【実施例】
【0056】
近年、3次元インビトロオルガノイドシステムの開発においてかなりの進展があった
1,2。オルガノイドは、構造上の複雑性及び細胞の多様性を従来の細胞培養方法の互換性及び拡張性と組み合わせる強力な実験モデルであることが立証されてきた。多能性幹細胞(PSC、胚性幹細胞及び人工PSCの両方を含む)の定方向分化を通じてのオルガノイド発生は、出発材料源に制限がないこと、組織の外科的獲得の必要のないこと、及び遺伝的操作の容易なことを含む他のアプローチを上回るいくつかの利点を提唱する。さらに、PSC系の方法は、正常な及び異常なヒト発生に潜む機序の直接的な調査を可能にする
3。しかしながら、PSCを特異的なオルガノイドタイプへと分化させることは、正常な器官発生の頑強な分子レベルの知識による。胃などのいくつかの器官について、胚発生を駆動する分子レベルの経路の理解において大きな隔たりがある。
【0057】
胃は、哺乳類において最も構造上多様な器官のうちの1つである
4。ヒトにおいて、胃粘膜は概して、2つのタイプの上皮腺からなる
5,6。胃のより近位の解剖学的部分、すなわち内体及び胃底部にあるのが酸分泌腺であり、傍細胞、プロテアーゼ産生主細胞、粘液産生細胞、及び内分泌細胞を含む。より遠位の前庭及び幽門にある前庭型の腺はたいてい、粘膜細胞及び内分泌細胞を含有する。命名法の解剖学特異的及び種特異的システムを簡素化するために、「胃底部」及び「前庭」という用語は、胃上皮のこれら2つの組織学的タイプを広範に説明するために使用される。発明者は、hPSCの分化を、正常な前庭細胞タイプを有する純粋な前庭上皮を含有する3次元胃組織(ヒト胃オルガノイド(hGO))へと定向化する方法を既に開発した
7。前庭hGO(hAGO)は、胃における前庭系譜配置及び宿主−微生物相互作用を研究するための頑強なシステムであるが、胃底部の生物学及び疾患に関する研究はできない。より近年では、Noguchi et.alは、マウスESCを、種々のタイプのマウス胃組織を含むオルガノイドへと分化させることに成功した
8。しかしながら、このアプローチは、マウスESCの凝集及び自発的な分化を用いており、その結果として生じるオルガノイドは異質的であり、このことは重層上皮の存在によって立証された。そのうえ、種の違いは、ヒト胃疾患をモデル化するために、マウス胃を最適よりも下回させる
9。したがって、ヒト胃底部上皮の頑強かつ効率的なPSC由来のモデルは、胃生物学の分野で有意な前進を表すであろう。
【0058】
胚性器官の発生は、隣接する組織間の一連の有益な手掛かりによって誘導され
10,11、hPSCから特異的な系譜への分化は、インビトロでの直接的な分化に対するこれらのシグナルの使用に著しく依存してきた。発明者は既に、段階を踏んだ分化アプローチを識別して、hAGOを生じ、それによりhPSCを胚体内胚葉へと分化させ、後部前腸へとパターン形成した後、予定前庭上皮へと特化させた
7。発明者は、胃底部及び前庭が、後部前腸前駆体の共通の集団に由来し、このことが、適切なシグナルとともに提供された場合、胃底部系譜へと定向化され得るという仮説を立てた。しかしながら、インビボでの胃底部発生を駆動する機序がこれまでわかっていないことを考慮して、発明者はまず、近位−遠位軸に沿って胚胃をパターン形成するシグナル伝達経路を識別しなければならなかった。
【0059】
胚胃パターン形成
胚発生中の胃底部特異性を調節する経路の研究に助力するために、発明者は、マウス胚を分析して、予定胃底部と予定前庭と予定前胃とを区別することのできる分子マーカーを識別した。14.5日胚で、発明者は、Sox2が前腸器官系譜前部において発現したのに対し、Gata4が腺性胃上皮へと制限されることを発見した。Gata4+部内で、Pdx1は、予定前庭領域に特異的であったので(
図6のa)、胚性胃底部は、Sox2+Gata+Pdx1−であると考えられる。さらに、発明者は、公開されたマイクロアレイデータセット(GSM326648−GSM32665012及びGSM80809−GMS8081613)及び14.5日胚前腸の摘出した領域を分析して、転写因子Irx2、Irx3、及びIrx5の発現が、前庭と比較して胚性胃底部において10倍超多量であることを実証し(
図6のb、c)、このことは、当該転写因子の発現が、腺性胃上皮の領域間をさらに区別することができることを示した。
【0060】
分子レベルで、胃の予定胃底部及び前庭部は、10.5日胚によって既に確立された(
図6のa)。発生中の当該時点で、正準のWntシグナル伝達経路は、Wntレポーターマウスアキシン2−lacZ系を用いて示されるように、近位の胃において活性があったが、遠位の胃
14においては、ほとんどまたは全く活性を呈さなかった(
図1のb)。Wnt/βカテニンシグナル伝達の調節は、幽門−十二指腸境界を確立するうえでの役割を担っていることがわかっているが
14,15、胃上皮パターン形成におけるその役割は、研究されていなかった。Wnt/βカテニンシグナル伝達が胃底部をインビボで確立するために機能的に必要とされるかどうかを判定するために、発明者は、Shh−cre(Shh−cre;βカテニンfl/fl=cKO)を用いて前腸上皮におけるβカテニン(Ctnnb1)を欠失させた。Wnt/βカテニンシグナル伝達の崩壊は結果的に、胃底部の同一性を喪失させ、このことは、10.5日胚の胃底部における異所性Pdx1の発現によって実証された(
図1のc)。異所性Pdx1をまず、胃底部上皮の腹側半分に制限し、このことは、このShh−cre系統を用いて既に報告された組換え活性と一致していた
16が、次に、14.5日胚までに近位の胃の大部分及びより大きな曲面を含むよう、経時的に増殖させた(
図7のa)。さらに、胃底部マーカーIrx2、Irx3、及びIrx5の発現は、cKO胚において劇的に減少した(
図7のb)。集約的に、これらのデータは、胚性マウス胃において前庭の運命を抑圧しながら、胃底部の同一性の初期特化に必要とされるので、上皮Wnt/βカテニンシグナル伝達が、胃パターン形成を調節するという結論を支持している。
