(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一態様は、容器の壁に設けられ、前記容器の内圧上昇により破裂して開口する破裂弁であって、それに沿って壁厚を減じた破断線を備え、前記破断線が、開口領域の外縁を画定する外縁線と、前記開口領域を分割する複数の分割線とを有し、前記外縁線が、第1方向に延びるよう断続的に形成され、第1方向と直交する第2方向に間隔を空けて設けられた第1ベースラインおよび第2ベースラインと、前記第1ベースラインの破断部に形成され、前記第1ベースラインから前記第2ベースラインに向かって延びる第1支持部形成ラインと、前記第2ベースラインの破断部に形成され、前記第2ベースラインから前記第1ベースラインに向かって延びる第2支持部形成ラインとを有する破裂弁である。
【0013】
破裂弁は、開口領域の外縁を画定する外縁線が、断続的に形成された一対のベースライン(第1ベースラインおよび第2ベースライン)と、このベースラインの破断部に開口領域内側に向かって形成された一対の支持部形成ライン(第1支持部形成ラインおよび第2支持部形成ライン)とを有する。これにより、破断線がないことで比較的変形しにくい支持部が形成される。支持部により、破裂弁は、通常の使用における圧力変動に伴う変形量が低減されることで疲労が軽減されるため、寸法を大きくして開口面積を大きくしても十分な寿命を確保することができる。
【0014】
破裂弁において、前記複数の分割線が交点を有し、破裂の開始点が前記複数の分割線の交点であることが好ましい。このように、前記複数の分割線が交点を有し、破裂の開始点が前記複数の分割線の交点であることによって、破裂弁は、開口の開始点が開口領域の内部に設定され、開口面積を大きくしても、破裂時に跳ね上げられる部分の高さを抑制できる。
【0015】
破裂弁において、前記複数の分割線が、前記第1ベースラインと前記第2ベースラインとを結ぶ第1分割線と、前記第1ベースラインと前記第1分割線とを結ぶ第2分割線と、前記第2ベースラインと前記第1分割線とを結ぶ第3分割線とを有することが好ましい。これにより、破裂弁は、比較的簡単な構成でありながら、2つの破裂の開始点の位置を支持部に近付けて通常使用時の変形量をより確実に抑制することができる。
【0016】
破裂弁において、前記第2分割線と第1分割線との交点の第1分割線の端部からの距離が、前記第1分割線の長さの1/4以下であることが好ましい。このように、前記第2分割線と第1分割線との交点の第1分割線の端部からの距離を前記上限以下とすることによって、2つの破裂の開始点の距離を大きくすることで通常使用時の変形量を抑制しつつ、破壊の開始点における応力をより大きくして圧力上昇時の破裂を確実にすることができる。
【0017】
本発明の別の態様は、上述の破裂弁が設けられた容器と、前記容器に収容された電極体とを備える蓄電素子である。
【0018】
蓄電素子は、十分な寿命を確保しつつ開口面積を大きくすることができる破裂弁を有するので、何らかの異常により容器内にガスが発生した場合にはガスを外部に迅速に放出することができる。このため、容量増大という市場のニーズに対応することができる。
【0019】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0020】
図1に、本発明の一実施形態に係る蓄電素子を示す。蓄電素子は、それ自体が本発明の別の実施形態である破裂弁1が設けられた容器2と、この容器2に収容された電極体3とを備える。図示する実施形態では、破裂弁1が容器2の蓋部に形成されているが、破裂弁1は容器2の本体に形成されてもよい。
【0021】
破裂弁1は、容器2の壁に設けられ、前記容器の内圧上昇により破裂して開口する。この破裂弁1は、容器2の壁の厚さを減じて一体に形成したものであってもよく、別体として形成され、容器2の壁に設けた開口に例えば溶接等により気密かつ堅固に取り付けられたものであってもよい。
【0022】
破裂弁1は、
図2乃至
