【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業」「立体造形による機能的な生体組織製造技術の開発」委託研究開発、産業技術力強化法19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補給容器は、前記液体材料の液面高さが前記第1管の前記上端よりも下方であって且つ前記第2管の前記上端よりも上方となるよう、前記液体材料を保持する、請求項1又は2に記載の液体材料供給装置。
前記保持槽内における前記液体材料の液面高さが調整されるべき液面高さよりも低くなった場合、前記第1管は、前記補給容器に気体を移送し、前記第2管は、前記補給容器内の前記液体材料を前記保持槽に移送する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体材料供給装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、保持容器内の液体材料の液面高さは、サーミスタ、フロート、光学式センサ等の検出手段を用いて監視される。そして、検出手段による検出結果に応じて、保持容器へ液体材料が補給される。しかしながら、検出手段の信頼性は十分と言えず、検出手段は、汚れや劣化によって液面高さを正確に検出することができないこともある。また、一般に保持容器内に蓄えられている液体材料の量は下限を検出するとポンプなどを用いて補給され、上限を検出すると補給が停止する。この液体材料の補給にともなって、インクジェットノズルの吐出口におけるメニスカスの状態が変化し、印刷の状態も変化する。また、補給するためのポンプの始動時等にインクジェットノズルの吐出口におけるメニスカスが不安定となることもある。
【0008】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、三次元造形装置用のインクジェットノズルに液体材料を供給する液体材料供給装置の動作を安定且つ迅速とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による第1の液体材料供給装置は、
三次元造形装置で用いられるインクジェットノズルに液体材料を供給する液体材料供給装置であって、
前記インクジェットノズルに供給される液体材料を保持する保持槽と、
前記保持槽よりも上方に配置され且つ前記保持槽に補給される液体材料を保持する補給容器と、
前記補給容器内で開口した上端と、前記保持槽内で開口した下端と、を有する第1管と、
前記第1管の前記上端よりも下方となる位置にて前記補給容器内で開口した上端を有する第2管と、を備える。
【0010】
本発明による第1の液体材料供給装置において、前記第2管の前記下端は、前記第1管の前記下端よりも下方に位置していてもよい。
【0011】
本発明による第1の液体材料供給装置において、前記補給容器は、前記液体材料の液面高さが前記第1管の前記上端よりも下方であって且つ前記第2管の前記上端よりも上方となるよう、前記液体材料を保持するようにしてもよい。
【0012】
本発明による第1の液体材料供給装置において、前記第1管の前記下端は、前記保持槽内において調整されるべき前記液体材料の液面高さに位置していてもよい。
【0013】
本発明による第1の液体材料供給装置において、前記保持槽内における前記液体材料の液面高さが調整されるべき液面高さよりも低くなった場合、前記第1管は、前記補給容器に気体を移送し、前記第2管は、前記補給容器内の前記液体材料を前記保持槽に移送するようにしてもよい。
【0014】
本発明による第1の液体材料供給装置は、
前記保持槽を収容する筐体と、
前記筐体内の圧力を制御する圧力制御手段と、を更に備え、
前記圧力制御手段は、気体給排手段と、前記気体給排手段と前記筐体との間に設けられた給排管と、を有し、
前記給排管の前記筐体側の端部は、前記保持槽の外部に位置していてもよい。
【0015】
本発明による第2の液体材料供給装置は、
三次元造形装置で用いられるインクジェットノズルに液体材料を供給する液体材料供給装置であって、
前記インクジェットノズルに供給される液体材料を保持する保持槽と、
前記保持槽よりも上方に配置され且つ前記保持槽に補給される液体材料を保持する補給容器と、
前記保持槽内における前記液体材料の液面高さが調整されるべき液面高さよりも低くなった場合に、前記保持槽から前記補給容器に気体を移送する第1管および前記補給容器から前記保持槽に前記液体材料を移送する第2管と、を備える。
【0016】
本発明による三次元造形装置は、
本発明による第1及び第2の液体材料供給装置のいずれかと、
