(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963961
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】作業車両及び作業車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20211028BHJP
F02D 29/00 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
E02F9/20 C
F02D29/00 B
F02D29/00 C
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-198234(P2017-198234)
(22)【出願日】2017年10月12日
(65)【公開番号】特開2019-73851(P2019-73851A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】二宮 清孝
(72)【発明者】
【氏名】大浅 貴央
【審査官】
湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−253436(JP,A)
【文献】
特開平9−133105(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/148311(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
F02D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に取り付けられる作業機と、
前記作業機を操作するための操作装置と、
前記操作装置の操作量に応じた駆動速度で前記作業機を駆動させるコントローラと、
入力装置と
を備え、
前記コントローラは、前記操作装置の操作中に前記入力装置の入力を受け付けた場合、前記操作装置の操作量に応じて設定される駆動速度で前記作業機を所定位置まで自動的に駆動させる自動駆動制御を実行する、
作業車両。
【請求項2】
前記入力装置は、前記自動駆動制御の実行指示を前記コントローラに出力可能であり、
前記コントローラは、前記操作装置の操作中に前記入力装置より前記実行指示の入力を受け付けた場合、前記自動駆動制御を実行する、
請求項1に記載作業車両。
【請求項3】
前記操作装置は、中立位置を含む中立領域と、前記中立領域より操作量の多い中間領域とに操作可能であり、
前記コントローラは、前記操作装置が前記中間領域に位置するときに前記入力装置の入力を受け付けた場合、前記自動駆動制御を実行する、
請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記操作装置はさらに、前記中間領域より操作量の多い自動駆動制御強制実行領域に操作可能であり、
前記コントローラは、前記操作装置が前記自動駆動制御強制実行領域に位置するときに前記入力装置の入力を受け付けた場合、最高駆動速度で前記自動駆動制御を実行する、
請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記コントローラは、前記操作装置が前記中立領域に位置するときに前記入力装置の入力を受け付けた場合、前記自動駆動制御を実行しない、
請求項3又は4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記コントローラは、前記自動駆動制御の実行中、前記入力装置の入力を受け付けた場合、前記自動駆動制御を終了させる、
請求項1乃至5のいずれかに記載の作業車両。
【請求項7】
前記コントローラは、前記自動駆動制御の実行中、前記操作装置が中立位置を含む中立領域内に移動した後に前記中立領域外に移動した場合、前記自動駆動制御を終了させる、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項8】
前記作業機を駆動させる作業機アクチュエータをさらに備え、
前記所定位置は、前記作業機アクチュエータの最大動作位置又は最小動作位置である、
請求項1乃至7のいずれかに記載の作業車両。
【請求項9】
前記作業機を駆動させる作業機アクチュエータを備え、
