【文献】
Database DDBJ/EMBL/GenBank [online], Accessin No. NP_015452,<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/6325384?sat=46&satkey=134488301>15-MAR-2017 uploaded, [retrieved on 2018-07-23] Definition: pyridoxine4-dehydrogenase [Saccharomyces cerevisiae S288C], DEFINITION、ORIGIN
【文献】
BRAVO, A. et al.,Introduction of the Escherichia coli gdhA gene into Rhizobium phaseoli: effect on nitrogen fixation,J. Bacteriol.,1988年,170 (2),985-988,要旨
【文献】
YOSHIKANE, Y. et al.,Molecular cloning, expression and characterization of pyridoxamine-pyruvate aminotransferase,Biochem. J.,2006年,396,499-507,506頁右欄第3項の7-10行
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ピリドキサールからピリドキサミンを合成する酵素活性を有するピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子、及び前記ピリドキサミン合成酵素が消費するアミノ酸を再生する酵素活性を有するアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子を有し、
前記ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、前記ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子及び前記アミノ酸再生酵素をコードする遺伝子のうち少なくとも2つは菌体外から導入された遺伝子であるか又は菌体に内在するがその発現が強化された遺伝
子である、組換え微生物。
前記ピリドキサミン合成酵素が、ピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼ、ピリドキサミン−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、又はピリドキサミンリン酸トランスアミナーゼである、請求項1に記載の組換え微生物。
前記ピリドキシンデヒドロゲナーゼが下記の部分アミノ酸配列(a)及び部分アミノ酸配列(b)のうち少なくとも1つを含み、且つピリドキシンデヒドロゲナーゼ活性を有する、請求項1又は請求項2に記載の組換え微生物。
(a)NX1X2EX3YG(配列番号97)
(ここで、X1は、V、C、I、A、M、S、G又はLを表し、
X2は、G又はAを表し、
X3は、F又はLを表す)
(b)X4X5X6KGX7(配列番号98)
(X4は、I、V、F又はLを表し、
X5は、S、T、N、C又はMを表し、
X6は、C、V、A、I、W又はFを表し、
X7は、G、A、S又はCを表す)
前記ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子がSaccharomycescerevisiaeに由来する、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の組換え微生物。
前記ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子がSchizosaccharomycespombeに由来する、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の組換え微生物。
前記ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、配列番号8のヌクレオチド配列を有するか、配列番号8のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つピリドキシンデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する、請求項1〜請求項4及び請求項7のうちいずれか一項に記載の組換え微生物。
前記ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、配列番号1、配列番号2及び配列番号22〜配列番号28のうちいずれかのアミノ酸配列、又は配列番号1、配列番号2及び配列番号22〜28のアミノ酸配列のうち少なくとも1つと80%以上の配列同一性を有し且つピリドキシンデヒドロゲナーゼ活性を有するアミノ酸配列、をコードするヌクレオチド配列を有する、請求項1〜請求項8のうちいずれか一項に記載の組換え微生物。
前記ピリドキサミン合成酵素が、下記の部分アミノ酸配列(c)、部分アミノ酸配列(d)、部分アミノ酸配列(e)、部分アミノ酸配列(f)、部分アミノ酸配列(g)及び部分アミノ酸配列(h)のうち少なくとも1つを含み、且つピリドキサールからピリドキサミンを合成する酵素活性を有する、請求項1〜請求項9のうちいずれか一項に記載の組換え微生物。
(c)X8X9X10X11X12X13(配列番号99)
(X8は、L、M、I又はVを表し、
X9は、H又はQを表し、
X10は、G、C又はAを表し、
X11は、E又はDを表し、
X12は、P又はAを表し、
X13は、V、I、L又はAを表す)
(d)X14X15TPSGTX16X17(配列番号100)
(X14は、H又はSを表し、
X15は、D又はEを表し、
X16は、I、V又はLを表し、
X17は、N又はTを表す)
(e)X18DX19VSX20X21(配列番号101)
(X18は、V、I又はAを表し、
X19は、A、T又はSを表し、
X20は、S、A又はGを表し、
X21は、F、W、又はVを表す)
(f)X22X23X24KCX25GX26X27P(配列番号102)
(X22は、G又はSを表し、
X23は、P、S又はAを表し、
X24は、N、G、S、A又はQを表し、
X25は、L又はMを表し、
X26は、A、S、C又はGを表し、
X27は、P、T、S又はAを表す)
(g)X28X29X30X31SX32GX33X34(配列番号103)
(X28は、G又はDを表し、
X29は、V又はIを表し、
X30は、V、T、A、S、M、I又はLを表し、
X31は、F、M、L、I又はVを表し、
X32は、S、G、A、T、I、L又はHを表し、
X33は、R、M又はQを表し、
X34は、G、R、A、D、H又はKを表す)
(h)X35X36RX37X38HMGX39X40A(配列番号104)
(X35は、L又はVを表し、
X36は、T、I、V又はLを表し、
X37は、I、V又はLを表し、
X38は、G又はSを表し、
X39は、P、A又はRを表し、
X40は、T、V又はSを表す)
前記ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子がMesorhizobiumlotiに由来する、請求項1〜請求項11のうちのいずれか一項に記載の組換え微生物。
前記ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子が、配列番号3及び配列番号29〜配列番号35のうちいずれかのアミノ酸配列、又は配列番号3及び配列番号29〜配列番号35のアミノ酸配列のうち少なくとも1つと80%以上の配列同一性を有し且つピリドキサールからピリドキサミンを合成する酵素活性を有するアミノ酸配列、をコードするヌクレオチド配列を有する、請求項1〜請求項13のうちいずれか一項に記載の組換え微生物。
前記アラニンデヒドロゲナーゼが、ピルビン酸及びNH3からL−アラニンを生成する反応の際にNADPHを補酵素として利用可能である、請求項15に記載の組換え微生物。
前記アラニンデヒドロゲナーゼが下記の部分アミノ酸配列(i)、部分アミノ酸配列(j)、部分アミノ酸配列(k)及び部分アミノ酸配列(l)のうち少なくとも1つを含み、且つピルビン酸及びNH3からL−アラニンを生成する活性を有する請求項15又は請求項16に記載の組換え微生物。
(i)EX41KX42X43EX44RX45X46(配列番号105)
(X41は、I、T、S、F、N又はVを表し、
X42は、N、M、A、V、L、T又はDを表し、
X43は、H、N、L又はQを表し、
X44は、Y、N又はFを表し、
X45は、V、又はIを表し、
X46は、G又はAを表す)
(j)X47X48X49KVKEPX50(配列番号106)
(X47は、M又はLを表し、
X48は、I、L又はVを表し、
X49は、V、L、I又はMを表し、
X50は、Q、L、V、N又はIを表す)
(k)LX51TYLHLA(配列番号107)
