視たときに、羽根の両面の各々が連続して曲面を形成している仮の円柱羽根の羽根車の円中心を中心とし、直径をD1及びD2として、前記直径がD1である円は改良された羽根上部での吸入口に位置し、前記直径がD2である円は改良された羽根底部の吸入口に位置するように円を描画する第1工程、
前記仮の円柱羽根上部での凹面側曲線上における円中心からの間隔がS1であるポイントP1を決定し、羽根底部の凹面側曲線上における円中心からの間隔がS2であるポイントP2を決定する第2工程、
前記仮の円柱羽根上部での凹面側曲線をポイントP1の接線方向に向かって延伸して、円弧R1を描画し、そして延伸曲線と凸面側曲線が接する始点R3を描画する第3工程、
前記仮の円柱羽根底部での凹面側曲線をポイントP2の接線方向に向かって延伸して、円弧R2を描画し、そして延伸曲線と凸面側曲線が接する終点R4を描画する第4工程、及び
始点R3から終点R4まで、円弧面で始点R3から終点R4まで曲率の異なる円弧面を連続的に接続することによりスムーズに渡り、終点R4の近くの円弧の半径を始点R3の近くの円弧の半径より大きくし、底部から上部までの抜き勾配を形成する第5工程
を含む、遠心ポンプ羽根車の円柱羽根の吸入側曲面の加工方法。
【請求項2】
間隔S1=(1.11.3)×(D1)/2であることを特徴とする請求項1に記載の遠心ポンプ羽根車の円柱羽根の吸入側曲面の加工方法。
【請求項3】
間隔S2=(1.11.3)×(D2)/2であることを特徴とする請求項1に記載の遠心ポンプ羽根車の円柱羽根の吸入側曲面の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心ポンプ羽根車の技術分野、特に遠心ポンプ羽根車の円柱羽根の吸入側曲面の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、円柱羽根遠心ポンプのデザインにおいて、羽根の吸入口のデザインプロセスは、ほとんど注目されていない。円柱形の羽根のデザインでは、羽根の上部曲線と底部曲線が重なっており、実際のデザインの中で、1つの凹面側曲線と1つの凸面側曲線を描画すればよく、例えば『現代のポンプの技術マニュアル』、第一版、1995年、第229頁を参照する。あるいは、1つの中間曲線のみを描画し、曲線に沿う羽根の厚さを設定すればよい。
【0003】
学術論文『いくつかの円柱形の羽根に対する解析と検討』、『排灌機械』、2000には、アルキメデス・スパイラル、円弧線、対数スパイラルなどの描画法を検討しており、いくつかの曲線を使用して接続などができることが開示されている。
【0004】
学術論文『比較回転数が低いポンプの円柱形羽根の型線に対する検討』、『長江大学学報(自然科学版)』、2009には、三次多項式による羽根曲線の描画法が開示されている。
【0005】
特許番号が2015105271786である中国特許『吸入口の取付角度が制御可能な円柱形の羽根のデザイン方法』では、該方法は、渦巻線にデザインされた円柱形の羽根曲線を使用し、吸入角度を設定して曲線を描画できる。
明らかに、前記の方法により描画された羽根の上部と底部は同一の曲線である。
【0006】
しかしながら、羽根上部と羽根底部とは、流入の条件が違い、上部での流入角度が底部での流入角度よりもはるかに小さい。通常、上部曲線と底部曲線は、重ねない。これは、ほとんどの遠心ポンプ羽根車が二重曲率の羽根を用いる理由である(二重曲率とは、羽根の上部曲線と底部曲線が異なる曲線を使用することを指し、ねじれ羽根ともいう)。しかし、二重曲率の羽根は、空間が歪んでいるため、実際の製造が困難となり、モデリングや鋳造のコストも増加する。これも、比較回転数が小さいポンプの一部及びいくつかのコストが低い小型ポンプが円柱羽根を用いる理由である。但し、円柱羽根を用いれば、羽根の吸入側が流入角度に対する不適応性を回避することが困難であり、効率はねじれ羽根の羽根車よりも数パーセント低くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記した技術問題を解決するために、本発明は、遠心ポンプ羽根車の円柱羽根の吸入側曲面の加工方法を提供し、前記の曲線を接線方向に沿って延伸することにより、羽根の角度が低減する。改造された上部曲線と底部曲線の間に構成される吸入側曲面は、ねじれ形状を有するが、まだ円柱羽根に保たれ、金型及び鋳造又は射出成型の生産に影響を及ばない。また、本発明の方法が用いられる羽根の吸入側は、より流入方位角に適して、羽根車の機能を改良できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の本発明の目的を実現するために、本発明は、以下の態様を提供する。
【0009】
本発明は、遠心ポンプ羽根車の円柱羽根の吸入側曲面の加工方法を提供し、該加工方法は、
従来の円柱羽根の羽根車の円中心を中心とし、直径をD1及びD2として、前記直径がD1である円は改良された羽根上部での吸入口に位置し、前記直径がD2である円は改良された羽根底部の吸入口に位置するように円を描画する第1工程、
