(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平面視において第1方向に延在する第1領域と、前記第1領域とは異なる領域である第2領域と、前記第1領域内に配置された第3領域と、前記第1領域内において前記第3領域と前記第1方向で隣接するように配置された第4領域と、を有する半導体装置であって、
前記第1領域および前記第2領域において、半導体基板に形成された第1導電型の第1不純物領域と、
前記第1領域の前記第1不純物領域に形成され、且つ、前記第1方向に延在する第1トレンチおよび第2トレンチと、
前記第1トレンチの内壁および前記第2トレンチの内壁に、それぞれ形成された第1ゲート絶縁膜および第2ゲート絶縁膜と、
前記第1トレンチ内に埋め込まれるように、前記第1ゲート絶縁膜上に形成された第1ゲート電極と、
前記第2トレンチ内に埋め込まれるように、前記第2ゲート絶縁膜上に形成された第2ゲート電極と、
前記第3領域において、前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極との間の前記第1不純物領域に形成され、且つ、前記第1導電型とは反対の導電型である第2導電型の第2不純物領域と、
前記第3領域の前記第2不純物領域に形成された前記第1導電型の第3不純物領域と、
前記第1領域および前記第2領域において、前記第1不純物領域よりも下部の前記半導体基板に形成された前記第2導電型の第4不純物領域と、
ゲート電位を供給するためのゲート電位電極と、
エミッタ電位を供給するためのエミッタ電位電極と、
コレクタ電位を供給するためのコレクタ電位電極と、
を有し、
前記第1ゲート電極は、前記ゲート電位電極と電気的に接続され、
前記第4不純物領域は、前記コレクタ電位電極と電気的に接続され、
前記第2不純物領域、前記第3不純物領域および前記第2ゲート電極は、前記エミッタ電位電極と電気的に接続され、
前記第3領域は、前記第1領域内において、互いに前記第1方向で離間するように複数配置され、
前記複数の第3領域の間には、それぞれ、前記第4領域が配置され、
前記第4領域の前記第1不純物領域には、前記第1不純物領域よりも高い不純物濃度を有する、前記第1導電型の第5不純物領域が形成され、
前記第2不純物領域は、前記第4領域の前記第1不純物領域にも形成され、
前記第3領域の前記第2不純物領域は、前記第4領域の前記第5不純物領域によって、前記第4領域の前記第2不純物領域と分離されている、半導体装置。
、半導体装置。
平面視において第1方向に延在する第1領域と、前記第1領域とは異なる領域である第2領域と、前記第1領域内に配置された第3領域と、前記第1領域内において前記第3領域と前記第1方向で隣接するように配置された第4領域と、前記第2領域内において前記第1方向に延在する第5領域と、を有する半導体装置であって、
前記第1領域および前記第2領域において、半導体基板に形成された第1導電型の第1不純物領域と、
前記第1領域の前記第1不純物領域に形成され、且つ、前記第1方向に延在する2つの第1トレンチと、
前記第2領域の前記第1不純物領域に形成され、且つ、前記第1方向に延在する2つの第2トレンチと、
前記2つの第1トレンチの内壁および前記2つの第2トレンチの内壁に、それぞれ形成された2つの第1ゲート絶縁膜および2つの第2ゲート絶縁膜と、
前記2つの第1トレンチ内に埋め込まれるように、前記2つの第1ゲート絶縁膜上に、それぞれ形成された2つの第1ゲート電極と、
前記2つの第2トレンチ内に埋め込まれるように、前記2つの第2ゲート絶縁膜上に、それぞれ形成された2つの第2ゲート電極と、
前記第3領域の前記2つの第1ゲート電極の間の前記第1不純物領域、および、前記第5領域の前記2つの第2ゲート電極の間の前記第1不純物領域に形成され、且つ、前記第1導電型とは反対の導電型である第2導電型の第2不純物領域と、
前記第3領域の前記第2不純物領域に形成された前記第1導電型の第3不純物領域と、
前記第1領域および前記第2領域において、前記第1不純物領域よりも下部の前記半導体基板に形成された前記第2導電型の第4不純物領域と、
ゲート電位を供給するためのゲート電位電極と、
エミッタ電位を供給するためのエミッタ電位電極と、
コレクタ電位を供給するためのコレクタ電位電極と、
を有し、
前記第1ゲート電極は、前記ゲート電位電極と電気的に接続され、
前記第4不純物領域は、前記コレクタ電位電極と電気的に接続され、
前記第2不純物領域、前記第3不純物領域および前記第2ゲート電極は、前記エミッタ電位電極と電気的に接続され、
前記第5領域の前記第2不純物領域には、前記第3不純物領域は形成されておらず、
前記第3領域は、前記第1領域内において、互いに前記第1方向で離間するように複数配置され、
前記複数の第3領域の間には、それぞれ、前記第4領域が配置され、
前記第4領域の前記第1不純物領域には、前記第1不純物領域よりも高い不純物濃度を有する、前記第1導電型の第5不純物領域が形成され、
前記第2不純物領域は、前記第4領域の前記第1不純物領域にも形成され、
前記第3領域の前記第2不純物領域は、前記第4領域の前記第5不純物領域によって、前記第4領域の前記第2不純物領域と分離されている、半導体装置。
平面視において第1方向に延在する第1領域と、前記第1領域とは異なる領域である第2領域と、前記第1領域内に配置された第3領域と、前記第1領域内において前記第3領域と前記第1方向で隣接するように配置された第4領域と、を有する半導体装置の製造方法であって、
(a)前記第1領域および前記第2領域において、半導体基板に、第1導電型の第1不純物領域を形成する工程、
(b)前記第4領域の前記第1不純物領域に、前記第1不純物領域よりも高い不純物濃度を有する、前記第1導電型の第5不純物領域を形成する工程、
(c)前記第1領域の前記第1不純物領域に、前記第1方向に延在する第1トレンチおよび第2トレンチを形成する工程、
(d)前記第1トレンチの内壁および前記第2トレンチの内壁に、それぞれ第1ゲート絶縁膜および第2ゲート絶縁膜を形成する工程、
(e)前記第1トレンチ内に埋め込まれるように、前記第1ゲート絶縁膜上に、第1ゲート電極を形成し、前記第2トレンチ内に埋め込まれるように、前記第2ゲート絶縁膜上に、第2ゲート電極を形成する工程、
(f)前記第3領域において、前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極との間の前記第1不純物領域に、前記第1導電型とは反対の導電型である第2導電型の第2不純物領域を形成し、前記第4領域の前記第1不純物領域に、前記第2不純物領域を形成する工程、
(g)前記第3領域の前記第2不純物領域に、前記第1導電型の第3不純物領域を形成する工程、
(h)前記第1領域および前記第2領域において、前記第1不純物領域よりも下部の前記半導体基板に、前記第2導電型の第4不純物領域を形成する工程、
(i)前記第1ゲート電極と電気的に接続されるゲート電位電極を形成し、前記第2不純物領域、前記第3不純物領域および前記第2ゲート電極と電気的に接続されるエミッタ電位電極を形成する工程、
(j)前記第4不純物領域と電気的に接続されるコレクタ電位電極を形成する工程、
を有し、
前記第3領域は、前記第1領域内において、互いに前記第1方向で離間するように複数配置され、
前記複数の第3領域の間には、それぞれ、前記第4領域が配置され、
前記第3領域の前記第2不純物領域は、前記第4領域の前記第5不純物領域によって、前記第4領域の前記第2不純物領域と分離されている、半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0017】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0018】
また、実施の形態で用いる図面においては、図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。
【0019】
また、本願明細書では、半導体の導電型がp型であるとは、正孔のみが電荷担体であるか、または、電子および正孔のいずれもが電荷担体であってもよいが、正孔の濃度が電子の濃度よりも高く、正孔が主要な電荷担体であることを意味する。また、本願明細書では、半導体の導電型がn型であるとは、電子のみが電荷担体であるか、または、電子および正孔のいずれもが電荷担体であってもよいが、電子の濃度が正孔の濃度よりも高く、電子が主要な電荷担体であることを意味する。
【0020】
また、本願明細書では、IGBTがオフ状態からオン状態に切り替わるスイッチング動作を、「ターンオン」と称し、IGBTがオン状態からオフ状態に切り替わるスイッチング動作を、「ターンオフ」と称する。
