特許第6963985号(P6963985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963985
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】外壁見切り部の防水構造とその形成方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/64 20060101AFI20211028BHJP
   E04B 9/02 20060101ALI20211028BHJP
   E04B 9/30 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   E04B1/64 C
   E04B9/02
   E04B9/30 C
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-238532(P2017-238532)
(22)【出願日】2017年12月13日
(65)【公開番号】特開2019-105090(P2019-105090A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2020年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】園田 千絵
(72)【発明者】
【氏名】松原 悟志
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−031007(JP,A)
【文献】 実開平05−040458(JP,U)
【文献】 実開昭61−013719(JP,U)
【文献】 特開2017−031750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62−1/99
E04B 9/00−9/36
E04D 1/00−3/40;
13/00−15/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁面材の途中位置に見切り材の見切り部が位置する、外壁見切り部の防水構造であって、
前記外壁面材の上端から外壁面に亘って折り曲げられ、該上端に固定されている水返しシートを有し、
屋根に通じる吊木にて前記水返しシートが前記外壁面材に押圧されていることを特徴とする、外壁見切り部の防水構造。
【請求項2】
前記水返しシートが前記上端に接着剤もしくは接着シートを介して固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の外壁見切り部の防水構造。
【請求項3】
前記水返しシートが、変形性と伸縮性を有する樹脂製シートであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の外壁見切り部の防水構造。
【請求項4】
前記外壁面材が、軒、棟もしくはケラバに通じる外壁面材、もしくは、バルコニーの笠木に通じる腰壁材のいずれか一種であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の外壁見切り部の防水構造。
【請求項5】
建物の外壁面材の途中位置に見切り材の見切り部が位置する、外壁見切り部の防水構造の施工方法であって
工場において、折り曲げられた水返しシートを前記外壁面材の上端から外壁面に亘って配設し、該上端に固定するプレ固定工程と、
前記水返しシートが固定されている前記外壁面材を現場搬送して建て込み、該外壁面材の途中位置に見切り材の見切り部を位置決めする見切り材施工工程と、
屋根に通じる吊木を施工する吊木施工工程と、を有し、
前記吊木施工工程において、前記吊木にて前記水返しシートを前記外壁面材に押圧することを特徴とする、外壁見切り部の防水構造の形成方法。
【請求項6】
前記プレ固定工程において、前記水返しシートを前記上端に接着剤もしくは接着シートを介して固定することを特徴とする、請求項に記載の外壁見切り部の防水構造の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁見切り部の防水構造とその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軒天材が、建物の外壁面材の上端を通って建物の内側まで延びている、所謂、軒天勝ち(外壁面材負け)の納まりにおいては、外壁面材の上端と軒天材の間に止水材を介在させることができ、外壁面材と軒天材の間の外壁見切り部の防水構造を容易に形成することができる。一方、建物の外壁面材の途中位置に軒天材の見切り部が位置する、所謂、外壁面材勝ち(外装材勝ち)の納まりでは、外壁面材に多数の凹凸が存在することから、外壁見切り部での完全な防水構造の形成は極めて難しくなる。
【0003】
