特許第6963970号(P6963970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963970
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】スプリングコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/24 20060101AFI20211028BHJP
   H01R 13/15 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   H01R13/24
   H01R13/15 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-213007(P2017-213007)
(22)【出願日】2017年11月2日
(65)【公開番号】特開2019-87344(P2019-87344A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】山本 次男
【審査官】 山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−072846(JP,U)
【文献】 特開平10−040990(JP,A)
【文献】 実開昭56−124337(JP,U)
【文献】 特開平04−290622(JP,A)
【文献】 特表2001−519008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/24
H01R 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリングと、
前記スプリングにより付勢される接点部材と、
前記接点部材を保持する保持部材と、を備え、
前記スプリングは、線材が隙間を有して螺旋状に周回する構造であり、かつ少なくとも一巻きの狭ピッチ部を少なくとも1つ有し、
狭ピッチ部の1つあたりの巻数をt、前記線材の外径をφd、前記狭ピッチ部以外における線材間の隙間長をA、前記狭ピッチ部における線材間の隙間長をCとした場合に、
C>0 かつ φd×(1+t)+C×t>A かつ A>φd×(1+t)
である、スプリングコネクタ。
【請求項2】
C<φd
である、請求項1に記載のスプリングコネクタ。
【請求項3】
前記スプリングは、前記狭ピッチ部を、自身の両端に1つずつ有する、請求項1又は2に記載のスプリングコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的接続に用いるスプリングコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
スプリングコネクタの構成部品は、プランジャと接点部材(例えばピンとチューブ)及びスプリングからなるのが一般的である。スプリングコネクタの用途は、例えばウェハ上に形成されたICの電気的検査である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−40990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7は、従来例におけるスプリング930同士の絡みを示す説明図である。スプリングコネクタの組立工程において、スプリング同士の絡みが発生すると、スプリングの変形やメッキ不良、あるいは1つのスプリングコネクタに対して複数のスプリングを組み込む誤組みの要因となる。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、絡みを抑制した構造のスプリングを備えるスプリングコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、スプリングコネクタである。このスプリングコネクタは、
スプリングと、
前記スプリングにより付勢される接点部材と、
前記接点部材を保持する保持部材と、を備え、
前記スプリングは、線材が隙間を有して螺旋状に周回する構造であり、かつ少なくとも一巻きの狭ピッチ部を少なくとも1つ有し、
狭ピッチ部の1つあたりの巻数をt、前記線材の外径をφd、前記狭ピッチ部以外における線材間の隙間長をA、前記狭ピッチ部における線材間の隙間長をCとした場合に、
C>0 かつ φd×(1+t)+C×t>A
である。
【0007】
C<φdであってもよい。
【0008】
A>φd×(1+t)であってもよい。
【0009】
前記スプリングは、前記狭ピッチ部を、自身の両端に1つずつ有してもよい。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、絡みを抑制した構造のスプリングを備えるスプリングコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係るスプリングコネクタ1の断面図。
図2図1のスプリング30の拡大図。
図3】スプリング30同士が絡まないことを示す説明図。
図4】比較例におけるスプリング830の拡大図。
