特許第6963881号(P6963881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963881
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】音声認識監視装置
(51)【国際特許分類】
   G10L 15/10 20060101AFI20211028BHJP
   G10L 17/00 20130101ALI20211028BHJP
   G10L 15/00 20130101ALI20211028BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   G10L15/10 200W
   G10L17/00 200Z
   G10L15/00 200R
   G05B23/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-107538(P2018-107538)
(22)【出願日】2018年6月5日
(65)【公開番号】特開2019-211617(P2019-211617A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2020年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】林 将大
【審査官】 中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−267252(JP,A)
【文献】 特開昭59−083211(JP,A)
【文献】 特開2007−027167(JP,A)
【文献】 特開2003−195939(JP,A)
【文献】 特開2000−242367(JP,A)
【文献】 B. D. Subudhi et al.,Embedded design of a remote voice control and security system,2008 IEEE Region 10 Conference,2008年11月,p.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 15/00−17/26
G05B 23/00−23/02
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントにおけるプロセスラインの少なくとも一部の操業を音声で停止させる音声認識監視装置であって、
音声を入力して音声データを生成する第1集音手段と、
あらかじめ設定された話者の音声のデータを登録データとして記憶する記憶装置と、
前記音声データが前記登録データに対応するものか否かを判断し、前記音声データが前記登録データに対応するものである場合には前記音声データを処理し、前記音声データが前記登録データに対応するものでない場合には前記音声データの処理を中止する判断装置と、
を備え、
前記判断装置は、前記音声データを処理するときには前記音声データが停止に関するワードを含むか否かを判断し、前記音声データが停止に関するワードを含むときにはプラントの操業を制御するプロセス制御装置に対する停止指令を含む制御信号を生成し、
前記第1集音手段は、動作および遮断を設定するスイッチを含み、
前記記憶装置は、前記判断装置が実行できる処理に応じて設定された複数のオペレータ区分のそれぞれに対応づけられた前記登録データを含み、
前記判断装置は、前記音声データが前記複数のオペレータ区分の1つに対応するときには、前記スイッチの動作および停止にかかわらず、前記音声データの処理を継続し、
前記音声データが前記複数のオペレータ区分の他の1つに対応するときには、前記スイッチの動作が選択されたときに前記音声データの処理を継続し、前記スイッチの遮断が選択されたときに前記音声データの処理を中止する音声認識監視装置。
【請求項2】
前記プロセスラインは、前記プロセスラインの区域または位置を表す複数のセクションを含み、
前記判断装置は、
前記音声データの処理が継続された場合には、
前記音声データが前記複数のセクションのうち少なくとも1つに関するワードを含むか否かを判断し、
前記音声データが前記複数のセクションのうち少なくとも1つに関するワードを含むときには、そのセクションに対する停止指令を含む制御信号を生成し、
前記音声データが前記複数のセクションのいずれに関するワードを含まないときには、前記複数のセクションのすべてに対する停止指令を含む制御信号を生成する請求項1記載の音声認識監視装置。
【請求項3】
前記プロセスラインは、前記プロセスラインの区域または位置を表す複数のセクションを含み、
前記判断装置は、
前記音声データの処理が継続された場合には、
