特許第6963943号(P6963943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6963943-防振装置及び取付部材 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963943
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】防振装置及び取付部材
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20211028BHJP
   F16F 1/387 20060101ALI20211028BHJP
   B60K 5/12 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   F16F15/08 C
   F16F15/08 W
   F16F15/08 M
   F16F1/387 F
   F16F1/387 E
   B60K5/12 E
   B60K5/12 J
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-173549(P2017-173549)
(22)【出願日】2017年9月8日
(65)【公開番号】特開2019-49309(P2019-49309A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2020年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】原田 陽一
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−120110(JP,A)
【文献】 実開昭56−091938(JP,U)
【文献】 特開2008−223794(JP,A)
【文献】 特開2009−174609(JP,A)
【文献】 特開平03−168425(JP,A)
【文献】 特開2016−128715(JP,A)
【文献】 特開2010−001960(JP,A)
【文献】 特開2003−206970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/08
F16F 1/387
B60K 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、前記外筒の内周側に配置された内筒と、前記外筒の内周側に固定される筒状の外周部と、前記内筒の外周側に固定される内周部と、前記外周部と前記内周部とを連結する少なくとも2つの脚部とを有し、前記内筒と前記外筒とを連結するゴム部材と、前記外筒を振動発生部及び振動受動部のうちのいずれか一方に取付ける外側取付部材と、前記内筒を前記振動発生部及び前記振動受動部のうちの他方に取付ける内側取付部材とを備えた防振装置であって、
前記ゴム部材の脚部は、前記外筒の軸方向に垂直な断面で見たときに、前記外周部の、前記外筒の軸を通り前記外筒の軸に直交する直線の一方の側から前記内周部に延長し、
前記内側取付部材は、前記内筒内に挿入される挿入部と、前記挿入部を前記振動発生部及び前記振動受動部のうちの他方に取付ける取付部とを備えた取付部本体と、
前記ゴム部材の前記内周部と前記外周部と前記脚部とにより分割された空間のうちの、前記直線の他方の側の空間に配置されて、前記内筒の軸方向に平行な方向に延長する水平片と、前記水平片を、前記内筒の軸方向外側にて前記取付部本体に連結する連結片とを有するストッパ部とを備えることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記内側取付部材の前記取付部本体と前記ストッパ部とは一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
請求項2に記載の防振装置に使用される取付部材であって、
前記内筒に取付けられる取付部本体と、
前記内筒の軸方向に平行な方向に延長する水平片と、前記水平片を、前記内筒の軸方向外側にて前記取付部本体に連結する連結片とを有するストッパ部とを備えることを特徴とする取付部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発生部と振動受動部との間に配置される防振装置と、この防振装置に使用される取付部材とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動発生部と振動受動部との間に配置される防振装置として、外側取付部材と内側取付部材とを弾性体で連結した防振装置本体と、弾性体と同質のゴム等の弾性材料から形成されて、内側取付部材の軸方向に延長する板状のストッパ部分を有するストッパ部材とを備えた防振装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の防振装置では、ストッパ部材のストッパ部分を、防振装置本体の弾性体に挿入して、防振装置に大きな振動が入力したときの弾性体の変形を抑制することで、弾性体の耐久性能を確保するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−128715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の防振装置では、別体に作製されたストッパ部材を防振装置本体には組付ける必要があるだけでなく、ストッパ部分が弾性体である場合には、組立て時の作業性が悪い、といった問題点があった。