【0021】
(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら実施の形態1の半導体装置について詳細に説明する。本実施の形態1の半導体装置は、EGE型構造を基本構造として開発された新しい構造のIE型IGBTを備えた半導体装置である。
【0022】
<半導体装置の構成>
図1は、本実施の形態の半導体装置である半導体チップCHPの平面図である。
図1では、理解を簡単にするために、絶縁膜PIQ(
図3参照)を透過した状態を示し、平面図であるが、ゲート電位電極GEおよびエミッタ電位電極EEにハッチングを付している。
【0023】
図1に示すように、半導体チップCHPの大部分はエミッタ電位電極EEで覆われており、エミッタ電位電極EEの外周には、ゲート電位電極GEが形成されている。エミッタ電位電極EEの中央部付近の破線で囲まれた領域は、エミッタパッドEPであり、ゲート電位電極GEの破線で囲まれた領域は、ゲートパッドGPである。エミッタパッドEP上およびゲートパッドGP上の絶縁膜PIQは除去されており、エミッタパッドEP上およびゲートパッドGP上に、ワイヤボンディングまたはクリップ(銅板)などの外部接続端子が接続されることで、半導体チップCHPが、他チップまたは配線基板などと電気的に接続される。
【0024】
図2は、半導体チップCHPの要部平面図であり、エミッタ電位電極EE下の平面図に対応している。
図3は、
図2のA−A線に沿った断面図であり、
図4は、
図2のB−B線に沿った断面図であり、
図5は、
図2のC−C線に沿った断面図であり、
図6は、
図2のD−D線に沿った断面図であり、
図7は、
図2のE−E線に沿った断面図である。
【0025】
なお、
図2は平面図であるが、図面を見易くするため、ゲート電極G1およびゲート電極G2にハッチングを付している。また、
図2では、保護膜PIQ、エミッタ電位電極EE、層間絶縁膜ILおよびゲート絶縁膜GFの図示を省略している。
【0026】
本実施の形態の半導体装置は、エミッタ電位電極EEに電気的に接続されたトレンチゲートである2つのゲート電極G2と、これら2つのゲート電極G2の間に形成され、且つ、ゲート電位電極GEに電気的に接続されたトレンチゲートであるゲート電極G1とを有するアクティブセル領域ACを有する。また、アクティブセル領域ACは、本実施の形態におけるIGBTの主回路を構成している領域である複数のハイブリッドセル領域HBCを有する。
【0027】
また、本実施の形態の半導体装置は、アクティブセル領域AC以外のインアクティブセル領域IACを有する。インアクティブセル領域IACには、ベース領域(不純物領域)PBおよびフローティング領域(不純物領域)PFが形成されている。
【0028】
図2に示されるように、アクティブセル領域ACでは、ゲート電極G1およびゲート電極G2がY方向に延在している。ゲート電極G1は、ゲート電極G2と、Y方向と直交するX方向で隣接して配置されている。なお、図示はしないが、ゲート電極G1は、半導体チップCHPの外周部において、
図1に示されるゲート電位電極GEに接続されており、IGBTの動作時にゲート電位が印加される。また、ゲート電極G2は、その一部がトレンチT2外部に引き出されている。そして、この引き出された箇所がコンタクトホールを介してエミッタ電位電極EEと接続することで、ゲート電極G2に、IGBTの動作時にエミッタ電位が印加される。
【0029】
ハイブリッドセル領域HBCは、ゲート電極G1と、2つのゲート電極G2と、n型のエミッタ領域(不純物領域)NEとを有する領域である。ハイブリッドセル領域HBCにおいて、n型のホールバリア領域(不純物領域)NHBの表面にはp型のベース領域(不純物領域)PBが形成され、ベース領域PBの表面には、エミッタ領域NEが形成されている。
【0030】
各エミッタ領域NEおよびベース領域PBは、コンタクトホールCH1に接しており、コンタクトホールCH1内にはエミッタ電位電極EEが埋め込まれている。なお、コンタクトホールCH1下の半導体基板SBには、ベース領域PBよりも高い不純物濃度を有するp型のボディ領域(不純物領域)PRが形成されている。従って、エミッタ領域NE、ベース領域PBおよびボディ領域PRには、IGBTの動作時にエミッタ電位が印加される。
【0031】
また、エミッタ領域NEは、ゲート電極G1とコンタクトホールCH1との間に設けられており、ゲート電極G2とコンタクトホールCH1との間には設けられていない。従って、ハイブリッドセル領域HBCのうち、ゲート電極G1とコンタクトホールCH1との間の領域が、主にIGBTの回路を構成する領域となり、ゲート電極G2とコンタクトホールCH1との間の領域が、主に寄生p型MOSFET1を構成する領域となる。寄生p型MOSFET1は、IGBT動作時に、ゲート電極G2の底部付近のフローティング領域PFに蓄積されているホールを、コンタクトホールCH1から排出する機能を有する。この寄生p型MOSFET1については、後で詳細に述べる。
【0032】
アクティブセル領域AC内において、複数のハイブリッドセル領域HBCは、Y方向で互いに離間するように配置されている。ハイブリッドセル領域HBC以外のアクティブセル領域ACには、n型の分離領域(不純物領域)NB、フローティング領域PF、および、フローティング領域PFの表面に形成されたベース領域PBが設けられている。また、これらの領域には、エミッタ領域NE、コンタクトホールCH1およびボディ領域PRは形成されていない。
【0033】
Y方向において、分離領域NBは、ハイブリッドセル領域HBCとフローティング領域PFとを分離するように配置されている。言い換えれば、Y方向において、分離領域NBは、ハイブリッドセル領域HBCのベース領域PBと、フローティング領域PFの表面に形成されたベース領域PBとを分離するように配置されている。すなわち、Y方向において隣接する2つのハイブリッドセル領域HBCの間には、分離領域NBと、フローティング領域PFおよびベース領域PBと、分離領域NBとが、順番に設けられている。
【0034】
インアクティブセル領域IACには、フローティング領域PFおよびベース領域PBが形成されており、エミッタ領域NE、コンタクトホールCH1およびボディ領域PRは形成されていない。また、X方向において、アクティブセル領域ACの幅と、インアクティブセル領域IACの幅との比は、1:2〜1:3となっている。
【0035】
次に、
図3〜
図7を用いて、本実施の形態の半導体装置の断面構造を説明する。
【0036】
半導体基板SBには、低濃度のn型の不純物領域であるドリフト領域(不純物領域)NDが形成されている。ドリフト領域NDよりも半導体基板SBの裏面側には、ドリフト領域NDよりも高い不純物濃度を有するn型のフィールドストップ領域(不純物領域)NS、p型のコレクタ領域(不純物領域)PC、および、金属膜からなるコレクタ電位電極CEが形成されている。すなわち、コレクタ領域PCには、コレクタ電位電極CEを介して、IGBTの動作時にコレクタ電位が印加される。
【0037】
半導体基板SBの表面側には、トレンチT1およびトレンチT2が形成されている。トレンチT1およびトレンチT2の内部には、ゲート絶縁膜GFを介して、それぞれゲート電極G1およびゲート電極G2が埋め込まれている。上述したように、ゲート電極G1はゲート電位電極GEと接続しており、ゲート電位が印加される。また、ゲート電極G2はエミッタ電位電極EEと接続しており、エミッタ電位が印加される。また、ゲート絶縁膜GFは、例えば酸化シリコン膜であり、ゲート電極G1およびゲート電極G2は、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜である。
【0038】
まず、
図3、
図4および
図7を用いて、アクティブセル領域ACのうち、ハイブリッドセル領域HBCの構造について説明する。
【0039】
図3に示されるように、ハイブリッドセル領域HBCにおいて、ゲート電極G1とゲート電極G2との間の半導体基板SBには、ドリフト領域NDよりも高い不純物濃度を有するホールバリア領域NHBが形成されており、ホールバリア領域NHBの表面には、p型のベース領域PBが形成されている。ベース領域PBの一部には、エミッタ領域NEが形成されている。エミッタ領域NEは、ゲート電極G1とコンタクトホールCH1との間に設けられており、ゲート電極G2とコンタクトホールCH1との間には設けられていない。また、
図4に示されるように、エミッタ領域NEは、ハイブリッドセル領域HBC内のゲート電極G1とコンタクトホールCH1との間であっても、設けられていない箇所もある。