(X51は、F又はYを表す)
(l)X52DX53AX54DQGG(配列番号108)
(X52は、V又はAを表し、
X53は、V又はIを表し、
X54は、I又はVを表す)
前記アミノ酸再生酵素をコードする遺伝子が、配列番号5及び配列番号45〜配列番号52のうちいずれかのアミノ酸配列、又は配列番号5及び配列番号45〜配列番号52のアミノ酸配列のうち少なくとも1つと80%以上の配列同一性を有し且つアラニン再生酵素活性を有するアミノ酸配列、をコードするヌクレオチド配列を有する、請求項15〜請求項19のうちいずれか一項に記載の組換え微生物。
前記ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子がEscherichiacoliに由来する、請求項1〜請求項9及び請求項21のうちいずれか一項に記載の組換え微生物。
前記ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子が、配列番号10のヌクレオチド配列を有するか、配列番号10のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つピリドキサールからピリドキサミンを合成する酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する、請求項1〜請求項9、請求項21及び請求項22のうちいずれか一項に記載の組換え微生物。
前記ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子が、配列番号4のアミノ酸配列、又は配列番号4のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有し且つピリドキサールからピリドキサミンを合成する酵素活性を有するアミノ酸配列、をコードするヌクレオチド配列を有する、請求項1〜請求項9及び請求項21〜請求項23のうちいずれか一項に記載の組換え微生物。
前記アミノ酸再生酵素をコードする遺伝子が、配列番号12のヌクレオチド配列を有するか、配列番号12のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つグルタミン酸再生酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する、請求項25又は請求項26に記載の組換え微生物。
前記アミノ酸再生酵素をコードする遺伝子が、配列番号6のアミノ酸配列、又は配列番号6のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有し且つグルタミン酸再生酵素活性を有するアミノ酸配列、をコードするヌクレオチド配列を有する、請求項25〜請求項27のうちいずれか一項に記載の組換え微生物。
請求項1〜請求項29のうちいずれか一項に記載の組換え微生物若しくは前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物と、ピリドキシン又はその塩とを接触させ、ピリドキサミン又はその塩を生産させる、ピリドキサミン又はその塩の製造方法。
前記組換え微生物若しくは前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物が、前記ピリドキシンデヒドロゲナーゼ、前記ピリドキサミン合成酵素、及び前記アミノ酸再生酵素を含む、請求項30に記載の製造方法。
前記組換え微生物の処理物又は前記組換え微生物の培養物の処理物が、加熱処理、冷却処理、細胞の機械的破壊、超音波処理、凍結融解処理、乾燥処理、加圧又は減圧処理、浸透圧処理、細胞の自己消化、界面活性剤処理、酵素処理、細胞分離処理、精製処理及び抽出処理からなる群から選択される1つ以上を含む処理による処理物である、請求項30又は請求項31に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の第1の態様(以下、単に第1の態様と称する)は、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ピリドキサールからピリドキサミンを合成する酵素活性を有するピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子、及び前記ピリドキサミン合成酵素が消費するアミノ酸を再生する酵素活性を有するアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子を有し、
前記ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、前記ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子及び前記アミノ酸再生酵素をコードする遺伝子のうち少なくとも2つは菌体外から導入された遺伝子であるか又は元々菌体に内在するがその発現が強化された遺伝子である、組換え微生物(以下、第1の態様に係る組換え微生物という)を提供する。本開示の第2の態様(以下、単に第2の態様と称する)は、(1)配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、(2)配列番号1のアミノ酸配列において、1個〜50個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、(3)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、(4)配列番号13のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、(5)配列番号13のヌクレオチド配列において、1個〜150個のヌクレオチドが欠失、付加又は置換されているヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、(6)配列番号13のヌクレオチド配列と少なくとも60%の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、又は、(7)配列番号13のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドを導入された組換え微生物を提供する。「本開示」の記載は、第1の態様と第2の態様を包含する意味で用いられる。なお、本開示において導入とは、菌体内で発現可能となるように導入することをいう。また、「組換え」の語は「遺伝子組換え」と同義で用いられる。
【0017】
<第1の態様>
これまで、化学的方法によっても生物学的方法によっても、ピリドキシン又はその塩からピリドキサミン又はその塩を高い生産効率で且つ安価に生産する方法は知られていなかった。ピリドキサミンの構造を以下に示す。
【0019】
しかし、驚くべきことに、上記のような構成を有する組換え微生物若しくは前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物を用いることにより、ピリドキシン又はその塩からピリドキサミン又はその塩を高い生産効率で且つ安価に生産できることを本発明者は見いだした。その理由は必ずしも明らかではないが、上記3種類の酵素が共に存在することによって、ピリドキシン又はその塩からピリドキサミン又はその塩を生成する過程における各反応の平衡及びこの過程で生み出される副産物等や消費される原料等の量が、上記3種類の酵素の協働的な働きによって、ピリドキシン又はその塩からピリドキサミン又はその塩の生成に有利となるためではないかと推測される。また、上記3種類の酵素をコードする遺伝子のうち少なくとも2つが、それぞれ、菌体外から導入されているか又は菌体に内在するがその発現が強化されていることによって、導入又は強化された遺伝子から酵素を高い発現量で発現することが可能となり、ピリドキサミン又はその塩の生産効率をさらに向上させていると推測される。
【0020】
このような上記3種類の酵素の協働作用は、これまで見いだされていなかったものであり、これによってピリドキシン又はその塩を用いることにより、化学的合成方法のように多ステップの反応をいちいち行う必要なく、高効率でピリドキサミン又はその塩を製造することが可能となった。しかも、第1の態様に係る組換え微生物を用いることで、ビタミンB
6群に含まれる他の物質を大量に副生することを避けることができる。また、ピリドキシンはピリドキサールと比較して工業的に安価に入手可能な原料であり、ピリドキシンを出発物質にできることで、ピリドキサミン又はその塩を安価に製造することが可能となった。
【0021】
<ピリドキシンデヒドロゲナーゼ>
