(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6964023
(24)【登録日】2021年10月20日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】コンクリートの流動性測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 11/00 20060101AFI20211028BHJP
G01N 11/04 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
G01N11/00 E
G01N11/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-49299(P2018-49299)
(22)【出願日】2018年3月16日
(65)【公開番号】特開2019-158812(P2019-158812A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】野中 英
【審査官】
山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−304260(JP,A)
【文献】
特開昭49−005691(JP,A)
【文献】
特開2011−169021(JP,A)
【文献】
米国特許第05437181(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00 − 11/16
G01N 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放された上端を含む上部及び閉鎖された下端を含む下部からなる筒状容器であって前記上部に前記筒状容器の周方向へ間隔をおいて設けられた、コンクリート中のモルタル成分の流入を許す複数列の孔群及び前記下部に前記筒状容器の周方向へ間隔をおいて設けられた、前記モルタル成分の流入量を示す複数列の目盛を有する筒状容器と、
前記筒状容器の内部に配置され前記筒状容器の内部を互いに独立した複数の空間に仕切る仕切り部材であって前記複数の空間がそれぞれ前記複数列の孔群に連通する仕切り部材と、
前記複数列の孔群をそれぞれ解除可能に閉鎖する複数の閉鎖部材とを備える、コンクリートの流動性測定装置。
【請求項2】
前記仕切り部材は、前記筒状容器の軸線の周りに等間隔をおいて配置され前記軸線から放射方向へ伸びかつ前記筒状容器の内壁に接し、また、前記筒状容器の下端に接する複数の板部を有する、請求項1に記載のコンクリートの流動性測定装置。
【請求項3】
前記閉鎖部材は、前記筒状容器の上部において前記筒状容器の内壁及び前記仕切り部材の互いに隣接する2つの板部に当接可能である円弧状の横断面を有する板部と、該板部に連なる、前記筒状容器の上端に係合可能の鍔部とを有する、請求項2に記載のコンクリートの流動性測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの流動性の測定に用いられる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開放された上端を含む上部及び閉鎖された下端を含む下部からなる筒状容器であってその上部及び下部にそれぞれ筒状容器の周方向へ間隔をおいて設けられたコンクリート(生コンクリート)中のモルタル成分の流入を許す複数列の孔群及び前記モルタル成分の流入量を示す複数列の目盛を有する筒状容器からなるコンクリートの流動性測定装置が提案されている。
【0003】
この測定装置によれば、コンクリートの流動性の測定に際し、筒状容器がその開放上端を空中に残して測定対象であるコンクリート中に挿入され、予め定められた所定の時間、前記コンクリート中に存置される。存置の間に前記コンクリートのモルタル成分が筒状容器の上部の複数の孔群を経て筒状容器内に流入しその下部に貯まる。所定時間の経過後、筒状容器が前記コンクリート中から抜き出される。前記コンクリートの流動性は、筒状容器の下部に貯まったモルタル成分の量を目盛から読み取ることにより評価される。
【0004】
ところで、コンクリートの流動性はその測定を複数回行うことによってより正確に評価することができる。しかし、これには労力と時間を要するという難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−304260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前記したところに鑑み、コンクリートのより正確な流動性の評価に寄与する測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はコンクリートの流動性を測定する装置に係る。測定装置は、開放された上端を含む上部及び閉鎖された下端を含む下部からなる筒状容器を備える。前記筒状容器は、その上部
に前記筒状容器の周方向へ間隔をおいて設けられた、コンクリート中のモルタル成分の流入を許す複数列の孔群及びその