前記音声データが前記複数のセクションのうち少なくとも1つに関するワードを含むか否かを判断し、
前記音声データが前記複数のセクションのうち少なくとも1つに関するワードを含むときには、そのセクションに対する停止指令を含む制御信号を生成し、
前記音声データが前記複数のセクションのいずれに関するワードを含まないときには、前記プロセス制御装置の動作を継続させる請求項1記載の音声認識監視装置。
【請求項4】
前記スイッチは、携帯可能である請求項記載の音声認識監視装置。
【請求項5】
無線によって前記判断装置に接続し得る第2集音手段をさらに備えた請求項1〜のいずれか1つに記載の音声認識監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラントの各プロセスラインを監視し、音声によってライン停止を可能とする音声認識監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄鋼や非鉄金属、製紙、石油化学、医薬品等のプラントのプロセスラインは、HMIベースの監視装置によって操業状態を監視されている。プロセスラインに何らかの異常が発生し、緊急にプロセスラインを停止する場合には、監視装置のオペレータが操作盤に設置されているJOG操作スイッチや停止スイッチ等の操作用品を操作する必要がある。
【0003】
オペレータが何らかの事情で操作盤から離れている際に、緊急でプロセスラインの停止が必要になった場合には、操作盤の前に戻り操作用品を操作してラインを停止させるまでに、タイムラグが発生してしまう。また、現場においては、オペレータが機側操作盤から離れた場所にいる場合も多いため、操作盤までの移動時間だけ停止操作が遅れ、緊急に停止したい場合でも停止できないケースが発生するおそれがある。
【0004】
そこで、音声認識技術を用いることによって、オペレータが操作盤から離れた位置にいる場合であっても、プロセスラインの停止操作を行うことが望まれている。
【0005】
一方で、オペレータの習熟度が低く、判断や操作に不慣れな場合等に、誤ってプロセスラインを停止させてしまうと、プロセスラインの再稼働に長時間の調整等の工数を要し、ラインダウン期間に多大な費用が発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−73125号公報
【特許文献2】特開2002−267252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施形態は、誤停止を回避しつつ、プロセスラインを迅速かつ確実に緊急停止する音声認識監視装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る音声認識監視装置は、プラントにおけるプロセスラインの少なくとも一部の操業を音声で停止させる。この音声認識監視装置は、音声を入力して音声データを生成する第1集音手段と、あらかじめ設定された話者の音声のデータを登録データとして記憶する記憶装置と、前記音声データが前記登録データに対応するものか否かを判断し、前記音声データが前記登録データに対応するものである場合には前記音声データを処理し、前記音声データが前記登録データに対応するものでない場合には前記音声データの処理を中止する判断装置と、を備える。前記判断装置は、前記音声データを処理するときには前記音声データが停止に関するワードを含むか否かを判断し、前記音声データが停止に関するワードを含むときにはプラントの操業を制御するプロセス制御装置に対する停止指令を含む制御信号を生成する。前記第1集音手段は、動作および遮断を設定するスイッチを含む。前記記憶装置は、前記判断装置が実行できる処理に応じて設定された複数のオペレータ区分のそれぞれに対応づけられた前記登録データを含む。前記判断装置は、前記音声データが前記複数のオペレータ区分の1つに対応するときには、前記スイッチの動作および停止にかかわらず、前記音声データの処理を継続し、前記音声データが前記複数のオペレータ区分の他の1つに対応するときには、前記スイッチの動作が選択されたときに前記音声データの処理を継続し、前記スイッチの遮断が選択されたときに前記音声データの処理を中止する。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態では、誤停止を回避しつつ、プロセスラインを迅速かつ確実に緊急停止する音声認識監視装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)は、実施形態に係る音声認識監視装置を例示する模式的な平面図である。図1(b)は、実施形態に係る音声認識監視装置を例示する模式的な正面図である。
図2】実施形態の音声認識監視装置の動作を説明するフローチャートの例である。