ピリドキシンデヒドロゲナーゼはピリドキサールレダクターゼあるいはピリドキシン−4−デヒドロゲナーゼとも呼ばれる酵素である。ピリドキシンデヒドロゲナーゼは酵素番号EC1.1.1.65で表される酵素であってもよく、他の酵素番号で表される酵素であってもよい。ピリドキシンデヒドロゲナーゼは、ピリドキサールに水素を加えてピリドキシンに変換する反応あるいはこれの逆反応を触媒する酵素活性を有する酵素である。なお、ピリドキサールやピリドキシンは周囲の環境により塩としても存在しうるが、表記の簡略化のため、本開示においては酵素の活性の記載については塩への言及は省略して表記する。ピリドキシンデヒドロゲナーゼは、ピリドキサールに水素を付加する際には、補酵素としてNADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)又はNADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)を消費し、ピリドキシンから水素を引き抜く際には補酵素としてNAD+(酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)又はNADP+(酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)を消費する。一般的な条件下では、この酵素が触媒する反応の平衡はピリドキシン生成側に大きく偏っているため、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをピリドキシンを消費する反応のために用いても高い収率は達成できないと考えられてきた。しかし、第1の態様においては、上記のように特定の他の酵素と組み合わせることにより、ピリドキシン又はその塩を原料としたピリドキサミン又はその塩の生産が高い生産効率で達成できるという予想外の効果が得られた。
【0022】
ピリドキシンデヒドロゲナーゼは、例えば、子嚢菌(Ascomycota)門に属する微生物に由来することが好ましく、サッカロミセス(Saccharomycotina)亜門又はチャワンタケ(Pezizomycotina)亜門に属する微生物に由来するものであってもよい。より具体的には、ピリドキシンデヒドロゲナーゼは、例えば、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に由来するピリドキシンデヒドロゲナーゼ(配列番号1のアミノ酸配列を有する)、サッカロミセス ユーバヤヌス(Saccharomyces eubayanus)に由来するピリドキシンデヒドロゲナーゼ(配列番号22のアミノ酸配列を有する)、トルラスポラ デルブルツキ(Torulaspora delbrueckii)に由来するピリドキシンデヒドロゲナーゼ(配列番号23のアミノ酸配列を有する)、チゴサッカロミセス バイリイ(Zygosaccharomyces bailii)に由来するピリドキシンデヒドロゲナーゼ(配列番号24のアミノ酸配列を有する)、クリベロマイセス マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)に由来するピリドキシンデヒドロゲナーゼ(配列番号26のアミノ酸配列を有する)、アスペルギルス オリゼ(Aspergillus oryzae)に由来するピリドキシンデヒドロゲナーゼ(配列番号25のアミノ酸配列を有する)、カンジダ アルビカンス(Candida albicans)に由来するピリドキシンデヒドロゲナーゼ(配列番号27のアミノ酸配列を有する)、ヤロウイア リポリテイカ(Yarrowia lipolytica)に由来するピリドキシンデヒドロゲナーゼ(配列番号28のアミノ酸配列を有する)などであってもよい。これらの微生物のうち、Aspergillus oryzaeはチャワンタケ亜門に属し、それ以外はサッカロミセス亜門に属している。
【0023】
前記EC1.1.1.65のピリドキシンデヒドロゲナーゼは、例えばサッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)やシゾサッカロミセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などに由来するピリドキシンデヒドロゲナーゼであってもよい。なお、サッカロミセス セレビシエのピリドキシンデヒドロゲナーゼは配列番号1のアミノ酸配列を有し、シゾサッカロミセス ポンベのピリドキシンデヒドロゲナーゼは配列番号2のアミノ酸配列を有する。
【0024】
<ピリドキサミン合成酵素>
第1の態様で用いられるピリドキサミン合成酵素とは、ピリドキサールからピリドキサミンを合成する酵素活性を有する任意の酵素を指す。なお、ピリドキサールやピリドキサミンは周囲の環境により塩としても存在しうるが、表記の簡略化のため、本開示においては酵素の活性の記載については塩への言及は省略して表記する。ピリドキサミン合成酵素の例としては、例えば、ピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼ(例えば酵素番号EC2.6.1.30で表される酵素)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(例えばEC2.6.1.1で表される酵素)、ピリドキサミン−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(例えばEC2.6.1.31で表される酵素)及びピリドキサミンリン酸トランスアミナーゼ(例えばEC2.6.1.54で表される酵素)が挙げられる。
なおEC2.6.1.1で表されるアスパラギン酸トランスアミナーゼは、ピリドキサールリン酸を補酵素とするホロ酵素であり、アスパラギン酸のアミノ基を2−オキソグルタル酸に転移し、グルタミン酸とオキサロ酢酸を生成する酵素活性を有する。当該アスパラギン酸トランスアミナーゼはピリドキサールリン酸と結合していないアポ酵素の状態では、グルタミン酸又はアスパラギン酸のアミノ基をピリドキサールに転移しピリドキサミンを合成することが知られている(JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY, 1962年1月, Vol.237, No.1, p.127-132)。つまりEC2.6.1.1で表されるアスパラギン酸トランスアミナーゼのアポ酵素の形態がEC2.6.1.31のピリドキサミン−オキサロ酢酸トランスアミナーゼである。このため、アスパラギン酸トランスアミナーゼは、補酵素であるピリドキサールリン酸が存在しない又は量が少ない場合にはアポ酵素として存在し、ピリドキサミンを合成する。
ピリドキサミン合成酵素は、ピリドキサール又はその塩からピリドキサミン又はその塩を合成する際に、特定のアミノ酸のアミノ基部分を(=O)に酸化し、当該アミノ基を転移させてピリドキサミン又はその塩を生成する。例えば、ピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼはL−アラニン及びD−アラニンのいずれも利用可能であり、ピリドキサミン−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ及びアポ酵素の状態のアスパラギン酸トランスアミナーゼはD−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、及びL−グルタミン酸のいずれも利用可能であり、ピリドキサミンリン酸トランスアミナーゼはD−グルタミン酸を利用可能である。
【0025】
前記ピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼは、例えば、プロテオバクテリア門、アクチノバクテリア門、スピロヘータ門又はフィルミクテス門に属する微生物に由来するものであってもよい。ピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼは、例えば、メゾリゾビウム ロティ(Mesorhizobium loti)、オクロバクテリウム アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)やシュードモナス(Pseudomonas)属(例えば、Pseudomonas sp.MA−1)などに由来するピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼであってもよい。なお、例えば、Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼは配列番号3のアミノ酸配列を有する。
【0026】
ピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼは、その他、例えば、メソリゾビウム sp.YR577(Mesorhizobium sp. YR577)に由来するピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼ(配列番号29のアミノ酸配列を有する)、シュードアミノバクター サリシラトキシダンス(Pseudaminobacter salicylatoxidans)に由来するピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼ(配列番号30のアミノ酸配列を有する)、Bauldia litoralisに由来するピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼ(配列番号31のアミノ酸配列を有する)、Skermanella stibiiresistensに由来するピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼ(配列番号32のアミノ酸配列を有する)、リゾビウム sp.AC44/96(Rhizobium sp. AC44/96)に由来するピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼ(配列番号33のアミノ酸配列を有する)、エルウィニア トレタナ(Erwinia toletana)に由来するピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼ(配列番号34のアミノ酸配列を有する)、Herbiconiux ginsengiに由来するピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼ(配列番号35のアミノ酸配列を有する)であってもよい。
【0027】
前記ピリドキサミン−オキサロ酢酸トランスアミナーゼは、例えば大腸菌(Escherichia coli)、アナウサギ(Oryctolagus cuniculus)やドブネズミ(Rattus norvegicus)などに由来するピリドキサミン−オキサロ酢酸トランスアミナーゼであってもよい。なお、例えば、Escherichia coliのピリドキサミン−オキサロ酢酸トランスアミナーゼは配列番号4のアミノ酸配列を有する。前記アスパラギン酸トランスアミナーゼは、例えば大腸菌(Escherichia coli)、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)などに由来するアスパラギン酸トランスアミナーゼであってもよい。また、前記ピリドキサミンリン酸トランスアミナーゼは、例えばクロストリジウム ブチリカム(Clostridium butyricum)由来のピリドキサミンリン酸トランスアミナーゼであってもよい。
【0028】
<アミノ酸再生酵素>
第1の態様で用いられるアミノ酸再生酵素とは、前記ピリドキサミン合成酵素が消費するアミノ酸を再生する酵素活性を有する任意の酵素を指す。ピリドキサミンはアミノ基を有しており、ピリドキサミン合成の際にはアミノ基の提供源としてアミノ酸が消費されると考えられる。なお、アミノ酸は周囲の環境により塩としても存在しうるが、表記の簡略化のため、本開示においては酵素の活性の記載については塩への言及は省略して表記する。
例えば、前記ピリドキサミン合成酵素がL−アラニンを消費する場合には、L−アラニンを再生できる酵素がアミノ酸再生酵素として使用可能である。また、前記ピリドキサミン合成酵素がL−グルタミン酸又はL−アスパラギン酸を消費する場合には、L−グルタミン酸又はL−アスパラギン酸を再生できる酵素がアミノ酸再生酵素として使用可能である。
このようなアミノ酸再生酵素の例としては、アラニンデヒドロゲナーゼ(例えば酵素番号1.4.1.1で表される酵素)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(例えば、酵素番号1.4.1.2、又は1.4.1.3、又は1.4.1.4で表される酵素)、アミノ酸配列の改変によりNADP+/NADPHを補酵素として利用可能となった改変型アラニンデヒドロゲナーゼなどが挙げられる。なお、第1の態様においては、NADH又はNADPHを補酵素として用いてピルビン酸及びNH
3からL−アラニンを生成する酵素活性のことをアラニン再生酵素活性と呼び、NADH又はNADPHを補酵素として用いて2−オキソグルタル酸及びNH
3からL−グルタミン酸を生成する酵素活性のことをグルタミン酸再生酵素活性と呼ぶことがある。
ピリドキサミン合成酵素との好ましい組み合わせとしては、ピリドキサミン合成酵素としてのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼと、アミノ酸再生酵素としてのアラニンデヒドロゲナーゼとの組み合わせ、及びピリドキサミン合成酵素としてのピリドキサミン−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ又はアスパラギン酸トランスアミナーゼと、アミノ酸再生酵素としてのグルタミン酸デヒドロゲナーゼとの組み合わせ、が挙げられる。アミノ酸再生酵素は、菌体外から導入された遺伝子又は菌体に内在するがその発現が強化された遺伝子によってコードされるピリドキサミン合成酵素が消費するアミノ酸を再生する酵素活性を有することが好ましい。
【0029】
前記アミノ酸再生酵素は、例えばシェワネラ(Shewanella)sp. Ac10に由来するアラニンデヒドロゲナーゼ(配列番号36のアミノ酸配列を有する)であってもよいし、エロモナス ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)に由来するアラニンデヒドロゲナーゼ(配列番号37のアミノ酸配列を有する)、リゾビウムsp. LPU83に由来するアラニンデヒドロゲナーゼ(配列番号38のアミノ酸配列を有する)、シュードモナス メンドシナ(Pseudomonas mendocina)に由来するアラニンデヒドロゲナーゼ(配列番号39のアミノ酸配列を有する)、ブラディリゾビウム ジャポニカム(Bradyrhizobium japonicum)に由来するアラニンデヒドロゲナーゼ(配列番号40のアミノ酸配列又は配列番号41を有する)、ストレプトマイセス オーレオファシエンス(Streptomyces aureofaciens)に由来するアラニンデヒドロゲナーゼ(配列番号42のアミノ酸配列を有する)、アナベナ シリンドリカ(Anabaena cylindrica)に由来するアラニンデヒドロゲナーゼ(配列番号43のアミノ酸配列を有する)、バチルス サブティリス(Bacillus subtilis)に由来するアラニンデヒドロゲナーゼ(配列番号44のアミノ酸配列を有する)等であってもよい。あるいは、前記アミノ酸再生酵素は、例えば大腸菌(Escherichia coli)などに由来するグルタミン酸デヒドロゲナーゼであってもよい。前記アミノ酸再生酵素(例えばアラニンデヒドロゲナーゼ又はグルタミン酸デヒドロゲナーゼ)は、アミノ酸を再生する反応の際にNADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)を補酵素として利用可能であることが好ましい。
例えば、アラニンデヒドロゲナーゼの場合は、ピルビン酸及びNH
3からL−アラニンを生成する反応の際にNADPHを補酵素として利用可能であるアラニンデヒドロゲナーゼであることが好ましい。NADPHを補酵素として利用可能なアミノ酸再生酵素を使用した場合には、NADPHの消費によりNADPH/NADP+比が変化し、ピリドキシンデヒドロゲナーゼが触媒する反応の平衡や速度に影響を与えて、ピリドキサミン又はその塩の生産効率をより高めることができる。また、ほとんどのアラニンデヒドロゲナーゼは、NADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を補酵素として利用可能であるが、NADPHを利用することができない。NADPHを補酵素として利用可能であるアラニンデヒドロゲナーゼを使用した場合には、上記のとおりNADPHの消費によりNADPH/NADP+比が変化し、ピリドキシンデヒドロゲナーゼが触媒する反応の平衡や速度に影響を与えて、ピリドキサミン又はその塩の生産効率をより高めることができる。また、前記アミノ酸再生酵素(例えばアラニンデヒドロゲナーゼ又はグルタミン酸デヒドロゲナーゼ)は、アミノ酸を再生する反応の際にNADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)及びNADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)のどちらも補酵素として利用可能であることも好ましい。このようなアラニンデヒドロゲナーゼの例としては、後述の配列番号5及び配列番号45〜配列番号52のうちいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられるが、これに限定されない。
【0030】