ここで、外壁面材勝ちの納まりにおける、軒天見切り構造が提案されている。具体的には、軒天材の基端部と、建物の躯体に対して所定間隔を隔てて取り付けられた外装材の上端部と、の間に、軒天見切材を設けて外装材勝ちの構造とし、外壁内部の空間と屋根裏部とを連通させて外壁内部の通気路を確保する。さらに、軒天見切材の係合部の裏側が外装材の上端部表面に当接される構成とするものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−97766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の軒天見切り構造では、軒天見切り材と外装材の間の隙間から雨水等が建物内部に浸入する恐れがある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、外壁見切り部が、所謂、外壁面材勝ちの納まりにおいても、外壁見切り部において高い防水性を得ることのできる、外壁見切り部の防水構造とその形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による外壁見切り部の防水構造の一態様は、建物の外壁面材の途中位置に見切り材の見切り部が位置する、外壁見切り部の防水構造であって、
前記外壁面材の上端から外壁面に亘って折り曲げられ、該上端に固定されている水返しシートを有することを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、外壁面材の上端から外壁面に亘って折り曲げられて配設されている水返しシートが外壁面材の上端に固定されていることにより、吹き込んでくる雨水を水返しシートで跳ね返すことができ、外壁見切り部において高い防水性を得ることができる。また、水返しシートが外壁面材の上端に固定されていることから、外壁面材の表面に柄模様(凹凸)がある場合においても、さらには、この凹凸が深い深掘り模様の場合においても、外壁見切り部における防水性が左右されることはない。
【0009】
また、本発明による外壁見切り部の防水構造の他の態様は、前記水返しシートが前記上端に接着剤もしくは接着シートを介して固定されていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、外壁面材の上端に水返しシートを容易に固定することができる。例えば、水返しシートをクリップ等で固定する形態と比べると、固定容易性は顕著である。また、接着固定であることから、例えばボルト固定などのように、水返しシートの上方に突出する突起物が存在せず、軒桁や野縁等の他部材との干渉の問題は生じない。
【0011】
また、本発明による外壁見切り部の防水構造の他の態様は、前記水返しシートが、変形性と伸縮性を有する樹脂製シートであることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、外壁建込みの後施工部材と水返しシートが干渉した場合でも、水返しシートが変形もしくは伸縮することにより、後施工部材への損傷を抑制しながら後施工部材の施工を可能とすることができる。なお、ここで、「変形性」とは折れ曲がり性を意味しており、「伸縮性」とは水返しシートの厚み方向や幅方向に伸縮して体積変化できる性能を意味している。
【0013】
また、本発明による外壁見切り部の防水構造の他の態様は、前記見切り材の先端で前記水返しシートが前記外壁面材に押圧されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、水返しシートのうち、外壁面に接触している箇所が見切り材の先端で外壁面材に対して見切り部の全延長に亘って押圧されていることにより、吹き込んでくる雨水による水返しシートの跳ね上がりが抑制され、より一層高い防水効果が得られる。なお、「見切り材の先端で水返しシートが外壁面材に押圧されている」なる構成は、見切り材の先端が水返しシートを直接外壁面材に押圧する形態の他にも、見切り材の先端に止水材が取り付けられていて、この止水材が水返しシートを外壁面材に押圧する形態(すなわち、見切り材の先端が間接的に水返しシートを外壁面材に押圧する形態)も含んでいる。
【0015】
また、本発明による外壁見切り部の防水構造の他の態様は、屋根に通じる吊木にて前記水返しシートが前記外壁面材に押圧されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、水返しシートのうち、外壁面に接触している箇所が屋根に通じる吊木で外壁面材に対して吊木の接触面で押圧されていることにより、吹き込んでくる雨水による水返しシートの跳ね上がりが抑制され、より一層高い防水効果が得られる。また、水返しシートのうち、吊木にて直接押圧されていない領域(吊木と吊木の間の領域)においても、吊木による押し付け効果によって防水性が高められる。
【0017】