前記液体材料供給装置から前記液体材料を供給されるインクジェットノズルと、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、液体材料供給装置の動作を安定且つ迅速とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、図面においては、便宜上、縮尺及び縦横の寸法比等を実物のそれらから変更されて誇張されている箇所がある。また、本明細書において用いられる形状、幾何学的条件及びそれらの程度を特定する用語や値は、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待しうる程度の範囲を含みうるものとして解釈することとする。また、本明細書において「上」及び「下」の用語は、重力が作用する方向を基準とした鉛直方向に基づいて定められている。
【0020】
図1〜
図11は、本発明の一実施の形態を説明するための図である。
図1に示すように、三次元造形装置10は、制御部15及び三次元造形機20を有している。制御部15は、三次元造形機20の各構成要素の動作を制御する。制御部15は、操作者等が三次元造形装置10を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボード17や、三次元造形装置10の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ18等の入出力装置と接続されている。また、制御部15は、三次元造形装置10で実行される処理を実現するためのプログラム等が記録された記録媒体16にアクセス可能となっている。記録媒体16は、ROMおよびRAM等の半導体メモリ、ハードディスク、DVD−ROM等のディスク状記録媒体等、既知のプログラム記録媒体から構成され得る。
【0021】
三次元造形機20は、制御部15からの制御信号に基づき、材料を所定の固化パターンで固化させてなる単位層ul(
図4参照)を積層していくことで三次元造形物Oを製造する。
図1に示された例において、三次元造形機20は、粉末材料pmの層に所定のパターンで液体材料lmを塗布することで、粉末材料pmを当該所定のパターンで結合又は固化してなる単位層ulを順次形成していき、三次元造形物Oを完成させる。
【0022】
粉体材料pmとして、例えば、ポリアミドまたはポリスチレンなどの合成粉末や、石膏やガラスビーズ、砂などの材料、スターチなどの有機材料など、粉末を層状に積層していくことができれば、あらゆる粉体を用いることができる。また、液体材料lmとして、例えば、硬化性樹脂を含む結着液を用いることができる。なお、昨今では、生体適合性造形物を、三次元造形物Oとして作製することも検討されている。生体適合性造形物は、生体への適用を想定された物品であり、典型的には生体の体内に移植されるようになる。生体適合性造形物を作製する場合、例えば、乾燥させたコラーゲン粉末を粉末材料pmとして用い、結着剤として機能する水を液体材料lmとして用いることができる。
【0023】
図1に示すように、三次元造形機20は、ステージ25、昇降手段26、区画壁27、粉末材料供給装置28、リコータ29、インクジェットノズル30及び液体材料供給装置40を有している。インクジェットノズル30及び液体材料供給装置40によって、インクジェット印刷装置Pが、構成される。この三次元造形機20では、ステージ25上で三次元造形物Oが作製されていく。ステージ25は、区画壁27で囲まれた空間内に配置されている。昇降手段26は、ステージ25に接続し、ステージ25を上下に駆動する。すなわち、ステージ25は、区画壁27によって囲まれた空間内で上下に移動することができる。昇降手段263として、例えば、流体圧シリンダ、ボール螺子機構、リニアモータ、パンタグラフ等を用いることができる。
【0024】
粉末材料供給装置28は、粉末材料pmを供給する手段である。粉末材料供給装置28は、
図1の紙面における左右方向に移動可能となっている。粉末材料供給装置28は、
図1における紙面の奥行き方向に長手方向を有し、この長手方向に沿って線状に粉末材料pmを供給することができる。この結果、粉末材料供給装置28は、移動しながら粉末材料pmを塗布することで、ステージ25上の全域に粉末材料pmを供給することができる。
【0025】
リコータ29は、細長状の部材であって、粉末材料供給装置28と同様に、
図1における紙面の奥行き方向に長手方向を有している。リコータ29は、粉末材料供給装置28と同様に、
図1における紙面の左右方向に移動可能となっている。リコータ29は、ステージ25上を移動することで、ステージ25上に供給された粉末材料pmを均し、一定厚みを有する粉末材料pmの層を形成する。
