(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測量装置と、ローバーとを有する測量システムであって、前記ローバーは、前記測量装置に向けて照明光を発する照明灯と、前記照明光の光軸の方位角を検出する第2方位計と、前記光軸の方位角を前記測量装置に送信し、前記測量装置とデータ通信可能な第2通信部とを有し、
前記測量装置は、測量装置本体と、該測量装置本体を少なくとも左右方向に回転可能な回転駆動部とを具備し、前記測量装置本体は、測距光を射出する測距光射出部と、反射測距光を受光し、受光信号を発する受光部と、前記受光信号に基づき測定対象の測距を行う測距部と、測距光軸上に設けられ、該測距光軸を2次元に偏向可能な光軸偏向部と、前記測距光軸の偏角を検出し、測角を行う射出方向検出部と、前記光軸偏向部により偏向されない状態の前記測距光軸である基準光軸と平行な撮像光軸を有する撮像部と、前記基準光軸の方位角を検出する第1方位計と、前記基準光軸の方位角を受信し、前記ローバーとデータ通信可能な第1通信部と、前記光軸偏向部の偏向作用及び前記測距部の測距作用を制御する演算制御部とを具備し、
該演算制御部は、前記ローバーから前記第2方位計が検出した前記照明光の光軸の方位角を前記第1通信部から受信し、該照明光の光軸の方位角と前記第1方位計が検出した前記基準光軸の方位角に基づき、前記照明光の光軸と平行又は略平行な前記基準光軸の方位角を演算する様構成され、
前記演算制御部は、前記基準光軸が前記照明光の光軸と平行又は略平行となる様前記測量装置本体を回転させ、前記撮像部が取得した画像から前記照明光を検出し、該照明光の検出結果に基づき前記照明灯の方向を求め、前記光軸偏向部により求めた方向を中心に前記測距光を2次元スキャンし、スキャン経路に沿って測距、測角を行う様構成された測量システム。
前記光軸偏向部は、前記測距光軸を中心として回転可能な一対の光学プリズムと、該光学プリズムを個々に独立して回転するモータとを具備し、前記演算制御部は、前記モータの駆動制御により、前記一対の光学プリズムの回転方向、回転速度、回転比を制御し、前記光軸偏向部による偏向を制御し、前記測距光を2次元スキャンさせる請求項1に記載の測量システム。
前記ローバーは複数設けられ、前記演算制御部は、各ローバーから受信した各照明光の光軸の方位角に基づき平均方位角を演算し、前記基準光軸の方位角が前記平均方位角となる様前記測量装置本体を水平回転させる請求項1〜請求項5のうちいずれか1項に記載の測量システム。
前記ローバーは、反射シートの再帰反射体を有し、前記照明光の光軸に対して既知の位置にある前記ローバーの基準点と、該基準点を中心とする基準反射部と、該基準反射部の上下に延在する補助反射部とを有し、前記測量装置は、前記補助反射部又は前記基準反射部からの反射測距光に基づき前記基準点を検出し、前記演算制御部は前記基準点の方向を中心として前記光軸偏向部により前記測距光軸をスキャンさせ、前記基準反射部及び前記補助反射部の3次元測定を行い、前記基準点の3次元位置を求める様に構成した請求項1又は請求項2に記載の測量システム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0019】
図1〜
図4により、本発明の実施例に係る測量システムの概略を説明する。
【0020】
図1中、1は本実施例に係る測量装置1(例えばトータルステーション)であり、既知点(既知の座標)に設置される。又、2はターゲット装置、3はデータコレクタを示している。尚、前記ターゲット装置2と前記データコレクタ3とからローバー4が構成されている。
【0021】
前記測量装置1は、主に三脚5、該三脚5の上端に設けられた設置台6、該設置台6上に設けられた台座部7、該台座部7上に設けられた托架部8、該托架部8に設けられた測量装置本体9と、該測量装置本体9の所定位置、例えば上面に設けられた第1方位計10を有している。尚、該第1方位計10は、前記測量装置本体9に内蔵してもよい。
【0022】
前記托架部8は、一端部から上方に突出する突出部を有する断面L字形状となっている。前記測量装置本体9は上下回転軸11を介して前記托架部8の突出部に支持され、前記上下回転軸11を中心に上下方向に回転自在となっている。
【0023】
該上下回転軸11の端部には、上下被動ギア12が嵌設されている。該上下被動ギア12は上下駆動ギア13と噛合し、該上下駆動ギア13は上下駆動モータ14の出力軸に固着されている。前記測量装置本体9は、前記上下駆動モータ14により上下方向に回転される様になっている。
【0024】
又、前記上下回転軸11の端部には、上下角(前記上下回転軸11を中心とした回転方向の角度)を検出する上下回転角検出器15(例えば、エンコーダ)が設けられている。該上下回転角検出器15により、前記測量装置本体9の前記托架部8に対する上下方向の相対回転角が検出される。
【0025】
前記托架部8の下面からは、左右回転軸16が突設され、該左右回転軸16は軸受(図示せず)を介して前記台座部7に回転自在に嵌合している。前記托架部8は、前記左右回転軸16を中心に左右方向に回転自在となっている。
【0026】
該左右回転軸16と同心に、左右被動ギア17が前記台座部7に固着されている。前記托架部8には左右駆動モータ21が設けられ、該左右駆動モータ21の出力軸に左右駆動ギア22が固着されている。該左右駆動ギア22は前記左右被動ギア17と噛合している。前記托架部8は、前記左右駆動モータ21により前記左右駆動ギア22が前記左右被動ギア17に対して回転され、前記托架部8と前記左右駆動モータ21とは一体に左右方向に回転する様になっている。
【0027】
又、前記左右回転軸16と前記台座部7との間には、左右角(前記左右回転軸16を中心とした回転方向の角度)を検出する左右回転角検出器24(例えば、エンコーダ)が設けられている。該左右回転角検出器24により、前記托架部8の前記台座部7に対する左右方向の相対回転角が検出される。
【0028】
又、前記第1方位計10は、前記測量装置本体9の方位を検出し、該測量装置本体9の基準光軸Oに対する水平方向の角度、即ち該基準光軸Oの方位角を検出する様になっている。又、前記第1方位計10により検出された方位角は、電気信号として演算制御部26(後述)にリアルタイムで入力される。