図7に示されるように、Y方向において、エミッタ領域NEと分離領域NBとは、ベース領域PBによって電気的に分離されている。
【0040】
エミッタ領域NE上およびベース領域PB上には、ゲート絶縁膜GFの一部が形成されており、このゲート絶縁膜GFの一部、ゲート電極G1およびゲート電極G2の各々の上面には、層間絶縁膜ILが形成されている。そして、コンタクトホールCH1が、層間絶縁膜IL、ゲート絶縁膜GFおよび半導体基板SBを貫通して形成されている。コンタクトホールCH1は、エミッタ領域NEおよびベース領域PBに接するように形成されている。
【0041】
コンタクトホールCH1の底部は、ベース領域PB内に位置しており、ホールバリア領域NHBまでは達していない。コンタクトホールCH1の底部の周囲には、ベース領域PBよりも高い不純物濃度を有するp型のボディ領域PRが形成されている。ボディ領域PRは、ベース領域PBおよびホールバリア領域NHBに跨るように形成されており、エミッタ領域NEとは接しないように形成されている。なお、ボディ領域PRは、コンタクトホールCH1内に埋め込まれるエミッタ電位電極EEとの接触抵抗を低くするため、および、ラッチアップを防止するために設けられている。
【0042】
層間絶縁膜IL上には、エミッタ電位電極EEが形成されており、コンタクトホールCH1内にはエミッタ電位電極EEが埋め込まれている。従って、ハイブリッドセル領域HBCにおいて、エミッタ領域NE、ベース領域PBおよびボディ領域PRに、エミッタ電位が印加される。
【0043】
エミッタ電位電極EE上には、例えばポリイミドなどの樹脂からなる保護膜PIQが形成されている。
図3〜
図7では図示していないが、保護膜PIQには、エミッタ電位電極EEの一部、および、ゲート電位電極GEの一部を露出するように、開口部が設けられている。すなわち、
図1の破線で示した領域(ゲートパッドGPおよびエミッタパッドEP)には、保護膜PIQが形成されていない。
【0044】
次に、
図5、
図6および
図7を用いて、アクティブセル領域ACのうち、ハイブリッドセル領域HBC以外の構造について説明する。
【0045】
図5および
図7に示されるように、Y方向において、ハイブリッドセル領域HBCと隣接する領域であり、且つ、X方向において、ゲート電極G1とゲート電極G2との間の領域には、n型の分離領域NBが設けられている。分離領域NB内には、ベース領域PBおよびエミッタ領域NEは形成されていない。また、分離領域NB上には、コンタクトホールCH1も配置されていない。従って、
図7に示されるように、ハイブリッドセル領域HBCのp型のベース領域PBと、p型のフローティング領域PFの表面に形成されているベース領域PBとは、このn型の分離領域NBによって、分離されている。
【0046】
また、分離領域NBの不純物濃度は、ホールバリア領域NHBの不純物濃度以上である。しかし、ホールバリア領域NHBの不純物濃度が十分に高い場合には、分離領域NBの形成を省略し、分離領域NBが形成される予定の領域にホールバリア領域NHBを形成してもよい。すなわち、分離領域NBは、ホールバリア領域NHBを、ハイブリッドセル領域HBC内だけでなく、ハイブリッドセル領域HBC以外のアクティブセル領域ACまで拡張することで形成されていてもよい。
【0047】
図6および
図7に示されるように、Y方向において、分離領域NBと隣接する領域であり、且つ、X方向において、ゲート電極G1とゲート電極G2との間の領域には、p型のフローティング領域PFが設けられている。フローティング領域PFの表面には、ベース領域PBが形成されているが、エミッタ領域NEは形成されていない。また、フローティング領域PFには、コンタクトホールCH1も配置されていない。
【0048】
また、アクティブセル領域ACのフローティング領域PFは、ゲート電極G2が埋め込まれているトレンチT2よりも深い位置まで形成されており、インアクティブセル領域IACのフローティング領域PFと接続している。このため、フローティング領域PFでのホール蓄積に起因する電位変動を抑制することができる。また、トレンチT2の底部付近における電界を緩和することができる。
【0049】
次に、インアクティブセル領域IACの構造について説明する。
【0050】
インアクティブセル領域IACは、X方向において、2つのアクティブセル領域ACの間に位置する領域であり、2つのゲート電極G2の間に位置する領域である。インアクティブセル領域IACの全体には、p型のフローティング領域PFが設けられている。フローティング領域PFの表面には、ベース領域PBが形成されているが、エミッタ領域NEは形成されていない。また、フローティング領域PFには、コンタクトホールCH1も配置されていない。
【0051】
以上のように、本実施の形態の構造の説明を行ったが、本実施の形態の特徴および効果については、以下の半導体装置の製造方法、および、検討例の説明の後に、詳細に記載する。
【0053】
図8および
図9は、ドリフト領域ND、分離領域NB、ホールバリア領域NHBおよびフローティング領域PFの形成工程を示している。
【0054】
まず、半導体基板SBにn型のドリフト領域NDを形成する。ドリフト領域NDは、予めn型の不純物が導入された半導体基板SBを用意し、そのn型の半導体基板SBをドリフト領域NDとして用いることで形成される、または、p型の半導体基板SBを用意し、そのp型の半導体基板SB上にエピタキシャル法によって形成される。なお、本実施の形態では、ドリフト領域NDを半導体基板SBとして説明することもある。
【0055】
次に、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法を用いて、半導体基板SBの表面に、n型の分離領域NB、n型のホールバリア領域NHBおよびp型のフローティング領域PFを形成する。ホールバリア領域NHBは、ドリフト領域NDよりも高い不純物濃度を有する。n型の分離領域NBは、ホールバリア領域NHBの不純物濃度以上の不純物濃度を有する。
【0056】
また、本実施の形態では、n型の分離領域NBと、ホールバリア領域NHBとを別々の不純物領域として説明するが、ホールバリア領域NHBの不純物濃度が十分に高い場合には、n型の分離領域NBの形成を省略してホールバリア領域NHBで代用してもよい。すなわち、分離領域NBは、ホールバリア領域NHBを、ハイブリッドセル領域HBC内だけでなく、ハイブリッドセル領域HBC以外のアクティブセル領域ACまで拡張することで形成されていてもよい。この場合、製造工程の簡略化を図れる。
【0057】
図10は、トレンチT1およびトレンチT2の形成工程を示している。
【0058】
まず、半導体基板SB上に、例えば酸化シリコン膜からなる絶縁膜を形成し、フォトリソグラフィ法およびドライエッチングを用いてこの絶縁膜をパターニングすることで、ハードマスクを形成する。次に、ハードマスクをマスクとして半導体基板SBをエッチングすることで、半導体基板SBにトレンチT1およびトレンチT2を形成する。その後、ハードマスクHMを除去する。
【0059】
ここで、トレンチT1およびトレンチT2は、
図2に示されるように、平面視においてY方向に延在するように連続的に形成される。
【0060】
図11は、熱処理工程、並びに、ゲート絶縁膜GFおよび導電性膜FGの形成工程を示している。
【0061】
まず、半導体基板SBに対して熱処理を行うことで、分離領域NB、ホールバリア領域NHBおよびフローティング領域PFに含まれる不純物を拡散させる。この熱処理により、分離領域NBおよびホールバリア領域NHBは、トレンチT1およびトレンチT2の各々の底部付近にまで拡散し、フローティング領域PFは、トレンチT1およびトレンチT2の各々の底部を覆うように、トレンチT1およびトレンチT2の各々の底部よりも深い位置まで拡散する。
【0062】
次に、半導体基板SBに対して熱酸化処理を行うことで、トレンチT1の内壁、トレンチT2の内壁、分離領域NBの上面、ホールバリア領域NHBの上面およびフローティング領域PFの上面に、例えば酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜GFが形成される。
【0063】
次に、トレンチT1の内部およびトレンチT2の内部を埋め込むように、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、ゲート絶縁膜GF上に、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜からなる導電性膜FGが形成される。
【0064】
図12および
図13は、ゲート電極G1、ゲート電極G2、ベース領域PBおよびエミッタ領域NEの形成工程を示している。