下部に前記筒状容器の周方向へ間隔をおいて設けられた、前記モルタル成分の流入量を示す複数列の目盛を有する。前記測定装置は、また、前記筒状容器の内部に配置され前記筒状容器の内部を互いに独立した複数の空間に仕切る仕切り部材であって前記複数の空間がそれぞれ前記複数列の孔群に連通する仕切り部材と、前記複数列の孔群をそれぞれ解除可能に閉鎖する複数の閉鎖部材とを備える。
【0008】
前記測定装置によるコンクリートの流動性の測定は、例えば次のようにして行うことができる。まず、前記筒状容器を、その開放上端を空中に残して、測定対象である
コンクリート中に挿入する。次いで、複数の閉鎖部材による複数列の孔群の閉鎖を所定の時間をおいて順次に解除する。これにより、前記コンクリート中のモルタル成分が前記筒状容器の上部の複数列の孔群を順次に経て、前記仕切り部材により仕切られた前記筒状容器内の複数の空間内に流入し、貯まる。その後、前記筒状容器を前記コンクリート中から抜き出し、前記筒状容器の各空間内に貯留されたモルタル成分の量を各列の目盛から読み取る。
【0009】
本発明によれば、1つの測定装置による1回の測定行為により、コンクリート中からの時間的な間隔をおいた複数の試料(モルタル成分)の採取及び採取量の読み取りが可能である。これにより、より精度の高いコンクリートの流動性の評価を行うことができる。
【0010】
前記仕切り部材は、例えば前記筒状容器の軸線の周りに等間隔をおいて配置され前記軸線から放射方向へ伸びかつ前記筒状容器の内壁に接し、また、前記筒状容器の下端に接する複数の板部を有するものとすることができる。また、前記閉鎖部材は、前記筒状容器の上部において前記筒状容器の内壁及び前記仕切り部材の互いに隣接する2つの板部に当接可能である円弧状の横断面を有する板部と、該板部に連なる、前記筒状容器の上端に係合可能の鍔部とを有するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一の実施形態に係るコンクリートの流動性測定装置の斜視図である。
【
図2】(a)及び(b)は、それぞれ、
図1に示すコンクリートの流動性測定装置の平面図及び部分断面を含む正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1並びに
図2の(a)及び(b)を参照すると、本発明の一の実施形態に係るコンクリート(生コンクリート)の流動性を測定するための装置が全体に符号10で示されている。
【0013】
測定装置10は、筒状容器12と、仕切り部材14と、複数(図示の例では4つ)の閉鎖部材16とを備える。
【0014】
図示の筒状容器12は、プラスチック製、ガラス製等の透明な円筒18と、該円筒に固定され円筒18の開放両端の一方に液密に嵌合されこれを塞ぐ閉塞部材20とにより形成されている。このように形成された筒状容器12は、円筒18の前記開放両端の他の一方(上方)からなる開放された上端22aを含む上部22と、閉塞部材20が規定する下端24a(
図2(b)参照)を含む下部24とを有する。
【0015】
筒状容器12の上部22及び下部24には、それぞれ、前記コンクリート中のモルタル成分の流入を許す複数列(図示の例においては4列)の孔群26及び前記モルタル成分の流入量を測るための複数列(図示の例においては4列)の目盛28が設けられている。複数列の孔群26及び複数列の目盛28は、それぞれ、筒状容器12(円筒18)の周方向に互いに間隔をおいて設けられている。図示の孔群26は、各列において上下方向に互いに間隔をおいて配置された複数の円孔の集合からなる。図示の例に代えて、孔群26は、各列において上下方向に伸びる1つの長孔の集合(全部で4つ)からなるものとすることができる。
【0016】
測定装置10による前記コンクリートの流動性の測定に際しては、筒状容器12が、その下部24(より詳細には閉塞部材20)から前記コンクリート中に差し込まれ、その上端22aを空中に残して前記コンクリート中に所定時間、存置される。
【0017】
図示の例においては、筒状容器12の上部22に該上部の周囲を取り巻く板状の鍔30が設けられている。鍔30は、筒状容器12の上端22aと、各列の孔26との間に位置する。これによれば、筒状容器12の前記コンクリート中への差し込みを鍔30が前記コンクリートの表面に接するまで行うことにより、筒状容器12の孔群26が前記コンクリート中に埋もれかつ筒状容器12の上端22aが空中に残る状態におくことができる。
【0018】
仕切り部材14は、筒状容器12の内部、すなわち上部22および下部24の双方の内部を互いに独立した複数(図示の例では4つ)の空間32(
図2(b)参照)に仕切る。
【0019】
図示の仕切り部材14は、筒状容器12の軸線の周りに等間隔をおいて配置され筒状容器12の前記軸線から放射方向へ伸びる複数(図示の例では4つ)の板部14aを有する。4つの板部14aは前記放射方向における先端において筒状容器12の内壁12a(
図2(b)参照)に接し、また、前記軸線方向における下方の先端(下端24a)において閉塞部材20に接している。これにより、前記コンクリートの流動性の測定の際に空間32に受け入れられる前記コンクリートのモルタル成分の空間32相互間における移動が阻止される。
【0020】