前記所定位置は、前記作業機アクチュエータの最大動作位置と最小動作位置との間において予め設定された位置である、
請求項1乃至7のいずれかに記載の作業車両。
【請求項10】
前記作業機は、前記車体に対して揺動可能に取り付けられたブームと、前記ブームに対して揺動可能に取り付けられたバケットとを有し、
前記コントローラは、前記ブームの上昇及び下降の少なくとも一方において前記自動駆動制御を実行する、
請求項1乃至9のいずれかに記載の作業車両。
【請求項11】
前記作業機は、前記車体に対して揺動可能に取り付けられたブームと、前記ブームに対して揺動可能に取り付けられたバケットとを有し、
前記コントローラは、前記バケットのダンプ及びチルトの少なくとも一方において前記自動駆動制御を実行する、
請求項1乃至9のいずれかに記載の作業車両。
【請求項12】
エンジンの回転数を制御するためのアクセルペダルをさらに備え、
前記コントローラは、前記自動駆動制御の実行中、前記アクセルペダルが踏み込まれた場合、前記アクセルペダルの踏み込み量に応じて、前記駆動速度を増大させる、
請求項1乃至11のいずれかに記載の作業車両。
【請求項13】
車体に取り付けられる作業機を操作するための操作装置が操作される操作工程と、
入力装置の入力を受付ける第1受付け工程と、
前記操作装置の操作量に応じて設定される駆動速度で前記作業機を所定位置まで自動的に駆動させる自動駆動制御を実行する実行工程と、
を備える作業車両の制御方法。
【請求項14】
前記第1受付け工程では、前記入力装置より前記自動駆動制御の実行指示の入力を受け付ける、
請求項13に記載の作業車両の制御方法。
【請求項15】
前記操作工程において、前記操作装置は、中立位置を含む中立領域より操作量の多い中間領域に位置する、
請求項13又は14に記載の作業車両の制御方法。
【請求項16】
前記操作工程において、前記操作装置が、前記中間領域より操作量の多い自動駆動制御強制実行領域に位置する場合、前記実行工程では、最高駆動速度で前記自動駆動制御を実行する、
請求項15に記載の作業車両の制御方法。
【請求項17】
前記操作工程において、前記操作装置が、前記中立領域に位置する場合、前記実行工程では、前記自動駆動制御を実行しない、
請求項15又は16に記載の作業車両の制御方法。
【請求項18】
前記実行工程の後、前記入力装置の入力を受け付ける第2受付け工程と、
前記自動駆動制御を終了させる終了工程と、
をさらに備える請求項13乃至17のいずれかに記載の作業車両の制御方法。
【請求項19】
前記実行工程の後、前記操作装置が中立位置を含む中立領域内に移動した後に前記中立領域外に移動する工程と、
前記自動駆動制御を終了させる終了工程と、
をさらに備える請求項13に記載の作業車両の制御方法。
【請求項20】
前記実行工程において、前記所定位置は、前記作業機を駆動させる作業機アクチュエータの最大動作位置又は最小動作位置である、
請求項13乃至19のいずれかに記載の作業車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両及び作業車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホイールローダ及びブルドーザなどの作業車両では、作業機を所定位置まで繰り返し操作することを容易かつ正確に行うことを目的として、作業機を所定位置まで自動的に駆動させる自動駆動制御(いわゆる、デテント制御)が行われている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の自動駆動制御は、作業機の操作レバーを最大移動位置まで傾動させた後に中立位置まで戻すことによって実行開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−133105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の自動駆動制御では、作業機が常に最高駆動速度で駆動されてしまうため、オペレータは所望の駆動速度で作業機を駆動させることができない。