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、別体のストッパ部材を用いることなく、大きな振動が入力したときの弾性体の変形を抑制することのできる防振装置と、この防振装置に用いられる取付部材とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、外筒と、前記外筒の内周側に配置された内筒と、前記外筒の内周側に固定される筒状の外周部と、前記内筒の外周側に固定される内周部と、前記外周部と前記内周部とを連結する少なくとも2つの脚部とを有し、前記内筒と前記外筒とを連結するゴム部材と、前記外筒を振動発生部及び振動受動部のうちのいずれか一方に取付ける外側取付部材と、前記内筒を前記振動発生部及び前記振動受動部のうちの他方に取付ける内側取付部材とを備えた防振装置であって、前記ゴム部材の脚部は、前記外筒の軸方向に垂直な断面で見たときに、前記外周部の、前記外筒の軸を通り前記外筒の軸に直交する直線の一方の側から前記内周部に延長し、前記内側取付部材は、前記内筒内に挿入される挿入部と、前記挿入部を前記振動発生部及び前記振動受動部のうちの他方に取付ける取付部とを備えた取付部本体と、前記ゴム部材の前記内周部と前記外周部と前記脚部とにより分割された空間のうちの、前記直線の他方の側の空間に配置されて、前記内筒の軸方向に平行な方向に延長する水平片と、前記水平片を、前記内筒の軸方向外側にて前記取付部本体に連結する連結片とを有するストッパ部とを備えることを特徴とする。
これにより、内側取付部材の内筒内への挿入と、ストッパ部の取付けを同時に行うことができるので、別体のストッパ部材を用いた場合に比較して、防振装置の組立性を向上させることができる。
また、取付部本体と前記ストッパ部とを、例えば、鋳造などで一体に形成することで、ストッパ部を取付部本体に取付ける作業を省略することができるので、防振装置の組立性を更に向上させることができる。
また、本発明は、前記の防振装置に使用される取付部材であって、前記内筒に取付けられる取付部本体と、前記内筒の軸方向に平行な方向に延長する水平片と、前記水平片を、前記内筒の軸方向外側にて前記取付部本体に連結する連結片とを有するストッパ部とを備えることを特徴とする。
このような構成の取付部材を、本発明による防振装置の内側取付部材として使用すれば、作業性が改善されるとともに、防振部材の耐久性能を向上させることができる。
【0007】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係る防振装置を示す図である。
図2】防振装置本体を示す図である。
図3】内側取付部材の詳細を示す図である。
図4】防振装置本体に内側取付部材を取付けた状態を示す図である。
図5】従来の防振装置の組立方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態
図1は本実施の形態に係る防振装置1を示す図で、防振装置1は、防振装置本体2と、防振装置本体2に取付けられる内側取付部材3及び外側取付部材4とを備える。
防振装置本体2は、外筒21と、外筒21の内周側に配置された内筒22と、外筒21と内筒22とを連結するゴム部材23とを備える。
内側取付部材3は、内筒22内に挿入される挿入部31と、挿入部31を振動発生部5に取付ける取付部32と、ゴム部材23に挿入されるストッパ部33とを備える。
外側取付部材4は、外筒21を外側から保持する筒状の保持部41と、保持部41の内側取付部材3側とは反対側に取付けられる後部取付板42と、保持部41を振動受動部6に取付けるための第1及び第2の取付部43,44とを備える。
防振装置1を、例えば、車両のエンジンマウントユニットに適用した場合、振動発生部5はエンジンに直結した部材、振動受動部6は、車体に直結した部材となる。
以下、同図のX軸方向を車両の前後方向、Y軸方向を左右方向、Z軸方向を上下方向とする。また、外筒21及び内筒22の軸方向をX軸に平行な方向とし、外筒21及び内筒22の内側取付部材3側を前方、外側取付部材4側を後方とする。
【0010】
図1及び図2に示すように、防振装置本体2の外筒21は、前方に外側取付部材4の位置を規制するためのフランジ部21fが形成された、断面がトラック状(角丸長方形ともいう)の筒状の部材で、鋳鉄等の金属もしくは合金から構成される。
また、内筒22は、上側が矩形で下側が台形の断面を有する六角形状の断面を有する筒状の部材で、アルミニウム等の金属もしくは合金から構成される。
ゴム部材23は、外筒21の内周側に内面側に固定される外周部23aと、内筒22の外周側に固定される内周部23bと、外周部23aと内周部23bとを連結する2つの脚部23cと、内側取付部材3の挿入部31を挿入するための挿入孔23hが形成された、内筒22の内周側に固定される挿入部23dとを備える。挿入孔23hの断面は内筒22の断面と相似形で、内側取付部材3の挿入部31の断面よりも小さめに形成される。
図2に示すように、ゴム部材23の2本の脚部23c,23cはそれぞれ、外筒21の軸方向に垂直な断面で見たときに、ゴム部材23の外周部23aの下側の左方及び右方から延長して、内周部23bの下側に連結される。これにより、ゴム部材23には、外周部23aと内周部23bと2つの脚部23cとにより区画された第1及び第2のクリアランスC1,C2が形成される。
第1のクリアランスC1は、内筒22の上部側に位置する上部クリアランスC11と、内筒22の左側と右側とにそれぞれ位置して上部クリアランスC11に連通する側部クリアランスC12,C13とを備え、この上部クリアランスC11に内側取付部材3のストッパ部33が挿入される。
【0011】
内側取付部材3は、図3(a),(b)に示すように、内筒22の断面と相似形の断面を有し、前後方向に延長する挿入部31と、内側取付部材3を振動発生部5に取付けるための図示しないボルトが挿入されるボルト孔32hを有する基部32a及び基部32aから斜め後方に立ち上がって前記挿入部31に連結される連結片32bとを有する取付部32と、ゴム部材23に形成された上部クリアランスC1に配置されて、内筒22の軸方向に平行な方向に延長する水平片33a、及び、水平片33aを内筒22の軸方向外側(前側)にて挿入部31に連結する連結片33bを有するストッパ部33とを備える。以下、挿入部31と取付部32とを挿入部本体34という。なお、水平片33aは取付部32の連結片32bなど、挿入部本体34の挿入部31以外の部分に連結してもよい。