【0029】
前記上下駆動モータ14と前記左右駆動モータ21との協働により、前記測量装置本体9を所望の方向へと向けることができる。尚、前記托架部8と前記台座部7とにより前記測量装置本体9の支持部が構成される。又、前記上下駆動モータ14と前記左右駆動モータ21とにより、前記測量装置本体9の回転駆動部が構成される。
【0030】
前記上下駆動モータ14と前記左右駆動モータ21は、前記測量装置本体9の前記演算制御部26によって駆動が制御され、前記上下回転角検出器15、前記左右回転角検出器24によって検出された鉛直角と水平角は前記演算制御部26に入力される様になっている。又、前記測量装置本体9は、後述する様に、記憶部27、第1通信部28を有している。前記測量装置本体9が取得したデータ、即ち鉛直角、水平角のデータ及び後述する測距データ、後述する画像データは、前記記憶部27に保存され、前記第1通信部28を介して前記データコレクタ3に送信される様になっている。
【0031】
尚、前記測量装置1による測定範囲が、光軸偏向部59(後述)による偏角の範囲内の場合、或は該光軸偏向部59の基準光軸O(後述)の方向の初期設定を手動で行う場合は、前記上下駆動モータ14、前記上下回転角検出器15、前記左右駆動モータ21、前記左右回転角検出器24等については、省略することができる。
【0032】
前記ターゲット装置2は、断面が円の棒状の支持部材であるポール18と、ターゲットとして該ポール18の途中に設けられた基準反射部25を有する。該基準反射部25の全周に再帰反射部材である反射シートが巻設されている。前記ポール18にも上下それぞれ部分的に該ポール18が露出する様、該ポール18に再帰反射部材である反射シート29が全周を覆う様に、巻設されている。該反射シート29が巻設された部分は、上下に所定長さを有する線状反射部20を構成する。前記基準反射部25、前記線状反射部20は、それぞれ測距光を反射し、前記測量装置1の測定対象となっている。基準点(後述)を示すターゲットとしての前記基準反射部25に対して、前記線状反射部20は、前記測定対象の検出、更に前記基準反射部25の検出を容易にする補助反射部となっている。
【0033】
前記ポール18の下端は、測定点Pを指示できる様に尖端となっている。又、前記ポール18の上端には、自在連結具(図示せず)を介して照明灯23が設けられている。該照明灯23の位置、例えば前記ポール18の下端と前記自在連結具の回転中心との距離は、既知となっている。又、前記照明灯23の所定位置、例えば上面には、第2方位計31が設けられている。該第2方位計31は、前記照明灯23の光軸の方位角を検出する。又、前記第2方位計31は通信機能を有しており、該第2方位計31による方位角検出結果を、電気信号としてリアルタイムで前記データコレクタ3に送信する様になっている。尚、前記第2方位計31は、例えば前記照明灯23に内蔵されてもよい。
【0034】
前記自在連結具は、前記照明灯23を、前記ポール18に対して上下方向、左右方向、少なくとも上下方向に傾動可能に支持している。更に、前記自在連結具の回転部には摩擦力が作用し、前記ポール18に対する前記照明灯23の姿勢が維持される様になっている。
【0035】
該照明灯23の照明光の放射角は略30°であり、更に該照明灯23がズーム機能を有し、放射角が10°前後に縮小できれば好ましい。
【0036】
前記ターゲット装置2は、前記ポール18の下端から所定の位置に基準点を有する。前記ポール18には、前記基準反射部25が設けられ、該基準反射部25の中心が前記基準点となっている。該基準点は前記ポール18の下端からの距離が既知となっている。又、前記基準点は、前記照明灯23に対しても位置関係(例えば前記基準点と前記照明灯23の光軸迄の距離)が既知となっている。
【0037】
前記基準反射部25は、前記線状反射部20と同様、全周に反射シートが巻設されている。前記基準反射部25は、測距光のビーム径よりも大きい所定の厚み(軸心方向の長さ)で、且つ前記線状反射部20の直径に対して太くなっている。
【0038】
ここで、前記基準反射部25と前記線状反射部20間の直径差は、前記測量装置本体9の測定精度に対応して決定される。この直径差は、前記測量装置本体9の測定精度(測定誤差)以上となっていればよい。又、前記線状反射部20の直径、測定状況、前記測量装置本体9の測定能力等に応じて、前記直径差が決定されることは言う迄もない。
【0039】
本実施例の場合、測定距離が最大200mとして、前記線状反射部20の直径は35mm、前記基準反射部25の直径は100mm、又前記基準反射部25の厚みは30mmに設定される。
【0040】
図4に示される様に、前記データコレクタ3は、演算処理部32、記憶部33、第2通信部34、表示部35、操作部36を具備している。尚、前記表示部35をタッチパネルとし、該表示部35に操作部の機能を兼用させ、前記操作部36を省略してもよい。又、前記データコレクタ3として、スマートフォン等の端末を利用してもよい。
【0041】
該データコレクタ3と前記測量装置1とは、前記第1通信部28、前記第2通信部34を介して通信可能であり、前記データコレクタ3により前記測量装置1を遠隔操作可能である。又、該測量装置1で取得した測距結果、測角結果、画像等のデータは、前記データコレクタ3に送信され、前記記憶部33に保存される様になっている。尚、前記測量装置1は、前記台座部7を前記設置台6に対して着脱可能としてもよい。
【0042】
次に、前記測量装置本体9について、
図5を参照して具体的に説明する。
【0043】
該測量装置本体9は、測距光射出部37、受光部38、測距演算部39、撮像部41、射出方向検出部42、モータドライバ43、姿勢検出部44、前記第1通信部28、前記演算制御部26、前記記憶部27、撮像制御部45、画像処理部46、表示部47、前記第1方位計10を具備し、これらは筐体48に収納され、一体化されている。尚、前記測距光射出部37、前記受光部38、前記測距演算部39等は、測距部を構成する。
【0044】
