特許第6963926号(P6963926)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963926
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリート構造物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20211028BHJP
   E04B 1/21 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   E04B1/58 508A
   E04B1/21 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-138374(P2017-138374)
(22)【出願日】2017年7月14日
(65)【公開番号】特開2019-19539(P2019-19539A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000245852
【氏名又は名称】矢作建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】上田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】清水 啓介
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−020332(JP,A)
【文献】 特開2015−140635(JP,A)
【文献】 特開2017−020315(JP,A)
【文献】 特開2016−089488(JP,A)
【文献】 近藤智紀 ほか,床スラブと直交梁のある十字形接合部を水平ハンチにより補強した場合の耐震補強性能に関する研究,コンクリート工学年次論文集,2013年,第35巻,第2号,289頁−294頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00 − 1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と、
前記柱よりも幅寸法が大きい梁と、
前記柱と前記梁との交差部において前記柱から突出して前記梁と交差する張り出し部と、
を備え、
前記張り出し部は、前記梁の上面より上方に突出する上側突出部及び前記梁の下面より下方に突出する下側突出部のうちの少なくとも前記上側突出部を有し、前記梁よりも厚さ寸法が大きい
ことを特徴とする鉄筋コンクリート構造物。
【請求項2】
前記張り出し部は、前記上側突出部と、前記下側突出部と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄筋コンクリート構造物。
【請求項3】
前記張り出し部と前記柱との接合面は、縦横比が等しい
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鉄筋コンクリート構造物。
【請求項4】
前記柱内及び前記張り出し部内において幅方向に延びる補強材を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリート構造物。
【請求項5】
前記張り出し部は、前記柱の幅方向の両側からそれぞれ突出する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリート構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
柱と、柱よりも幅寸法が大きい扁平梁と、柱と扁平梁との交差部において柱から突出して扁平梁と交差する張り出し部と、を備える鉄筋コンクリート構造物がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−140635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図15に白抜き矢印で示すように、柱120及び扁平梁130に対して地震力が作用すると、柱120から突出する張り出し部140には、図16に直線矢印で示すように、扁平梁130から曲げ応力やせん断応力が入力する。これにより、柱120と張り出し部140との接合面150(図16に網掛けで示す)には、図16に白抜き矢印で示すようなねじり応力が生じる。その結果、張り出し部140は、ねじり変形が過大になったり、図15に示すようにひび割れ160が生じたりすることがある。本発明の課題は、柱から突出して梁と交差する張り出し部のねじり応力に対する抵抗力が大きい鉄筋コンクリート構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する鉄筋コンクリート構造物は、柱と、前記柱よりも幅寸法が大きい梁と、前記柱と前記梁との交差部において前記柱から突出して前記梁と交差する張り出し部と、を備え、前記張り出し部は、前記梁よりも厚さ寸法が大きい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、柱から突出して梁と交差する張り出し部のねじり応力に対する抵抗力が大きい鉄筋コンクリート構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】鉄筋コンクリート構造物の実施形態の基本構成を示す斜視図。