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、所望の駆動速度で作業機を駆動可能な自動駆動制御を実行する作業車両及び作業車両の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業車両は、車体と、車体に取り付けられる作業機と、作業機を操作するための操作装置と、操作装置の操作量に応じた駆動速度で作業機を駆動させるコントローラと、入力装置とを備える。コントローラは、操作装置の傾動中に入力装置の入力を受け付けた場合、操作装置の操作量に応じて設定される駆動速度で自動駆動制御を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所望の駆動速度で作業機を駆動可能な自動駆動制御を実行する作業車両及び作業車両の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】操作レバーの傾動量とブームの駆動速度との関係を示すグラフ
【
図4】ブームの自動駆動制御を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る「自動駆動制御」が適用された「作業車両」の一例について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0011】
例えば、以下の説明では、本発明に係る自動駆動制御が適用された作業車両として、バケットを備えるホイールローダを例に挙げて説明するが、本発明に係る自動駆動制御は、作業車両に広く適用可能である。
【0012】
作業車両としては、ホイールローダのほか、ブルドーザ、モータグレーダ、ダンプトラックなどが挙げられる。また、作業車両は、バケットのほかフォークなどのアタッチメントを作業機として備えていてもよい。
【0013】
本明細書において、「前」は、作業車両の前進方向を示す用語であり、「後」は作業車両の後退方向を示す用語である。また、「左」「右」は作業車両が前進しているときの進行方向を基準とする用語である。
【0014】
(ホイールローダ1)
図1は、本実施形態に係るホイールローダ1を示す側面図である。
【0015】
ホイールローダ1は、車体2、作業機5、前輪6F、後輪6R、運転室7、ブームシリンダ9、及びバケットシリンダ10を備える。
【0016】
車体2には、作業機5、前輪6F、後輪6R、及び運転室7が取り付けられる。運転室7内には、オペレータが着座する運転席DSと、作業機5を操作するための操作レバーCL(操作装置の一例)とが配置される。
【0017】
作業機5は、車体2の前方に取り付けられる。作業機5は、ブーム3とバケット4とを有する。ブーム3は、車体2から前方に向かって延びる。ブーム3は、上下揺動可能に車体2によって支持される。ブーム3の基端部には、ブーム角検出センサ3aが配置される。ブーム角検出センサ3aは、水平方向に対するブーム3の角度を検出する。本実施形態では、ブーム3を所定位置まで自動的に駆動させる自動駆動制御が実行される。ブーム3の自動駆動制御については後述する。
【0018】
バケット4は、開口部4Hと爪4Cとを有する。バケット4は、爪4Cが土砂又は砕石等の積載物をすくい取る。爪4Cがすくい取った積載物は、開口部4Hからバケット4の内部に入る。バケット4は、ブーム3の先端部に取り付けられる。バケット4は、前後に傾動可能にブーム3によって支持される。バケット4が後傾方向に回動されることをチルトと称し、バケット4が前傾方向に回動されることをダンプと称する。
【0019】
前輪6Fと後輪6Rは、路面Rに接地する。前輪6Fと後輪6Rとが路面R上で回転することにより、ホイールローダ1は走行する。前輪6Fと後輪6Rとの間で車体2が屈曲することによって、ホイールローダ1は操舵される。
【0020】
ブームシリンダ9は、車体2とブーム3とに連結される。ブーム3は、ブームシリンダ9が伸縮することによって上下揺動する。バケットシリンダ10は、車体2とベルクランク11の上端部とに連結される。ベルクランク11は、ブーム3に固定された支持部材12の先端部に回動可能に支持される。ベルクランク11の下端部は、連結部材13を介してバケット4に連結される。バケット4は、バケットシリンダ10が伸縮することによって、ブーム3に支持された部分を中心として前後に傾動する。支持部材12の先端部には、バケット角検出センサ4aが配置される。バケット角検出センサ4aは、水平方向に対するバケット4の底面の角度を検出する。
【0021】