前記測距光射出部37は、射出光軸49を有し、該射出光軸49上に発光素子51、例えばレーザダイオード(LD)が設けられている。又、前記射出光軸49上に投光レンズ52が設けられている。更に、前記射出光軸49上に設けられた偏向光学部材としての第1反射鏡53と、受光光軸54(後述)上に設けられた偏向光学部材としての第2反射鏡55とによって、前記射出光軸49は、前記受光光軸54と合致する様に偏向される。前記第1反射鏡53と前記第2反射鏡55とで射出光軸偏向部が構成される。
【0045】
前記発光素子51はパルスレーザ光線を発し、前記測距光射出部37は、前記発光素子51から発せられたパルスレーザ光線を測距光56として射出する。
【0046】
前記受光部38について説明する。該受光部38には、測定対象からの反射測距光57が入射する。前記受光部38は、前記受光光軸54を有し、該受光光軸54には、前記第1反射鏡53、前記第2反射鏡55によって偏向された前記射出光軸49が合致する。尚、該射出光軸49と前記受光光軸54とが合致した状態を測距光軸58とする(
図1参照)。
【0047】
偏向された前記射出光軸49上に、即ち前記受光光軸54上に前記光軸偏向部59(後述)が配設される。該光軸偏向部59の中心を透過する真直な光軸は、基準光軸Oとなっている。該基準光軸Oは、前記光軸偏向部59によって偏向されなかった時の前記射出光軸49又は前記受光光軸54又は前記測距光軸58と合致する。
【0048】
前記反射測距光57が前記光軸偏向部59を透過し、入射した前記受光光軸54上に結像レンズ61が配設される。又、前記受光光軸54上に受光素子62、例えばアバランシフォトダイオード(APD)が設けられている。前記結像レンズ61は、前記反射測距光57を前記受光素子62に結像する。該受光素子62は、前記反射測距光57を受光し、受光信号を発生する。受光信号は、前記測距演算部39に入力され、該測距演算部39は受光信号に基づき測定対象迄の測距を行う。
【0049】
図6を参照して、前記光軸偏向部59について説明する。
【0050】
該光軸偏向部59は、一対の光学プリズム63,64から構成される。該光学プリズム63,64は、それぞれ同径の円板形であり、前記受光光軸54上に該受光光軸54と直交して同心に配置され、所定間隔で平行に配置されている。前記光学プリズム63は、光学ガラスにて成形され、平行に配置された3つの三角プリズム65a,65b,65cを有している。前記光学プリズム64は、光学ガラスにて成形され、平行に配置された3つの三角プリズム66a,66b,66cを有している。尚、前記三角プリズム65a,65b,65cと前記三角プリズム66a,66b,66cは、全て同一偏角の光学特性を有している。
【0051】
尚、中心に位置する前記三角プリズム65a,66aの幅は、前記測距光56のビーム径よりも大きくなっており、該測距光56は前記三角プリズム65a,66aのみを透過する様になっている。
【0052】
前記光軸偏向部59の中央部(前記三角プリズム65a,66a)は、前記測距光56が透過し、射出される第1光軸偏向部である測距光偏向部となっている。前記光軸偏向部59の中央部を除く部分(前記三角プリズム65a,66aの両端部及び前記三角プリズム65b,65c、前記三角プリズム66b,66c)は、前記反射測距光57が透過し、入射する第2光軸偏向部である反射測距光偏向部となっている。
【0053】
前記光学プリズム63,64は、それぞれ前記受光光軸54を中心に独立して個別に回転可能に配設されている。前記光学プリズム63,64は、回転方向、回転量、回転速度が独立して制御されることで、射出される前記測距光56の前記射出光軸49を任意の方向に偏向し、又受光される前記反射測距光57の前記受光光軸54を前記射出光軸49と平行に偏向する。
【0054】
前記光学プリズム63,64の外形形状は、それぞれ前記受光光軸54(基準光軸O)を中心とする円形であり、前記反射測距光57の広がりを考慮し、充分な光量を取得できる様、前記光学プリズム63,64の直径が設定されている。
【0055】
前記光学プリズム63の外周にはリングギア67が嵌設され、前記光学プリズム64の外周にはリングギア68が嵌設されている。
【0056】
前記リングギア67には駆動ギア69が噛合し、該駆動ギア69はモータ71の出力軸に固着されている。同様に、前記リングギア68には駆動ギア72が噛合し、該駆動ギア72はモータ73の出力軸に固着されている。前記モータ71,73は、前記モータドライバ43に電気的に接続されている。
【0057】
前記モータ71,73は、回転角を検出できるもの、或は駆動入力値に対応した回転をするもの、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量(回転角)を検出する回転角検出器、例えばエンコーダ等を用いて前記モータ71,73の回転量を検出してもよい。該モータ71,73の回転量がそれぞれ検出され、前記モータドライバ43により前記モータ71,73が個別に制御される。尚、エンコーダを直接リングギア67,68にそれぞれ取付け、エンコーダにより前記リングギア67,68の回転角を直接検出する様にしてもよい。
【0058】
前記駆動ギア69,72、前記モータ71,73は、前記測距光射出部37と干渉しない位置、例えば前記リングギア67,68の下側に設けられている。
【0059】
前記投光レンズ52、前記第1反射鏡53、前記第2反射鏡55、前記測距光偏向部等は、投光光学系を構成する。又、前記反射測距光偏向部、前記結像レンズ61等は、受光光学系を構成する。
【0060】
前記測距演算部39は、前記発光素子51を制御し、前記測距光56としてレーザ光線をパルス発光又はバースト発光(断続発光)させる。該測距光56が前記三角プリズム65a,66a(測距光偏向部)により、測定対象に向う様前記射出光軸49が偏向される。前記測距光軸58が、測定対象(前記基準反射部25)を視準した状態で測距が行われる。
【0061】
前記測定対象から反射された前記反射測距光57は、前記三角プリズム65b,65c及び前記三角プリズム66b,66c(反射測距光偏向部)、前記結像レンズ61を介して入射し、前記受光素子62に受光される。該受光素子62は、受光信号を前記測距演算部39に送出し、該測距演算部39は前記受光素子62からの受光信号に基づき、パルス光毎に測定点(測距光が照射された点)の測距を行い、測距データは前記記憶部27に格納される。
【0062】