本例では、挿入部31の長さ寸法L0とストッパ部33の水平片33aの長さ寸法Lとを、内筒22の長さ寸法とほぼ同じとした。また、水平片33aの幅寸法wを挿入部31の幅寸法w0の長さ寸法とほぼ同じとし、厚さ寸法dを、上部クリアランスC11の幅寸法dgとほぼ同じとした(図2参照)。
【0012】
図1に示すように、外側取付部材4の保持部41は、外筒21を収納する、断面がトラック状の筒状の部材で、後部取付板42は、保持部41の後方側にて、保持部41の後方を覆うように配置される軸方向に垂直な板材である。
また、第1の取付部43は、外側取付部材4を振動受動部6に取付けるための図示しないボルトが挿入されるボルト孔43hを有する水平片43a、水平片43aの前側から上方に立ち上がって保持部41の外周に連結される前側連結片43b、及び、水平片43aの後側から上方に立ち上がって後部取付板42に連結される後側連結片43cを備える。
一方、第2の取付部44は、外側取付部材4を、振動受動部6の第1の取付部43の取付箇所とは別の箇所に取付けるための図示しないボルトが挿入されるボルト孔44hが形成された、後部取付板42から斜め上方に立ち上がる板材である。
【0013】
図4(a),(b)は、防振装置本体2に内側取付部材3を取付けた状態を示す図で、(a)図は縦断面図、(b)図は(a)図のA−A断面図である。
本例では、内側取付部材3の方向が車両の前後方向(X軸方向)に平行になるように配置されているので、主として、車両の前後方向及び上下方向から入力する振動に対して防振効果を発揮できるだけでなく、車両の左右方向から入力する振動に対しても防振効果を発揮できる。
また、ゴム部材23に形成された上部クリアランスC11に、内側取付部材3のストッパ部33が挿入されているので、過大な上下方向からの入力があっても、ゴム部材23(特に脚部23c)の変形を抑制できるので、ゴム部材23の耐久性能が向上する。
更に、本例では、内側取付部材3を鋳造にて一体に形成したので、ストッパ部33を挿入部本体34に取付ける作業を省略することができるとともに、(a)図に示すように、挿入部31とストッパ部33とを同時に防振装置本体2に挿入できるので、防振装置1の組立性も向上する。
【0014】
ところで、内側取付部材3にストッパ部33を設けない場合には、図5に示す従来の防振装置1Aのように、ストッパ部材7を別体に作製し、このストッパ部材7と内側取付部材3Aとを、防振装置本体2に組付ける必要がある。
このような、ストッパ部材7としては、通常、弾性体と同質のゴム等の弾性材料から形成されて上部クリアランスC11に挿入される板状のストッパ部分7aと、ストッパ部材7を内側取付部材3Aに取付けるための挿入孔7hが形成された環状部材7bとから形成されるものが用いられる。しかしながら、この場合には、ストッパ部材7の取付工程が必要なだけでなく、板状のストッパ部分7aと内側取付部材3Aの挿入部31とは一体で形成されていないため、組立の作業効率が悪かった。
これに対して、本例のように、内側取付部材3にストッパ部材の機能を持たせるようにすれば、ストッパ部材7を別体に作製する必要がないだけでなく、組立の作業効率についても大幅に改善することができる。
【0015】
以上、本発明を実施の形態及び実施例を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0016】
例えば、前記実施の形態では、内側取付部材3を振動発生部5に取付け、外側取付部材4を振動受動部6に取付けたが、内側取付部材3を振動受動部6に取付け、外側取付部材4を振動発生部5に取付けてもよい。
また、前記実施の形態では、内側取付部材3の方向が車両の前後方向に平行になるように配置したが、車両の左右方向に平行になるように配置してもよい。
また、前記実施の形態では、内筒22の断面形状を、上側の辺の長さが下側の辺に長さよりも長い六角形状としたが、円状、楕円状、あるいは、多角形状であってもよい。
また、前記実施の形態では、内側取付部材3の挿入部31の長さ寸法L0とストッパ部33の水平片33aの長さ寸法Lとを、内筒22の長さ寸法とほぼ同じとしたが、ストッパ部33の水平片33aの長さ寸法Lとしては、0.6・L0≦L≦L0であれば、十分にストッパ部材の機能を発揮させることができる。また、水平片33aの幅寸法wについては、、図3(b)に示す挿入部31の幅寸法w0よりも広く、かつ、図4(b)に示す上部クリアランスC1の幅寸法wgよりも狭い範囲であればよい。また、厚さ寸法dについては、0.6・C11≦d≦1.2・C11の範囲であれば、十分にストッパ部材の機能を発揮させることができる。
また、前記実施の形態では、内側取付部材3を鋳造にて一体に形成したが、ストッパ部33を別途作製し、ボルト等で挿入部本体34に取付けてもよい。この場合には、ストッパ部33を挿入部本体34に取付ける作業が必要であるが、前記実施の形態と同様に、挿入部31とストッパ部33とを同時に防振装置本体2に挿入できるので、図5に示した、ストッパ部分7aと環状部材7bとから成るストッパ部材7を用いた場合よりも、防振装置1の組立性は改善される。
【符号の説明】
【0017】
1 防振装置、2 防振装置本体、3 内側取付部材、4 外側取付部材、
5 振動発生部、6 振動受動部、
21 外筒、21f フランジ部、22 内筒、23 ゴム部材、23a 外周部、
23b 内周部、23c 脚部、23d 挿入部、23h 挿入孔、
31 挿入部、32 取付部、33 ストッパ部、34 挿入部本体、
41 保持部、42 後部取付板、
1 第1のクリアランス、C2 第2のクリアランス。
図1
図2
図3
図4
図5