特許第6963902号(P6963902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6963902樹脂成型体、歯車、樹脂成型用型および樹脂成型方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963902
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】樹脂成型体、歯車、樹脂成型用型および樹脂成型方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/37 20060101AFI20211028BHJP
   B29C 45/27 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   B29C45/37
   B29C45/27
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-50733(P2017-50733)
(22)【出願日】2017年3月16日
(65)【公開番号】特開2018-153945(P2018-153945A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2020年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】305018823
【氏名又は名称】盛岡セイコー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 皓
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−135901(JP,A)
【文献】 特開昭59−079739(JP,A)
【文献】 特開昭55−063240(JP,A)
【文献】 特開2013−071364(JP,A)
【文献】 特開2003−326562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面に設けられるゲート位置と、
前記第1表面の反対側の第2表面と、
前記第2表面に設けられ前記ゲート位置に対向する近接部であって、前記ゲート位置との
距離が前記第1表面と前記第2表面との距離より小さくなるように設けられる近接部と、
を備え、
前記近接部は、前記第2表面に向けて盛り上がった形状となることを特徴とする樹脂成型体。
【請求項2】
前記第1表面に設けられる凹部を備え、
前記ゲート位置は前記凹部に設けられる
請求項1の樹脂成型体。
【請求項3】
請求項1または請求項2の樹脂成型体は、
前記第1表面から突出する回転軸を備える歯車。
【請求項4】
樹脂が流入可能なゲートが設けられる第1型と、
キャビティから浮出すように形成される浮出部であって前記ゲートが設けられる部位に対
向し、頂点が前記キャビティに向けて盛り上がった形状となる浮出部を備える樹脂成型用型。
【請求項5】
ゲートから樹脂を流入する第1工程と、
流入した樹脂が前記ゲートに対向し、キャビティから浮出すように形成され頂点が前記キャビティに向けて盛り上がった形状となる浮出部に突き当たる第2工程と、
前記浮出部に突き当たった樹脂が周囲に拡散する第3工程と、
樹脂を前記浮出部から離型する第4工程と、
を備える樹脂成型方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成型体、歯車、樹脂成型用型および樹脂成型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂を材料として樹脂品を作製する場合、射出成型法を用いる場合がある。ゲートと呼ばれる樹脂流入口からキャビティに樹脂を流入させ、キャビティ内の樹脂が固まった後に型を離型することにより、樹脂品を取り出すことができる。
【0003】
ところで、このように樹脂材料を成型する際に、流入する樹脂の勢いに応じて、キャビティ内部に気泡が生じることがあり、当該気泡が離型後の表面不良に寄与してしまう、という現象が生じ得る。
このような現象は、一般的にジェッティングと呼ばれる成型不良として知られる。通常の射出成形の工程では、ゲートから入流された樹脂は、ゲート周辺から金型の内壁に沿うように樹脂が充填される。換言すると、かかる樹脂は、ゲート周辺から遠方に向けてまるで水面の波紋のように充填される。
しかし、ジェッティング現象では、先に入った樹脂の速度が速い場合、ゲート周辺にとどまらず一気に遠方へと進出した樹脂と、その後のゲート周辺から充填している樹脂とが合流してしまう。
このジェッティング現象が発生すると、樹脂の融合が悪く製品表面に蛇行模様状の外観不良を発生させる。具体的には、例えば、ジェッティング症状により、半溶解状態の樹脂が成形用型キャビティ内の空気を巻き込んで固化してしまい、製品に気泡として残ってしまう。
【0004】
この成型不良を抑制する技術として、例えば、特許文献1が知られている。当該特許文献1においては、ゲートの正面に特別に壁を設けることで、樹脂が流入される際の勢いを弱め、樹脂を金型の内部に徐々に行き渡らせる技術が開示されている。