操作レバーCLは、ブームシリンダ9の伸縮を制御することによってブーム3を操作するために用いられる。本実施形態では、操作レバーCLを前方に傾動させるとブーム3は下降し、操作レバーCLを後方に傾動させるとブーム3は上昇する。また、操作レバーCLは、バケットシリンダ10の伸縮を制御することによってバケット4を操作するためにも用いられる。本実施形態では、操作レバーCLを左方に傾動させるとバケット4はダンプし、操作レバーCLを右方に傾動させるとバケット4はチルトする。
【0022】
(ホイールローダ1の制御系統)
図2は、ホイールローダ1の動作を制御する制御系統1aを示すブロック図である。
【0023】
ホイールローダ1の制御系統1aは、作業機ポンプ20、ブーム操作弁21、バケット操作弁22、パイロットポンプ23、作業機電子制御弁24、及びコントローラ25を備える。
【0024】
作業機ポンプ20は、ホイールローダ1に搭載される動力発生源としてのエンジン26によって駆動される。作業機ポンプ20は、ブーム操作弁21及びバケット操作弁22のそれぞれに作動油を吐出する。
【0025】
ブーム操作弁21及びバケット操作弁22は、それぞれ油圧パイロット式の操作弁である。ブーム操作弁21はブームシリンダ9に接続され、バケット操作弁22はバケットシリンダ10に接続される。
【0026】
ブーム操作弁21は、ブーム3を上昇させる位置、ブーム3を停止させる位置、及びブーム3を下降させる位置に移動可能な3位置切換弁である。バケット操作弁22は、バケット4をダンプさせる位置、バケット4を停止させる位置、及びバケット4をチルトさせる位置に移動可能な3位置切換弁である。
【0027】
ブーム操作弁21及びバケット操作弁22それぞれのパイロット受圧部は、作業機電子制御弁24を介してパイロットポンプ23に接続される。パイロットポンプ23は、エンジン26によって駆動される。パイロットポンプ23は、作業機電子制御弁24を介してブーム操作弁21及びバケット操作弁22それぞれのパイロット受圧部に対して、パイロット圧力の作動油を供給する。
【0028】
作業機電子制御弁24は、ブーム下降制御弁24a、ブーム上昇制御弁24b、バケットダンプ制御弁24c、及びバケットチルト制御弁24dを有する。ブーム下降制御弁24a及びブーム上昇制御弁24bは、ブーム操作弁21の一対のパイロット受圧部それぞれに接続される。バケットダンプ制御弁24c及びバケットチルト制御弁24dは、バケット操作弁22の一対のパイロット受圧部それぞれに接続される。ブーム下降制御弁24aのソレノイド指令部24e、ブーム上昇制御弁24bのソレノイド指令部24f、バケットダンプ制御弁24cのソレノイド指令部24g、及びバケットチルト制御弁24dのソレノイド指令部24hのそれぞれには、コントローラ25からの指令信号が入力される。
【0029】
ブーム操作弁21、ブーム下降制御弁24a、ブーム上昇制御弁24b、及びブームシリンダ9は、ブーム3を上下揺動(昇降)させるブーム駆動部として機能する。バケット操作弁22、バケットダンプ制御弁24c、バケットチルト制御弁24d、及びバケットシリンダ10は、バケット4を傾動(チルト又はダンプ)させるバケット駆動部として機能する。
【0030】
コントローラ25は、例えば、コンピュータである。コントローラ25は、CPU(Central Processing Unit)等の処理部と、ROM(Read Only Memory)等の記憶部とを含む。コントローラ25は、コンピュータプログラムに記述された各種の命令を逐次実行することにより、作業機5の動作を制御する。
【0031】
コントローラ25は、ブームレバーポテンショメータ27、バケットレバーポテンショメータ28、自動駆動制御ボタン29、ブーム角検出センサ3a、及びバケット角検出センサ4aに接続される。
【0032】
ブームレバーポテンショメータ27は、操作レバーCLに設けられる。ブームレバーポテンショメータ27は、操作レバーCLの前後方向における操作量を検出する。バケットレバーポテンショメータ28は、操作レバーCLに設けられる。バケットレバーポテンショメータ28は、操作レバーCLの左右方向における操作量を検出する。
【0033】
コントローラ25は、操作レバーCLが前方に傾動された場合、ブーム3を上方に揺動させる。コントローラ25は、操作レバーCLが後方に傾動された場合、ブーム3を下方に揺動させる。これらの場合、コントローラ25は、
