(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963935
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】授業のカリキュラム及び受講順序提案システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/20 20120101AFI20211028BHJP
【FI】
G06Q50/20
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-159646(P2017-159646)
(22)【出願日】2017年8月22日
(65)【公開番号】特開2019-40259(P2019-40259A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005164
【氏名又は名称】株式会社フォトロン
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】卯木 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 健二
(72)【発明者】
【氏名】久保田 純
【審査官】
宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−139130(JP,A)
【文献】
特開2001−350850(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0115596(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0217113(US,A1)
【文献】
中島 克也,説明文を用いたオープン教材のための学習順序推定手法の評価,情報処理学会研究報告,Vol.2017-DBS-164 No.3,2017年01月17日,pp.1-6
【文献】
戴 憶菱,wikipedia構造分析による科目シラバスと専門分野知識の関連付け,第9回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム (第15回日本データベース学会年次大会) [online] ,2017年03月07日,G5-4
【文献】
野澤 孝之 Takayuki NOZAWA,シラバス−専門用語の相互クラスタリングを用いたカリキュラム分析システムの改善,知能と情報,2005年10月15日,Vol.17 No.5,pp.569-586
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
授業のシラバス、及びインターネットにより取得可能なインターネット情報を入力データとして、機械学習により前記授業の難易度及び依存関係を推定する解析部と、
前記解析部により推定された前記授業の難易度及び依存関係に基づいて、前記授業間における授業内容の難易度が過大な飛躍を生じないように、または前記授業内容が一般的な概念から専門的な概念へ移行するように、前記授業のカリキュラムを作成するカリキュラム作成部と、
前記解析部により推定された前記授業の難易度及び依存関係に基づいて、前記授業内容が易しいものから難しいものへ、または一般的な内容から専門的な内容へ順次移行するように、前記授業の受講すべき順序を提示する受講順序提示部と、を有することを特徴とする授業のカリキュラム及び受講順序提案システム。
【請求項2】
前記解析部により推定された前記授業の難易度及び依存関係に基づいてカリキュラム作成部により作成された前記授業のカリキュラムと、他の手法により作成された既存の授業のカリキュラムとを比較して、この既存の授業のカリキュラムの改善点を提示するカリキュラム改善提示部を、更に有することを特徴とする請求項1に記載の授業のカリキュラム及び受講順序提案システム。
【請求項3】
前記インターネット情報は、インターネット百科事典に記載された情報、及びシラバスに掲載された専門書の内容に関する情報を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の授業のカリキュラム及び受講順序提案システム。
【請求項4】
前記機械学習は、授業のシラバス及びインターネット情報を入力データとし、この入力データに対応する正解データを授業の難易度及び依存関係とし、これらの入力データと正解データのセットを大量に、解析部として機能するコンピュータに入力してモデルを構築し、このモデルに、正解データが未知な入力データである授業のシラバス及びインターネット情報を入力することで、授業の難易度及び依存関係を推定して出力させるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の授業のカリキュラム及び受講順序提案システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、学校や企業内研修等における授業のカリキュラムや授業の受講順序を提案する授業のカリキュラム及び受講順序提案システムに関する。
【背景技術】
【0002】
