(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6963856
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】ファインバブルによる歯洗浄装置
(51)【国際特許分類】
A61C 17/02 20060101AFI20211028BHJP
【FI】
A61C17/02 G
A61C17/02 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2021-22148(P2021-22148)
(22)【出願日】2021年2月15日
【審査請求日】2021年2月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521068736
【氏名又は名称】原 康雄
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】特許業務法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 康雄
【審査官】
胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2018−047019(JP,A)
【文献】
国際公開第96/010372(WO,A1)
【文献】
国際公開第2016/013256(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄対象者の口中に挿入されて使用され、前記口中の歯を洗浄する、ファインバブルによる歯洗浄装置であって、
棒状又は筒状に構成され操作者により把持される把持部と、
前記把持部の内部に設けられ、給水源から供給された水を導く導水路と、
前記把持部の先端に設けられたヘッド部と、
前記ヘッド部の内部に設けられ、前記導水路により導かれた水をミスト化するミスト化機構と、
前記ヘッド部のうち外部露出面に設けられ、前記ミスト化機構により生成されたミストを噴出させる複数の第1ミスト噴出口と、
を有し、
前記導水路は、
1本の共通の分水路と、前記分水路から分岐する複数の分岐路と、を含み、
前記ヘッド部は、
前記複数の分岐路にそれぞれ対応するように前記外部露出面側に開放する複数の凹部が形成されており、各凹部の底面には、対応する前記分岐路と連通する前記第1ミスト噴出口が形成されており、
各分岐路のうち、前記分水路からの分岐点と前記凹部の底部との間に、前記ミスト化機構が設けられており、
前記ミスト化機構は、
略円柱状を呈し、前記分岐路の内部に埋設され、表面に螺旋状の溝を形成して当該分岐路に導入された水をミスト化し前記第1ミスト噴出口からミストを噴出させるガイド筒体である
ことを特徴とする歯洗浄装置。
【請求項2】
前記ヘッド部の先端には、外部露出面の一面側に向けて屈曲した屈曲部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のファインバブルによる歯洗浄装置。
【請求項3】
前記屈曲部には、前記ミストを噴出する第2ミスト噴出口が形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のファインバブルによる歯洗浄装置。
【請求項4】
前記ヘッド部の先端が、半円状若しくは面取り状に形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のファインバブルによる歯洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯洗浄装置に係わり、特に、歯に付着した遺物等を取り除く歯ブラシに代わる、ファインバブルによる歯洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯茎に好ましい刺激を与えることを目的として、洗浄液を貯留するタンクと、前記洗浄液を噴出する噴出口を備える洗浄ユニットと、前記タンクと前記噴出口とを連通する洗浄通路と、前記タンクに貯留される前記洗浄液を負圧により吸引し、吸引した前記洗浄液を前記噴出口に噴出するポンプと、前記洗浄通路に空気を供給する吸気通路とを備え、前記ポンプが発生させる負圧により前記洗浄通路に空気が吸引されるように、前記洗浄通路のうちの前記ポンプよりも下流側の部分である下流洗浄通路に前記吸気通路が接続される口腔洗浄装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に開示の口腔洗浄装置は、先端が先細りな一つのノズル状の噴出口を備える。噴出口から噴出された洗浄液が歯茎に供給される場合には、その洗浄液が好ましい刺激を歯茎に与える。これにより、気泡を含まない洗浄液が歯茎に供給され、心地よい感覚、歯茎がより強くマッサージされる感覚、または、その両方の感覚をユーザーが受けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−217174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した洗浄装置にあっては、歯茎を刺激するために先端が先細りな一つのノズル状の噴出口を備えるものであり、ミスト化された霧状洗浄水を用いて歯を洗浄するものではなく、歯ブラシに代わって歯を洗浄することはできなかった。
【0006】