また、本発明による外壁見切り部の防水構造の他の態様は、前記外壁面材が、軒、棟もしくはケラバに通じる外壁面材、もしくは、バルコニーの笠木に通じる腰壁材のいずれか一種であることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、建物の様々な外壁見切り部において、本発明の防水構造の適用が可能になる。ここで、軒には、勾配軒と水平軒の双方の軒天が含まれ、軒の出が小さい、所謂軒ゼロと称される軒も包含される。棟は、例えば片棟(片流れ棟)構造の屋根の破風板下方の軒天と外壁面材の見切り部を意味する。ケラバは、軒に直交するケラバの破風板と外壁面材との見切り部を意味する。バルコニーは、腰壁の上に笠木が固定されるが、笠木と腰壁の間に防水材(乾式もしくは湿式)が配設される構造において、この腰壁(外壁面材)の上端であって笠木の下方において水返しシートが配設され、腰壁の上端に固定される。このように、様々な形態の屋根やバルコニー腰壁を有する建物において、外壁面に形成される様々な見切り部における防水構造に適用可能である。
【0019】
また、本発明による外壁見切り部の防水構造の形成方法の一態様は、建物の外壁面材の途中位置に見切り材の見切り部が位置する、外壁見切り部の防水構造の施工方法であって
工場において、折り曲げられた水返しシートを前記外壁面材の上端から外壁面に亘って配設し、該上端に固定するプレ固定工程と、
前記水返しシートが固定されている前記外壁面材を現場搬送して建て込み、該外壁面材の途中位置に見切り材の見切り部を位置決めする見切り材施工工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、予め工場において外壁面材に折り曲げられた水返しシートを固定し、水返しシートが固定された外壁面材を現場搬送して建て込むことにより、外壁面材を建て込んだ際に水返し材の配設が同時に行われ、施工効率性を高めることができる。また、現場にて水返しシートを取付けないことから、作業員による技量によって防水性が左右されることもない。
【0021】
また、本発明による外壁見切り部の防水構造の形成方法の他の態様は、前記プレ固定工程において、前記水返しシートを前記上端に接着剤もしくは接着シートを介して固定することを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、水返しシートが外壁面材の上端に接着固定されていることから、例えばボルト固定などのように、水返しシートの上方に突出する突起物が存在せず、従って、外壁面材の建込施工の後工程の際にこのような突起物が後工程で施工される他部材と干渉するといった問題は生じない。
【0023】
また、本発明による外壁見切り部の防水構造の形成方法の他の態様は、前記見切り材施工工程において、前記見切り材の先端で前記水返しシートを前記外壁面材に押圧することを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、水返しシートのうち、外壁面に接触している箇所を、外壁面材の建込後に施工される見切り材の先端で外壁面材に対して押圧することにより、吹き込んでくる雨水による水返しシートの跳ね上がりを抑制することができ、より一層高い防水効果を有する防水構造を形成することができる。
【0025】
また、本発明による外壁見切り部の防水構造の形成方法の他の態様は、屋根に通じる吊木を施工する吊木施工工程をさらに有し、
前記吊木施工工程において、前記吊木にて前記水返しシートを前記外壁面材に押圧することを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、外壁面に接触している箇所を、外壁面材の建込後に施工される屋根に通じる吊木で外壁面材に押圧することにより、吹き込んでくる雨水による水返しシートの跳ね上がりを抑制することができ、より一層高い防水効果を有する防水構造を形成することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上の説明から理解できるように、本発明の外壁見切り部の防水構造とその形成方法によれば、外壁見切り部が、所謂、外壁面材勝ちの納まりにおいても、外壁見切り部において高い防水性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】水返しシートの一例を、接着シートを介して外壁面材に取り付ける手順図として示す図である。
図2】接着シートの幅に関する実施形態を示す縦断面図である。
図3】第1の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造の一例を示す縦断面図である。
図4】第2の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造の一例を示す縦断面図である。
図5】第3の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造の一例を示す縦断面図である。
図6】第4の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造の一例を示す縦断面図である。
