(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記不織布がポリプロピレン(PP)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、パルプ繊維及びガラス繊維からなる群より選ばれた1種又は2種以上を混合した繊維からなり、前記不織布が複数枚積層されてなる請求項2記載のウエットシート。
請求項1記載の液組成物を含浸したウエットシート又は請求項2もしくは3記載のウエットシートを基材表面に沿って移動して前記基材表面に前記液組成物を塗布し、前記塗布した液組成物を乾燥することにより、前記基材表面に防油性の塗膜を形成する防油性の塗膜の形成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示されるウェットワイパー又は特許文献2に示される防汚処理用ウエットティッシュを基材表面に沿って移動した場合、繊維シートに含浸されている機能性含浸液又は紙又は不織布に含浸されている防汚処理剤は、基材表面を親水化することはできるものの、油を弾くことはできない課題があった。言い換えれば、上記ウェットワイパー又はウエットティッシュで、汚れを落とした場合、この機能性含浸液又は防汚処理剤で形成された塗膜には親油性の性質が残存するため、塗膜は親水親油性となって、油などの疎水性の汚れが付着した場合、塗膜に油がなじみ、十分な防汚効果が得られない不具合あった。
【0007】
本発明の目的は、ウエットシートを基材表面に沿って移動すると、基材表面に防油性の塗膜が形成されて、基材表面を撥油性にする油汚れ防止に役立つウエットシート用液組成物及びそのウエットシートを提供することにある。本発明の別の目的は、塗膜にたとえ油が付着しても、水を含ませた布で、塗膜に付着した油を簡単に除去することができる液組成物及びそのウエットシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、ウエットシートに含浸して用いられ、シリカゾル加水分解物と炭素数1〜3の範囲にある1種又は2種以上のアルコール(以下、炭素数1〜3のアルコールという。)と水とを含み、前記シリカゾル加水分解物の含有量が0.5〜4.0質量%であり、前記アルコールの含有量が1.0〜5.0質量%であり、前記水の含有量が90〜99質量%であり、前記シリカゾル加水分解物を100質量%とするときに、前記シリカゾル加水分解物が下記の一般式(1)で示されるペルフルオロアミン構造のフッ素含有官能基成分を0.5〜15質量%含むことを特徴とするウエットシート用液組成物である。
【0009】
【化1】
【0010】
上記式(1)中、m及びnは、それぞれ同一又は互いに異なる1〜6の整数である。また、Rf
1は、炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であって、直鎖状又は分枝状であってもよい。また上記式(1)中、Xは、炭素数2〜10の炭化水素基であって、エーテル結合、CO−NH結合及びO−CO−NH結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよい。
【0011】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく液組成物を含浸したウエットシートであって、シート母材が30〜100g/m
2の目付と1〜250cm
3/cm
2/secの通気度を有する不織布からなり、前記不織布の単位面積当たり前記液組成物中のシリカゾル加水分解物を0.005〜1.9g/m
2の割合で含み、水分平衡状態の前記不織布に対して水分又は水とアルコールを併せた液分を1.0〜50g/m
2の割合で含有することを特徴とするウエットシートである。
【0012】
本発明の第3の観点は、第2の観点に基づく発明であって、前記不織布がポリプロピレン(PP)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、パルプ繊維及びガラス繊維からなる群より選ばれた1種又は2種以上を混合した繊維からなり、前記不織布が複数枚積層されてなるウエットシートである。