本発明の目的は、ミスト化された霧状洗浄水を用いて歯を洗浄することができる、ファインバブルによる歯洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のファインバブルによる歯洗浄装置は、洗浄対象者の口中に挿入されて使用され、前記口中の歯を洗浄する歯洗浄装置であって、棒状又は筒状に構成され操作者により把持される把持部と、前記把持部の内部に設けられ、給水源から供給された水を導く導水路と、前記把持部の先端に設けられたヘッド部と、前記ヘッド部の内部に設けられ、前記導水路により導かれた水をミスト化するミスト化機構と、前記ヘッド部のうち外部露出面に設けられ、前記ミスト化機構により生成されたミストを噴出させる複数の
第1ミスト噴出口と、を有
し、前記導水路は、1本の共通の分水路と、前記分水路から分岐する複数の分岐路と、を含み、前記ヘッド部は、前記複数の分岐路にそれぞれ対応するように前記外部露出面側に開放する複数の凹部が形成されており、各凹部の底面には、対応する前記分岐路と連通する前記第1ミスト噴出口が形成されており、各分岐路のうち、前記分水路からの分岐点と前記凹部の底部との間に、前記ミスト化機構が設けられており、前記ミスト化機構は、略円柱状を呈し、前記分岐路の内部に埋設され、表面に螺旋状の溝を形成して当該分岐路に導入された水をミスト化し前記第1ミスト噴出口からミストを噴出させるガイド筒体であるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ミスト化された霧状洗浄水を用いて歯を洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るファインバブルによる歯洗浄装置を示し、(A)は要部の拡大縦断面図、(B)は要部の側面図、(C)は要部の正面図、である。
【
図2】本発明に係るファインバブルによる歯洗浄装置の使用例を示し、(A)は使用状態の一例を模式的に示す斜視図、(B)は使用状態の一例を模式的に示す側面図、である。
【
図3】本発明に係るファインバブルによる歯洗浄装置の変形例を示し、(A)はヘッド部を球状に構成した要部の側面図、(B)はヘッド部を球状に構成した要部の正面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の一実施形態に係る、ファインバブルによる歯洗浄装置について図面を参照して説明する。
【0011】
歯洗浄装置10は、棒状又は筒状に構成されて利用者に把持されるとともに内部に後述する導水路23を設けた導水管16と、導水管16から一体に延出されたヘッド部17と、を備えている。
【0012】
図1において、歯洗浄装置10は、例えば、水道管や貯留タンク等の給水源に接続された給水ポンプ(図示せず)を介して洗浄水が供給され、周知のシャワーヘッド等と同様に給水ホース(図示せず)を介して洗浄水が供給させるものである。したがって、給水ポンプ及び給水ホースの構成等については、ここではその図示並びに説明は省略する。
【0013】
図1において、歯洗浄装置10は、例えば、表裏別部材の略半割の合わせ構造からなっており、裏面側(背面側)のベース部材21と、表面面(正面側)のカバー部材22と、給水源から供給された洗浄水を導く導水路23と、を有する。
【0014】
この導水路23は、その下流端付近に、上流側よりも管路(以下、「流路断面積」とも称する。)を狭くした狭水路23aが形成されている。したがって、導水路23は、狭水路23aにより下流に向かうにしたがって流路断面積が徐々に小さくなっている。
【0015】
導水路23は、その下流端に、狭水路23aの最小流路断面積部分からもとの導水路23の流路断面積へと徐々に大きくなったうえで、最大流路断面積となる貯留空間部23bが形成されている。
【0016】
ヘッド部17は、扁平な立体形状を呈しているとともに、その先端部分には表面側に向けて屈曲した屈曲部17aを一体に備えている。ヘッド部17は、導水路23の貯留空間部23bと連通する分水路23cが形成されている。
【0017】
ヘッド部17は、カバー部材22の肉厚がベース部材21の肉厚よりも厚肉とされ、
図1(C)に示すように、分水路23cの中途部が上流側から下流側(先端側)に向かって4か所及び左右幅方向に各2箇所の計8か所が分岐路23dによって分岐されている。
【0018】
ヘッド部17は、分岐路23dと対応するようにカバー部材22の表面(外部露出面)側に開放する凹部22aが形成されている。この凹部22aの底面には、分岐路23dと連通するミスト噴出口22bが形成されている。
【0019】
分岐路23dの内部には、略円柱状を呈しており、表面に螺旋状の溝(図示せず、以下、「螺旋溝」とも称する)を形成して分岐路23dに導入された水をミスト化してミスト噴出口22bからミストWを噴出させる複数のミスト化機構としてのガイド筒体25が埋設されている。なお、螺旋溝は、所定の深さ及び角度で雌ネジ状に形成されてもので、分岐路23dの内壁面との間に水の通過を許容しつつその水をミスト化するものである。
【0020】
図2に示すように、歯洗浄装置10は、被施術者の口中Mにヘッド部17が挿入されて使用され、口中Mの歯茎Gから生える歯Tを洗浄するものである。そして、上述したように、棒状又は筒状に構成され操作者により把持される把持部15と、把持部15の内部に設けられ、給水源から供給された水を導く導水路23と、把持部15の先端に設けられたヘッド部17と、ヘッド部17の内部に設けられ、導水路23により導かれた水をミスト化するミスト化機構としてのガイド筒体25と、ヘッド部17のうち外部露出面の一面(以下、単に「表面」とも称する)側に設けられ、ガイド筒体25により生成されたミストWを噴出させる複数のミスト噴出口22bと、を有する。