前記射出方向検出部42は、前記モータ71,73に入力する駆動パルスをカウントすることで、前記モータ71,73の回転角を検出する。或は、エンコーダからの信号に基づき、前記モータ71,73の回転角を検出する。又、前記射出方向検出部42は、前記モータ71,73の回転角に基づき、前記光学プリズム63,64の回転位置を演算する。更に、前記射出方向検出部42は、前記光学プリズム63,64の屈折率と回転位置とに基づき、各パルス光毎の前記測距光56の偏角、射出方向を演算する。演算結果(測角結果)は、測距結果に関連付けられて前記演算制御部26に入力される。尚、前記測距光56がバースト発光される場合は、断続測距光毎に測距が実行される。
【0063】
前記演算制御部26は、前記モータ71,73の回転方向、回転速度、前記モータ71,73間の回転比を制御することで、前記光軸偏向部59による偏向作用を制御する。又、前記測距光56の偏角、射出方向から、前記測距光軸58に対する測定点の水平角、鉛直角を演算する。更に、測定点についての水平角、鉛直角を前記測距データに関連付けることで、測定対象の3次元データを求めることができる。而して、前記測量装置1は、トータルステーションとして機能する。
【0064】
次に、前記姿勢検出部44について説明する。尚、該姿勢検出部44としては、特許文献2に開示された姿勢検出部を使用することができる。
【0065】
該姿勢検出部44について簡単に説明する。該姿勢検出部44は、フレーム74を有している。該フレーム74は、前記筐体48に固定され、或は構造部材に固定され、前記測量装置本体9と一体となっている。
【0066】
前記フレーム74にはジンバルを介してセンサブロック75が取付けられている。該センサブロック75は、直交する2軸を中心に2方向にそれぞれ360°回転自在となっている。
【0067】
該センサブロック75には、第1傾斜センサ76、第2傾斜センサ77が取付けられている。前記第1傾斜センサ76は水平を高精度に検出するものであり、例えば水平液面に検出光を入射させ反射光の反射角度の変化で水平を検出する傾斜検出器、或は封入した気泡の位置変化で傾斜を検出する気泡管である。又、前記第2傾斜センサ77は傾斜変化を高応答性で検出するものであり、例えば加速度センサである。
【0068】
前記センサブロック75の、前記フレーム74に対する2軸についての相対回転角は、エンコーダ78,79によって検出される様になっている。
【0069】
又、前記センサブロック75を回転させ、水平に維持するモータ(図示せず)が前記2軸に関してそれぞれ設けられている。該モータは、前記第1傾斜センサ76、前記第2傾斜センサ77からの検出結果に基づき、前記センサブロック75を水平に維持する様に前記演算制御部26によって制御される。
【0070】
前記センサブロック75が傾斜していた場合(前記測量装置本体9が傾斜していた場合)、前記センサブロック75(水平)に対する前記フレーム74の相対回転角が前記エンコーダ78,79によって検出される。該エンコーダ78,79の検出結果に基づき、前記測量装置本体9の傾斜角、傾斜方向が検出される。
【0071】
前記センサブロック75は、2軸について360°回転自在であるので、前記姿勢検出部44がどの様な姿勢となろうとも、例えば該姿勢検出部44の天地が逆になった場合でも、全方向での姿勢検出が可能である。
【0072】
姿勢検出に於いて、高応答性を要求する場合は、前記第2傾斜センサ77の検出結果に基づき姿勢検出と姿勢制御が行われるが、該第2傾斜センサ77は前記第1傾斜センサ76に比べ検出精度が悪いのが一般的である。
【0073】
前記姿勢検出部44では、高精度の前記第1傾斜センサ76と高応答性の前記第2傾斜センサ77を具備することで、該第2傾斜センサ77の検出結果に基づき姿勢制御を行い、前記第1傾斜センサ76により高精度の姿勢検出を可能とする。
【0074】
該第1傾斜センサ76の検出結果で、前記第2傾斜センサ77の検出結果を較正することができる。即ち、前記第1傾斜センサ76が水平を検出した時の前記エンコーダ78,79の値、即ち実際の傾斜角と前記第2傾斜センサ77が検出した傾斜角との間で偏差を生じれば、該偏差に基づき前記第2傾斜センサ77の傾斜角を較正することができる。
【0075】
従って、予め、該第2傾斜センサ77の検出傾斜角と、前記第1傾斜センサ76による水平検出と前記エンコーダ78,79の検出結果に基づき求めた傾斜角との関係を取得しておけば、前記第2傾斜センサ77に検出された傾斜角の較正(キャリブレーション)をすることができ、該第2傾斜センサ77による高応答性での姿勢検出の精度を向上させることができる。
【0076】
前記演算制御部26は、傾斜の変動が大きい時、傾斜の変化が速い時は、前記第2傾斜センサ77からの信号に基づき、前記モータを制御する。又、前記演算制御部26は、傾斜の変動が小さい時、傾斜の変化が緩やかな時、即ち前記第1傾斜センサ76が追従可能な状態では、該第1傾斜センサ76からの信号に基づき、前記モータを制御する。
【0077】
尚、前記記憶部27には、前記第1傾斜センサ76の検出結果と前記第2傾斜センサ77の検出結果との比較結果を示す対比データが格納されている。前記第1傾斜センサ76からの信号に基づき、該第2傾斜センサ77による検出結果を較正する。この較正により、該第2傾斜センサ77による検出結果を前記第1傾斜センサ76の検出精度迄高めることができる。よって、前記姿勢検出部44による姿勢検出に於いて、高精度を維持しつつ高応答性を実現することができる。
【0078】
前記撮像部41は、前記測量装置本体9の前記基準光軸Oと平行な撮像光軸81と、該撮像光軸81に配置された撮像レンズ82とを有している。前記撮像部41は、前記光学プリズム63,64による最大偏角(例えば±20°)と略等しい、或は最大偏角よりも大きい画角、例えば50°〜60°の画角を有するカメラであり、前記測量装置本体9のスキャン範囲を含む画像データを取得する。前記撮像光軸81と前記射出光軸49及び前記基準光軸Oとの関係は既知であり、前記撮像光軸81と前記射出光軸49及び前記基準光軸Oとは平行であり、又各光軸間の距離は既知の値となっている。又、前記撮像部41は、動画像、又は連続画像が取得可能である。
【0079】
