(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1ヨークおよび前記第2ヨークの配置に際し、前記ステータの外周面上に、周方向に間隔をおいて交互に前記第1ヨークの配置位置および第2ヨークの配置位置が設定され、
前記ハブ軸の中心軸線と前記第1ヨークの前記外周側磁極部における外周面側の周方向中央とを含む平面が前記第1ヨークの配置基準面として設定されると共に、前記第1ヨークの配置基準面に対して周方向一方側に傾斜した平面が前記第1ヨークの実配置面として設定されることにより、前記第1ヨークの実配置面上に前記第1ヨークが配置され、
前記ハブ軸の中心軸線と前記第2ヨークの前記外周側磁極部における外周面側の周方向中央とを含む平面が前記第2ヨークの配置基準面として設定されると共に、前記第2ヨークの配置基準面に対して周方向他方側に傾斜した平面が前記第2ヨークの実配置面として設定されることにより、前記第2ヨークの実配置面上に前記第2ヨークが配置され、
前記第1ヨークの実配置面と前記第2ヨークの実配置面との交差線上において、前記第1ヨークの前記内周側磁極部の先端と前記第2ヨークの前記内周側磁極部の先端とが当接している
ことを特徴とする請求項1に記載のハブダイナモ。
前記第1ホルダおよび第2ホルダが樹脂で構成され、前記第1ホルダおよび第2ホルダの円環板状の各ホルダ本体部の軸方向外側の内周側側面に、前記ハブ軸に螺合したナットによって前記第1ヨークおよび第2ヨークを軸方向に締め付けた際に、前記ナットにより押し潰されることで前記ナットによる締め付け力を吸収する複数の突起が設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のハブダイナモ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、ハブダイナモ10の取付概要図である。なお、以下の説明では、本発明に係るハブダイナモ10を自転車1のハブ軸11に取り付け、自転車1の前照灯4に電力を供給する場合について説明する。この前照灯4には、ランプとして、フィラメント式の電球ではなく、LEDランプが使用されている。
【0027】
(ハブダイナモの取付態様)
図1に示すように、自転車1の前輪5は、フレームの一部を構成するフロントフォーク3によりハブ軸11を介して回転可能に軸支されている。ハブ軸11は、両側がフロントフォーク3にナット(不図示)等により回転不能に締結固定されている。ハブ軸11の軸方向中央の大部分には、ハブダイナモ10が、ハブ軸11と同軸に取り付けられている。このハブダイナモ10は、前輪5の側方に配置された前照灯4に電力を供給するものとして設けられている。
【0028】
ハブダイナモ10は、前輪5のスポーク2に接続されて前輪5と共に、ハブ軸11の周囲を回転するロータ20(後述)と、ロータ20の内周側に位置する状態でハブ軸11に回転不能に取り付けられたステータ101(後述)と、を備えている。
以下、ハブ軸11の中心軸線Oの軸方向を単に軸方向といい、軸方向に直交する方向を径方向といい、中心軸線O周りに沿った方向を周方向という。なお、ハブ軸11のうち、少なくともステータ101(後述)が取り付けられた部分よりも軸方向外側に位置する部分には、フロントフォーク3にハブダイナモ10を固定するための雄ねじ部(不図示)が形成されている。
【0029】
(ロータ)
図2は、ハブダイナモ10の外観斜視図である。
図3は、ハブダイナモ10の断面図である。
図2、
図3に示すように、ロータ20は、ハブシェル30を主体に構成されている。ハブシェル30は、略有底円筒状に一体成形された円筒状の胴部(筒部)31および胴部31の軸方向他方Q側(
図3における右側)の第2のエンドプレート33と、胴部31の軸方向一方P側(
図3における左側)の開口を塞ぐ第1のエンドプレート32と、からなる。第1のエンドプレート32は、胴部31に圧入固定されている。
【0030】
ハブシェル30の軸方向一方P側および軸方向他方Q側の外周には、径方向外側に向かって張り出すフランジ部34が形成されている。各フランジ部34には、軸方向に貫通する支持孔34aが周方向に等間隔で複数形成されている。
支持孔34aには、
図1に示すように、前輪5のリム5aから内径側に延在する複数のスポーク2の内側端部が係合されている。なお、左右のフランジ部34の支持孔34aは、半ピッチ分だけ周方向に位相がずれて配置されている。
【0031】
第1のエンドプレート32および第2のエンドプレート33の内周には、それぞれベアリング(軸受)35,36の外輪が嵌合されている。そして、ハブシェル30を主体として構成されるロータ20は、ベアリング35,36を介してハブ軸11に回転可能に支持されることで、前輪5の回転と共にハブ軸11を中心に回転する。すなわち、ロータ20は、前輪5を回転可能に支持するハブとして機能している。
【0032】
ハブシェル30の胴部31の内周には、円筒状のリングヨーク21を介して、例えばフェライト等により形成された永久磁石22が配置されている。リングヨーク21は、磁性金属材料(例えば、鉄)よりなる。リングヨーク21を、例えば鉄製にすることにより、ハブシェル30をアルミ製として軽量化できる。永久磁石22は、リングヨーク21の内周に密着した状態で配置され、接着剤等により貼付されている。永久磁石22を、胴部31の内周面に沿って円筒状に配置することにより、永久磁石22は、ステータ101の外周面全体を覆っている。
【0033】
なお、永久磁石22は、周方向に複数に分割された状態でハブシェル30の胴部31の内周に組み込まれている。この円筒状に配置された永久磁石22の内周面には、等間隔でN極およびS極の磁極が周方向に沿って交互に着磁されており、後述する第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bの外周部と対向している。
【0034】
図4は、ハブダイナモを構成するステータユニットの側面図である。
図5は、ステータユニットの軸方向一方P側から見た斜視図である。
図6は、ステータユニットの軸方向他方Q側から見た斜視図である。
図7は、ステータの軸方向一方P側から見た分解斜視図である。
