(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検査波感応材による前記検査波に対する減衰率又は反射率が、地山における前記検査波の減衰率又は反射率と異なることを特徴とする請求項1に記載の地盤改良状態検査方法。
前記検査波送受信アンテナを前記地盤改良用孔の軸線方向へ移動させながら、前記検査波の放射及び受信を行なうことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の地盤改良状態検査方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記注入材は地中に注入されるために、注入改良体を直接的に目視等で確認することができず、改良範囲及び改良効果を定量的に把握するのが困難である。鏡ボルト工法では、掘削中の切羽に注入改良体の断面が現れるが、掘削前に注入改良体を直接的に確認することはできない。
現状では、注入材の注入圧力が、注入量に基づく計算や経験などによる想定圧力に達した時点で、想定改良体が形成されたものとしている。
どうしても事前に改良範囲を知りたい場合は模擬地山や実際の地山に試験注入を行い、改良体を掘り出す事で改良範囲を確認しており、手間・時間・コストを掛けて試験する事になる。
本発明は、かかる事情に鑑み、地中での注入材の注入状況ひいては地盤改良状態を確実かつ容易に把握可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明方法は、地盤改良用孔から周囲の地山に注入された注入材による地盤改良状態を検査する方法であって、
前記地盤改良用孔に挿入した検査波送受信アンテナから検査波を放射し、かつ前記検査波送受信アンテナによって反射波を受信する工程と、
前記反射波の受信データに基づいて、前記注入材の注入状態を解析する工程と
を備え、前記注入材に、前記検査波と相互作用可能な検査波感応材が混入されていることを特徴とする。
【0006】
注入材が注入された地山は注入改良体となる。該注入改良体は検査波感応体を含むために、検査波の伝播状態が、非注入地山部分とは異なる。この検査波の反射波を解析することによって、注入改良体と非注入地山部分との境を識別したり、改良領域の広がりを定量化したりできる。
前記相互作用は、検査波の吸収、減衰、反射、散乱、屈折、回折、干渉、波長変換、位相変換、励起、失活などを含む。
前記解析工程は、断面画像、3次元画像、グラフなどの作成工程を含んでいてもよい。
【0007】
前記検査波感応材による前記検査波に対する減衰率又は反射率が、地山における前記検査波の減衰率又は反射率と異なることが好ましい。
これによって、注入改良体における検査波の伝播状態を、非注入地山部分における検査波の伝播状態とは確実に異ならせることができる。この検査波の反射波によって、注入改良体の大きさなどを検知でき、地盤改良状態を適確に把握できる。
前記検査波感応材による前記検査波に対する減衰率が、地山における前記検査波の減衰率より高くても、低くてもよい。
前記検査波感応材による前記検査波に対する反射率が、地山における前記検査波の反射率より高くても、低くてもよい。
【0008】
前記検査波感応材が、金属粉を含むことが好ましい。
これによって、注入改良体の内部に金属粉が混入、分散される。該金属粉によって、検査波を確実に減衰又は反射できる。
前記金属粉は、微粒子状態であることが好ましい。
【0009】
前記地盤改良用孔の内部に案内管を挿入し、前記地盤改良用孔の内周と前記案内管の外周との間の環状路を前記注入材の流路とし、
前記案内管に前記検査波送受信アンテナを挿入することが好ましい。
これによって、地盤改良用孔の内部にアンテナを注入材に妨げられることなく容易に挿入できる。検査終了後は、検査波送受信アンテナを回収して再使用することで、費用を節減できる。
【0010】
前記検査波送受信アンテナを前記地盤改良用孔の軸線方向へ移動させながら、前記検査波の放射及び受信を行なうことが好ましい。