従来の円柱羽根上部での凹面側曲線上における円中心からの間隔がS1であるポイントP1を決定し、羽根底部の凹面側曲線上における円中心からの間隔がS2であるポイントP2を決定する第2工程、
従来の円柱羽根上部での凹面側曲線をポイントP1の接線方向に沿って延伸して、円弧R1を描画し、そして延伸曲線と凸面側曲線が接する円弧R3を描画する第3工程、
従来の円柱羽根底部での凹面側曲線をポイントP2の接線方向に沿って延伸して、円弧R2を描画し、そして延伸曲線と凸面側曲線が接する円弧R4を描画する第4工程、及び
円弧R3から円弧R4まで、円弧面でR3からR4までスムーズに渡り、円弧R4の半径を円弧R3の半径より大きくし、底部から上部までの抜き勾配を形成する第5工程
を含む。
【0010】
好ましくは、間隔S1=(1.1−1.3)×(D1)/2である。
【0011】
好ましくは、間隔S2=(1.1−1.3)×(D2)/2である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、従来技術に比べて、以下の技術効果を達成している。
本発明における遠心ポンプ羽根車の円柱羽根の吸入側曲面の加工方法では、羽根の上部での吸入側角度がより接線方向に偏向し、上部での羽根の吸入角度が低下する。上部の円弧R1と底部の円弧R2との間には、ねじれた面が形成される。該ねじれ特性は、羽根の吸入側が流入される流れに対する適応性の改良に寄与する。そして、新たな構造が採用される吸入側の羽根は、まだ円柱形で、型からの抜きが便利である。
【0013】
以下、本発明の実施例又は従来技術の技術態様をより明確に説明するために、実施例に用いられる図面を簡単に説明する。明らかに、以下の記載における図面は、単に本願の実施例の一部に過ぎず、当業者は、創造的な労働を付与しない前提で、これらの図面に基づいて他の図面が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来の円柱羽根の羽根車の構造模式図である。
図2】従来の円柱羽根の羽根車の3次元構造模式図である。
図3】本発明の遠心ポンプ羽根車の円柱羽根の吸入側曲面の加工方法が用いられる吸入側曲面の加工の構造模式図である。
図4】本発明の遠心ポンプ羽根車の円柱羽根の吸入側曲面の加工方法が用いられる吸入側曲面の加工の拡大構造模式図である。
図5】本発明の遠心ポンプ羽根車の円柱羽根の吸入側曲面の加工方法における羽根車の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例の図面に基づき、本発明の実施例における技術態様を明確的且つ完全に記載する。明らかに、記載する実施例は、本発明の実施例の一部であり、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を付与しないことを前提として得られる全てのほかの実施例は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【0016】
実施例1:
図1に示すように、本実施例は、遠心ポンプ羽根車の円柱羽根の吸入側曲面の加工方法を提供し、該加工方法は、
従来の円柱羽根の羽根車の円中心を中心とし、直径をD1及びD2として、前記直径がD1である円は改良された羽根上部での吸入口に位置し、前記直径がD2である円は改良された羽根底部の吸入口に位置するように円を描画する第1工程、
従来の円柱羽根上部での凹面側曲線上における円中心からの間隔がS1であるポイントP1を決定し、前記間隔S1=(1.1−1.3)×(D1)/2であり、羽根底部の凹面側曲線上における円中心からの間隔がS2であるポイントP2を決定し、前記間隔S2=(1.1−1.3)×(D2)/2である第2工程、
従来の円柱羽根上部での凹面側曲線をポイントP1の接線方向に沿って延伸して、円弧R1を描画し、そして延伸曲線と凸面側曲線が接する円弧R3を描画する第3工程、
従来の円柱羽根底部での凹面側曲線をポイントP2の接線方向に沿って延伸して、円弧R2を描画し、そして延伸曲線と凸面側曲線が接する円弧R4を描画する第4工程、及び
円弧R3から円弧R4まで、円弧面でR3からR4までスムーズに渡り、円弧R4の半径を円弧R3の半径より大きくし、底部から上部までの抜き勾配を形成する第5工程
を含む。
【0017】
本明細書では、具体例を用いて本発明の原理および実施態様が説明されており、前記した実施例に対する説明は、単に、本発明の方法および中核となる思想の理解を助けるためのものにすぎない。加えて、当業者は、本発明の思想に従えば、具体的な実施態様および適用範囲に対して変更を加えることもできる。したがって、本明細書の内容を本発明に対する限定として解釈してはならない。
【符号の説明】
【0018】
1 羽根上部での凸面側と凹面側の曲線
2 羽根底部での凸面側と凹面側の曲線
3 羽根の吸入側
4 羽根上部での凸面側の曲線
5 羽根上部での凹面側の曲線
6 ねじれた面
7 羽根底部での凹面側の曲線
8 羽根底部での凸面側の曲線
図1
図2
図3
図4
図5