仕切り部材14により仕切られた4つの空間32は、それぞれ、4列の孔群26に連通している。このことから、筒状容器12を前記コンクリート中に差し込むとき、前記コンクリート中のモルタル成分が4列の孔群26の一つを通して一つの空間32内に流入する。各空間32内に流入した前記モルタル成分の量は、筒状容器12を前記コンクリート中から空中へ引き上げた後、各列の目盛28から読み取ることができる。
【0021】
複数(図示の例では4つ)の閉鎖部材16は、それぞれ、複数列の孔群26を解除可能に閉鎖する働きをなす。
【0022】
図示の閉鎖部材16は円弧状の横断面を有する板部16a(
図3参照)と、該板部に連なる鍔部16bであって筒状容器12の上端22aに当接又は係合可能である鍔部16bとを有する。各閉鎖部材16の円弧状の板部16aは、各列の複数の円孔(26)の全部を閉鎖することが可能である長さ寸法を有する。図示の例にあっては、円弧状の板部16aは、筒状容器12の上端22aから各列における最下方の円孔(26)の直下までの距離に相当する長さ寸法を有する。図示の例に代えて、筒状容器12の上端22aから下端24aまでの距離に相当する長さ寸法を有するものとすることができる。各閉鎖部材16は、その円弧状の板部16aを、筒状容器12の上端22aから、仕切り部材14によって仕切られた筒状容器12の各空間32に差し込むことができ、また、その鍔部16bにおいて筒状容器12の上端22aに掛け、各空間32内に保持することができる。
【0023】
閉鎖部材16の円弧状の板部16aは、筒状容器12の上部22内において、筒状容器12の内壁12aと、仕切り部材14の互いに隣接する2つの板部14aとに接する。より詳細には、円弧状の板部16aはその内外両周面33a、33b(
図3参照)のうちの外周面33bにおいて筒状容器12の上部22の内壁12aに接し、また、その周方向における両側面33c、33dにおいて互いに隣接する仕切り部材14の2つの板部14aにそれぞれ接する。これにより、各列の複数の円孔(26)が閉鎖部材16の円弧状の板部16aに覆われ又は閉鎖され、円孔(26)を通しての前記モルタル成分の移動が阻止される。
【0024】
閉鎖部材16は、その鍔部16bを指でつまんでその板部16aを筒状容器12の各空間32から引き出すことができ、これにより、各列の円孔(26)の閉鎖を解除することができる。
【0025】
この測定装置10による前記コンクリートの流動性の測定に当たっては、全閉鎖部材16により筒状容器12の孔群(全円孔)26を閉鎖した状態で、筒状容器12を鍔30が前記コンクリートの表面に接することとなるまで前記コンクリート中に挿し込む。
【0026】
次に、筒状容器12内から4つの閉鎖部材16を所定の時間的間隔をおいて順次に引き上げ、4列の円孔(26)についての閉鎖状態を順次に解除する。これにより、筒状容器12の上部22の4列の円孔(26)を通して、前記コンクリート中のモルタル成分が4つの空間32内に順次に流入し、筒状容器12の下部24内に貯まる。前記時間的間隔は例えば2.5秒間に設定することができる。最後の閉鎖部材16の引き上げから2.5秒間が経過した後、筒状容器12を前記コンクリート中から引き上げる。
【0027】
この測定装置10による前記コンクリートの流動性の測定は、また、次のようにして行うことが可能である。すなわち、全閉鎖部材16を引き上げて筒状容器12の全円孔(26)の閉鎖を解除し、全円孔(26)を開放した状態で筒状容器12を鍔30が前記コンクリートの表面に接することとなるまで前記コンクリート中に挿し込む。これにより、筒状容器12の上部22の4列の円孔(26)を通して、前記コンクリート中のモルタル成分が筒状容器12の4つの空間32内に同時に流入する。
【0028】
次に、4つの閉鎖部材16を所定の時間的間隔をおいて順次に押し下げ、4列の円孔(26)を順次に閉鎖し、筒状容器12の4つの空間32内への前記コンクリートのモルタル成分の流入を順次に停止する。前記時間的間隔は、同様に、例えば2.5秒間に設定することができる。最後の閉鎖部材16の押し下げ後、筒状容器12を前記コンクリート中から引き上げる。
【0029】
本発明の一の実施形態によれば、1つの測定装置10で、同一のコンクリート中から4つの異なる時間内に試料(モルタル成分)を4つの空間32に採取することができる。これにより、1つの試料を採取する場合と比べて、前記コンクリートの流動性についてのより正確な評価を行うことができる。また、前記4つの試料を得るために必要な一つの測定装置10の前記コンクリート中への投入及び引き揚げは、これを一回とすることができることから、これを複数回としあるいは複数の測定装置を使用する従来と比べて、コンクリートの流動性の測定をより容易にまた短時間のうちに行うことができる。
【0030】
測定装置10の筒状容器12における孔群26の列数、仕切り部材14が仕切る空間32の数、及び閉鎖部材16の数を、これらを4とする図示の例に代えて、2若しくは3あるいは5以上とすることができる。
【符号の説明】
【0031】
10 測定装置
12 筒状容器
14 仕切り部材
16 閉鎖部材
22、22a 上部及び上端
24、24a 下部及び下端
26 孔群
28 目盛
30 鍔