特許第6963917号(P6963917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963917
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】浸透性評価試験方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20211028BHJP
   E02D 1/04 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   E21D9/04 A
   E02D1/04
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-112258(P2017-112258)
(22)【出願日】2017年6月7日
(65)【公開番号】特開2018-204348(P2018-204348A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】平山 博靖
(72)【発明者】
【氏名】細田 優介
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−125364(JP,A)
【文献】 特開2016−175982(JP,A)
【文献】 特開2016−156142(JP,A)
【文献】 特開平08−311856(JP,A)
【文献】 特開昭50−144218(JP,A)
【文献】 特開2009−019377(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0096626(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/04
E02D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山への発泡性の注入材の浸透性を評価する試験方法であって、
内部を透視可能な細長い筒状の試験容器内に模擬地山を収容するとともに注入管を挿入配置し、
前記試験容器を立てた状態で、前記注入材を、前記注入管を経て前記注入管の開口部から前記模擬地山に注入し、発泡前の液状態の注入材を主に下方に拡散浸透させ、発泡後の注入材を主に上方へ拡散浸透させ、
前記注入管の前記開口部は、前記試験容器の高さ方向の中間部に配置されており、前記開口部から前記試験容器の下端部までの距離が、前記注入材の前記開口部から下方への浸透距離より大きく、前記開口部から前記試験容器の上端部までの距離が、前記注入材の前記開口部から上方への浸透距離より大きいことを特徴とする浸透性評価試験方法。
【請求項2】
前記注入材が着色されていることを特徴とする請求項1に記載の浸透性評価試験方法。
【請求項3】
地山への発泡性の注入材の浸透性を評価する試験装置であって、
内部を透視可能な細長い筒状に形成され、模擬地山を収容した状態で立てられる試験容器と、
前記試験容器内に挿入配置されるとともに開口部を有し、前記注入材を前記開口部から前記模擬地山に注入する注入管と、
を備え、
前記注入管の開口部から前記模擬地山に注入された注入材は、発泡前の液状態で主に下方に拡散浸透し、発泡後には主に上方へ拡散浸透するようになっており、
前記注入管の前記開口部は、前記試験容器の高さ方向の中間部に配置されており、前記開口部から前記試験容器の下端部までの距離が、前記注入材の前記開口部から下方への浸透距離より大きく、前記開口部から前記試験容器の上端部までの距離が、前記注入材の前記開口部から上方への浸透距離より大きいことを特徴とする浸透性評価試験装置。
【請求項4】
前記注入材が着色されていることを特徴とする請求項3に記載の浸透性評価試験装置。
【請求項5】
前記試験容器の内径が、50mm〜300mmであり、
前記試験容器の高さが、前記内径より大きく、かつ300mm〜2000mmであることを特徴とする請求項3又は4に記載の浸透性評価試験装置。
【請求項6】
前記試験容器が、透光性材料からなる細長い筒状の胴部と、前記胴部の端部を塞ぐ蓋部とを有していることを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の浸透性評価試験装置。
【請求項7】