【0026】
インクジェットノズル30は、粉末材料供給装置28と同様に、
図1における紙面の奥行き方向に長手方向を有している。
図5に示すように、インクジェットノズル30は、その長手方向dlに沿って多数の吐出口31を有している。インクジェットノズル30は、各吐出口31に対応して、インク室32およびインク室32内の圧力を調整する調整手段(図示せず)を有している。圧力を調整する調整手段として、ピエゾ素子のような圧電素子や、加熱素子を例示することができる。インクジェットノズル30では、各インク室32の圧力を他のインク室32から独立して制御することで、当該インク室32に対応する吐出口31からの液体材料lmの吐出の有無を制御することができる。インクジェットノズル30は、粉末材料供給装置28と同様に、
図1における紙面の左右方向に移動可能となっている。この結果、インクジェットノズル30は、ステージ25上に形成された粉末材料pmの層に、任意のパターンで液体材料lmを塗布することができる。
【0027】
インクジェットノズル30は、供給管35を介して、液体材料供給装置40と接続している。供給管35は、インクジェットノズル30内に形成された内部通路33と接続している。この内部通路33は、インクジェットノズル30内に形成されたインク室32に通じている。液体材料供給装置40は、供給管35を介して、インクジェットノズル30に液体材料lmを供給する。液体材料供給装置40は、インクジェットノズル30の吐出口31に形成されたメニスカスを破壊しないよう、一定圧力に維持された液体材料lmをインクジェットノズル30に安定して供給する。
【0028】
吐出口31におけるメニスカスは、インク室32内の圧力と吐出口31の外部圧力とのバランスによって形成されている。メニスカスが安定しないと、液体材料lmの吐出量が変動し、更には吐出口31から液体材料lmが漏れ出してしまうこともある。すなわち、インクジェットノズル30内に一定圧力の液体材料lmを供給してメニスカスを安定させることが、所望のパターンで液体材料lmを塗布する上で、更には所望の形状の三次元造形物Oを作製する上で、極めて重要となる。この点、ここで説明する液体材料供給装置40には、液体材料lmを一定圧力で迅速に供給することを可能にする工夫が、施されている。この結果、所望のパターンで高精度に液体材料lmを塗布することができ、これにより、所望の形状の三次元造形物Oを安定して作製することができる。この液体材料供給装置40については、後に詳述する。
【0029】
なお、供給管35は、筒状の部材である。液体材料供給装置40が、インクジェットノズル30と同期して移動可能である場合、供給管35は、例えば樹脂や金属等からなる高剛性の部材とすることができる。一方、液体材料供給装置40は静止し、インクジェットノズル30のみが移動する場合、供給管35は、例えばゴム等からなる柔軟性を有した部材とすることができる。ただし、供給管35が潰れて、供給管35を介した液体材料lmの流路が閉鎖されてしまうことを防止するため、供給管35は、或る程度の剛性を有していることが好ましい。
【0030】
次に、三次元造形装置10を用いて三次元造形物Oを製造する方法について、説明する。以下に説明する三次元造形装置の製造方法は、制御部15が記録媒体16に予め記録されたプログラムを読み込むことにより、実施される。
【0031】
ここで説明する三次元造形物Oの製造方法では、作製されるべき三次元造形物Oを一方向に沿って多数に分割してなる単位層(断面層)ulを、順次作製していくことで、三次元造形物Oを最終的に造形する。三次元造形機20の各構成要素の具体的な動作は、以下のとおりである。
【0032】
まず、
図2に示すように、ステージ25が、昇降手段26によって所定に高さに維持される。具体的には、ステージ25の上面と区画壁27とによって、一定の深さの凹部が形成されるようにする。
【0033】
次に、粉末材料供給装置28及びリコータ29が、ステージ25上を移動する。このとき、粉末材料供給装置28は、粉末材料pmをステージ25上に供給する。リコータ29は、ステージ25上に供給された粉末材料pmを掻き広げる。これにより、ステージ25上に、一定の厚みを有した粉末材料pmの層が形成される。なお、
図2に示すように、粉末材料供給装置28及びリコータ29の移動中、インクジェットノズル30は、ステージ25の上方となる領域からずれた位置に静止している。
【0034】
その後、
