特許第6963975号(P6963975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963975
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】舶用ディーゼルエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02B 29/04 20060101AFI20211028BHJP
   F01P 7/16 20060101ALI20211028BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20211028BHJP
   F02B 37/013 20060101ALI20211028BHJP
   B63H 21/14 20060101ALI20211028BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20211028BHJP
   B63J 1/00 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   F02B29/04 R
   F01P7/16 504A
   F01P7/16 507E
   F01P7/16 503
   F02B37/00 302D
   F02B37/00 500B
   F02B37/013
   B63H21/14
   B63H21/38 A
   B63J1/00
【請求項の数】4
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2017-226797(P2017-226797)
(22)【出願日】2017年11月27日
(65)【公開番号】特開2019-94874(P2019-94874A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2020年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 純
(72)【発明者】
【氏名】溝口 順之
(72)【発明者】
【氏名】松田 力
【審査官】 家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−145302(JP,A)
【文献】 特開2013−204491(JP,A)
【文献】 特開2016−191304(JP,A)
【文献】 特開2012−087737(JP,A)
【文献】 特表2009−515088(JP,A)
【文献】 特開昭62−218618(JP,A)
【文献】 特開2017−078374(JP,A)
【文献】 特開2009−248013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 29/04
F01P 7/16
F02B 37/00
F02B 37/013
B63H 21/14
B63H 21/38
B63J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させて船舶の推進力を出力するエンジン本体と、
外部から燃焼用ガスを吸入して圧縮する第1の過給機と、
前記第1の過給機によって圧縮された燃焼用ガスである圧縮ガスを冷却する冷却器と、
前記冷却器による冷却後の前記圧縮ガスをさらに圧縮して前記エンジン本体に送給する第2の過給機と、
冷却後の前記圧縮ガスの温度を検出する温度検出部と、
冷却後の前記圧縮ガスの圧力を検出する圧力検出部と、
前記第1の過給機による前記圧縮ガスを冷却するための冷却水を前記冷却器に供給する供給管と、
前記圧縮ガスの冷却に使用された前記冷却水を前記冷却器から排出する出口管と、
前記出口管を通じて排出された前記冷却水を前記供給管に戻す循環管と、
前記供給管から分岐して前記冷却器を介さずに前記循環管に合流する短絡管と、
前記供給管を通じて前記冷却器に供給される前記冷却水の流量を調整する調整部と、
前記圧力の検出値をもとに冷却後の前記圧縮ガスの圧力下露点温度を導出して、前記温度の検出値と前記圧力下露点温度とを比較し、前記温度の検出値が前記圧力下露点温度未満である場合、前記冷却器による前記圧縮ガスの冷却を抑制するように前記調整部を制御する制御部と、
を備え
前記冷却水は清水であり、
前記供給管は、前記冷却器の入口に連結される第1の分岐管と、前記短絡管と連通可能に接続され且つ前記第1の分岐管に合流する第2の分岐管と、に分岐する配管であり、
前記調整部は、
前記第1の分岐管を通じて前記冷却器に供給される前記清水の流量を調整する第1の調整弁と、
前記第2の分岐管から前記短絡管を通じて前記循環管に流入する前記清水の流量を調整して、前記第2の分岐管から前記第1の分岐管に流入する前記清水の流量を調整する第2の調整弁と、
によって構成されることを特徴とする舶用ディーゼルエンジン。
【請求項2】
前記制御部は、前記温度の検出値が前記圧力下露点温度と同じである場合、前記冷却水の現在の流量を維持するように前記調整部を制御し、前記温度の検出値が前記圧力下露点温度を超える場合、前記冷却器による前記圧縮ガスの冷却を強化するように前記調整部を制御することを特徴とする請求項1に記載の舶用ディーゼルエンジン。
【請求項3】
所定の設定温度以上の清水を利用して造水する造水装置を有し、前記エンジン本体に清水を供給して前記エンジン本体を冷却しながら、前記エンジン本体の冷却に使用されて前記設定温度以上となった清水を前記造水装置に供給するエンジン本体冷却系統と、
前記出口管からの清水を前記造水装置の入側に送出する送水管と、
前記出口管からの清水の流通先を前記循環管と前記送水管とのいずれかに切り換える切換弁と、
前記出口管内の清水温度を検出する清水温度検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記清水温度の検出値と前記設定温度とを比較し、前記清水温度の検出値が前記設定温度未満である場合、前記出口管からの清水の流通先を前記循環管とし、前記清水温度の検出値が前記設定温度以上である場合、前記出口管からの清水の流通先を前記送水管とするように、前記切換弁を制御し、
前記造水装置によって造られた清水は、前記船舶内で清水を使用する清水系統に供給されることを特徴とする請求項1または2に記載の舶用ディーゼルエンジン。
【請求項4】
所定の設定温度以上の清水を利用して造水する造水装置を有し、前記エンジン本体に清水を供給して前記エンジン本体を冷却しながら、前記エンジン本体の冷却に使用されて前記設定温度以上となった清水を前記造水装置に供給するエンジン本体冷却系統と、
前記出口管からの清水を前記造水装置の出側に送出する送水管と、
前記送水管に設けられる追加造水装置と、
前記出口管からの清水の流通先を前記循環管と前記送水管とのいずれかに切り換える切換弁と、
前記出口管内の清水温度を検出する清水温度検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記清水温度の検出値と前記設定温度とを比較し、前記清水温度の検出値が前記設定温度未満である場合、前記出口管からの清水の流通先を前記循環管とし、前記清水温度の検出値が前記設定温度以上である場合、前記出口管からの清水の流通先を前記送水管とするように、前記切換弁を制御し、
前記追加造水装置は、前記送水管内を流通する前記設定温度以上の清水を利用して新たに清水を造り、
前記造水装置および前記追加造水装置によって造られた各清水は、前記船舶内で清水を使用する清水系統に供給されることを特徴とする請求項1または2に記載の舶用ディーゼルエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に搭載される舶用ディーゼルエンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の分野においては、舶用ディーゼルエンジンのエンジン本体の出力や燃費効率を向上させる手段として、二段式過給機等の複数の過給機がエンジン本体に適用されている。例えば、非特許文献1には、エンジン本体から排出された排ガスの圧力によってタービンとともに圧縮機を回転可能に構成した過給機(ターボチャージャ)を、空気等の燃焼用ガスを二段階に圧縮してエンジン本体に送給するための高圧段過給機および低圧段過給機として備える二段過給システムが開示されている。
【0003】
また、過給機効率を良くするという観点から、過給機によって圧縮される燃焼用ガス(すなわち、過給機の圧縮機に吸い込まれる燃焼用ガス)の温度は低くすることが好ましい。このため、低圧段過給機の圧縮機から高圧段過給機の圧縮機に圧送される燃焼用ガスの流通経路上には、低圧段過給機の圧縮機による圧縮後の燃焼用ガス(以下、圧縮ガスと適宜いう)を高圧段過給機の圧縮機に吸い込まれる前に冷却する冷却器(例えば、非特許文献1に記載の二段過給システムの中間冷却器)が設けられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「二段過給システムを用いた高効率ガスエンジンの開発」、三菱重工技報、Vol.52 No.1(2015年)、p.70−75
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、圧縮機に吸い込まれる前の圧縮ガスをより低温に冷却するに伴って、過給機効率は向上する傾向にある。しかしながら、圧縮ガスをその圧力下露点温度(圧力露点ともいう)未満に冷却し過ぎると、圧縮ガス中に凝縮した水滴(ドレン水)が発生してしまう。このようなドレン水を含む圧縮ガスが高圧段過給機の圧縮機に吸い込まれた場合、この圧縮機の羽根車に圧縮ガス中のドレン水が打ち付けられるドレンアタックが起こり、この結果、羽根車(例えばコンプレッサ翼)が機械的に変形または削り取られて(この現象をエロージョンという)、圧縮機が破損してしまう虞がある。
【0006】
特に、舶用ディーゼルエンジンにおいては、エンジン本体が幅広い負荷域で運転されることから、このエンジン本体からの排ガスを動力源とする過給機による圧縮ガスの温度は、エンジン本体の負荷(以下、エンジン負荷という)に応じて大きく変化する。このように温度変化が大きい圧縮ガスを、過給機の圧縮機に吸い込まれる前の段階でドレン水が発生しないように適切に冷却することは、上述した従来技術では困難である。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、圧縮後の燃焼用ガスを適切に冷却するとともに、過給機の圧縮機のドレンアタックに起因する破損を抑制することができる舶用ディーゼルエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、燃料を燃焼させて船舶の推進力を出力するエンジン本体と、外部から燃焼用ガスを吸入して圧縮する第1の過給機と、前記第1の過給機によって圧縮された燃焼用ガスである圧縮ガスを冷却する冷却器と、前記冷却器による冷却後の前記圧縮ガスをさらに圧縮して前記エンジン本体に送給する第2の過給機と、冷却後の前記圧縮ガスの温度を検出する温度検出部と、冷却後の前記圧縮ガスの圧力を検出する圧力検出部と、前記第1の過給機による前記圧縮ガスを冷却するための冷却水を前記冷却器に供給する供給管と、前記供給管を通じて前記冷却器に供給される前記冷却水の流量を調整する調整部と、前記圧力の検出値をもとに冷却後の前記圧縮ガスの圧力下露点温度を導出して、前記温度の検出値と前記圧力下露点温度とを比較し、前記温度の検出値が前記圧力下露点温度未満である場合、前記冷却器による前記圧縮ガスの冷却を抑制するように前記調整部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、上記の発明において、前記制御部は、前記温度の検出値が前記圧力下露点温度と同じである場合、前記冷却水の現在の流量を維持するように前記調整部を制御し、前記温度の検出値が前記圧力下露点温度を超える場合、前記冷却器による前記圧縮ガスの冷却を強化するように前記調整部を制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、上記の発明において、前記圧縮ガスの冷却に使用された前記冷却水を前記冷却器から排出する出口管と、前記供給管から分岐して前記冷却器を介さずに前記出口管に合流する短絡管と、を備え、前記調整部は、前記供給管から前記短絡管を通じて前記出口管に流入する前記冷却水の流量を調整することにより、前記供給管を通じて前記冷却器に供給される前記冷却水の流量を調整する調整弁であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、上記の発明において、前記冷却水は清水であり、前記出口管は、前記冷却器から排出された前記清水を前記供給管に戻す循環管であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、上記の発明において、前記圧縮ガスの冷却に使用された前記冷却水を前記冷却器から排出する出口管と、前記出口管を通じて排出された前記冷却水を前記供給管に戻す循環管と、前記供給管から分岐して前記冷却器を介さずに前記循環管に合流する短絡管と、を備え、前記冷却水は清水であり、前記供給管は、前記冷却器の入口に連結される第1の分岐管と、前記短絡管と連通可能に接続され且つ前記第1の分岐管に合流する第2の分岐管と、に分岐する配管であり、前記調整部は、前記第1の分岐管を通じて前記冷却器に供給される前記清水の流量を調整する第1の調整弁と、前記第2の分岐管から前記短絡管を通じて前記循環管に流入する前記清水の流量を調整して、前記第2の分岐管から前記第1の分岐管に流入する前記清水の流量を調整する第2の調整弁と、によって構成されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、上記の発明において、所定の設定温度以上の清水を利用して造水する造水装置を有し、前記エンジン本体に清水を供給して前記エンジン本体を冷却しながら、前記エンジン本体の冷却に使用されて前記設定温度以上となった清水を前記造水装置に供給するエンジン本体