図3に示すように、操作レバーCLの前後への傾動量に応じた駆動速度でブーム3を駆動させる。
【0034】
図3に示す例において、操作レバーCLは、前傾する場合、中立位置を含む第1中立領域と、第1中立領域より操作量が多く、第1中立領域に続く第1中間領域と、第1中間領域より操作量が多く、第1中間領域に続く第1自動駆動制御強制実行領域とに順次傾動可能である。第1中間領域と第1自動駆動制御強制実行領域との境界では、操作レバーCLにクリック感(反発感)を設けることが好ましい。第1中立領域は、いわゆる不感帯領域である。操作レバーCLが第1中立領域に位置する場合、コントローラ25は、ブーム3を駆動させない。操作レバーCLが第1中立領域に位置する場合、コントローラ25は、後述する自動駆動制御ボタン29より自動駆動制御の実行指示の入力を受け付けたとしても、ブーム3の自動駆動制御を実行しない。操作レバーCLが第1中間領域に位置する場合、コントローラ25は、ブーム3を駆動させる。操作レバーCLが第1中間領域に位置する場合、コントローラ25は、操作レバーCLの操作量が大きくなるほど、ブーム3の駆動速度(上昇速度)を速くする。操作レバーCLが第1自動駆動制御強制実行領域に位置する場合、コントローラ25は、自動駆動制御ボタン29より自動駆動制御の実行指示の入力を受け付けたか否かに関わらず、上方に向けてブーム3の自動駆動制御を実行する。具体的には、操作レバーCLが第1自動駆動制御強制実行領域に入ると、コントローラ25は、ブーム3を所定の上昇位置(所定位置の一例)まで自動的に上昇させる。この際、コントローラ25は、ブーム3を最高駆動速度で上昇させる。コントローラ25は、ブーム角検出センサ3aからの出力値に基づいて、ブーム3が上昇位置に到達したことを検出すると、ブーム3の上昇を停止させる。ブーム3の上昇位置は、予め任意の位置に設定することができる。ブーム3の上昇位置は、ブームシリンダ9の最大動作位置であってもよいし、ブームシリンダ9の最大動作位置と最小動作位置との間の位置であってもよい。
【0035】
また、
図3に示す例において、操作レバーCLは、後傾する場合、中立位置を含む第2中立領域と、第2中立領域に続く第2中間領域と、第2中間領域に続く第2自動駆動制御強制実行領域とに順次傾動可能である。第2中間領域と第2自動駆動制御強制実行領域との境界では、操作レバーCLにクリック感(反発感)を設けることが好ましい。第2中立領域は、いわゆる不感帯領域である。操作レバーCLが第2中立領域に位置する場合、コントローラ25は、ブーム3を駆動させない。操作レバーCLが第2中立領域に位置する場合、コントローラ25は、後述する自動駆動制御ボタン29より自動駆動制御の実行指示の入力を受け付けたとしても、ブーム3の自動駆動制御を実行しない。操作レバーCLが第2中間領域に位置する場合、コントローラ25は、操作レバーCLの操作量が大きくなるほど、ブーム3の駆動速度(下降速度)を速くする。操作レバーCLが第2自動駆動制御強制実行領域に位置する場合、コントローラ25は、自動駆動制御ボタン29が押されたか否かに関わらず、下方に向けてブーム3の自動駆動制御を実行する。具体的には、操作レバーCLが第2自動駆動制御強制実行領域に入ると、コントローラ25は、ブーム3を所定の下降位置(所定位置の一例)まで自動的に下降させる。この際、コントローラ25は、ブーム3を最高駆動速度で下降させる。コントローラ25は、ブーム角検出センサ3aからの出力値に基づいて、ブーム3が下降位置に到達したことを検出すると、ブーム3の下降を停止させる。ブーム3の下降位置は、予め任意の位置に設定することができる。ブーム3の下降位置は、ブームシリンダ9の最小動作位置であってもよいし、ブームシリンダ9の最大動作位置と最小動作位置との間の位置であってもよい。ただし、ブーム3の下降位置は、上述した上昇位置よりも下方に設定される。
【0036】
また、コントローラ25は、操作レバーCLが左方に傾動された場合、バケット4をダンプさせる。コントローラ25は、操作レバーCLが右方に傾動された場合、バケット4をチルトさせる。これらの場合、コントローラ25は、
図3と同様のグラフに基づいて、操作レバーCLの左右への傾動量に応じた駆動速度でバケット4を駆動させる。
【0037】