図7】第5の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の各実施形態に係る外壁見切り部の防水構造について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0030】
[水返しシートの一例、及び水返しシートを外壁面材へ取り付けて現場にて建て込むまでの手順について]
はじめに、図1を参照して、水返しシートの一例を説明するとともに、水返しシートを外壁面材へ取り付けて現場にて建て込むまでの手順について説明する。ここで、図1は、水返しシートの一例を、接着シートを介して外壁面材に取り付ける手順図として示す図である。図1(a)に示すように、取付けられる外壁面材の長さに応じた長さuの折り返し前の水返しシート10'(二点鎖線図)をX方向に折り曲げ加工し、水返しシート10を製作する。この水返しシート10は、金属板、樹脂板等、その素材は多様であるが、変形性と伸縮性を有する樹脂板から製作されることが好ましく、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂板などを挙げることができる。
【0031】
変形性と伸縮性を有する水返しシート10を適用することにより、外壁面材の建込後に施工が行われる後施工部材と水返しシート10が干渉した際に、この後施工部材への損傷を抑制しながら、水返しシート10が折れ曲がる等の変形やシートの厚み方向に収縮する等の伸縮によって、後施工部材の施工を可能にできる。
【0032】
図1(b)に示すように、建物の外壁を構成する外壁面材1Aのうち、軒やケラバ等の屋根側の最上部に位置する外壁面材1Aに対し、その上端から外壁面に亘って折り曲げられた水平部11と垂直部12を有する水返しシート10を配設し、接着シート20を介して外壁面材1Aの上端に水返しシート10の水平部11の下面を接着する。このように、外壁面材1Aの上端において、接着シート20を介して外壁面材1Aの上端から外壁面に亘って水返しシート10が配設され、固定されることにより、外壁見切り部の防水構造100が形成される。ここで、「外壁見切り部の防水構造」とは、所謂、外壁面材勝ちの納まりにおける、軒やケラバ、バルコニーの腰壁上部の笠木近傍の見切り部における防水構造のことである。
【0033】
なお、外壁面材1Aはサイディング材から形成されている。このサイディング材としては、窯業系サイディング、アルミや鋼板からなる金属系サイディング、天然木を加工してなる木質系サイディング、塩化ビニル樹脂等からなる樹脂系サイディングなどが挙げられる。そして、この外壁面材1Aは、その表面(外壁面)に様々な凹凸からなる柄模様を有しており、図示例は、多数の垂直凹部1aと水平凹部1bにより、正面視矩形状の凸部が上下左右に連続して形成される柄模様を示している。各凹部1a,1bともに、深さが9mm程度のものや、さらに深掘りの12mm程度の深さのものがある。このように外壁面材1Aの外壁面に様々な柄模様が形成されていても、外壁面材1Aの平坦な上端において水返しシート10が固定されることから、水返しシート10の外壁面材1Aへの取付け性や取付け部の強度が外壁面材1Aの柄模様に左右されることはない。
【0034】
この外壁見切り部の防水構造100の形成は、外壁面材1Aを出荷する工場や、外壁面材1Aを製作する工場等、少なくとも現場搬送前のいずれかの工場にて予め行われる。従って、図1(b)に示すように、上端に水返しシート10が接着固定された状態の外壁面材1Aが現場に搬送され、現場にて外壁面材1Aが建て込まれるのと同時に、外壁面材1Aの上端には水返しシート10が取り付けられ、外壁見切り部の防水構造100が同時に形成されることになる。そのため、現場にて水返しシート10を取付ける施工手間が省略されるとともに、作業員による取付け技量に左右されることなく、水返しシート10の取付け精度の高い外壁見切り部の防水構造100が提供できる。
【0035】
接着シート20としては、例えば、防水性の高い両面接着用のブチルテープなどを挙げることができる。なお、本発明の各実施形態に係る外壁見切り部の防水構造では、水返しシート10が外壁面材1Aの上端において接着固定されて形成されることを必須とするものではないが、接着固定による固定形態が好ましい。接着シート20を用いて外壁面材1Aの上端に水返しシート10を接着することにより、例えば、ボルト等で水返しシート10を固定する場合にボルトが水返しシート10の上方に突出し、後施工部材の施工時に突出するボルトと干渉するといった施工時の問題は生じない。また、例えば水返しシート10を外壁面材1Aの室内側の通気層へも折り曲げ、この通気層にクリップ等を差し込んで水返しシート10の固定を行う場合のように、現場による作業が余儀なくされることもなくなる。
【0036】