図3に示すように、それに沿って壁厚を減じた溝状の破断線4を備える。この破断線4は、容器2の内圧が所定の圧力以上に上昇したときに裂けるように破断する。これにより、破裂弁1は、破断線4に囲まれる領域をフラップ状に外側に跳ね上げて開口を形成する。
【0023】
破裂弁1が破裂する圧力の設定値としては、例えば容器2の設計等によっても異なり得るが、例えば1MPa程度とすることができる。
【0024】
破裂弁1の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の金属が好ましく、中でも破断特性および加工性の観点から、アルミニウムが特に好ましい。
【0025】
破裂弁1の開口領域における破断線4が形成される部分の厚さは、破裂弁1が開口する圧力に至るまで、破断線4に囲まれる領域が塑性変形せず板状に保たれるよう、破裂弁1の材質および平面寸法、破断線4の配置等に応じて定められる。目安として、破裂弁1の開口領域における破断線4が形成される部分の平均厚さの下限としては、0.2mmが好ましく、0.3mmがより好ましい。一方、破裂弁1の開口領域における破断線4が形成される部分の平均厚さの上限としては、1.0mmが好ましく、0.8mmがより好ましい。破裂弁1の開口領域における破断線4が形成される部分の平均厚さを前記下限以上とすることによって、破裂弁1の破断線4が形成される部分の塑性変形を抑制して破裂弁1が開口する圧力が変化することをより確実に防止できる。また、破裂弁1の開口領域における破断線4が形成される部分の平均厚さを前記上限以下とすることによって、破断線4の形成が比較的容易となる。
【0026】
破断線4は、破裂弁1の開口領域の外縁を画定する外縁線5と、開口領域を分割する複数の分割線6とを有する。
【0027】
破断線4は、除去加工によって形成してもよいが、典型的には、破断線4に対応する凸部を有する金型を用いたプレス加工によって形成することができる。
【0028】
破断線4は、容器2の外側に配置される面(外表面)に形成することが好ましいが、これに限定はされない。
【0029】
破断線4の断面形状としては、例えばV字状、半円状、台形状、これらを多段に重ねた形状等とすることができる。このように、破断線4の断面形状を多段とすることにより、プレス金型の凸部の強度を確保しつつ破断線4の深さを大きくすることができるので、破断線4が破断する圧力を一定にすることが容易となる。
【0030】
破断線4の断面形状は、
図4に示すように、奧端角部(底面と側面との角)は丸く面取りされていることが好ましい。このように、破断線4の奧端角部を面取りすることで、加工誤差による応力集中のばらつきを抑制して破裂弁1の破裂圧力を安定化することができる。この面取りの半径としては、例えば0.3mm以上1.0mm以下とすることができる。
【0031】
破断線4の深さは、所望の圧力で破断するよう選択される。このため、破断線4の適当な深さは、破裂弁1の材質および破断線4を形成する部分の厚さに大きく依存し、破断線4の平面パターン等によっても異なる。具体例として、破裂弁1の材質がJIS−H4000に規定されるA3003(アルミニウム)である場合の破断線4の最深部における破裂弁1の厚さとしては、0.03mm以上0.10mm以下とすることができる。
【0032】
外縁線5は、第1方向に延びるよう断続的に形成され、第1方向と直交する第2方向に間隔を空けて対向するよう設けられた一対のベースライン(第1ベースライン7および第2ベースライン8)と、ベースライン7,8の破断部(溝がない部分)に形成され、破裂弁1の開口領域の幅を部分的に減少させる一対の支持部形成ラインとを有する。支持部形成ラインは、第1ベースライン7の破断部に形成され、第1ベースライン7から第2ベースライン8に向かって傾斜して延びる第1支持部形成ライン9、および、第2ベースライン8の破断部に形成され、第2ベースライン8から第1ベースライン7に向かって傾斜して延びる第2支持部形成ライン10を含む。外縁線5は、一対のベースライン7,8の端部間を接続するよう断続的に形成された一対のエンドライン(第1エンドライン11および第2エンドライン12)をさらに有する。