前記ピリドキシンデヒドロゲナーゼ、ピリドキサミン合成酵素、及びアミノ酸再生酵素は、いずれも、当該酵素活性を有する既知のアミノ酸配列(例えば、生物中に天然に存在する遺伝子によってコードされるアミノ酸配列、例えば上記例示した微生物等の天然の微生物が有する遺伝子によってコードされるアミノ酸配列)を未改変のまま有するタンパク質であってもよいし、このようなアミノ酸配列に対してその酵素活性(上述の酵素活性)を失わない範囲で配列の改変を加えたアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。このような改変としては、アミノ酸残基の挿入、欠失、置換及びアミノ酸配列N末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のアミノ酸残基の付加が挙げられる。アミノ酸残基の挿入、欠失及び置換のうち1つ以上がある場合は、挿入、欠失及び置換の各々は、存在する場合は、例えば1〜30アミノ酸残基、あるいは1〜20アミノ酸残基、あるいは1〜10アミノ酸残基、あるいは1〜5アミノ酸残基であってもよく、アミノ酸残基の挿入、欠失及び置換の総数は例えば1〜50アミノ酸残基、あるいは1〜30アミノ酸残基、あるいは1〜10アミノ酸残基、あるいは1〜5アミノ酸残基であってもよい。また、末端に付加されるアミノ酸残基の数としては、存在する場合は一末端当たり例えば1〜50アミノ酸残基、あるいは1〜30アミノ酸残基、あるいは1〜10アミノ酸残基、あるいは1〜5アミノ酸残基であってもよい。このような追加のアミノ酸残基は、細胞外への分泌等のためのシグナル配列を形成していてもよい。シグナル配列の例としては、大腸菌のOmpAシグナル配列などが挙げられる。
あるいは、各酵素は、当該酵素活性を有する既知のアミノ酸配列(例えば、生物中に天然に存在する遺伝子によってコードされるアミノ酸配列)そのものを有するタンパク質、又は当該酵素活性を有する既知のアミノ酸配列(例えば、生物中に天然に存在する遺伝子によってコードされるアミノ酸配列)に対して80%以上、あるいは85%以上、あるいは90%以上、あるいは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、所望の酵素活性(上述の酵素活性)を有するタンパク質であってもよい。ここで、配列同一性は例えばBLAST(登録商標、National Library of Medicine)プログラムを用いてデフォールトパラメータで評価することができる。
【0031】
例えば、ピリドキシンデヒドロゲナーゼは、例えば、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよいし、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸残基の置換、欠失、挿入及びアミノ酸配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のアミノ酸残基の付加のうち1つ以上を行ったアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。アミノ酸残基の置換、欠失、挿入及びアミノ酸配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のアミノ酸残基の付加の程度の例については、上記のとおりである。
あるいは、ピリドキシンデヒドロゲナーゼは、配列番号1若しくは配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質又は配列番号1のアミノ酸配列及び配列番号2のアミノ酸配列のうち少なくとも1つに対して例えば80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。
上記のような、配列番号1のアミノ酸配列及び配列番号2のアミノ酸配列のうち1つ以上に類似するアミノ酸配列を有するタンパク質を使用する場合には、該タンパク質はピリドキシンデヒドロゲナーゼとしての活性を有しているべきである。ピリドキシンデヒドロゲナーゼ活性は、例えば、基質としてのピリドキシン及び必要なNAD
+若しくはNADP
+を含む水溶液に試験対象のタンパク質を加え、生成したピリドキサールを高速液体クロマトグラフィーで定量するか、あるいは生成したピリドキサールとトリスヒドロキシメチルアミノメタンのようなアミンとの間でシッフ塩基を形成させ415nm等での吸光度測定などで該シッフ塩基を定量することにより測定できる。
【0032】
あるいは、ピリドキシンデヒドロゲナーゼは、配列番号1、配列番号2、及び配列番号22〜配列番号28のうちいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質又は配列番号1のアミノ酸配列、配列番号2のアミノ酸配列、配列番号22のアミノ酸配列、配列番号23のアミノ酸配列、配列番号24のアミノ酸配列、配列番号25のアミノ酸配列、配列番号26のアミノ酸配列、配列番号27のアミノ酸配列、及び配列番号28のアミノ酸配列のうち少なくとも1つに対して例えば80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。該タンパク質も、ピリドキシンデヒドロゲナーゼとしての活性を有しているべきである。
【0033】
あるいは、ピリドキシンデヒドロゲナーゼは、下記の部分アミノ酸配列(a)及び部分アミノ酸配列(b)のうち少なくとも1つを含み、且つピリドキシンデヒドロゲナーゼ活性を有するピリドキシンデヒドロゲナーゼであってもよい。
(a) NX
1X
2EX
3YG(配列番号97)
(ここで、X
1は、V、C、I、A、M、S、G又はLを表し、
X
2は、G又はAを表し、
X
3は、F又はLを表す)
(b) X
4X
5X
6KGX
7(配列番号98)
(X
4は、I、V、F又はLを表し、
X
5は、S、T、N、C又はMを表し、
X
6は、C、V、A、I、W又はFを表し、
X
7は、G、A、S又はCを表す
)
図1−1及び
図1−2には、配列番号1及び配列番号22〜配列番号28の配列のアラインメントを示す。
図1−1及び
図1−2中、ScPlrはSaccharomyces cerevisiaeのピリドキシンデヒドロゲナーゼを、SePlrはSaccharomyces eubayanusのピリドキシンデヒドロゲナーゼを、TdPlrはTorulaspora delbrueckiiのピリドキシンデヒドロゲナーゼを、ZbPlrはZygosaccharomyces bailiiのピリドキシンデヒドロゲナーゼを、KmPlrはKluyveromyces marxianusのピリドキシンデヒドロゲナーゼを、AoPlrはAspergillus oryzaeのピリドキシンデヒドロゲナーゼを、CaPlrはCandida albicansのピリドキシンデヒドロゲナーゼを、YlPlrはYarrowia lipolyticaのピリドキシンデヒドロゲナーゼを表す。部分アミノ酸配列(a)は、Saccharomyces cerevisiaeのピリドキシンデヒドロゲナーゼのN末端から55番目〜61番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当し、部分アミノ酸配列(b)は、Saccharomyces cerevisiaeのピリドキシンデヒドロゲナーゼのN末端から86番目〜91番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当する。本開示において配列同士のアラインメントは、例えばBLAST(登録商標、National Library of Medicine)プログラムを用いてデフォールトパラメータで行うことができる。部分アミノ酸配列(a)は、タンパク質のN末端から45番目〜71番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から46番目〜66番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。部分アミノ酸配列(b)は、タンパク質のN末端から76番目〜101番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から79番目〜96番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。
【0034】
本開示において、酵素Bのアミノ酸配列における「酵素AのN末端からX番目のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基」とは、前記酵素Aのアミノ酸配列を酵素Bのアミノ酸配列に対してアラインメントしたときに、酵素Aのアミノ酸配列のN末端からX番目のアミノ酸残基と対応する酵素Bのアミノ酸配列上のアミノ酸残基を指す。
【0035】
図1−1及び
図1−2から分かるように、部分アミノ酸配列(a)及び部分アミノ酸配列(b)は、一群のピリドキシンデヒドロゲナーゼの間で高度に保存された領域である。したがって、部分アミノ酸配列(a)及び部分アミノ酸配列(b)のうち少なくとも1つを含むピリドキシンデヒドロゲナーゼのバリエーションは、本開示におけるピリドキシンデヒドロゲナーゼとして機能する蓋然性が高いと考えられる。また、Saccharomyces cerevisiaeのピリドキシンデヒドロゲナーゼのN末端から60番目のチロシン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基、及びSaccharomyces cerevisiaeのピリドキシンデヒドロゲナーゼのN末端から89番目のリジン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基は、いずれもNADPH結合残基と考えられており(Journal of Biological Chemistry 1990, 274(33), 23185-23190)、ピリドキシンデヒドロゲナーゼの機能上、重要な残基である。これらの残基が保存されていれば、本開示におけるピリドキシンデヒドロゲナーゼとして機能する蓋然性が高いと考えられる。