【0061】
その後の細胞分化に及ぼす初期Wnt/βカテニン仲介性パターン形成の異常性の影響を判定するために、発明者は、18.5日胚時のcKO胚を分析した。cKO胚における胃は、18.5日胚において奇形となり、大きさが減少し(
図1のd及び
図7のc〜d)、発生後期中の胃の成長を促進するうえでのWnt/βカテニンの役割を示唆した。そのうえ、cKO胃は、上皮の最近位領域のいたるところで異所性Pdx1の発現とともに完全に誤パターン形成していた(
図1のd)。Atp4bの発現によって標識される胃底部細胞タイプである傍細胞は、CKO胃において減少し(
図1のd)、βカテニン欠乏性上皮においては完全に非存在であった(
図1のe)。対照的に、発生した傍細胞は、βカテニン発現上皮においてのみ観察された(
図1のe及び
図7のd〜e)。まとめると、これらのインビボデータは、Wnt/βカテニンシグナル伝達が胃底部の特化を誘導し、かつ前庭の同一性を阻害する、というモデルを支持している。さらに、この初期パターン形成の崩壊は、傍細胞のその後の細胞の自律喪失と一致しており、細胞分化が発生のパターン形成の欠損に対して二次的に損なわれることを示唆している。
【0062】
hPSCからの胃底部hGOの分化
発明者は次に、発生中のヒト胃の胃底部−前庭パターンを確立するうえでのWnt/βカテニンシグナル伝達の役割を研究した。胃の分化の初期をモデル化するために、発明者は、高い信頼度で初期胃発生の正常期を再現する、hPSCを前庭様胃オルガノイドへと分化させるための既に説明したプロトコルを用いて出発した
7。3次元後部前腸スフェロイド(SOX2+HNF1β+)を用いて出発して、発明者は、Wnt/βカテニンシグナル伝達の刺激が、胃の特化期の間に前庭(SOX2+GATA+PDX1+)よりもむしろ胃底部(SOX2+GATA+PDX1−)の系譜へと後部前腸上皮を定向化するかどうかを検査した(
図2のa)。実際、βカテニンをGSK3阻害因子CHIR99021(CHIR)で3日間活性化した結果、9日後にPDX1のほぼ完全な抑止を生じるとともに、IRX2、IRX3、及びIRX5の発現を有意に増加させた(
図2のb〜c)。重要なことに、SOX2及びGATA4のレベルは、CHIR処理によって影響されず、スフェロイドがそれらの胃の同一性を保有していることを確証した。したがって、CHIR曝露は結果的に、SOX2+GATA+PDX1上皮の形成を生じるとともに、予定胃底部上皮と一致した兆候であるIRX発現の増加が生じた。
【0063】
発明者は次に、CHIR処理したスフェロイドが、胃底部様上皮を含有するさらに成熟したhGOへとさらに発達するかどうかを判定するよう探索した。興味深いことに、6〜9日後のCHIRの3日間パルスは、hGOがより後期にPDX1+前庭表現型へと最終的に逆戻りするので、胃底部同一性を不可逆的に特化させるのに十分ではなかった。しかしながら、少なくとも29日後までのCHIR処理を介したWnt刺激の持続は、胃底部遺伝子発現の安定した誘導をもたらした(
図8のa)。このことは、インビボでの胚胃発生の間のWnt/βカテニンシグナル伝達の長期活性と一致していた。先行研究は、胚胃における異所性Wnt活性化が小腸の運命を促進することを示した
14,15が、CHIR処理したhGOは、小腸マーカーCDX2、MUC2、CCK、またはSCTの有意な増加を呈さなかった(
図8のe及び
図9のa〜b)。発明者はさらに、ノギンをBMP4と置き換えると、小腸転写因子の頑強な発現をもたらすので、CDX2が、BMPシグナル伝達の同時阻害により、Wnt/βカテニン活性化にもかかわらず抑制されたままであることを実証した(
図9のc)。
【0064】
局所的な部分が初期発生において一旦確立されると、原始胃上皮は、最終的な細胞タイプの成長、腺形態形成、及び分化の期間を経る。発明者は既に、hAGOが形態学的発生及び細胞発生に関して類似の進行を受けることを示した7。CHIR処理したhFGOは、播種したスフェロイド全部の75〜90%がオルガノイドへと生育するので、hAGOと比較して類似の速度及び効率で生育した(
図8のd)。20日後、両タイプのhGOは、細胞の90%超で胃SOX2/GATA4の兆候を発現する上皮を含有していたのに対し、PDX1は、hAGOに制限された(hAGOにおいて87.1±8.4%及びhFGOにおいて3.9±2.0%、p=3.07×10
−6、
図8のe)。オルガノイドは、その発生の間、個々の胃の同一性を維持した(
図8のb〜c)。34日後までに、hFGO及びhAGOは、CDH1+CTNB1+KRT8+の極性のある円柱状上皮を含んでおり、当該上皮は、胃特異的
17クローディンCLDN
18(
図2のe及び
図9のd)、及び匹敵する未分化の間充織細胞(
図10のb)を遍在的に発現した。1つの顕著な違いは、hFGOがオルガノイド上皮から発芽した組織化した腺を有する異なる構造を有する(
図2のd〜e及び
図10のa)のに対し、hAGOは、複雑な折り畳み及び原始的な腺様組織化を有するが、まれに腺芽を有することであった
7。したがって、胃底部を特化させる新規のWnt/βカテニン依存性機序は、ヒトにおいて保存され、発生中の胃底部に分子レベルで似ている腺上皮を有する3次元hFGOを生じるよう操作することができる。
【0065】
部位特異的胃細胞分化
分化した前庭胃細胞タイプをまず、約27日後のhAGOにおいて検出した後、マウス胃における生後発達の最初の数週間
18と類似の34日後までに増加した
7。34日後に、hFGOは、予期した通り、hAGOと同様に、MUC5AC+表面粘膜細胞及びMUC6+粘膜頸細胞の両方を含有していた(
図3のa〜b及び
図11のa)。hFGOは、種々の内分泌細胞タイプも形成した(
図3のc)が、ホルモンGASTの発現は、hAGOに特異的であったのに対し、GHRLは、hFGOにおいて10倍高く(
図3のd)、正常胃内分泌パターンと一致していた