【0033】
一対の支持部形成ライン9,10は、破裂弁1の開口領域の平面視における内側に突出し、破断線4を有しないことにより相対的に変形しにくい支持部(第1支持部13および第2支持部14)を画定する。
【0034】
支持部形成ライン9,10の平面形状としては、先端に角を形成するよう第1方向および第2方向に対して傾斜した2つの斜辺を有するV字状とすることが好ましい。
【0035】
支持部形成ライン9,10は、複数の直線の組み合わせには限定されず、1又は複数の曲線であってもよい。図示しないが、例えば、曲線的な支持部形成ライン9,10によって、支持部13,14が平面視半円状に形成されてもよい。
【0036】
支持部13,14には、図示するように、厚さを増大することにより変形をより確実に防止する厚肉部(第1支持厚肉部15および第2支持厚肉部16)が設けられてもよい。これらの支持厚肉部15,16は、図示するように平面的なものに限られず、一または複数のリブ状に形成されたものであってもよい。支持厚肉部15,16は、支持部形成ライン9,10に接するよう形成されてもよいが、支持部形成ライン9,10と間隔を空けて形成することで、支持部形成ライン9,10の加工が容易となる。
【0037】
支持部13,14の支持厚肉部15,16における厚さは、破裂弁1が容器2から突出しないよう、破裂弁1の周囲の容器の厚さ以下とすることが好ましい。
【0038】
一対のベースライン7,8の第1方向の長さは、一対のベースライン7,8の第2方向の間隔よりも大きい。つまり、破裂弁1の開口領域のベースライン7,8に沿う第1方向の長さは、破裂弁1の開口領域のベースライン7,8と直交する第2方向の幅よりも大きい。ベースライン7,8の第1方向の長さのベースライン7,8間の第2方向の幅に対する比の下限としては、1.5が好ましく、1.8がより好ましい。一方、ベースライン7,8の第1方向の長さのベースライン7,8間の第2方向の幅に対する比の上限としては、3.0が好ましく、2.5がより好ましい。ベースライン7,8の第1方向の長さのベースライン7,8間の第2方向の幅に対する比を前記下限以上とすることによって、蓄電素子の通常の使用による容器2の内圧変動による破裂弁1の変形を抑制し、破裂弁1の寿命をより確実に向上することができる。また、ベースライン7,8の第1方向の長さのベースライン7,8間の第2方向の幅に対する比を前記上限以下とすることによって、容器2の幅の小さい面に比較的開口面積が大きい破裂弁1を設けられる。なお、破裂弁1に必要とされる寿命(疲労耐性)としては、例えば蓄電素子の通常の使用時に想定される最大圧力の印加および除去を数万回以上繰り返しても疲労による破裂圧力が低下しないこととされる。
【0039】
エンドライン11,12は、ベースライン7,8の端部間を、図示するように直線的に接続してもよいが、湾曲していてもよい。エンドライン11,12は、ベースライン7,8との間に角を形成しない半円弧状に形成してもよい。
【0040】
分割線6は、第1ベースライン7の第1端部近傍と第2ベースライン8の第2端部近傍とを結ぶ第1分割線17と、第2ベースライン8の第1端部近傍と第1分割線17の途中とを結ぶ第2分割線18と、第1ベースライン7の第2端部近傍と第1分割線17の途中とを結ぶ第3分割線19とを有する。
【0041】
第2分割線18と第1分割線17との交点は、第3分割線19と第1分割線17との交点とは異なる位置に配置されている。第2分割線18と第1分割線17との交点、および第3分割線19と第1分割線17との交点は、それぞれ破裂弁1の破裂の開始点となる。つまり、複数の分割線6は、破裂弁1の破裂の開始点となる複数の交点を有し、破裂弁1の破裂は、これらの開始点からそれぞれ分割線6に沿った破断が進行し、外縁線5の破断に至る。
【0042】
