特許第6963954号(P6963954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963954
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】湿式不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 13/26 20060101AFI20211028BHJP
   D21B 1/12 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   D21H13/26
   D21B1/12
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-185332(P2017-185332)
(22)【出願日】2017年9月26日
(65)【公開番号】特開2019-60044(P2019-60044A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】重松 俊広
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−159283(JP,A)
【文献】 特開2003−213592(JP,A)
【文献】 特表2009−521615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/12
D21H 13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィブリル化耐熱性繊維を含有してなる湿式不織布の製造方法において、該フィブリル化耐熱性繊維を水中で、高速回転せん断型分散機を使って分散したスラリーを用いて、湿式抄紙法によって湿式不織布を製造し、高速回転せん断型分散機が、高速回転する細かなスリットを持つリング状刃物を構造の一部に有する分散機であることを特徴とする湿式不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィブリル化耐熱性繊維を含有してなる湿式不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱性を有する不織布として、フィブリル化耐熱性繊維を含有してなる湿式不織布が知られている。以下、「フィブリル化耐熱性繊維を含有してなる湿式不織布」を「フィブリル化耐熱性繊維含有不織布」と略記する場合がある。例えば、近年、リチウムイオン電池の用途が、従来からの携帯機器に加え、電気自動車等の用途に拡大している。電気自動車等の用途では、携帯機器と比較して大型のリチウムイオン電池が採用されている。
【0003】
リチウムイオン電池セパレータとしては、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィンからなる多孔性フィルムが多く使用されていたが、大型のリチウムイオン電池では、耐熱性セパレータが使用されている。
【0004】
耐熱性セパレータとしては、フィブリル化耐熱性繊維含有不織布をそのままセパレータとする態様、フィブリル化耐熱性繊維含有不織布を基材とし、該基材と、有機高分子からなる多孔膜、無機粒子を含む多孔膜(塗層)等を組み合わせてセパレータとする態様が知られている。
【0005】
フィブリル化耐熱性繊維含有不織布をそのままセパレータとする態様としては、融点又は炭化温度が300℃以上の耐熱性パルプ繊維(フィブリル化耐熱性繊維)と、融点が200℃以上の熱可塑性繊維とを含有する不織布からなるリチウムイオン二次電池用セパレータ(例えば、特許文献1参照)、少なくとも一部が繊維径1μm以下にフィブリル化された有機繊維(フィブリル化耐熱性繊維)を1種類以上含有し、且つ、フィブリル化されていない繊維0.5dtex以下の有機繊維を1種類以上含有して成る電気化学素子用セパレータ(例えば、特許文献2参照)、融点又は熱分解温度が250℃以上で、少なくとも一部が繊維径1μm以下、かつ、重量平均繊維長が0.2mm〜2mmの範囲にあるフィブリル化高分子(フィブリル化耐熱性繊維)、繊度3.3dtex以下の有機繊維を含有する不織布からなる電気化学素子用セパレータ(例えば、特許文献3参照)が開示されている。
【0006】
フィブリル化耐熱性繊維含有不織布を基材とし、該基材と、有機高分子からなる多孔膜、無機粒子を含む多孔膜(塗層)等を組み合わせてセパレータとする態様において使用される基材として、フィブリル化耐熱性繊維と合成短繊維とを必須成分として含有してなる湿式不織布(例えば、特許文献4参照)が開示されている。
【0007】
合成樹脂短繊維とフィブリル化リヨセル繊維とを必須繊維として含有した不織布からなり、さらに、不織布がフィブリル化耐熱性繊維を含有してなる基材(例えば、特許文献5参照)、配向結晶化ポリエステル系繊維を30質量%以上含有する不織布であり、フィブリル化耐熱性繊維を含むことが更に好ましい基材(例えば、特許文献6参照)が開示されている。
【0008】