図5】実施の形態のスプリングコネクタ1と比較例のスプリングコネクタ801との第1比較図であり、スプリング30とスプリング830のバネ圧、線材外径(φd)、及びストローク長を同じとした場合の比較図。
図6】実施の形態のスプリングコネクタ1と比較例のスプリングコネクタ801との第2比較図であり、スプリング30とスプリング830の全長及びストローク長を同じとし、スプリング30の線材外径をスプリング830の線材外径よりも大きくした場合の比較図。
図7】従来例におけるスプリング930同士の絡みを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るスプリングコネクタ1の断面図である。スプリングコネクタ1は、接点部材としてのプランジャー(導電性ピン)10と、保持部材としての導電性チューブ20と、スプリング30と、を備える。プランジャー10及び導電性チューブ20は、共に銅又は銅合金等の金属である。プランジャー10は、先端側から順に、小径部11及び大径部12を有する。大径部12は、導電性チューブ20の内側に収容される。導電性チューブ20は、基端部が絞り部23となっていて、大径部12の外寸(外径)が絞り部23の内寸(内径)よりも大きいことにより、導電性チューブ20からのプランジャー10の抜けが防止される。導電性チューブ20は、先端に接触部21を有すると共に、外周面に図示しない支持体からの抜けを防止するための凸部22を一周に渡って有する。図示は省略したが、1つの支持体に対して多数のスプリングコネクタ1が挿入保持される。スプリング30は、導電性チューブ20の内側に収容され、一端が導電性チューブ20内の端面に接触し、他端がプランジャー10の基端面に接触し、プランジャー10及び導電性チューブ20を互いに離れる方向に付勢して、プランジャー10及び導電性チューブ20の先端にそれぞれ図示しない接続対象端子(例えば検査基板の電極と検査対象物の電極)に対する接触力を付与する。
【0015】
図2は、図1のスプリング30の拡大図である。スプリング30は、例えばピアノ線やステンレス線等の一般的な金属の線材が隙間を有して螺旋状(コイル状)に周回する構造のコイルスプリングであり、両端にそれぞれ狭ピッチ部31を有する。狭ピッチ部31の1つあたりの巻数をtとし、図2に示すように、スプリング30を構成する線材の外径をφd、狭ピッチ部31以外における線材間の隙間長をA、狭ピッチ部31における線材間の隙間長をCとする。なお、図示の例ではt=1である。狭ピッチ部31の全長Bは、
B=φd×(1+t)+C×t
である。本実施の形態のスプリング30は、下記の4条件、
C>0、
B>A、
C<φd、
A>φd×(1+t)
を全て満たす。
【0016】
上記条件のうち、C>0は、狭ピッチ部31が密着巻きではなく線材間に隙間があることを示し、これにより、狭ピッチ部31もバネとして機能することになり、C=0の場合と比較して、同じバネ圧及び同じストローク長を確保するための巻数を削減でき(図5も参照)、巻数が同じならバネ圧及びストローク長を大きくすることができる。すなわち、スプリング30の設計の自由度が高められる。
【0017】
B>Aは、1つの狭ピッチ部31の全長が狭ピッチ部31以外における線材間の隙間長よりも長いことを示し、これにより図3に示すように、一方のスプリング30の狭ピッチ部31が他方のスプリング30の狭ピッチ部31以外における線材間の隙間から入り込んでスプリング30同士が絡むことを防止できる。
【0018】
C<φdは、狭ピッチ部31における線材間の隙間長が線材の外径よりも短いことを示し、これにより一方のスプリング30の線材が他方のスプリング30の狭ピッチ部31における線材間の隙間から入り込んでスプリング30同士が絡むことを防止できる。
【0019】
A>φd×(1+t)は、本実施の形態では狭ピッチ部31の線材間に隙間があること(C>0)によって隙間が無い場合(C=0)よりも狭ピッチ部31以外における線材間の隙間長Aを長くできることを踏まえ、狭ピッチ部31以外における線材間の隙間長Aを、狭ピッチ部31の線材間に隙間が無い場合(C=0)の許容最大長(<φd×(1+t))よりも長くしたことを示し、これにより、C=0かつA<φd×(1+t)の場合と比較して、同じバネ圧及び同じストローク長を確保するための巻数を削減でき(図5も参照)、巻数が同じならバネ圧及びストローク長を大きくすることができる。すなわち、スプリング30の設計の自由度が高められる。
【0020】
図4は、比較例におけるスプリング830の拡大図である。スプリング830は、図2に示すスプリング30と異なり、両端にそれぞれ存在する狭ピッチ部831が密着巻きであって線材間に隙間が無い(図2においてC=0とした場合に対応する)。この場合、1つの狭ピッチ部831の全長(B=φd×(1+t))が狭ピッチ部831以外における線材間の隙間長Aよりも長ければ(B>Aであれば)、スプリング830同士の絡みを防止できる。しかし、狭ピッチ部831がバネとして機能しないこと、及び絡み防止のためにB=φd×(1+t)>Aを満たす必要がある(Aをφd×(1+t)よりも長くできない)点で、図2に示す実施の形態のスプリング30と比較して、同じバネ圧及び同じストローク長を確保するための巻数が多く必要となる(図5も参照)。