【0065】
まず、導電性膜FGに対して、フォトリソグラフィ法およびドライエッチングを用いることで、トレンチT1の外部およびトレンチT2の外部に形成されていた導電性膜FGを除去する。そして、トレンチT1の内部およびトレンチT2の内部に残された導電性膜FGが、それぞれゲート電極G1およびゲート電極G2となる。
【0066】
次に、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法を用いることで、フローティング領域PFおよびホールバリア領域NHBの各々の表面に、p型のベース領域PBを形成する。ベース領域PBは、フローティング領域PFよりも高い不純物濃度を有する不純物領域である。
【0067】
次に、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法を用いることで、ハイブリッドセル領域HBCのベース領域PBの表面に、n型のエミッタ領域NEを形成する。エミッタ領域NEは、ドリフト領域NDおよびホールバリア領域NHBよりも高い不純物濃度を有する不純物領域である。この時、インアクティブセル領域IACのベース領域PBには、エミッタ領域NEを形成しない。
【0068】
図14は、層間絶縁膜ILおよびコンタクトホールCH1の形成工程を示している。
【0069】
まず、ゲート電極G1上、ゲート電極G2上、並びに、トレンチT1の外部およびトレンチT2の外部に形成されているゲート絶縁膜GF上に、例えばCVD法を用いることで、例えば酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜ILを形成する。
【0070】
次に、フォトリソグラフィ法およびドライエッチングを用いることで、アクティブセル領域ACの層間絶縁膜ILおよびゲート絶縁膜GFに、コンタクトホールCH1を形成する。コンタクトホールCH1の底部は、半導体基板SBの一部を貫通し、ベース領域PBに達するように形成されている。すなわち、コンタクトホールCH1は、ハイブリッドセル領域HBCのエミッタ領域NEおよびベース領域PBに接するように形成される。
【0071】
図15および
図16は、ボディ領域PRの形成工程を示している。
【0072】
上述のコンタクトホールCH1の形成工程に続いて、イオン注入法を用いることで、コンタクトホールCH1の底部に、p型のボディ領域PRが形成される。ボディ領域PRは、ベース領域PBよりも高い不純物濃度を有する不純物領域であり、ベース領域PBおよびホールバリア領域NHBに跨るように形成される。また、ボディ領域PRは、n型のエミッタ領域NEに接しないように形成される。その後、各不純物領域を活性化させるための熱処理が行われる。
【0073】
図17は、エミッタ電位電極EEおよび保護膜PIQの形成工程を示している。
【0074】
まず、コンタクトホールCH1を埋め込むように、層間絶縁膜IL上に、例えばスパッタリング法を用いることで、例えばアルミニウム膜が形成される。その後、フォトリソグラフィ法およびドライエッチングを用いて、このアルミニウム膜をパターニングすることで、エミッタ電位電極EEが形成される。また、
図1に示されるゲート電位電極GEも、上記のアルミニウム膜をパターニングすることで形成される。
【0075】
また、上記アルミニウム膜の形成前に、例えば窒化チタン膜からなるバリアメタル膜を形成し、このバリアメタル膜上に、上記アルミニウム膜を形成してもよい。すなわち、エミッタ電位電極EEおよびゲート電位電極GEを、バリアメタル膜とアルミニウム膜との積層膜としてもよい。なお、本実施の形態では、バリアメタル膜の図示を省略している。
【0076】
次に、エミッタ電位電極EEおよびゲート電位電極GEを覆うように、例えば塗布法を用いることで、例えばポリイミドなどの樹脂からなる保護膜PIQを形成する。その後、フォトリソグラフィ法およびドライエッチングを用いて、保護膜PIQの一部に開口部を形成することで、開口部からエミッタ電位電極EEの一部およびゲート電位電極GEの一部が露出する。この露出した領域が、
図1に示されるエミッタパッドEPおよびゲートパッドGPとなる。
【0077】
図17の工程後に、半導体基板SBの裏面側に、フィールドストップ領域NS、コレクタ領域PCおよびコレクタ電位電極CEが形成される。
【0078】
まず、半導体基板SBの裏面に対して研磨処理を実施し、半導体基板SBの厚さを薄くする。次に、半導体基板SBの裏面側からイオン注入を行う。このイオン注入は、フォトリソグラフィ法およびドライエッチングを用いることで行われ、これにより、n型のフィールドストップ領域NSおよびp型のコレクタ領域PCが形成される。フィールドストップ領域NSは、ドリフト領域NDよりも高い不純物濃度を有する不純物領域である。
【0079】
次に、半導体基板SBの裏面側で露出しているコレクタ領域PCの表面に、例えばスパッタリング法またはCVD法を用いることで、例えば窒化チタン膜などの金属膜からなるコレクタ電位電極CEを形成する。
【0080】
以上により、
図3〜
図7に示される本実施の形態の半導体装置が製造される。
【0081】
<検討例1の説明>
以下に、
図38〜
図42を用いて、本願発明者が検討した検討例1の半導体装置を説明する。
【0082】
図38は、検討例1の半導体装置の平面図であり、本実施の形態の
図2に対応する平面図である。検討例1の半導体装置は、EGE型構造のIE型IGBTを備えている。なお、GG型構造およびEGE型構造において、フローティング領域PFの電位変動によって、ゲート電極へ変位電流が発生する問題の詳細な説明については、上述の特許文献1を参照されたい。
【0083】
検討例1では、本実施の形態と異なり、アクティブセル領域AC内のY方向において、複数のハイブリッドセル領域HBCに接するように、n型のホールバリア領域NHB表面にp型のベース領域が連続的に形成されている。すなわち、検討例1には、本実施の形態の分離領域NBが形成されていない。
【0084】
以下に、検討例1の課題を
図39〜
図42を用いて説明する。
図39は、IGBTの動作時における容量成分を示す説明図である。
図40は、IGBTの動作時における寄生p型MOSFET1を示す説明図である。なお、
図39および
図40は、
図38のA−A線に沿った断面図であるが、説明の明瞭化のため、ハッチングと一部の図番を省略している。
図38のA−A線に沿った断面図は、実施の形態1の
図3と同様なので、詳細な断面構造については、
図3を参照されたい。
図41は、
図39および
図40に示すIGBT全体の等価回路図である。
図42は、
図38のE−E線に沿った断面図である。
【0085】
図39〜
図41に示されるように、検討例1のEGE型構造のIE型IGBTは、コレクタ電位電極CEと、エミッタ電位電極EEと、ゲート電位電極GEと、容量Cgc、Cge、Cec、CfpcおよびCefpと、寄生p型MOSFET1と、を用いた等価回路により表すことができる。
【0086】
図39に示されるIGBTの動作時には、コレクタ電圧の変動に伴い、ゲート電極G1側へ変位電流が発生する。変位電流の主な経路としては、容量Cgcを介する経路と、容量Cfpcおよび容量Cefpを介する経路とが挙げられる。EGE型構造では、GG型構造と比較して、フローティング領域PFを経由する経路(容量Cfpcおよび容量Cefpを介する経路)は、エミッタ電位に接続されたゲート電極G2によって遮断でき、更に、容量Cgcも小さいことから、変位電流の影響は小さくなる。
【0087】
図40に示される寄生p型MOSFET1は、フローティング領域PFの表面に蓄積したホールによる電位変動を抑制するために設けられる。寄生p型MOSFET1は、n型のドリフト領域NDからp型のフローティング領域PFを通り、さらに、p型のフローティング領域PF、n型のホールバリア領域NHBおよびp型のベース領域PBのうち、トレンチT2の底部に近い部分を通る電流経路により、正孔電流が流れることで動作する。すなわち、寄生p型MOSFET1は、エミッタ電位電極EEと接続されるゲート電極G2をゲートとし、p型のフローティング領域PFをソースとし、p型のベース領域PBをドレインとし、n型のホールバリア領域NHBをチャネルとすることで構成されている。これにより、IGBTのターンオン時に、トレンチT2の底部付近に存在するホールがキャリアとして排出される。よって、フローティング領域PFの電位変動を抑制することができる。
【0088】
しかしながら、ホールが大量に排出されすぎると、IE効果が低下して、ターンオン時のスイッチング損失が増加するという問題がある。従って、ホールの排出を適度に調整し、IE効果を低下させすぎないようにすることが、検討例1の課題となる。
