(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963946
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】アルミニウム箔積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20211028BHJP
C09D 161/20 20060101ALI20211028BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20211028BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20211028BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20211028BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
B32B15/08 U
C09D161/20
C09D163/00
C09D7/40
B32B15/20
B32B27/42
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-177904(P2017-177904)
(22)【出願日】2017年9月15日
(65)【公開番号】特開2019-51655(P2019-51655A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】池内 昌尋
【審査官】
千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
実開平07−033638(JP,U)
【文献】
特開平07−233348(JP,A)
【文献】
特開2015−146375(JP,A)
【文献】
特開2016−179835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00 −43/00
B05D1/00 −7/26
C09D1/00 −10/00
C09D101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム箔層と、コート剤をコーティングすることによりアルミニウム箔層の少なくとも一方の面に形成されたコート層とを備えているアルミニウム箔積層体であって、
コート剤が、樹脂成分としてホルムアルデヒド由来の熱硬化性樹脂を含んでいるとともに、ブロックイソシアネートを含んでおり、
コート層におけるブロックイソシアネートの含有量が0.01〜1.5重量%である、
アルミニウム箔積層体。
【請求項2】
コート剤が、ホルムアルデヒド由来の熱硬化性樹脂以外の樹脂成分として、エポキシ樹脂を含んでいる、請求項1記載のアルミニウム箔積層体。
【請求項3】
コート剤が、さらに耐熱性顔料を含んでいる、請求項1または2記載のアルミニウム箔積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アルミニウム箔層の少なくとも一方の面にコート層が形成されてなり、例えば、焼き菓子や惣菜用のミニカップ、バターやクリームチーズ等の食品用包材、PTP用包材、容器用インナーシール材、エアフィルター用芯材等として使用されるアルミニウム箔積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば焼き菓子用のミニカップの成形材料としては、アルミニウム箔の少なくとも一方の面に、アルミニウム箔の腐食を防止したり表面に傷が付いたりするのを防止するためのコート層を形成してなるアルミニウム箔積層体が使用されている(例えば下記特許文献1参照)。
ここで、コート層は、アルミニウム箔の面にコート剤をコーティングして形成されるが、コート剤に含まれる樹脂成分には、調理時の熱によって溶融しない程度の耐熱性や、溶剤によって容易に剥がれない耐溶剤性が要求されるため、一般にエポキシ樹脂やメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−79934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、メラミン樹脂には未反応のホルムアルデヒドが残留しているため、コート層の樹脂成分としてメラミン樹脂を含んでいるアルミニウム箔積層体から成形されたミニカップの場合、その使用段階において、コート層からホルムアルデヒドが放出するおそれがあった。
人体への影響を考慮すると、ホルムアルデヒドの放出量は極力抑えられるのが好ましく、それには、コート剤の樹脂成分としてメラミン樹脂の配合量を減らすことが考えられる。しかしながら、メラミン樹脂の配合量を減らすと、ミニカップとしての耐熱性や耐溶剤性が低下するおそれがあった。