【0013】
本発明の第4の観点は、第1の観点に基づく液組成物を含浸したウエットシート又は第2もしくは第3の観点に基づくウエットシートを基材表面に沿って移動して前記基材表面に前記液組成物を塗布し、前記塗布した液組成物を乾燥することにより、前記基材表面に防油性の塗膜を形成する防油性の塗膜の形成方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の観点の膜形成用液組成物中の各成分には次の特徴がある。所定量のシリカゾル加水分解物により、高い強度の塗膜が得られ、かつ塗膜の基材への密着性が良好となる。所定の構造式で示されるペルフルオロアミン構造のフッ素含有官能基成分は、液組成物を含浸したウエットシートを基材表面に沿って移動した後に形成される基材表面の塗布膜に防油性を付与する。炭素数1〜3のアルコールは、フッ素含有官能基成分を溶解して水溶性にする。水は、フッ素含有官能基成分のアルコール溶液を希釈し、液組成物を含浸したウエットシートを基材表面に沿って移動したときにアルコールに起因する塗膜の速乾性を抑制し、フッ素含有官能基成分のアルコール溶液の基材表面への濡れ性を良好にする。また塗膜にたとえ油が付着しても、塗膜を構成するフッ素含有官能基成分は撥油性であるため、水を含ませた布で、塗膜に付着した油を簡単に除去することができる。
【0015】
本発明の第2の観点のウエットシートは、シート母材の不織布が所定の目付を有するため、不織布が分厚くなり過ぎず、その取扱いを容易にする。またウエットシートを基材表面に沿って移動したときに、ウエットシートに破れ等を生じさせずに一定の強度を具備する。またシート母材の不織布が所定の通気度を有するため、不織布に液組成物を接触させると液組成物が不織布内部に確実に浸透する。水分又は水とアルコールを併せた液分を不織布に所定量含有させることにより、重力で或いはウエットシートを握ったときに液組成物が不織布から滴り落ちることがなく、ウエットシートを基材表面に沿って移動した時に基材表面に液組成物を均一な厚さで塗工できる。また不織布に保有された液組成物中には、各成分が所定の割合で含まれているため、液組成物は基材表面に濡れ性良く広がり、形成された塗膜は防油性を発揮する。
【0016】
本発明の第3の観点のウエットシートでは、不織布がポリプロピレン(PP)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、パルプ繊維及びガラス繊維からなる群より選ばれた1種又は2種以上を混合した繊維から構成されるため、保液性が良く、また基材表面に円滑に液組成物を塗布することができる。また不織布を積層体にすれば、液組成物の保液性がより高まり、広い面積を塗布しても、不織布の損傷が少なく耐久性に優れる。
【0017】
本発明の第4の観点の防油性の塗膜の形成方法では、上記ウエットシートを基材表面に沿って移動して基材表面に液組成物を塗布し、この塗布した液組成物を乾燥することにより、この塗膜が防油性を発揮し、基材表面の油汚れ防止に役立つ効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明を実施するための形態を説明する。
【0019】
〔ウエットシート用液組成物〕
本実施の形態のウエットシート用液組成物は、シリカゾル加水分解物と水と炭素数1〜3のアルコールとを含む。液組成物100質量%に対して、シリカゾル加水分解物を0.5〜4.0質量%、アルコールを1.0〜5.0質量%、水を90〜99質量%それぞれ含む。このウエットシート用液組成物は、シリカゾル加水分解物を100質量%とするときに、シリカゾル加水分解物が上記の一般式(1)で示されるペルフルオロアミン構造のフッ素含有官能基成分を0.5〜15質量%含む。
【0020】