前記蓋部には通気穴が形成され、前記通気穴には、気体及び液体の透過を許容し、固体の透過を阻止するフィルタが設けられていることを特徴とする請求項6に記載の浸透性評価試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山への注入材の浸透性を評価する試験方法及び装置に関し、特に、注入材の浸透速度、浸透時間、浸透距離その他の浸透性に係る評価項目を調べるのに適した試験方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばトンネルや建物等の構造物を構築する場合、脆弱な地山や緩んだ地山に注入材を注入することで、地盤改良することが知られている。
地山の性状は施工現場ごとに違うため、現場の地山に合った注入材を選定する必要がある。そこで、次のような評価試験が行なわれている。
【0003】
まず、ドラム缶などの試験容器を用意する。試験容器の軸線に沿って注入管を配置する。注入管の上端は、試験容器の上方へ突出させておく。
次に、試験容器の内部に、地山に見立てた模擬地山を充填し、注入管を模擬地山内に埋める。模擬地山としては、例えば、適用現場の地山と同等の透水性の硅砂等を用いる。
次いで、注入管に注入材を供給する。注入材としては例えばウレタン系注入材やセメント系注入材等を用いる。注入材は、注入管の注入穴から吐出され、模擬地山の内部に浸み込んでいく。
注入材が硬化するまで養生した後、試験容器を割って、模擬地山を取り出す。そして、注入材で改良された部分の大きさ、形状、硬さ、その他の物性から所望の改良効果が得られるかどうかを評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−287557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の試験では、試験容器を解体しないと、模擬地山への注入材の浸透距離や浸透範囲を知ることができない。また、浸透速度や浸透時間については、まったく知ることができない。
本発明は、かかる事情に鑑み、地山への注入材の浸透速度、浸透時間、浸透距離、浸透範囲その他の浸透性評価項目を、試験容器を解体しなくても測定でき、注入材の浸透性を適確に評価可能な試験方法及び試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明方法は、地山への注入材の浸透性を評価する試験方法であって、
内部を透視可能な細長い筒状の試験容器内に模擬地山を収容し、
前記試験容器内に挿入配置された注入管から前記注入材を前記模擬地山に注入することを特徴とする。
本発明装置は、地山への注入材の浸透性を評価する試験装置であって、
内部を透視可能な細長い筒状に形成され、模擬地山が収容された試験容器と、
前記試験容器内に挿入配置され、前記注入材を前記模擬地山に注入する注入管と
を備えたことを特徴とする。
【0007】
試験容器が、内部を透視可能であることで、試験容器の外部から試験容器内の模擬地山の外周部を視認できる。
また、試験容器を細長くすることで、注入工程の開始後、短時間で注入材が模擬地山の外周部に達し、透視可能な試験容器を通して、注入材の浸透状況を視認できるようになる。
試験容器が細く、かつ透視可能であるために、注入材の全体的な浸透状況を試験容器の外側から把握できる。つまり、模擬地山の中央部と外周部とで、注入材の浸透度合いにあまり違いがなく、外周部での浸透状況さえ観察できれば十分である。
更に、試験容器の軸長を長くすることで、注入材が拡散可能な限界位置まで拡散できる。すなわち、注入材が拡散エネルギーを残した状態で試験容器の端部に達して拡散を阻止されるのを回避できる。
この結果、注入材の浸透速度、浸透時間、浸透距離、浸透範囲その他の浸透性評価項目を、試験容器を解体しなくても測定でき、注入材の浸透性を適確に評価することができる。
【0008】
前記注入材が着色されていることが好ましい。これによって、注入材と模擬地山を簡単に見分けることができ、浸透性評価を一層適確に行なうことができる。
【0009】
前記試験容器の内径は、50mm〜300mm程度であることが好ましい。これによって、試験容器内の模擬地山の中央部における注入材の浸透度合いと、外周部における注入材の浸透度合いを確実にほぼ同程度にでき、外周部での浸透状況を、透視性の試験容器を通して目視観察すれば、注入材の全体的な浸透状況を把握することができる。
前記試験容器の高さは、前記内径より大きく、かつ300mm〜2000mmであることが好ましい。これによって、注入材が、試験容器ひいては模擬地山の軸線に沿って拡散可能な限界位置まで確実に拡散できる。
【0010】
前記試験容器が、透光性材料からなる細長い筒状の胴部と、前記胴部の端部を塞ぐ蓋部とを有していることが好ましい。
少なくとも胴部が内部を透視可能であることで、試験容器の外部から胴部を通して、注入材の浸透状況を観察できる。