19。hGOの部位特異的コンピテンスを機能的に定義するために、発明者は、誘導系を用いて、プロエンドクリン(proendocrine)転写因子NEUROG3を過剰発現させた。hGOの両サブタイプにおけるNEUROG3の発現は結果的に、パンエンドクリン(pan−endocrine)マーカーSYPならびに共通の胃ホルモンSST及びGHRLの頑強な発現を生じた(
図11のc)。しかしながら、hAGOのみがGAST発現G細胞を生じるようコンピテントであり、hFGOはそうではなく(
図3のe及び
図11のc)、ヒト胃におけるG細胞の前庭特異的分布と一致していた
19。
【0066】
胃底部特異的分泌系譜である主細胞は、酸分泌腺の基部に存在し、予備幹細胞のあるタイプとして提唱されてきた
20。hFGOは、主細胞特異的
21転写因子MIST1の上皮発現を呈し(
図4のa)、プロ酵素PGA5及びPGCについての転写産物を100〜1000倍増加させ(
図4のc)、ELISAによって測定される有意に高いペプシノーゲン含有量を含有していた(
図4のe)。しかしながら、転写産物レベルは、成人胃において認められるものの1%未満であり(
図11のd)、ペプシノーゲン陽性細胞は、免疫組織化学によってまれにしか検出することはできなかった(
図4のb〜c)。これと一致して、チモーゲン果粒含有細胞
22は、TEMによって識別された(
図4のd)が、まれであった。対照的に、より未成熟の粘膜顆粒パターンを有する細胞は多量であった(
図11のb)。インビボの主細胞は出生後の最初の数週間、頑強なペプシノーゲン発現を呈しない(
図12のa〜b)ので、発明者は、主細胞が、hFGOにおいて存在するが、未成熟であると結論付けた。hFGOはそれゆえ、主細胞の成熟を調節する内因性機序と外因性機序とを分離するための頑強なプラットフォームを表す。
【0067】
傍細胞分化を制御する経路
ベースラインで、hFGOは、プロトンポンプ(ATP4Aサブユニット及びATP4Bサブユニットからなる)を介して胃管腔を酸性化する胃底部腺に関して定義する細胞タイプである少数の傍細胞(PC)しか含有しなかった(
図5のa〜b)。PC集団を増大させる効率的な方法の識別は、PC集団の発生を駆動するシグナル伝達機序の理解がないので、理解しづらいままであった。発明者はそれゆえ、PC分化を調節するうえでの役割についての候補シグナル伝達経路を機能的にスクリーニングするためのプラットフォームとしてPSC由来のhFGOを用いた。スクリーニングのため、発明者は、30日後のhFGOをシグナル伝達アゴニストまたはアンタゴニストへ2日間曝露し、34日後にPC分化を分析した。シグナル伝達操作の大部分が明らかな効果を有していなかったが、PD0325901(PD03)を用いたMEK経路の一過性阻害は結果的に、ATP4A及びATB4Bの両方の実質的な上方調節を生じた(
図13のa)。さらに、BMP4だけではPC遺伝子発現に影響しなかったが、PD03の効果を亢進することができた(データ非表示)。したがって、PD03/BMP4の2日間パルスは、PCマーカーATP4A、ATP4B及びGIFの迅速かつ頑強な発現を誘導するのに十分であった(
図5のa〜b及び
図13のd)。興味深いことに、この効果は、培地からEGFまたはFGFを単純に除去することによって観察されることはなく(
図13のb)、PC分化をhFGO培養へ制限することに起因するMEK/ERKの上流の内因性シグナル伝達相互作用があるようであることを示唆した。さらに、PD03/BMP4処理は、PC系譜に影響しただけであり(
図13のe)、hAGOにおいてPCを誘導することはできず(
図13のc)、胃上皮の初期パターン形成がその最終的な分化能を規定することをさらに強調した。
【0068】
34日後にhFGO上皮は、ヒト胃へかなり組織化されているのが呈され、それとともに、表面ドメインを裏打ちする粘膜細胞及びPCは、腺部分の中に濃縮していた(
図5のe)。そのうえ、傍細胞の形態は、インビボでの成熟傍細胞とよく似ていた(
図5のc)。インビボでのPCとの類似性及び透過型電子顕微鏡で観られるような管状小胞微細構造(
図5のd)を考慮すると、発明者は、hFGOにおけるPCが適切な刺激に対する応答において酸を分泌する能力を呈するであろうと仮説を立てた。pH感受性色素(SNARF5F)を用いてリアルタイム共焦点顕微鏡で測定すると(
図14のa)、hFGOは、H2アンタゴニストであるファモチジンまたはH+K±ATPアーゼアンタゴニストであるオメプラゾールのいずれかによって遮断されたヒスタミンに応答して管腔pHの迅速かつ顕著な低下を生じた(
図5のf及び
図14のb)。ヒスタミンに対する細胞応答を可視化するために、hGOを、酸性区画において金属イオン封鎖したときにオレンジ色へとシフトする蛍光色素であるアクリジンオレンジ(AO)とともに培養した
23。単離したマウス胃腺と同様に、AOは、ヒスタミンに応じて、hFGO腺における酸性化細胞小胞の中に蓄積した(
図5のg及び
図14のc〜d)。これらのデータは、PCが酸誘導刺激に応じて、分泌性小管構造の適切な変化を受けたことを示す。
【0069】
インビボでの分化した胃細胞系譜は、未分化の幹細胞または前駆細胞の共通のプールに由来すると考えられている。ここで、発明者は、遺伝的手段(内分泌細胞のNEUROG3仲介性調節)を通じて、または外因性シグナル伝達経路(PCに対するPD03/BMP4)の操作によってのいずれかで、hFGOにおける細胞タイプの相対的な比を変化させる能力を実証した。これらの観察は、hFGOが成体胃から単離されたものと類似した胃幹細胞の集団を含有し得るという仮説をもたらした。実際、発明者は、解離した34日後のhFGOが、新たなオルガノイドを生じるよう連続的に継代することができることを発見した(
図15のa〜b)。継代したhFGO由来のオルガノイドの再生育は、初代胃組織オルガノイドを生育させるのに使用するのと類似の高濃度Wnt及び高濃度FGF培地に依存していた
24,25。2回の継代後、hFGOは、系譜マーカーであるMUC5AC、MUC6、PGC、及びGHRLの発現を維持したが、当該系譜マーカーは、PCを含有しておらず、傍細胞系譜のPD03/BMP4仲介性誘導に対して不応性であった(