図3に示すように、粉末材料供給装置28及びリコータ29が、ステージ25の上方となる領域からずれた位置に戻る。次に、インクジェットノズル30が、ステージ25上を移動する。インクジェットノズル30は、制御部15からの制御信号にしたがった所定のパターンで、ステージ25上の粉末材料pmの層に液体材料lmを塗布する。ステージ25上における粉末材料pmの層のうち液体材料lmが塗布された領域において、粉末材料pmが固化または結合する。
【0035】
以上の工程により、粉末材料pmが所定のパターン(二次元形状)で固められてなる単位層ulが形成される。なお、液体材料lmの塗布後に、液体材料lmに含まれた硬化性物質を硬化させる処理が行われてもよい。
【0036】
その後、昇降手段26が、ステージ25を所定量だけ降下させる。この状態から再び、粉末材料pmの層の形成および液体材料lmの塗布が実施され、単位層ul上に別の単位層ulが形成される。
図4に示すように、順次形成される単位層ulが互いに結合していくことにより、三次元造形物Oを一体的に形成することができる。最終的に、液体材料lmが塗布されていない粉末材料pmの未結合部分を除去することで、所望の形状を有した三次元造形物Oが得られる。
【0037】
次に、液体材料供給装置40について更に詳述していく。上述したように、液体材料供給装置40には、インクジェットノズル30への液体材料lmの供給を安定して且つ迅速に行うことを可能とする工夫がなされており、これにより、インクジェットノズル30からの液体材料lmの塗布精度を効果的に改善することができる。
【0038】
図5に示すように、液体材料供給装置40は、主たる構成要素として、保持槽60、補給容器70、第1管81及び第2管82を有している。保持槽60及び補給容器70は、液体材料lmを貯留している。一方、第1管81及び第2管82は、保持槽60及び補給容器70の間での流体の移動を可能にしている。
【0039】
保持槽60は、供給管35と接続している。保持槽60に貯留された液体材料lmは、供給管35を介してインクジェットノズル30に供給される。したがって、保持槽60は、供給管35及びインクジェットノズル30の内部通路33を介して、インクジェットノズル30の各インク室32と流体連通している。一方、補給容器70は、密閉容器として形成されている。すなわち、補給容器70は、第1管81及び第2管82を介して保持槽60と連通していることを除き、密閉されている。補給容器70は、保持槽60に対して鉛直方向dvにずらして配置されている。補給容器70は、保持槽60よりも鉛直方向dvにおける上方に位置している。保持槽60及び補給容器70は、収容する液体材料lmに対する耐性を有する種々の材料を用いて、形成され得る。
【0040】
次に、第1管81及び第2管82について説明する。第1管81及び第2管82は、両端が開口した筒状の部材である。したがって、第1管81及び第2管82は、流体の流路を形成することができる。第1管81及び第2管82は、例えば、液体材料lmに対する耐性を有する種々の材料を用いて形成され得る。第1管81は、補給容器70内に開口した上端81aを有している。また、第1管81は、保持槽60内に開口した下端81bを有している。第2管82は、補給容器70内に開口した上端82aを有している。第2管82の上端82aは、補給容器70内において、第1管81の上端81aよりも鉛直方向dvにおける下方に位置している。第2管82の下端82bは、第2管82内を通過する液体材料lmを保持槽60に導入することができる位置に配置されている。典型的には、図示された例のように、第2管82の下端82bは、保持槽60内に位置する。
【0041】
なお、図示された例において、第1管81及び第2管82は、直線状に延びる部材として形成されているが、この例に限られない。上述した上端81a,82aおよび下端81b,82bの位置関係が満たされれば、第1管81及び第2管82は、例えばゴムチューブによって構成されて、湾曲していていもよい。ただし、ただし、第1管81又は第2管82が潰れて、第1管81又は第2管82を介した流路が閉鎖されてしまうことを防止するため、第1管81及び第2管82は、或る程度の剛性を有していることが好ましい。
【0042】
なお、図示された例において、補給容器70に保持された液体材料lmの液面高さls2は、第1管81の上端81aよりも下方であって且つ第2管82の上端82aよりも上方となっている。これにより、第2管82内を液体材料lmで満たすことが可能となる。また、第2管82の下端82bは、第1管81の下端81bよりも下方に位置している。そして、第2管82の下端82bは、保持槽60の保持された液体材料lmの液面高さls1よりも下方に位置している。
【0043】