シリカゾル加水分解物が0.5質量%未満では、形成した膜の基材への密着性が不十分になり、4.0質量%を超えると、液組成物の保存安定性に劣る。アルコールが1.0質量%未満ではフッ素含有官能基成分が水に溶解しにくく、膜形成時にフッ素の表面張力により、膜が水玉状になり易い。また5.0質量%を超えるか、又は水が90質量%未満では、アルコール分が相対的に多くなり、液組成物を含浸したウエットシートを基材表面に沿って移動したときの液膜の乾燥速度が速くなり過ぎ、膜を均一に形成することができない。アルコールは、水では溶解しないフッ素含有官能基成分を溶解させることを主目的とする。このため、後述する不織布にフッ素含有官能基成分を含浸させた後で、アルコールが揮発してもウエットシートとしての機能は低下しない。しかしアルコールを揮発させずに不織布に含ませたときには、不織布における雑菌の繁殖を防ぎ、防臭防腐効果がある。水が99質量%を超えると、シリカゾル加水分解物とアルコール分の含有量が相対的に少なくなり、形成した膜の基材への密着性が十分でなく、また膜に撥水撥油性を付与することが困難で、フッ素含有官能基成分が溶解しにくくなる。更に膜形成時に、ウエットシートから水が滴り落ちやすい。好ましい含有量は、シリカゾル加水分解物が0.8〜4.0質量%、アルコールが1.5〜4.0質量%、水が92〜98質量%である。
【0021】
フッ素含有官能基成分が0.5質量%未満では、形成した膜が防油性にならない。また15質量%を超えると、液組成物で塗膜を形成するときに、塗膜の弾き等が発生し成膜性が悪化し、膜を均一に形成することができない。また原料コストが上昇する。
【0022】
〔ウエットシート用液組成物の製造〕
本実施の形態のウエットシート用液組成物は、次に述べる混合液と触媒とを混合して、シリカゾル加水分解物を含む液を調製し、このシリカゾル加水分解物を含む液に水を加えて製造される。
【0023】
(混合液の調製)
先ず、ケイ素アルコキシドとしてのテトラメトキシシラン(以下、「TMOS」ということもある。)又はテトラエトキシシラン(以下、「TEOS」ということもある。)と、下記の一般式(2)で示されるフッ素含有シランと、炭素数1〜3のアルコールと、水とを混合して混合液を調製する。このケイ素アルコキシドとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、そのオリゴマー又はテトラエトキシシラン、そのオリゴマーが挙げられる。例えば、硬度の高い膜を得る目的には、テトラメトキシシランを用いることが好ましく、一方、加水分解時に発生するメタノールを避ける場合は、テトラエトキシシランを用いることが好ましい。
【0025】
上記式(2)中、m及びnは、それぞれ同一又は互いに異なる1〜6の整数である。またRf
1は、炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であって、直鎖状又は分枝状であってもよい。またX
1、X
2、X
3は、主骨格であるO−Siとの結合基であり、X
4は、Rf
1とSiを結合する基であって、炭素数2〜10の炭化水素基であって、エーテル結合、CO−NH結合及びO−CO−NH結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよい。
【0026】
上記式(2)中の含窒素ペルフルオロアルキル基としては、より具体的には、下記式(3)〜(14)で示されるペルフルオロアミン構造を挙げることができる。
【0039】
また、上記式(2)中のX
4としては、下記式(15)〜(18)で示される構造を挙げることができる。なお、下記式(15)はエーテル結合、下記式(16)はエステル結合、下記式(17)はアミド結合、下記式(18)はウレタン結合を含む例を示している。
【0044】
ここで、上記式(15)〜(18)中、R
2及びR
3は炭素数が0から10の炭化水素基、R
4は水素原子又は炭素数1から6の炭化水素基である。R
2及びR
3の炭化水素基の例とは、メチル基、エチル基等のアルキル基挙げられ、R
4の炭化水素基の例とは、メチル基、エチル基等のアルキル基の他、フェニル基、ビニル基等も挙げられる。