【0035】
図3に示すように、ハブ軸11の軸方向中間部には大径部が形成されており、その大径部の外周にステータ101が取り付けられている。
図4〜
図7に示すように、ステータ101は、その軸方向両端部に配したワッシャ(プレート部材)41,43,49を介し、スリーブナット42および締付ナット44(いずれも単に「ナット」ということもある)によりハブ軸11に位置決め固定されている。これらハブ軸11およびステータ101などにより、ステータユニット100が構成されている。
【0036】
図3に示すように、ステータユニット100の軸方向一方P側に配置されたスリーブナット42の外周には、一方のベアリング35の内輪が嵌合されている。このベアリング35よりも軸方向外側にはコネクタ50が設けられ、コネクタ50の軸方向外側にはナット51が配置されている。このナット51がハブ軸11に螺合されることで、コネクタ50がハブ軸11に固定されると共に、ベアリング35を介してハブ軸11にハブシェル30の一端側が回転自在に支持されている。
【0037】
また、ハブ軸11の軸方向他方Q側には、別のスリーブナット45が配置されており、このスリーブナット45の外周には、他方のベアリング36の内輪が嵌合されている。このベアリング36より軸方向外側にはカバー46が設けられ、カバー46の内周部にはナット47が配置されている。このナット47がハブ軸11に螺合されることで、カバー46がハブ軸11に固定されると共に、ベアリング36を介してハブ軸11にハブシェル30の他端側が回転自在に支持されている。
【0038】
(ステータ)
次に、ステータ101の詳細について説明する。
図8は、ステータ101の構成を示す斜視図である。
図9は、ステータ101の構成を示す分解斜視図である。
図10は、ステータ101の主要部であるステータ本体101Aの分解斜視図である。
【0039】
図8および
図9に示すように、ステータ101は、主要部であるステータ本体101Aと、その軸方向両側に配された第1ホルダ160Aおよび第2ホルダ160Bと、を備えている。両ホルダ160A、160Bは、同じ構成のものであり、樹脂の一体成形品として形成されている。
ここで注意すべき点は、第1ホルダ160Aは、軸方向他方Q側に配置されており、後述する軸方向一方P側に配置された第1ヨーク120Aの軸方向他方Q側に延びた先端121aを保持していることである。また、第2ホルダ160Bは、軸方向一方P側に配置されており、後述する軸方向他方Q側に配置された第2ヨーク120Bの軸方向一方P側に延びた先端121aを保持していることである。
【0040】
図10に示すように、ステータ本体101Aは、ハブ軸11が挿通される合成樹脂製(非磁性材料製)の筒状のコイルボビン110と、コイルボビン110に巻かれたリング状のコイル140と、コイル140を内側に包囲するように組み立てられたクローポール型のステータコア120と、により構成されている。これらハブ軸11、コイルボビン110、第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bは、同軸上に配置されている。
【0041】
ここでは、クローポール型のステータコア120を構成する要素として、軸方向一方P側に複数の第1ヨーク120Aが配設され、軸方向他方Q側に複数の第2ヨーク120Bが配設されている。これら複数の第1ヨーク120Aおよび複数の第2ヨーク120Bは、周方向に一定間隔をあけて放射状に配置されると共に、周方向に交互に並ぶように配置されている。そして、各ヨーク120A,120Bの外周部が、若干の間隙(エアギャップ)をあけて、永久磁石22の内周面22a(
図3参照)と対向するように構成されている。
【0042】
ヨーク120A,120Bの個数(極数)は、永久磁石22の磁極数に関連して設定されている。本実施形態では、第1ヨーク120Aが16個、第2ヨーク120Bが16個の合計32個が一定間隔で設けられている。図示しないが、コイル140には配線が接続されており、配線はハブ軸11に沿って外部へと引き出されている。
【0043】
(コイルボビン)
図11は、コイルボビンの斜視図である。
同図に示すように、コイルボビン110は、外周にコイル140(
図10参照)が巻回される円筒状の胴部111と、胴部111の軸方向一方P側および軸方向他方Q側の端部外周に径方向外方に張り出すように設けられた第1フランジ112Aおよび第2フランジ112Bと、を有している。
【0044】
第1フランジ112Aの軸方向外側端面には、リブ状の壁によってガイド溝113Aが設けられている。第1フランジ112Aの外周面には、ガイド溝113Aに対応する位置に、このガイド溝113Aに連通する係合溝114Aが設けられている。これらガイド溝113Aおよび係合溝114Aは、コイルボビン110に、第1ヨーク120Aを位置決めして取り付けるためのものである。また、第1フランジ112Aの軸方向外側端面のガイド溝113Aの隣りには、リブ状の壁によって軸方向から見てV字形をなす位置決め凹部117Aが設けられている。
【0045】
また、第1フランジ112Aと同様に、第2フランジ112Bの軸方向外側端面には、リブ状の壁によってガイド溝113Bが設けられている。第2フランジ112Bの外周面には、ガイド溝113Bに対応する位置に、このガイド溝113Bに連通する係合溝114Bが設けられている。これらガイド溝113Bおよび係合溝114Bは、コイルボビン110に、第2ヨーク120Bを位置決めして取り付けるためのものである。また、第2フランジ112Bの軸方向外側端面のガイド溝113Bの隣りには、リブ状の壁によって軸方向から見てV字形をなす位置決め凹部117Bが設けられている。
【0046】
さらに、第1フランジ112Aの外周面および第2フランジ112Bの外周面には、それぞれ各係合溝114A,114Bの周方向の中間に位置させて、相手側の第2ヨーク120Bおよび第1ヨーク120Aの先端を支持する支持溝115A,115Bが設けられている。すなわち、第1ヨーク120Aと第2ヨーク120Bが周方向に一定間隔で交互に配置されることから、第1フランジ112Aの係合溝114Aの周方向の位置と第2フランジ112Bの支持溝115Bの周方向の位置とが合致し、第2フランジ112Bの係合溝114Bの周方向の位置と第1フランジ112Aの支持溝115Aの周方向の位置とが合致している。これらガイド溝113A,113B、係合溝114A,114B、および支持溝115A,115Bの詳細については後述する。