これによって、検査領域を地盤改良用孔の軸線に沿って拡張でき、軸線方向の各位置における注入改良体の断面積又は直径を定量化できる他、注入改良体全体の体積を定量化できる。この結果、地盤改良状態をより的確に把握できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、地中での注入材の注入状況ひいては地盤改良状態を確実かつ容易に把握することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、例えばNATMトンネル1の掘進時の地山2を安定化させるための補助工法として、AGF工法が採用されている。トンネル1の切羽1aの外周に沿ってアーチ支保工3が設置されている。該アーチ支保工3から掘進前方側(
図1において右側)の地山2内に長尺の先受け鋼管10が打ち込まれている。先受け鋼管10の材質は、スチールなどの金属である。
【0014】
図3に示すように、先受け鋼管10の内部が、地盤改良用孔11を構成している。
図1に示すように、先受け鋼管10ひいては地盤改良用孔11は、トンネル軸線に対して掘進前方側(
図1において右側)へ向かうにしたがってトンネル外周側へ少し傾斜されている。先受け鋼管10の先端部には、掘削ビット14が設けられている。
【0015】
先受け鋼管10には、複数の注入穴12が管壁を貫通するように形成されている。複数の注入穴12は、先受け鋼管10の管軸方向及び周方向に分散して配置されている。地盤改良用孔11が、これら注入穴12を介して、先受け鋼管10の外部へ連通している。
【0016】
図2に示すように、各注入穴12から吐出された注入材4によって先受け鋼管10の周囲の地山が改良され、注入改良体2bが形成されている。
注入材4としては、例えばシリカレジン系注入材、ウレタン系注入材、セメント系注入材、水ガラス系注入材を用いてもよい。
【0017】
本発明形態においては、前記注入材4の注入状況ひいては地盤改良状態を、以下のようにして検査する。
<検査波感応材混入工程>
図1に示すように、予め、注入材4には、検査波感応材4bを混入し、均一に分散させておく。検査波感応材4bは、アルミ・鉄・ステンレス・銅等の金属粉によって構成されている。金属粉の大きさ(平均粒径)は、微粒子レベルであることが好ましく、例えば0.005μm(5nm)〜10μm程度である。
なお、
図3及び
図4における検査波感応材4bの大きさは、誇張されている。
図2においては、検査波感応材4bの図示を省略する。
【0018】
<案内管>
図1に示すように、先受け鋼管10を打設後、該先受け鋼管10の内部に案内管20を挿入する。案内管20は、例えばポリ塩化ビニルなどの樹脂によって構成されている。なお、案内管20の材質は、樹脂に限られず、スチールなどの金属であってもよい。
図3に示すように、案内管20の先端部は、キャップ22によって塞がれている。
【0019】
<注入工程>
先受け鋼管10の地盤改良用孔11の内周と、案内管20の外周との間には、環状路13が形成される。
この環状路13を注入材4の流路として、注入材4を環状路13に通し、各注入穴12から先受け鋼管10の周囲の地山2に注入する。地山2における注入材4が注入された部分は、注入改良体2bとなる。注入改良体2bには、金属粉からなる検査波感応材4bが混入され、均一に分散されている。
地山2における注入材4が注入されていない部分は、非注入地山部分2aと称す。
【0020】
<地盤改良状態検査装置30>
続いて、
図2に示すように、地盤改良状態検査装置30を用意する。地盤改良状態検査装置30は、装置本体31と、ケーブル32と、検査波送受信アンテナ33を含む。詳細な図示は詳細するが、装置本体31には、検査波34の送受信処理回路、受信データ解析部、電源回路などが格納されている。装置本体31にケーブル32を介して検査波送受信アンテナ33が接続されている。検査波送受信アンテナ33は、例えば棒状になっている。
地盤改良状態検査装置30としては、例えばボアホールレーダーを用いることができる。
図示は省略するが、装置本体31にモニタやパーソナルコンピュータ、ないしは専用コンピュータが接続されていてもよい。
【0021】
<挿入工程>
図2に示すように、検査波送受信アンテナ33を、案内管20の基端開口(
図2において左端)から案内管20の内部ひいては地盤改良用孔11の内部に挿入する。挿入作業は、棒状の冶具(図示せず)を用いて行なうとよい。
図3に示すように、案内管20の内部は、注入材4が入っておらず、空洞になっているから、検査波送受信アンテナ33を注入材4に妨げられることなく容易に挿入できる。
【0022】
<検査波放射工程>