破裂弁1の開口領域は、第1ベースライン7、第1支持部形成ライン9、第1分割線17および第3分割線19によって囲まれる第1蓋部20と、第2ベースライン8、第2支持部形成ライン10、第1分割線17および第2分割線18によって囲まれる第2蓋部21と、第1エンドライン11、第1分割線17および第2分割線18によって囲まれる第3蓋部22と、第2エンドライン12、第1分割線17および第3分割線19によって囲まれる第4蓋部23との4つに分割されて開口する。
【0043】
外縁線5は、各蓋部20,21,22,23を開口する際のヒンジとなるよう、各蓋部20,21,22,23の外縁にそれぞれ破断部が形成されている。
【0044】
第2分割線18と第1分割線17との交点の第1分割線17の端部からの距離の下限としては、第1分割線17の長さの1/15が好ましく、1/10がより好ましい。一方、第2分割線18と第1分割線17との交点の第1分割線17の端部からの距離の上限としては、第1分割線17の長さの1/4が好ましく、1/5がより好ましい。第2分割線18と第1分割線17との交点の第1分割線17の端部からの距離を前記下限以上とすることによって、破裂の開始点に応力を集中させることで、破裂弁1が破裂する圧力を安定させられる。また、第2分割線18と第1分割線17との交点の第1分割線17の端部からの距離を前記上限以下とすることによって、2つの破裂の開始点間の距離を大きくして蓄電素子の通常の使用における容器2の内圧変動による変形を分散させることで最大変形量を抑制し、破裂弁1の寿命をより向上することができる。
【0045】
第3分割線19と第1分割線17との交点の第1分割線17の端部からの距離としては、上述の第2分割線18と第1分割線17との交点の第1分割線17の端部からの距離と同様とすることができる。第3分割線19と第1分割線17との交点の第1分割線17の端部からの距離は、2つの開始点が同時に破裂を開始するよう、第2分割線18と第1分割線17との交点の第1分割線17の端部からの距離と等しいことが好ましい。
【0046】
このような分割線6に対して、第1蓋部20の外縁の一部を定める第1支持部形成ライン9は、第2方向の頂点が第1蓋部20の頂点、つまり第1分割線17と第2分割線18との交点に近づくよう第1方向に非対称に形成されることが好ましい。これによって、蓄電素子の通常の使用時における圧力変動に伴う破裂弁1の変形量が大きくなりやすい破裂の開始点(第1分割線17と第2分割線18との交点)の近くに第1支持部13を形成して変形を抑制することで、破裂弁1の疲労を軽減することができる。このような構成を有するものとして、支持部形成ライン9は、第1分割線17と平行な斜辺と、第2分割線18と平行な斜辺とを有する非対称なV字状に形成されることが好ましい。
【0047】
同様に、第2蓋部21の外縁の一部を定める第2支持部形成ライン10は、第2方向の頂点が第2蓋部21の頂点、つまり第1分割線17と第3分割線19との交点に近づくよう第1方向に非対称に形成されることが好ましい。
【0048】
破断線4によって画定される4つの蓋部20,21,22,23には、図示するように、厚さを増大することによって、蓋部20,21,22,23の塑性変形を防止する蓋厚肉部(第1蓋部20の第1蓋厚肉部24、第2蓋部21の第2蓋厚肉部25、第3蓋部22の第3蓋厚肉部26および第4蓋部23の第4蓋厚肉部27)が形成されてもよい。
【0049】
破裂弁1の蓋厚肉部24,25,26,27における厚さとしては、支持厚肉部15,16における厚さよりも小さいことが好ましい。
【0050】
以上のように、破裂弁1は、支持部13,14を有することによって、疲労が軽減されることによって、十分な寿命を有しながら、開口面積を大きくすることができる。このため、破裂弁1を備える蓄電素子は、容器2内にガスが発生する異常事態が生じても発生したガスを容器2の外に迅速に排出することができる。
【0051】
図5に、本発明の
図2とは異なる実施形態の破裂弁1aを示す。この破裂弁1aは、
図2の破裂弁に換えて、
図1の蓄電素子に用いることができる。
【0052】