【0089】
ここで、
図42に示されるように、検討例1では、元々、Y方向に連続的に延在して形成されていたコンタクトホールCH1を、ハイブリッドセル領域HBC毎に分離して設けている。これにより、ホールは、高濃度のp型不純物領域であるボディ領域PRに集まりやすくなり、ホールの排出経路は、各コンタクトホールCH1に分離される。このようにして、検討例1では、IE効果が低下することを防止している。
【0090】
しかしながら、検討例1では、アクティブセル領域AC内において、ハイブリッドセル領域HBCとY方向で隣接するベース領域PBを介して、ホールがコンタクトホールCH1から排出される場合がある。
図42の矢印は、ベース領域PBを介したホール排出経路を示している。このため、検討例1の半導体装置では、IE効果が低下して、ターンオン時のスイッチング損失が増加するという問題を、十分に解決することができない。
【0091】
<検討例2の説明>
本願発明者は、更に、上述の特許文献2に開示されているような、GG型構造のIE型IGBTにおいて、n型のエミッタ領域が形成されている領域をゲート電位のトレンチゲートによって囲む構造、所謂、遮断トレンチ構造を応用することも検討した。
【0092】
この遮断トレンチ構造では、ゲート電位のトレンチゲートによって、完全にベース領域PBを分離できるので、IE効果を大きく向上させることが可能である。しかし、遮断トレンチ構造は、ゲート容量が増加し、スイッチング損失が大きく悪化するというデメリットを有する。
【0093】
また、この遮断トレンチ構造を、本実施の形態のようなEGE型構造に適用することは難しい。すなわち、EGE型構造では、X方向において、ゲート電位のゲート電極G1と、エミッタ電位のゲート電極G2とが、互いに隣接する配置となっているので、ゲート電極G1をX方向に延在させて、ベース領域PBを分離することができない。
<本実施の形態の半導体装置の主な特徴および効果について>
以下に、本実施の形態の半導体装置の主な特徴および効果を説明する。
【0094】
まず、
図2に示されるように、本実施の形態では、アクティブセル領域AC内の全面にハイブリッドセル領域HBCを形成するのではなく、Y方向において、複数のハイブリッドセル領域HBCが各々独立して設けられている。また、アクティブセル領域AC内のY方向全体にコンタクトホールCH1を形成するのではなく、複数のコンタクトホールCH1が、複数のハイブリッドセル領域HBC毎に設けられている。これにより、アクティブセル領域AC内のY方向全体にコンタクトホールCH1が形成された場合と比較して、アクティブセル領域ACで発生する寄生p型MOSFET1の面積が少なくなるため、フローティング領域PFの表面に蓄積されるホールの排出経路が低減する。よって、IE効果が向上するので、IGBTのターンオン時のスイッチング損失が改善される。
【0095】
また、
図2および
図7に示されるように、本実施の形態の半導体装置では、検討例1の半導体装置と異なり、アクティブセル領域AC内に分離領域NBを形成している。すなわち、Y方向において、ハイブリッドセル領域HBC以外の領域に、ベース領域PBおよびフローティング領域PFが形成されているが、これらのベース領域PBおよびフローティング領域PFと、ハイブリッドセル領域HBCとは、分離領域NBによって分離されている。
【0096】
上述のように、本実施の形態では、複数のハイブリッドセル領域HBC毎に、複数のコンタクトホールCH1を設けて、ホールの排出経路を低減しているが、各ハイブリッドセル領域HBCの間のベース領域PBがホールの経路として機能することがある。分離領域NBは、この経路を遮断するために設けられている。すなわち、ホール排出経路は、
図7の矢印に示される経路となるが、分離領域NBはホールにとって高抵抗の領域となるため、ホールの排出効率は激減する。よって、ベース領域PBを経由するホール排出経路は、分離領域NBによってほぼ遮断される。このため、ホール排出効果が更に抑制されて、IE効果が向上するので、IGBTのターンオン時のスイッチング損失が更に改善される。以上のように、本実施の形態では、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0097】
また、実施の形態1の特徴として、アクティブセル領域AC内において、各ハイブリッドセル領域HBCの間に形成されているベース領域PBの下部には、フローティング領域PFが形成されている。アクティブセル領域ACのフローティング領域PFは、ゲート電極G2が埋め込まれているトレンチT2よりも深い位置まで形成されており、インアクティブセル領域IACのフローティング領域PFと接続している。アクティブセル領域ACのフローティング領域PFは、ゲート電位となるゲート電極G1と隣接しているため、IGBTの動作時に、アクティブセル領域ACのフローティング領域PFの表面付近に蓄積されるホールによる電位変動の影響が大きい。ここで、アクティブセル領域ACのフローティング領域PFを、インアクティブセル領域IACのフローティング領域PFと接続しておくことで、蓄積されるホールが分散し、電位変動を抑制することができる。
【0098】
また、フローティング領域PFがトレンチT2の底部を覆う構造となることで、トレンチT2の底部付近における電界を緩和することができる。従って、IGBTの耐圧を向上させることができる。
【0099】
(実施の形態2)
実施の形態2の半導体装置を、
図18〜
図20を用いて以下に説明する。
【0100】
図18は、半導体チップCHPの要部平面図であり、実施の形態1の
図2と同じ箇所を示す平面図である。
図19は、
図18のD−D線に沿った断面図であり、
図20は、
図18のE−E線に沿った断面図である。なお、実施の形態1で示したA−A断面、B−B断面およびC−C断面については、実施の形態2と実施の形態1とで同じであるので、その説明を省略する。
【0101】
実施の形態1では、アクティブセル領域AC内において、各ハイブリッドセル領域HBCの間に形成されているベース領域PBの下部には、フローティング領域PFが形成されていた。よって、アクティブセル領域ACのベース領域PBが、インアクティブセルIACのフローティング領域PFと接続されているため、寄生p型MOSFET1の動作に伴うホールの排出経路が存在した。
【0102】
これに対し、実施の形態2では、
図19および
図20に示されるように、上記のフローティング領域PFが形成されいない。すなわち、インアクティブセル領域IACのフローティング領域PFは、アクティブセル領域ACのベース領域PBと分離している。
【0103】
このため、実施の形態2では、実施の形態1のようなトレンチT2の底部付近における電界緩和の効果が小さい。
【0104】
しかしながら、実施の形態2では、アクティブセル領域ACのベース領域PBはホールの排出経路から分離されているため、ホールの排出効果が低下し、ホールの蓄積量は増加する。よって、実施の形態2の半導体装置は、実施の形態1の半導体装置と比較して、IE効果が向上するので、IGBTのターンオン時のスイッチング損失が更に改善される。
【0105】
(実施の形態3)
実施の形態3の半導体装置を、
図21〜
図23を用いて以下に説明する。
【0106】
図21は、半導体チップCHPの要部平面図であり、実施の形態1の
図2と同じ箇所を示す平面図である。
図22は、
図21のD−D線に沿った断面図であり、
図23は、
図21のE−E線に沿った断面図である。
【0107】
実施の形態1では、アクティブセル領域AC内において、各ハイブリッドセル領域HBCの間に、ベース領域PBおよびフローティング領域PFが形成されていた。
【0108】
これに対し、実施の形態3では、
図22および
図23に示されるように、上記ベース領域PBおよび上記フローティング領域PFが形成されおらず、分離領域NBが形成されている。すなわち、アクティブセル領域AC内において、各ハイブリッドセル領域HBCの間には、分離領域NBのみが形成されている。
【0109】
このため、実施の形態3では、実施の形態1のようなトレンチT2の底部付近における電界緩和の効果が小さくなり、IGBTの耐圧が低下することになる。しかしながら、トレンチT1およびトレンチT2の間隔が狭く、これらのトレンチ間のみで耐圧を確保できるようなIGBTであれば、実施の形態3の構造を適用しても、問題はない。
【0110】