【0047】
(ヨーク)
図12は、ステータ本体の軸方向から見た図であり、(a)は、
図10のEA矢視図、(b)は、
図10のEB矢視図である。
図13は、ステータ本体の第1ヨークと第2ヨークの配置角度を説明するための軸方向一方P側から見たヨークとコイルボビンの図である。
図14は、第1ヨークと第2ヨークの配置角度を説明するための図で、(a)は、1組の第1ヨークと第2ヨークを組み合わせる前の状態を示す斜視図、(b)は、第1ヨークと第2ヨークを組み合わせた後の状態を示す斜視図、(c)は、
図14(b)のF矢視図である。
図15は、各ヨークの構成を説明するための図で、(a)は、ヨークを構成する1枚の板状部材の斜視図、(b)は、板状部材を積層して構成したヨークの斜視図、(c)は、連結部側から見たヨークの斜視図である。
【0048】
図14(a)〜
図14(c)に1組の第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bの組み合わせ例を取り出して示すように、第1ヨーク120Aと第2ヨーク120Bは、コイルボビン110に組み付けられる向きが逆であるだけで、同じ構造のものであり、側面視コ字形をなしている。
【0049】
すなわち、
図14(a)〜
図14(c)および
図10に示すように、第1ヨーク120Aは、コイル140の外周側に位置してコイル140の軸方向一端側(P側)から軸方向他端側(Q側)に先端121aを延ばした外周側磁極部121と、コイル140の内周側に位置してコイル140の軸方向一端側(P側)から軸方向他端側(Q側)に向けた中間位置まで先端123aを延ばした内周側磁極部123と、コイル140の軸方向一端側(P側)において半径方向に沿って直線状に延在し外周側磁極部121と内周側磁極部123の基端同士を連結する連結部122と、を有している。
【0050】
同様に、第2ヨーク120Bは、コイル140の外周側に位置してコイル140の軸方向他端側(Q側)から軸方向一端側(P側)に先端121aを延ばした外周側磁極部121と、コイル140の内周側に位置してコイル140の軸方向他端側(Q側)から軸方向一端側(P側)に向けた中間位置まで先端を延ばした内周側磁極部123と、コイル140の軸方向他端側(Q側)において半径方向に沿って直線状に延在し外周側磁極部121と内周側磁極部123の基端同士を連結する連結部122と、を有している。
【0051】
外周側磁極部121の径方向外周縁は、ハブ軸11と実質的に平行に配置されている。外周側磁極部121は、その径方向内周縁が先端121aに行くほど径方向外周縁に近づくように先窄まり形状に形成されている。外周側磁極部121の先端部では、径方向内周縁と径方向外周縁とが互いに平行になっている。つまり、外周側磁極部121の径方向内周縁は、基端から先端121aに行く途中まで斜めに形成され、先端部で径方向外周縁に平行に形成されている。内周側磁極部123の径方向内周縁および径方向外周縁は、外周側磁極部121の外周縁と平行に形成されている。
【0052】
図8および
図9に示すように、各ヨーク120A,120Bの内周側磁極部123は、コイル140の内周側に位置するようにコイルボビン110の内周に挿入され、コイルボビン110の胴部111の内周面とハブ軸11の外周面との間に位置している。そして、周方向に密に配列された各ヨーク120A,120Bの内周側磁極部123によって囲まれるステータ中心孔150に、ハブ軸11が貫通固定されている(
図7参照)。
【0053】
(板状部材)
ここで、
図15(a)〜
図15(c)に示すように、第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bの各々は、鉄等の磁性体からなる複数の平坦な板状部材130を板厚方向(コイル140の半径方向と直交する方向)に積層した積層ヨーク(積層体)として構成されている。板状部材130(積層板状部材とも言う)の材料としては、例えば、表面に酸化被膜が形成された珪素鋼板(より詳しくは無方向性珪素鋼板)が採用されている。これら板状部材130は、プレス等にて板材を打ち抜き成形したものであり、ヨーク120A、120Bの形成に際して曲げ加工は施されておらず、平坦な板体として構成されている。
【0054】
個々の板状部材130は、
図15(a)に示すように、略コの字型の鉄片であり、対応する二辺をなす外周側磁極部131および内周側磁極部133と、それらを連結する一辺となる連結部132と、を有している。
各板状部材130の基本的な形状は同じであり、
図15(b)および
図15(c)に示すように、これら所定枚数の板状部材130を板厚方向に積層することにより、板状部材130の外周側磁極部131によりヨーク120A、120Bの外周側磁極部121が構成されている。また、板状部材130の内周側磁極部133により、ヨーク120A、120Bの内周側磁極部123が構成されている。さらに、板状部材130の連結部132によりヨーク120A、120Bの連結部122が構成されている。本例では、各ヨーク120A、120Bは、7枚の板状部材130を積層することで構成されている。
【0055】
第1ヨーク120A、120Bは、
図10に示すように、外周側磁極部121が外径側に来るようにコイルボビン110に、軸方向から見て放射状に組み付けられている。第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bは、周方向に一定の間隔(本例では、中心角=360°/32)をおいて交互に並ぶように配設されている。
ここで、
図12〜
図14に示すように、各ヨーク120A、120Bが、単に半径方向に沿った平面上に配設されるのではなく、半径方向に対して傾斜した平面(後述するヨークの実配置面)上に配置されている。
【0056】