図2図1の構成の作用を説明する斜視図。
図3図1の構成を集合住宅に適応した場合の斜視図。
図4図3の構成の平断面図。
図5】鉄筋コンクリート構造物の第1変更例を示す斜視図。
図6図5の構成の平断面図。
図7】鉄筋コンクリート構造物の基本構成の第2変更例を示す斜視図。
図8図7の構成の作用を説明する斜視図。
図9】鉄筋コンクリート構造物の基本構成の第3変更例を示す斜視図。
図10図9の構成の作用を説明する斜視図。
図11】鉄筋コンクリート構造物の基本構成の第4変更例を示す斜視図。
図12図11の構成の作用を説明する斜視図。
図13】鉄筋コンクリート構造物の基本構成の第5変更例を示す斜視図。
図14図13の構成の作用を説明する斜視図。
図15】従来の鉄筋コンクリート構造物の基本構成を示す斜視図。
図16図15の構成に地震力が作用したときに生じる力を説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、鉄筋コンクリート構造物の実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の鉄筋コンクリート構造物11は、柱12と、柱12よりも幅寸法が大きい梁13と、柱12と梁13との交差部において柱12から突出する張り出し部14と、を備える。張り出し部14は、梁13よりも厚さ寸法が大きくなるように形成される。
【0009】
幅寸法は、梁13の幅方向(図のX軸方向)の長さであり、厚さ寸法は重力方向(図のZ軸方向)の長さである。図のY軸は、X軸及びZ軸の双方と直交する。Y軸方向は梁13の延設方向となる。本実施形態の張り出し部14は、梁13の幅に合わせて突出しているが、張り出し部14は梁13を支えることができればよく、梁13の幅を超えて突出してもよい(図5参照)。
【0010】
張り出し部14は、梁13の上面13aより上方に突出する上側突出部14Aと、梁13の下面13bより下方に突出する下側突出部14Bと、を有することが好ましい。この場合、上側突出部14Aと下側突出部14Bとは、上下方向(Z軸方向)の突出長さが等しいことが好ましい。
【0011】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図1に白抜き矢印で示す地震力が柱12及び梁13に対して作用すると、柱12から突出する張り出し部14には、梁13から、図2に直線矢印で示す曲げ応力やせん断応力が入力する。
【0012】
これにより、図2に白抜き矢印で示すように、柱12と張り出し部14との接合面15(図2に網掛けで示す)には、ねじり応力が生じる。張り出し部14は、梁13よりも厚さ寸法が大きい分、柱12と張り出し部14との接合面15の面積が大きい。ねじり抵抗面となる接合面15の面積が大きいと、ねじり応力に対する抵抗力が大きくなるので、ねじり変形やねじり破壊が進行しにくい。
【0013】
図3及び図4に示す鉄筋コンクリート構造物11は集合住宅であり、梁13がバルコニー20の床21の一部を構成している。この鉄筋コンクリート構造物11は、図4に示すように、室内と室外とを仕切る外壁23と、外壁23の開口部に嵌め込まれたガラス戸25と、を備え、柱12が外壁23に沿って配置される。また、バルコニー20には、柱12の外側となる位置に、各戸の敷地を仕切る仕切板22が配置される。
【0014】
外壁23に接する柱12からは、室外に向けて張り出し部14が突出している。この場合、上側突出部14Aはバルコニー20の床21を構成するので、室内の居住空間を狭めることがない。上側突出部14Aは、仕切板22の下方に配置すると、バルコニー20においてもじゃまになりにくい。また、下側突出部14B(図示略)は、バルコニー20の屋根部分に位置するので、じゃまになりにくい。
【0015】
本実施形態によれば、以下の効果を得られる。
(1)張り出し部14の厚さ寸法が梁13よりも大きい分、張り出し部14と柱12との接合面15が大きくなる。そのため、張り出し部14のねじり応力に対する抵抗力が大きい。
【0016】
(2)上側突出部14Aと下側突出部14Bとにより、接合面15が上下にバランスよく大きくなる。
(3)柱12をバルコニー20の外側から見ると、張り出し部14は柱12と外縁が一致するので、美観を損ねない。
【0017】
(変更例)
上記実施形態は、以下に示す変更例のように変更してもよい。上記実施形態に含まれる構成は、下記変更例に含まれる構成と任意に組み合わせることができる。下記変更例に含まれる構成同士は、任意に組み合わせることができる。
【0018】
図5及び図6に示す第1変更例のように、鉄筋コンクリート構造物11は、バルコニー20に配置された柱12と、柱12から外壁23に向けて突出する張り出し部14と、を有してもよい。この柱12と交差する梁13は、バルコニー20の床21の一部を構成する。
【0019】