しかしながら、このような方法では、特別に壁を設けたことにより、樹脂の流動性に偏りが生じる場合があり、成型後の樹脂品の強度低下や外観劣化等の少なくとも一つの品質低下が生じうる。例えば、分流が生じることによる、いわゆるウェルドラインが原因の一つとなり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3027148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑み、成型不良を抑制することができる樹脂成型体、歯車、樹脂成型用型および樹脂成型方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の樹脂成型体一の側面は、第1表面に設けられるゲート位置と、前記第1表面の反対側の第2表面と、前記第2表面に設けられ前記ゲート位置に対向する近接部であって、前記ゲート位置との距離が前記第1表面と前記第2表面との距離より小さくなるように設けられる近接部と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の樹脂成型体一の側面は、前記第1表面に設けられる凹部を備え、前記ゲート位置は前記凹部に設けられることを特徴とする。
また、本発明の歯車一の側面は、前記の樹脂成型体が前記第1表面から突出する回転軸を備えることで歯車として構成されることを特徴とする。
また、本発明の樹脂成型用型一の側面は、樹脂が流入可能なゲートが設けられる第1型と、キャビティから浮出すように形成される浮出部であって前記ゲートが設けられる部位に対向する浮出部を備えることを特徴とする。
また、本発明の樹脂成型方法一の側面は、ゲートから樹脂を流入する第1工程と、流入した樹脂が前記ゲートに対向する浮出部に突き当たる第2工程と、前記浮出部に突き当たった樹脂が周囲に拡散する第3工程と、樹脂を前記浮出部から離型する第4工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、樹脂成型時の成型不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の樹脂成型体の断面図である。
図2】実施形態の第1変形例の樹脂成型体の断面図である。
図3】実施形態の第2変形例の樹脂成型体の断面図である。
図4】実施形態の樹脂成型用型の模式図である。
図5】実施形態の樹脂成型方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、実施形態の樹脂成型体の断面図である。例えば、樹脂成型体1は歯車として構成される。
樹脂成型体1は、例えば、回転の中心となる軸4を備える。また、例えば、他部品と係合する場合の係合部10を備える。例えば、係合部10は、歯車の歯面を構成するが、面どうしが摩擦係合するものも含まれる。
【0011】
樹脂成型体1は、その外形を画定する面として、一方の面を第1表面11とし、他方の面を第2表面12とする。第2表面12は第1表面11の反対側の面として設けられる。第1表面11から軸4が突出しており、軸4に沿う方向をZ軸と規定すれば、第1表面11はXY平面に存在する。
【0012】
第1表面11にはゲート位置6が突出して設けられる。ゲート位置6は、後述する樹脂成型方法により樹脂が流入する樹脂流入口に対応する位置に設けられる。
ゲート位置6は、例えば、Z軸方向に向けて突出する凸状に形成されるが、凸状の形状として把握できずとも目に見える印として存在していればよい。このようなゲート位置6は、一般的には所定の長さにカットされ、ゲート跡と称されるものも含まれる。
【0013】
第2表面12には、窪んだ形状の窪み部8が設けられる。窪み部8の底面には近接部14が設けられる。近接部14とゲート位置6との距離は、第1距離W1として設定される。一方、第1表面11と第2表面12との距離は、第2距離W2として設定される。ここで、第1距離W1は第2距離W2より小さい。また、例えば、これら第1距離W1および第2距離W2は樹脂成型体1の厚みとして設定される。この厚みは前述のZ軸方向で規定される。
【0014】
ここで、近接部14は、厚み方向(Z方向)から見て、ゲート位置6に重なる位置に配置される。近接部14とゲート位置6とは少なくも一部が重なっていればよい。なお、ゲート位置6が厚み方向(Z方向)から見て、近接部14に内包されていてもよい。
また、近接部14は、面方向(XY方向)において、窪み部8の内部に形成される。窪み部8は、側面をテーパ面として形成される。
【0015】
次に、図1図4図5を参照しつつ、樹脂成型体1の成型方法について説明する。図4は、樹脂成型用型の模式図である。図5は、樹脂成型方法の工程図である。
【0016】
本方法は、射出成型法により樹脂を型100の内部に流入させる工程(第1工程210)を含む。流入される樹脂は、例えば、LCP(液晶ポリマー)である。LCPは、融点を超えても分離せず、ガラス転移温度がない、という特性を有する材料として知られ、その高い剛性により種々の用途で用いられる。
【0017】