前述したように、第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bは、円周方向に交互に並ぶと共にコイル140の中心から見て放射状に配置されている。従って、第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bが単に半径方向に沿った平面上に配設されていると、隣接する第1ヨーク120Aと第2ヨーク120Bの内周側磁極部123の位置は円周方向にずれることになる。そうすると、隣接する第1ヨーク120Aと第2ヨーク120Bの内周側磁極部123を、1対1で磁気的に接続することはできない。
【0057】
すなわち、第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bが単に半径方向に沿った平面上に配設されていると、第1ヨーク120Aと第2ヨーク120Bの内周側磁極部123が周方向に密に配列されている場合であっても、1つの第1ヨーク120Aの内周側磁極部123の先端123aは、隣接する2つの第2ヨーク120Bの内周側磁極部123の先端123aに跨がって当接することになる。
同様に、1つの第2ヨーク120Bの内周側磁極部123の先端123aは、隣接する2つの第1ヨーク120Aの内周側磁極部123の先端123aに跨がって当接することになる。つまり、第1ヨーク120Aの内周側磁極部123と第2ヨーク120Bの内周側磁極部123は、1対2の関係で互いに当接することになる。
【0058】
このように、第1ヨーク120Aの内周側磁極部123と第2ヨーク120Bの内周側磁極部123が1対2の関係で互いに当接すると、次のような問題が起こる可能性がある。すなわち、ハブダイナモのステータ本体101Aを実際に組み立てる場合、コイルボビン110に対して、軸方向一方P側から第1ヨーク120Aを挿入し、軸方向他方Q側から第2ヨーク120Bを挿入する。その際、例えば、第1ヨーク120Aの内周側磁極部123の先端123aが当接する2つの第2ヨーク120Bの内周側磁極部123のうち、一方の第2ヨーク120Bの内周側磁極部123の挿入方向寸法が他方の第2ヨーク120Bの内周側磁極部の挿入方向寸法より短い場合(つまり、隣接する2つの第2ヨーク120Bの内周側磁極部123の挿入方向寸法にバラツキがある場合)、次のようなことが起こり得る。
【0059】
第1ヨーク120Aの内周側磁極部123の先端123aは、挿入方向寸法の長い一方の第2ヨーク120Bの内周側磁極部123の先端123aにのみ当接し、他方の第2ヨーク120Bの内周側磁極部123の先端123aには当接せずに、第1ヨーク120Aの内周側磁極部123の先端123aと他方の第2ヨーク120Bの内周側磁極部123の先端123aとの間に隙間が生じることが起こり得る。このように、寸法公差等による当接面のバラツキにより、ヨーク120A、120B同士の突き合せ部に隙間が生じると、ヨーク120A、120Bの鉄損が大きくなり、性能が低下する可能性がある。
【0060】
そこで、本実施形態では、第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bが、半径方向に対して傾斜した平面上に配置されている。すなわち、
図12(a)、
図12(b)、および
図13に示すように、まず、各ヨーク120A、120Bの配置に際して、ステータ101の外周面上に、周方向に間隔(θ=11.25°=360°/32)をおいて、交互に第1ヨークの外周側磁極部121における外周面の周方向中央QA(以下、第1ヨークの配置位置QAという)、および第2ヨーク120Bの外周側磁極部121における外周面の周方向中央QB(以下、第2ヨークの配置位置QBという)が設定されている。
【0061】
次に、
図12(a)および
図13に示すように、ハブ軸の中心軸線Oと、第1ヨークの配置位置QAと、を含む平面が第1ヨークの配置基準面SA0として設定される。これに加え、第1ヨークの配置位置QAを含みハブ軸の中心軸線Oに平行で、且つ第1ヨークの配置基準面SA0に対して周方向一方側RAに角度αAだけ傾斜した平面が、第1ヨークの実配置面SA1として設定されている。そして、第1ヨークの実配置面SA1上に、第1ヨーク120Aが配置されている。
【0062】
また、
図12(b)および
図13に示すように、ハブ軸の中心軸線Oと、第2ヨークの配置位置QBと、を含む平面が、第2ヨークの配置基準面SB0として設定される。これに加え、第2ヨークの配置位置QBを含みハブ軸の中心軸線Oに平行で、且つ第2ヨークの配置基準面SB0に対して周方向他方側RBに角度αBだけ傾斜した平面が、第2ヨークの実配置面SB1として設定されている。そして、第2ヨークの実配置面SB1上に、第2ヨーク120Bが配置されている。
【0063】
この場合、隣接する第1ヨーク120Aの配置位置QAと第2ヨーク120Bの配置位置QBとの間隔はθ=11.25°(=360°/32)であるから、第1ヨークの実配置面SA1および第2ヨークの実配置面SB1の、各配置基準面SA0,SB0に対する傾斜角度αA、αBは、αA=αB=5.625°(=11.25°/2)よりも小さい、例えば5°に設定されている。
【0064】
そして、第1ヨークの実配置面SA1と第2ヨークの実配置面SB1との交差線SC(
図13参照)上において、
図14(a)の矢印FP、FQのように組み合わせることにより、
図14(b)、
図14(c)に示すように、第1ヨーク120Aの内周側磁極部123の先端123aと第2ヨーク120Bの内周側磁極部123の先端123aとが互いに当接させられている。これにより、第1ヨーク120Aの内周側磁極部123と第2ヨーク120Bの内周側磁極部123とが、1対1の関係で磁気的に接続される。
【0065】
上述のように各ヨーク120A,120Bが、半径方向に対して傾斜した平面(ヨークの実配置面SA1、SB1)上に配置される関係から、以下のようなことがいえる。
すなわち、
図12および
図13に示すように、コイルボビン110の第1フランジ112Aおよび第2フランジ112Bの各ガイド溝113A、113Bも、それらの延在方向が半径方向に対して同様の傾斜角度αA、αBを持つように形成されている。