前記胴部の軸線は、好ましくは上下ないしは鉛直に向けられる。
前記蓋部は、必ずしも内部を透視可能である必要がなく、非透光性材料で構成されていてもよい。
前記蓋部は、前記胴部の少なくとも一端部(例えば下端部)に設けられていればよい。好ましくは、前記胴部の両端部が蓋部で塞がれている。
【0011】
前記蓋部には通気穴が形成され、前記通気穴には、気体及び液体の透過を許容し、固体の透過を阻止するフィルタが設けられていることが好ましい。
これによって、注入材の注入に伴って、試験容器内の空気を通気穴から排出できる。また、余剰の水分をも通気穴から押し出すことができる。これによって、注入材を円滑に注入できる。一方、通気穴にフィルタを設けることで、模擬地山が通気穴から漏れるのを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地山への注入材の浸透性を適確に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る浸透性評価試験装置の正面断面図である。
図2図2は、図1のII−II線に沿う、前記浸透性評価試験装置の試験容器の断面図である。
図3図3(a)は、図1のIIIa−IIIa線に沿う、前記試験容器の平面図である。図3(b)は、図1のIIIb−IIIb線に沿う、前記試験容器の底面図である。
図4図4(a)は、図1の円部IVaの拡大断面図である。図4(b)は、図1の円部IVbの拡大断面図である。
図5図5は、前記浸透性評価試験装置による注入材の浸透状態を、時間を追って示したものであり、図5(a)は、注入材の注入開始時を示す正面断面図である。図5(b)は、注入材が試験装置の内周面まで拡散した段階の正面断面図である。図5(c)は、注入材が発泡しながら拡散、浸透する段階の正面断面図である。図5(d)は、注入材の拡散が収束した段階の正面断面図である。
図6図6は、実施例1における浸透性評価試験装置による注入材の浸透状況を、時間を追って撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
本発明形態は、例えば、トンネル施工における長尺鋼管フォアパイリングないしはフォアポーリング等の先受け工の注入材の評価に適用される。先受け工においては、トンネル前方の地山に、中空ボルト等の先受け鋼管を打ち込み、該先受け鋼管の注入孔から注入材を地山に注入することで、地山を安定させる。当該地山に適合する注入材を選定するために、事前に浸透性評価試験を行なう。
【0015】
図1は、本実施形態の浸透性評価試験装置1を示したものである。浸透性評価試験装置1は、試験容器10と、注入管20と、模擬地山30を備えている。試験容器10は、胴部11と、蓋部13,12を有している。
図1及び図2に示すように、胴部11は、細長い円筒形状に形成されている。ひいては、試験容器10が細長い円筒状になっている。胴部11の下端部が蓋部13によって塞がれ、上端部が蓋部12によって塞がれている。
【0016】
胴部11は、透光性材料によって構成されている。これによって、試験容器10が、胴部11を通して、内部を透視可能になっている。前記透光性材料としては、透明な樹脂、ガラス等が挙げられる。
【0017】
図1に示すように、胴部11の内部空間が、円柱状の試験室10aとなっている。胴部11ひいては試験室10aの内径φは、高さHより小さい(φ<H)。好ましくは、内径φは、高さHの半分以下であり(φ≦H13)、より好ましくは高さHの3分の1以下であり(φ≦H12)、一層好ましくは高さHの6分の1程度ないしはそれ以下である(φ≒H/6、φ≦H/6)。
具体的には、試験室10aの内径φは、好ましくはφ=50mm〜300mm程度である。試験室10aの高さHは、好ましくはH=300mm〜2000mm程度である。
【0018】
試験容器10のうち、少なくとも胴部11が透明ないしは透光性であればよく、蓋部13,12は透明ないしは透光性である必要が無い。
図3(a)に示すように、上側の蓋部12は、非透光性の樹脂によって構成され、円形に形成されている。蓋部12には、複数(図では4つ)の通気穴12dが形成されている。これら通気穴12dは、蓋部12の周方向に互いに分散して配置されている。なお、通気穴12dの数及び配置は適宜設定可能である。
【0019】
図4(a)に示すように、蓋部12における試験室10a側の面(下面)には、フィルタ14が設けられている。フィルタ14によって、通気穴12dが覆われている。フィルタ14は、気体及び液体の透過を許容し、固体の透過を阻止する。フィルタ14の材質として、例えば不織布が用いられている。