自動駆動制御ボタン29は、操作レバーCLの上端部に設けられる。オペレータは、操作レバーCLを前後左右に掌で操作しながら、自動駆動制御ボタン29を指で押下することができる。自動駆動制御ボタン29は、オペレータが自動駆動制御の実行指示及び終了指示を入力するための「入力装置」の一例である。自動駆動制御ボタン29は、ブーム3の自動駆動制御が実行されていない場合に押下されると、コントローラ25にブーム3の自動駆動制御の実行指示を出力する。また、自動駆動制御ボタン29は、ブーム3の自動駆動制御が実行されている場合に押下されると、コントローラ25にブーム3の自動駆動制御の終了指示を出力する。
【0038】
本実施形態において、コントローラ25は、操作レバーCLが前方に傾動されているときに自動駆動制御ボタン29より実行指示の入力を受け付けた場合、操作レバーCLの傾動量に応じて設定される上昇速度で自動駆動制御を実行する。具体的には、コントローラ25は、操作レバーCLが
図3に示される第1中間領域に位置するときに、自動駆動制御ボタン29より自動駆動制御の実行指示の入力を受け付けると、ブーム3を上述した上昇位置まで自動的に上昇させる。この際、コントローラ25は、
図3に示すグラフに従って、操作レバーCLの傾動量に応じた上昇速度を設定し、ブーム3が上昇位置に到達するまでその上昇速度を維持する。コントローラ25は、ブーム操作弁21の開度、作業機ポンプ20の回転数、及び作業機ポンプ20の容量のそれぞれを調整することによって、ブーム3の上昇速度を維持することができる。コントローラ25は、ブーム角検出センサ3aからの出力値に基づいて、ブーム3が上昇位置に到達したことを検出すると、ブーム3の上昇を停止させる。
【0039】
同様に、コントローラ25は、操作レバーCLが後方に傾動されているときに自動駆動制御ボタン29より実行指示の入力を受け付けた場合、操作レバーCLの傾動量に応じて設定される下降速度で自動駆動制御を実行する。具体的には、コントローラ25は、操作レバーCLが
図3に示される第2中間領域に位置するときに、自動駆動制御ボタン29より自動駆動制御の実行指示の入力を受け付けると、ブーム3を上述した下降位置まで自動的に下降させる。この際、コントローラ25は、
図3に示すグラフに従って、操作レバーCLの傾動量に応じた下降速度を設定し、ブーム3が下降位置に到達するまでその下降速度を維持する。コントローラ25は、ブーム操作弁21の開度、作業機ポンプ20の回転数、及び作業機ポンプ20の容量のそれぞれを調整することによって、ブーム3の下降速度を維持することができる。コントローラ25は、ブーム角検出センサ3aからの出力値に基づいて、ブーム3が下降位置に到達したことを検出すると、ブーム3の下降を停止させる。
【0040】
このように、本実施形態に係るコントローラ25は、操作レバーCLが傾動されているときに自動駆動制御ボタン29より実行指示の入力を受け付けると、操作レバーCLの傾動量に応じて設定した駆動速度で自動駆動制御を実行する。そのため、例えばブーム3を微速で自動駆動制御したい場合には、オペレータが自ら設定した所望の速度で自動駆動制御を実行することができる。
【0041】
ここで、オペレータが自動駆動制御ボタン29を押下してブーム3の自動駆動制御を開始した後、操作レバーCLから手を離すと、操作レバーCLは中立位置に戻るように構成されている。操作レバーCLが中立位置に戻った後、オペレータが操作レバーCLを第1又は第2中立領域外に移動させた場合、コントローラ25は、ブーム3が所定位置に到達したか否かに関わらず、ブーム3の自動駆動制御を終了させる。これによって、ブーム3の自動駆動制御の実行中であっても、オペレータ自身による操作を優先させることができるため、オペレータ自身の判断によって自動駆動制御を速やかに中断できる。
【0042】
また、コントローラ25は、自動駆動制御の実行中、自動駆動制御ボタン29より終了指示(すなわち、2回目の押下)の入力を受け付けた場合、自動駆動制御を終了させる。これによって、ブーム3の自動駆動制御の実行中であっても、オペレータ自身の判断によって自動駆動制御を速やかに中断できる。
【0043】
(ブーム3の自動駆動制御)
次に、コントローラ25によるブーム3の自動駆動制御について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、ブーム3の自動駆動制御を説明するためのフローチャートである。