【0036】
Saccharomyces cerevisiaeのピリドキシンデヒドロゲナーゼのN末端から60番目のチロシン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基を含む領域の別の表記として、以下の部分アミノ酸配列(a−1)が挙げられる。ピリドキシンデヒドロゲナーゼは、部分アミノ酸配列(a)の代わりに部分アミノ酸配列(a−1)を含んでいてもよい。
(a−1)X
1X
2NX
3X
4EX
5YGX
6X
7(配列番号109)
X
1は、F、L、I、M、Y又はVを表し、
X
2は、 F、I、Y、L、W又はVを表し、
X
3は、V、C、I、A、M、S、G又はLを表し、
X
4は、G又はAを表し、
X
5は、F又はLを表し、
X
6は、P、K、R、G、E、T、A、N又はSを表し、
X
7は、D、N、H、K、E、P、L又はIを表す。
部分アミノ酸配列(a−1)は、Saccharomyces cerevisiaeのピリドキシンデヒドロゲナーゼのN末端から53番目〜63番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当する。部分アミノ酸配列(a−1)は、タンパク質のN末端から43番目〜73番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から45番目〜68番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。
【0037】
Saccharomyces cerevisiaeのピリドキシンデヒドロゲナーゼのN末端から89番目のリジン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基を含む領域の別の表記として、以下の部分アミノ酸配列(b−1)が挙げられる。ピリドキシンデヒドロゲナーゼは、部分アミノ酸配列(b)の代わりに部分アミノ酸配列(b−1)を含んでいてもよい。
(b−1)X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8KGX
9(配列番号110)
X
1は、R、K、A、S又はNを表し、
X
2は、K、S、E、Q、D又はAを表し、
X
3は、D、H、N、Y、E、K、C、Q又はRを表し、
X
4は、V、T、I、M又はLを表し、
X
5は、V、I、L、F、M又はTを表し、
X
6は、I、V、F又はLを表し、
X
7は、S、T、N、C又はMを表し、
X
8は、C、V、A、I、W又はFを表し、
X
9は、G、A、S又はCを表す。
部分アミノ酸配列(b−1)は、Saccharomyces cerevisiaeのピリドキシンデヒドロゲナーゼのN末端から81番目〜91番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当する。部分アミノ酸配列(
b−1)は、タンパク質のN末端から71番目〜101番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から74番目〜96番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。
【0038】
また、ピリドキサミン合成酵素は、例えば、配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよいし、配列番号3のアミノ酸配列に対してアミノ酸残基の置換、欠失、挿入及びアミノ酸配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のアミノ酸残基の付加のうち1つ以上を行ったアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。アミノ酸残基の置換、欠失、挿入及びアミノ酸配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のアミノ酸残基の付加の程度の例については、上記のとおりである。
あるいは、ピリドキサミン合成酵素は、配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質又は配列番号3のアミノ酸配列に対して例えば80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。
上記のような、配列番号3のアミノ酸配列に類似するアミノ酸配列を有するタンパク質を使用する場合には、該タンパク質はピリドキサミン合成酵素としての活性(ピリドキサールからピリドキサミンを合成する酵素活性、第1の態様においてはピリドキサミン合成酵素活性ともいう)を有しているべきである。ピリドキサールからピリドキサミンを合成する酵素活性は、例えば、基質としてのピリドキサール及び必要なアミノ酸(配列番号3のアミノ酸配列に類似するアミノ酸配列を有するタンパク質の場合は例えばL−アラニン)を含む水溶液に試験対象のタンパク質を加え、生成したピリドキサミンの量を高速液体クロマトグラフィーなどで定量することにより測定できる。
【0039】
あるいは、ピリドキサミン合成酵素は、配列番号3及び配列番号29〜配列番号35のうちいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質又は配列番号3のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸配列、配列番号30のアミノ酸配列、配列番号31のアミノ酸配列、配列番号32のアミノ酸配列、配列番号33のアミノ酸配列、配列番号34のアミノ酸配列、及び配列番号35のアミノ酸配列のうち少なくとも1つに対して例えば80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。該タンパク質も、ピリドキサミン合成酵素としての活性を有しているべきである。この場合、ピリドキサールからピリドキサミンを合成する酵素活性は、例えば、基質としてのピリドキサール及びL−アラニンを含む水溶液に試験対象のタンパク質を加え、生成したピリドキサミンの量を高速液体クロマトグラフィーなどで定量することにより測定できる。
【0040】
あるいは、ピリドキサミン合成酵素は、下記の部分アミノ酸配列(c)、部分アミノ酸配列(d)、部分アミノ酸配列(e)、部分アミノ酸配列(f)、部分アミノ酸配列(g)及び部分アミノ酸配列(h)のうち少なくとも1つを含み、且つピリドキサールからピリドキサミンを合成する酵素活性を有するピリドキサミン合成酵素であってもよい。この場合、ピリドキサールからピリドキサミンを合成する酵素活性は、例えば、基質としてのピリドキサール及びL−アラニンを含む水溶液に試験対象のタンパク質を加え、生成したピリドキサミンの量を高速液体クロマトグラフィーなどで定量することにより測定できる。
(c) X
8X
9X
10X
11X
12X
13(配列番号99)
(X
8は、L、M、I又はVを表し、
X
9は、H又はQを表し、
X
10は、G、C又はAを表し、
X
11は、E又はDを表し、
X
12は、P又はAを表し、
X
13は、V、I、L又はAを表す)
(d) X
14X
15TPSGTX
16X
17(配列番号100)
(X
14は、H又はSを表し、
X
15は、D又はEを表し、
X
16は、I、V又はLを表し、
X
17は、N又はTを表す)
(e) X
18DX
19VSX
20X
21(配列番号101)
(X
18は、V、I又はAを表し、
X
19は、A、T又はSを表し、
X
20は、S、A又はGを表し、
X
21は、F、W、又はVを表す)
(f) X
22X
23X
24KCX
25GX
26X
27P(配列番号102)
(X
22は、G又はSを表し、
X
23は、P、S又はAを表し、
X
24は、N、G、S、A又はQを表し、
X
25は、L又はMを表し、
X
26は、A、S、C又はGを表し、
X
27は、P、T、S又はAを表す)
(g) X
28X
29X
30X
31SX
32GX
33X
34(配列番号103)
(X
28は、G又はDを表し、
X
29は、V又はIを表し、
X
30は、V、T、A、S、M、I又はLを表し、
X
31は、F、M、L、I又はVを表し、
X
32は、S、G、A、T、I、L又はHを表し、
X
33は、R、M又はQを表し、
X
34は、G、R、A、D、H又はKを表す)
(h) X
35X
36RX
37X
38HMGX
39X
40A(配列番号104)
(X