【0045】
本実施の形態では、ケイ素アルコキシドと、下記一般式(19)〜(29)で示されるフッ素含有シランを組み合わせることにより、式(2)で表される化合物が得られる。本実施の形態のシリカゾル加水分解物は、上記一般式(2)に示すように、窒素原子に炭素数が6以下の短鎖長のペルフルオロアルキル基が複数結合した含窒素ペルフルオロアルキル基を有しており、分子内のフッ素含有率が高いため、形成した膜に優れた撥水撥油性と基材への密着性を付与することができる。なお、下記式(19)〜(29)中、Rはメチル基又はエチル基である。
【0057】
本実施の形態の炭素数1〜3のアルコールは、この範囲にある1種又は2種以上のアルコールが挙げられる。このアルコールとしては、例えば、メタノール(沸点64.7℃、MeOH)、エタノール(沸点約78.3℃、EtOH)、プロパノール(n−プロパノール(沸点97−98℃)、イソプロパノール(沸点82.4℃))が挙げられる。特にメタノール又はエタノールが好ましい。本実施の形態のアルコールは、1種単独で、又は2種以上を組合せて用いることができる。これらのアルコールは、ケイ素アルコキドとの混合がしやすいためである。上記水としては、不純物の混入防止のため、イオン交換水や純水等を使用するのが望ましい。ケイ素アルコキシド及びフッ素含有シランに炭素数1〜3のアルコールと水を添加して、好ましくは10〜30℃の温度で5〜20分間撹拌することにより混合液を調製する。炭素数1〜3のアルコールを用いるのは、炭素数4以上のアルコール、例えばブタノール(BuOH)はケイ素アルコキシドと混合しにくく、また臭気も強くウエットシートの使用者等に不快感を与えるためである。
【0058】
(シリカゾル加水分解物を含む液の調製)
上記調製された混合液と有機酸、無機酸又はチタン化合物からなる触媒とを混合する。このとき液温を好ましくは30〜80℃の温度に保持して好ましくは1〜24時間撹拌する。これにより、ケイ素アルコキシドとフッ素含有シランのシリカゾル加水分解物を含む液が調製される。特には限定されないが、シリカゾル加水分解物を含む液は、ケイ素アルコキシドを5〜40質量%(好ましくは10〜35質量%)、フッ素含有シランを0.05〜0.55質量%(好ましくは0.2〜0.5質量%)、炭素数1〜3のアルコールを0.01〜4質量%(好ましくは0.1〜2質量%)、水を60〜75質量%(好ましくは65〜70質量%)、有機酸、無機酸又はチタン化合物を触媒として0.05〜0.5質量%(好ましくは0.1〜0.3質量%)の割合で混合してケイ素アルコキシドとフッ素含有シランとの加水分解反応を進行させることで得られる。
【0059】
炭素数1〜3のアルコールの割合を上記範囲に限定したのは、アルコールの割合が下限値未満では、ケイ素アルコキシドが、溶液中に溶解せず分離してしまうこと、加水分解反応中に反応液がゲル化しやすく、一方、上限値を超えると、加水分解に必要な水、触媒量が相対的に少なくなるために、加水分解の反応性が低下して、重合が進まず、膜の密着性が低下するためである。水の割合を上記範囲に限定したのは、下限値未満では加水分解速度が遅くなるために、重合が進まず、塗布膜の密着性並びに成膜性が不十分になり、一方、上限値を超えると加水分解反応中に反応液がゲル化し、水が多過ぎるためケイ素アルコキシド化合物がアルコール水溶液に溶解せず、分離する不具合を生じるからである。
【0060】
加水分解物中のSiO
2濃度(SiO
2分)は1〜40質量%であるものが好ましい。加水分解物のSiO
2濃度が下限値未満では、重合が不十分であり、膜の密着性の低下やクラックの発生が起こりやすく、上限値を超えると、相対的に水の割合が高くなりケイ素アルコキシドが溶解せず、反応液がゲル化する不具合を生じる。
【0061】