前記撮像制御部45は、前記撮像部41の撮像を制御する。前記撮像制御部45は、前記撮像部41が前記動画像、又は連続画像を撮像する場合に、該動画像、又は連続画像を構成するフレーム画像を取得するタイミングと前記測量装置本体9でスキャンするタイミングとの同期を取っている。前記演算制御部26は画像と測定データ(測距データ、測角データ)との関連付けも実行する。
【0080】
前記撮像部41の撮像素子83は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記撮像光軸81を原点とした座標系での画素座標を有し、該画素座標によって画像素子上での位置が特定される。
【0081】
前記画像処理部46は、前記撮像部41で取得した画像データについて、エッジ抽出処理、特徴点の抽出、画像トラッキング処理、画像マッチング等の画像処理を行い、又画像データから濃淡画像を作成する。
【0082】
前記表示部47は、前記撮像部41により取得した画像を表示し、測定状況、測定データ等を表示する。尚、前記表示部47はタッチパネルとされ、操作部としても機能する。又、前記データコレクタ3による遠隔操作を行う場合は、前記表示部47は省略することができる。
【0083】
前記光軸偏向部59の偏向作用、スキャン作用について、
図7(A)〜
図7(C)を参照して説明する。
【0084】
尚、
図7(A)では、説明を簡略化する為、前記光学プリズム63,64について、前記三角プリズム65a,66aと、前記三角プリズム65b,65c,66b,66cとを分離して示している。又、
図7(A)は、前記三角プリズム65a,66a、前記三角プリズム65b,65c,66b,66cが同方向に位置した状態を示しており、この状態では最大の偏角(例えば、±20°)が得られる。又、最少の偏角は、前記光学プリズム63,64のいずれか一方が180°回転した位置であり、該光学プリズム63,64の相互の光学作用が相殺され、偏角は0°となる。従って、前記光学プリズム63,64を経て射出、受光されるパルスレーザ光線の光軸(前記測距光軸58)は、前記基準光軸Oと合致する。
【0085】
前記発光素子51から前記測距光56が発せられ、該測距光56は前記投光レンズ52で平行光束とされ、前記測距光偏向部(前記三角プリズム65a,66a)を透過して測定対象に向けて射出される。ここで、前記測距光偏向部を透過することで、前記測距光56は前記三角プリズム65a,66aによって所要の方向に偏向されて射出される(
図7(A))。
【0086】
前記測定対象で反射された前記反射測距光57は、前記反射測距光偏向部を透過して入射され、前記結像レンズ61により前記受光素子62に集光される。
【0087】
前記反射測距光57が前記反射測距光偏向部を透過することで、前記反射測距光57の光軸は、前記受光光軸54と合致する様に前記三角プリズム65b,65c及び前記三角プリズム66b,66cによって偏向される(
図7(A))。
【0088】
前記光学プリズム63と前記光学プリズム64との回転位置の組合わせにより、射出する前記測距光56の偏向方向、偏角を任意に変更することができる。
【0089】
又、前記光学プリズム63と前記光学プリズム64との位置関係を固定した状態で(前記光学プリズム63と前記光学プリズム64とで得られる偏角を固定した状態で)、前記モータ71,73により、前記光学プリズム63と前記光学プリズム64とを一体に回転すると、前記測距光偏向部を透過した前記測距光56が描く軌跡は前記基準光軸O(
図5参照)を中心とした円となる。
【0090】
従って、前記発光素子51よりレーザ光線を発光させつつ、前記光軸偏向部59を回転させれば、前記測距光56を円の軌跡でスキャンさせることができる。尚、前記反射測距光偏向部は、前記測距光偏向部と一体に回転していることは言う迄もない。
【0091】
図7(B)は、前記光学プリズム63と前記光学プリズム64とを相対回転させた場合を示している。前記光学プリズム63により偏向された光軸の偏向方向を偏向Aとし、前記光学プリズム64により偏向された光軸の偏向方向を偏向Bとすると、前記光学プリズム63,64による光軸の偏向は、該光学プリズム63,64間の角度差θとして、合成偏向Cとなる。
【0092】
従って、前記光学プリズム63と前記光学プリズム64を逆向きに同期して等速度で往復回転させた場合、前記光学プリズム63,64を透過した前記測距光56は、直線状にスキャンされる。従って、前記光学プリズム63と前記光学プリズム64とを逆向きに等速度で往復回転させることで、
図7(B)に示される様に、前記測距光56を合成偏向C方向に直線の軌跡84で往復スキャンさせることができる。
【0093】
更に、
図7(C)に示される様に、前記光学プリズム63の回転速度に対して遅い回転速度で前記光学プリズム64を回転させれば、角度差θは漸次増大しつつ前記測距光56が回転される。従って、該測距光56のスキャン軌跡はスパイラル状となる。
【0094】
又、前記光学プリズム63、前記光学プリズム64の回転方向、回転速度を個々に制御することで、前記測距光56のスキャン軌跡を前記基準光軸Oを中心とした照射方向(半径方向のスキャン)とし、或は水平、垂直方向とする等、種々の2次元のスキャンパターンが得られる。
【0095】
更に又、水平方向のスキャンと垂直方向のスキャンとを合成し、2次元のスキャンを可能とする。更に、中心を有する2次元の閉ループスキャンパターンとすることができ、この場合はスキャンパターンの中心を測定点と合致させる。又、スキャンパターンの中心は前記測距光軸58と合致する。
【0096】
図8は、測定対象(前記ターゲット装置2の前記線状反射部20、前記基準反射部25)をサーチする場合の、2次元の閉ループスキャンパターンであるスキャンパターン85の一例を示している。
【0097】
前記光学プリズム63と前記光学プリズム64の回転方向、回転速度、回転比の組合わせで、スキャン往路87aとスキャン復路87bがスキャンパターンの中心(交点86)で交差する前記スキャンパターン85を形成することができる。例えば、前記光学プリズム63と前記光学プリズム64の回転比を1:2として、8の字形状にスキャンさせることもできる。
【0098】
次に、
図9(A)、
図9(B)〜
図14を参照して、本実施例の作用について説明する。
【0099】
本実施例での測定作業は、一人作業で実行される。
【0100】
