(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、被処理物は、昇降装置等により降下されることで冷却槽内に浸漬される。したがって、冷却開始直後において、被処理物は、上部よりも下部の温度が低い傾向が見られる。さらに、冷却槽内には、被処理物の下部に向けて流れる冷却油の循環流が形成される。このため、被処理物は、下部が優先的に冷却され、下部と上部との温度差が大きくなる。すなわち、上述の構成の冷却装置においては、被処理物の上部と下部とで温度履歴が異なると考えられる。
【0005】
本開示は、上述する事情に鑑みてなされたもので、被処理物を均一に冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の、第1の態様に係る冷却装置は、被処理物を下部から冷却液に浸漬させて冷却する冷却装置であって、少なくとも前記被処理物の冷却開始時に、前記被処理物の上部に前記冷却液を供給する液供給部を備える。
【0007】
第2の態様に係る冷却装置は、上記第1の態様において、前記液供給部は、前記被処理物の下側の前記冷却液を上側へ送る液送装置と、前記冷却液内において前記被処理物の上方に設けられ、前記液送装置から流入する前記冷却液を前記被処理物の上部に向けて案内するダクトとを備える。
【0008】
第3の態様に係る冷却装置は、上記第1の態様において、前記液送装置は、前記被処理物の冷却開始から一定時間後に、前記被処理物の上側の前記冷却液を下側へ送るように構成されている。
【0009】
第4の態様に係る冷却装置は、上記第1の態様において、前記ダクトを前記冷却液外から前記冷却液内において前記被処理物の上方に移動させる移動機構を備える。
【0010】
第5の態様に係る冷却装置は、上記第1の態様において、前記ダクトに接続されると共に、前記冷却液内において鉛直方向に延在し、前記液送装置が内部に設けられる液送装置ダクトを備える。
【0011】
第6の態様に係る冷却装置は、上記第1の態様において、前記液送装置ダクトに設けられると共に、前記冷却液を整流する整流板を備える。
【0012】
第7の態様に係る冷却装置は、上記第1の態様において、前記被処理物の側方に設けられ、前記被処理物に沿うように前記冷却液を案内する案内板を備える。
【0013】
第8の態様に係る冷却装置は、上記第1の態様において、前記案内板の姿勢を変更する姿勢変更部を備える。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、被処理物を均一に冷却することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る冷却装置Rの概略構成を模式的に示す縦断面図である。また、
図2は、
図1のA−A断面図である。本実施形態の冷却装置Rは、例えば二室式の真空浸炭炉に設置され、加熱された被処理物Wの冷却を行う。この冷却装置Rは、
図1及び
図2に示すように、油槽1(冷却槽)と、搬送室2と、被処理物昇降装置3と、4個の油送装置4(液送装置)と、4個の上部ダクト5(ダクト)と、ダクト昇降装置6(移動機構)と、4個のプロペラダクト7(液送装置ダクト)と、4個の下部ダクト8と、案内板部9と、グレーチング10とを備えている。また、上部ダクト5、油送装置4、プロペラダクト7及び下部ダクト8は、2個一対とされ、
図1における奥行き方向において、2列設置されている。また、上部ダクト5、油送装置4、プロペラダクト7及び下部ダクト8は、本願開示における液供給部(20)を構成している。
【0017】
油槽1は、冷却油Yを貯留しており、冷却対象である被処理物Wを収容可能な容量とされた槽である。被処理物Wは、この油槽1において冷却油Yに浸漬されることによって冷却される。以下、油槽1において、冷却時に被処理物Wが配置可能な領域を載置領域Aと称する。なお、被処理物Wの形状は様々であることから、実際の被処理物Wの形状と、載置領域Aとは必ずしも一致しない。
【0018】
搬送室2は、油槽1の上方に設けられている。この搬送室2は、油槽1に対して出し入れされる被処理物Wが一時的に留置き等される部屋である。この搬送室2は、例えば不図示の加熱室と接続されており、加熱室への被処理物Wの受渡しを行うための部屋として機能する。つまり、搬送室2においては、油槽1や不図示の加熱室に対して出し入れされる被処理物Wの搬送が行われる。
【0019】