有機酸、無機酸又はチタン化合物は加水分解反応を促進させるための触媒として機能する。有機酸としてはギ酸、シュウ酸が例示され、無機酸としては塩酸、硝酸、リン酸が例示され、チタン化合物としてはテトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、乳酸チタン等が例示される。触媒は上記のものに限定されない。上記触媒の割合を上記範囲に限定したのは、下限値未満では反応性に乏しく重合が不十分になるため、膜が形成されず、一方、上限値を超えても反応性に影響はないが、残留する酸による基材の腐食等の不具合を生じる。
【0062】
(ウエットシート用液組成物の製造)
上記調製されたシリカゾル加水分解物を含む液に、水を加えてウエットシート用液組成物を製造する。水は、ウエットシート用液組成物100質量%に対して90〜99質量%含有するように添加される。シリカゾル加水分解物が上記一般式(2)で示され、具体的には上述した式(19)〜(29)で示されるペルフルオロアミン構造のフッ素含有官能基成分を含むため、撥水並びに撥油の効果がある。
【0063】
(防腐剤)
また特に限定はされないが、本実施の形態の液組成物には防腐剤を含んでもよい。防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類、パラオキシ安息香酸エステルのナトリウム塩、安息香酸、安息香酸塩類、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸塩類、ヒノキチオール、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0064】
〔ウエットシートの構成〕
本実施の形態のウエットシートは、シート母材である不織布に上記液組成物を含浸して構成される。このシート母材は30〜100g/m
2の目付を有し、1〜250cm
3/cm
2/secの通気度を有する不織布からなる。好ましい目付は、40〜80g/m
2であり、好ましい通気度は、10〜180cm
3/cm
2/secである。この不織布の目付が30g/m
2未満では強度が不足し、ウエットシートを基材表面に沿って移動したときに、不織布が破れ易くなる。この目付が100g/m
2を超えると、不織布が分厚過ぎ、取扱いにくくなる。不織布の目付は、不織布を100mm×100mmのサイズに裁断し、裁断した不織布の温度25℃及び湿度50%における水分平衡状態(以下、単に水分平衡状態という。)の質量を測定し、1m
2当たりの目付質量に換算して求める。
【0065】
また不織布の通気度が1cm
3/cm
2/sec未満では、不織布に液組成物を接触させたときに、液組成物が不織布内部に浸透しにくく、所定量の液組成物を含浸しにくい。通気度が250cm
3/cm
2/secを超えると、液組成物を不織布に所定量含有させた後で、重力で或いはウエットシートを握ったときに液組成物が不織布から滴り落ち易い。不織布の通気度は、不織布を100mm×100mmのサイズに裁断し、裁断した不織布を水分平衡状態にして、JIS L 1096「一般織物試験方法」の「通気性A法(フラジール形法)」に準拠し、フラジール形試験機を用いて測定する。
【0066】
またウエットシートに含まれる水とアルコールを併せた液分は、液垂れを防ぎ、塗工ムラを防止する観点で、水分平衡状態の不織布に対して1.0〜50g/m
2、好ましくは3〜40g/m
2の割合である。不織布が上記範囲の目付と通気度を有しかつ水分又は水とアルコールを併せた液分を上記範囲で含有することにより、ウエットシートにおいて液組成物が不織布から滴り落ちることなく、ウエットシートを基材表面に沿って移動すれば、基材表面に液組成物を均一な厚さで塗工できる。また不織布には、不織布の単位面積当たり液組成物中のシリカゾル加水分解物を0.005〜1.9g/m
2、好ましくは0.1〜1.5g/m
2の割合で各成分が所定の割合で含まれる。これにより液組成物は基材表面に濡れ性良く広がり、かつ形成された塗膜は防油性を発揮する。
【0067】