【0021】
この際、ヘッド部17の先端部分には、約40°〜50°、好ましくは約45°に屈曲した屈曲部17aを一体に形成しているため、歯Tの裏側の洗浄を容易に行うことができる。
【0022】
次に、歯洗浄装置10によって洗浄水をミスト化する作用効果を説明する。
【0023】
上述したように、狭水路23aの流路断面積は導水路23の流路断面積よりも小さくなっているため、狭水路23aを通る際に水の流速は速くなり、圧力は低下する。これにより、キャビテーションが起こり、水中にファインバブル(最終的に後述するミストの粒子中に含まれ得る程度の微細な気泡)が発生する。
【0024】
そして、狭水路23aを通過した水は貯留空間部23bに流入する。貯留空間部23bに流入した水は分水路23cに排出される。分水路23cの流路面積は貯留空間部23bの流路面積よりも小さいため、分水路23cを通過する際にも、水の流速は速くなり圧力は低下する。これにより、キャビテーションが起こり、水中にファインバブルが発生する。
【0025】
分岐路23dの内部にはガイド筒体25が収容されているため、分岐路23dに流入した水はガイド筒体25の螺旋溝によって旋回されて水の流速は速くなり圧力は低下する。これにより、キャビテーションが起こり、水中にファインバブルが発生する。
【0026】
このように、歯洗浄装置10では、ミストWをミスト噴出口22bから噴出させる場合に、その過程で水を三つのファインバブル発生部(狭水路23a、分水路23c、ガイド筒体25の螺旋溝)を通過させるため、ミストWの粒子中にファインバブルを含ませることができる。
【0027】
これにより、使用者の歯は、霧状のミストWの噴出圧力と、ミストWを構成する粒子が弾ける圧力と、の相乗圧力によって効率よく洗浄される。
【0028】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明した。しかしながら、本発明の技術的思想の範囲は、ここで説明した実施の形態に限定されないことは言うまでもない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想の範囲内において、様々な変更や修正、組み合わせなどを行うことに想到できることは明らかである。したがって、これらの変更や修正、組み合わせなどの後の技術も、当然に本発明の技術的思想の範囲に属するものである。
【0029】
具体的には、上記実施の形態では、ヘッド部17の先端を半円状に構成したものを開示したが、これに限定されず、形状等は任意である。
【0030】
なお、
図1(B)及び
図1(C)に示すように、ヘッド部17の先端を半円状に構成した場合には、口中Mにヘッド部17を挿入するときに鋭利な角部分が存在しないため、引っ掛かり等を抑制することができ、口中Mの怪我や損傷を防止することができる。
【0031】
また、ヘッド部17の先端には表面側に向けて屈曲した屈曲部17aが形成され、その屈曲部17aにもミスト噴出口22bが設けられているため、歯Tの裏側にミストWを当てることができる。
【0032】
また、
図3(A)及び
図3(B)に示すように、ヘッド部57を球状に構成した場合には、ミストWを最大限に拡散することができる。この際、球体の直径は1cm前後、図示を略すミスト噴出口は全体の3カ所〜6カ所程度からミストを噴射する。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明したように、本発明に係る歯洗浄装置は、ミスト化された霧状洗浄水(ミストW)を用いて歯を洗浄することができるという効果を有するため、例えば、フラスコや試験管などの理科実験道具、哺乳瓶・ペットボトル・水筒などの柄付ブラシで洗浄される筒状の飲用容器、花瓶、運動靴や上履き(体育館履き)等の内側、尿瓶などの樹脂やガラスからなる再利用可能な医療用器具、といった各種物品に加え、口中(舌で喉を塞ぐ等の利用形態を含む)や手洗い(10本の指先を同時に洗浄する形態を含む)といった人体の特定部位等の洗浄装置全般に有用である。
【符号の説明】
【0034】
10 歯洗浄装置
16 導水管
17 ヘッド部
17a 屈曲部
21 ベース部材
22 カバー部材
22a 凹部
22b ミスト噴出口
23 導水路
23a 狭水路
23b 貯留空間部
23c 分水路
23d 分岐路
25 ガイド筒体(ミスト化機構)
57 ヘッド部
G 歯茎
J ジェット水流
M 口中
T 歯
W ミスト
【要約】
【課題】ミスト化された霧状洗浄水を用いて歯を洗浄することができるファインバブルによる歯洗浄装置を提供する。
【解決手段】本発明は、洗浄対象者の口中に挿入されて使用され、口中の歯を洗浄する歯洗浄装置10であって、棒状又は筒状に構成され操作者により把持される把持部15と、把持部15の内部に設けられ、給水源から供給された水を導く導水路23と、把持部15の先端に設けられたヘッド部17と、ヘッド部17の内部に設けられ、導水路23により導かれた水をミスト化するガイド筒体25と、ヘッド部17のうち外部露出面に設けられ、ガイド筒体25により生成されたミストを噴出させる複数のミスト噴出口22bと、を有する。
【選択図】
図1