被処理物昇降装置3は、被処理物Wが載置されるフォーク3aを備えており、不図示の駆動機構によりフォーク3aを昇降させることで、油槽1と搬送室2との間において被処理物Wの搬送を行う。なお、被処理物Wは、フォーク3aに載置された状態のまま油槽1に貯留される冷却油に浸漬され、フォーク3aに載置された状態のまま油槽1において冷却される。なお、
図1においては、被処理物昇降装置3のうち、フォーク3aのみを図示し、他の構成部材については省略している。
【0020】
油送装置4は、
図2に示すように、載置領域Aの一方側と他方側とに各々2つずつ設けられ、本実施形態においては4つ設けられている。
図1に示すように、各油送装置4は、モータ4aと、シャフト4bと、プロペラ4cとを備えている。
【0021】
モータ4aは、油槽1の底部に固定されている。モータ4aは、プロペラ4cを回転させるための動力を生成する。シャフト4bは、上端がモータ4aと接続されて鉛直配置されている。このシャフト4bの下端側は、油槽1に貯留された冷却油Yの液面下に配置されており、プロペラ4cが設けられる。
【0022】
プロペラ4cは、シャフト4bに設けられるプロペラである。プロペラ4cは、油槽1に貯留される冷却油Yの液面下であって載置領域Aの側方に配置されており、シャフト4bと共に回転されることで冷却油Yを上方または下方へと送る。なお、プロペラ4cは、回転方向が変更されることにより、冷却油Yの流動方向を変更させることが可能である。また、
図2に示すように、本実施形態においては、4つ全ての油送装置4において、プロペラ4cが同一方向に回転されている。なお、
図2中の矢印は、プロペラの回転方向を示す。
図2では、一例としてプロペラの回転方向は、時計回りとしたが、反時計回りであってもよい。
【0023】
上部ダクト5は、被処理物Wの被処理物昇降装置3が配置されている側、すなわち上方に設けられたダクトである。上部ダクト5は、被処理物Wが油槽1に浸漬された状態において、入口5aがプロペラダクト7の出口と接続されると共に、出口5bが被処理物Wの上方であって、冷却油Yの油面近傍に配置されている。また、上部ダクト5は、プロペラダクト7と独立しており、ダクト昇降装置6により上下方向に移動可能である。
【0024】
ダクト昇降装置6は、シャフト6aと、モータ6bと、ダクト吊下部6cとを備えている。シャフト6aは、搬送室2内の側壁に沿って上下方向に設けられている。また、シャフト6aは、上端が搬送室2の外部へと露出しており、下端が油槽1の液面よりも上に配置されている。
【0025】
モータ6bは、シャフト6aの上端に取り付けられたサーボモータである。すなわち、モータ6bは、搬送室2の外部に露出した状態である。このようなモータ6bは、不図示の制御装置により制御されることにより、ダクト吊下部6cを昇降させる動力を生成する。
【0026】
ダクト吊下部6cは、4個の上部ダクト5を上部から吊り下げた状態で支持する部材である。また、ダクト吊下部6cは、シャフト6aに上下方向に移動可能に取り付けられている。これにより、ダクト吊下部6cは、4個の上部ダクト5を吊下げ支持した状態で、モータ6bにより上下方向に移動される。
【0027】
プロペラダクト7は、油送装置4のプロペラ4cを囲う円筒形状のダクトであり、上端の出口が上部ダクト5の入口5aと接続され、下端の入口が下部ダクト8と接続されている。このプロペラダクト7は、油送装置4ごとに設けられており、
図2に示すように、本実施形態においては合計4か所に設けられている。これらのプロペラダクト7は、プロペラ4cの回転によって生成された流れが周囲に拡散することを防止し、当該流れを上方の上部ダクト5へと案内する。
【0028】
下部ダクト8は、入口8aが載置領域Aの底部と接続され、出口8bがプロペラダクト7の下端と接続されるダクトである。この下部ダクト8は、被処理物Wに沿って流れた冷却油Yをプロペラ4cまで案内する。このような下部ダクト8の出口8bは、プロペラ4cの鉛直方向の下方に配置されており、上方に向けて開口されている。また、下部ダクト8の出口8bは、載置領域Aの底部に対して下方から接続されている。
【0029】
この下部ダクト8は、油送装置4ごとに設けられており、
図2に示すように、本実施形態においては合計4個設けられている。各下部ダクト8の出口8bは、4個で載置領域Aの全域を覆うように配置されている。
【0030】