学校や企業内研修等における授業のカリキュラムは、教員がその経験をもとに、手間や時間をかけて作成している。また、授業の受講者は、授業の内容を表したシラバス等を参考にして授業を選択し、その受講すべき受講順序を決めている。更に、授業のシラバスや受講者のニーズ、能力等を考慮して、受講すべき授業を推奨する発明が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−139130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の発明は、授業のカリキュラムを見直すことはできるものの、カリキュラムを一から作成することを支援するものではない。また、特許文献1に記載の発明は、受講者に対して受講すべき授業を推奨できるものの、それらの受講順序を提示するものではない。
【0005】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、授業のカリキュラムを容易に作成でき、また、授業の受講すべき受講順序を的確に提示できる授業のカリキュラム及び受講順序提案システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態における授業のカリキュラム及び受講順序提案システムは、授業のシラバス、及びインターネットにより取得可能なインターネット情報を入力データとして、機械学習により前記授業の難易度及び依存関係を推定する解析部と、前記解析部により推定された前記授業の難易度及び依存関係に基づいて、
前記授業間における授業内容の難易度が過大な飛躍を生じないように、または前記授業内容が一般的な概念から専門的な概念へ移行するように、前記授業のカリキュラムを作成するカリキュラム作成部と、前記解析部により推定された前記授業の難易度及び依存関係に基づいて、
前記授業内容が易しいものから難しいものへ、または一般的な内容から専門的な内容へ順次移行するように、前記授業の受講すべき順序を提示する受講順序提示部と、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、授業のカリキュラムを容易に作成でき、また、授業の受講すべき受講順序を的確に提示できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る授業のカリキュラム及び受講順序提案システムの構成を示すブロック図。
【
図2】
図1の授業のカリキュラム及び受講順序提案システムが実行する手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
図1は、一実施形態に係る授業のカリキュラム及び受講順序提案システムの構成を示すブロック図である。
【0010】
この
図1に示す授業のカリキュラム及び受講順序提案システム10は、主に、学校や企業内研修等における授業のカリキュラムの作成、授業の受講順序の提示、及び既存のカリキュラムの改善点の提示を行なうものであり、解析部11、出力保持部12、カリキュラム作成部13、受講順序提示部14及びカリキュラム改善提示部15を有して構成される。ここで、授業のカリキュラムの用語は、授業の科目を含めた授業内容を系統立てて配列したものであり、授業の順序を含む。
【0011】
これらの解析部11、出力保持部12、カリキュラム作成部13、受講順序提示部14及びカリキュラム改善提示部15は、プロセッサ及びメモリを備えたコンピューターシステムにより実行される。
【0012】
解析部11は、授業のシラバス16及びインターネット情報17を入力データとして、機械学習により授業の難易度及び依存(包含)関係を推定して出力するものである。ここで、シラバス16は、授業の概要を示すものであり、授業の内容や授業計画、教員名、教科書、専門書(参考書)等が掲載されている。このシラバス16中から抽出された頻出用語が、解析部11への入力データとされる。また、インターネット情報17は、ウィキペディア(Wikipedia)等のインターネット百科事典の情報、及びシラバス16に掲載された専門書の内容(目次、本文、索引など)に関する情報を含む、インターネットにより取得可能な情報である。
【0013】
機械学習は、授業のシラバス16及びインターネット情報17を入力データとし、この入力データに対応する出力データとしての正解データを授業の難易度及び依存関係とし、これらの入力データと正解データのセットを大量に、解析部11として機能するコンピュータに入力して機械学習のモデルを構築し、このモデルに、正解データが未知な入力データである授業のシラバス16及びインターネット情報17を入力することで、授業の難易度及び依存関係を推定して出力させるものである。
【0014】
この機械学習で出力される授業の難易度及び依存関係は、次のようにして推定されたものである。つまり、シラバス16中で出現頻度の高い頻出用語が、ウィキペディア等のインターネット情報17を用いて、例えば上位・下位関係抽出ツール等により上位語または下位語に判別される。シラバス16に上位語が多い場合には、授業は入門または初級編であり、シラバス16に下位語(専門用語)が多い場合には、授業は中級または上級編であると判定される。従って、上述のように、上位語または下位語がシラバス16中に多いか否かで授業の難易度及び依存関係が推定されるのである。なお、授業の依存関係は、複数の授業における授業の包含関係や従属関係を意味する。
【0015】