【0005】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、耐熱性や耐溶剤性を保持しながら、ホルムアルデヒドの放出量が抑えられるアルミニウム箔積層体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0007】
1)アルミニウム箔層と、コート剤をコーティングすることによりアルミニウム箔層の少なくとも一方の面に形成されたコート層とを備えているアルミニウム箔積層体であって、
コート剤が、樹脂成分としてホルムアルデヒド由来の熱硬化性樹脂を含んでいるとともに、ブロックイソシアネートを含んでいる、アルミニウム箔積層体。
【0008】
2)コート剤が、ホルムアルデヒド由来の熱硬化性樹脂以外の樹脂成分として、エポキシ樹脂を含んでいる、上記1)のアルミニウム箔積層体。
【0009】
3)コート層におけるブロックイソシアネートの含有量が0.01〜2重量%である、上記1)または2)のアルミニウム箔積層体。
【0010】
4)コート剤が、さらに耐熱性顔料を含んでいる、上記1)〜3)のいずれか1つのアルミニウム箔積層体。
【発明の効果】
【0011】
上記1)のアルミニウム箔積層体によれば、コート剤にブロックイソシアネートが含まれていることによって、加熱により自己架橋反応を起こし重合することで硬化するため、ホルムアルデヒドを含有するメラミン樹脂等のホルムアルデヒド由来の熱硬化性樹脂の配合量を減らしても、コート層の耐熱性や耐溶剤性が損なわれず、したがって、耐熱性や耐溶剤性を保持しながら、ホルムアルデヒドの放出量を抑えることができる。
ここで、「ホルムアルデヒド由来の熱硬化性樹脂」とは、所定の物質をホルムアルデヒドで架橋させ連結反応させることにより生成した熱硬化性樹脂であって、例えば、メラミン樹脂、フェノール(−ホルムアルデヒド)樹脂、ユリア樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。
【0012】
上記2)のアルミニウム箔積層体によれば、コート剤にエポキシ樹脂が含まれているので、ホルムアルデヒドを含有するメラミン樹脂等のホルムアルデヒド由来の熱硬化性樹脂の配合量を減らしても、コート層の耐熱性を十分に保持することができる。
【0013】
上記3)のアルミニウム箔積層体によれば、コート層におけるブロックイソシアネートの含有量が0.01〜2重量%であるので、以下のような問題が回避される。すなわち、コート層におけるブロックイソシアネートの含有量が0.01重量%未満であると、十分な反応が行われるために必要なブロックイソシアネートが不足している可能性が高く、その結果、コート層の耐熱性や耐溶剤性が低下する。一方、同含有量が2重量%を超えると、ブロックイソシアネートの配合が過剰となり、コストが高くなりすぎてしまう。
【0014】
上記4)のアルミニウム箔積層体によれば、コート剤に含まれる耐熱性顔料によって、コート層表面に所望の色が付与されるので、意匠性が向上し、また、熱や溶剤に対しても色落ちし難いものとなされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の第1の実施形態に係るアルミニウム箔積層体の層構造を示す部分拡大断面図である。
【
図2】この発明の第2の実施形態に係るアルミニウム箔積層体の層構造を示す部分拡大断面図である。
【
図3】この発明の第3の実施形態に係るアルミニウム箔積層体の層構造を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態を、
図1〜
図3を参照して説明する。
【0017】
<第1の実施形態>
図1は、この発明による第1の実施形態のアルミニウム箔積層体の層構造を示したものである。
図1に示すアルミニウム箔積層体(1A)は、焼き菓子や惣菜用のミニカップの成形材料として好適に使用されるものであって、アルミニウム箔層(2)と、コート剤をコーティングすることによりアルミニウム箔層(2)の一方の面(
図1の上面)に形成されたコート層(3)とよりなる。
【0018】
アルミニウム箔層(2)を構成するアルミニウム箔としては、例えば、厚さ5〜150μm程度のJIS H4160で規定されるA1N30などの1000系やA8120、A8079などの8000系のアルミニウム箔が好適に用いられる。
【0019】
コート層(3)は、アルミニウム箔層(2)の両面のうちミニカップの外面となる面に形成される場合と、同内面となる面に形成される場合とがある。ミニカップの外面となる面に形成されたコート層(3)は、アルミニウム箔層(2)の傷などからの表面保護や、例えばアルミニウム以外の金属製(例えばステンレス製)容器などと接触した際に起きる腐食を防止する役割を果たしている。また、ミニカップの内面となる面に形成されたコート