また不織布は、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、パルプ繊維及びガラス繊維からなる群より選ばれた1種又は2種以上を混合した繊維から構成されることが好ましい。上記繊維から不織布を構成することで、保液性が良く、また基材表面に円滑に液組成物を塗布することができる。また複数枚の不織布を重ね合わせて縫合し積層体にすれば、液組成物の保液性がより高まり、広い面積を塗布しても、不織布の損傷が少なく耐久性に優れる。
【0068】
〔ウエットシートの製造方法〕
シート母材である不織布を所定のサイズに裁断する。次いで液組成物を不織布に接触させる。第一の方法は、一枚の不織布又は複数枚を重ね合わせた不織布積層体(以下、単に不織布という。)をパッド又は広口の容器に貯えた上記液組成物中に所定時間浸漬した後、液組成物から引上げ、脱液する。第二の方法は、不織布に上記液組成物を所定量スプレーノズルから噴霧する。
【0069】
脱液後の不織布又は噴霧後の不織布の液組成物の液分を水分平衡状態の不織布に対して1.0〜50g/m
2の割合で不織布に含有させる。或いは脱液後の不織布又は噴霧後の不織布を、例えば20〜30℃の室温で30分程度自然乾燥して、液組成物の液分を水分平衡状態の不織布に対して1.0〜50g/m
2の割合で不織布に含有させる。上記自然乾燥により、アルコール分は不織布から揮発して消散する。また別の方法として、液組成物の液分を水分平衡状態の不織布に対して1.0〜50g/m
2の割合で不織布に含むように、脱液後の不織布又は噴霧後の不織布を上プレスと下プレスの間に挟持した状態で加圧し、含液率を調整する。不織布が不織布積層体である場合、加圧することにより、下層の不織布から上層の不織布まで均一に液分を含浸させることができる。液組成物を不織布に含浸させたウエットシートを直ぐに使用に供しない場合には、水の蒸発とアルコールの揮発を防ぐために、一枚又は複数枚のウエットシートをアルミ蒸着を施した保湿容器又は保湿ケースに収納しておくことが好ましい。
【0070】
〔防油性の塗膜の形成方法〕
防油性の塗膜は、上記ウエットシートを基材表面に沿って移動して基材表面に上記液組成物を塗布する。基材としては、防油処理を必要とする金属材、プラスチック材、セラミック材、ガラス材、表面加工した木材、加工紙等が挙げられる。基材表面に塗布した液組成物を塗布後室温で放置して自然乾燥することにより、基材表面に防油性の塗膜を形成する。
【実施例】
【0071】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0072】
<実施例1>
式(29)で表されるフッ素含有シラン0.48gをアルコールとしてのエタノール0.1gに混合した。このフッ素含有シランとケイ素アルコキシドとしてテトラメトキシシラン(TMOS)の3〜5量体(三菱化学社製、商品名:MKCシリケートMS51)8.22gと水21.13gに混合し、この混合液に触媒として濃度60質量%の硝酸0.07gを添加して60℃の温度で3時間撹拌した。これによりシリカゾル加水分解物が得られた。このシリカゾル加水分解物を10.0g秤量し、これを水30.8gで希釈して、ウエットシート用液組成物を調製した。ウェットシート用液組成物中のアルコールの含有割合は4.9質量%、水の含有割合は91.3質量%、触媒の含有割合は0.03質量%、シリカゾル加水分解物の含有割合は3.8質量%であった。またシリカゾル加水分解物100質量%に対して、フッ素含有シランの含有割合は14.8質量%であった。シリカゾル加水分解物を含む液の各成分の量及び割合を表1に示し、ウエットシート用液組成物を調製するためのシリカゾル加水分解物を含む液とこれに添加する水の各量(g)、液組成物の各成分の割合(質量%)を表2に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
<実施例2〜6及び比較例1〜3>
表1に示されるケイ素アルコキシド、フッ素含有シラン、アルコール、水及び触媒を用いて、実施例1と同様にして、シリカゾル加水分解物を含む液を調製し、また表2に示されるウエットシート用液組成物を調製した。
【0076】
〔試験例1〜8、比較試験例1〜6の14種類のウエットシート〕