図15のc〜d)。この知見は、真に酸分泌粘膜に由来するにもかかわらず、PCを頑強に生じない、成体幹細胞由来の胃オルガノイドにおいて観察されたものと類似していた
20,26。したがって、hGO及び成体胃オルガノイドの長期培養におけるPCコンピテンスを保存する条件を識別することは重要であろう。
【0070】
要約すると、発明者は、hPSCを新たな組織タイプへと分化させることへインビボ及びインビトロでの発見を基にした研究を直接適用した。発明者は、マウスにおける胃発生中の胃底部ドメインを特化させるうえでのWnt/βカテニンシグナル伝達の新規の機能を定義し、hPSCを3次元ヒト胃底部オルガノイドへ分化させることを定向化するための機序についての基礎として、Wnt調節を使用した。マウス及びヒトの両方において、Wnt仲介性胃底部特化によって、PCのその後の形成がもたらされた。この定向性分化プロトコルの初期における胃底部特異的操作は、頑強なPC誘導をもたらした(
図13のf)。先行報告は、間充織因子Barx1が、Wntシグナル伝達を抑止するよう間接的に作用し、胃における小腸遺伝子発現を防止するのに役立つことを識別した
14,15。本研究が、上皮Wnt/βカテニン機能を識別したこと及び先行研究が間充織経路を識別したことを考慮すると、Wnt/βカテニンは、上皮対間充織における異なる役割を有し得るようであると思われる。例えば、Wnt/βカテニンについての間充織の役割は、BMPなどの他のシグナル伝達経路を調節することができ
27、このことは、Wntと初期内胚葉から小腸特化を促進するためにWntと協同することを、本データが示す(
図7及び
図9のc)ヒト胃オルガノイドシステムは、動物モデルとの組み合わせで間充織及び上皮においてこれらのシグナル伝達経路がどのように相互作用して初期胚消化管発生を調整するのかを精査するために有用であろう。
【0071】
異なる系譜への胃前駆細胞の分化を制御する経路も欠失している。発明者は、MEK/ERKシグナル伝達が、傍細胞特化を強力に抑止することを識別する、この新たなhGOプラットフォームの有用性を実証した。これらの知見と一致して、MEK/MAPK依存性経路のトランスジェニック活性化は、インビボでの傍細胞の喪失をもたらした
28,29。それゆえ、hGOは、胃底部及び前庭における正常な細胞のホメオスタシスに関与するシグナル伝達機序を識別及び研究するための新たなかつ追跡可能なヒトモデルシステムである。さらに、発生プログラムの異常な調節も、内体/胃底病理がしばしば、傍細胞の萎縮
30〜32、前庭型組織学的特徴
33、さらにはPdx134の誤発現と関係しているので、胃疾患にも寄与し得る。したがって、これらの経路のターゲティングは、MEKの薬理学的阻害が異形成のマウスモデルにおける正常傍細胞の分化を修復するのに十分であることをChoi et al.が近年実証した
35ので、臨床的な有用性を有し得る。さらに、前庭型及び胃底部型の両hGOを今や確立したので、これらのヒト胃組織がどのように生理学的に相互作用し、感染及び損傷に異なって応答し、薬理学的処置に応答するのかを研究することは可能である。
【0072】
方法
マウス実験
以下の遺伝的マウス系統をジャクソン研究室から得、シンシナティこども病院研究財団動物施設に収容し、IACUCプロトコル(0b09074)によって維持した。アキシン2:LacZ(ストック番号009120)、Shh:Cre(ストック番号005622)、及びloxPが導入されたβカテニン(ストック番号004152)。膣栓が観察された午前を0.5日胚と記し、基準交尾を用いて種々の期における胚を作製し、これをホールマウント染色または組織解剖のいずれかのために収集した。少なくとも2匹の同腹胚を、検討した各発生期において分析した。雌雄両方の胚を分析した。
【0073】
多能性幹細胞培養
ヒト胚性幹細胞株WA01(HI、WiCellから入手)をシンシナティこども病院医学センターの多能性幹細胞施設によって供給した。細胞の識別を短いタンデム反復分析(マイクロサテライトSTR分析、Applied Biosystems)によって確認し、細胞をマイコプラズマ混入について所定の通り検査した(マイコアラートマイコプラズマ検出キット、Lonza)。多能性細胞をmTesR1培地(Stem Cell Technologies)中でHESC定性化マトリゲル(BD Biosciences)上でフィーダーのない条件下で維持した。コロニーを、ディスパーゼ(Invitrogen)を用いて4日間ごとに継代した。
【0074】
後部前腸スフェロイドの分化
胃オルガノイドの定向性分化のためのプロトコルを、本発明者らの先行プロトコル
7から応用し、表1は、各期についての培地及び成長因子の完全なリストを含んでいる。分化のために、hPSCを単一の細胞へと、Accutase(Stem Cell Technologies)を用いて解離し、Y−27632含有mTesR1(10μM、Stemgent)中で、ウェルあたりおよそ200,000個の細胞密度で24穴プレート中へ播種した。翌日、RPMI1640培地(Invitrogen)中のアクチビンA(100ng/ml、Cell Guidance Systems)を3日間添加することによって、細胞を胚体内胚葉(DE)へと分化させた。培地にNEAA(1×、Gibco)及び規定FBS(dFBS、Invitrogen)も1日後、2日後、及び3日後にそれぞれ0%、0.2%、及び2.0%補充した。さらに、BMP4(50ng/ml、R&D Systems)を初日に添加した。その後、細胞をCHIR99021(2μΜ、Stemgent)、FGF4(500ng/ml、R&D Systems)、及びノギン(200ng/ml、R&D systems)へ、NEAA及び2.0%dFBSを補充したRPMI1640中で3日間曝露することによって、DEを後部前腸内胚葉へと分化させた。レチノイン酸(2μΜ、Sigma Aldrich)を最終日に添加した。培地を毎日交換した。この過程は結果的に、3次元後部前腸スフェロイドの自律的な形成を生じた。