特許文献1〜6に開示されている基材では、フィブリル化耐熱性繊維のフィブリル化処理は開示されている。しかしながら、フィブリル化耐熱性繊維の離解方法や分散方法については何ら述べられていない。特に、フィブリル化耐熱性繊維として、機械的せん断力を作用させてフィブリル化処理された耐熱性繊維のスラリーから媒体を除去して粉粒状組成物とした市販品を使用する場合、固形分濃度が20〜35質量%に高められており、通常の離解方法や分散処理では、粉粒状の未離解物が残る問題があった。そして、この粉粒状の未離解物が湿式不織布に含まれた場合、厚みにムラが発生し、無機粒子を含む塗層を設けようとした際に塗層ムラが発生する問題やセパレータと電極との接触が不均一となり、電池特性が悪化する問題が生じる場合があった。また、湿式抄紙法で湿式不織布を製造する場合、湿紙が抄紙ワイヤーからウエット毛布にピックアップされる際、抄紙ワイヤーに粉粒状の未離解物が剥ぎ取られる問題、ウエット毛布やトップ毛布との接触で粉粒状の未離解物が剥ぎ取られる問題、ヤンキードライヤーの表面に粉粒状の未離解物が剥ぎ取られる問題が起こる場合があり、その結果、微小穴が開き、欠点となる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−19191号公報
【特許文献2】国際公開第01/93350号パンフレット
【特許文献3】特開2004−146137号公報
【特許文献4】特開2012−3873号公報
【特許文献5】国際公開第2011/046066号パンフレット
【特許文献6】特開2012−134024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上記実情を鑑みたものであって、均一性に優れ、欠点のない、塗工性に優れた、フィブリル化耐熱性繊維を含有してなる湿式不織布を得ることができる、湿式不織布の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために鋭意研究した結果、下記発明を見出した。
【0012】
(1)フィブリル化耐熱性繊維を含有してなる湿式不織布の製造方法において、該フィブリル化耐熱性繊維を水中で、高速回転せん断型分散機を使って分散したスラリーを用いて、湿式抄紙法によって湿式不織布を製造し、高速回転せん断型分散機が、高速回転する細かなスリットを持つリング状刃物を構造の一部に有する分散機であることを特徴とする湿式不織布の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の湿式不織布の製造方法によれば、均一性に優れ、欠点のない、塗工性に優れた、フィブリル化耐熱性繊維を含有してなる湿式不織布を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の湿式不織布の製造方法は、フィブリル化耐熱繊維を水中で、高速回転せん断型分散機を使って分散したスラリーを用いて、湿式抄紙法によって湿式不織布を製造することを特徴とする。
【0016】
本発明においては、フィブリル化耐熱性繊維を用いる。フィブリル化耐熱性繊維としては、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリテトラフルオロエチレン等の耐熱性樹脂からなるフィブリル化繊維が用いられる。これらの中でも、電解液との親和性が高く、フィブリル化しやすいため、全芳香族ポリアミドが好ましい。
【0017】
フィブリル化耐熱性繊維は、耐熱性繊維をリファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置、高速の回転刃によりせん断力を与える回転式ホモジナイザー、高速の回転する円筒の内刃と固定された外刃との間でせん断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、繊維懸濁液に少なくとも21MPaの圧力差を与えて小径のオリフィスを通過させて高速度とし、これを衝突させて急減速することにより、繊維にせん断力、切断力を加える高圧ホモジナイザー等を用いて処理することによって得ることができる。
【0018】
上記のフィブリル化耐熱性繊維のスラリー濃度は、0.001質量%から2質量%であることが多く、運搬の面から、スラリーから媒体を除去して、濃度アップを図り、粉粒状組成物とすることがある。媒体の除去方法としては、脱液処理、例えば、濾過、圧搾、遠心分離等や、乾燥処理やそれらの組み合わせが挙げられる。
【0019】
このように濃度アップを図り、粉粒状組成物とした場合、フィブリル化耐熱性繊維は数本のフィブリル化耐熱繊維がもつれ合い、固まって、粉粒状態となっている。粉粒状態のまま、水中で長時間分散しても、粉粒状態は解れず、湿式抄紙機で湿式不織布を製造した場合には、大きな欠点となり、湿式不織布の均一性を損ねる。また、湿式不織布と、有機高分子からなる多孔膜、無機粒子を含む多孔膜(塗層)等を組み合わせる場合、塗層ムラ、未塗工部、空隙等が発生する場合があり、加工性を著しく損なう場合がある。
【0020】
本発明では、湿式不織布を製造する場合、フィブリル化耐熱性繊維を水中で、高速回転せん断型分散機を使って分散したスラリーを用いる。本発明において、「高速回転せん断型分散機」とは、分散刃を有して回転するローターと分散刃を有したステーターとの間に、フィブリル化耐熱性繊維を含むスラリーを通過させ、スラリー中のフィブリル化耐熱性繊維にせん断力を与えて分散させる分散機である。具体的な装置としては、シングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナー、コニカルリファイナー等が挙げられる。