出力保持部12は、解析部11により推定された授業の難易度及び依存関係を、カリキュラム作成部13、受講順序提示部14、カリキュラム改善提示部15が利用するために保持する。
【0016】
カリキュラム作成部13は、解析部11にて推定された授業の難易度及び依存関係に基づいて、授業のカリキュラムを作成する。例えば、授業間における授業内容の難易度が過大な飛躍(ギャップ)を生じないように、または授業間の授業内容が一般的な概念から専門的な概念へ移行するように、授業のカリキュラムを作成する。
【0017】
受講順序提示部14は、解析部11にて推定された授業の難易度及び依存関係に基づいて、受講者が授業を受講すべき受講順序を提示する。例えば、授業内容が易しいものから難しいものへ、または一般的な内容から専門的な内容へ順次移行するように、受講すべき授業の受講順序を受講者に提示する。受講者の受講履歴や成績が判る場合には、受講順序提示部14は、これらを考慮して授業の受講順序を受講者に提示してもよい。
【0018】
カリキュラム改善提示部15は、解析部11にて推定された授業の難易度及び依存関係に基づいて、カリキュラム作成部13により作成された授業のカリキュラムと、他の手法により作成された既存の授業のカリキュラムとを比較して、この既存の授業のカリキュラムの改善点を提示する。
【0019】
例えば、まず、特定の大学のシラバス16及びインターネット情報17から解析部11が構築した機械学習のモデルに、他大学のシラバス16及びインターネット情報17を入力して、解析部11がこの他大学の授業の難易度及び依存関係を推定して出力し、これに基づいてカリキュラム作成部13が、この他大学の授業のカリキュラムを新たに作成する。次に、カリキュラム改善提示部15は、カリキュラム作成部13が新たに作成した授業のカリキュラムと、他大学において他の手法により作成された既存の授業のカリキュラムとを比較して、異なった箇所(例えば授業順序など)を改善点として提示する。
【0020】
次に、上述のように構成された授業のカリキュラム及び受講順序提案システム10の動作手順を、
図1及び
図2に基づいて説明する。
【0021】
まず、授業のシラバス16及びインターネット情報17を入力データとし、この入力データに対応する正解データを授業の難易度及び依存関係とし、これらの入力データと正解データのセットを大量に、解析部11として機能するコンピュータに入力して、機械学習のモデルを構築する(S1)。
【0022】
次に、ステップS1で構築されたモデルに、シラバス16中から抽出された頻出用語を入力データとして入力し(S2)、更に、ウィキペディア等のインターネット情報17を入力データとして入力する(S3)。これらの入力データが上記モデルに入力されることで、解析部11は、授業の難易度及び依存関係を推定して出力する(S4)。
【0023】
解析部11にて推定された授業の難易度及び依存関係に基づいて、カリキュラム作成部13が授業のカリキュラムを作成し(S5)、受講順序提示部14が授業の受講すべき受講順序を提示する(S6)。
【0024】
また、カリキュラム改善提示部15は、解析部11により推定された授業の難易度及び依存関係に基づいてカリキュラム作成部13により作成された授業のカリキュラムと、他の手法により作成された既存の授業のカリキュラムとを比較して、この既存の授業のカリキュラムの改善点を提示する(S7)。
【0025】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果(1)及び(2)を奏する。
【0026】
(1)解析部11による機械学習で推定される授業の難易度及び依存関係は、授業の内容等を表すシラバス16中の頻出用語が、ウィキペディア等のインターネット情報17を用いて、例えば上位・下位関係抽出ツール等により上位語または下位語に判別され、この上位語または下位語がシラバス16中に多いか否かで正確に推定されるものである。従って、この正確に推定された授業の難易度及び依存関係に基づいてカリキュラム作成部13が授業のカリキュラム作成するで、多大な手間や時間を掛けることなく授業のカリキュラムを容易に作成できる。また、解析部11により正確に推定された授業の難易度及び依存関係に基づいて受講順序提示部14は、授業の受講すべき受講順序を受講者に的確に提示できる。
【0027】
(2)カリキュラム改善提示部15は、解析部11による機械学習で正確に推定された授業の難易度及び依存関係に基づいてカリキュラム作成部13が作成した授業のカリキュラムを、既存の授業のカリキュラムと比較し、この既存の授業のカリキュラムの改善点を提示する。この結果、既存の授業のカリキュラムに関して授業内容の難易度の飛躍(ギャップ)を示したり、学習効率を向上させるために授業順序の変更を提示したりすることができる。
【0028】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0029】
例えば、複数の大学の授業について、解析部11による機械学習によって授業の難易度及び依存関係をそれぞれ推定し、これらの推定結果を、大学間で行われる単位互換の指標として利用してもよい。
【符号の説明】
【0030】
10…授業のカリキュラム及び受講順序提案システム
11…解析部
12…出力保持部
13…カリキュラム作成部
14…受講順序提示部
15…カリキュラム改善提示部
16…シラバス
17…インターネット情報