【0021】
図5は、実施の形態のスプリングコネクタ1と比較例のスプリングコネクタ801との第1比較図であり、スプリング30とスプリング830のバネ圧、線材外径(φd)、及びストローク長を同じとした場合の比較図である。ストローク長を等しくした結果として、スプリング830の全長は、スプリング30の全長よりも、φd×2だけ長くなっている(巻数が二巻き多くなっている)。これに伴い、導電性チューブ820は、導電性チューブ20よりも長くなっている。換言すれば、本実施の形態のスプリングコネクタ1は、スプリング30を、スプリング830と同じバネ圧、同じ線材外径、及び同じストローク長としながらスプリング830よりも全長をφd×2だけ短くできることから、比較例のスプリングコネクタ801と同じ接触力及び同じストローク長としながら、比較例のスプリングコネクタ801よりも全長をφd×2だけ短尺化することができ、高周波特性を向上させることができる。例えばスプリング線材外径が0.1mmの場合、スプリングコネクタ全長を0.2mm短縮できる。
【0022】
図6は、実施の形態のスプリングコネクタ1と比較例のスプリングコネクタ801との第2比較図であり、スプリング30とスプリング830の全長及びストローク長を同じとし、スプリング30の線材外径をスプリング830の線材外径よりも大きくした場合の比較図である。スプリング30のほうがスプリング830よりも線材外径が大きいことにより、バネ圧はスプリング30のほうが大きい。本実施の形態のスプリングコネクタ1は、スプリング30を、スプリング830と同じ全長及び同じストローク長としながらスプリング830よりも線材外径を大きくしてバネ圧を高めることができるため、比較例のスプリングコネクタ801と同じ全長及び同じストローク長としながら、比較例のスプリングコネクタ801よりも接触力を高くすることができ、接触抵抗の安定度を向上させることができる。例えば使用長1.5mmのスプリングコネクタとした場合において、スプリング830の線材外径を0.045mm、スプリング30の線材外径を0.05mmとした場合、スプリングコネクタ801の接触力が20gfであるのに対し、スプリングコネクタ1の接触力は27gfまで高められる。
【0023】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0024】
(1) スプリング30において、図2に示すように、線材間に隙間を有する狭ピッチ部31の全長Bを、狭ピッチ部31以外における線材間の隙間長Aよりも長くしているため、図3に示すように、一方のスプリング30の狭ピッチ部31が他方のスプリング30の狭ピッチ部31以外における線材間の隙間から入り込んでスプリング30同士が絡むことを防止でき、スプリングコネクタ1の組立工程におけるスプリング30同士の絡みを抑制することができる。
【0025】
(2) スプリング30において、図2に示すように、狭ピッチ部31における線材間の隙間長Cを、線材の外径φdよりも短くしているため、一方のスプリング30の線材が他方のスプリング30の狭ピッチ部31における線材間の隙間から入り込んでスプリング30同士が絡むことを防止でき、スプリングコネクタ1の組立工程におけるスプリング30同士の絡みを抑制することができる。
【0026】
(3) スプリング30において、図2に示すように、C>0かつA>φd×(1+t)としているため、図4に示す比較例のスプリング830(C=0かつA<φd×(1+t))と比較して、同じバネ圧及び同じストローク長を確保するための巻数を削減できる。ここで、巻数削減を利用して、図5に示すようにスプリングコネクタ1の全長を短くすれば高周波特性を向上させることができ、図6に示すようにスプリング30の線材外径を大きくすればバネ圧を高めて接触抵抗の安定度を向上させることができる。
【0027】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0028】
狭ピッチ部31の個数は、1つであってもよい。狭ピッチ部31の位置は、スプリング30の中間部であってもよい。狭ピッチ部31をスプリング30の両端にそれぞれ設けることで絡み抑制効果が顕著となるが、狭ピッチ部31が1つのみであったり中間部に設けられたりする場合でも、一定の絡み抑制効果は得られる。狭ピッチ部31の巻数は、一巻きに限定されず、二巻き以上であってもよい。スプリングコネクタ1は、導電性チューブ20の両側にそれぞれプランジャーを有し、スプリング30により両プランジャーを互いに離れる方向に付勢する構成であってもよいし、スプリング30を用いる他の様々な構成とすることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 スプリングコネクタ、10 プランジャー(導電性ピン)、11 小径部、12 大径部、20 導電性チューブ、21 接触部、22 凸部、23 絞り部、30 スプリング、31 狭ピッチ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7