【0044】
ステップS1において、コントローラ25は、自動駆動制御ボタン29より実行指示の入力を受け付けたか否かを判定する。自動駆動制御ボタン29より実行指示の入力を受け付けていない場合、処理は終了する。自動駆動制御ボタン29より実行指示の入力を受け付けた場合、処理はステップS2に進む。
【0045】
ステップS2において、コントローラ25は、操作レバーCLが傾動されているか否か判定する。具体的には、コントローラ25は、操作レバーCLが第1又は第2中間領域に位置するか否かを判定する。操作レバーCLが第1又は第2中間領域に位置しない場合、処理は終了する。操作レバーCLが第1又は第2中間領域に位置する場合、処理はステップS3に進む。
【0046】
ステップS3において、コントローラ25は、
図3のグラフを参照して、ブーム3の自動駆動制御における駆動速度(上昇又は下降速度)を設定する。
【0047】
ステップS4において、コントローラ25は、ブーム3の駆動速度が所望値になるよう作業機電子制御弁24に指令値を出力する。
【0048】
ステップS5において、コントローラ25は、ブーム3が所定位置(上昇又は下降位置)に達したか否かを判定する。ブーム3が所定位置に達した場合、処理はステップS8に進む。ブーム3が所定位置に達していない場合、処理はステップS6に進む。
【0049】
ステップS6において、コントローラ25は、自動駆動制御ボタン29より終了指示の入力を受け付けたか否かを判定する。自動駆動制御ボタン29が終了指示を受け付けていない場合、処理はステップS7に進む。自動駆動制御ボタン29より実行指示の入力を受け付けた場合、処理はステップS8に進む。
【0050】
ステップS7において、コントローラ25は、操作レバーCLが中立位置に戻された後、操作レバーCLが第1又は第2中立領域外に移動したか否かを判定する。操作レバーCLが第1又は第2中立領域外に移動しない場合、処理はステップS4に戻って、ブーム3の自動駆動制御が継続される。操作レバーCLが第1又は第2中立領域外に移動しない場合、処理はステップS8に進む。
【0051】
ステップS8において、コントローラ25は、作業機電子制御弁24への指令値の出力を停止する。これにより、ブーム3の自動駆動制御は終了する。
【0052】
(他の実施形態)
上記実施形態では、本発明に係る「自動駆動制御」をブーム3の上昇及び下降の両方において実行することとしたが、上昇及び下降のいずれか一方のみにおいて実行することとしてもよい。
【0053】
上記実施形態では、本発明に係る「自動駆動制御」をブーム3において実行することとしたが、本発明に係る「自動駆動制御」は、バケット4のダンプ及びチルトの少なくとも一方において実行することもできる。また、本発明に係る「自動駆動制御」は、バケット4の代わりに取り付けられるフォークなどの他のアタッチメントにおいて実行することもできる。さらに、本発明に係る「自動駆動制御」は、ブルドーザが備えるブレード、モータグレーダが備えるブレード、ダンプトラックが備えるベッセルにおいて実行することもできる。
【0054】
上記実施形態において、コントローラ25は、ブーム3の自動駆動制御において、
図3に示すグラフに従って設定された駆動速度を維持することとしたが、これに限られるものではない。コントローラ25は、自動駆動制御の実行中、エンジン26の回転数を制御するためのアクセルペダルがオペレータによって踏み込まれた場合、アクセルペダルの踏み込み量に応じて駆動速度を増大させてもよい。これにより、自動駆動制御におけるブーム3の駆動速度が遅いとオペレータが感じた場合に、自動駆動制御を再度設定することなく、ブーム3の駆動速度を所望速度まで簡便に上昇させることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ホイールローダ
1a 制御系統
2 車体
3 ブーム
3a ブーム角検出センサ
4 バケット
4a バケット角検出センサ
5 作業機
9 ブームシリンダ
10 バケットシリンダ
20 作業機ポンプ
21 ブーム操作弁
22 バケット操作弁
23 パイロットポンプ
24 作業機電子制御弁
25 コントローラ
26 エンジン
27 ブームレバーポテンショメータ
28 バケットレバーポテンショメータ
29 自動駆動制御ボタン(入力装置の一例)
CL 操作レバー