図6に示すように、バルコニー20の床21には、避難ハッチ24を配置してもよい。幅広の梁13がバルコニー20の床21を構成する場合であっても、外壁23及びガラス戸25の一部を室内側に入れるなどしてバルコニー20の床21を広くすれば、梁13より内側に避難ハッチ24を配置することができる。
【0020】
図7及び図8に示す第2変更例のように、鉄筋コンクリート構造物11は、柱12、張り出し部14及び接合面15を貫通するように、柱12内及び張り出し部14内において幅方向(X軸方向)に延びる補強材16を備えてもよい。補強材16は、例えば、H形、I形または山型などの形鋼でもよいし、鋼板、鋼管または鉄筋でもよい。この構成では、補強材16により、ねじり応力に対する抵抗力が大きくなる。
【0021】
図9及び図10に示す第3変更例のように、上側突出部14A及び下側突出部14Bは、延設方向(Y軸方向)の長さが、柱12よりも長くてもよい。そうすると、本実施形態の接合面15は、従来例の接合面(図10に二点鎖線で示す)よりも、縦横に面積が拡大する。この場合、張り出し部14と柱12との接合面15は、縦横比が等しいことが好ましい。接合面15を大きくすると、ねじり応力に対する抵抗力が大きくなる。特に、接合面15の縦横比が等しいと、ねじり応力に対して効率よく抵抗することができる。
【0022】
図11及び図12に示す第4変更例のように、鉄筋コンクリート構造物11は、柱12の幅方向(X軸方向)の両側からそれぞれ突出する2つの張り出し部14を備えてもよい。この場合、柱12と張り出し部14との接合面15が2つになるので、ねじり応力に対する抵抗力が大きくなる。
【0023】
図13及び図14に示す第5変更例のように、鉄筋コンクリート構造物11の柱12は、幅寸法よりも延設方向(Y軸方向)の長さが長い扁平な形状にしてもよい。こうすると、柱12の延設方向(Y軸方向)の長さが長くなる分、張り出し部14との接合面15が大きくなるので、ねじり応力に対する抵抗力が大きくなる。
【0024】
・張り出し部14は、X軸と直交する切断面で切った場合の断面が円形になるような円柱状に形成してもよい。円柱状の張り出し部14は、柱12の延設方向(Y軸方向)の長さ及び梁13の厚さ寸法より直径を大きくすると、接合面15を大きくすることができる。その他、張り出し部14は、X軸と直交する切断面で切った場合の断面が六角形などの多角形または楕円形になるような、任意の形状にすることができる。
【0025】
・張り出し部14は、梁13の上面13a及び下面13bのうち何れか一方の面からのみ突出し、他方の面からは突出しなくてもよい。
・梁13は、幅寸法が厚さ寸法よりも長い扁平梁に限らず、柱12よりも梁13の幅寸法が大きければ、梁13の幅寸法と厚さ寸法が等しくてもよいし、梁13の幅寸法が厚さ寸法より短くてもよい。
【0026】
以下に、上述した実施形態及び変更例から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
[思想1]
柱と、
前記柱よりも幅寸法が大きい梁と、
前記柱と前記梁との交差部において前記柱から突出して前記梁と交差する張り出し部と、
を備え、
前記張り出し部は、前記梁よりも厚さ寸法が大きい
ことを特徴とする鉄筋コンクリート構造物。
【0027】
この構成によれば、張り出し部の厚さ寸法が梁よりも大きい分、張り出し部と柱との接合面が大きくなる。そのため、張り出し部のねじり応力に対する抵抗力が大きい。
[思想2]
前記張り出し部は、前記梁の上面より上方に突出する上側突出部と、前記梁の下面より下方に突出する下側突出部と、を有する
ことを特徴とする[思想1]に記載の鉄筋コンクリート構造物。
【0028】
この構成によれば、上側突出部と下側突出部とにより、張り出し部と柱との接合面が上下にバランスよく大きくなる。
[思想3]
前記張り出し部と前記柱との接合面は、縦横比が等しい
ことを特徴とする[思想1]または[思想2]に記載の構造物。
【0029】
この構成によれば、接合面の縦横比が等しいので、張り出し部はねじり応力に対して効率よく抵抗することができる。
[思想4]
前記柱内及び前記張り出し部内において幅方向に延びる補強材を備える
ことを特徴とする[思想1]から[思想3]のうちいずれか1つに記載の構造物。
【0030】
この構成によれば、補強材により、ねじり応力に対する抵抗力が大きくなる。
[思想5]
前記張り出し部は、前記柱の幅方向の両側からそれぞれ突出する
ことを特徴とする[思想1]から[思想4]のうちいずれか1つに記載の構造物。
【0031】
この構成によれば、柱と張り出し部との接合面が2つになるので、ねじり応力に対する抵抗力が大きくなる。
【符号の説明】
【0032】
11…鉄筋コンクリート構造物、12…柱、13…梁、13a…上面、13b…下面、14…張り出し部、14A…上側突出部、14B…下側突出部、15…接合面、16…補強材、20…バルコニー、21…床、22…仕切板、23…外壁、24…避難ハッチ、25…ガラス戸。
図1
図2
図3
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図8
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