案内板部9は、フォーク3aの淵部に設けられており、案内板9aと、姿勢変更部9bとを備えている。案内板9aは、姿勢変更部9bによりフォーク3aの端部に固定された平板状の部材である。案内板9aは、被処理物Wの上方から下方へと向かう冷却油Yの流れを、被処理物Wに沿うように下部ダクト8の入口8aへと案内する。
【0031】
姿勢変更部9bは、案内板9aとフォーク3aとの間に設けられ、フォーク3aに対する案内板9aの角度を変更可能とすると共に固定する部材である。姿勢変更部9bは、不図示の制御装置からの指示に基づいて駆動し、該姿勢変更部9bを中心として案内板9aの姿勢を変更する。この姿勢変更部9bにより、案内板9aは、フォーク3aに対して垂直の状態から10°程度まで外側へと開いた状態まで姿勢を変更することが可能である。
【0032】
グレーチング10は、
図2に示すように、下部ダクト8の入口8aに対して取り付けられた柵状の部材である。グレーチング10は、被処理物Wの上部から下部に向けて冷却油Yが流れる際に、下部ダクト8内に異物が侵入することを防止する。
【0033】
このような本実施形態の冷却装置Rにおいては、まず、加熱された被処理物Wが、フォーク3aに載置された状態で、被処理物昇降装置3により油槽1へと搬送される。そして、被処理物Wが油槽1の冷却油Yへと浸漬されると、搬送室2側に移動されていた上部ダクト5がダクト昇降装置6により下降され、プロペラダクト7と接続される。また、このとき、案内板9aは、フォーク3aに対して垂直状態から10°程度外側に開いた状態である。
【0034】
冷却開始時においては、モータ4aが駆動され、プロペラ4cが回転駆動されると、油槽1内に冷却油Yの循環流Xが形成される。循環流Xは、下部ダクト8の入口8aから流入した冷却油Yが、油送装置4により、プロペラダクト7を介して上部ダクト5の出口5bより流出することで形成されている。このとき、冷却油Yは、案内板9aに案内されることにより、被処理物Wの上部から下部に向かって、被処理物Wの表面に沿って流れる。
【0035】
そして、冷却開始から一定時間(例えば、5分)経過後に、不図示の制御装置の指示によりモータ4aの回転方向が変更されることで、プロペラ4cの回転方向が逆回転へと変更される。また、姿勢変更部9bにより、案内板9aの姿勢がフォーク3aに対して略垂直となるように変更される。これにより、油槽1内には、循環流Xと逆の流動が生じる。すなわち、冷却油Yは、上部ダクト5の出口5bから流入し、プロペラダクト7を介して下部ダクト8へと流れ、下部ダクト8の入口8aより流出する。すなわち、油送装置4は、被処理物Wの下側の冷却油Yを上側へと送る。これにより、冷却油Yは、案内板9aに案内されることにより、被処理物Wの下部から上部に向かって、被処理物Wの表面に沿って流れる。
【0036】
そして、冷却油Yの流動方向を変更してから一定時間(例えば、5分)が経過した際には、再度、不図示の制御装置の指示によりモータ4aの回転方向が変更されることで、プロペラ4cの回転方向が逆回転へと変更される。また、姿勢変更部9bにより、案内板9aの姿勢がフォーク3aに対して垂直状態から10°程度外側に開いた状態となるように変更される。これにより、油槽1内に冷却油Yの循環流Xが形成される。
このように、被処理物Wの冷却開始から、冷却完了までの所定時間において、複数回流動方向が変更される。
【0037】
被処理物Wは、冷却油Yに浸漬された時点で、先に浸漬される下部よりも上部の温度が高い傾向がある。これに対して、本実施形態によれば、油送装置4と上部ダクト5とにより、冷却開始時に被処理物Wの上部から下部に向けた流れを形成できる。これにより、被処理物Wの上部に積極的に冷却油Yを接触させることができ、冷却開始時における被処理物Wの温度分布を解消することが可能である。すなわち、本実施形態に係る冷却装置Rは、被処理物Wを均一に冷却することが可能である。
【0038】
また、被処理物Wに沿うように冷却油Yを案内する案内板9aにより、循環流Xが被処理物Wの表面に沿って流れる。したがって、被処理物Wが常に循環流Xと接触した状態となり、被処理物Wを効率よく冷却することが可能である。
【0039】
また、本実施形態においては、各ダクトに対して冷却油Yを案内しやすいように案内板9aの姿勢を変更している。すなわち、姿勢変更部9bにより、冷却油Yの流れの状態や、被処理物Wの形状に応じて、被処理物Wに対して好適な案内板9aの姿勢に変更することが可能である。
【0040】