層(3)は、例えば内容物から発生する汁などからのアルミニウム箔層(2)の腐食防止の役割を果たしている。また、コート層(3)には、内容物調理時の加熱によって溶融しない程度の耐熱性が要求されるとともに、溶剤によって容易に剥がれない耐溶剤性が要求される。コート層(3)の厚さは、0.5〜3μm、好ましくは1〜2.5μmとなされる。コート層(3)の厚さが0.5μm未満であると、同層を形成する膜の強度不足や腐食が発生しやすくなり、一方、同厚さが3μmを超えると、容器の成形不良や成形後の割れが起きやすくなり、コストも高くなる。なお、アルミニウム箔層(2)の他面にも、同様のコート層を形成してよい。
コート層(3)を形成するために用いられるコート剤は、樹脂成分としてメラミン樹脂およびエポキシ樹脂を含んでいるとともに、ブロックイソシアネートを含んでいる。コート剤の溶剤以外の成分(固形分成分)の配合比(重量比)は、好適には、メラミン樹脂10〜20、エポキシ樹脂40〜70、ブロックイソシアネート10〜50となされる。また、コート剤は、上記の固形分成分、すなわちコート層(3)(塗膜)形成成分に加えて、耐熱性顔料を含んでいてもよい。その場合、意匠性の効果も発生する。耐熱性顔料としては、例えば、カーボンブラック(黒色)、フロシアニンブルー(青色)、二酸化チタン(白色)等が用いられる。
【0020】
アルミニウム箔層(2)の面へのコート剤のコーティングは、焼付塗装、すなわち、コート剤をアルミニウム箔層(2)の面に塗布した後、所定の焼付温度(100〜300℃程度)で所定時間(5〜30秒程度)加熱することによって行われ、加熱工程でメラミン樹脂やエポキシ樹脂が硬化反応を起こし、同時にブロックイソシアネートが自己架橋反応で重合することで硬化し、コート層(3)を形成する。
こうして形成されたコート層(3)は、耐熱性および耐溶剤性に優れているとともに、ホルムアルデヒドの含有量が例えば0.1重量%未満程度まで減らされたものとなる。
【0021】
<第2の実施形態>
図2は、この発明による第2の実施形態のアルミニウム箔積層体の層構造を示したものである。
図2に示すアルミニウム箔積層体(1B)は、PTP用包材として好適に使用されるものであって、アルミニウム箔層(2)と、コート剤をコーティングすることによりアルミニウム箔層(2)の両面に形成されたコート層(3)とよりなる。
【0022】
アルミニウム箔層(2)を構成するアルミニウム箔としては、例えば、厚さ5〜150μm程度のJIS H4160で規定されるA1N30などの1000系やA8120、A8079などの8000系のアルミニウム箔が好適に用いられる。
【0023】
アルミニウム箔層(2)の両面に形成されているコート層(3)は、それぞれアルミニウム箔層(2)の腐食防止や表面保護の役割を果たしている。各コート層(3)の厚さ、使用するコート剤の配合成分、形成方法等については、第1の実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0024】
上記のアルミニウム箔積層体(1B)によれば、アルミニウム箔層(2)の両面がコート層(3)で覆われているため、優れた耐熱性および耐溶剤性が得られるとともに、PTP包材として使用される際のホルムアルデヒドの放出量が抑えられる。
【0025】
<第3の実施形態>
図3は、この発明による第3の実施形態のアルミニウム箔積層体の層構造を示したものである。
図3に示すアルミニウム箔積層体(1C)は、容器用インナーシール材として好適に使用されるものであって、アルミニウム箔層(2)と、コート剤をコーティングすることによりアルミニウム箔層(2)の片面(
図3の上面)に形成されたコート層(3)と、アルミニウム箔層(2)の他面(
図3の下面)に接着剤層(5)を介して積層されたシーラントフィルム層(4)とよりなる。
【0026】
アルミニウム箔層(2)を構成するアルミニウム箔としては、例えば、厚さ5〜150μm程度のJIS H4160で規定されるA1N30などの1000系やA8120、A8079などの8000系のアルミニウム箔が好適に用いられる。
【0027】
コート層(3)は、アルミニウム箔層(2)の両面のうちインナーシール材の外面(上面)となる面に形成されており、アルミニウム箔層(2)の腐食防止や表面保護の役割を果たしている。同コート層(3)の厚さ、使用するコート剤の配合成分、形成方法等については、第1の実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0028】
シーラントフィルム層(4)は、アルミニウム箔層(2)の両面のうちインナーシール材の内面(下面)となる面に形成されており、容器の開口縁部とのシール部として機能し、また、アルミニウム箔層(2)の腐食防止の役割も果たしている。