また、実施の形態3では、ハイブリッドセル領域HBC以外のアクティブセル領域AC内に、ベース領域PBおよびフローティング領域PFのようなp型不純物領域が無いので、ゲート電極G1付近での電位変動が発生しない。また、ホールの排出経路は、インアクティブセル領域IACのフローティング領域PF側の経路に限定される。よって、実施の形態3の半導体装置は、実施の形態1および実施の形態2の半導体装置と比較して、IE効果が向上するので、IGBTのターンオン時のスイッチング損失が更に改善される。
【0111】
(実施の形態3の変形例1)
実施の形態3の変形例1の半導体装置を、
図24および
図25を用いて以下に説明する。
【0112】
図24は、半導体チップCHPの要部平面図であり、実施の形態1の
図2と同じ箇所を示す平面図である。
図25は、
図24のD−D線に沿った断面図である。
【0113】
変形例1でも、実施の形態3と同様に、アクティブセル領域AC内において、各ハイブリッドセル領域HBCの間には、分離領域NBが形成されている。変形例1では、この分離領域NB内に、複数に分岐させたゲート電位のゲート電極G1aを形成している。
【0114】
このように分岐されたゲート電極G1aは、ハイブリッドセル領域HBCで再び1つのゲート電極G1に集約される。すなわち、ゲート電極G1と複数のゲート電極G1aは、一体化している。高濃度のn型不純物領域である分離領域NB内に、複数のゲート電極G1aが存在することで、ゲート容量を増やすことが可能となる。
【0115】
例えば、EGE型構造では、ゲート容量が小さいことによるデメリットとして、ターンオン時の電流が定格電流以上に急激に上昇する問題、または、複数のIGBTを並列接続したモジュールにおいて発生するループ内の共振(発振)問題などがある。変形例1の技術を用いることで、ゲート容量を副作用なく増やすことが可能となるので、ダンピング容量を向上できるなど、EGE型構造のデメリットを改善することできると共に、実施の形態3と同様にIE効果を向上させることができる。
【0116】
(実施の形態3の変形例2)
実施の形態3の変形例2の半導体装置を、
図26および
図27を用いて以下に説明する。
【0117】
図26は、半導体チップCHPの要部平面図であり、実施の形態1の
図2と同じ箇所を示す平面図である。
図27は、
図26のD−D線に沿った断面図である。
【0118】
変形例2でも、実施の形態3の変形例1と同様に、アクティブセル領域AC内において、各ハイブリッドセル領域HBCの間には、分離領域NBが形成されており、この分離領域NB内に、複数に分岐させたゲート電位のゲート電極G1aを形成している。なお、分離領域NBは、実施の形態3と同様に、X方向において、ゲート電極G2に挟まれている。
【0119】
変形例2では、ハイブリッドセル領域HBC以外のアクティブセル領域ACを、X方向に拡大している。すなわち、X方向において、分離領域NBの幅を、ハイブリッドセル領域HBCの幅よりも大きくしている。言い換えれば、ハイブリッドセル領域HBC以外のアクティブセル領域ACに形成されている2つのゲート電極G2間の距離は、ハイブリッドセル領域HBCに形成されている2つのゲート電極G2間の距離よりも、大きくなっている。
【0120】
これにより、変形例2では、変形例1と比較して、ゲート電極G1aの個数を更に増やすことができるので、ゲート容量を更に増やすことができる。
【0121】
(実施の形態4)
実施の形態4の半導体装置を、
図28および
図29を用いて以下に説明する。
【0122】
図28は、半導体チップCHPの要部平面図であり、実施の形態1の
図2と同じ箇所を示す平面図である。
図29は、
図28のA−A線に沿った断面図である。
【0123】
実施の形態4の半導体装置は、EGE型構造をシュリンクした構造であり、EGE−S型構造と呼ばれるIE型IGBTである。EGE−S型構造は、実施の形態1と同様にEGE型構造であるが、実施の形態1よりもゲート電極G1とゲート電極G2との間を縮小した構造となっている。
【0124】
図28および
図29に示されるように、コンタクトホールCH1は、エミッタ領域NE、ベース領域PBおよびボディ領域PRだけでなく、ゲート電極G2にも接するように形成されている。このため、ゲート電極G2をエミッタ電位電極EEと接続するために、別途、ゲート電極G2との接続領域、および、その接続領域に接続されるコンタクトホールを設ける必要がなく、X方向におけるアクティブセル領域ACの幅を縮小することができる。従って、半導体装置を微細化することができる。
【0125】
実施の形態4でも、実施の形態1と同様に、アクティブセル領域AC内において、ハイブリッドセル領域HBCと隣接する領域に分離領域NBが設けられている。従って、実施の形態4の半導体装置は、実施の形態1の半導体装置と同様の効果を得ることができると共に、半導体装置を微細化することができる。また、実施の形態2および3で説明した技術を、実施の形態4に適用することもできる。
【0126】
(実施の形態5)
実施の形態5の半導体装置を、
図30および
図31を用いて以下に説明する。
【0127】
図30は、半導体チップCHPの要部平面図であり、実施の形態1の
図2と同じ箇所を示す平面図である。
図31は、
図30のA−A線に沿った断面図である。
【0128】
実施の形態5の半導体装置は、GE−S型構造と呼ばれるIE型IGBTである。GE−S型構造は、実施の形態4のEGE−S型構造を基本としているが、EGE−S型構造からゲート電極G2を1つ省略した構造となっている。
【0129】
図30および
図31に示されるように、実施の形態5では、アクティブセル領域ACはゲート電極G1およびゲート電極G2と、これらの間の領域によって構成されている。また、実施の形態4と同様に、コンタクトホールCH1は、エミッタ領域NE、ベース領域PBおよびボディ領域PRだけでなく、ゲート電極G2にも接するように形成されている。
【0130】
GE−S型構造では、ゲート電位のゲート電極G1と隣接しているフローティング領域PFにて、電位変動が起きやすくなっているが、この領域に蓄積されるホールは、X方向において隣接する他のアクティブセル領域ACのゲート電極G2がエミッタ電位であることにより、他のアクティブセル領域ACで寄生p型MOSFET動作を行うことで、排出することができる。
【0131】
実施の形態5でも、実施の形態1と同様に、アクティブセル領域AC内において、ハイブリッドセル領域HBCと隣接する領域に分離領域NBが設けられている。従って、実施の形態5の半導体装置は、実施の形態1の半導体装置とほぼ同様の効果を得ることができると共に、実施の形態4と比較して、半導体装置を更に微細化することができる。また、実施の形態2および3で説明した技術を、実施の形態5に適用することもできる。
【0132】
(実施の形態6)
実施の形態6の半導体装置を、
図32および
図33を用いて以下に説明する。
【0133】
図32は、半導体チップCHPの要部平面図であり、実施の形態1の
図2と同じ箇所を示す平面図である。
図33は、
図32のA−A線に沿った断面図である。
【0134】
実施の形態6の半導体装置は、EGE−GG型構造と呼ばれるIE型IGBTである。EGE−GG型構造は、実施の形態1などで説明したEGE型構造に加えて、GG型構造のセルが配置されている。
【0135】
図32および
図33に示されるように、実施の形態6の半導体装置は、EGE型構造のハイブリッドセル領域HBCを含む第1アクティブセル領域AC1と、GG型構造のスタンダードセルSDCを含む第2アクティブセル領域AC2と、第1アクティブセル領域AC1と第2アクティブセル領域AC2との間に位置するインアクティブセル領域IACと、を有する。
【0136】
なお、実施の形態6の第1アクティブセル領域AC1およびインアクティブセル領域IACの構成は、実施の形態1のアクティブセル領域ACおよびインアクティブセル領域IACの構成と同様であるので、これらの説明を省略する。
【0137】
第2アクティブセル領域AC2は、ゲート電位電極GEに電気的に接続される2つのゲート電極G1と、2つのゲート電極G1に挟まれた領域からなる。第2アクティブセル領域AC2のうち、エミッタ領域NEが形成されている領域がスタンダードセルSDCである。スタンダードセルSDC内には、ホールバリア領域NHBの表面に形成されているベース領域PBが形成されており、エミッタ領域NEはベース領域PBの表面に形成されている。また、スタンダードセルSDCには、コンタクトホールCH2が配置されており、コンタクトホールCH2の底部付近には、ボディ領域PRが形成されている。また、コンタクトホールCH2内には、コンタクトホールCH1と同様に、エミッタ電位電極EEが埋め込まれている。すなわち、スタンダードセルSDCにおいて、エミッタ領域NE、ベース領域PBおよびボディ領域PRは、IGBTの動作時にエミッタ電位が印加される。
【0138】