次に、図2を参照して、接着シートの幅に関する実施形態について説明する。図2には、外壁面材1Aの厚みに対して二種類の幅の接着シートを示している。まず、図2(a)に示す実施形態は、外壁面材1Aの厚みt0に対し、その半分程度の幅t1を有する接着シート20を示している。なお、幅t1は厚みt0の半分よりも狭幅であってもよく、水返しシート10と外壁面材1Aの間において所望の接着性が確保できれば幅t1は様々に設定できる。
【0037】
建物に適用される外壁面材1Aの厚みt0は、例えば12mm乃至25mmと様々な厚みのものが存在し、凹部1bの深さも様々存在するが、例えば、全ての厚みの外壁面材1Aに適用可能な幅の接着シート20を用意することにより、その汎用性が高くなる。例えば、外壁面材1Aの厚みt2が12mm乃至25mmの場合において、接着シート20の幅t1を7mm乃至12mm程度に設定しておくことにより、接着シート20の汎用性を高めることができる。
【0038】
また、図2(a)に示すように、接着シート20は、外壁面材1Aの上端において、室内側の端辺に沿うようにして接着される。後述するように、外壁面材1Aの上方(もしくは斜め上方)には、軒桁や屋根部材等、様々な構造躯体が存在する。水返しシート10の垂直片12と外壁面材1Aの外壁面の間に雨水がY方向に仮に吹き込んできた場合でも、接着シート20による接着部位が外壁面から離れていることにより、勢いが可及的に減殺された雨水が接着シート20に到達することとなり、雨水が接着シート20を介して室内側へ浸み込むことを抑制することができる。
【0039】
一方、図2(b)に示す接着シート20Aは、その幅t2が外壁面材1Aの厚みt0と同程度の形態である。使用される外壁面材1Aの厚みt0に応じた接着シート20Aを用意する必要があり、多様な厚みの外壁面材1Aに対する汎用性はないものの、接着シート20Aによる接着面積が広くなることから、外壁面材1Aの上端からの水返しシート10の剥がれ防止効果が高まる。
【0040】
本発明の各実施形態に係る外壁見切り部の防水構造は、図1(b)に示す防水構造を基本構成としながら、この防水構造が適用される建物部位や屋根種等により、多様な形態の防水構造を提供することができる。以下、図2(a)に示す形態の接着シート20を適用した、各種実施形態に係る外壁見切り部の防水構造について詳説する。
【0041】
[第1の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造]
次に、第1の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造の一例を、図3を参照して説明する。図3は、第1の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造を示す縦断面図である。図3に示す防水構造100Aは、建物の軒天のうち、勾配軒の軒元における外壁見切り部の防水構造である。
【0042】
まず、外壁1は、外壁面材1Aと、通気層1Cを介して室内側に配設された外張り断熱材(外壁下地材)1Bと、を有する。なお、この通気層1Cには、所定の間隔を置いて不図示の複数の縦胴縁が配設されており、この縦胴縁を介して外壁面材1Aと外張り断熱材1Bが固定されている。外壁面材1Aは、既述するように例えば窯業系のサイディングボードである。外張り断熱材1Bは、グラスウールを断熱性能が最も高くなる密度にて圧縮したボードであり、その表面に透湿防水シート1dが貼り付けられている。外張り断熱材1Bの室内側の上端には軒桁4を支持する横胴縁2があり、横胴縁2の下方にはグラスウールやロックウール等を素材とする断熱材3が配設されている。このように、図示例の外壁1は、外張り断熱材1Bと断熱材3とを有する二重断熱構造となっているが、このような二重断熱構造に限らず、外張り断熱材1Bに代わって、表面に透湿防水シート1dが貼り付けられている一般的な下地材(下地ボード)を外装材1の構成要素としてもよい。また、図示を省略するが、断熱材3の室内側の面には防湿シートが配設され、さらにその室内側に石膏ボード等の内装材が配設される。
【0043】
外壁1の上方には、所定勾配を有する屋根7が配設されている。屋根7は、屋外側から、屋根葺き材74、アスファルト等のルーフィング(防水層)、野地板72、垂木71を有し、垂木71には野縁61や縦野縁62が取り付けられ、野縁61には傾斜した軒天材63が取り付けられている。また、図示を省略するが、縦野縁62の軒先には、下地材を介して鼻隠し材が取り付けられている。
【0044】
軒天材63のうち、外壁面材1A側の端部には金属製の見切り材5が取り付けられている。この見切り材5は、外壁1の幅方向(図3の紙面に直交する方向)に延びており、見切り材5における外壁面材1A側の側面からは断面形状が屈曲した見切り部5aが張り出している。そして、水返しシート10の垂直片12の下方表面が見切り部5aにて外壁面材1A側にZ1方向に押圧され、外壁見切り部の防水構造100Aが形成されている。
【0045】