図5に示された液体材料供給装置40は、上述した構成要素に加えて、保持槽60を収容する筐体50と、筐体50内の圧力を調整する圧力制御手段45と、を有している。すなわち、圧力制御手段45は、インクジェットノズル30に液体材料lmを供給する保持槽60の設置環境となる筐体50内の圧力を一定に維持する。
【0044】
具体的な構成として、圧力制御手段45は、気体給排手段46と、気体給排手段46と筐体50との間に設けられた給排管47と、を有している。気体給排手段46は、例えばポンプ等によって形成される。保持槽60に保持された液体材料lmの液面高さls1とインクジェットノズル30の吐出口31との鉛直方向dvにおける高さの差にも依存するが、メニスカスを安定させる観点から、保持槽60の設置環境を大気圧よりも低い一定圧力に維持することが多い。この場合、気体給排手段46として吸引ポンプやベンチュリ管を用いることができる。
【0045】
一方、給排管47は、種々の材料を用いて形成され得る。ただし、給排管47は、気体給排手段46での吸引によって潰れて流路を閉鎖しない程度の剛性を有している必要がある。
【0046】
図5に示された例において、給排管47の筐体50側の端部47aは、保持槽60の外部に位置している。このような配置によれば、保持槽60内で液体材料lmに動きが生じたとしても、液体材料lmの飛沫が、給排管47内に進んで気体給排手段46に吸引されることを効果的に防止することができる。例えばポンプ等の機器からなる気体給排手段46にとって、液体材料lmの吸引は故障の原因となり得る。この故障原因に処することによっても、液体材料供給装置40による液体材料lmの供給動作を効果的に安定させることができる。
【0047】
さらに、
図5に示された例では、保持槽60の上方開口60aを塞ぐ蓋体65が設けられている。この蓋体65によっても、液体材料lmの飛沫が給排管47に進むことを効果的に防止することができる。なお、この蓋体65には、複数の通気孔66が設けられている。この通気孔66を介して気体(例えば、空気)が流通することで、蓋体65で覆われた保持槽60の内部圧力が、筐体50内の圧力と同一に維持される。
【0048】
次に、以上のような構成からなる液体材料供給装置40を用いてインクジェットノズル30に液体材料lmを供給する際の作用について、
図5〜
図7を主に参照しながら、説明する。
【0049】
まず、インクジェットノズル30から液体材料lmの吐出が実施されると、インクジェットノズル30のインク室32内の圧力が低下する。このインク室32内の圧力低下にともなって、液体材料供給装置40の保持槽60に保持された液体材料lmが、供給管35を流れて、インクジェットノズル30内に供給される。
【0050】
ここで説明する液体材料供給装置40では、詳しくは後述するように、保持槽60内における液体材料lmの保持量は一定に維持されるようになっている。具体的には、
図5に示すように、保持槽60に保持された液体材料lmの液面高さls1は、第1管81の下端81bと同じ高さに維持される。また、液体材料lmを保持した保持槽60の設置環境は、圧力制御手段45によって一定圧力に維持された筐体50内である。したがって、インクジェットノズル30の吐出口31に形成されたメニスカスを乱すことなく、液体材料供給装置40からインクジェットノズル30に、おおよそ一定圧力の液体材料lmを安定して供給することができる。また、液体材料供給装置40からインクジェットノズル30への液体材料lmの流れは、圧送手段等の機器によるものではなく、重力および圧力に起因するものである。したがって、機器の始動にともなった、液体材料lmの供給遅れ等を引き起こすことなく、液体材料供給装置40からインクジェットノズル30へと迅速に液体材料lmを供給することができる。
【0051】
図6に示すように、液体材料供給装置40からインクジェットノズル30へと液体材料lmが流れると、保持槽60内における液体材料lmの保持量が減少する。これにともなって、保持槽60内での液体材料lmの液面高さls1が、第1管81の下端81bの位置よりも低くなる。すなわち、第1管81の下端81bが、保持槽60に貯留された液体材料lm内から露出するようになる。
【0052】
図6及び
図7に示すように、第1管81の下端81bが気体環境内(例えば、空気環境内)に配置されると、気体の比重が液体材料lmの比重よりも小さいことに起因して、保持槽60内の気体が、第1管81を通じて、補給容器70内に流れる。併せて、
図7に示すように、上端82aが補給容器70に貯留された液体材料lm内に位置する第2管82を通じて、補給容器70の液体材料lmが保持槽60に流れる。すなわち、補給容器70から保持槽60へと、第2管82を通じて、液体材料lmが補給される。この結果、補給容器70内での液体材料lmの液面高さls2は下がり、保持槽60内での粉末材料pmの液面高さls1は上昇する。