図3図3(a)および図3(b)は、実施形態の変形例の音声認識監視装置の一部を例示する模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0012】
図1(a)に示すように、実施形態の音声認識監視装置4は、操作室1内に設置される。操作室1には、操作盤2が設置されており、音声認識監視装置4は、操作盤2に隣接して配置され、操作盤2とともに用いられる。
【0013】
操作室1には、ドア1aが設けられており、オペレータやその他のたとえば入室が許可された人間が操作室1に出入りすることができる。操作室1には、この例では、ドア1aに対向する壁面1bにプラントの各種ラインの状態を監視する監視画面(図示せず)が設けられている。また、壁面1bに設けられた窓から操作室1の外の現場の状況を視認することができるようになっていてもよい。オペレータは、監視画面や目視によって、そのプラントの各種プロセスラインの状況を認識することができる。
【0014】
操作盤2上には、操作盤スイッチ9や、操作盤ランプ6、操作盤JOGスイッチ7等が配置されている。図示しないが、操作盤2は、たとえば制御用の高速ネットワークを介してプロセスコントローラ(プロセス制御装置)に接続されている。プロセスコントローラは、たとえばプログラムにもとづいて、プロセスラインに配置された機器や装置等の運転状況や、周囲環境に関する各種データ等を取得する。プロセスコントローラは、取得した各種データおよびプログラムにもとづいて、これらの機器や装置等に各種指令や制御信号等を生成して送信し、プロセスラインを制御する。オペレータは、操作盤2上のスイッチ等の操作用品を操作することによって、プロセスコントローラの制御に介在することができる。オペレータは、監視画面や目視した状況に応じて、操作盤2上のこれらのスイッチ等を操作して円滑にプロセスラインの制御ができるようにする。
【0015】
音声認識監視装置4は、制御用ネットワークを介して、プロセスコントローラに接続されている。音声認識監視装置4は、オペレータの音声を取得して、操作盤2による操作を介することなく、プロセスラインの制御に介入することができる。ここで、音声認識監視装置4によるプロセスラインの制御とは、プロセスラインの停止である。なお、操作盤2上にも、プロセスラインの緊急停止のための操作ボタン等が設けられており、オペレータの手動によって、プロセスラインを停止することができる。
【0016】
音声認識監視装置4は、マイク(第1集音手段)3を備え、マイク3はマイク用スイッチ8とともに音声認識監視装置4上に設けられている。マイク3およびマイク用スイッチ8は、音声認識監視装置4に電気的に接続されている。この例では、マイク3およびマイク用スイッチ8は、音声認識監視装置4の天板上に固定されている。なお、この例では、マイク3およびマイク用スイッチ8は、音声認識監視装置4の天板上で別体で設けられているが、マイク用スイッチ8は、マイク3に備え付けられていてもよい。また、上述のとおり、マイク3およびマイク用スイッチ8は、音声認識監視装置4を介して電気的に接続されており、マイク用スイッチ8は、実質的にマイク3に含まれているものとする。
【0017】
マイク3は、たとえば無指向性であり、オペレータが操作室1内のどこにいても、オペレータの発する音声を取得して、取得した音声データを音声認識監視装置4に供給することができる。
【0018】
マイク用スイッチ8は、押しボタン式のスイッチであり、マイク用スイッチ8を押しているときにオン状態となり、マイク用スイッチ8を押すのをやめるとオフ状態となる。
【0019】
音声認識監視装置4は、マイク用スイッチ8をオンにすることによって、マイク3によって取得された音声データを入力することができる。音声認識監視装置4は、マイク用スイッチ8をオフにすることによって、取得された音声データの入力を中止することができる。音声認識監視装置4のおける音声データは、後に詳述するように、マイク用スイッチ8のオン・オフによってどのように取り扱われるかについて、オペレータ区分に応じてあらかじめ設定されている。
【0020】
音声認識監視装置4は、入力された音声データを認識し、音声データの内容にもとづいて、制御信号を生成する。制御信号は、プロセスラインの停止指令を含む信号である。音声データには、プロセスラインのセクションを表すデータを含むことができ、音声認識監視装置4は、認識されたセクションにおける停止指令含む制御信号を生成する。音声認識監視装置4は、プロセスコントローラに接続されているので、生成された制御信号は、プロセスコントローラに送信されて、プロセスコントローラは、プロセスラインのうち該当するセクションを停止するように動作する。
【0021】