勾配軒であって、外壁面材勝ちの納まりにおける軒元では、図3に示すように、外壁面材1Aの上端から水返しシート10の垂直片12の下端までの距離s1が短い(例えば、s1が15mm以下程度)。そのため、垂直片12と外壁面材1Aの間にY方向で吹き込んでくる雨水の吹き込み口と、屋根7等の構造躯体との距離が比較的短い。そこで、このような勾配軒であって外壁面材勝ちの納まりにおける軒元においては、水返しシート10の垂直片12を見切り部5aによって外壁面材1Aに対してZ1方向に押し付けて固定することにより、高い防水性を有する防水構造100Aを形成することができる。
【0046】
[第2の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造]
次に、第2の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造の一例を、図4を参照して説明する。図4は、第2の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造を示す縦断面図である。図4に示す防水構造100は、建物の軒天のうち、水平軒の軒元における外壁見切り部の防水構造である。
【0047】
図4に示すように、水平軒では、野縁61、縦野縁62及び軒天材63が水平に配設され、不図示の軒先において、下地材及び鼻隠し材を介して垂木71に取り付けられている。また、垂木71から垂下される不図示の吊木にて野縁61が固定されていてもよい。水平軒では、軒天材63が水平に配設されることにより、軒天材63に取り付けられている見切り材5から延びる見切り部5aと外壁面材1Aの当接位置から当該外壁面材1Aの上端までの距離s2は、比較的長くなる。なお、金属製の見切り部5aが外壁面材1Aの直接接触して外壁面材1Aの表面を傷付けないように、見切り部5aと外壁面材1Aの間には、外壁面材1Aの幅方向に沿う例えば乾式の緩衝材8が配設されている。ここで、緩衝材8は、乾式の止水材ともなり得るEPDM系ゴム(エチレンプロピレンゴム)やポリエチレンゴム等から製作することができる。
【0048】
水平軒の場合、垂直片12と外壁面材1Aの間にY方向に吹き込んでくる雨水の吹き込み口と、屋根7等の構造躯体との距離が比較的長くなる。そのため、吹き込んできた雨水は上昇過程で勢いが減殺され易く、従って、例えば図3に示す防水構造100Aのように水返しシート10の垂直片12を外壁面材1Aに押し付けて固定することにより、防水性を高める必要性は必ずしもない。そのため、水平軒であって外壁面材勝ちの納まりにおける軒元の防水構造には、垂直片12を何等押さえることのない、図1(b)に示す防水構造100が適用できる。なお、既述する勾配軒であっても、要求される防水性に応じて、図3に示すように見切り部5aで水返しシート10の端部を押し付けることなく、図1(b)に示す防水構造100を適用してもよい。
【0049】
[第3の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造]
次に、第3の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造の一例を、図5を参照して説明する。図5は、第3の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造を示す縦断面図である。図5に示す防水構造100Bは、建物の軒天のうち、水平軒の軒元における外壁見切り部の防水構造である点は第2の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造100と同様である。第2の実施形態の防水構造100との相違点は、水平軒であるものの、垂木71から垂下される吊木64にて水返しシート10の垂直片12を外壁面材1Aに対してZ1方向に押圧している構成を有する点である。
【0050】
吊木64は、外壁面材1Aの幅方向に、例えば450mm乃至500mm程度の間隔で垂下される。垂直片12に対し、吊木64の側面から押し込み力が作用することより、この吊木64が配設されている箇所での防水性は高められる。また、間隔を置いて複数の吊木64にて垂直片12が押圧されていることにより、吊木64にて全く押圧されていない場合と比べて、吊木64に直接押圧されていない領域においても垂直片12と外壁面材1Aの密着性は高められ、従って防水構造100Bの防水性は吊木64に対応する位置と対応しない位置の全てにおいて高められる。
【0051】
[第4の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造]
次に、第4の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造の一例を、図6を参照して説明する。図6は、第4の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造を示す縦断面図である。図6に示す防水構造100Cは、片棟屋根の棟における防水構造である。
【0052】