【0021】
さらに、均一に効率良く、フィブリル化耐熱性繊維の粉粒状の未離解物を分散させたスラリーを得るためには、高速回転せん断型分散機が、高速回転する細かなスリットを持つリング状刃物を構造の一部に有する高速回転せん断分散機であることが有効である。高速回転する細かなスリットを持つリング状刃物を構造の一部に有する高速回転せん断分散機においては、スリット間で発生する流体力学的な衝撃波が、フィブリル化耐熱性繊維の粉粒状の未離解物に有効に作用する。具体的な装置としては、トップファイナー(相川鉄工製)、VFポンプ(新浜ポンプ製作所製)、マイルダー(太平洋機工製)等が挙げられる。
【0022】
上記分散機を使って、フィブリル化耐熱性繊維の粉粒状の未離解物を分散させたスラリーを得る際には、スラリー濃度、処理時間、分散機のローターの回転数、ステーターとローターとのクリアランス等を調整することによって、フィブリル化耐熱性繊維の分散性を適宜調整することができる。
【0023】
本発明において、湿式不織布は、フィブリル化耐熱性繊維以外の繊維を含んでも良い。フィブリル化耐熱性繊維以外の繊維としては、合成樹脂短繊維、セルロース繊維、セルロース繊維のパルプ化物やフィブリル化物、合成樹脂からなるフィブリッド、合成樹脂からなるパルプ化物、無機繊維等が挙げられる。
【0024】
合成樹脂短繊維としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ジエン、ポリウレタン、フェノール、メラミン、フラン、尿素、アニリン、不飽和ポリエステル、フッ素、シリコーン、これらの誘導体等の合成樹脂からなる、フィブリル化されていない短繊維が挙げられる。無機繊維としては、ガラス、アルミナ、シリカ、セラミックス、ロックウール等が挙げられる。セルロース繊維は、天然セルロース、再生セルロースのいずれでも良い。フィブリル化耐熱性繊維以外の繊維を含むことによって、湿式不織布の引張強度や突刺強度を強くする。
【0025】
合成樹脂短繊維は、単一の樹脂からなる繊維(単繊維)であっても良いし、2種以上の樹脂からなる複合繊維であっても良い。また、本発明の湿式不織布に含まれる合成樹脂短繊維は、1種でも良いし、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。複合繊維としては、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型が挙げられる。
【0026】
湿式不織布に用いる繊維の繊度は、0.01dtex以上0.6dtex以下が好ましく、0.02dtex以上0.3dtex以下がより好ましい。湿式不織布に用いる繊維の繊度が0.6dtexを超えた場合、厚さ方向における繊維本数が少なくなるため、湿式不織布の細孔径分布が広くなる。また、厚みを薄くしにくくなり、強度特性が低下しやすくなる。湿式不織布に用いる繊維の繊度が0.01dtex未満の場合、繊維が非常に高価になり、繊維の安定製造が困難になる場合や、湿式抄紙法により湿式不織布を製造する場合、脱水性が低下する場合がある。
【0027】
湿式不織布に用いる繊維の繊維長としては、1mm以上10mm以下が好ましく、1mm以上5mm以下がより好ましい。繊維長が10mmを超えた場合、地合不良となることがある。一方、繊維長が1mm未満の場合、湿式不織布の機械的強度が低くなって、塗層を形成する際に湿式不織布が破損する場合がある。
【0028】
本発明の湿式不織布は、湿式抄紙法で製造される。湿式抄紙法では、まず、フィブリル化耐熱性繊維と、場合によって、その他の併用する繊維とを均一に水中に混合分散させてスラリーとし、その後、スクリーン(異物、塊等除去)等の工程を経て、最終の繊維濃度が0.01〜0.50質量%に調整されたスラリーを得る。該スラリーが抄紙機で抄き上げられ、湿紙が得られる。繊維の分散性を均一にするために、工程中で分散剤、消泡剤、親水剤、高分子粘剤、離型剤等の薬品を添加する場合もある。
【0029】
抄紙機としては、例えば、長網、円網、傾斜ワイヤー等の抄紙網を単独で使用した抄紙機、同種又は異種の2以上の抄紙網がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機等を使用することができる。また、湿式不織布が2層以上の多層構造の場合には、各々の抄紙機で抄き上げた湿紙を積層する抄き合わせ法や、一方の層を形成した後に、該層上に繊維を分散したスラリーを流延して積層とする流延法等で、湿式不織布を製造することができる。繊維を分散したスラリーを流延する際に、先に形成した層は湿紙状態であっても、乾燥状態であってもいずれでも良い。また、2枚以上の乾燥状態の層を熱融着させて、多層構造の湿式不織布とすることもできる。
【0030】