プロセスラインのセクションとは、1つのプロセスラインにおける区域や位置を表している。たとえば、鋼板の圧延ラインでは、圧延材が圧延機に投入される前の搬送区域、圧延材が圧延機で圧延されている区域、および圧延材が圧延機から排出された後の搬送区域等であり、プロセスラインに応じてあらかじめ設定されている。
【0022】
音声認識監視装置4は、判断装置4aと、記憶装置4bと、を備える。判断装置4aおよび記憶装置4bは、相互に接続されている。判断装置4aは、たとえばコンピュータ装置のCPU(Central Processing Unit)等のプログラムにしたがって動作する演算装置を含んでもよい。判断装置4aと接続された記憶装置4bには、判断装置4aの動作のためのプログラムが格納されている。判断装置4aは、記憶装置4bから読み出したプログラムの各ステップに応じて動作する。判断装置4aは、認識された音声にもとづいて、停止指令を含む制御信号を生成して、プロセスコントローラに送信する。
【0023】
判断装置4aは、マイク3によって取得された音声データにもとづいて、話者を特定する。話者はあらかじめ登録され、登録データは、記憶装置4bに格納されている。判断装置4aは、取得された音声データの話者が登録データの話者と一致する場合には、取得された音声データにもとづいて処理を続行することができる。判断装置4aは、取得された音声データの話者が登録データの話者と一致しない場合には、マイク用スイッチ8のオン・オフにかかわらず、その音声データの処理を中止する。
【0024】
話者に関する登録データには、複数のオペレータ区分が設定されている。オペレータ区分は、たとえばオペレータの操作盤2を含む操作室1内の装置等の操作に関する習熟度にしたがって設定される。判断装置4aは、オペレータ区分にしたがって、処理を実行する。
【0025】
オペレータ区分にもとづく処理は、たとえばオペレータの習熟度に応じて2段階に設定されている。オペレータ区分“1”は、もっとも習熟したオペレータに適用される。オペレータ区分が“1”の場合には、たとえば、マイク用スイッチ8のオン・オフにかかわらず、音声認識監視装置4は、そのオペレータの音声データの処理を実行し、停止指令を含む制御信号を生成する。オペレータ区分“2”は、習熟していないオペレータに適用される。オペレータ区分が“2”の場合には、たとえば、マイク用スイッチ8がオンの場合のみ、音声認識監視装置4は、音声データを処理する。マイク用スイッチ8がオフの場合には、音声認識監視装置4は、音声データの処理を中止する。
【0026】
音声データには、複数の種類のワードを含むことができる。複数の種類のワードのうち1つは、「停止」に関するワードであり、他の1つは、プロセスラインの「セクション」に関するワードである。音声データの処理を継続するために、音声データが「停止」に関するワードを含むことを必須とすることができ、「セクション」に関するワードを含むことを任意とすることができる。以下では、音声データの処理を継続するために、音声データが「停止」に関するワードを含む必要があるとする場合について説明する。
【0027】
判断装置4aは、音声データを解析して、その中に「停止」に関するワードが含まれている場合には、停止指令を含む制御信号を生成して、プロセスコントローラに送信する。「停止」に関するワードは、たとえば、「停止」のほか、「止まれ」、「ストップ」等があらかじめ記憶装置4bに登録される。判断装置4aは、音声データにこれらの「停止」に関するワードが含まれていない場合には、他のワードの有無にかかわらず、停止指令を含む制御信号を生成しない。
【0028】
判断装置4aは、話者の音声データを解析して、その中に「セクション」に関するワードが含まれている場合には、停止指令にセクションのデータを関連付けして制御信号を生成し、プロセスコントローラに送信する。「セクション」に関するワードは、たとえば、「入側」、「インプット」、「中央」、「センター」、「出側」、「アウトプット」等である。「セクション」に関するワードは、これら以外にも、ラインに応じてあらかじめ記憶装置4bに登録される。また、プロセスコントローラ側でも機器や装置等は、「セクション」があらかじめ割り当てられている。
【0029】
実施形態の音声認識監視装置4の動作について説明する。
図2は、実施形態の音声認識制御装置の動作を説明するフローチャートの例である。
上述した例のように、オペレータ区分“1”(高習熟者)および“2”(低習熟者)が設定されているものとする。
【0030】
図2に示すように、ステップS0においてプロセスラインで停止すべき事態が発生した場合には、ステップS1において、オペレータは、そのプロセスラインの停止が必要か否かを判断する。停止が必要と判断した場合には、ステップS2において、オペレータがマイク3に向かって発声する。この場合においては、オペレータ区分“2”に該当するオペレータは、マイク用スイッチ8をオンにして発声する。オペレータ区分“1”のオペレータや、入室が許可された部外者の場合には、マイク用スイッチ8をオンにしてもよいし、オフのままであってもよい。