図4に示すように、案内管20内の検査波送受信アンテナ33から検査波34を放射する。検査波34は、好ましくは中心周波数100MHz〜3000MHz程度の高周波電磁波である。検査波34は、検査波送受信アンテナ33を中心にして全方位(360°)へ走査されることが好ましい。
【0023】
<検査波伝播工程>
該検査波34が、案内管20、環状路13及び先受け鋼管10を順次透過し、更に先受け鋼管10の周囲の注入改良体2bの内部、及び非注入地山部分2aの内部を伝播する。伝播しながら検査波34の減衰や反射が起きる。特に、注入改良体2bにおいては、検査波34が、検査波感応材4bとの相互作用によって減衰されたり反射されたりする。検査波感応材4bによる検査波34に対する減衰率又は反射率は、地山2における検査波34の減衰率又は反射率と異なる。したがって、注入改良体2bにおいては、検査波34の減衰率や反射率が、非改良部分2aとは異なる。
【0024】
<受信工程>
検査波送受信アンテナ33は、検査波34の放射と併行して、反射波35の受信を行なう。受信された反射波35は、受信データとして装置本体31へ入力される。
【0025】
<アンテナ移動工程>
更に、前記検査波34の放射及び受信と併行して、
図4の矢印線aに示すように、検査波送受信アンテナ33を案内管20の軸線方向ひいては注入改良体2bの長手方向へ移動させる。
例えば、
図2に示すように、検査波送受信アンテナ33を案内管20の先端部(
図2において右端部)まで挿し入れたうえで、検査波34の放射及び受信を開始し、その後、検査波送受信アンテナ33を漸次、案内管20の基端側(
図2において左側)へ移動させながら、検査波34の放射及び受信を行なう。これによって、検査領域を注入改良体2bの長手方向に沿って拡張できる。好ましくは、注入改良体2bの全長にわたって反射波35の受信データを得ることができる。また、検査波送受信アンテナ33を中心にして全方位から受信することによって、注入改良体2bの全周の受信データを得ることができる。
【0026】
<解析工程>
装置本体31の受信データ解析部において、前記反射波35の受信データに基づいて、注入材4の注入状態を解析する。
前述したように、注入改良体2bと非改良部分2aとでは、検査波感応体4bの有無に起因して、検査波34の減衰率や反射率が異なる。したがって、注入改良体2bからの受信データと、非改良部分2aからの受信データとを明確に識別することができる。或いは、受信データが、注入改良体2bと非改良部分2aとの境2cに相当する部分で不連続的に変化する。
したがって、受信データに基づいて、検査波送受信アンテナ33から前記境2cまでの距離を測定できる。更には、注入改良体2bの長手方向の各位置における、注入改良体2bの直径や断面積を求めることができる。ひいては、注入改良体2bの体積を算出できる。この結果、注入材4による改良領域の広がりを定量化でき、地盤改良状態を適確かつ容易に把握することができる。
図示は省略するが、解析のために、受信データを断面画像化したり、3次元画像化したり、グラフ化したりしてもよい。これによって、地盤改良状態を可視化でき、注入の良否を容易に判断できる。
【0027】
なお、検査波34は、案内管20及び先受け鋼管10においても吸収や散乱を起こす。一方、これら案内管20及び先受け鋼管10からの受信データは、検査波送受信アンテナ33の移動位置に依らずに一様である。したがって、全体の受信データから案内管20及び先受け鋼管10からの受信データ成分を容易にフィルタリングしてカットすることができる。
【0028】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、本発明の検査方法は、AGF工法に限られず、鏡ボルト工法における注入状態の検査にも適用でき、更にはAGF工法や鏡ボルト工法などのトンネル補助工法に限られず、注入式ボーリングや注入式鋼管杭などによる地盤改良状態の検査にも適用できる。地盤改良用孔は、水平でもよく、鉛直でもよい。
案内管20を省略してもよい。
検査波34は、電磁波に限られず、超音波であってもよい。
検査波34と検査波感応材4bとの相互作用は、減衰(吸収)や反射(散乱)に限られず、屈折、回折、干渉、波長変換、位相変換、励起、失活などであってもよい。地盤改良状態検査装置30が、これら相互作用の有無又は度合を検知可能であることが好ましい。
検査波感応材4bの材質は、金属に限られず、鉱物や有機物であってもよい。