冷却系統と、前記出口管からの清水を前記造水装置の入側に送出する送水管と、前記出口管からの清水の流通先を前記循環管と前記送水管とのいずれかに切り換える切換弁と、前記出口管内の清水温度を検出する清水温度検出部と、を備え、前記制御部は、前記清水温度の検出値と前記設定温度とを比較し、前記清水温度の検出値が前記設定温度未満である場合、前記出口管からの清水の流通先を前記循環管とし、前記清水温度の検出値が前記設定温度以上である場合、前記出口管からの清水の流通先を前記送水管とするように、前記切換弁を制御し、前記造水装置によって造られた清水は、前記船舶内で清水を使用する清水系統に供給されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、上記の発明において、所定の設定温度以上の清水を利用して造水する造水装置を有し、前記エンジン本体に清水を供給して前記エンジン本体を冷却しながら、前記エンジン本体の冷却に使用されて前記設定温度以上となった清水を前記造水装置に供給するエンジン本体冷却系統と、前記出口管からの清水を前記造水装置の出側に送出する送水管と、前記送水管に設けられる追加造水装置と、前記出口管からの清水の流通先を前記循環管と前記送水管とのいずれかに切り換える切換弁と、前記出口管内の清水温度を検出する清水温度検出部と、を備え、前記制御部は、前記清水温度の検出値と前記設定温度とを比較し、前記清水温度の検出値が前記設定温度未満である場合、前記出口管からの清水の流通先を前記循環管とし、前記清水温度の検出値が前記設定温度以上である場合、前記出口管からの清水の流通先を前記送水管とするように、前記切換弁を制御し、前記追加造水装置は、前記送水管内を流通する前記設定温度以上の清水を利用して新たに清水を造り、前記造水装置および前記追加造水装置によって造られた各清水は、前記船舶内で清水を使用する清水系統に供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る舶用ディーゼルエンジンによれば、圧縮後の燃焼用ガスを適切に冷却するとともに、過給機の圧縮機のドレンアタックに起因する破損を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施形態2に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。
図3図3は、本発明の実施形態3に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。
図4図4は、本発明の実施形態4に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。
図5図5は、本発明の実施形態4における低温冷却水系統の清水の流通制御の一例を示すフロー図である。
図6図6は、本発明の実施形態4における中間冷却強化処理の一例を示すフロー図である。
図7図7は、本発明の実施形態4における中間冷却抑制処理の一例を示すフロー図である。
図8図8は、本発明の実施形態5に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0018】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジンの構成について説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジン11は、エンジン本体1と、エンジン本体1に対する燃料供給のための噴射部5と、二段式過給機10と、燃焼用ガスを冷却するための中間冷却器12およびガス冷却器16と、燃焼用ガス中のドレン水を除去するための気液分離装置13、17と、燃焼用ガスの温度を検出するための温度検出部14と、燃焼用ガスの圧力を検出するための圧力検出部15と、制御部18とを備える。また、図1に示すように、舶用ディーゼルエンジン11は、排気用の配管としての排気管101〜103と、排気ガスを適宜抽気するための抽気管104および抽気弁105と、給気用の配管としての給気管111〜113とを備える。さらに、図1に示すように、舶用ディーゼルエンジン11は、エンジン本体1を冷却するための高温冷却水系統150と、中間冷却器12およびガス冷却器16に冷却媒体としての冷却水を供給するための低温冷却水系統200とを備える。
【0019】
なお、図1において、燃焼用ガスや冷却水等の流体の流通および配管は、実線矢印によって適宜図示される。電気信号線は、破線によって適宜図示される。このことは、以下においても同様である。
【0020】
エンジン本体1は、図示しないが、プロペラ軸を介して船舶の推進用プロペラを駆動回転させる推進用の機関(主機関)である。このエンジン本体1は、ユニフロー掃排気式のクロスヘッド式ディーゼルエンジン等の2ストロークディーゼルエンジンである。例えば、図1に示すように、エンジン本体1は、複数(実施形態1では6つ)のシリンダ2と、掃気トランク3と、排気マニホールド4とを備える。また、エンジン本体1は、図示しないが、各シリンダ2の内部に沿って往復運動(例えば上下動)するピストン、ピストンの往復運動に伴ってプロペラ軸を回転させるためのクランク、クランクシャフトおよびクロスヘッド等を備える。
【0021】
複数のシリンダ2の各々は、ピストンを往復運動させるための吸排気および燃料燃焼等が行われる燃焼室を形成する。掃気トランク3は、エンジン本体1内における掃気ポート(図示せず)を介して各シリンダ2内の燃焼室と連通している。排気マニホールド4は、エンジン本体1内における排気流路(図示せず)を介して各シリンダ2内の燃焼室と連通している。エンジン本体1は、各シリンダ2内の燃焼室における燃料燃焼によるピストンの往復運動を、船舶の推進力を出力する出力軸(具体的にはプロペラ軸またはクランクシャフト等)の回転運動に変換する。この際、エンジン本体1は、各シリンダ2内の吸排気の流れを下方から上方への一方向として、排気の残留を無くすようにしている。具体的には、掃気トランク3から各シリンダ2内の燃焼室へ燃焼用ガスが給気され、燃焼後の排ガスが各シリンダ2内の燃焼室から排気マニホールド4へ排出される。このようなエンジン本体1において、図1に示すように、掃気トランク3には給気管113が連結され、排気マニホールド4には排気管101が連結されている。なお、排ガスとは、エンジン本体1から排気管101等を通じて外部に排出されるガスである。
【0022】
噴射部5は、各シリンダ2内の燃焼室へ燃料を噴射するものである。図1に示すように、噴射部5は、複数の燃料噴射ポンプ6と、複数の燃料噴射弁7とを備え、エンジン本体1に設けられる。本実施形態1において、燃料噴射ポンプ6は、上述したシリンダ2の数量に対応して、各々6つずつ、エンジン本体1に設けられている。燃料噴射弁7は、例えば図1に示すように、燃焼室内の互いに違う方向に噴射口を向ける態様で2つずつ、各シリンダ2に設けられている。
【0023】
複数の燃料噴射ポンプ6の各々は、燃料用の配管を介して各燃料噴射弁7に燃料を送り込む。噴射部5は、各燃料噴射ポンプ6による燃料の圧送作用により、各燃料噴射弁7から各シリンダ2内の燃焼室へ、燃料を噴射する。この結果、各燃料噴射ポンプ6からの燃料は、各シリンダ2内の燃焼室へ噴射されて燃焼する。このような噴射部5による燃料の噴射量および噴射タイミング等は、制御部18による各燃料噴射ポンプ6の駆動制御、各燃料噴射弁7の開閉制御を通じて、各々制御される。
【0024】
二段式過給機10は、エンジン本体1からの排ガスを利用して、空気等の燃焼用ガスを段階的に圧縮してエンジン本体1に送り込む多段式過給機の一例である。本実施形態1において、図1に示すように、二段式過給機10は、低圧段過給機8と、高圧段過給機9と、排気管102と、給気管112とを備える。例えば、二段式過給機10は、エンジン本体1に通じる排気管101および給気管113と、外部に通じる排気管103および給気管111と、の間に設けられている。
【0025】
低圧段過給機8は、二段式過給機10における一段階目の過給を行うものである。本実施形態1において、低圧段過給機8は、図1に示すように、低圧段圧縮機8aと、低圧段タービン8bと、回転軸8cとを備える。低圧段圧縮機8aおよび低圧段タービン8bは、羽根車等によって各々構成され、回転軸8cを中心軸にして一体に回転するように、回転軸8cによって互いに連結されている。また、低圧段圧縮機8aのガス入側には、外部(大気)からの新たな空気(新気ともいう)等のガスを吸入する給気管111が連結されている。低圧段圧縮機8aのガス出側には、高圧段過給機9等に通じる給気管112が連結されている。低圧段タービン8bのガス入側には、高圧段過給機9等に通じる排気管102が連結されている。低圧段タービン8bのガス出側には、外部へ排ガスを排出する煙突(図示せず)等に通じる排気管103が連結されている。
【0026】
高圧段過給機9は、二段式過給機10における二段階目の過給を行うものである。本実施形態1において、高圧段過給機9は、図1に示すように、高圧段圧縮機9aと、高圧段タービン9bと、回転軸9cとを備える。高圧段圧縮機9aおよび高圧段タービン9bは、羽根車等によって各々構成され、回転軸9cを中心軸にして一体に回転するように、回転軸9cによって互いに連結されている。また、高圧段圧縮機9aのガス入側には、低圧段圧縮機8aに通じる給気管112が連結されている。高圧段圧縮機9aのガス出側には、エンジン本体1の掃気トランク3に通じる給気管113が連結されている。高圧段タービン9bのガス入側には、エンジン本体1の排気マニホールド4に通じる排気管101が連結されている。高圧段タービン9bのガス出側には、低圧段タービン8bに通じる排気管102が連結されている。
【0027】
また、図1に示すように、低圧段タービン8bと高圧段タービン9bとの間の排気管102には、抽気管104が連結されている。抽気管104は、入口端が排気管101の中途部に接続され且つ出口端が排気管102の中途部に接続されている。このような抽気管104は、排気管101から分岐し高圧段過給機9を迂回して排気管102に合流する抽気経路を形成する。抽気管104は、エンジン本体1の排気マニホールド4から排出された高温高圧の排ガスの一部を排気管101から抽気し、この抽気した排ガスを排気管102内の排ガス(高圧段タービン9bの回転に使用された排ガス)と混合する。また、図1に示すように、抽気管104には、抽気弁105が設けられている。抽気弁105は、開閉駆動によって抽気管104の開閉を行う。
【0028】
上述したような構成を有する二段式過給機10は、エンジン本体1からの排ガスを利用して稼働し、エンジン本体1に対して燃焼用ガスの二段階の過給を行う。詳細には、エンジン本体1の排気マニホールド4から排出された排ガスは、排気管101を通じて高圧段タービン9bへ導かれる。高圧段タービン9bは、この排気管101からの排ガスを動力源として回転しながら、この回転に使用された排ガスを排気管102へ送出する。排気管102内の排ガスは、低圧段タービン8bへ導かれる。低圧段タービン8bは、この排気管102からの排ガスを動力源として回転しながら、この回転に使用された排ガスを排気管103へ送出する。排気管103内の排ガスは、煙突等を通じて外部に排出される。
【0029】
ここで、エンジン負荷が所定値未満である場合、抽気弁105は、閉状態となって抽気管104を閉じる。この場合、エンジン本体1からの排ガスは、抽気管104に抽気されずに排気管101から高圧段タービン9bに流入する。一方、エンジン負荷が所定値以上である場合、抽気弁105は、開状態となって抽気管104を開く。この場合、エンジン本体1からの排ガスの一部は、排気管101から抽気管104を通じて排気管102に流入し、高圧段タービン9bからの排ガスと合流して低圧段タービン8bへ導かれる。なお、抽気弁105の開閉駆動および開閉タイミングは、制御部18によって制御されてもよいし、制御部18以外に別途設けられた制御部(図示せず)によって制御されてもよい。
【0030】
一方、低圧段過給機8(第1の過給機)において、低圧段圧縮機8aは、上述した低圧段タービン8bの回転に伴い回転して、外部から給気管111を通じて空気等の燃焼用ガスを吸入し、吸入した燃焼用ガスを圧縮して給気管112へ送出する。この低圧段圧縮機8aによって圧縮された燃焼用ガスである圧縮ガスは、給気管112を通じて中間冷却器12へ導かれ、中間冷却器12によって冷却される。この冷却後の圧縮ガスは、給気管112に沿って流通し、気液分離装置13を通って高圧段圧縮機9aに流入する。
【0031】
また、高圧段過給機9(第2の過給機)において、高圧段圧縮機9aは、上述した高圧段タービン9bの回転に伴い回転して、給気管112から中間冷却器12による冷却後の圧縮ガスを吸入し、吸入した圧縮ガスをさらに圧縮してエンジン本体1に送給する。この際、高圧段圧縮機9aによってさらに圧縮された圧縮ガスである高圧圧縮ガスは、給気管113を通じてガス冷却器16へ導かれ、ガス冷却器16によって冷却される。この冷却後の高圧圧縮ガスは、給気管113に沿って流通し、気液分離装置17を通ってエンジン本体1の掃気トランク3に給気される。
【0032】
中間冷却器12は、低圧段過給機8(詳細には低圧段圧縮機8a)によって圧縮された燃焼用ガスを冷却するための冷却器である。図1に示すように、中間冷却器12は、給気管112の中途部に設けられる。中間冷却器12は、低圧段圧縮機8aによって圧縮されて高温となった燃焼用ガスを、例えば冷却水との熱交換等によって冷却する。
【0033】
気液分離装置13は、中間冷却器12による冷却後の圧縮ガスと液滴(ドレン水)とを分離するための装置である。図1に示すように、気液分離装置13は、給気管112の中途部であって中間冷却器12と高圧段圧縮機9aとの間に設けられる。気液分離装置13は、中間冷却器12による冷却後の圧縮ガス中にドレン水が発生した場合、このドレン水を捕捉して圧縮ガスから分離し、除去する。
【0034】
温度検出部14は、中間冷却器12による冷却後の圧縮ガスの温度を検出するものである。図1に示すように、温度検出部14は、給気管112の中途部であって中間冷却器12と気液分離装置13との間に設けられる。温度検出部14は、給気管112内を流通する上記冷却後の圧縮ガスの温度(以下、圧縮ガス温度Tcという)を検出し、その都度、検出した圧縮ガス温度Tcを示す電気信号を制御部18に送信する。