図5の破裂弁1aは、表面側(蓄電素子における外面側)に、それに沿って壁厚を減じた溝状の破断線4を備える。この破断線4は、容器2の内圧が所定の圧力以上に上昇したときに裂けるように破断する。これにより、破裂弁1は、破断線4に囲まれる領域をフラップ状に外側に跳ね上げて開口を形成する。
【0053】
図5の破裂弁1aにおける破断線4を含む表面側の凹凸形状は、
図2の破裂弁1における表面側の凹凸形状と同様とすることができる。このため、
図5の破裂弁1aについて
図2の破裂弁1と同じ構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する。また、
図5の破裂弁1aの材質については、
図2の破裂弁1と同様とすることができる。
【0054】
本実施形態の破裂弁1aは、
図6に示すように、平面視で長手方向両端から長手方向中央に向かって壁圧が増大するよう、裏面が傾斜している。
【0055】
また、破裂弁1aは、裏面側に破断線4に対応する調節溝28が形成されている。調節溝28は、表面から一定の深さに形成される破断線4の最深部における破裂弁1aの厚さを一定にするような深さで、つまり凹部の厚さ方向位置が一定となるよう形成される。これによって、破断線4の断面形状を一定にすることができるので、容器2の内圧上昇に伴って破断線4により生じる応力集中の計算が容易となる。
【0056】
図5の破裂弁1aにおける破断線4の断面形状及び最深部における破裂弁1aの厚さは、
図2の破裂弁1における破断線4の断面形状及び最深部における破裂弁1の厚さと同様とすることができる。
【0057】
本実施形態の破裂弁1aは、平面視で外側から内側に向かって壁圧が増大するよう形成されているため、応力集中が大きくなる中央部の強度が大きくなっている。このため、破裂弁1aは、通常の使用範囲における容器2の内圧上昇による変形が小さいので、疲労に強く、破裂圧力の変化が小さい。
【0058】
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載および技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0059】
破裂弁は、4本以上の分割線を有してもよい。例として、破裂弁は、一対のベースラインの中央にベースラインと平行に形成されるベースラインよりも短い第1の分割線と、この第1の分割線の端部と一対のベースラインの端部とをそれぞれ接続する4本の第2の分割線とを有する構成としてもよい。
【0060】
破裂弁は、短手方向外側から内側に向かって壁圧が増大してもよい。また、平面視で外側から内側に向かって壁圧が増大するよう表面が傾斜していてもよい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0062】
図7〜11に示す破裂弁のモデル1〜5をコンピューター上でモデリングし、シミュレーションによって通常使用圧力におけるミーゼス応力および最大変形量を算出した。
【0063】
<モデル1>
モデル1は、
図7に示すように、上述の実施形態に準じた形状を有するものとし、材料物性としてJIS−H4000に規定されるA3003(アルミニウム)相当の値を用いた。
【0064】
具体的には、モデル1は、全体の長さが25mm、幅が6.5mm、破断線形成部分の壁厚が0.4mmとされている。破断線は、最深部における壁厚が0.05mmとなるよう形成されている。一対のベースラインは、長さ(一対のエンドラインの中心線間隔)が22.7mm、中心線間隔が10.7mmとされている。第2分割線および第3分割線は、第1分割線に垂直に形成されている。この結果、第2分割線と第1分割線と交点の第1分割線の端部からの距離および第3分割線と第1分割線と交点の第1分割線の端部からの距離は、それぞれ第1分割線の長さの18%となっている。支持部形成ラインは、第1分割線に平行な斜辺と第2分割線または第3分割線に平行な斜辺とからなり、第1方向の長さ(ベースラインの破断部の長さ)が9.1mm、第2方向の突出高さが3.5mmとされている。支持厚肉部は、破断線(支持部形成ライン)からの距離が1.0mm、壁厚が1.0mmとされ、蓋厚肉部は、破断線からの距離が0.5mm、壁厚が0.6mmとされている。