図9(A)に示される様に、前記測量装置本体9には、前記第1方位計10が設けられている。該第1方位計10の検出結果に基づき、前記基準光軸Oの基準方向に対する方位角、例えば南に対する方位角を求めることができる。又、前記照明灯23には、第2方位計31が設けられている。該第2方位計31は、前記照明灯23から照射される照明光の光軸の方位角を求めることができる。
【0101】
STEP:01 先ず、前記測量装置1を既知点(既知の座標を有する点)に設置する。設置状態での前記測量装置1の姿勢(傾き、傾き方向)は、前記姿勢検出部44によって検出されるので、前記測量装置1の整準は省略できる。
【0102】
該測量装置1の設置後、前記データコレクタ3より視準開始の指令が入力されると共に、作業者は前記ローバー4を所定の測定点Pに移動させ、前記ポール18の下端を測定点Pに設置する。又、前記照明灯23から発せられる照明光が前記撮像部41の撮像範囲内となる様、前記照明灯23が前記測量装置本体9へと概略向けられる。尚、前記照明灯23は、照明光を常時照射し続けてもよいし、所定のパターンで照明光を点滅させてもよい。照明光を点滅させた場合は、点滅のパターンを検出することで、前記照明灯23からの照明光を識別することができる。又、該照明灯23の点滅と同期させ、点灯時の画像と消灯時の画像を取得し、両画像の差を求めることで、ノイズを除去した照明光の画像を取得することができる。尚、前記照明灯23の点滅と前記撮像部41の撮像との同期は、例えば前記通信部28,34間でのトリガー信号の通信により行われる。
【0103】
ここで、前記照明灯23は、自在連結具を介して前記ポール18の上端に取付けられている。従って、該ポール18を鉛直に整準することなく前記照明灯23を前記測量装置本体9へと向けることができる。即ち、前記ローバー4を設置する際の前記ポール18は、任意の角度で傾斜していてよい。
【0104】
前記照明灯23を前記測量装置本体9へと向けると、前記第2方位計31はその時の前記照明灯23の光軸の方位角θを検出する。検出された方位角θは、前記演算処理部32に入力されると共に、前記第2通信部34を介して前記測量装置本体9へと送信される。
【0105】
前記ローバー4からの方位角θは、前記第1通信部28を介して前記測量装置本体9に受信され、照明光の照射方向(照明光の光軸の方位角)として検出される。前記演算制御部26は、方位角θに基づき前記左右駆動モータ21を駆動させ、前記托架部8を介して前記測量装置本体9の前記基準光軸Oの方位角が、θ+180°となる様前記測量装置本体9を回転させる。即ち、前記基準光軸Oの向きを照明光の光軸と平行にする。
【0106】
前記基準光軸Oの方位角をθ+180°とすることで、前記基準光軸Oと前記照明灯23から発せられた照明光の光軸とが逆方向且つ平行となり、前記測量装置本体9と前記ローバー4とが正対又は略正対する。これにより、照明光が前記撮像部41の画角の範囲内となるので、画像中から照明光が検出可能となる。
【0107】
尚、前記撮像素子83には、照明光だけではなく、自然光等の外光も受光されるので、照明光以外の外光を誤検出する可能性がある。本実施例では、前記第2方位計31の検出結果に基づき、照明光の方向が演算できるので、演算した方向から所定の範囲内に位置する光のみを照明光として検出することができる。従って、所定の範囲以外の光を外光等であるとして除去することができ、照明光の検出精度を向上させることができる。
【0108】
又、照明光の波長を限定し、前記撮像光軸81上に、照明光のみを透過させるフィルタを設け、前記撮像素子83に照明光のみが受光される様にしてもよい。
【0109】
尚、前記測量装置本体9による照明光の検出は、測定作業が行われている間、リアルタイムで実行される。
【0110】
STEP:02 前記照明光の検出後、前記データコレクタ3より、測定開始の指令を前記測量装置1に送信する。該測量装置1では、測定開始の指令に基づき、前記撮像部41により前記照明灯23の画像を取得する。上記した様に、前記撮像部41の画角は、40°〜50°或は30°〜40°と充分広い。従って、前記測量装置本体9と前記ターゲット装置2が正確に正対していなくても、即ち前記ターゲット装置2を前記測量装置本体9の方向に概略向けているだけで、前記照明灯23の照明光、即ち前記照明灯23を確実に捉えることができる。
【0111】
前記演算制御部26は、画像中から前記照明灯23(照明光の中心)の位置を演算し、更に該照明灯23と前記基準反射部25の既知の位置関係により、該基準反射部25の方向(水平角、鉛直角)を演算する。
【0112】
この演算結果に基づき、前記上下駆動モータ14、前記左右駆動モータ21を制御して、前記測量装置1の前記測距光軸58を前記基準反射部25に向ける。前記測距光軸58を前記基準反射部25に向けた状態では、該基準反射部25は前記撮像部41で撮像する画像の略中心に位置する。
【0113】
STEP:03 前記測距光射出部37から前記測距光56が射出され、前記光学プリズム63,64の回転が制御され、得られた前記基準反射部25の方向(水平角、鉛直角)に基づき該基準反射部25の近傍をスキャンする。
【0114】
2次元のサーチスキャンは、サーチ範囲が広い初期サーチスキャンと、測定対象を含む狭い範囲に限定された局所サーチスキャンが実行される。先ず、前記ローバー4を検出する為の初期サーチスキャンが実行される。ここで行われるサーチ動作は、質量の小さい前記光学プリズム63,64を回転させるだけであるので、極めて高速に行える。
【0115】
以下の説明では、サーチスキャンのパターンとして、8の字形状の前記スキャンパターン85が採用されている。
【0116】
サーチ開始時の初期サーチスキャンに於ける前記スキャンパターン85の形状は、
図11に見られる様に、水平方向に扁平な8の字状となっている。
【0117】
前記線状反射部20は、鉛直方向に長くなっているので、前記スキャンパターン85を扁平にすることで、広範囲で高速なサーチが可能となる。
【0118】
初期サーチスキャンの前記スキャンパターンの経路が、前記線状反射部20と交差する様に前記スキャンパターン85を実行することで、前記線状反射部20から前記反射測距光57が得られる。前記スキャンパターン85の実行と共に、測距、測角も実行しているので、前記線状反射部20からの前記反射測距光57に基づき、前記線状反射部20の水平方向の位置が直ちに測定できる。