【0053】
補給容器70から保持槽60への液体材料lmの補給は、圧送手段等の機器によるものではなく、重力に起因するものである。したがって、機器の始動にともなった、液体材料lmの補給遅れ等を引き起こすことなく、補給容器70から保持槽60へと迅速に液体材料lmを補給することができる。また、圧送手段等の機器を用いて保持槽60へ液体材料lmを補給する場合と比較して、重力による液体材料lmの補給によれば、保持槽60内における液体材料lmの液面の乱れを効果的に抑制することができる。これにより、インクジェットノズル30の吐出口31に形成されたメニスカスが乱れてしまうことを効果的に防止することもできる。
【0054】
さらに、保持槽60に液体材料lmを送出する第2管82の下端82bは、図示された例において、保持槽60内に貯留された液体材料lmに浸漬されている。したがって、第2管82の下端82bから送出される液体材料lmが、保持槽60に貯留された液体材料lmの液面の衝突することに起因した飛沫の発生も効果的に防止することができる。したがって、保持槽60に貯留された液体材料lmの液面の動きに起因した圧力変動によって、インクジェットノズル30の吐出口31に形成されたメニスカスが乱れてしまうことを効果的に防止することができる。
【0055】
このような液体材料lmの補給は、保持槽60内での液体材料lmの液面高さls1が、第1管81の上端82aに達するまで、継続される。保持槽60内において、液体材料lmの液面高さls1が第1管81の上端82aに達すると、第1管81を介した、補給容器70への気体の流入が停止する。これにより、密閉容器として形成された補給容器70からの液体材料lmの流出が停止する。すなわち、図示された例によれば、サーミスタ、フロート、光学式センサ等の検出手段での検出結果に基づいてポンプ等の機器を動作させて液体材料lmを積極的に圧送することなく、保持槽60内における液体材料lmの液面高さls1を、一定の高さ、具体的には第1管81の下端81bの位置に、維持することができる。
【0056】
このように、第1管81の下端81bの位置は、保持槽60内において調整されるべき液体材料lmの液面高さを決定することなる。すなわち、第1管81の下端81bの高さを調整することで、保持槽60内における液体材料lmの液面高さls1を制御することができる。このような制御を容易化すべく、
図5に示された例では、第1管81の下端81bの位置を鉛直方向dvにおいて調節可能となるように第1管81を保持する保持具63が設けられている。
図5に示された例において、保持具63は、保持槽60に含まれている。
【0057】
なお、補給容器70内の液体材料lmが減少した場合には、例えば、通常は閉鎖手段によって封鎖されている補給口(図示せず)を介して、補給容器70内に液体材料lmを補給することになる。補給後における補給容器70内における液体材料lmの液面高さls2は、保持槽60内における液体材料lmの液面高さls1の自動調整機能を有効にするため、第1管81の上端81aよりも下方であって、第2管82の上端81aよりも上方とする。
【0058】
上述してきた一実施の形態において、液体材料供給装置40は、液体材料lmを保持し且つ供給管35に接続した保持槽60と、保持槽60よりも上方に配置され且つ液体材料lmを保持する補給容器70と、保持槽60及び補給容器70の間で流体を移送する第1管81及び第2管82と、を有している。第1管81は、補給容器70内で開口した上端81aと、保持槽60内で開口した下端81bと、を有している。第2管82は、第1管81の上端81aよりも下方となる位置にて補給容器70内で開口した上端82aと、補給容器70内の液体材料lmを保持槽60内に送出する下端82bと、を有している。この液体材料供給装置40によれば、サーミスタ、フロート、光学式センサ等の検出手段を用いることなく、更にポンプ等の機器による液体材料lmの圧送に依存することもなく、保持槽60内における液体材料lmの液面高さls1を、主に重力を利用して、自動的且つ迅速に調節することができる。この結果、インクジェットノズル30の各吐出口31からの液体材料lmの吐出が安定し、三次元造形物Oを所望の形状で高精度に造形することが可能となる。
【0059】
また、生体適合性造形物を三次元造形物Oとして造形することもあるが、作製された生体適合性造形物は一般的に熱に弱い。したがって、得られた生体適合性造形物を滅菌することに代えて、滅菌済みの三次元造形装置10を用いて滅菌済みの粉末材料pm及び液体材料lmから生体適合性造形物を作製することも検討されている。ここで説明した液体材料供給装置40は、センサやポンプ等の機器を含んでいないことから、オートクレーブなどを用いる加熱や薬剤散布、放射線により簡単に滅菌することができる点において優れる。