本発明において、湿式不織布が多層構造である場合、各層の繊維配合が同一である多層構造であっても良く、各層の繊維配合が異なっている多層構造であっても良い。多層構造である場合、各層の坪量が下がることにより、スラリーの繊維濃度を下げることができるため、湿式不織布の地合が良くなり、その結果、湿式不織布の地合の均一性が向上する。また、各層の地合が不均一であった場合でも、積層することで補填できる。さらに、抄紙速度を上げることができ、操業性が向上するという効果も得られる。
【0031】
湿式抄紙法では、抄紙網で製造された湿紙を、ヤンキードライヤー、エアードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等で乾燥することによって、シート状の湿式抄紙不織布が得られる。湿紙の乾燥の際に、ヤンキードライヤー等の熱ロールに密着させて熱圧乾燥させることによって、密着させた面の平滑性が向上する。熱圧乾燥とは、タッチロール等で熱ロールに湿紙を押しつけて乾燥させることを言う。熱ロールの表面温度は、100〜180℃が好ましく、100〜160℃がより好ましく、110〜160℃がさらに好ましい。圧力は、好ましくは50〜1000N/cmであり、より好ましくは100〜800N/cmである。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例において百分率(%)及び部は、断りのない限り全て質量基準である。また、塗工量は乾燥塗工量である。なお、実施例1及び2は参考例である。
【0033】
実施例1〜6及び比較例1〜4
(フィブリル化耐熱性繊維の分散処理)
市販で入手可能なフィブリル化耐熱性繊維(ダイセルファインケム社製、ティアラ(登録商標)KY−400Sと帝人社製、トワロン(登録商標)1094)を表1記載の条件、装置で分散処理を行い、フィブリル化耐熱性繊維のスラリーを得た。
【0034】
【表1】
【0035】
表1記載の条件で分散処理してスラリーとしたフィブリル化耐熱性繊維4.0質量部と繊度0.06dtex、繊維長3mmの配向結晶化ポリエチレンテレフタレート(PET)系合成樹脂短繊維56.0質量部と繊度0.2dtex、繊維長3mmの単一成分型バインダー用未延伸PET系合成樹脂短繊維(軟化点120℃、融点230℃)40.0質量部とを、パルパーにより水中で分散し、濃度0.1質量%の均一な抄紙スラリーを調製し、傾斜型抄紙機を用いて湿紙ウェブを得て、表面温度135℃のシリンダードライヤーによって乾燥し、シートを得た。得られたシートを、片方のロールがクロムメッキされた鋼製ロール、他方のロールが硬度ショアーD92の樹脂ロール、鋼製ロールの表面温度が195℃、線圧が100kN/mの熱カレンダー装置により、カレンダー処理し、坪量が10g/m、厚さ15μmの実施例1〜6と比較例1〜2の湿式不織布を得た。
【0036】
実施例及び比較例で製造した湿式不織布に対して、以下の評価を行い、結果を表2に示した。
【0037】
(欠点数評価)
20cm×50cmの湿式不織布を透過光で観察し、サンプル中に存在する未離解繊維の数をカウントし、単位平米当たりの欠点数に換算した。
【0038】
(塗工性評価)
D50粒子径0.9μm、比表面積5.5m/gのベーマイト100部を、その1質量%水溶液の25℃における粘度が200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.3%水溶液120部に混合し十分撹拌し、次いで、その1質量%水溶液の25℃における粘度が7000mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.5%水溶液300部、スチレンブタジエンゴム(SBR)系バインダー(JSR株式会社製、商品名:TRD2001)(固形分濃度48%)10部を混合、撹拌して塗液を調製した。前記湿式不織布の片面上に、ワイヤーバーにて塗工量12g/mとなるように塗液を塗工・乾燥し、塗工斑があるかどうか確認した。
【0039】
【表2】
【0040】
実施例1及び2と比較例1〜4とを比較することでフィブリル化耐熱性繊維を水中で、高速回転せん断型分散機を使って分散したスラリーを用いて、湿式抄紙法によって湿式不織布を製造することにより、欠点数が少なく、均一性に優れ、塗工性に優れたフィブリル化耐熱性繊維を含む湿式不織布を提供できることが判る。
【0041】
実施例1及び2と実施例3〜6とを比較することで、高速回転せん断型分散機が、高速回転する細かなスリットを持つリング状刃物を構造の一部に有する分散機であることで、フィブリル化耐熱性繊維の粒状未離解物をより効率良く、より均一に分散することができる。そして、欠点数がより少なく、均一性により優れ、塗工性により優れた湿式不織布を提供することができることが判る。
【0042】
実施例3及び4と実施例5及び6とを比較することで、高速回転せん断型分散機が、高速回転する細かなスリットを持つリング状刃物を構造の一部に有する分散機であることで、処理濃度が高い場合においても、フィブリル化耐熱性繊維を分散することができる。そして、欠点数が少なく、均一性に優れ、塗工性に優れた湿式不織布を提供することができることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の湿式不織布の製造方法で得られた湿式不織布は、電池用セパレータ、濾材、ワイパー、絶縁紙等に好適に使用できる。