【0065】
<モデル2>
図8に示すモデル2は、第2分割線および第3分割線を、第1分割線との交点の第1分割線の端部からの距離が第1分割線の長さの36%となるよう形成した点を除いて、モデル1と同様とした。
【0066】
<モデル3>
図9に示すモデル3は、第2分割線および第3分割線を、第1分割線との交点の第1分割線の端部からの距離が第1分割線の長さの36%となるよう形成し、さらに支持部形成ラインを、第1方向の長さが9.1mm、第2方向の突出高さが3.5mmの第1方向に対称なV字状となるよう第1方向中央に形成した点を除いてモデル1と同様とした。
【0067】
<モデル4>
図10に示すモデル4は、支持部形成ラインを省略し、この部分のベースラインを連続して形成した点を除いて、モデル1と同様とした。
【0068】
<モデル5>
図11に示すモデル5は、従来使用されていた破裂弁をモデル化したものであり、全体の長さが25mm、幅が6.5mm、破断線形成部分の壁厚が0.3mmとされている。破断線は、最深部における壁厚が0.05mmとなるよう形成されている。この破断線は、第1方向に延びる一対のベースラインと、このベースラインの端部間を接続する半円弧状の一対のエンドラインと、開口領域の中央に、第1方向に45°傾斜して一対のベースライン間を接続するよう1つの分割線とを有する。モデル5において、一対のベースラインは、長さが15.0mm、中心線間隔が5.0mmとされている。
【0069】
<シミュレーション>
コンピューター上で、前記モデル1〜5に1.0MPaの圧力を作用させるシミュレーションを行い、ミーゼス応力および最大変形量(法線方向への最大突出高さ)を算出した。この結果を、次の表1にまとめて示す。
【0070】
【表1】
【0071】
ミーゼス応力は、破裂の開始点に作用する応力であり、このミーゼス応力が破断応力以上となると破裂弁が破裂する。破裂弁の破裂圧力の設定は、破断線の深さを調整することによって行うことができるため、このミーゼス応力が大きい程、破裂圧力を正確に設定することができる。モデル1〜5の設計条件(破断線の最深部における壁厚が0.05mm)において、経験上、ミーゼス応力が2500MPa以上であれば破裂圧力を比較的正確に設定することができると考えられる。
【0072】
一方、最大変形量は、蓄電素子の通常の使用状態における圧力変動によって繰り返し変形させられる量の大きさを表し、この最大変形量が小さいほど破裂弁の疲労が小さくなるため、破裂弁の寿命が長くなる。この最大変形量は、ミーゼス応力とトレードオフの関係となる。
【0073】
本発明の実施例であるモデル1の破裂弁の開口面積は、従来例であるモデル5の破裂弁の開口面積の約2.5倍である。前記シミュレーションの結果、モデル1の破裂弁は、モデル5の破裂弁と比較して、ミーゼス応力が小さくなっているものの、最大変形量も小さくなっている。ミーゼス応力と最大変形量とがトレードオフの関係にあることを考慮すると、モデル1の破裂弁は、破裂圧力の正確性および寿命がモデル5の破裂弁と同等以上であると予想される。
【0074】
本発明の別の実施例であるモデル2の破裂弁は、モデル1の破裂弁と比べて分割線の交点が支持部に近く、モデル1の破裂弁と比べるとミーゼス応力および最大変形量の値が僅かに劣っているが、十分に実用に耐えると考えられる。
【0075】
本発明のさらに別の実施例であるモデル3の破裂弁は、支持部を左右対称に形成したことによって、モデル2の破裂弁よりも最大変形量が抑制される反面、ミーゼス応力が減少している。このモデル3の破裂弁は、十分実用可能と考えられるが、モデル2の破裂弁よりも製造誤差の許容範囲が小さくなると予想される。
【0076】
本発明の特徴である支持部を備えていないモデル4の破裂弁は、ミーゼス応力が小さく、最大変形量が比較的大きい。このため、モデル4の破裂弁は、正確な破裂圧力と十分な寿命とを両立させることが難しいと思われる。