【0066】
また、係合溝114A,114Bは、ガイド溝113A,113Bの傾斜に倣うように形成されている。相手側のヨーク120A、120Bの外周側磁極部121の先端121aを収容支持する支持溝115A、115Bについては、周方向に位置が対応する係合溝114B、114Aの寸法精度を優先するように若干の余裕をもって形成されている。
【0067】
組み付けの際には、
図10に示すように、第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bを、軸方向一方P側及び軸方向他方Q側から交互にコイルボビン110に挿入する。すなわち、各ヨーク120A、120Bの連結部122を、コイルボビン110の第1フランジ112Aおよび第2フランジ112Bの各ガイド溝113A,113Bに嵌める。また、各ヨーク120A、120Bの外周側磁極部121の基端を、コイルボビン110の第1フランジ112Aおよび第2フランジ112Bの各係合溝114A,114Bに嵌める。
【0068】
さらに、各ヨーク120A,120Bの外周側磁極部121の先端121aを、コイルボビン110の相手側の第2フランジ112Bおよび第1フランジ112Aの各支持溝115A、115Bに収容する。また、各ヨーク120A、120Bの内周側磁極部123を、コイルボビン110の内周面に沿って挿入し、各ヨーク120A、120Bの内周側磁極部123の先端123a同士を突き合わせて当接させる。これにより、コイル140を包囲するようにヨーク120A,120Bが装着される。
【0069】
以上のように組み付けられることにより、第1ヨーク120Aの外周側磁極部121と第2ヨーク120Bの外周側磁極部121とが、コイルボビン110の胴部111に巻回されたリング状のコイル140の外周側において、円周方向に間隔をあけて交互に配置される。また、第1ヨーク120Aの内周側磁極部123と第2ヨーク120Bの内周側磁極部123とが、コイルボビン110の胴部に巻回されたリング状のコイル140の内周側に配置される。
【0070】
その際、コイルボビン110の第1フランジ112Aのガイド溝113Aは、第1ヨーク120Aを第1ヨークの実配置面SA1上に位置決めする役目を果たす。また、第2フランジ112Bのガイド溝113Bは、第2ヨーク120Bを第2ヨークの実配置面SB1上に位置決めする役目を果たす。そして、複数のヨーク120A、120Bは、コイルボビン110に対して回転しないように保持される。
【0071】
ところで、コイルボビン110のフランジ112A,112Bの外周に形成され、相手側のヨーク120A,120Bの外周側磁極部121の先端121aを収容支持する支持溝115A,115Bは、成形上の問題などにより、ヨークの外周側磁極部121の先端121aの寸法に対して若干の余裕をもって形成されている。そのため、ヨークの外周側磁極部121の先端121aにおいて、積層ヨークを構成する板状部材130間の接合が弱い場合に、異音を発生する問題があることが分かった。この異音が発生する原理については後述する。
【0072】
(ホルダ)
そこで、それを防止するためにホルダ160A,160Bが設けられている。次にホルダ160A,160Bについて詳しく説明する。
図8および
図9に示すように、第1ホルダ160Aは、第1ヨーク120Aの軸方向他方Q側に延びた先端121aを保持するために、軸方向他方Q側に位置するコイルボビン110の第2フランジ112Bの軸方向外側に配置されている。また、第2ホルダ160Bは、第2ヨーク120Bの軸方向一方P側に延びた先端121aを保持するために、軸方向他方Q側に位置するコイルボビン110の第1フランジ112Aの軸方向外側に配置されている。
【0073】
図16は、第1ホルダ160Aおよび第2ホルダ160Bの斜視図である。
両ホルダ160A,160Bは、同じ構成のものである。ホルダ160A,160Bは、円環板状のホルダ本体部161と、円環板状のホルダ本体部161の軸方向内側面の外周側に円周方向に配列され且つ軸方向内方に向けて突設された複数の押さえ壁162と、を有している。
図9に示すように、第1ホルダ160Aは、押さえ壁162のある側面をコイルボビン110の第2フランジ112Bに向けて軸方向他方Q側に配置されている。また、第2ホルダ160Bは、押さえ壁162のある側面をコイルボビン110の第1フランジ112Bに向けて軸方向一方P側に配置されている。
【0074】
各ホルダ160A,160Bの円周方向に配列された複数の押さえ壁162は、1つ置きの対(2枚の押さえ壁162,162)が、それらの間に、ヨークの外周側磁極部121の先端121aを挟持する保持溝163を形成している。また、保持溝163を形成する一対の押さえ壁162,162の内側面には、ヨークの外周側磁極部121の先端121aが挿入された際に、ヨークの外周側磁極部121の先端121aに圧接する凸条162aが設けられている。また、保持溝163を形成する一対の押さえ壁162の内側面の先端側は、ヨークの外周側磁極部121の先端121aの挿入を容易にするように、軸方向に向けて(コイルボビンのフランジ112A,112Bに向けて)ハの字状に開いている。
【0075】
また、一対の押さえ壁162の半径方向内周側には、両押さえ壁162に跨がることで両押さえ壁162を連結する補強壁164が設けられている。また、円環板状のホルダ本体部161の軸方向内側面には、先端にテーパ165aの付いた円柱状の位置決め突起165が設けられている。位置決め突起165は、本実施形態では円周方向に間隔をおいて3個設けられているが、個数は問わない。これら位置決め突起165は、コイルボビン110の各フランジ112A、112Bの外側面のV字形の位置決め凹部117A,117Bに嵌まることで、ホルダ160A,160Bをコイルボビン110に対して円周方向(回転方向)に位置決めするものである。
【0076】
円環板状のホルダ本体部161の外周縁161aおよび内周縁161bには、それぞれ軸方向に貫通するコイル引出凹部167,168(外周縁のコイル引出凹部167、内周縁のコイル引出凹部168)が設けられている。コイル140の始端や終端は、これらコイル引出凹部167,168を経てステータ101外部に引き出される。