【0075】
【表1】
【0076】
前腸スフェロイド−胃オルガノイドの3次元培養
後部前腸スフェロイドを収集し、既に説明した通り
36、3次元培養システムへと移した。簡潔には、スフェロイドを50μlのマトリゲル(BD Biosciences)中に懸濁し、24穴プレート中へ液滴として播種した。マトリゲルを組織培養インキュベータ中で10分間凝固させておいた後、成長因子及び/または小分子アゴニストを含有する塩基成長培地(BGM)で層状化した。BGMは、N2(1×、Invitrogen)、B27(1×、Invitrogen)、HEPES(10μM、Gibco)、L−グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、及びEGF(100ng/ml、R&D Systems)を補充した高度DMEM/F12培地(Gibco)からなった。6〜9日後の間、スフェロイドをRA及びノギンとともに培養し、前庭系譜を特化させた。胃底部特化のために、CHIRをこの期の間に添加した。前庭hGOをその後、EGFのみを有するBGM中で培養した。胃底部hGOを6〜30日後からCHIRへ連続的に曝露した。さらに、CHIRによって駆動される腺形態形成を亢進することが示された(データ非表示)ので、FGF10(50ng/ml、R&D Systems)を20〜30日後から胃底部hGOへ添加した。20日後、オルガノイドを収集し、1:10〜1:20の希釈で再播種した。
【0077】
傍細胞分化を高める因子を識別するためのスクリーニング実験のために、hFGOを30日後まで生育させたのち、個々のシグナル伝達経路のアゴニスト及びアンタゴニストへ2日間曝露した。DAPT(1μΜ、Stemgent)、SB431542(10μΜ、Stemgent)、BMP4(50ng/ml、R&D Systems)、PD0325901(2μM、Stemgent)、ガストリン(10nM、Sigma Aldrich)、デキサメタゾン(50nM、Sigma Aldrich)、及びWnt5a(50ng/ml、R&D Systems)。処理後、hFGOをさらに2日間、34日後まで生育させた後、定量的PCRによって分析した。
【0078】
RNA単離及び定量的PCR
既に説明した通り、全RNAを、Nucleospin RNA IIキット(Machery Nagel)を用いて単離し、cDNAへと転換した7。Quantstudio 6(Applied Biosystems)上で、Quantitect SYBR Greenマスターミックス(Qiagen)を用いて定量的PCRを実施し、プライマー配列を以下に列挙する。
【0079】
プライマー配列
定量的PCRに使用したプライマーは以下であった。
hATP4A、順方向5’−TGGTAGTAGCCAAAGCAGCC−3’、逆方向5’−TGCCATCCAGGCTAGTGAG−3’、
hATP4B、順方向5’−ACCACGTAGAAGGCCACGTA−3’、逆方向5’−TGGAGGAGTTCCAGCGTTAC−3’、
hAXIN2、順方向5’−CTGGTGCAAAGACATAGCCA−3’、逆方向5’−AGTGTGAGGTCCACGGAAAC−3’、
hCCK、順方向5’−CGGTCACTTATCCTGTGGCT−3’、逆方向5’−CTGCGAAGATCAATCCAGCA−3’、
hCDX2、順方向5’−CTGGAGCTGGAGAAGGAGTTTC−3’、逆方向5’−ATTTTAACCTGCCTCTCAGAGAGC−3’、
hCHGA、順方向5’−TGACCTCAACGATGCATTTC−3’、逆方向5’−CTGTCCTGGCTCTTCTGCTC−3’、
hGAPDH、順方向5’−CCCATCACCATCTTCCAGGAG−3’、逆方向5’−CTTCTCCATGGTGGTGAAGACG−3’、
hGAST、順方向5’−CAGAGCCAGTGCAAAGATCA−3’、逆方向5’−AGAGACCTGAGAGGCACCAG−3’、
hGATA4、順方向5’−TCCAAACCAGAAAACGGAAGC−3’、逆方向5’−GCCCGTAGTGAGATGACAGG−3’、
hGHRL、順方向5’−GCTGGTACTGAACCCCTGAC−3’、逆方向5’−GATGGAGGTCAAGCAGAAGG−3’、
hGIF、順方向5’−CATTTTCCGCGATATTGTTG−3’、逆方向5’−GCACAGCGCAAAAATCCTAT−3’、
MRX2、順方向5’−GTGGTGTGCGCGTCGTA−3’、逆方向5’−GGCGTTCAGCCCCTACC−3’、
MRX3、順方向5’−GGAGAGAGCCGATAAGACCA−3’、逆方向5’−AGTGCCTTGGAAGTGGAGAA−3’、
MRX5、順方向5’−GGTGTGTGGTCGTAGGGAGA−3’、逆方向5’−GCTACAACTCGCACCTCCA−3’、
hMIST1、順方向5’−TGCTGGACATGGTCAGGAT−3’、逆方向5’−CGGACAAGAAGCTCTCCAAG−3’、
hMUC2、順方向5’−TGTAGGCATCGCTCTTCTCA−3’、逆方向5’−GACACCATCTACCTCACCCG−3’、
hMUC5AC、順方向5’−CCAAGGAGAACCTCCCATAT−3’、逆方向5’−CCAAGCGTCATTCCTGAG−3’、
hMUC6、順方向5’−CAGCAGGAGGAGATCACGTTCAAG−3’、逆方向5’−GTGGGTGTTTTCCTGTCTGTCATC−3’、
hPdx1、順方向5’−CGTCCGCTTGTTCTCCTC−3’、逆方向5’−CCTTTCCCATGGATGAAGTC−3’、
hSCT、順方向5’−GGTTCTGAAACCATAGGCCC−3’、逆方向5’−GTCAGGGTCCAACATGCC−3’、
hSOX2、順方向5’−GCTTAGCCTCGTCGATGAAC−3’、逆方向5’−AACCCCAAGATGCACAACTC−3’、