【0035】
圧力検出部15は、中間冷却器12による冷却後の圧縮ガスの圧力を検出するものである。図1に示すように、圧力検出部15は、給気管112の中途部であって中間冷却器12と気液分離装置13との間(本実施形態1では温度検出部14の後段)に設けられる。圧力検出部15は、給気管112内を流通する上記冷却後の圧縮ガスの圧力(以下、圧縮ガス圧力Pcという)を検出し、その都度、検出した圧縮ガス圧力Pcを示す電気信号を制御部18に送信する。なお、圧力検出部15は、中間冷却器12と温度検出部14との間(すなわち温度検出部14の前段)に配置されてもよい。
【0036】
ガス冷却器16は、高圧段過給機9(詳細には高圧段圧縮機9a)によってさらに圧縮された燃焼用ガス(高圧圧縮ガス)を冷却するための冷却器である。図1に示すように、ガス冷却器16は、給気管113の中途部に設けられる。ガス冷却器16は、高圧段圧縮機9aによって圧縮されて高温となった高圧圧縮ガスを、例えば冷却水との熱交換等によって冷却する。
【0037】
気液分離装置17は、ガス冷却器16による冷却後の高圧圧縮ガスと液滴(ドレン水)とを分離するための装置である。図1に示すように、気液分離装置17は、給気管113の中途部であってガス冷却器16とエンジン本体1(詳細には掃気トランク3)との間に設けられる。気液分離装置17は、ガス冷却器16による冷却後の高圧圧縮ガス中にドレン水が発生した場合、このドレン水を捕捉して高圧圧縮ガスから分離し、除去する。
【0038】
制御部18は、エンジン本体1の運転を制御するエンジン制御機能と、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を制御する冷却制御機能とを兼ね備える。制御部18は、各種プログラムを実行してデータ処理を行うCPUおよびメモリ等によって構成され、図1中の破線(電気信号線)で示されるように、噴射部5の各燃料噴射ポンプ6を制御する。また、制御部18は、特に電気信号線は図示しないが、噴射部5の各燃料噴射弁7を制御することが可能である。例えば、制御部18は、エンジン本体1の運転に必要な量の燃料を適したタイミングに各シリンダ2内の燃焼室へ噴射するように、各燃料噴射ポンプ6および各燃料噴射弁7を制御する。制御部18は、これらの制御を通してエンジン本体1の回転数を制御し、これにより、船舶を航行または停止させるようにエンジン本体1の出力を制御する。
【0039】
また、制御部18は、温度検出部14による温度の検出値(圧縮ガス温度Tc)と圧力検出部15による圧力の検出値(圧縮ガス圧力Pc)とをもとに、中間冷却器12に冷却媒体として供給される冷却水の流量を制御する。制御部18は、この制御を通して、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を制御する。
【0040】
高温冷却水系統150は、エンジン本体1を冷却するためのエンジン本体冷却系統の一例である。本実施形態1において、図1に示すように、高温冷却水系統150は、造水装置151と、高温側中央冷却器152と、ポンプ153と、制御弁154と、温度検出部155とを備える。また、高温冷却水系統150は、エンジン本体1に冷却媒体としての清水を供給するための配管である給水管161および分流管162と、この清水を系統内で循環させるための配管である循環管163とを備える。
【0041】
造水装置151は、高温冷却水系統150に予め設定された所定の設定温度以上の清水を利用して造水する装置である。図1に示すように、造水装置151には、給水管161に通じる入口管161aおよび出口管161bが接続されている。また、造水装置151は、造水材料の一例である海水を容器(図示せず)内に貯留している。造水装置151は、上記設定温度以上の清水として、エンジン本体1の冷却に使用された高温の清水を給水管161から入口管161aを通じて受け入れる。造水装置151は、この受け入れた清水を熱源として、低圧環境下で容器内の海水を沸騰させる等して、この熱源に比べて低温の清水を造る。造水装置151による造水に使用された清水(熱源)は、造水装置151から出口管161bを通じて給水管161に送出され、給水管161内の清水と合流する。特に図示しないが、造水装置151によって造られた清水は、配管等を通じて膨張タンク等の専用タンクに貯蔵される。この専用タンクに貯蔵されている清水は、船舶内で清水を使用する清水系統に適宜供給される。
【0042】
本実施形態1において、高温冷却水系統150は、上記清水系統の一例である。具体的には、高温冷却水系統150は、エンジン本体1に清水を供給してエンジン本体1を冷却しながら、このエンジン本体1の冷却に使用されて所定の設定温度以上となった清水を造水装置151に供給する。このような高温冷却水系統150には、上記専用タンク内の清水が、例えば、エンジン本体1の冷却に使用される清水の消費量に応じて、給水管161の所定部分(具体的には図1に示すポンプ153の入側部分)に配管等を通じて適宜供給(補給)される。また、高温冷却水系統150においては、エンジン本体1を冷却した後の清水の温度(すなわちエンジン本体1の排水口部から排出される清水の出口温度)が予め設定されている。この設定された清水の出口温度(以下、設定温度Tsと適宜いう)は、例えば、75℃以上、90℃以下の範囲内の温度である。造水装置151は、この設定温度Ts以上の清水を熱源として造水できるように構成されている。
【0043】
給水管161は、図1に示すように、造水装置151側からエンジン本体1側に亘って配管される。給水管161は、入口端の近傍に、造水装置151の入口部に通じる入口管161aと、造水装置151の出口部に通じる出口管161bとを有する。給水管161の入口端には、エンジン本体1の排水口部と連通する循環管163が接続されている。給水管161の出口端は、エンジン本体1の給水口部に接続されている。また、給水管161の中途部には、ポンプ153と、制御弁154と、分流管162とが設けられている。
【0044】
分流管162は、造水装置151側からエンジン本体1に向かって給水管161内を流通する清水の一部を、高温側中央冷却器152を経由するように給水管161から分流させる配管である。図1に示すように、分流管162は、給水管161の中途部から分岐して制御弁154を介し給水管161に合流するように形成されている。また、分流管162の中途部には、高温側中央冷却器152が設けられている。分流管162は、給水管161内の清水の一部を高温側中央冷却器152へ導く。高温側中央冷却器152は、この分流管162から流入した清水を冷却する。この冷却後の清水は、分流管162から制御弁154を介して給水管161内の清水と合流可能である。
【0045】
ポンプ153は、高温冷却水系統150における清水の安定した流れを発生させるものである。具体的には、ポンプ153は、造水装置151側からエンジン本体1側に向かう清水の流れを給水管161内に発生させる。これと同時に、ポンプ153は、給水管161から高温側中央冷却器152を経由して制御弁154で給水管161に合流する清水の流れを分流管162内に発生させ、且つ、エンジン本体1側から造水装置151側に向かう清水の流れを循環管163内に発生させる。
【0046】
循環管163は、一端が給水管161の入口端に接続され且つ他端がエンジン本体1の排水口部に接続されている。循環管163は、エンジン本体1の冷却対象部位(例えば各シリンダ2等)を冷却した後の高温の清水を、エンジン本体1の排水口部から給水管161内へ循環させる。また、図1に示すように、循環管163の入口端近傍には、温度検出部155が設けられている。温度検出部155は、エンジン本体1の冷却に使用されて循環管163内へ送出された清水の温度を検出し、その都度、検出した清水の温度を示す電気信号を制御弁154に送信する。
【0047】
制御弁154は、エンジン本体1を冷却する清水の温度を調整するための弁である。図1に示すように、制御弁154は、給水管161の中途部であって給水管161と分流管162との合流部分に設けられる。制御弁154は、温度検出部155から電気信号を受信し、受信した電気信号に示される清水の温度の検出値が上述した高温冷却水系統150の設定温度Ts以上となるように、給水管161側の開度とともに分流管162側の開度を制御する。これにより、制御弁154は、分流管162から給水管161に合流する清水(高温側中央冷却器152によって冷却された低温の清水)の流量を制御し、この制御を通して、給水管161からエンジン本体1内に供給される清水の温度を調整する。この結果、エンジン本体1から循環管163に送出される清水の温度(すなわちエンジン本体1の冷却に使用されてエンジン本体1の排水口部から排出された清水の温度)は、上述した高温冷却水系統150の設定温度Ts以上となる。
【0048】
低温冷却水系統200は、圧縮された高温の燃焼用ガスを冷却する中間冷却器12等との間で冷却媒体としての冷却水を流通させる系統の一例である。本実施形態1において、図1に示すように、低温冷却水系統200は、冷却水の供給用配管である供給管201と、冷却に使用された冷却水を流通させるための配管である第1出口管202および第2出口管204と、中間冷却器12に供給する冷却水の流量を調整するための短絡管203および調整弁212と、ポンプ211とを備える。
【0049】
供給管201は、中間冷却器12等の冷却設備に冷却水を供給する配管である。本実施形態1において、図1に示すように、供給管201は、中間冷却器12に通じる第1入口管201aと、ガス冷却器16に通じる第2入口管201bと、船内設備210に通じる分岐管205とを有する。詳細には、供給管201は、入口端が冷却水の受入口になっており、出口端側が第1入口管201aと第2入口管201bとに分岐するように形成されている。第1入口管201aの出口端は、中間冷却器12の給水口部に接続されている。第2入口管201bの出口端は、ガス冷却器16の給水口部に接続されている。すなわち、図1に示すように、供給管201は、これらの第1入口管201aおよび第2入口管201bを介して、中間冷却器12およびガス冷却器16と並列に接続されている。供給管201は、低圧段過給機8による圧縮後の燃焼用ガス(圧縮ガス)を冷却するための冷却水を、第1入口管201aを通じて中間冷却器12に供給する。これに並行して、供給管201は、高圧段過給機9による圧縮後の燃焼用ガス(高圧圧縮ガス)を冷却するための冷却水を、第2入口管201bを通じてガス冷却器16に供給する。
【0050】
また、供給管201の中途部には、分岐管205が形成されている。具体的には、図1に示すように、分岐管205は、第2入口管201bよりも供給管201の入口端側の部分で供給管201から分岐して、船内設備210に通じるように配管されている。供給管201は、この分岐管205を通じて船内設備210に冷却水を供給する。なお、船内設備210の出口側には、排水管206が接続されている。船内設備210の冷却に使用された冷却水は、排水管206を通じて船外に排出される。
【0051】
本実施形態1において、冷却媒体としての冷却水は、海水である。この海水は、例えば、船外から汲み上げる等によって得ることができる。また、船内設備210としては、例えば、船内を冷やす冷房装置、潤滑油を冷却するための冷却設備等が挙げられる。
【0052】
第1出口管202は、圧縮ガスの冷却に使用された冷却水を中間冷却器12から排出するための配管である。本実施形態1において、図1に示すように、第1出口管202は、出口端が冷却水の排出口になっており、且つ、入口端が中間冷却器12の排水口部に接続されている。また、第1出口管202は、高温冷却水系統150の高温側中央冷却器152に通じる分岐管207を有する。第1出口管202は、圧縮ガスの冷却に使用された冷却水を中間冷却器12から受け入れ、受け入れた冷却水の一部を分岐管207から高温側中央冷却器152に供給するとともに、残りの冷却水を出口端から船外へ排出する。なお、高温側中央冷却器152の排水口部には、排水管208が接続されている。高温側中央冷却器152に使用された冷却水は、排水管208を通じて船外に排出される。
【0053】
短絡管203は、供給管201から分岐して中間冷却器12を介さずに第1出口管202に合流する配管である。具体的には、図1に示すように、短絡管203は、入口端が第1出口管202の中途部に接続され、且つ、出口端が供給管201の一分岐管(第1入口管201a)に接続されている。短絡管203は、中間冷却器12を介さずに第1入口管201aから第1出口管202に冷却水を流通させる短絡流通経路を形成する。短絡管203から第1出口管202に流入した冷却水は、上述した中間冷却器12からの冷却水と同様に、第1出口管202内を流通する。
【0054】
第2出口管204は、高圧圧縮ガスの冷却に使用された冷却水をガス冷却器16から排出するための配管である。本実施形態1において、図1に示すように、第2出口管204は、出口端が第1出口管202の中途部に接続され、且つ、入口端がガス冷却器16の排水口部に接続されている。第2出口管204は、高圧圧縮ガスの冷却に使用された冷却水をガス冷却器16から受け入れ、受け入れた冷却水を第1出口管202へ導く。第2出口管204から第1出口管202に流入した冷却水は、上述した中間冷却器12からの冷却水と同様に、第1出口管202内を流通する。
【0055】
ポンプ211は、低温冷却水系統200における冷却水の安定した流れを発生させるものである。図1に示すように、ポンプ211は、供給管201の入口端の近傍に設けられる。ポンプ211は、低温冷却水系統200を構成する供給管201、第1出口管202および第2出口管204等の各配管内を流通する冷却水の安定した流れを発生させる。
【0056】