片棟屋根においては、外壁1の上方に大桁4Aの他、破風下地材91が取り付けられ、破風下地材91には化粧破風板92が取り付けられている。また、破風下地材91は、片流れ勾配を有する屋根7を構成する垂木71に取り付けられ、片流れの屋根7から化粧破風板92に跨るように屈曲した被覆板93が乾式防水材や下地材等を介してこれらの部材に取り付けられている。この被覆板93を介して、片棟屋根における屋根換気も行われる。
【0053】
外壁面材1Aの上端から外壁面に亘り、接着シート20を介して取付けられている水返しシート10に関し、水平片11は破風下地材91にて下方にZ2方向に押し付けられ、垂直片12は化粧破風板92にて側方にZ1方向に押し付けられている。
【0054】
片棟屋根では、軒等を有しておらず、棟が風雨に直接晒されることから、漏水の問題が顕著になる。本実施形態に係る防水構造100Cによれば、化粧破風板92と外壁面材1Aの間にY方向に吹き込んできた雨水を、水返しシート10の垂直片12と水平片11の双方が外壁面材1A側に押圧された構成を有していることにより、高い防水性を奏することができ、片棟屋根にて課題となり易い棟での漏水の問題を解消することができる。
【0055】
[第5の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造]
次に、第5の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造の一例を、図7を参照して説明する。図7は、第5の実施形態に係る外壁見切り部の防水構造を示す縦断面図である。図7に示す防水構造100は、建物のバルコニーの腰壁における、笠木下方の見切り部の防水構造である。腰壁も一般の外壁面材1Aを有しており、笠木95の垂下片の下方の突起部が腰壁の外壁面の途中位置に固定されることより、外壁見切り部の防水構造と言える。
【0056】
腰壁1'は、屋外側の外壁面材1Aとバルコニー側の外壁面材1Aが、通気層1E内にあって不図示の縦胴縁を介してフレーム状の下地材1Dに固定されて構成されている。この下地材Dの上端には笠木取付け板94が取付けられ、この笠木取付け板94に笠木95が取り付けられてバルコニー腰壁が形成される。図7に示すように、笠木95は、断面形状が略コの字状を呈しており、離間している二つの外壁面材1Aの上端に上方から被さるようにして配設されている。笠木95の垂下片の下方内側には突起95aがあり、この突起95aが緩衝材8を介して外壁面材1Aを押圧することにより、笠木95が外壁面材1Aに固定されている。なお、緩衝材8は、笠木95と腰壁を構成する外壁面材1Aの見切り材となる。図7において、突起95aは紙面垂直方向に間欠的に通気孔を有しており、通気孔を介して外気が外壁面材1Aの内側へ導入されるようになっている。
【0057】
外壁面材1Aの上端から外壁面に亘って配設された水返しシート10が接着シート20を介して外壁面材1Aの上端に固定されることにより、防水構造100が形成されている。図示するように、防水構造100により、笠木95の突起95aと外壁面材1Aの間をY方向に吹き込む雨水が外壁面材1Aの内側へ浸入することが抑制される。
【0058】
なお、図示を省略するが、軒の出が極めて少ない、所謂軒ゼロと称される軒元における防水構造や、同様に軒の出の少ないケラバにおける防水構造に関しても、図示する各実施形態の防水構造を適宜選択して適用することが可能である。
【0059】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。例えば、図示する実施形態では、水返しシートを一箇所で折り曲げて断面形状をL字状に加工した後、接着シートを介して外壁の上端に固定しているが、水返しシートを二箇所で折り曲げて断面形状をコの字状に加工した後、接着シート無しで外壁の上端からコの字状の水返しシートを被せるようにして外壁の上端に嵌め込んで固定する形態であってもよい。また、この形態において、図示例のように水返しシートと外壁の上端の間に接着シートをさらに介在させてもよい。このように、コの字状の水返しシートを外壁の上端に嵌め込む工程も、本発明の外壁見切り部の防水構造の形成方法におけるプレ固定工程となる。
【符号の説明】
【0060】
1:外壁、1':腰壁、1A:外壁面材、1a:垂直凹部(凹部)、1b:水平凹部(凹部)、1B:外張り断熱材(外壁下地材)、1d:透湿防水シート、1C:通気層、2:横胴縁(溝形鋼)、3:断熱材、4:軒桁、4A:大桁、5:見切り材、5a:見切り部、61:野縁、62:縦野縁、63:軒天材、7:屋根、71:垂木、72:野地板、73:ルーフィング、74:屋根葺き材、8:緩衝材、91:破風下地材、92:化粧破風板、93:被覆板、94:笠木取付け板、95:笠木、10:水返しシート、10':折り曲げ前の水返しシート(水返しシート)、11:水平片、12:垂直片、20,20A:接着シート、100,100A,100B,100C:外壁見切り部の防水構造(防水構造)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7