mCdx2、順方向5’−TCTGTGTACACCACCCGGTA−3’、逆方向5’−GAAACCTGTGCGAGTGGATG−3’、
mGata4、順方向5’−CCATCTCGCCTCCAGAGT−3’、逆方向5’−CTGGAAGACACCCCAATCTC−3’、
mGapdh、順方向5’−TTGATGGCAACAATCTCCAC−3’、逆方向5’−CGTCCCGTAGACAAAATGGT−3’、
mIrx1、順方向5’−AATAAGCAGGCGTTGTGTGG−3’、逆方向5’−CTCAGCCTCTTCTCGCAGAT−3’、
mIrx2、順方向5’−AGCTGGTATGGATAGGCCG−3’、逆方向5’−GGCTTCCCGTCCTACGTG−3’、
mIrx3、順方向5’−ATAAGACCAGAGCAGCGTCC−3’、逆方向5’−GTGCCTTGGAAGTGGAGAAA−3’、
mIrx5、順方向5’−GGAGTGTGGTCGTAGGGAGA−3’、逆方向5’−GCTACAACTCGCACCTCCA−3’、
mPdx1、順方向5’−ACGGGTCCTCTTGTTTTCCT−3’、逆方向5’−TGGATGAAATCCACCAAAGC−3’、
mPitx1、順方向5’−GTCCATGGAGGTGGGGAC−3’、逆方向5’−GCTTAGGCGCCACTCTCTT−3’、
mSox2、順方向5’−AAAGCGTTAATTTGGATGGG−3’、逆方向5’−ACAAGAGAATTGGGAGGGGT−3’、
mTrp63、順方向5’−AGCTTCTTCAGTTCGGTGGA−3’、逆方向5’−CCTCCAACACAGATTACCCG−3’。
【0080】
免疫蛍光染色
組織を4%パラホルムアルデヒド中、4℃で一晩固定した後、PBSで完全に洗浄した。ホールマウント免疫蛍光染色のため、胚を既に説明した通り加工した37。簡潔には、胚をDentのブリーチ液(4:1:1のEtOH:DMSO:30% H2O2)中で、室温で2時間透過処理し、メタノール連続洗浄を通じて再水和させた。次に、胚を1時間ブロッキングし、1次抗体中で一晩4℃でインキュベートし、PBS中で洗浄し、1次抗体中で一晩4℃でインキュベートし、完全に洗浄した。パラフィン包埋のために、組織をエタノール連続洗浄で脱水し、キシレン中で洗浄した後、パラフィン中に包埋した。染色のため、スライドを脱パラフィン化し、再水和させた。抗原賦活化をクエン酸緩衝液中で、スチーマーの中で45分間実施した。1次抗体を4℃で一晩インキュベートした。1次抗体後、スライドをPBS中で洗浄した後、2次抗体(1:500の希釈)とともに1時間室温でインキュベートした。2次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)をロバ中で作製し、Alexa Fluor488、594、または647へ共役させた。
【0081】
1次抗体
免疫蛍光染色に使用する抗体を、抗原、宿主種、製造元及びカタログ番号、ならびに染色に使用する希釈とともに列挙する。Atp4b、ウサギ、Santa Cruz sc84304、1:500;Cdh1、ヤギ、R&D Systems AF648、1:500;Cdh1、マウス、BD Biosciences 610182、1:500;Cdx2、マウス、Biogenex MU392A、1:500、Cldn18、ウサギ、Sigma HP A018446、1:200;Ctnnb1、ウサギ、Santa Cruz sc7190、1:100;FoxF1、ヤギ、R&D Systems F4798、1:500、ガストリン、ウサギ、Dako A0568、1:1,000;Gata4、ヤギ、Santa Cruz sc1237、1:200;Gif、ウサギ、Sigma HP A040774、1:100;Ghrl、ヤギ、Santa Cruz scl0368、1:200;ヒスタミン、ウサギ、Immunostar 22939、1:1,000;Krt8、ラット、DSHBトロマール−s;1:100;Mist1、ウサギ、Sigma HP A047834、1:200;Muc5ac、マウス、Abcam ab3649、1:500;Muc6、マウス、Abcam ab49462、1:100;Pdx1、ヤギ、Abcam ab47383、1:5,000;Pgc、ヒツジ、Abcam ab31464、1:10,000;Sst、ヤギ、Santa Cruz sc7819、1:100;Syp、モルモット、シナプス系101004、1:1,000;ビメンチン、ヤギ、Santa Cruz sc7557、1:200
【0082】
撮像
ニコンAIRsi倒立型共焦点顕微鏡上で、共焦点撮像を実施した。ホールマウント撮像のため、胚をメタノール中で脱水し、Murrayのクリア液(2:1の安息香酸ベンジル:ベンジルアルコール)中で透明にした直後に撮像した。染色後、スライドをFluoromount G(SouthernBiotech)でマウントし、室温で一晩空気乾燥させた。
【0083】
透過型電子顕微鏡
透過型電子顕微鏡のために、hGOを既に説明した通り加工した7。簡潔には、オルガノイドを3%グルタルアルデヒド中で固定し、0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液中で洗浄し、1時間の4%四酸化オスミウムについてインキュベートした。これらをその後、洗浄した後、エタノール中で連続脱水し、酸化プロピレン/LX112中で最終的に包埋した。次に、組織を切片化し、2%酢酸ウラニル、次いでクエン酸鉛で染色した。画像を日立透過電子顕微鏡上で可視化した。
【0084】
ペプシノーゲンELISA
製造元の説明書により、ヒトペプシノーゲンI型(PGI)ELISAキット(Thermo Scientific,EHPGI)を用いてELISAを行った。簡潔には、34日後のhGOを細胞回収溶液(Coming)中に4℃で1時間収集及びインキュベートした後、PBS中で洗浄した。オルガノイドをRIPA緩衝液で可溶化した後、高速で室温で30分間激しくボルテックスした。溶解液をペレット化し、上清を−80℃で収集及び保存した。ELISAのために、試料及び標準物質を技術的な複製物中で実施した。反応物をμQuantマイクロプレートリーダー(Bio Tek)上で測定した。450nmでの吸光度を測定し、570nmの吸光度を減算した。