スタンダードセルSDC以外の第2アクティブセル領域AC2の構成は、ハイブリッドセル領域HBC以外の第1アクティブセル領域AC1の構成と同様である。すなわち、Y方向で互いに隣接するスタンダードセルSDCの間には、n型の分離領域NBと、フローティング領域PFおよびベース領域PBと、n型の分離領域NBとが形成されている。
【0139】
第2アクティブセル領域AC2では、第1アクティブセル領域AC1と異なり、エミッタ電位のゲート電極G2が形成されていない。従って、ゲート電位のゲート電極G1と隣接しているインアクティブセル領域IACのフローティング領域PF、および、第2アクティブセル領域AC2内のフローティング領域PFにて、電位変動が起きやすくなっている。しかし、これらの領域に蓄積されるホールは、X方向において隣接するハイブリッドセル領域HBCにて寄生p型MOSFET動作を行うことで、排出することができる。
【0140】
実施の形態6の半導体装置は、EGE型構造のセルにGG型構造のセルを追加したことで、ゲート容量を調整しやすいという効果を有する。実施の形態1のように、EGE型構造のみでは、ゲート容量が小さすぎてダンピング容量を確保できない等の問題がある。また、GGEE型構造ではゲート容量が大きすぎてスイッチング損失が悪化する等の問題が発生しやすい。しかし、各構造を基本としてゲート容量を調整するには、フローティング領域PFの幅を変えて、アクティブセル領域ACの密度を調整する方法が考えられるが、フローティング領域PFの幅を変えると、スイッチング特性または順方向飽和電圧VCE(sat)特性など、ゲート容量以外の特性が変動してしまう。
【0141】
実施の形態6のようなEGE−GG型構造では、第1アクティブセル領域AC1の幅と、インアクティブセル領域IAC(フローティング領域PF)の幅との比、および、第2アクティブセル領域AC2の幅と、インアクティブセル領域IACの幅との比を、1:2〜1:3に維持しながら、ゲート容量を調整することが可能であり、設計自由度も向上させることが可能となる。言い換えれば、上記の比を、順方向飽和電圧VCE(sat)と、ターンオフ時のスイッチング損失とのトレードオフ関係において、ターンオフ時のスイッチング損失が低損失となる理想的な値である、1:2〜1:3に維持することができる。
【0142】
すなわち、実施の形態6の半導体装置は、実施の形態1の半導体装置とほぼ同様の効果を得ることができると共に、実施の形態1と比較して、ゲート容量の調整を容易に行うことができる。また、実施の形態2〜5で説明した技術を、実施の形態6の第1アクティブセル領域AC1に適用することもできる。
【0143】
(実施の形態7)
実施の形態7の半導体装置を、
図34および
図35を用いて以下に説明する。
【0144】
図34は、半導体チップCHPの要部平面図であり、実施の形態1の
図2と同じ箇所を示す平面図である。
図35は、
図34のA−A線に沿った断面図である。
【0145】
実施の形態7の半導体装置は、GGEE型構造のIE型IGBTである。
【0146】
図34および
図35に示されるように、実施の形態7の半導体装置は、GG型構造のスタンダードセルSDCを含むアクティブセル領域AC2と、インアクティブセル領域IACとを有する。また、インアクティブセル領域IACは、EE型構造のホール排出セルHECを有する。
【0147】
なお、実施の形態7において、アクティブセル領域AC2の構成およびインアクティブセル領域IACの構成は、実施の形態6の各構成とほぼ同様であるので、これらの説明を省略する。
【0148】
ホール排出セルHECは、エミッタ電位電極EEに電気的に接続される2つのゲート電極G2と、2つのゲート電極G2に挟まれた領域からなる。ホール排出セルHEC内には、ホールバリア領域NHBの表面に形成されているベース領域PBが形成されており、このベース領域PB内にはエミッタ領域NEは形成されていない。また、ホール排出セルHECには、コンタクトホールCH3が配置されており、コンタクトホールCH3の底部付近には、ボディ領域PRが形成されている。また、コンタクトホールCH3内には、コンタクトホールCH1と同様に、エミッタ電位電極EEが埋め込まれている。すなわち、ホール排出セルHECにおいて、ベース領域PBおよびボディ領域PRは、IGBTの動作時にエミッタ電位が印加される。
【0149】
ホール排出セルHECは、主に、ハイブリッドセル領域HBCで説明したような、寄生p型MOSFET動作を行うために設けられた領域である。
【0150】
実施の形態7の半導体装置は、ハイブリッドセル領域HBCのようなEGE型構造ではなく、GG型構造のスタンダードセルSDCを有するが、Y方向で隣接するスタンダードセルSDCの間には、n型の分離領域NBと、フローティング領域PFおよびベース領域PBと、n型の分離領域NBとが形成されている。従って、実施の形態1のハイブリッドセル領域HBCと同様に、IE効果を向上させることができ、IGBTのターンオン時のスイッチング損失を改善させることができる。
【0151】
また、実施の形態2および3で説明した技術を、実施の形態7に適用することもできる。
【0152】
(実施の形態8)
実施の形態8の半導体装置を、
図36および
図37を用いて以下に説明する。
【0153】
ここでは、実施の形態8の半導体装置が、実施の形態1〜7で説明したIGBTを備えた半導体チップCHPを複数個有し、これら複数個の半導体チップが互いに並列に接続されたモジュールである例について説明する。
【0154】
図36は、実施の形態8の半導体装置が用いられる電子システムの一例を示す回路ブロック図である。
図37は、実施の形態8の半導体装置としてのモジュールを示す等価回路図である。
図37では、
図36に示すインバータINVに含まれる6つのIGBTモジュール10のうち、U相PH1に対応した2つのIGBTモジュール10を示す。
【0155】
図36に示すように、本実施の形態8の半導体装置が用いられる電子システムは、モータMOTなどの負荷と、インバータINVと、制御回路CTC1と、制御回路CTC2と、を有する。このような電子システムは、例えば太陽光発電システムまたは風力発電システムである。モータMOTとしては、ここでは3相モータを用いている。3相モータは、位相の異なる3相の電圧により駆動するように構成されている。制御回路CTC1は、複数のパワーモジュールPM1およびPM2を含む。
【0156】
図36に示す電子システムにおいては、例えば太陽光発電システム、風力発電システムまたはUPS(Uninterruptible Power Supply)における発電モジュール(図示は省略)の出力が、インバータINVの入力端子TM1およびTM2に接続され、上記発電モジュールの直流電圧、すなわち直流電力がインバータINVに供給される。
【0157】
制御回路CTC1は、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)により構成されており、MCU(Micro Controller Unit)のような制御用の半導体チップを内蔵している。制御回路CTC1は、複数のパワーモジュールPM1およびPM2を含む。パワーモジュールPM1およびPM2も、例えばECUにより構成されており、MCUのような制御用の半導体チップを内蔵している。
【0158】
制御回路CTC1に含まれる複数のパワーモジュールPM1およびPM2は、制御回路CTC2に接続されている。インバータINVは、この制御回路CTC2によって制御される。制御回路CTC2は、例えばゲートドライバおよびフォトカプラを含む。制御回路CTC2に含まれるゲートドライバ(図示は省略)は、インバータINVに接続されている。このとき、制御回路CTC2に含まれるゲートドライバは、インバータINVに備えられたIGBTのゲート電極に接続されている。
【0159】
インバータINVにはモータMOTが接続され、例えば太陽光発電システムまたは風力発電システムにおける発電モジュール(図示は省略)からインバータINVに供給された直流電圧、すなわち直流電力は、インバータINVで交流電圧、すなわち交流電力に変換されて、モータMOTに供給されるようになっている。モータMOTは、インバータINVから供給された交流電圧、すなわち交流電力によって駆動される。
【0160】
図36に示す例では、モータMOTは、U相PH1、V相PH2およびW相PH3からなる3相モータである。そのため、インバータINVも、U相PH1、V相PH2およびW相PH3からなる3相に対応したものである。このような3相に対応したインバータINVは、IGBTモジュール10とダイオードモジュール11との組を合計6組有する。
【0161】