試験例1〜8、比較試験例1〜6の14種類のウエットシートを構成する液組成物、母材シートである不織布、不織布に液組成物を吸収させた後のシリカゾル加水分解物の含有量と液分含有量の詳細を表3に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
<試験例1>
A4サイズ(たて297mm、よこ210mm)に裁断した目付60g/m
2、厚さ0.3mm、通気度150cm
3/cm
2/secのPET繊維とパルプ繊維を混合した不織布を用意した。不織布を天秤の上に水平におき、実施例2の液組成物をスプレーにより、不織布に均一に噴霧して、所定の質量になるまで、不織布に吸収させることにより含浸して、試験例1のウエットシートを作製した。
【0079】
<試験例2>
A4サイズ(たて297mm、よこ210mm)に裁断した目付30g/m
2、厚さ0.3mm、通気度200cm
3/cm
2/secのPP繊維からなる不織布を用意した。不織布を天秤の上に水平におき、実施例3の液組成物をスプレーにより、不織布に均一に噴霧して、所定の質量になるまで、不織布に吸収させることにより含浸して、試験例2のウエットシートを作製した。
【0080】
<試験例3〜8、比較試験例1〜6>
表3に示すように液組成物の種類を変え、母材シートである不織布の目付、通気度、材質を変え、試験例1、2と同様にして不織布に液組成物を吸収させ、表3に示すようにシリカゾル加水分解物の含有量、液分含有量を変えた。それ以外は、試験例1又は試験例2と同様にして、試験例3〜8、比較試験例1〜6のウエットシートを作製した。
【0081】
<比較試験及び評価>
試験例1〜8、比較試験例1〜6の14種類のウエットシートを手に持って、予めアセトンで脱脂した厚さ1mm、たて150mm、よこ70mmのSUS基板を垂直に立てた状態にしてから、ウエットシートをSUS基板の表面全体に沿って移動し、温度25℃で3時間乾燥して基板表面に塗膜を形成した。上記14種類の塗膜の外観と膜表面の防油性を調べた。また調理の際に発生する油蒸気を導くレンジフードの表面に沿ってウエットシートを移動した後の油汚れの状況とその油汚れを水を含ませた布を基板表面に沿って移動(以下、水拭きという。)したときの清掃性について調べた。これらの結果を表4に示す。
【0082】
【表4】
【0083】
(1) 塗膜の外観
SUS基板の表面に形成された塗膜を目視により、塗膜にひび割れが見られたり、塗膜が均一に形成されずにまだら模様を呈する場合を「不良」と判定し、塗膜にひび割れもなく、塗膜が均一に形成されている場合を「良好」と判定した。
【0084】
(2) 膜表面の防油性その1(成膜直後のヘキサデカンの弾き性試験)
水平状態のSUS基板の表面に形成された塗膜上にシリンジからn−ヘキサデカンを9μLの液滴を滴下した後、SUS基板を45度傾斜させ、ヘキサデカンが塗膜により弾かれて、ヘキサデカンの跡が残らないか否かを確認した。ヘキサデカンの跡が残らない場合を「良好」と判定し、残る場合を「不良」と判定した。
【0085】
(3) 膜表面の防油性その2(水中浸漬後のヘキサデカンの転落性試験
表面に塗膜が形成されたSUS基板を温度15℃の純水の中に24時間浸漬し、純水からSUS基板を引上げ、室温で自然乾燥した後、水平状態のSUS基板の表面にn−ヘキサデカンを9μLの液滴を滴下し、上記弾き性試験と同様に、その転落性を調べた。
【0086】
(4) 油汚れの状況
14種類のウエットシートを手に持って、ウエットシートを厨房の清浄なレンジフード内面に沿って移動し、室温で自然乾燥し、防油性の塗膜を形成した。なお、比較のために、一部分を塗布しない箇所にした。レンジフードの下方で毎日0.5時間油蒸気を発生させ、30日経過後のレンジフード内面における油の付着状況を目視で調べた。未塗布箇所と比較し、明らかに油付着量が少ない場合を「極少量」とした。未塗布箇所と同等の油が付着した場合を「不良」とした。油が付着している箇所と付着していない箇所がまだらの状態を「やや不良」とした。
【0087】
(5) 油汚れの清掃性