【0077】
また、円環板状の各ホルダ本体部161の内周側には、ハブ軸11に螺合するスリーブナット42や締付ナット44によって締め付けられる内周側フランジ壁161cが設けられている。この内周側フランジ壁161cは、その肉厚が、ホルダ本体部161よりも小さく設定されている。内周側フランジ壁161cの軸方向内側面は、ホルダ本体部161の軸方向内側面と面一であるが、内周側フランジ壁161cの軸方向外側面は、ホルダ本体部161の軸方向外側面より一段凹んだ位置にある。各ホルダ160A,160Bの内周側フランジ壁161cの軸方向外側の側面には、複数の潰れ突起169が円周方向に間隔をおいて設けられている。
【0078】
これらの潰れ突起169は、ハブ軸11に螺合したスリーブナット42および締付ナット44により、第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bを軸方向に締め付けた際に、ナット42,44による締め付け力により押し潰されることで、締め付け力を吸収する機能を果たす。
【0079】
図17は、第1ホルダ160Aおよび第2ホルダ160Bに対する第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bの外周側磁極部121の先端121aの配置を示す側面図である。
図8および
図17に示すように、このように構成されたホルダ160A,160Bの保持溝163に、各ヨーク120A,120Bの外周側磁極部121の先端121aが挿入されている。すなわち、第1ヨーク120Aの外周側磁極部121の軸方向他方Q側に延びる先端121aは、コイルボビン110の第2フランジ112Bの支持溝115Bを通過して、第2フランジ112Bの軸方向外側に配置された第1ホルダ160A上の一対の押さえ壁162,162間の保持溝163に圧入されている。これにより、当該一対の押さえ壁162,162によって、外周側磁極部121の先端121aにおける複数の板状部材130(
図15参照)が積層方向に密着状態で挟持されている。
【0080】
同様に、第2ヨーク120Bの外周側磁極部121の軸方向一方P側に延びる先端121aは、コイルボビン110の第1フランジ112Aの支持溝115Aを通過して、第1フランジ112Aの軸方向外側に配置された第2ホルダ160B上の一対の押さえ壁162,162間の保持溝163に圧入されている。これにより、当該一対の押さえ壁162,162によって、外周側磁極部121の先端121aにおける複数の板状部材130(
図15参照)が積層方向に密着状態で挟持されている。
【0081】
図18は、ステータ101と締め付け用のナット42およびワッシャ41の関係を説明するための軸方向一方P側から見た斜視図で、(a)は、ナット42を締め付ける前の状態を示す図、(b)は、ナット42を締め付けた後の状態を示す図である。
図19は、ステータ101と締め付け用のナット44および2つのワッシャ49、43の関係を説明するための軸方向他方Q側から見た斜視図で、(a)は、ナット44を締め付ける前の状態を示す図、(b)は、ナット44を締め付けた後の状態を示す図である。
図20は、ステータ101と締め付け用のナット42、44およびワッシャ41,43,49の関係を説明するための断面図である。また、
図21は、
図20の矢視N1部分の拡大図である。
図22は、
図20の矢視N2部分の拡大図である。
【0082】
図18および
図19に示すように、ステータ101(ステータ本体101Aの軸方向両側にホルダ160A、160Bを配置したもの)は、ハブ軸11に螺合するナット42,44を締め付けることにより、ハブ軸11に固定されている。
【0083】
まず、
図18、
図20、
図21に基づいて、軸方向一方P側からのステータ101の締め付け構造について説明する。
図18、
図20、
図21に示すように、ナット42には、締め付けフランジ部42aが設けられている。締め付けフランジ部42aの外径は、第2ホルダ160Bの内周側フランジ壁161cの外周縁の径よりも小さく設定され、潰れ突起169が配置された円周の径よりも大きく設定されている。従って、ナット42を締め付けた際に、ナット42の締め付けフランジ部42aが、第2ホルダ160Bの潰れ突起169を潰しながら内周側フランジ壁161cを押圧する。
【0084】
金属製のワッシャ41の外径は、第2ホルダ160Bのホルダ本体部161の内径よりも小さく設定されている。また、ワッシャ41の肉厚t2は、第2ホルダ160Bの内周側フランジ壁161cの肉厚t1よりも大きく設定されている。従って、ナット42を締め付けた際に、その強力な締め付け力F1を、ワッシャ41を介した力F2として直に、第1ヨーク120Aの軸方向外側面(内周側磁極部123の基端)に加えることができる。
【0085】
次に、
図19、
図20、
図22に基づいて、軸方向他方Q側からのステータ101の締め付け構造について説明する。
図19、
図20、
図22に示すように、ナット44の締め付け方向前側には、ナット44より径の大きな金属製の第1ワッシャ43が配置されている。第1ワッシャ43の外径は、第1ホルダ160Aの内周側フランジ壁161cの外周縁の径よりも小さく設定され、潰れ突起169が配置された円周の径よりも大きく設定されている。従って、ナット44を締め付けた際に、第1ワッシャ43が、第1ホルダ160Aの潰れ突起169を潰しながら内周側フランジ壁161cを押圧する。
【0086】
また、第1ワッシャ43の締め付け方向前側には、金属製の第2ワッシャ49が配置されている。この第2ワッシャ49の外径は、第1ホルダ160Aのホルダ本体部161の内径よりも小さく設定されている。また、第2ワッシャ49の肉厚t3は、第1ホルダ160Aの内周側フランジ壁161cの肉厚t1よりも大きく設定されている。従って、ナット44を締め付けた際に、その強力な締め付け力F1を、第1ワッシャ43および第2ワッシャ49を介した力F2として直に、第2ヨーク120Bの軸方向外側面(内周側磁極部123の基端)に加えることができる。
【0087】