調整弁212は、供給管201を通じて中間冷却器12に供給される冷却水の流量を調整する調整部として機能する弁である。具体的には、図1に示すように、調整弁212は、上述した短絡管203の中途部に設けられている。調整弁212は、制御部18によって開度が制御され、この制御された開度に応じて、供給管201(詳細には第1入口管201a)から短絡管203を通じて第1出口管202に流入する冷却水の流量を調整する。これにより、調整弁212は、供給管201を通じて第1入口管201aから中間冷却器12に供給される冷却水の流量を調整する。
【0057】
つぎに、低温冷却水系統200における冷却水の流通制御について、図1を参照しつつ詳細に説明する。本実施形態1において、低温冷却水系統200における冷却水の流通は、制御部18によって制御される。
【0058】
詳細には、制御部18は、温度検出部14から電気信号を受信し、受信した電気信号に示される圧縮ガス温度Tc(中間冷却器12による冷却後の圧縮ガスの温度)を取得する。また、制御部18は、圧力検出部15から電気信号を受信し、受信した電気信号に示される圧縮ガス圧力Pcを取得する。ついで、制御部18は、取得した圧縮ガス圧力Pcをもとに、中間冷却器12による冷却後の圧縮ガスの圧力下露点温度Tdを導出する。圧力下露点温度Tdは、配管内の圧縮ガスの露点温度であり、例えば、予め想定された燃焼用ガス成分(空気等)における圧縮ガス圧力Pcを因子とする圧力下露点温度換算式から、相対湿度が100%になるときの圧縮ガスの温度(すなわち圧力下露点温度)を算出する等の手法により、導出することができる。制御部18は、導出した圧力下露点温度Tdと取得した圧縮ガス温度Tcとを比較し、これらの比較結果に応じて、供給管201から中間冷却器12へ流通する冷却水の流量を制御する。
【0059】
中間冷却器12への冷却水の流量制御において、制御部18は、圧縮ガス温度Tcが圧力下露点温度Td未満である場合、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を抑制するように調整弁212を制御する。この際、制御部18は、圧力下露点温度Tdと圧縮ガス温度Tcとの温度差ΔTをもとに、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を温度差ΔT分、抑制するために必要な調整弁212の開度を算出する。また、制御部18は、調整弁212の現在の開度を示す電気信号(以下、開度信号という)を調整弁212から受信し、受信した開度信号に基づく現在の開度を取得する。ついで、制御部18は、この現在の開度を上記算出した開度にするように指示する電気信号(以下、開度指令信号という)を調整弁212に送信し、これにより、調整弁212の開度を制御する。
【0060】
調整弁212は、この制御部18による制御に基づき駆動して、現在の開度を開度指令信号によって指示された開度にする(この場合は開度を増加させる)。これにより、調整弁212は、第1入口管201aから短絡管203に分流する冷却水の流量を増加させて、第1入口管201aから中間冷却器12に供給される冷却水の流量を減らす。この結果、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却は、上述した温度差ΔT分、抑制される。
【0061】
一方、圧縮ガス温度Tcが圧力下露点温度Tdと同じである場合、制御部18は、中間冷却器12による圧縮ガスの現在の冷却を維持するように調整弁212を制御する。この際、制御部18は、開度の維持を指示する開度指令信号を調整弁212に送信する。調整弁212は、この開度指令信号に基づき、現在の開度を維持する。これにより、調整弁212は、第1入口管201aから短絡管203に分流する冷却水の現在の流量を維持して、第1入口管201aから中間冷却器12に供給される冷却水の現在の流量を維持する。この結果、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却は、現行のものに維持される。
【0062】
他方、圧縮ガス温度Tcが圧力下露点温度Tdを超える場合、制御部18は、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を強化するように調整弁212を制御する。この際、制御部18は、圧力下露点温度Tdと圧縮ガス温度Tcとの温度差ΔTをもとに、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を温度差ΔT分、強化するために必要な調整弁212の開度を算出する。ついで、制御部18は、調整弁212からの開度信号に示される現在の開度を上記算出した開度にするように指示する開度指令信号を調整弁212に送信し、これにより、調整弁212の開度を制御する。
【0063】
調整弁212は、この制御部18による制御に基づき駆動して、現在の開度を開度指令信号によって指示された開度にする(この場合は開度を減少させる)。これにより、調整弁212は、第1入口管201aから短絡管203に分流する冷却水の流量を減少させて、第1入口管201aから中間冷却器12に供給される冷却水の流量を増やす。この結果、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却は、上述した温度差ΔT分、強化される。
【0064】
以上、説明したように、本発明の実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジン11では、低圧段過給機8によって圧縮された燃焼用ガス(圧縮ガス)を冷却する中間冷却器12の後段に、冷却後の圧縮ガスの温度(圧縮ガス温度Tc)を検出する温度検出部14と、冷却後の圧縮ガスの圧力(圧縮ガス圧力Pc)を検出する圧力検出部15とを設け、供給管201を通じて中間冷却器12に供給される冷却水の流量を調整する調整部として、調整弁212を、中間冷却器12に通じる供給管201の第1入口管201aから分岐する短絡管203に設け、制御部18により、圧縮ガス温度Tcと圧縮ガス圧力Pcから導出された圧力下露点温度Tdとを比較し、圧縮ガス温度Tcが圧力下露点温度Td未満である場合、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を抑制するように調整弁212を制御している。
【0065】
このため、冷却後の圧縮ガス中のドレン水の発生を、中間冷却器12の後段に設けた気液分離装置13によって除去し得る程度に抑制するとともに、低圧段過給機8による圧縮ガスを、圧縮ガス温度Tcが圧力下露点温度Td以上となるように適切に冷却することができる。この結果、高圧段圧縮機9aに吸い込まれる圧縮ガス中にドレン水が含まれる事態を可能な限り回避できることから、ドレンアタックに起因する高圧段圧縮機9aの破損を抑制することができる。
【0066】
また、本発明の実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジン11では、圧縮ガス温度Tcが圧力下露点温度Tdと同じである場合、供給管201を通じて中間冷却器12に供給される冷却水の現在の流量を維持するように調整弁212を制御し、圧縮ガス温度Tcが圧力下露点温度Tdを超える場合、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を強化するように調整弁212を制御している。このため、低圧段過給機8による圧縮ガスを、圧縮ガス温度Tcが圧力下露点温度Td以上であるという条件を満足しながら可能な限り低い温度(望ましくは圧力下露点温度Tdと同じ温度)に冷却することができる。この結果、冷却後の圧縮ガス中にドレン水が発生する事態を回避してドレンアタックに起因する高圧段圧縮機9aの破損を防止するとともに、過給機効率の向上を促進することができる。
【0067】
(実施形態2)
つぎに、本発明の実施形態2について説明する。上述した実施形態1では、中間冷却器12によって圧縮ガスを冷却するための冷却水として海水を用いていたが、本実施形態2では、当該冷却水として清水を用い、圧縮ガスの冷却に使用された清水を循環させて圧縮ガスの冷却に再利用するようにしている。
【0068】
図2は、本発明の実施形態2に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。図2に示すように、本実施形態2に係る舶用ディーゼルエンジン21は、上述した実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジン11の低温冷却水系統200に代えて、冷却水の循環機能を有する低温冷却水系統220を備える。低温冷却水系統220は、上述した実施形態1における低温冷却水系統200の第1出口管202に代えて、清水の循環機能を有する第1出口管222を備え、さらに、低温側中央冷却器223および給水管224、225を備える。また、本実施形態2において、低温冷却水系統220は、上述した高温冷却水系統150と同様に、船舶内で清水を使用する清水系統の一例である。このような低温冷却水系統220には、上述した専用タンク(図示せず)内の清水が、例えば、圧縮ガスや高圧圧縮ガスの冷却に使用される清水の消費量に応じて、供給管201の所定部分(具体的には図2に示すポンプ211の入側部分)に配管等を通じて適宜供給(補給)される。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0069】
第1出口管222は、中間冷却器12から排出された清水を供給管201に戻す循環管である。詳細には、図2に示すように、第1出口管222は、出口端が供給管201の入口端に接続され、且つ、入口端が中間冷却器12の排水口部に接続されている。また、第1出口管222の中途部には、ガス冷却器16に通じる第2出口管204と、船内設備210に通じる排水管206とが接続されている。第1出口管222は、圧縮ガスの冷却に使用された清水を中間冷却器12から受け入れ、受け入れた清水を供給管201の入口端へ循環させる。また、第1出口管222は、ガス冷却器16から第2出口管204を通じて流入した清水と、船内設備210から排水管206を通じて流入した清水とを、中間冷却器12からの清水と同様に供給管201の入口端へ循環させる。
【0070】
低温側中央冷却器223は、供給管201を通じて中間冷却器12等に供給される清水を冷却するものである。図1に示すように、低温側中央冷却器223は、供給管201の入口端の近傍(具体的には、船内設備210に通じる分岐管205よりも供給管201の入口端側の部分)に設けられる。低温側中央冷却器223は、供給管201内を流通する清水を、圧縮ガス等の冷却対象を冷却する冷却水として再利用できる程度の温度に冷却する。この供給管201内の清水として、例えば、第1出口管222を通じて供給管201内に循環された清水(すなわち圧縮ガスの冷却に使用されて昇温した清水)、上述した専用タンクから配管等を通じて供給管201内に補給された清水等が挙げられる。低温側中央冷却器223による冷却後の清水は、供給管201を通じて、第1入口管201aから中間冷却器12に供給され、第2入口管201bからガス冷却器16に供給され、分岐管205から船内設備210に供給される。
【0071】
また、低温側中央冷却器223の給水口部には、給水管224が接続され、低温側中央冷却器223の排水口には、高温側中央冷却器152の給水口部に通じる給水管225が接続されている。低温側中央冷却器223には、冷却媒体としての海水が船外から給水管224を通じて供給される。低温側中央冷却器223による清水の冷却に使用された海水は、給水管225を通じて低温側中央冷却器223から高温側中央冷却器152へ供給される。
【0072】
以上、説明したように、本発明の実施形態2に係る舶用ディーゼルエンジン21では、供給管201を通じて中間冷却器12等の冷却設備に供給する冷却水を清水とし、圧縮ガス等の冷却対象の冷却に使用された清水を第1出口管222から供給管201内へ循環させ、循環させた清水や補給された清水を、低温側中央冷却器223によって冷却した後に冷却水として利用(再利用)するようにし、その他を実施形態1と同様に構成している。このため、低温冷却水系統220が清水を冷却媒体として循環させながら使用するものでありながら、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受することができる。
【0073】
(実施形態3)
つぎに、本発明の実施形態3について説明する。上述した実施形態2では、低温冷却水系統220の中で冷却媒体としての清水を循環させながら使用していたが、本実施形態3では、当該清水の循環を行いながら、高温冷却水系統と低温冷却水系統との間で冷却媒体としての清水が授受されるようにしている。
【0074】
図3は、本発明の実施形態3に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。図3に示すように、本実施形態3に係る舶用ディーゼルエンジン31は、上述した実施形態2に係る舶用ディーゼルエンジン21の高温冷却水系統150に代えて高温冷却水系統170を備え、低温冷却水系統220に代えて低温冷却水系統230を備える。高温冷却水系統170は、上述した実施形態2における高温冷却水系統150の高温側中央冷却器152および分流管162に代えて、高温冷却水系統170側から低温冷却水系統230側に連絡する連絡管172を備える。低温冷却水系統230は、上述した実施形態2における低温冷却水系統220の第1出口管222に代えて、高温冷却水系統170と低温冷却水系統230の供給管201とに通じる第1出口管232を備える。また、低温冷却水系統230における低温側中央冷却器223の排水口部には、上述した実施形態2における給水管225に代えて排水管235が設けられ、低温側中央冷却器223による清水の冷却に使用された海水は、この排水管235を通じて低温側中央冷却器223から船外へ排出されるようにしている。その他の構成は実施形態2と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0075】