本実施の形態3の半導体装置は、IGBTモジュール10に相当する。また、IGBTモジュール10は、複数のIGBTチップ12を含むが、IGBTチップ12は、
図1に示される半導体チップCHPに相当する。
【0162】
なお、モータMOTが2相モータである場合には、インバータINVは、IGBTモジュール10とダイオードモジュール11との組を合計4組有する。
【0163】
インバータINVのうち、モータMOTの入力電位よりも電源電圧Vcc側を、ハイサイドと称する。また、インバータINVのうち、モータMOTの入力電位よりも接地電位GND側を、ローサイドと称する。
図36に示す例では、ハイサイドのIGBTモジュール10として、3つのIGBTモジュール10が用いられ、ローサイドのIGBTモジュールとして、3つのIGBTモジュール10が用いられる。また、ハイサイドのダイオードモジュール11として、3つのダイオードモジュール11が用いられ、ローサイドのダイオードモジュール11として、3つのダイオードモジュール11が用いられる。
【0164】
図36の領域ARに示す、例えばU相に対応した2個のIGBTモジュール10のうち、ハイサイドのIGBTモジュール10Hは、
図37に示すように、半導体チップCHPからなるIGBTチップ12を複数、例えば6個備えている。また、例えばU相に対応した2個のIGBTモジュール10のうち、ローサイドのIGBTモジュール10Lは、半導体チップCHPからなるIGBTチップ12を複数、例えば6個備えている。ハイサイドおよびローサイドのいずれにおいても、複数のIGBTチップ12の各々のエミッタ電位電極EEは、互いに電気的に接続され、複数のIGBTチップ12の各々のコレクタ電位電極CEは、互いに電気的に接続されている。
【0165】
図36に示す例では、U相PH1、V相PH2およびW相PH3からなる3相の各相において、入力端子TM1およびTM2を介してインバータINVに供給される電源電圧VccとモータMOTの入力電位との間、すなわちハイサイドに、IGBTモジュール10とダイオードモジュール11とが逆並列に接続されている。また、U相PH1、V相PH2およびW相PH3からなる3相の各相において、モータMOTの入力電位と接地電位GNDとの間、すなわちローサイドに、IGBTモジュール10とダイオードモジュール11とが逆並列に接続されている。
【0166】
そして、6つのIGBTモジュール10の各々に含まれる複数のIGBTチップ12の各々のゲート電極には、制御回路CTC2が接続されており、この制御回路CTC2によって、6つのIGBTモジュール10に含まれる複数のIGBTチップ12の各々が制御されるようになっている。なお、
図37に示されるように、6つのダイオードモジュール11の各々には、複数のダイオード13が含まれ、各IGBTチップ12と各ダイオード13とが逆並列に接続されている。
【0167】
各IGBTモジュール10を流れる電流が制御回路CTC2を用いて制御されることにより、モータMOTが駆動され、回転する。すなわち、制御回路CTC2を用いて各IGBTモジュール10のオン、オフを制御することにより、モータMOTを駆動することができる。このようにモータMOTを駆動させる場合には、IGBTモジュール10をオン、オフする必要があるが、モータMOTにはインダクタンスが含まれている。したがって、IGBTモジュール10をオフすると、モータMOTに含まれるインダクタンスによって、IGBTモジュール10の電流が流れる方向と逆方向の逆方向電流が発生する。IGBTモジュール10では、この逆方向電流を流す機能を有していないので、IGBTモジュール10と逆並列にダイオードモジュール11を設けることにより、逆方向電流を還流させてインダクタンスに蓄積されるエネルギーを開放している。
【0168】
上述のように、実施の形態8のIGBTチップ12には、上述の実施の形態1〜7で説明した半導体チップCHPが適用されている。このため、各IGBTチップ12の各々では、ターンオン時のスイッチング損失が改善されているので、これらを有するインバータINVは、従来よりも低電力で駆動することができる。従って、太陽光発電システム、風力発電システムまたはUPSにおける電力の有効利用が可能となる。また、発電をインターフェイスにしているパワーコンディショナーなどでは、電力効率を向上させることにより、発電量の向上にも貢献することが可能となる。
【0169】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0170】
例えば、上記実施の形態では、アクティブセル領域ACの幅と、インアクティブセル領域IACの幅との比を、1:2〜1:3として説明したが、例えば1:1または1:4のように、上記の各幅の比を他の比としてもよい。
【0171】
その他、上記実施の形態に記載された内容の一部を以下に記載する。
【0172】
[付記1]
平面視において第1方向に延在する第1領域と、前記第1領域とは異なる領域である第2領域と、前記第1領域内に配置された第3領域と、前記第1領域内において前記第3領域と前記第1方向で隣接するように配置された第4領域と、前記第2領域内において前記第1方向に延在する第5領域と、を有する半導体装置であって、
(a)前記第1領域および前記第2領域において、半導体基板に、第1導電型の第1不純物領域を形成する工程、
(b)前記第4領域の前記第1不純物領域に、前記第1不純物領域よりも高い不純物濃度を有する、前記第1導電型の第5不純物領域を形成する工程、
(c)前記第1領域の前記第1不純物領域に、前記第1方向に延在する2つの第1トレンチを形成し、前記第2領域の前記第1不純物領域に、前記第1方向に延在する2つの第2トレンチを形成する工程、
(d)前記2つの第1トレンチの内壁の各々に、第1ゲート絶縁膜を形成し、前記2つの第2トレンチの内壁の各々に、第2ゲート絶縁膜を形成する工程、
(e)前記2つの第1トレンチ内を埋め込むように、前記2つの第1ゲート絶縁膜の各々の上に、第1ゲート電極を形成し、前記2つの第2トレンチ内を埋め込むように、前記2つの第2ゲート絶縁膜の各々の上に、第2ゲート電極を形成する工程、
(f)前記第3領域の前記2つの第1ゲート電極の間の前記第1不純物領域、および、前記第5領域の前記2つの第2ゲート電極の間の前記第1不純物領域に、前記第1導電型とは反対の導電型である第2導電型の第2不純物領域を形成する工程、
(g)前記第3領域の前記第2不純物領域に、前記第1導電型の第3不純物領域を形成する工程、
(h)前記第1領域および前記第2領域において、前記第1不純物領域よりも下部の前記半導体基板に、前記第2導電型の第4不純物領域を形成する工程、
(i)前記第1ゲート電極と電気的に接続するゲート電位電極を形成し、前記第2不純物領域、前記第3不純物領域および前記第2ゲート電極と電気的に接続されるエミッタ電位電極を形成する工程、
(j)前記第4不純物領域と電気的に接続されるコレクタ電位電極を形成する工程、
を有し、
前記第3領域は、前記第1領域内において、互いに前記第1方向で離間するように複数配置され、
前記複数の第3領域の間には、それぞれ、前記第4領域が配置されている、半導体装置の製造方法。
【0173】
[付記2]
付記1記載の半導体装置の製造方法において、更に、
(k)前記(h)工程と前記(i)工程の間に、前記複数の第3領域の前記半導体基板上に、層間絶縁膜を形成する工程、
(l)前記層間絶縁膜に、前記第2不純物領域および前記第3不純物領域と接するように、前記第2不純物領域に到達する複数の第1コンタクトホールを形成する工程、
(m)前記複数の第1コンタクトホールの底部が位置する前記第2不純物領域に、それぞれ、前記第2不純物領域よりも高い不純物濃度を有する、前記第2導電型の第6不純物領域を形成する工程、
を有し、
前記(i)工程において、前記エミッタ電位電極は、前記複数の第1コンタクトホール内を埋め込むように形成される、半導体装置の製造方法。
【0174】
[付記3]
付記1記載の半導体装置において、
前記(f)工程において、前記第2不純物領域を、前記第4領域の前記第1不純物領域にも形成し、
前記第3領域の前記第2不純物領域は、前記第4領域の前記第5不純物領域によって、前記第4領域の前記第2不純物領域と分離されている、半導体装置の製造方法。
【0175】
[付記4]
付記3記載の半導体装置において、更に、
(n)前記第4領域の前記第1不純物領域に、前記第2導電型の第7不純物領域を形成する工程、
を有し、
前記(f)工程において、前記第4領域の前記第2不純物領域を、前記第7不純物領域に形成し、
前記第3領域の前記第2不純物領域は、前記第4領域の前記第5不純物領域によって、前記第4領域の前記第2不純物領域および前記第7不純物領域と分離されている、半導体装置の製造方法。