【0020】
図3(b)に示すように、下側の蓋部13(底板)は、非透光性の樹脂によって構成され、円形に形成されている。
蓋部13には、複数(図では4つ)の通気穴13dが形成されている。これら通気穴13dは、蓋部13の周方向に互いに分散して配置されている。なお、通気穴13dの数及び配置は適宜設定可能である。
【0021】
図4(b)に示すように、蓋部13における試験室10a側の面(上面)には、フィルタ15が設けられている。フィルタ15によって、通気穴13dが覆われている。フィルタ15は、気体及び液体の透過を許容し、固体の透過を阻止する。フィルタ15の材質として、例えば不織布が用いられている。
【0022】
図1に示すように、試験容器10の内部に注入管20が挿入配置されている。注入管20は、鋼管によって構成され、試験容器10の軸線に沿って上下に延びている。注入管20の上端部は、蓋部12を貫通し、試験容器10の上方へ延び出ている。注入管20の下端の開口部20eは、試験容器10の高さ方向の中間部に配置されている。好ましくは、開口部20eは、試験容器10の中間の高さ、ないしは中間の高さよりも少し下側に配置されている。
【0023】
試験容器10の内部には、模擬地山30が収容されている。注入管20が、模擬地山30内に埋まっている。
模擬地山30としては、施工現場の地山と物性や性状が近い土砂が用いられている。好ましくは、模擬地山30として、施工現場の地山と同等の透水性を有する硅砂が用いられている。
【0024】
図1に示すように、注入管20の上端部には、注入材3の供給管21A,21Bが接続されている。ここでは、注入材3として、ウレタン系注入材が用いられている。ウレタン系注入材の原料は、ポリオール等のA液と、ポリイソシアネート等のB液を含む。供給管21AにA液の供給源3Aが接続され、供給管21BにB液の供給源3Bが接続されている。
【0025】
A液又はB液の一方には、着色材4が添加されている。これによって、注入材3が、着色材4の色に着色されている。着色材4としては染料が用いられている。なお、着色材4は、染料に限られず、顔料を用いてもよい。図1では、着色材4は、A液に添加されているが、B液に添加されていてもよく、A液及びB液の両方に添加されていてもよい。
着色材4の色は、模擬地山30の色に対して補色関係となる色であることが好ましい。
複数の試験容器10を用意し、複数種の注入材3に対してそれぞれ浸透試験を行なう場合には、注入材3ごとに別の色を付けてもよい。
【0026】
浸透性評価試験は、次のようにして行う。
図1に示すように、試験容器10内に模擬地山30を充填する。
実際の地山は通常、水分を含んでいるため、模擬地山30に水を浸み込ませることで、実際の地山の状態に近づけることが好ましい。なお、参考データ等を得るために、水分を含ませないことにしてもよい。
【0027】
図1に示すように、ウレタン原料のA液及びB液をそれぞれ供給管21A,21Bから注入管20に供給する。A液又はB液には着色材4を添加しておく。これらA液及びB液が混合されてウレタン系注入材3となり、注入管20の下端開口部20eから模擬地山30内に吐出される。
更に、注入材3が模擬地山30内を上下へ拡散、浸透していく。詳しくは、図5(a)〜(b)に示すように、注入材3は、発泡前の液状態では主に下方へ拡散し、図5(c)〜(d)に示すように、発泡すると主に上方へ拡散していく。
【0028】
試験容器10の胴部11は透明であり、内部が透視可能であるため、試験容器10の外部から、試験容器10内の模擬地山30の外周部を視認できる。
かつ、試験容器10が細長筒状であるため、図5(b)に示すように、注入工程の開始後、短時間で模擬地山30内の注入材3における最も外側の部分3eが、模擬地山30の外周部に達し、透明な胴部11を通して、該最外側部分3eを視認できるようになる。この最外側部分3eの浸透状況を観察することで、注入材3のほぼ全体の浸透状況を把握できる。つまり、試験容器10が細いために、模擬地山30の中央部と外周部とで、注入材3の浸透度合いにあまり違いがなく、外周部での浸透状況さえ観察できれば十分である。
しかも、注入材3が着色されているため、注入材3と模擬地山30を容易に見分けることができ、浸透状況を容易に観察できる。
更に、試験容器10の軸長を上下に長くすることで、図5(d)に示すように、注入材3が、上下に拡散可能な限界位置まで拡散、浸透できる。すなわち、注入材3がまだ拡散エネルギーを残しているにも拘わらず試験容器10の上端部又は下端部に達して拡散を阻止されるのを回避できる。