35は、L又はVを表し、
X
36は、T、I、V又はLを表し、
X
37は、I、V又はLを表し、
X
38は、G又はSを表し、
X
39は、P、A又はRを表し、
X
40は、T、V又はSを表す)
【0041】
図2−1及び
図2−2には、配列番号3及び配列番号29〜配列番号35の配列のアラインメントを示す。
図2−1及び
図2−2中、MlPPATはMesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼを、MsPPATはMesorhizobium sp. YR577のピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼを、PsPPATはPseudaminobacter salicylatoxidansのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼを、BlPPATはBauldia litoralisのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼを、SsPPATはSkermanella stibiiresistensのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼを、RsPPATはRhizobium sp. AC44/96のピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼを、EtPPATはErwinia toletanaのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼを、HgPPATはHerbiconiux ginsengiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼを表す。部分アミノ酸配列(c)は、Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から65番目〜70番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当し、部分アミノ酸配列(d)は、Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から144番目〜152番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当し、部分アミノ酸配列(e)は、Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から170番目〜176番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当し、部分アミノ酸配列(f)は、Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から194番目〜203番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当し、部分アミノ酸配列(g)は、Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から329番目〜337番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当し、部分アミノ酸配列(h)は、Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から343番目〜353番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当する。部分アミノ酸配列(c)は、タンパク質のN末端から55番目〜80番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から56番目〜75番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。部分アミノ酸配列(d)は、タンパク質のN末端から134番目〜162番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から139番目〜157番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。部分アミノ酸配列(e)は、タンパク質のN末端から160番目〜186番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から165番目〜181番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。部分アミノ酸配列(f)は、タンパク質のN末端から184番目〜213番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から189番目〜208番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。部分アミノ酸配列(g)は、タンパク質のN末端から319番目〜347番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から324番目〜342番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。部分アミノ酸配列(h)は、タンパク質のN末端から333番目〜363番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から338番目〜358番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。
【0042】
図2−1及び
図2−2から分かるように、部分アミノ酸配列(c)、部分アミノ酸配列(d)、部分アミノ酸配列(e)、部分アミノ酸配列(f)、部分アミノ酸配列(g)及び部分アミノ酸配列(h)は、一群のピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼの間で高度に保存された領域である。したがって、部分アミノ酸配列(c)〜部分アミノ酸配列(h)のうち少なくとも1つを含むピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのバリエーションは、本開示におけるピリドキサミン合成酵素として機能する蓋然性が高いと考えられる。また、Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から197番目のリジン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基はピリドキサールとの結合に重要であり、N末端から68番目のグルタミン酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基は触媒活性に重要であり、N末端から171番目のアスパラギン酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基及びN末端から146番目のトレオニン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基はピリドキサールとの結合を補助し、N末端から336番目のアルギニン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基及びN末端から345番目のアルギニン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基はアミノ酸認識に重要であると考えられており(Journal of Biological Chemistry, 2008, vol. 283, No.2 pp1120-1127)、ピリドキシン合成酵素の機能上、重要な残基である。これらの残基が保存されていれば、本開示におけるピリドキシン合成酵素として機能する蓋然性が高いと考えられる。ただし、Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から68番目のグルタミン酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基は、グルタミン酸以外にアスパラギン酸であってもよい。また、Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から336番目のアルギニン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基は、アルギニン以外にメチオニン又はグルタミンであってもよい。
【0043】
Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から68番目のグルタミン酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基を含む領域の別の表記として、以下の部分アミノ酸配列(c−1)が挙げられる。ピリドキサミン合成酵素は、部分アミノ酸配列(c)の代わりに部分アミノ酸配列(c−1)を含んでいてもよい。