高温冷却水系統170は、エンジン本体1に清水を供給してエンジン本体1を冷却しながら、このエンジン本体1の冷却に使用されて上述の設定温度Ts以上となった清水を造水装置151に供給するエンジン本体冷却系統の一例である。この高温冷却水系統170において、連絡管172は、高温冷却水系統170と低温冷却水系統230との間で冷却媒体としての清水を授受するための配管である。図3に示すように、連絡管172は、給水管161の中途部から分岐して低温冷却水系統230の供給管201に合流するように形成されている。連絡管172は、造水装置151側からエンジン本体1に向かって給水管161内を流通する清水のうち、低温冷却水系統230から送り込まれた清水の流量分を、低温冷却水系統230の供給管201に戻すことができる。本実施形態3では、このように連絡管172を通じて供給管201に戻された清水は、圧縮ガス等の冷却対象を冷却するための冷却水として使用される。
【0076】
低温冷却水系統230において、第1出口管232は、中間冷却器12から排出された清水を供給管201に戻す循環管である。詳細には、図3に示すように、第1出口管232は、上述した実施形態2における第1出口管222と同様に、中間冷却器12の排水口部、供給管201の入口端、短絡管203、第2出口管204、および排水管206と接続されている。第1出口管232は、中間冷却器12から排出された清水と、ガス冷却器16から第2出口管204を通じて流入した清水と、船内設備210から排水管206を通じて流入した清水とを供給管201の入口端へ循環させる。
【0077】
また、第1出口管232は、その中途部であって排水管206との合流部分よりも出口端側の部分に、分岐管233を有する。分岐管233は、高温冷却水系統170と低温冷却水系統230との間で冷却媒体としての清水を授受するための配管である。具体的には、分岐管233は、図3に示すように、第1出口管232の中途部から分岐して制御弁154を介し給水管161に合流するように形成されている。分岐管233は、第1出口管232内の清水の一部を制御弁154へ導く。この分岐管233内の清水は、制御弁154によって流量制御されながら給水管161内の清水と合流可能であり、例えば、給水管161を通じてエンジン本体1に供給される清水の流量および温度を調整するために使用される。
【0078】
以上、説明したように、本発明の実施形態3に係る舶用ディーゼルエンジン31では、高温冷却水系統170と低温冷却水系統230との間で冷却媒体としての清水を授受するように配管を構成し、その他を実施形態2と同様に構成している。このため、上述した実施形態2と同様の作用効果を享受するとともに、低温冷却水系統230において循環する清水を、高温冷却水系統170においてエンジン本体1を冷却するための清水の流量および温度の調整に有効利用することができる。この結果、上述した高温側中央冷却器152(図2参照)等の冷却器を設ける必要がなく、簡易に高温冷却水系統170を構成することができる。
【0079】
(実施形態4)
つぎに、本発明の実施形態4について説明する。上述した実施形態3では、第1入口管201aから短絡管203を通じて第1出口管232に流通させる清水の流量を調整することにより、中間冷却器12への清水の流量を調整していたが、本実施形態4では、第1入口管201a内を流通する清水の流量と、ガス冷却器16側から中間冷却器12側へ流通する清水の流量とを適宜調整することにより、中間冷却器12への清水の流量を調整している。また、上述した実施形態3では、中間冷却器12で使用された清水を第1出口管232から供給管201へ循環させていたが、本実施形態4では、中間冷却器12から排出された清水の温度に応じて、当該清水の流通先を供給管201側と高温冷却水系統170の造水装置151の入側とに切り換えるようにしている。
【0080】
図4は、本発明の実施形態4に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。図4に示すように、本実施形態4に係る舶用ディーゼルエンジン41は、上述した実施形態3に係る舶用ディーゼルエンジン31の低温冷却水系統230に代えて低温冷却水系統240を備え、制御部18に代えて制御部48を備える。低温冷却水系統240は、上述した実施形態3における低温冷却水系統230の第2出口管204に代えて、合流管241と短絡管245と分岐弁246とを備え、第1入口管201aに入口弁247をさらに備える。また、低温冷却水系統240は、上述した実施形態3における低温冷却水系統230の第1出口管232に代えて、第1出口管242と循環管243と送水管244と切換弁248と清水温度検出部249とを備える。その他の構成は実施形態3と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0081】
低温冷却水系統240において、合流管241は、高圧圧縮ガスの冷却に使用された冷却水(清水)を、ガス冷却器16から、中間冷却器12に通じる第1入口管201aに導くための配管である。詳細には、図4に示すように、合流管241は、出口端が第1入口管201aの中途部に接続され、且つ、入口端がガス冷却器16の排水口部に接続されている。合流管241は、高圧圧縮ガスの冷却に使用された清水をガス冷却器16から受け入れ、受け入れた清水を第1入口管201aへ導く。合流管241から第1入口管201aに流入(合流)した清水は、圧縮ガスを冷却するための清水として、第1入口管201aから中間冷却器12に供給される。
【0082】
第1出口管242は、圧縮ガスの冷却に使用された冷却水(清水)を中間冷却器12から排出するための配管である。詳細には、図4に示すように、第1出口管242は、出口端が切換弁248に接続され、且つ、入口端が中間冷却器12の排水口部に接続されている。第1出口管242は、圧縮ガスの冷却に使用された清水を中間冷却器12から受け入れ、受け入れた清水を切換弁248へ導く。第1出口管242から切換弁248に導かれた清水は、切換弁248を介して循環管243または送水管244のいずれかに流入する。
【0083】
循環管243は、中間冷却器12から第1出口管242を通じて排出された清水を供給管201に戻すための配管である。詳細には、図4に示すように、循環管243は、出口端が供給管201の入口端に接続され、且つ、入口端が切換弁248に接続されている。また、循環管243の中途部には、後述する短絡管245と、船内設備210に通じる排水管206とが接続されている。循環管243は、切換弁248を介して第1出口管242から流入した清水と、ガス冷却器16から短絡管245等を介して流入した清水と、船内設備210から排水管206を通じて流入した清水とを、供給管201の入口端へ循環させる。
【0084】
また、図4に示すように、循環管243は、その中途部であって排水管206との合流部分よりも出口端側の部分に、実施形態3と同様の分岐管233を有する。循環管243内を流通する清水の一部は、分岐管233および制御弁154を介して給水管161内の清水と合流可能である。
【0085】
送水管244は、中間冷却器12から第1出口管242を通じて排出された清水を造水装置151の入側に送出するための配管である。詳細には、図4に示すように、送水管244は、出口端が高温冷却水系統170の給水管161の入側(図4では入口端)に接続され、且つ、入口端が切換弁248に接続されている。送水管244は、切換弁248を介して第1出口管242から流入した清水を、造水装置151の入側に送出する。
【0086】
短絡管245は、供給管201から分岐して中間冷却器12を介さずに循環管243に合流する配管である。詳細には、図4に示すように、短絡管245は、出口端が循環管243の中途部に接続され、且つ、入口端が分岐弁246に接続されている。ここで、本実施形態4において、供給管201は、中間冷却器12の入口に連結される第1の分岐管と、短絡管245と連通可能に接続され且つ第1の分岐管に合流する第2の分岐管とに分岐する配管である。図4に示すように、上記第1の分岐管は、中間冷却器12の給水口部に通じる第1入口管201aによって構成される。上記第2の分岐管は、ガス冷却器16の給水口部に通じる第2入口管201bと、ガス冷却器16の排水口部から分岐弁246を介して第1入口管201aに合流する合流管241とによって構成される。短絡管245は、分岐弁246を介して、上記第2の分岐管の一構成部である合流管241から分岐している。このような短絡管245は、供給管201の第2の分岐管(具体的には合流管241)から分岐して中間冷却器12を介さずに循環管243に清水を流通させる短絡流通経路を形成する。合流管241から分岐弁246を介して短絡管245に流入した清水(すなわちガス冷却器16から排出された清水)は、上述した中間冷却器12からの清水と同様に、循環管243内を流通する。
【0087】
分岐弁246および入口弁247は、供給管201を通じて中間冷却器12に供給される冷却水(清水)の流量を調整する調整部を構成する弁である。詳細には、図4に示すように、分岐弁246は、合流管241の中途部に設けられ且つ短絡管245の入口端が接続されている。分岐弁246は、分岐する合流管241および短絡管245のうち一方の配管側の開度を増加させるに伴い他方の配管側の開度を減少させる等して、これらの各開度を調整する。このような開度調整を通して、分岐弁246は、合流管241から短絡管245を通じて循環管243に流入する清水の流量を調整し、これに並行して、合流管241から第1入口管201aに流入する清水の流量を調整する。これにより、分岐弁246は、ガス冷却器16から合流管241等を介して中間冷却器12に供給される清水の流量を調整する。一方、図4に示すように、入口弁247は、第1入口管201aの中途部に設けられている。入口弁247は、第1入口管201aの開度を調整し、これにより、第1入口管201aを通じて中間冷却器12に供給される清水の流量を調整する。本実施形態4では、これらの分岐弁246および入口弁247の各開度調整は、制御部48によって制御され、これにより、中間冷却器12に供給される清水の合計流量が調整される。
【0088】
切換弁248は、中間冷却器12から第1出口管242を通じて排出された清水の流通先を循環管243と送水管244とのいずれかに切り換える弁である。詳細には、図4に示すように、切換弁248の3つの開口部のうち、第1の開口部には第1出口管242の出口端が接続され、第2の開口部には循環管243の入口端が接続され、第3の開口部には送水管244の入口端が接続される。切換弁248は、循環管243側の開度および送水管244側の開度のうち、一方の配管側の開度を全開に調整することにより、他方の配管側の開度を全閉に調整する。この開度調整は制御部48によって制御され、この制御に基づき、切換弁248は、第1出口管242からの清水の流通先を循環管243と送水管244とのいずれかに択一的に決定する。
【0089】
清水温度検出部249は、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却に使用された清水の温度を検出するものである。図4に示すように、清水温度検出部249は、第1出口管242の中途部であって中間冷却器12の排水口部近傍に設けられる。清水温度検出部249は、第1出口管242内の清水温度、すなわち、中間冷却器12から排出されて第1出口管242内を流通する清水の温度(以下、冷却水出口温度Twという)を検出し、その都度、検出した冷却水出口温度Twを示す電気信号を制御部48に送信する。
【0090】
制御部48は、各種プログラムを実行してデータ処理を行うCPUおよびメモリ等によって構成され、上述したエンジン制御機能と、分岐弁246および入口弁247の制御を通して中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を制御する冷却制御機能と、切換弁248の制御を通して中間冷却器12からの清水の流通先を切り換える切換制御機能とを兼ね備える。制御部48は、温度検出部14による圧縮ガス温度Tcと圧力検出部15による圧縮ガス圧力Pcとをもとに、中間冷却器12に供給される冷却水(清水)の流量を制御し、この制御を通して、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を制御する。本実施形態4において、制御部48は、圧縮ガス温度Tcが圧力下露点温度Td未満である場合、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を抑制するように、分岐弁246および入口弁247を制御する。一方、圧縮ガス温度Tcが圧力下露点温度Tdと同じである場合、制御部48は、中間冷却器12に供給される清水の現在の流量を維持するように、分岐弁246および入口弁247を制御する。他方、圧縮ガス温度Tcが圧力下露点温度Tdを超える場合、制御部48は、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を強化するように、分岐弁246および入口弁247を制御する。
【0091】
また、制御部48は、清水温度検出部249による清水温度の検出値(冷却水出口温度Tw)と上述した高温冷却水系統170の設定温度Tsとを比較し、この比較結果に基づいて切換弁248を制御することにより、中間冷却器12からの清水の流通先を制御する。詳細には、制御部48は、冷却水出口温度Twが設定温度Ts未満である場合、第1出口管242からの清水の流通先を循環管243側とするように、切換弁248を制御する。一方、冷却水出口温度Twが設定温度Ts以上である場合、制御部48は、第1出口管242からの清水の流通先を送水管244側とするように、切換弁248を制御する。
【0092】
つぎに、低温冷却水系統240の清水の流通制御について詳細に説明する。本実施形態4において、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を制御するためには、低温冷却水系統240の清水の流通制御が、制御部48によって実行される。
【0093】
図5は、本発明の実施形態4における低温冷却水系統の清水の流通制御の一例を示すフロー図である。図5に示すように、この低温冷却水系統240における清水の流通制御において、まず、制御部48は、中間冷却器12による冷却後(以下、中間冷却後と適宜略記する)の圧縮ガスの温度および圧力の各検出値を取得する(ステップS101)。