【0119】
STEP:04 前記演算制御部26は、測定結果に基づき、前記光軸偏向部59を制御して、その後前記スキャンパターン85により前記基準反射部25を検出する迄、前記交点86を前記線状反射部20に沿って移動させる(
図11では、前記交点86を下方に移動させている)。
【0120】
STEP:05 前記スキャンパターン85により、前記基準反射部25を検出すると、前記スキャンパターン85を前記基準反射部25の中心位置を検出するのに適した局所スキャンパターン85′に偏向する(
図12参照)。該局所スキャンパターン85′は、サーチ範囲が狭く、而も縦長の形状となっている。ここで、前記基準反射部25は、前記線状反射部20よりも径方向に出っ張っているので、測距結果の変化で前記基準反射部25の検出を確認できる。
【0121】
図13(A)、
図13(B)は、前記局所スキャンパターン85′により局所サーチスキャンを実行している状態を示している。
【0122】
STEP:06 前記局所スキャンパターン85′の交点86′が、前記基準反射部25の中心近傍となると、前記局所スキャンパターン85′のスキャン往路87a′、スキャン復路87b′が、前記基準反射部25のエッジを通過する。このエッジの測定点Q3,Q4,Q5,Q6の測定結果によって、前記基準反射部25に対する前記交点86′の位置が測定でき、該交点86′を前記基準反射部25の中心に合致させることができる。
【0123】
STEP:07 該基準反射部25の中心に、前記交点86′が合致すると、前記測距光軸58が前記基準反射部25の中心に視準され、該基準反射部25の測定が実行される。更に、該基準反射部25と前記ポール18の下端との関係から、測定点Pの3次元座標が演算される。
【0124】
STEP:08、STEP:09 更に、前記局所スキャンパターン85′の実行で、前記線状反射部20の上下の測定点Q1,Q2の位置(3次元座標)が測定される。測定点Q1,Q2の3次元座標によって、前記ポール18の前後方向、左右方向の倒れ方向、及び倒れ角が測定できる。又、前記ポール18の倒れ方向、倒れ角、前記基準反射部25と前記ポール18の下端との関係に基づき、前記測定点Pの測定結果を補正することができる。
【0125】
更に、ここで得られる前記ポール18の倒れは、前記測距光軸58に対する倒れであり、該測距光軸58自体は水平であるとは限らない。該測距光軸58の前記基準光軸Oに対する傾斜角、傾斜方向は、前記射出方向検出部42によって測定できる。更に、前記基準光軸Oの水平に対する傾斜角、傾斜方向は、前記姿勢検出部44によって測定することができる。
【0126】
従って、前記ポール18の水平、又は鉛直に対する傾斜角、傾斜方向も測定できる。前記ポール18の水平、鉛直に対する傾斜角、傾斜方向に基づき測定結果を補正することで、前記ポール18の傾きに拘わらず、正確な測定点(該ポール18の下端が指示する点)Pについて、距離、高低角、水平角を正確に測定することができる。測定結果は、前記データコレクタ3に送信される。
【0127】
従って、前記ターゲット装置2を直立して支持できない場所での測定、例えば壁の隅、天井の角等であっても、前記ポール18の下端(天井を測定する場合は上端)で測定点を指示できれば、正確な測定が実行できる。
【0128】
STEP:10 測定点Pの測定が終了すると、次に測定すべき測定点の有無が確認される。他に測定すべき測定点がない場合には、測定を終了する。
【0129】
STEP:11 前記ターゲット装置2を次の測定点に移動させる場合、移動中も前記スキャンパターン85を継続して実行すれば、前記ターゲット装置2(即ち前記基準反射部25)の追尾を行うことができる。本実施例によれば、移動中、前記スキャンパターン85が前記線状反射部20を横切りさえすればよいので、容易に又確実に追尾が実行される。更に、障害物が前記測量装置1と前記ローバー4の間を通過する等して、追尾が途切れた場合でも、簡単に復帰することができる。
【0130】
尚、追尾は画像に基づき行ってもよい。画像中で、照明光を捉えられれば、前記測量装置1によるサーチスキャンが可能であるので、画像中に前記照明灯23からの照明光を捉える様に、前記照明灯23を追尾させればよい。
【0131】
更に、本実施例では、前記第2方位計31の検出結果、即ち照明光の照射方向に基づき、前記基準光軸Oが前記照明灯23に向く様前記測量装置本体9が左右方向に回転する。従って、前記測量装置本体9に向って照明光が照射された状態を維持しつつ、前記ターゲット装置2を移動させれば、前記測量装置1により前記照明灯23を追尾させることができる。この場合、追尾中に前記スキャンパターン85の実行、前記撮像部41による画像取得は行わなくてもよい。
【0132】
上記した様に、前記撮像部41によって照明光を捉え、画像中の照明光により前記基準反射部25の大まかな方向を検出し、画像から得られた方向に前記測距光軸58を向ける様にしている。従って、前記撮像部41は測定対象検出センサとして機能する。
【0133】
更に、
図14に示される様に、前記撮像部41は、広い画角を有し、広範囲に存在する複数の前記ローバー4(前記ターゲット装置2)を同時に捉えることができる。
【0134】
複数の該ローバー4を用いる場合、複数の該ローバー4のうちの1つを予め基準ローバーとして設定してもよい。この場合、前記演算制御部26は、該基準ローバーから受信した方位角に基づき、前記基準光軸Oが前記基準ローバーへと向く様、前記測量装置本体9を左右方向に回転させる。
【0135】
或は、複数の前記ローバー4のうち、基準ローバーとする1つのローバー4にのみ前記第2方位計31を設けてもよい。この場合、前記演算制御部26は、該第2方位計31を設けた前記ローバー4から受信した方位角に基づき、前記基準光軸Oが前記第2方位計31を設けた前記ローバー4へと向く様、前記測量装置本体9を左右方向に回転させる。
【0136】
更に、複数の前記ローバー4にそれぞれ前記第2方位計31を設け、各第2方位計31からそれぞれ方位角を受信し、各方位角を平均してもよい。この場合、前記演算制御部26は、受信した複数の方位角に基づき、複数の前記ローバー4から受信した方位角を平均し、平均値の方位角(平均方位角)に前記基準光軸Oが向く様、前記測量装置本体9を左右方向に回転させる。例えば、前記ローバー4が2つある場合には、