【0060】
また、上述してきた一実施の形態の一具体例において、第2管82の下端82bは、第1管81の下端81bよりも下方に位置している。この例によれば、第2管82の下端82bは、保持槽60に貯留された液体材料lm内に位置することができる。この場合、第2管82の下端82bから保持槽60内に液体材料lmを導入した際に、保持槽60内で液面が大きく波打つことを効果的防止することができる。したがって、保持槽60内の液体材料lmの動圧によって、インクジェットノズル30の吐出口31に形成されたメニスカスが不安定となることを効果的に抑制することができる。また、保持槽60に貯留された液体材料lmの飛沫が、圧力制御手段45に吸引されることを効果的に防止することができる。
【0061】
さらに、上述してきた一実施の形態の一具体例において、液体材料供給装置40は、保持槽60を収容する筐体50と、筐体50内の圧力を制御する圧力制御手段45と、を更に有している。圧力制御手段45は、気体給排手段46と、気体給排手段46と筐体50との間に設けられた給排管47と、を含んでいる。給排管47の筐体50側の端部47aは、保持槽60の外部に位置している。この例によれば、保持槽60内において液体材料lmが波打ったとしても、液体材料lmの飛沫が給排管47内に入り込むことを効果的に防止することができる。したがって、気体給排手段46が、液体材料lmの飛沫を吸引して故障してしまうことを効果的に防止することができる。
【0062】
さらに、上述してきた一実施の形態の一具体例において、三次元造形装置10は、上述してきた液体材料供給装置40を含んでいる。液体材料供給装置40からインクジェットノズル30への液体材料lmの供給動作は安定し且つ迅速であることから、インクジェットノズル30の吐出口31に形成されたメニスカスの安定状態を維持することができる。このインクジェットノズル30を用いることで、所望のパターンで高精度に液体材料lmを噴射することができ、これにより、三次元造形物を高精度に作製することができる。
【0063】
なお、上述した具体例に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0064】
上述した一具体例において、給排管47の筐体50側の端部47aが、筐体50内の上方領域で開口している例を示したが、この例に限られない。
【0065】
図8に示すように、給排管47の筐体50側の端部47aが、保持槽60の上方開口60aよりも鉛直方向dvの上方に位置し、且つ、鉛直方向dvの上方に向けて開口するようにしてもよい。
図8に示された例において、給排管47は、筐体50側の端部領域において、鉛直方向dvにおける下方に延びて保持槽60内に進入し、次に、湾曲により反転して上方に向けて延びている。この給排管47では、仮に液体材料lmの飛沫が給排管47に入ったとしても、この飛沫を湾曲部分に補足することも可能となる。これにより、給排管47に接続した気体給排手段46が液体材料lmを吸引することに起因した、気体給排手段46の損傷を効果的に防止することができる。
【0066】
また、
図9に示すように、給排管47の筐体50側の端部47aが、保持槽60の上方開口60aよりも鉛直方向dvの下方に位置し、しかも鉛直方向dvの下方に向けて開口するようにしてもよい。
図9に示された例によっても、給排管47内に液体材料lmの飛沫が入ることを効果的に防止することができる。
【0067】
図10に示された例では、保持槽60の上方開口60aと、給排管47の筐体50側の端部47aと、の間に遮蔽部材55が設けられている。遮蔽部材55が、液体材料lmの飛沫を遮蔽することで、給排管47への液体材料lmの進入を効果的に防止することができる。
【0068】
なお、
図8〜
図10に示された例において、保持槽60の上方開口60aを少なくとも部分的に塞ぐ蓋体65を設けてもよい。
【0069】
さらに、
図11に示された例において、蓋体65を貫通して延びる通気管67が設けられている。通気管67の先端部67aは、給排管47の筐体50側の端部47aよりも鉛直方向dvにおける下方まで延び、鉛直方向dvにおける下方に向けて開口している。この例によれば、液体材料lmの飛沫が、通気管67の先端部67aから給排管47に向けて進むことを効果的に防止することができる。
【0070】
なお、以上においていくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせることも可能である。