上記(4)で、30日経過後のレンジフード内面に付着した油汚れを水を含ませた布で拭いたときに、その油汚れが落ちるか否かの清掃性を調べた。水を含ませた布で拭いたときに、油汚れ試験前と同程度の清浄度を有する場合、即ち水拭きで油汚れを除去できる場合を「良好」と判定し、清掃後も油が多量に付着し洗剤で油を除去する必要がある場合を「不良」と判定した。
【0088】
表4から明らかなように、比較試験例1では、不織布の目付が20g/m
2と小さ過ぎ、通気度が300cm
3/cm
2/secと高過ぎたことから、ウエットシートをSUS基板表面に沿って移動したときにシートが破れた。塗膜の外観は良好であったが、成膜直後のヘキサデカンの弾き性及び水中浸漬後のヘキサデカンの転落性はともに不良であった。またレンジフードでの試験では、油汚れの状況も油汚れの清掃性もともに不良であった。
【0089】
比較試験例2では、不織布のシリカゾル加水分解物の含有量が2.63g/m
2と多過ぎ、液分含有量も70g/m
2と多過ぎたため、ウエットシートをSUS基板表面に沿って移動した後の塗膜にフッ素化合物のひび割れが見られた。このため、成膜直後のヘキサデカンの弾き性は良好であったが、水中浸漬後のヘキサデカンの転落性は不良であった。またレンジフードでの試験では、油汚れの状況も油汚れの清掃性もともに不良であった。
【0090】
比較試験例3では、液組成物中のシリカゾル加水分解物の含有割合が0.4質量%と低過ぎ、かつフッ素含有官能基成分の含有割合が15.8質量%と多過ぎた液組成物を用いたため、また不織布のシリカゾル加水分解物の含有量が0.002g/m
2と少な過ぎ、液分含有量も0.5g/m
2と少な過ぎたため、ウエットシートをSUS基板表面に沿って移動した後の塗膜の外観は良好であったが、成膜直後のヘキサデカンの弾き性及び水中浸漬後のヘキサデカンの転落性はともに不良であった。またレンジフードでの試験では、油汚れの状況も油汚れの清掃性もともに不良であった。
【0091】
比較試験例4では、液組成物中のシリカゾル加水分解物の含有割合が5.4質量%と多過ぎ、かつフッ素含有官能基成分の含有割合が0.2質量%と少な過ぎた液組成物を用いたため、ウエットシートをSUS基板表面に沿って移動した後の塗膜はまだら模様であって不良であった。また成膜直後のヘキサデカンの弾き性及び水中浸漬後のヘキサデカンの転落性もともに不良であった。またレンジフードでの試験では、油汚れの状況も油汚れの清掃性もともに不良であった。
【0092】
比較試験例5では、不織布のシリカゾル加水分解物の含有量が2.254g/m
2と多過ぎ、液分含有量も60g/m
2と多過ぎたこと、及び不織布の目付が150g/m
2と大き過ぎ、通気度が0.5cm
3/cm
2/secと低過ぎたことから、ウエットシートをSUS基板表面に沿って移動した後の塗膜はまだら模様であって不良であった。また成膜直後のヘキサデカンの弾き性及び水中浸漬後のヘキサデカンの転落性もともに不良であった。またレンジフードでの試験では、油汚れの状況も油汚れの清掃性もともに不良であった。
【0093】
比較試験例6では、アルコールとして1−ブタノールを用いたため、ウエットシートをSUS基板表面に沿って移動した後の塗膜はまだら模様であって不良であった。更に、臭気も強かった。また成膜直後のヘキサデカンの弾き性及び水中浸漬後のヘキサデカンの転落性もともに不良であった。またレンジフードでの試験では、油汚れの状況も油汚れの清掃性もともに不良であった。
【0094】
これに対して、試験例1〜8では、液組成物中のシリカゾル加水分解物及びフッ素含有官能基成分の含有量が本発明第1の観点の液組成物の要件を満たし、かつ不織布の目付量、通気度、不織布のシリカゾル加水分解物の含有割合、液分の含有割合が本発明第2の観点のウエットシートの要件を満たしているため、SUS基板における膜表面の防油性試験にて、良好な結果が得られた。またレンジフードでの試験にて、油付着量が未塗布箇所と比較して極めて少なく、更に清掃に関しても、油付着量が少ないため、水を含んだ布で簡単に油汚れを除去することができた。