【0085】
酸分泌アッセイ
酸分泌アッセイを既に説明した通り実施した(Schumacher et al,2015)。hGOをチャンバー付きのカバーガラス(Thermo Scientific)中で生育させ、チャンバーを倒立型共焦点顕微鏡(Zeiss LSM710)上に置き、実験を5%CO2及び37℃の条件下で実施した(インキュベーションチャンバー、PeCon、ドイツ国エルバッハ)。
【0086】
新鮮に単離したマウス胃底部腺または培養したhGOをアクリジンオレンジ(10μM)とともにインキュベートした後、アクリジンオレンジ蛍光を458nmまたは488nmで励起させ、画像を600〜650nm(赤色)または500〜550nm(緑色)でそれぞれ収集した。その一方で、hGOの管腔pHをモニターするために、供給電圧比例pH感受性色素、5−(及び−6)−カルボキシSNARF 5F(5mMストック:励起560nm、発光565〜605(緑色)及び620〜680(赤色)nm:Invitrogen)を管腔中へ微量注入し(46〜92nl)、モニターした。蛍光色素を培地中へも添加した。ヒスタミン(100μΜ;Sigma)を培地へ添加した一方で、ファモチジン(100μΜ;Sigma)またはオメプラゾール(100μΜ;Sigma)をヒスタミンの少なくとも30分前にプレインキュベートした。画像をMetaMorphソフトウェア(Molecular Devices、ペンシルベニア州ダウニングタウン地区)を用いて分析した。背景補正した620〜680/565〜605nm比の値を、標準曲線を用いてpHへ変換した。
【0087】
統計分析
統計的な有意性を、対形成していないスチューデントT検定、または一元配置分散分析をDunnettの多重比較事後検査とともに用いて判定した。0.05未満のp値を有意とみなした。
【0088】
統計、及び実験の再現性
統計分析を使用しないで、実験試料の規模を決め、特別な無作為化法を使用せず、研究者は実験中盲検ではなかった。統計方法及び基準を図の凡例において説明する。胃底部hGOの分化のためのプロトコルを、実験室における7名の独立したユーザによって、20回超、完了を成功させた。事例全部において、示されるデータは、複数の実験を代表する単一の実験に由来する。
【0089】
例示的な組み合わせ
以下の例は、本明細書の教示が組み合わされ得または適用され得る種々の非徹底的な方法に関する。以下の例は、本出願においてまたは本出願書類のその後の提出において、いかなるときにも呈され得るいかなる請求項の網羅も制限するよう企図するものではないことは理解されるべきである。ディスクレーマーは企図していない。以下の例は、単に説明目的以下のために提供されている。本明細書の種々の教示が数多くの他の方法において配置及び適用され得ることは熟慮される。いくつかの変法が、以下の例において引用されるある特定の特徴を省略し得ることも熟慮される。それゆえ、以下に引用される態様または特徴はいずれも、本発明者らによって、または本発明者らに対して関心のある相続人によって、後日明白に示されていない限り、決定的とみなされるべきではない。何らかの請求項が、本出願において、または以下に引用されるもの以外のさらなる特徴を含む本出願と関連するその後の出願において存在する場合、当該さらなる特徴は、特許性に関するいかなる理由についても追加されたと仮定されてはならない。
【0090】
例1.胃底部組織は、インビトロで生じ、以下のステップを含む。
【0091】
a)哺乳類胚体内胚葉(DE)細胞を、wnt経路活性化因子、FGFシグナル伝達経路活性化因子(例えば、FGF4)、BMPシグナル伝達経路阻害因子(例えば、ノギン)、及びレチノイン酸と第1の期間接触させ、当該第1の期間は、当該胚体内胚葉から3次元後部前腸スフェロイドを形成するのに十分であり、
b)3次元後部前腸スフェロイドを、成長因子、Wntシグナル伝達経路活性化因子、EGFシグナル伝達経路活性化因子、BMPシグナル伝達経路阻害因子、及びレチノイン酸を有する基底膜マトリックス(例えば、マトリゲル)中で、胃底部hGO(hFGO)を含む胃底部系譜を誘導するのに十分な第2の期間懸濁し、
c)ステップb)のhFGOをwnt経路活性化因子及びEGFシグナル伝達経路活性化因子の存在下で、第3の期間培養し、
d)ステップcのhFGOをwntシグナル伝達経路活性化因子、EGFシグナル伝達経路活性化因子、及びFGF10とともに第4の期間培養し、
e)ステップdのhFGOをMEK阻害因子と、機能的胃底部細胞タイプを含む胃底部組織を形成するのに十分な期間の第5の期間接触させる(MEK阻害因子は、例えば、PD0325901であり得る)。
【0092】
例2.例1の方法であって、当該第1の期間は、3日間±24時間であり、かつ当該レチノイン酸は、当該期間±24時間の3日目に添加される
【0093】
例3.例1〜2に記載の方法であって、当該第2の期間は、3日間±24時間である
【0094】
例4.例1〜3に記載の方法であって、当該第3の期間は、11日間±24時間である
【0095】
例5.例1〜4のいずれかに記載の方法であって、当該第4の期間は、10日間±24時間である
【0096】
例6.例1〜5のいずれかに記載の方法であって、当該第5の期間は、2日間の期間±24時間である
【0097】
例7.例1〜6のいずれかに記載の方法であって、ステップe)は、当該胃底部hGOをBMP4シグナル伝達活性化因子と接触させるステップをさらに含む。
【0098】
例8.例1〜7のいずれかに記載の方法であって、当該機能的胃底部細胞タイプは、プロトンポンプタンパク質を発現し、かつ酸を分泌する傍細胞である。
【0099】
例9.例1〜8のいずれかに記載の方法であって、当該機能的胃底部細胞は、ペプシノーゲンを分泌する主細胞である。