【0031】
ステップS3において、判断装置4aは、マイク3によって取得された音声データを解析して、登録データを参照して話者を特定する。話者が登録データの話者と一致する場合には、登録データのオペレータ区分を設定する。話者が登録データの話者と一致しない場合には、判断装置4aは、以降の処理を実行せず、他の音声データが入力されるまで待機する。
【0032】
ステップS4において、判断装置4aは、音声データのオペレータ区分に応じて、処理を設定する。オペレータ区分“1”の場合には、判断装置4aは、マイク用スイッチ8のオン・オフにかかわらず、音声データの解析を続行し、登録ワードの有無を判断する。オペレータ区分“2”の場合には、判断装置4aは、マイク用スイッチ8がオンのときに音声データの解析を続行する。判断装置4aは、マイク用スイッチ8がオフのときには、マイク用スイッチ8がオンになるまで音声データの解析を停止する。
【0033】
ステップS5において、判断装置4aは、音声データを解析して、音声データに「停止」に関するワードが含まれているか否かを判断する。また判断装置4aは、音声データに「セクション」に関するワードが含まれているか否かを判断する。音声データに「セクション」に関するワードが含まれていない場合には、判断装置4aは、処理をステップS6に遷移させる。音声データに「セクション」に関するデータが含まれている場合には、判断装置4aは、処理をステップS7に遷移させる。音声データに、「停止」に関するワードが含まれていない場合には、他の音声データを取得するまで、待機する。
【0034】
ステップS6において、判断装置4aは、音声データが「停止」に関するワードを含み、「セクション」に関するワードを含まない場合には、プロセスラインのすべてのセクションの動作を停止するように制御信号を生成する。
【0035】
ステップS7において、判断装置4aは、音声データが「停止」に関するワードおよび「セクション」に関するワードの両方を含む場合には、その「セクション」についての停止指令を含む制御信号を生成する。
【0036】
ステップS8において、判断装置4aは、音声データが「停止」に関するワードを含まない場合には、制御信号を生成せず、他の音声データが入力されて処理されるまで待機する。
【0037】
なお、音声データには、「停止」に関するワードおよび「セクション」に関するワードが含まれていればよく、語順は問わないが、語順を設定するようにしてもよい。たとえば、「停止」に関するワードを「セクション」に関するワードよりも先にした場合のみ、「停止」に関するワードを有効にしてもよいし、その逆にしてもよい。また、「停止」に関するワードと「セクション」に関するワードとの間に所定の時間以上の無言の期間が含まれている場合には、最初のワードのみを有効なワードとして処理するようにしてもよい。「停止」に関するワードと「セクション」に関するワードとの間に、「停止」にも「セクション」にも関係しないワードが含まれている場合には、そのワードを除外して、「停止」および「セクション」に関するワードの処理をするようにしてもよい。
【0038】
上述では、音声データが「セクション」に関するワードを含まない場合には、プロセスラインの全セクションの停止をすることとしたが、プロセスラインの種類等に応じて適切な設定とすることができる。たとえば、音声データが「セクション」に関するワードを含まない場合には、「セクション」に関するワード含む音声データが入力されるまで処理を中止し、待機するようにしてもよい。
【0039】
また、上述では、音声データが「停止」に関するワードを含まない場合には、判断装置4aは、音声データの処理を中止するものとしたが、音声データの処理の可否については、プロセスラインの種類や状況等に応じて適切に設定することができる。たとえば、音声データが、「停止」に関するワードおよび「セクション」に関するワードのいずれも含まない場合に、判断装置4aは、音声データの処理を停止するようにしてもよい。その場合において、音声データ中に「セクション」に関するワードのみが含まれ、「停止」に関するワードを含まないときには、判断装置4aは、その「セクション」についての停止指令を含む制御信号を生成するようにしてもよい。
【0040】
(変形例)
図3(a)および図3(b)は、実施形態の変形例の音声認識制御装置の一部を例示する模式的な斜視図である。
図3(a)には、携帯形のマイク用有線スイッチの概要が示されている。上述した実施形態では、マイク用スイッチ8は、音声認識監視装置4に固定されていたが、本変形例では、オペレータがマイク用スイッチ18を手に持つ等携帯して、操作室1内を移動できる。