シーラントフィルム層(4)を構成するフィルムとしては、例えば、厚さ10〜100μm程度の無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムや低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムなどが用いられる。
アルミニウム箔層(2)とシーラントフィルム層(4)との間に介在されて両者を接合する接着剤層(5)は、例えばポリオレフィン系樹脂接着剤、エポキシ系樹脂接着剤、または酸変性されたポリオレフィン樹脂やエポキシ樹脂による接着剤などによって構成される。接着剤層(5)の厚さは、好ましくは2〜5μm程度となされる。
【0029】
上記のアルミニウム箔積層体(1C)によれば、アルミニウム箔層(2)の両面のうちインナーシール材の外面となる面がコート層(3)で覆われているため、優れた耐熱性および耐溶剤性が得られるとともに、インナーシール材として使用される際のホルムアルデヒドの放出量が抑えられる。
【実施例】
【0030】
次に、この発明の実施例について説明する。
【0031】
<アルミニウム箔積層体の作製>
JIS H4160で分類されるA8021−Oよりなる厚さ50μmのアルミニウム箔を用意した。
そして、上記アルミニウム箔の片面に、以下の表1に示す配合比の固形分成分を有する各コート剤を焼付塗装してコート層を形成することにより、実施例1〜8および比較例1〜4のアルミニウム箔積層体を作製した。
ここで、コート剤の溶媒には、トルエンと酢酸エチルを体積比率6:4で配合した混合液を使用した。コート剤の焼付塗装は、コート剤を塗布後、焼付温度150℃、250℃、300℃の順で5秒ずつ連続して加熱することにより行った。各コート層の厚さは、2μmとした。
【0032】
<アルミニウム箔積層体の検証>
実施例1〜8および比較例1〜4のアルミニウム箔積層体について、ホルムアルデヒド含有量、耐熱性および耐溶剤性の検証を行った。
ホルムアルデヒド含有量(焼付塗装時の加熱による反応後の残量)は、各アルミニウム箔積層体について、JIS KO140−2012に準拠して、ガスクロマトグラフ(アジレントテクノロジー社製、7820AGC system)を用いて測定した。また、これと併せて、ブロックイソシアネート含有量(焼付塗装時の加熱による反応後の残量)を、上記ガスクロマトグラフを用いて測定した。
耐熱性の検証は、まず、各アルミニウム箔積層体を長さ100mm、幅15mmの帯状に切断して試験片を作成し、これらの試験片のコート層表面に、厚さ7μmのアルミニウム箔(A1N30−O)を重ねて、バーシーラーでシールした。シール条件は、エアシリンダー径:50mm、シール圧力:0.3MPa、シール時間:1秒、シール面積:5mm(シールバー幅)×15mm(試験片幅)、シール方向:アルミニウム箔側からの片側シール、を固定条件とした。そして、シール後5秒以内に、アルミニウム箔を試験片のコート層表面から分離し、その際のコート層表面との粘着の有無および変色の有無を目視で確認した。以上の試験を、シール温度を所定温度範囲内で変更して行い、粘着および変色が発生しなかった最高温度を耐熱温度とした。
耐溶剤性の検証は、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)を用意し、脱脂綿をこれに浸してから、クロックメーター(安田精機製、No.416)の端子に固定し、200gの荷重をかけた状態とした。そして、JIS L0849−2013に準拠した条件で、各アルミニウム箔積層体について、コート層表面の摩擦試験を行い、コート層が剥離しない端子往復回数の最大値を耐溶剤性とした。
各評価結果を、以下の表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1から明らかなように、比較例1,2,4のアルミニウム箔積層体では、耐熱性および耐溶剤性については良好な結果が得られたものの、ホルムアルデヒド含有量が多かった。また、比較例3では、ホルムアルデヒド含有量は低かったが、耐溶剤性が大幅に悪化した。
これに対して、実施例1〜
3のアルミニウム箔積層体の場合、ホルムアルデヒド含有量が比較例1,2,4の31〜38%程度まで低くなっており、また、耐熱性および耐溶剤性も良好であった。さらに、コート剤にエポキシ樹脂を加えた実施例
1〜3については、耐熱性が大幅に改善されていた。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明によるアルミニウム箔積層体は、例えば、焼き菓子や惣菜用のミニカップ、バターやクリームチーズ等の食品用包材、PTP用包材、容器用インナーシール材、エアフィルター用芯材等として、好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0036】
(1A)(1B)(1C):アルミニウム箔積層体
(2):アルミニウム箔層
(3):コート層
(4):シーラントフィルム層