この結果、試験容器10を解体しなくても、浸透速度、浸透時間、浸透範囲、浸透距離などを試験容器10の外部から測定でき、注入材3の浸透性を適確に評価することができる。
図5(d)に示すように、浸透距離Lは、浸透が十分に収まった後、測定する。好ましくは、注入材3の最外側部分3eの上端部から下端部までの距離の最大値と最小値を測定し、その平均値を浸透距離Lとする。
【0029】
注入材3の注入に伴って、試験容器10内の空気が、フィルタ14,15を透過し、通気穴13d,12dから排出される。また、模擬地山30内の余剰の水分についても、フィルタ14,15を透過させて通気穴13d,12dから押し出すことができる。これによって、注入材3を円滑に注入できる。
一方、模擬地山30の硅砂は、フィルタ14,15によって阻まれ、通気穴13d,12dから漏れるのを防止できる。
【0030】
複数の浸透性評価試験装置1を用意し、互いに組成等が異なる注入材3を注入して、それぞれ浸透性評価を行なうことで、適用対象の地山に合った注入材3を選定できる。この場合、前述したように、注入材3ごとに異なる色に着色することが好ましい。これによって、注入材3の種類を色によって容易に判別できる。
【0031】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、注入材は、前記ウレタン系注入材に限られず、シリカレジン系注入材、セメント系注入材等を用いてもよい。シリカレジン系注入材は、特殊珪酸ソーダ(A液)と変性ポリイソシアネート(B液)を原料とする変性ポリウレタンである。
セメント系注入材は、模擬地山30内を主に下方へ拡散されるから、注入管20の開口部20eを試験室10a内における上端近くの高さに配置してもよい。
試験容器10は、細長い筒状であればよく、円筒形状に限られず、四角筒その他の多角筒形状であってもよい。
試験容器10軸線の向きは、上下(鉛直)に限られず、水平であってもよく、鉛直又は水平に対して傾斜されていてもよい。
胴部11だけでなく蓋部12,13も透光性を有していてもよい。
両端の蓋部12,13のうち、一方(例えば蓋部12)を省略してもよい。
本発明は、切羽の上半アーチ外周から前方へ長尺先受け鋼管を打設する長尺先受け工法の注入材選定の他、切羽鏡部に鏡ボルトを打設する鏡ボルト工法の注入材選定などにも適用できる。
本発明は、トンネル構築時の地山への注入材の選定に限られず、他の地中構造物やビル等の建築構造物を構築する際の地盤改良材としての注入材の選定等にも適用できる。
【実施例1】
【0032】
実施例を説明する。ただし、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
図1と実質同等の浸透性評価試験装置1を作製した。
試験容器10の胴部11として、透明なポリ塩化ビニル製のパイプを用いた。
試験室10aの高さH1は、H=1000mm、内径φは、φ=155mmであった。
試験容器10の上端から下へ600mmの高さに、注入管20の下端開口部20eを位置させた。
模擬地山30として、例えば2号硅砂(粒径2〜4mm、間隙率約35%、透水係数10〜10cm/s)を用いた。
模擬地山30を5回に分けて試験容器10内に自然落下により投入した。投入する度に締め固めた。更に、含水比20w%程度になるように、模擬地山30に水を含ませた。
注入材3として、例えば旭有機材株式会社製ウレタン系注入材を用いた。注入材3の注入量は13kg、発泡倍率は4倍であった。
注入材3には、着色材4として、例えば赤色の染料を混入させた。
【0033】
図6に示すように、注入材3の注入開始後20秒弱で、模擬地山30の中間部の外面に赤色の注入材3が現れた。また、通気穴13dから盛んに排水が見られた。更に、注入材3が模擬地山30内を上下に浸透していくのが、透明胴部11を通して確認された。注入開始から120秒程度で拡散が収束した。
注入材3を着色しておくことで、浸透の様子を明瞭に観察でき、浸透時間、浸透距離等を明確に計測できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、例えばトンネル地山の地盤改良材の選定に適用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 浸透性評価試験装置
3 注入材
4 着色材
10 試験容器
10a 試験室
11 胴部
12 蓋部
12d 通気穴
13 蓋部
13d 通気穴
14,15 フィルタ
20 注入管
30 模擬地山
図1
図2
図3
図4
図5
図6