また、油送装置4は、被処理物Wの冷却開始から一定時間後に、冷却油Yの流動方向を変更し、循環流Xと逆方向へと冷却油Yが流れるようにする。これにより、被処理物Wの下部から上部に向けて冷却油Yが流れるようになり、被処理物Wに対して上方と下方との双方向より冷却油Yを接触させることが可能である。したがって、冷却装置Rは、被処理物Wにおいて温度の偏りが生じることを防止でき、被処理物Wを均一に冷却することが可能である。
【0041】
また、上部ダクト5をダクト昇降装置6により上下方向に移動可能としたことにより、被処理物Wの搬送を上部ダクト5が阻害することがない。
【0042】
また、プロペラダクト7を設けることにより、油送装置4により送られる冷却油を、油槽1の上方へと案内している。したがって、油槽1内に循環流Xを形成することが可能であり、油槽1内の冷却油Yの流れの制御を容易としている。
【0043】
[第2実施形態]
続いて、上記第1実施形態の変形例を第2実施形態として、
図3を参照して説明する。なお、上記第1実施形態と同一の構成については、符号を同一とし、説明を省略する。
図3は、本実施形態に係る冷却装置R1を示す縦断面図である。
【0044】
本実施形態に係る冷却装置R1は、整流板部11をさらに備え、油送装置4が整流板4dを備えている。
整流板4dは、モータ4aの外周から立設された板部材である。この整流板4dは、プロペラダクト7における冷却油Yの流れ方向に沿って設置されることにより、プロペラダクト7内を流れる冷却油Yの滞留を防止し、冷却油Yを整流する。
【0045】
整流板部11は、プロペラダクト7内に設けられ、軸部11aと、整流板11bとを備えている。軸部11aは、プロペラダクト7内において、冷却油Yの流れ方向に沿って設けられている。整流板11bは、軸部11aから径方向に向けて立設された板部材である。整流板11bは、冷却油Yの流れ方向に沿って設置されることにより、プロペラダクト7内を流れる冷却油Yの滞留を防止し、冷却油Yを整流する。
【0046】
このような本実施形態に係る冷却装置R1は、プロペラダクト7に対して整流板4d及び整流板11bを設けることにより、プロペラダクト7内の冷却油Yの流速を均一化し、冷却油Yの滞留を防止することができる。したがって、循環流X及び循環流Xの逆方向の流れをスムーズに形成することが可能である。
【0047】
また、プロペラ4cを挟んで整流板4dと整流板11bとが設けられていることにより、冷却油Yがいずれの方向に流れる場合においても、プロペラ4cの下流側に整流板が配置された状態となる。したがって、いずれの流動方向であっても、プロペラ4cにより送り出された冷却油Yを、整流板4d、11bにより整流することが可能である。
【0048】
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態においては、上部ダクト5、油送装置4、プロペラダクト7及び下部ダクト8は、奥行き方向において2列設置されるものとしたが、本開示はこれに限定されず、3列設けるものとしてもよい。また、この場合、各プロペラ4cの回転速度を変えることにより、3列の上部ダクト5、プロペラダクト7及び下部ダクト8内を流れる冷却油Yの流速を変更することも可能である。
【0049】
(2)上記実施形態においては、上部ダクト5をダクト昇降装置6により上下方向において移動可能としたが、本開示はこれに限定されない。上部ダクト5は、それぞれ側方(
図1の左右方向)へと移動するものとしてもよい。また、プロペラダクト7よりも上部ダクト5の径が小さい場合には、プロペラダクト7内に上部ダクト5を収容することも可能である。
【0050】
(3)上記実施形態においては、冷却装置Rは、油槽1内における冷却油Yの流動方向を適宜変更するものとしたが、本開示はこれに限定されない。冷却装置Rは、被処理物Wの上部から下部に向かう流れのみを形成するものとしてもよい。
【0051】
(4)また、冷却液は、冷却油Y(油)に限定されるものではなく、冷却液として他の液体(例えば水)を用いる構成を採用することも可能である。
【0052】
(5)また、上記実施形態においては、冷却油Yにより循環流Xを形成することで、被処理物Wの上部に対して冷却油Yを供給するものとしたが、本開示はこれに限定されない。
例えば、冷却装置Rは、冷却油Yが貯留されたタンクと、上部ダクト5とを備え、油槽1内の冷却油Yに浸漬された被処理物Wに対して、タンクに貯留された冷却油Yを上部ダクト5から供給するものとしてもよい。この場合についても同様に、被処理物Wの上部に冷却油Yを供給でき、被処理物Wを均一に冷却することが可能である。