(ヨークの細部)
次に、各ヨーク120A,120Bの細部について、主に
図15を参照して述べる。
ヨーク120A,120Bを円周方向に間隔をおいて軸方向から見て放射状に配列すると、隣接するヨーク120A,120Bの内周側磁極部123が密に並ぶことになり、互いに干渉する可能性が出てくる。そこで、本実施形態では、内周側磁極部123の周方向一端側または他端側の少なくとも一方に、隣接するヨーク120A,120Bの内周端同士の干渉を避ける切欠部135が設けられている。
【0088】
ここでは、第1ヨーク120Aの配置基準面SA0に対する第1ヨークの実配置面SA1の傾斜方向、および第2ヨーク120Bの配置基準面SB0に対する第2ヨークの実配置面SB1の傾斜方向を、各ヨークの傾斜方向と定義する。また、積層した7枚の板状部材130を、傾斜方向の前方側から後方側にそれぞれ区別した符号130−1〜130−7で示すことにする。
そうした場合、ヨーク120A(120B)の傾斜方向の前方側に位置する積層板状部材(例えば、板状部材130−1)の径方向内周端の位置が、ヨーク120A(120B)の傾斜方向の後方側に位置する積層板状部材(例えば、板状部材130−7)の径方向内周端の位置よりも径方向外方にあるように、積層された板状部材130の寸法が決められている。
【0089】
すなわち、
図15(c)に示すように、第1ヨーク120A(120B)の傾斜方向の前端に位置する板状部材130−1の径方向寸法K1は、この板状部材130−1の次に前側に位置する板状部材130−2の径方向寸法K2よりも、寸法K3だけ小さく設定されている。また、板状部材130−2の径方向寸法K2は、この板状部材130−2よりも傾斜方向後方に位置する板状部材130−3〜130−7の径方向寸法K4よりも、寸法K5だけ小さく設定されている。
これにより、板状部材130−1〜130−7を積層した際に、ヨーク120A(120B)の内周側磁極部123の内周端の傾斜方向の前端に、隣のヨーク120A(120B)の内周側磁極部123の内周端との干渉を避ける切欠部135が確保される。
【0090】
なお、干渉の可能性の程度によっては、板状部材130−2〜130−7の径方向寸法を同一に設定し、傾斜方向の最前端に位置する板状部材130−1の径方向寸法K1のみ、他の板状部材130−2〜130−7の径方向寸法よりも短く設定してもよい。また、例えば、傾斜方向の最前端の板状部材130−1から3番目の板状部材130−3以降の径方向寸法も、傾斜方向の後方に位置する板状部材130−3〜130−7ほど、径方向寸法が長くなるように設定してもよい。
【0091】
このように、ヨーク120A(120B)の傾斜方向前側の内周端に切欠部135が設けられることにより、周方向に並べられる複数のヨーク120A(120B)間の間隔を密にしても干渉を避けることができるようになる。言い換えると、ヨーク120A(120B)の配置間隔を小さくして多数個のヨーク120A(120B)を配設することができるようになる。
【0092】
次に作用について述べる。
(発電の仕組み)
このように構成されたハブダイナモ10の発電は、以下の要領で行われる。
すなわち、前輪5が回転すると、スポーク2により前輪5に接続されたロータ20が前輪5と共にハブ軸11周りに回転し、永久磁石22がステータ101周りを回転する。
【0093】
回転する永久磁石22の磁束により、軸方向一方P側の第1ヨーク120Aの外周側磁極部121がN極、軸方向他方Q側の第2ヨーク120Bの外周側磁極部121がS極となる状態と、軸方向一方P側の第1ヨーク120Aの外周側磁極部121がS極、軸方向他方Q側の第2ヨーク120Bの外周側磁極部121がN極となる状態と、が交互に繰り返される。これにより、両者を磁気的に連結している両ヨーク120A、120Bの内周側磁極部123に交番磁束が発生する。このコイルの内周側に発生する交番磁束によって、ステータ101のコイル140に電流が流れて発電が行われる。
【0094】
この発電時には、交番磁束に加えて、渦電流も発生する。この渦電流は発電効率を低下させるものであるが、本ハブダイナモ10においては、各ヨーク120A、120Bを複数の板状部材130の積層体として構成しているので、渦電流の発生を抑えることができる。
【0095】
次に、第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bの外周側磁極部121(ティース部)で発生する異音の問題について説明する。
各ヨーク120A,120Bが、磁性体からなる複数枚の板状部材130(
図15参照)を積層した積層ヨークとして構成されている場合、板状部材130間は接着剤により接合されているのが一般的である。しかし、板状部材130間の接合強度が足りないと、ヨーク120A,120Bの外周側で永久磁石22のN極とS極が交互に回転移動するのに伴って、異音が発生する問題が生じることがある。
【0096】
異音発生の原理について、
図23(a)〜
図23(d)に基づいて説明する。
例えば、
図23(a)に示すように、ヨークの外周側を永久磁石22のN極が通過する際には、ヨーク120A、120Bの外周端(外周側磁極部)はS極に励磁される。すると、積層された板状部材130が全てS極に励磁されることにより、板状部材130同士間に反発力が発生し、板状部材130同士が互いに離れようとする。
【0097】
図23(b)に示すように、板状部材130間の接合強度が弱い場合は、例えば、一番外側に積層してある1枚の板状部材130が僅かでも離れてしまうことがある。このような状態で永久磁石22が一定以上動くと、今度は離れた1枚の板状部材130に隣りのS極が近づくことにより、
図23(c)に示すように、離れた板状部材130がN極に励磁される。
離れた板状部材130がN極に励磁されると、残りのS極に励磁されている板状部材130との間に吸引力が発生し、
図23(d)に示すように、離れた板状部材130が吸引されて残りの板状部材130に叩き付けられることになる。その際、衝突による異音が発生することがある。
【0098】