【0094】
ステップS101において、制御部48は、温度検出部14から受信した電気信号をもとに、中間冷却後の圧縮ガスの温度(圧縮ガス温度Tc)を取得する。また、制御部48は、圧力検出部15から受信した電気信号をもとに、中間冷却後の圧縮ガスの圧力(圧縮ガス圧力Pc)を取得する。
【0095】
ついで、制御部48は、中間冷却後の圧縮ガスの圧力下露点温度Tdを導出する(ステップS102)。ステップS102において、制御部48は、ステップS101で取得した圧縮ガス圧力Pcをもとに、圧力検出部15によって検出された圧力の圧縮ガスの圧力下露点温度Tdを導出する。
【0096】
その後、制御部48は、中間冷却後の圧縮ガスの圧力が圧力下露点温度Tdと同じであるか否かを判断する(ステップS103)。ステップS103において、制御部48は、ステップS101で取得した圧縮ガス温度TcとステップS102で導出した圧力下露点温度Tdとを比較する。
【0097】
制御部48は、この比較処理の結果、圧縮ガス温度Tcが圧力下露点温度Tdと同じ(Tc=Td)であると判断した場合(ステップS103,Yes)、分岐弁246および入口弁247の現在の各開度を維持して、中間冷却側の冷却水出口温度Twを取得する(ステップS107)。なお、中間冷却側の冷却水出口温度Twとは、中間冷却器12で圧縮ガスの冷却に使用された後に第1出口管242に排出された清水の温度である。
【0098】
ステップS107において、制御部48は、清水温度検出部249から受信した電気信号をもとに、清水温度検出部249による清水温度の検出値、すなわち、第1出口管242内の清水温度(冷却水出口温度Tw)を取得する。
【0099】
ついで、制御部48は、第1出口管242内の清水温度が高温冷却水系統170の設定温度Ts以上であるか否かを判断する(ステップS108)。ステップS108において、制御部48は、ステップS107で取得した冷却水出口温度Twと設定温度Tsとを比較する。
【0100】
制御部48は、この比較処理の結果、冷却水出口温度Twが設定温度Ts以上(Tw≧Ts)であると判断した場合(ステップS108,Yes)、高温冷却水系統170側に切換弁248を開く開制御を行う(ステップS109)。
【0101】
ステップS109において、制御部48は、切換弁248から開度信号を受信し、受信した開度信号をもとに、切換弁248の現在の開度を取得する。制御部48は、この取得した開度をもとに、切換弁248が高温冷却水系統170側に開であるか否かを判断する。切換弁248が高温冷却水系統170側に開である場合、切換弁248は、高温冷却水系統170に通じる送水管244側を全開(すなわち循環管243側を全閉)にした状態にある。この場合、制御部48は、現在の開度を指示する開度指令信号を切換弁248に送信して、現在の開度を維持するように切換弁248を制御する。一方、切換弁248が高温冷却水系統170側に閉である場合、切換弁248は、送水管244側を全閉(すなわち循環管243側を全開)にした状態にある。この場合、制御部48は、送水管244側が全開となる開度を指示する開度指令信号を切換弁248に送信して、送水管244側を全開に切り換えるように切換弁248を制御する。
【0102】
制御部48は、このステップS109により、第1出口管242からの清水の流通先を送水管244側の一方向に決定する。この結果、設定温度Ts以上の高温の清水が、第1出口管242から切換弁248および送水管244を介して高温冷却水系統170の造水装置151の入側(具体的には給水管161の入口端)に供給される。このステップS109の実行後、制御部48は、上述したステップS101に戻り、このステップS101以降の処理を繰り返す。
【0103】
一方、制御部48は、ステップS108における比較処理の結果、冷却水出口温度Twが設定温度Ts未満(Tw<Ts)であると判断した場合(ステップS108,No)、低温冷却水系統240側に切換弁248を開く開制御を行う(ステップS110)。
【0104】
ステップS110において、制御部48は、切換弁248から開度信号を受信し、受信した開度信号をもとに、切換弁248の現在の開度を取得する。制御部48は、この取得した開度をもとに、切換弁248が低温冷却水系統240側に開であるか否かを判断する。切換弁248が低温冷却水系統240側に開である場合、切換弁248は、低温冷却水系統240の供給管201に通じる循環管243側を全開(すなわち送水管244側を全閉)にした状態にある。この場合、制御部48は、現在の開度を指示する開度指令信号を切換弁248に送信して、現在の開度を維持するように切換弁248を制御する。一方、切換弁248が低温冷却水系統240側に閉である場合、切換弁248は、循環管243側を全閉(すなわち送水管244側を全開)にした状態にある。この場合、制御部48は、循環管243側が全開となる開度を指示する開度指令信号を切換弁248に送信して、循環管243側を全開に切り換えるように切換弁248を制御する。
【0105】
制御部48は、このステップS110により、第1出口管242からの清水の流通先を循環管243側の一方向に決定する。この結果、設定温度Ts未満の清水が、第1出口管242から切換弁248および循環管243を介して低温冷却水系統240の供給管201の入口端に戻る。このステップS110の実行後、制御部48は、上述したステップS101に戻り、このステップS101以降の処理を繰り返す。
【0106】
一方、制御部48は、ステップS103における比較処理の結果、圧縮ガス温度Tcが圧力下露点温度Tdと同じではないと判断した場合(ステップS103,No)、圧縮ガス温度Tcが圧力下露点温度Tdを超過するか否かを判断する(ステップS104)。
【0107】
制御部48は、この比較処理の結果、圧縮ガス温度Tcが圧力下露点温度Tdを超える(Tc>Td)と判断した場合(ステップS104,Yes)、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を強化する中間冷却強化処理を実行する(ステップS105)。制御部48は、このステップS105により、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を強化して、圧縮ガス温度Tcが圧力下露点温度Td以上であることを満足する範囲内で圧縮ガスの中間冷却後の温度低下を促進する。その後、制御部48は、上述したステップS107に進み、このステップS107以降の処理を繰り返す。
【0108】
一方、制御部48は、圧縮ガス温度Tcが圧力下露点温度Td未満(Tc<Td)であると判断した場合(ステップS104,No)、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を抑制する中間冷却抑制処理を実行する(ステップS106)。制御部48は、このステップS106により、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を抑制して、圧縮ガス温度Tcが圧力下露点温度Td以上となるように、圧縮ガスの中間冷却後の温度を上昇させる。その後、制御部48は、上述したステップS107に進み、このステップS107以降の処理を繰り返す。
【0109】
つぎに、上述したステップS105の中間冷却強化処理を実行するための処理フローについて詳細に説明する。図6は、本発明の実施形態4における中間冷却強化処理の一例を示すフロー図である。この中間冷却強化処理において、図6に示すように、制御部48は、まず、供給管201における第2の分岐管の分岐弁246が循環側に全閉であるか否かを判断する(ステップS201)。
【0110】
ステップS201において、制御部48は、分岐弁246から開度信号を受信し、受信した開度信号に示される開度、例えば、循環管243に通じる短絡管245側の開度を取得する。制御部48は、この取得した開度をもとに、分岐弁246が循環側に全閉であるか否か(すなわち短絡管245側に全閉であるか否か)を判断する。
【0111】
制御部48は、ステップS201において分岐弁246が循環側に全閉であると判断した場合(ステップS201,Yes)、図5に示したステップS104において判断した大小関係(圧縮ガス温度Tc>圧力下露点温度Td)の圧縮ガス温度Tcと圧力下露点温度Tdとの差に応じて、分岐弁246および入口弁247の各開度を算出する(ステップS202)。
【0112】
ステップS202において、制御部48は、上記の圧縮ガス温度Tcと圧力下露点温度Tdとの差(温度差ΔT)を算出し、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を温度差ΔT分、強化するために必要な分岐弁246および入口弁247の各開度を算出する。この際、制御部48は、合流管241から第1入口管201a内に流入して中間冷却器12に供給される清水と、第1入口管201aを通じて中間冷却器12に供給される清水との合計流量が増加するように、分岐弁246および入口弁247の各開度を算出する。好ましくは、制御部48は、中間冷却器12に供給される清水の温度が低下するように、これらの各開度を算出し、さらに好ましくは、この清水の供給流量が増加し且つ温度が低下するように、これらの開度を算出する。
【0113】
ついで、制御部48は、分岐弁246および入口弁247を算出開度に制御する(ステップS203)。ステップS203において、制御部48は、ステップS202で算出した各開度の開度指令信号を分岐弁246および入口弁247に各々送信する。これにより、制御部48は、分岐弁246の現在の開度(例えば全閉となっている短絡管245側の開度)を開度指令信号の開度(算出開度)とするように、分岐弁246を制御する。これに並行して、制御部48は、入口弁247の現在の開度を開度指令信号の開度(算出開度)とするように、入口弁247を制御する。ステップS203を実行後、制御部48は、図5に示したステップS105にリターンして、ステップS107に進み、このステップS107以降の処理を繰り返す。
【0114】
一方、制御部48は、ステップS201において分岐弁246が循環側に全閉ではないと判断した場合(ステップS201,No)、分岐弁246が循環側に全開であるか否かを判断する(ステップS204)。ステップS204において、制御部48は、上述したステップS201で取得した分岐弁246の開度をもとに、分岐弁246が循環側に全開であるか否か(すなわち短絡管245側に全開であるか否か)を判断する。
【0115】
制御部48は、ステップS204において分岐弁246が循環側に全開であると判断した場合(ステップS204,Yes)、供給管201における第1の分岐管である第1入口管201aの入口弁247が全開であるか否かを判断する(ステップS205)。ステップS205において、制御部48は、入口弁247から開度信号を受信し、受信した開度信号に示される入口弁247の現在の開度を取得する。制御部48は、この取得した開度をもとに、入口弁247が全開であるか否かを判断する。
【0116】
制御部48は、ステップS205において入口弁247が全開であると判断した場合(ステップS205,Yes)、分岐弁246および入口弁247の現在の各開度を維持する。この段階において、供給管201は、第1入口管201aおよび第2入口管201bの各々を通じて、中間冷却器12およびガス冷却器16に清水を並列に供給する状態にある。その後、制御部48は、図5に示したステップS105にリターンして、ステップS107に進み、このステップS107以降の処理を繰り返す。
【0117】
一方、制御部48は、ステップS205において入口弁247が全開ではないと判断した場合(ステップS205,No)、図5に示したステップS104において判断した大小関係(圧縮ガス温度Tc>圧力下露点温度Td)の圧縮ガス温度Tcと圧力下露点温度Tdとの差に応じて、入口弁247の開度を算出する(ステップS206)。
【0118】
ステップS206において、制御部48は、上記の圧縮ガス温度Tcと圧力下露点温度Tdとの温度差ΔTを算出し、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を温度差ΔT分、強化するために必要な入口弁247の開度を算出する。この際、制御部48は、第1入口管201aを通じて中間冷却器12に供給される清水の流量が増加するように、入口弁247の開度を算出する。
【0119】
ついで、制御部48は、入口弁247を算出開度に制御する(ステップS207)。ステップS207において、制御部48は、ステップS206で算出した開度の開度指令信号を入口弁247に送信する。これにより、制御部48は、入口弁247の現在の開度を開度指令信号の開度(算出開度)とするように、入口弁247を制御する。この段階において、供給管201は、第1入口管201aおよび第2入口管201bの各々を通じて、中間冷却器12およびガス冷却器16に清水を並列に供給する状態にある。ステップS207を実行後、制御部48は、図5に示したステップS105にリターンして、ステップS107に進み、このステップS107以降の処理を繰り返す。
【0120】
一方、制御部48は、ステップS204において分岐弁246が循環側に全開ではないと判断した場合(ステップS204,No)、図5に示したステップS104において判断した大小関係(圧縮ガス温度Tc>圧力下露点温度Td)の圧縮ガス温度Tcと圧力下露点温度Tdとの差に応じて、分岐弁246および入口弁247の各開度を算出する(ステップS208)。
【0121】
ステップS208において、制御部48は、上記の圧縮ガス温度Tcと圧力下露点温度Tdとの温度差ΔTを算出し、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を温度差ΔT分、強化するために必要な分岐弁246および入口弁247の各開度を算出する。この際、制御部48は、合流管241から第1入口管201a内に流入して中間冷却器12に供給される清水と、第1入口管201aを通じて中間冷却器12に供給される清水との合計流量が増加するように、分岐弁246および入口弁247の各開度を算出する。好ましくは、制御部48は、中間冷却器12に供給される清水の温度が低下するように、これらの各開度を算出し、さらに好ましくは、この清水の供給流量が増加し且つ温度が低下するように、これらの開度を算出する。