【0100】
例10.例1〜9のいずれかに記載の方法であって、当該ステップeは、SOX2+GATA+PDX1上皮を発生させるのに十分な期間実施される。
【0101】
例11.例1〜10のいずれかに記載の方法であって、当該ステップd及びステップeは、系譜マーカーMUC5AC、MUC6、PGC、及びGHRLの安定した発現を与えるのに十分な期間実施される。
【0102】
例12.例1〜11のいずれかに記載の方法であって、当該胚体内胚葉は、胚性幹細胞、胚性生殖細胞、人工多能性幹細胞、中胚葉細胞、胚体内胚葉細胞、後部内胚葉細胞、後部内胚葉細胞、及び後腸細胞、多能性幹細胞由来の胚体内胚葉、胚性幹細胞、成体幹細胞、または人工多能性幹細胞から選択される多能性幹細胞に由来する胚体内胚葉から選択される前駆細胞に由来する。
【0103】
例13.例1〜12のいずれかに記載の方法であって、当該胚体内胚葉は、多能性幹細胞をアクチビン、成長因子のTGFベータスーパーファミリーのBMP下位群、ノーダル、アクチビンA、アクチビンB、BMP4、Wnt3a、及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上の分子と接触させることに由来する。
【0104】
例14.例1〜13のいずれかに記載の方法であって、当該WNT経路活性化因子は、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11、及びWnt16から選択される1つ以上の分子であり、例えば、Wnt3a、または例えば、約50〜約1500ng/mlの濃度のWnt3aである。
【0105】
例15.例1〜14のいずれかに記載の方法であって、当該BMPシグナル伝達経路阻害因子は、例えば、ノギン、ドルソモルフィン、LDN189、DMH−1、及びこれらの組み合わせから選択され、当該前駆細胞は、約50〜約1500ng/mlの濃度のBMP阻害薬と接触させられる。BMP阻害因子は、BMPシグナル伝達経路を阻害することのできるタンパク質及び/または化学物質であり得る。
【0106】
例16.例1〜15のいずれかに記載の方法であって、当該ステップは、インビトロで実施される。
【0107】
例17.例1〜16のいずれかに記載の胃組織を含む組成物が産生される。胃組織は、神経支配及び/または血管がないことを特徴とする。
【0108】
例18.胃底部組織は、以下のステップを介して形成される。胃底部hGO(hFGO)をwnt経路活性化薬及びEGFシグナル伝達経路活性化薬と第1の期間、かつMEK阻害因子と第2の期間接触させるステップを含み(当該MEK阻害因子は、例えば、PD0325901であり得る)、当該第1及び第2の期間は、機能的胃底部細胞タイプを形成するのに十分な期間実施され、
当該hFGOは、3次元後部前腸スフェロイドを、基底膜マトリックス中で、成長因子、wnt経路活性化薬、EGFシグナル伝達経路活性化因子、BMPシグナル伝達経路阻害因子、及びレチノイン酸と、当該3次元後部前腸スフェロイドを前記hFGOへ変換するのに十分な期間接触させることによって得られ、
当該3次元後部前腸スフェロイドは、哺乳類胚体内胚葉(DE)細胞をwnt経路活性化薬、FGFシグナル伝達経路活性化薬、BMPシグナル伝達経路阻害因子、及びレチノイン酸と接触させることによって得られる。
【0109】
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【0146】
百分率及び比率はすべて、別段の記載がない限り、重量により算出される。
【0147】
百分率及び比率はすべて、別段の記載がない限り、組成物全体に基づいて算出される。
【0148】
本明細書のいたるところで与えられるあらゆる最高数値限界が、あらゆる最低数値限界が本明細書に明確に記載されているかのように、当該最低数値限界を含むことは理解されるべきである。本明細書のいたるところで与えられるあらゆる最低数値限界は、あらゆる最高数値限界が本明細書に明確に記載されているかのように、当該最高数値限界を含むであろう。本明細書のいたるところで与えられるあらゆる数値範囲は、あらゆるより狭い数値範囲が本明細書にすべて明確に記載されているかのように、このようなより広い数値範囲内に収まるこのようなより狭い数値範囲を含むであろう。
【0149】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙される実際の数値に厳格に制限されるものとして理解されることにはなっていない。代わりに、別段の指定がない限り、各このような寸法は、列挙される値及び当該値を取り囲む機能的に等価の範囲の両方を意味するよう企図される。例えば、「20mm」と開示された寸法は、「約20mm」を意味するよう企図される。
【0150】
いかなる相互参照したまたは関連する特許または出願も含む、本明細書に引用されるあらゆる文書は、別段の明確な排除またはさもなければ制限がない限り、本明細書によりその全体が参照により本明細書に組み込まれる。いかなる文書の引用も、本明細書で開示または請求されるいかなる発明に関しても、従来技術を認めているわけではなく、あるいはそれを単独で、またはいかなる他の参考文献もしくは参考文献類とのいかなる組み合わせにおいても、いかなるこのような発明も教示、示唆もしくは開示することを認めているわけではない。さらに、本文書における用語の何らかの意味または定義が、参照により組み込まれる文書における同じ用語の何らかの意味または定義と矛盾するほど、本文書における当該用語に割り当てられた意味または定義は規制されなければならない。
【0151】
本発明の詳細な実施形態が説明及び記載されてきたが、種々の他の変更及び改変が本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行えることは、当業者に対して明白であろう。それゆえ、添付の特許請求の範囲において、本発明の範囲内にあるこのような変更及び改変をすべて網羅することが企図されている。