この点、本実施形態では、ヨーク120A,120Bの外周側磁極部121の基端ばかりでなく、先端121aを、ホルダ160A,160Aによって板状部材130の積層方向に密着状態で挟持している。従って、積層ヨークの板状部材130間に磁気的反発力が生じても、積層方向の端部の板状部材130が他の板状部材130から離れないようにすることができる。その結果、永久磁石22の回転に応じて積層方向の端部の板状部材130が他の板状部材130から離れた後で磁気吸引されて他の板状部材130に叩き付けられる現象を無くすことができ、異音の発生を解消することができる。また、ヨーク120A、120Bの外周側磁極部121の先端121aを、板状部材130間が密着する状態で挟持することから、接着剤を用いて板状部材130間を接着する工程を省略することも可能になり、製造工程の簡素化が図れる。
【0099】
また、コイルボビン110の第1フランジ112Aにより軸方向一方P端側(基端側)を保持した第1ヨーク120Aの外周側磁極部121の軸方向他方Q側に延ばした先端121aを、コイルボビン110の第2フランジ112Bの軸方向外側に配置した第1ホルダ160Aで支持している。また、コイルボビン110の第2フランジ112Bにより軸方向他方Q端側(基端側)を保持した第2ヨーク120Bの外周側磁極部121の軸方向一方P側に延ばした先端121aを、コイルボビン110の第1フランジ112Aの軸方向外側に配置した第2ホルダ160Bで支持している。つまり、外周側磁極部121の先端121aを保持するホルダ160A、160Bは、各ヨーク120A、120Bが配置された側と反対側にコイルボビン110のフランジ112A、112Bと別体に配置されたものである。そのため、コイルボビン110のフランジ112A、112Bの加工精度に拘わらず、ホルダ160A、160Bの精度を確保しさえすれば、ヨーク120A、120Bの外周側磁極部121の先端121aを密着状態で安定保持することができる。
【0100】
また、ヨーク120A,120Bの外周側磁極部121の先端121aを保持する一対の押さえ壁162,162は、その内周側に配置した補強壁164で補強しているので、ヨーク120A,120Bの外周側磁極部121の先端121aに対する挟持力を強く設定できる。また、補強壁164が、一対の押さえ壁162,162の内周側に跨がって配置されていることで、ヨーク120A,120Bの外周側磁極部121の先端121aの半径方向内方への位置ずれを防ぐこともできる。
【0101】
また、本実施形態では、ステータ101の両端部にナット42,44の締め付け力を伝えるワッシャ41,49の肉厚t2,t3を、ホルダ160A,160Bの内周側フランジ壁161cの肉厚t1よりも大きく設定している。これにより、ナット42,44による締め付け力を直接、ヨーク120A,120Bの内周側磁極部123の基端に作用させることができ。そのため、第1ヨーク120Aの内周側磁極部123の先端123aと第2ヨーク120Bの内周側磁極部123の先端123aとを互いに強く当接させることができ、第1ヨーク120Aと第2ヨーク120Bを良好に磁気結合させることができる。
【0102】
また、樹脂製のホルダ160A,160Bに対しては、ナット42,44の締め付けに伴って潰れ突起169が潰れることによって、ホルダ本体部161に過大な締め付け力が作用しないようにすることができる。そのため、ホルダ160A,160Bを過不足なく締め付け固定することができると共に、樹脂製のホルダ160A,160Bがあるからといって、ナット42,44による締め付け力を小さめに設定する必要もない。つまり、ナット42,44による締め付け力を大きめに設定することで、第1ヨーク120Aと第2ヨーク120Bの磁気結合性を高めることが可能になる。
【0103】
また、ホルダ160A,160Bの外周縁161aと内周縁161bには、コイル引出凹部167,168を設けているので、コイル140の始端や終端をスムーズに外部に引き出すことができる。
【0104】
また、本実施形態のハブダイナモにおいては、第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bを半径方向に沿った平面(ヨークの配置基準面SA0、SB0)上ではなく、半径方向に対して傾斜した平面(ヨークの実配置面SA1、SAB1)上に配置している。このため、第1ヨーク120Aの内周側磁極部123と第2ヨーク120Bの内周側磁極部123とを1対1の関係で当接させることができる。
【0105】
従って、ヨーク120A,120Bの寸法公差等によるバラツキにより、第1ヨーク120Aと第2ヨーク120Bの当接面に隙間が生じる可能性を無くすことができ、当接面の密着度を高めることができる。その結果、ヨーク120A,120Bの磁気的接続を安定させて鉄損を減少することができ、効率を向上することが可能になる。
【0106】
また、本実施形態では、コイルボビン110のフランジ112A,112Bのガイド溝113A,113Bや係合溝114A、114Bにヨーク120A,120Bの軸方向端部を係合させることにより、ヨークを半径方向に対して傾斜した平面(ヨークの実配置面SA1、SB1)上に位置決めすることができる。従って、ヨーク120A,120Bをコイルボビン110に組み付けることで、コイルボビン110に巻回したコイル140とヨーク120A,120Bの位置関係を適正に定めることができる。
【0107】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0108】
例えば、ヨーク120A,120Bを構成する際の板状部材130の積層枚数は任意に定めてよいし、ヨーク120A,120Bの個数も32個に限られるものではない。
【0109】
また、ステータ101の個数も1つに限定されず、2つあるいは3つをハブ軸11上に並べて配置してステータユニットを構成してもよい。この場合、2つのステータ101の位相をずらすことにより、位相のずれた交番電流を生成できる。
【0110】
また、上記実施形態では、ホルダ160A,160Bを、コイルボビンの110のフランジ112A,112Bと別体に構成しているが、ホルダ160A,160Bをコイルボビン110のフランジ112A,112Bと一体に形成することも可能である。