【0122】
ついで、制御部48は、分岐弁246および入口弁247を算出開度に制御する(ステップS209)。ステップS209において、制御部48は、ステップS208で算出した各開度の開度指令信号を分岐弁246および入口弁247に各々送信する。これにより、制御部48は、分岐弁246の現在の開度(例えば合流管241側および短絡管245側の双方に開となっている中間開度)を開度指令信号の開度(算出開度)とするように、分岐弁246を制御する。これに並行して、制御部48は、入口弁247の現在の開度を開度指令信号の開度(算出開度)とするように、入口弁247を制御する。ステップS209を実行後、制御部48は、図5に示したステップS105にリターンして、ステップS107に進み、このステップS107以降の処理を繰り返す。
【0123】
つぎに、上述したステップS106の中間冷却抑制処理を実行するための処理フローについて詳細に説明する。図7は、本発明の実施形態4における中間冷却抑制処理の一例を示すフロー図である。この中間冷却抑制処理において、図7に示すように、制御部48は、まず、分岐弁246が循環側に全閉であるか否かを判断する(ステップS301)。
【0124】
ステップS301において、制御部48は、分岐弁246から開度信号を受信し、受信した開度信号に示される開度、例えば、循環管243に通じる短絡管245側の開度を取得する。制御部48は、この取得した開度をもとに、分岐弁246が循環側に全閉であるか否か(すなわち短絡管245側に全閉であるか否か)を判断する。
【0125】
制御部48は、ステップS301において分岐弁246が循環側に全閉であると判断した場合(ステップS301,Yes)、図5に示したステップS104において判断した大小関係(圧縮ガス温度Tc<圧力下露点温度Td)の圧縮ガス温度Tcと圧力下露点温度Tdとの差に応じて、分岐弁246の開度を算出する(ステップS302)。
【0126】
ステップS302において、制御部48は、上記の圧縮ガス温度Tcと圧力下露点温度Tdとの温度差ΔTを算出し、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を温度差ΔT分、抑制するために必要な分岐弁246の開度を算出する。この際、制御部48は、合流管241から第1入口管201a内に流入して中間冷却器12に供給される清水と、第1入口管201aを通じて中間冷却器12に供給される清水との合計流量が減少するように、分岐弁246の開度を算出する。または、制御部48は、中間冷却器12に供給される清水の温度が上昇するように、分岐弁246の開度を算出する。
【0127】
ついで、制御部48は、分岐弁246を算出開度に制御する(ステップS303)。ステップS303において、制御部48は、ステップS302で算出した開度の開度指令信号を分岐弁246に送信する。これにより、制御部48は、分岐弁246の現在の開度(例えば全閉となっている短絡管245側の開度)を開度指令信号の開度(算出開度)とするように、分岐弁246を制御する。ステップS303を実行後、制御部48は、図5に示したステップS106にリターンして、ステップS107に進み、このステップS107以降の処理を繰り返す。
【0128】
一方、制御部48は、ステップS301において分岐弁246が循環側に全閉ではないと判断した場合(ステップS301,No)、分岐弁246が循環側に全開であるか否かを判断する(ステップS304)。ステップS304において、制御部48は、上述したステップS301で取得した分岐弁246の開度をもとに、分岐弁246が循環側に全開であるか否か(すなわち短絡管245側に全開であるか否か)を判断する。分岐弁246が循環側に全開である場合、供給管201は、第1入口管201aおよび第2入口管201bの各々を通じて、中間冷却器12およびガス冷却器16に清水を並列に供給する状態になる。
【0129】
制御部48は、ステップS304において分岐弁246が循環側に全開であると判断した場合(ステップS304,Yes)、第1入口管201aの入口弁247が全開であるか否かを判断する(ステップS305)。ステップS305において、制御部48は、入口弁247から開度信号を受信し、受信した開度信号に示される入口弁247の現在の開度を取得する。制御部48は、この取得した開度をもとに、入口弁247が全開であるか否かを判断する。
【0130】
制御部48は、ステップS305において入口弁247が全開であると判断した場合(ステップS305,Yes)、図5に示したステップS104において判断した大小関係(圧縮ガス温度Tc<圧力下露点温度Td)の圧縮ガス温度Tcと圧力下露点温度Tdとの差に応じて、入口弁247の開度を算出する(ステップS306)。
【0131】
ステップS306において、制御部48は、上記の圧縮ガス温度Tcと圧力下露点温度Tdとの温度差ΔTを算出し、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を温度差ΔT分、抑制するために必要な入口弁247の開度を算出する。この際、供給管201から中間冷却器12およびガス冷却器16に対して清水が並列に供給される状態にあるから、制御部48は、第1入口管201aを通じて中間冷却器12に供給される清水の流量が減少するように、入口弁247の開度を算出する。
【0132】
ついで、制御部48は、入口弁247を算出開度に制御する(ステップS307)。ステップS307において、制御部48は、ステップS306で算出した開度の開度指令信号を入口弁247に送信する。これにより、制御部48は、入口弁247の現在の開度を開度指令信号の開度(算出開度)とするように、入口弁247を制御する。ステップS307を実行後、制御部48は、図5に示したステップS106にリターンして、ステップS107に進み、このステップS107以降の処理を繰り返す。
【0133】
一方、制御部48は、ステップS305において入口弁247が全開ではないと判断した場合(ステップS305,No)、図5に示したステップS104において判断した大小関係(圧縮ガス温度Tc<圧力下露点温度Td)の圧縮ガス温度Tcと圧力下露点温度Tdとの差に応じて、分岐弁246および入口弁247の各開度を算出する(ステップS308)。
【0134】
ステップS308において、制御部48は、上記の圧縮ガス温度Tcと圧力下露点温度Tdとの温度差ΔTを算出し、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却を温度差ΔT分、抑制するために必要な分岐弁246および入口弁247の各開度を算出する。この際、制御部48は、合流管241から第1入口管201a内に流入して中間冷却器12に供給される清水と、第1入口管201aを通じて中間冷却器12に供給される清水との合計流量が減少するように、分岐弁246および入口弁247の各開度を算出する。または、制御部48は、中間冷却器12に供給される清水の温度が上昇するように、これらの各開度を算出する。
【0135】
ついで、制御部48は、分岐弁246および入口弁247を算出開度に制御する(ステップS309)。ステップS309において、制御部48は、ステップS308で算出した各開度の開度指令信号を分岐弁246および入口弁247に各々送信する。これにより、制御部48は、分岐弁246の現在の開度(例えば短絡管245側の開度)を開度指令信号の開度(算出開度)とするように、分岐弁246を制御する。これに並行して、制御部48は、入口弁247の現在の開度を開度指令信号の開度(算出開度)とするように、入口弁247を制御する。ステップS309を実行後、制御部48は、図5に示したステップS106にリターンして、ステップS107に進み、このステップS107以降の処理を繰り返す。
【0136】
一方、制御部48は、ステップS304において分岐弁246が循環側に全開ではないと判断した場合(ステップS304,No)、上述したステップS308に進み、このステップS308以降の処理を繰り返す。その後、制御部48は、図5に示したステップS106にリターンして、ステップS107に進み、このステップS107以降の処理を繰り返す。
【0137】
つぎに、図4を参照しつつ、本実施形態4における低温冷却水系統240の清水の流通を、エンジン負荷に対応して具体的に説明する。エンジン負荷が高い場合、エンジン本体1から排出される排ガスのエネルギーが高いことから、この高エネルギーの排ガスを利用して稼働する二段式過給機10は、より高温高圧に燃焼用ガスを圧縮する。すなわち、低圧段過給機8によって圧縮された燃焼用ガス(圧縮ガス)、および、高圧段過給機9によってさらに圧縮された燃焼用ガス(高圧圧縮ガス)の双方とも、高温な状態になる。低温冷却水系統240では、過給機効率を高める等の観点から、これらの圧縮ガスおよび高圧圧縮ガスを適切に冷却すべく、中間冷却器12およびガス冷却器16に冷却媒体としての清水を供給する。
【0138】
具体的には、エンジン負荷が極めて高いもの(例えば95%以上、100%以下のエンジン負荷)である場合、低温冷却水系統240では、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却とガス冷却器16による高圧圧縮ガスの冷却との双方を適切に行うために、供給管201から中間冷却器12およびガス冷却器16に対して清水を直列の配管経路で供給する。すなわち、ガス冷却器16に対しては、供給管201の第2入口管201bを通じて清水が供給される。中間冷却器12に対しては、ガス冷却器16から排出された清水が合流管241および第1入口管201aを通じて供給される。この場合、分岐弁246は短絡管245側に全閉となっているため、ガス冷却器16からの清水は、短絡管245から循環管243へ流通せずに中間冷却器12に供給される。
【0139】
また、エンジン負荷が極めて高負荷の状態である場合、中間冷却器12の冷却作用によって圧縮ガスから除去される熱量が多いため、中間冷却器12から第1出口管242に排出された清水の温度は、高温冷却水系統170の設定温度Ts(例えば75℃以上、90℃以下の温度)に比べて高くなる。この場合、切換弁248は、高温冷却水系統170に通じる送水管244側を開として、第1出口管242からの清水の流通先を送水管244とする。これにより、第1出口管242からの清水は、切換弁248および送水管244を介して高温冷却水系統170の給水管161に導かれ、エンジン本体1の冷却に使用された清水の温度を設定温度Ts未満にすることなく、このエンジン本体1からの清水と合流する。この結果、給水管161内の清水は、設定温度Ts以上の水温を維持しながら増量して、造水の熱源として造水装置151に供給される。造水装置151は、この増量された清水を造水の熱源に用いることによって、より多量の海水から、より多量の清水を造ることができる。
【0140】
一方、エンジン負荷が高いもの(例えば90%以上、95%未満のエンジン負荷)である場合、低温冷却水系統240では、上述した中間冷却器12およびガス冷却器16の各ガス冷却を適切に行うために、供給管201から中間冷却器12およびガス冷却器16に対して清水を直列および並列の双方の配管経路で供給する。すなわち、ガス冷却器16に対しては、上述したように第2入口管201bを通じて清水が供給される。中間冷却器12に対しては、第1入口管201aからの清水と、ガス冷却器16から合流管241を通じて第1入口管201a内に流入する清水とを合流した清水が供給される。分岐弁246は、合流管241側および短絡管245側の双方に開となっている。このため、ガス冷却器16からの清水の一部は、短絡管245から循環管243を通じて供給管201の入口端に戻る。
【0141】
また、エンジン負荷が高負荷の状態である場合、中間冷却器12の冷却作用によって圧縮ガスから除去される熱量が多いため、上述したように、第1出口管242内の清水の温度は高温冷却水系統170の設定温度Tsに比べて高くなる。この場合、切換弁248は、送水管244側を開として第1出口管242からの清水の流通先を送水管244とする。これにより、第1出口管242からの清水は、切換弁248および送水管244を介して高温冷却水系統170の給水管161に導かれ、上述したようにエンジン本体1からの清水と合流する。この結果、給水管161内の清水は、設定温度Ts以上の水温を維持しながら増量して、造水の熱源として造水装置151に供給される。造水装置151は、この増量された清水を造水の熱源に用いることによって、より多量の海水から、より多量の清水を造ることができる。
【0142】
一方、エンジン負荷が所定負荷以上に高いもの(例えば65%以上、90%未満のエンジン負荷)である場合、低温冷却水系統240では、上述した中間冷却器12およびガス冷却器16の各ガス冷却を適切に行うために、供給管201から中間冷却器12およびガス冷却器16に対して清水を並列の配管経路で供給する。すなわち、ガス冷却器16に対しては、供給管201から第2入口管201bに分流する清水が供給される。中間冷却器12に対しては、供給管201から第1入口管201aに分流する清水が供給される。この場合、分岐弁246は短絡管245側に全開となっているため、ガス冷却器16からの清水は、中間冷却器12に供給されずに、短絡管245から循環管243を通じて供給管201の入口端に戻る。
【0143】
また、エンジン負荷が所定負荷以上に高負荷の状態である場合、中間冷却器12の冷却作用によって圧縮ガスから除去される熱量が多いため、上述したように、第1出口管242内の清水の温度は高温冷却水系統170の設定温度Tsに比べて高くなる。この場合、切換弁248は、送水管244側を開として第1出口管242からの清水の流通先を送水管244とする。これにより、第1出口管242からの清水は、切換弁248および送水管244を介して高温冷却水系統170の給水管161に導かれ、上述したようにエンジン本体1からの清水と合流する。この結果、給水管161内の清水は、設定温度Ts以上の水温を維持しながら増量して、造水の熱源として造水装置151に供給される。造水装置151は、この増量された清水を造水の熱源に用いることによって、より多量の海水から、より多量の清水を造ることができる。