型100は、コア110(第1型)と、キャビティ120(第2型)により構成される。コア110には樹脂を流入させるゲート112が形成される。また、キャビティ120には部分的に盛り上がった浮出部122が形成される。ゲート112と浮出部122とは互いに対向する位置に形成されている。
【0018】
ゲート112から流入した樹脂は、ゲート直下の浮出部122に突き当たる(第2工程220)。
ここで、従来の射出成型法によれば、ゲート直下のキャビティとの間隔よりゲート径が十分小さいと(例えば、間隔/ゲート径>2.0)、ジェッティングという現象を引き起こしやすく、その際にキャビティ内の空気を巻き込むおそれがあった。
【0019】
これに対して、本実施形態においては、浮出部122がゲート112に近接しているので、ゲート112を通過した樹脂は即座に減速され、ジェッティングにより樹脂内に気泡を内包する事態を抑制できるようになる。
例えば、ゲート112のゲート径R1は、ゲート112と浮出部122との間隔D1に近い値として設定され、例えば、間隔D1/ゲート径R1≦2.0、として設定されることがある。さらに、間隔D1/ゲート径R1≦1.5とすることが好ましい。このような設定により、前述の作用効果が有効に奏されるようになる。
なお、ゲート112と浮出部122との間隔D1は、前述の近接部14とゲート位置6との第1距離W1に対応する値であり、間隔D1と第1距離W1とはほぼ等しい。
【0020】
浮出部122に突き当たった樹脂は、周囲のキャビティ120内に拡散する(第3工程230)。これにより、ゲート112から流入した樹脂がキャビティ内部に行き渡る。この際、ゲート112を通過した樹脂が、その直後に浮出部122に突き当たり流動するため、樹脂流入速度は減速されるので,ジェッティング現象を引き起こし難くなり、キャビティ内の空気を巻き込むおそれが抑制される。
【0021】
例えば、浮出部122の側面はテーパ状に形成される。これにより、流入された樹脂が、浮出部122のテーパによって、樹脂流入速度は減速されつつ、同心円状に拡散されるので、気泡を内包する確率が低下し、気泡の発生を抑制することができる。
【0022】
キャビティ120の内部に行き渡った樹脂を固化したのち、コア100とキャビティ120とを分離し離型することで、樹脂成型品1を取り出すことができる(第4工程240)。例えば、樹脂成型品1として歯車1を取り出すことができる。
以上説明したように、本実施形態においては、第1表面11に設けられるゲート位置6と、第1表面11の反対側の第2表面12と、第2表面12に設けられゲート位置6に対向する近接部14であって、ゲート位置6との距離が第1表面11と第2表面12との距離より小さくなるように設けられる近接部14と、を備えるため、流入された樹脂が減速されつつ、同心円状に拡散されるので、気泡を内包する確率が低下し、気泡の発生を抑制することができる。
【0023】
次に、上記の実施形態の変形例について図2を参照して説明する。図2は、実施形態の第1変形例の樹脂成型体20の断面図である。上記の実施形態と重複する構成については同一の符号を付することで説明を省略する。
第1変形例の特徴は、第1表面11に凹部22が設けられており、凹部22の内部にゲート位置6が設けられている点である。このような構成の一例として、いわゆるピンゲートを適用した構成があげられる。
これにより、浮出部122がゲート112にさらに近接する構成となるので、ジェッティングにより樹脂内に気泡を内包する事態を抑制できるようになる。
【0024】
なお、本変形例においては、窪み部28がテーパ状ではなく、円柱面状に形成される。但し、本変形例において、窪み部28をテーパ状としてもよい。
【0025】
次に、他の変形例について、図3を参照して説明する。図3は、実施形態の第2変形例の樹脂成型体30の断面図である。上記の実施形態と重複する構成については同一の符号を付することで説明を省略する。
第1変形例の特徴は、近接部314が第2表面12に向けて盛り上がった形状となる点である。窪み部8と近接部314とで構成される凹形状がすり鉢状であると換言してもよい。
これにより、浮出部122がゲート112から流入する樹脂の勢いを低下させることに寄与するので、ジェッティングにより樹脂内に気泡を内包する事態を抑制できるようになる。
【0026】
なお、以上の変形例における樹脂成型体は、実施形態において説明した型100と同等の型を用いて、同じく実施形態において説明した樹脂成型方法により、製造することができる。
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態および変形例に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変更が可能である。
【0027】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0028】
1、20、30…樹脂成型体、歯車
6…ゲート位置
8、28…窪み部
11…第1表面
12…第2表面
14、314…近接部
22…凹部
100…型
110…コア
120…キャビティ
112…ゲート
122…浮出部
210…第1工程
220…第2工程
230…第3工程
240…第4工程
W1…第1距離
W2…第2距離
R1…ゲート径
D1…間隔
図1
図2
図3
図4
図5