図14に示される様に、前記ローバー4,4の水平方向中間に前記基準光軸Oが向く様、前記測量装置本体9を回転させる。
【0137】
上記したいずれの場合も、複数の前記ローバー4が、全て前記撮像部41の画角内に存在するのが望ましい。
【0138】
複数の前記ローバー4が前記撮像部41の画角内に存在する場合、個々の前記ローバー4について、識別機能を付加し、個々の前記第2方位計31が方位角の信号を発すると共に、識別信号を発する様にしてもよい。前記測量装置本体9が方位角信号と共に識別信号を受信し、前記演算制御部26が識別信号に基づき前記ローバー4を識別し、識別した結果に基づき前記光軸偏向部59を制御し、個々の前記ローバー4に前記測距光軸58を向ける(視準する)ことができる。
【0139】
尚、前記基準光軸Oを所定の方向に、即ち基準ローバー、或は平均方位角に向けた後は、前記測量装置本体9は回転することはない。即ち、前記基準光軸Oは固定の状態で、前記光軸偏向部59の駆動により前記測距光軸58のみを偏向させる。前記光軸偏向部59の駆動による前記測距光軸58の偏向は高速で行えるので、前記測量装置1により複数の前記ローバー4について、連続してほぼ同時に測定を実行することができる。
【0140】
又、前記撮像部41の画角と前記光軸偏向部59による最大偏角を等しく、或は略等しくした場合、測定範囲に存在する(前記撮像部41の画角内に存在する)前記ローバー4、或は測定点については、一度前記測量装置1を設置し、前記基準光軸Oの向きを設定した後は、前記測量装置本体9の方向を変えることなく、全ての前記ローバー4、全ての測定点について測定を実行することができる。
【0141】
更に、前記測量装置1の各ローバー4(前記基準反射部25)への視準は、前記撮像部41の画像の検出結果に基づき、視準方向は特定されており、視準は瞬時に実行される。
【0142】
次に、前記ローバー4が複数存在する場合の、該ローバー4を識別する他の方法について説明する。
【0143】
前記照明灯23に点滅機能を付加し、複数の前記照明灯23がそれぞれ固有の点滅モードを持つ様にする。例えば、点滅周期が異なる、点灯時間、消灯時間が異なる等である。画像中のローバー4を識別可能とすることで、各ローバー4が設置された測定点をそれぞれ測定することができる。
【0144】
又、前記撮像部41が撮像した画像に基づき、前記ローバー4の識別を行ってもよい。例えば、前記撮像部41が取得した画像を、前記データコレクタ3の前記表示部35に表示させ、画像上から個々の前記ローバー4に識別番号を付加し、前記測量装置本体9に送信する様にしてもよい。
【0145】
尚、前記ローバー4が1つ又は複数のいずれの場合も、前記照明灯23を点滅させた際の照明光を確実に検出する為には、点灯時の画像と消灯時の画像を取得し、前記演算制御部26により画像の差分を求めればよい。
【0146】
この場合、前記照明灯23の点滅と前記撮像部41による画像の取得の同期については、前記データコレクタ3の前記第2通信部34、前記測量装置本体9の前記第1通信部28間の通信で行う。
【0147】
或は、GPSを前記データコレクタ3、前記測量装置本体9に設け、GPS時刻を利用し、予め決められた時刻に基づいたタイミングで照明光の点滅と、画像の取得を行ってもよい。
【0148】
上述の様に、本実施例では、前記ターゲット装置2に前記第2方位計31を設け、該第2方位計31の検出結果に基づき、前記照明灯23が発する照明光の照射方向(方位角θ)を検出可能であり、該方位角θを前記通信部34,28を介して前記測量装置本体9に送信可能となっている。この為、該測量装置本体9では、照明光の照射方向を検出可能であり、照明光と正対する方向(照明光の照射方向から反転した方向)についても演算可能である。
【0149】
従って、前記演算制御部26が、前記第1方位計10の検出結果と受信した方位角θとに基づき、前記基準光軸Oの向きが照明光と正対し平行となる方向(θ+180°)となる様前記測量装置本体9を自動で左右方向に回転させることができる。これにより、照明光を視準させる為に、手動で或は前記データコレクタ3からの遠隔操作により、前記測量装置本体9を前記ターゲット装置2へと向ける必要がなくなり、作業性を向上させることができる。
【0150】
又、前記測量装置本体9は、前記第2方位計31が検出した方位角に基づき、前記基準光軸Oが照明光の光軸と逆向き且つ平行となる様に自動で回転する構成となっている。従って、照明光を測量装置本体9に向けた状態で、前記ローバー4を移動させることで、前記基準光軸Oが常時前記ターゲット装置2へと向くので、スキャンの継続、或は画像トラッキングにより前記ターゲット装置2を追尾する必要がない。
【0151】
更に、前記測量装置本体9に前記ターゲット装置2を追尾させていない状態でも、新たな測定点で、照明光を前記測量装置本体9へと向けるだけで照明光の視準が行えるので、容易に測定点を測定することができる。
【0152】
本実施例では、前記測量装置1をトータルステーションとして使用していたが、該測量装置1はレーザスキャナとしても使用することもできる。前記測距光射出部37から前記測距光56がパルス発光、或はバースト発光されており、各パルス光、バースト光毎に測距、測角を行うことで、前記スキャンパターン85に沿った点群データが取得できる。
【0153】
尚、本実施例では、前記ターゲット装置2が再帰反射体の測定対象を具備していたが、前記ローバー4から分離した測定対象について測定することも可能である。
【0154】
例えば、本測量システムに於いて、前記測量装置1をレーザスキャナとして使用する場合、例えば建築物等を測定対象として、測定対象について点群データを取得する場合は、測定対象の点群データが必要な位置に前記ターゲット装置2を設置すれば、該ターゲット装置2(照明灯23)を中心に2次元スキャンし、2次元スキャン範囲の点群データが取得できる。
【0155】
更に、撮像部が取得する画像について画像トラッキングを行うことで、照明光の追尾が可能であるので、前記ローバー4を移動させることで、必要な部分、必要な箇所の点群データが取得可能である。