【0041】
図3(a)に示すように、携帯形のマイク用スイッチ18は、本体18aと、スイッチ18bと、を含む。このマイク用スイッチ18は、配線18cによって、音声認識監視装置4と電気的に接続されている。この例では、マイク用スイッチは、有線で音声認識監視装置4と接続されるものとしたが、無線によって接続されるようにしてももちろんかまわない。本体18aは、底のある円筒形状をなしており、天井部分に押しボタン式の円形のスイッチ18bが設けられている。本体18aの太さは、大人が片手で握ったときに手のひらに余裕ができる程度とされている。
【0042】
オペレータは、操作室1に入って作業する際には、通常、操作盤2(図1)の前に立って、あるいは座って各種操作をするが、操作盤2の前から離れる際には、マイク用スイッチ18を手で握り携帯する。
【0043】
マイク用スイッチ18の動作は、上述した実施形態におけるマイク用スイッチ8と同様である。すなわち、マイク用スイッチ8,18をオンすることによって音声データの処理が認められたオペレータ区分を有するオペレータが、緊急停止の必要時に、マイク用スイッチ8,18をオンにして、音声による停止操作をすることができる。
【0044】
マイク用スイッチ18を携帯形とすることによって、音声認識監視装置4上に固定されたマイク用スイッチ8のところまで移動することなく、その場で音声による停止操作を行うことができる。したがって、習熟度が低いオペレータであっても、迅速に停止操作をすることができる。
【0045】
図3(b)には、携帯形のマイク23の概要が示されている。オペレータは、操作室1から出て、現場の機器や装置等の周辺で機器や装置等の点検、監視作業等を行うことがある。現場には、機器や装置等のための操作盤が設けられ、機器や装置等の操作を行うことができるが、この変形例では、非常時や緊急時に機側操作盤を介さずに、音声によってプロセスラインを停止することができる。
【0046】
図3(b)に示すように、マイク(第2集音手段)23は、無線接続装置24と、マイク用スイッチ28と、を含む。無線接続装置24は、マイク23が取得した音声データを音声認識監視装置4に送信する。マイク用スイッチ28は、実施形態のマイク用スイッチ8と同様に、マイク用スイッチ28をオンすることによって音声データの処理が認められたオペレータ区分を有するオペレータが、緊急停止の必要時に、マイク用スイッチ28をオンにして、音声による停止操作を行う。
【0047】
実施形態および変形例の音声認識監視装置4の効果について説明する。
実施形態および変形例の音声認識監視装置4では、判断装置4aがあらかじめ記憶装置4bに登録された話者であるか否かを判断する。そのため、見学者等のオペレータ以外の人間も出入りする操作室1内の音声によって、誤ってプロセスラインを停止させることがない。
【0048】
音声認識監視装置4では、音声によってプロセスラインの停止をさせることができるので、操作盤2の操作の習熟度の低いオペレータであっても、確実かつ迅速にプロセスラインの停止をすることができる。
【0049】
音声認識監視装置4では、話者として登録する登録データに、複数の区分を設定することができる。複数の区分をオペレータの習熟度に応じて設定し、習熟度の低いオペレータには、停止操作に関する多重の保護措置を講ずることができる。保護措置として、マイク用スイッチ8,18,28を設けることによって、習熟度の低いオペレータがプロセスラインを誤って停止させることを防止する。
【0050】
たとえば、鉄鋼プラントでは、圧延プロセスに異常が生じた場合に、緊急停止し適切な処置を行わないと、被害が拡大し、再稼働までの期間に長時間を要し、多大なコストが必要となる。実施形態および変形例の音声認識監視装置4では、音声によって、プロセスラインを停止させることができるので、操作盤2の操作を待たずに、迅速にプロセスラインを停止することができる。操作盤2の操作手順に不慣れな低習熟度のオペレータであっても、確実に異常時の処理を行うことができる。
【0051】
一方、実施形態および変形例の音声認識監視装置4では、音声データによって、オペレータの習熟度や操作許可の有無を判断することができるので、誤って、適切でない停止をさせ、本来必要でない停止による損失を発生させることを防止することができる。
【0052】
以上説明した実施形態によれば、プロセスラインの誤停止を回避しつつ、迅速かつ確実に緊急停止する音声認識監視装置を実現することができる。
【0053】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 操作室、2 操作盤、3,23 マイク、4 音声認識監視装置、4a 判断装置、4b 記憶装置、8,18,28 マイク用スイッチ、24 無線接続装置
図1
図2
図3