【0144】
ここで、環境規制の強化により、排出規制海域(ECA:Emission Control Area)においては、エンジン本体1から船外への窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)の排出量を規制値以下に抑えることが要求されている。このため、舶用ディーゼルエンジン41には、特に図示しないが、排ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)システム、選択式触媒還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)システム、燃焼室内へ水を噴射する水噴射装置、燃焼室へ水エマルジョン燃料を導入する導入装置等、NOxやSOxの排出量を抑制するための付加装置が適宜設けられる。このような付加装置には多量の清水が使用され、この清水の使用量は、エンジン負荷の増加に伴い顕著に増加する。これに起因して、エンジン本体1の冷却に使用された後の清水の熱(排熱)のみを熱源として造水装置151が造水する場合には、圧縮ガス等の冷却や付加装置に使用される清水が不足する虞がある。
【0145】
これに対し、本実施形態4では、中間冷却器12から排出された清水の温度が高温冷却水系統170の設定温度Ts以上である場合、特にエンジン負荷が高負荷の状態である場合、この中間冷却器12からの清水を高温冷却水系統170に支給して、造水装置151に熱源として供給する清水を増量している。これにより、造水装置151は、より多量の清水を造ることができ、この造水装置151によって造られた清水は、図4に図示されていないが、配管等を通じて上述の専用タンクに、より多量に貯蔵することができる。この結果、本実施形態4における船舶内の清水系統には、上述の専用タンクから配管等を通じて清水を不足なく供給することができる。ここで、船舶内の清水系統は、船舶内で清水を使用する系統である。本実施形態4では、船舶内の清水系統として、例えば、高温冷却水系統170、低温冷却水系統240、上述したNOxやSOxの排出量抑制のための付加装置、冷却設備に例示される船内設備210等が挙げられる。
【0146】
一方、エンジン負荷が所定負荷未満に低いもの(例えば65%未満のエンジン負荷)である場合、低温冷却水系統240では、上述した中間冷却器12およびガス冷却器16の各ガス冷却を適切に行うために、供給管201から中間冷却器12およびガス冷却器16に対して清水を並列の配管経路で供給する。この並列の配管経路は、上述した高負荷における並列の配管経路と同じである。
【0147】
また、エンジン負荷が上述した低負荷の状態である場合、中間冷却器12の冷却作用によって圧縮ガスから除去される熱量が比較的少ないため、第1出口管242内の清水の温度は高温冷却水系統170の設定温度Tsに比べて低くなる。この場合、切換弁248は、循環管243側を開として第1出口管242からの清水の流通先を循環管243とする。これにより、第1出口管242からの清水は、切換弁248および循環管243を介して供給管201に戻る。
【0148】
以上、説明したように、本発明の実施形態4に係る舶用ディーゼルエンジン41では、中間冷却器12から第1出口管242に排出された清水を流通する配管として、低温冷却水系統240の供給管201に通じる循環管243と、高温冷却水系統170の造水装置151の入側に通じる送水管244とを設け、第1出口管242からの清水の流通先を循環管243と送水管244とのいずれかに切り換えできるように切換弁248を構成し、清水温度検出部249により、第1出口管242内の清水の温度(冷却水出口温度Tw)を検出し、制御部48により、冷却水出口温度Twと高温冷却水系統170の設定温度Tsとを比較し、冷却水出口温度Twが設定温度Ts未満である場合、第1出口管242からの清水の流通先を循環管243とし、冷却水出口温度Twが設定温度Ts以上である場合、第1出口管242からの清水の流通先を送水管244とするように、切換弁248を制御するようにし、その他を実施形態3と同様に構成している。
【0149】
このため、上述した実施形態3と同様の作用効果を享受するとともに、より多量の清水を造水装置151で造ることができ、さらには、造水装置151から配管等を通じて専用タンクに、より多量の清水を安定して貯蔵することができる。この結果、たとえエンジン負荷が高負荷な状態であっても、高温冷却水系統170、低温冷却水系統240、および上述した付加装置等の清水系統に対して、十分な量の清水を不足なく安定して供給することができる。
【0150】
(実施形態5)
つぎに、本発明の実施形態5について説明する。上述した実施形態4では、高温冷却水系統170の造水装置151によって清水を造っていたが、本実施の形態5では、この造水装置151に加えて、さらに、追加造水装置255によって清水を造っている。
【0151】
図8は、本発明の実施形態5に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。図8に示すように、本実施形態5に係る舶用ディーゼルエンジン51は、上述した実施形態4に係る舶用ディーゼルエンジン41の低温冷却水系統240に代えて低温冷却水系統250を備える。低温冷却水系統250は、上述した実施形態4における低温冷却水系統240の送水管244に代えて送水管254を備え、追加造水装置255をさらに備える。その他の構成は実施形態4と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0152】
送水管254は、中間冷却器12から第1出口管242を通じて排出された清水を造水装置151の出側に送出するための配管である。詳細には、図8に示すように、送水管254の出口端は、高温冷却水系統170の給水管161の中途部であって造水装置151の出口管161bと連絡管172の入口端との間(例えば給水管161から連絡管172が分岐する部分)に接続されている。また、送水管254の入口端は、切換弁248に接続されている。送水管254は、切換弁248を介して第1出口管242から流入した清水を、造水装置151の出側に送出する。この配管構成により、送水管254内の清水は、エンジン本体1に通じる給水管161と、低温冷却水系統250の供給管201に通じる連絡管172とに分かれて流通する。
【0153】
追加造水装置255は、高温冷却水系統170に予め設定された所定の設定温度Ts以上の清水を利用して新たに清水を造る装置である。図8に示すように、追加造水装置255は、送水管254に設けられている。追加造水装置255には、送水管254に通じる入口管254aおよび出口管254bが接続されている。追加造水装置255は、上記設定温度Ts以上の清水を熱源として造水できるように構成されている。具体的には、追加造水装置255は、造水材料の一例である海水を容器(図示せず)内に貯留している。追加造水装置255は、設定温度Ts以上の清水として、中間冷却器12による圧縮ガスの冷却に使用された高温の清水を第1出口管242および送水管254等を介して入口管254aから受け入れる。すなわち、第1出口管242内の清水の温度(冷却水出口温度Tw)が設定温度Ts以上の高温状態となって、切換弁248が送水管254側を開とした場合に、追加造水装置255は、この高温状態の清水を送水管254から入口管254aを通じて受け入れる。追加造水装置255は、この受け入れた清水を熱源として、低圧環境下で容器内の海水を沸騰させる等して、この熱源に比べて低温の清水を造る。追加造水装置255による造水に使用された清水(熱源)は、追加造水装置255から出口管254bを通じて送水管254に送出され、送水管254内の清水と合流する。
【0154】
本実施形態5において、高温冷却水系統170の造水装置151は、エンジン本体1から循環管163等を介して供給された清水の熱(排熱)を利用して、清水を造る。すなわち、舶用ディーゼルエンジン51では、この造水装置151と上述の追加造水装置255とによって清水が各々造られる。これらの造水装置151および追加造水装置255によって造られた各清水は、特に図示しないが、配管等を通じて上述の専用タンクに貯蔵される。これにより、この専用タンクには、より多量の清水を安定して貯蔵することができる。このような専用タンク内の清水は、船舶内で清水を使用する清水系統に対して、不足なく安定して供給される。本実施形態5では、この船舶内の清水系統として、例えば、高温冷却水系統170、低温冷却水系統250、上述したNOxやSOxの排出量抑制のための付加装置、冷却設備に例示される船内設備210等が挙げられる。具体的には、上記専用タンク内の清水は、エンジン本体1の冷却に使用される清水の消費量に応じて高温冷却水系統170の給水管161の所定部分(具体的にはポンプ153の入側部分)に配管等を通じて適宜供給され、圧縮ガスや高圧圧縮ガスの冷却に使用される清水の消費量に応じて低温冷却水系統250の供給管201の所定部分(具体的にはポンプ211の入側部分)に配管等を通じて適宜供給される。その他、上述したEGRシステム等の付加装置(図示せず)等に対して、上記専用タンクから配管等を通じて必要な量の清水が安定して供給される。
【0155】
以上、説明したように、本発明の実施形態5に係る舶用ディーゼルエンジン51では、中間冷却器12から第1出口管242に排出された清水を流通する送水管254を、高温冷却水系統170の造水装置151の出側に通じるように配管し、さらに、この送水管254に追加造水装置255を設け、追加造水装置255は、送水管254内を流通する設定温度Ts以上の清水を利用して新たに清水を造り、造水装置151および追加造水装置255によって造られた各清水が、専用タンクおよび配管等を介して船舶内の清水系統に供給されるようにし、その他を実施形態4と同様に構成している。このため、上述した実施形態4と同様の作用効果を享受するとともに、船舶内の清水系統に適宜供給(補給)するに十分な清水をより安定して確保することができ、この結果、たとえエンジン負荷が高負荷な状態であっても、高温冷却水系統170、低温冷却水系統250、および上述した付加装置等の清水系統に対して、十分な量の清水を簡易且つ安定して供給することができる。
【0156】
なお、上述した実施形態1〜5では、6つのシリンダ2が設けられたエンジン本体1(6気筒エンジン)を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。エンジン本体1に設けられるシリンダ2の配置数は、所望数(1つ以上)であってもよい。同様に、噴射部5の燃料噴射ポンプ6および燃料噴射弁7の各配置数は、上述したものに限定されず、シリンダ2の配置数に合わせて必要数(1つ以上)であってもよい。すなわち、本発明において、シリンダ2および噴射部5の各構成部の配置数は、特に問われない。
【0157】
また、上述した実施形態1〜5では、2つの過給機(低圧段過給機8および高圧段過給機9)を有する二段式過給機10がエンジン本体1に適用された場合を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、エンジン本体1には、複数(2つ以上)の過給機によって段階的に燃焼用ガスを圧縮する多段式過給機が適用されてもよい。この場合、多段式過給機を構成する低圧段過給機8および高圧段過給機9のうち、低圧段過給機8が複数設けられてもよいし、高圧段過給機9が複数設けられてもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
【0158】
さらに、上述した実施形態1〜5では、外部から吸入した空気(新気)を燃焼用ガスとしていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、エンジン本体1からの排ガスの一部をエンジン本体1に再循環するEGRシステムをさらに備えるようにし、このEGRシステムによる再循環ガスと外部からの空気との混合ガスを燃焼用ガスとしてもよい。
【0159】
また、上述した実施形態1〜5により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態1〜5に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0160】
1 エンジン本体
2 シリンダ
3 掃気トランク
4 排気マニホールド
5 噴射部
6 燃料噴射ポンプ
7 燃料噴射弁
8 低圧段過給機
8a 低圧段圧縮機
8b 低圧段タービン
8c、9c 回転軸
9 高圧段過給機
9a 高圧段圧縮機
9b 高圧段タービン
10 二段式過給機
11、21、31、41、51 舶用ディーゼルエンジン
12 中間冷却器
13、17 気液分離装置
14 温度検出部
15 圧力検出部
16 ガス冷却器
18、48 制御部
101、102、103 排気管
104 抽気管
105 抽気弁
111、112、113 給気管
150、170 高温冷却水系統
151 造水装置
152 高温側中央冷却器
153 ポンプ
154 制御弁
155 温度検出部
161 給水管
161a 入口管
161b 出口管
162 分流管
163 循環管
172 連絡管
200、220、230,240、250 低温冷却水系統
201 供給管
201a 第1入口管
201b 第2入口管
202、222、232、242 第1出口管
203、245 短絡管
204 第2出口管
205、207、233 分岐管
206、208、235 排水管
210 船内設備
211 ポンプ
212 調整弁
223 低温側中央冷却器
224、225 給水管
241 合流管
243 循環管
244、254 送水管
246 分岐弁
247 入口弁
248 切換弁
249 清水温度検出部
255 追加造水装置
254a 入口管
254b 出口管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8