(c−1)X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8X
9X
10X
11X
12X
13X
14X
15X
16X
17X
18X
19(配列番号111)
X
1が、V、L、I又はMを表し、
X
2は、I、L又はVを表し、
X
3は、L、M、I又はVを表し、
X
4は、H又はQを表し、
X
5は、G、C又はAを表し、
X
6は、E又はDを表し、
X
7は、P又はAを表し、
X
8は、V、I、A又はLを表し、
X
9は、L、M、P又はVを表し、
X
10は、G又はAを表し、
X
11は、L又はIを表し、
X
12は、E又はQを表し、
X
13は、A又はGを表し、
X
14は、A又はVを表し、
X
15は、A又はLを表し、
X
16は、A、L、H又はYを表し、
X
17は、S、G又はAを表し、
X
18は、L、F、V又はAを表し、
X
19は、I、F、V又はLを表す。
部分アミノ酸配列(c−1)は、Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から63番目〜81番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当する。部分アミノ酸配列(c−1)は、タンパク質のN末端から53番目〜91番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から58番目〜86番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。
【0044】
Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から146番目のトレオニン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基を含む領域の別の表記として、以下の部分アミノ酸配列(d−1)が挙げられる。ピリドキサミン合成酵素は、部分アミノ酸配列(d)の代わりに部分アミノ酸配列(d−1)を含んでいてもよい。
(d−1)X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8TPSGTX
9X
10X
11X
12X
13X
14 X
15X
16 (配列番号112)
X
1は、V、I、L又はMを表し、
X
2は、V又はIを表し、
X
3は、S、A、V、C又はFを表し、
X
4は、V、I、A、L又はTを表し、
X
5は、C又はVを表し、
X
6は、H、N又はAを表し、
X
7は、H又はSを表し、
X
8は、D又はEを表し、
X
9は、I、V又はLを表し、
X
10は、N又はTを表し、
X
11は、P又はDを表し、
X
12は、I、V、L又はAを表し、
X
13は、D、N、E、A、G、Q、V、R又はPを表し、
X
14は、A、E、Q又はDを表し、
X
15は、I又はLを表し、
X
16は、G又はAを表す。
部分アミノ酸配列(d−1)は、Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から138番目〜158番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当する。部分アミノ酸配列(d−1)は、タンパク質のN末端から128番目〜168番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から133番目〜163番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。
【0045】
Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から171番目のアスパラギン酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基を含む領域の別の表記として、以下の部分アミノ酸配列(e−1)が挙げられる。ピリドキサミン合成酵素は、部分アミノ酸配列(e)の代わりに部分アミノ酸配列(e−1)を含んでいてもよい。
(e−1)X
1X
2X
3X
4X
5X
6DX
7VSX
8X
9X
10X
11X
12(配列番号113)
X
1は、G、D又はA
X
2は、A、G、K、T、Q、R又はEを表し、
X
3は、Y、N、L又はFを表し、
X
4は、L、F、M又はVを表し、
X
5は、I、L又はYを表し、
X
6は、V、A又はIを表し、
X
7は、A、S又はTを表し、
X
8は、S、A又はGを表し、
X
9は、F、W又はVを表し、
X
10は、G、A又はLを表し、
X
11は、G又はSを表し、
X
12は、M、V又はLを表す。
部分アミノ酸配列(e−1)は、Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から165番目〜179番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当する。部分アミノ酸配列(e−1)は、タンパク質のN末端から155番目〜189番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から160番目〜184番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。
【0046】
Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から197番目のリジン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基を含む領域の別の表記として、以下の部分アミノ酸配列(f−1)が挙げられる。ピリドキサミン合成酵素は、部分アミノ酸配列(f)の代わりに部分アミノ酸配列(f−1)を含んでいてもよい。
(f−1)X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8X
9KCX
10GX
11X
12PX
13X
14X
15X
16X
17X
18X
19S(配列番号114)
X
1は、A、S、V又はIを表し、
X
2は、D、G又はAを表し、
X
3は、I、L、F、V又はMを表し、
X
4は、Y、F、L又はCを表し、
X
5は、V又はIを表し、
X
6は、T又はAを表し、
X
7は、G又はSを表し、
X
8は、P、S又はAを表し、
X
9は、N、G、S、Q又はAを表し、
X
10は、L又はMを表し、
X
11は、A、S、C又はGを表し、
X
12は、P、T、S又はAを表し、
X
13は、G、A又はSを表し、
X
14は、L又はVを表し、
X
15は、T、S又はAを表し、
X
16は、M、I、L、V又はFを表し、
X
17は、M、L、V、A又はIを表し、
X
18は、G、A、H又はSを表し、
X
19は、V、I又はAを表す。
部分アミノ酸配列(f−1)は、Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から188番目〜211番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当する。部分アミノ酸配列(f−1)は、タンパク質のN末端から178番目〜221番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から183番目〜216番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。
【0047】
Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から336番目のアルギニン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基を含む領域の別の表記として、以下の部分アミノ酸配列(g−1)が挙げられる。ピリドキサミン合成酵素は、部分アミノ酸配列(g)の代わりに部分アミノ酸配列(g−1)を含んでいてもよい。
(g−1)X
1X
2X
3X
4X
5SX
6GX
7X
8(配列番号115)
X
1は、Y、F、H又はSを表し、
X
2は、G又はDを表し、
X
3は、V又はIを表し、
X
4は、V、T、A、S、M、I又はLを表し、
X
5は、F、M、L、I又はVを表し、
X
6は、S、G、A、T、I、L又はHを表し、
X
7は、R、M又はQを表し、
X
8は、G、R、A、D、H又はKを表す。
部分アミノ酸配列(g−1)は、Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から328番目〜337番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当する。部分アミノ酸配列(g−1)は、タンパク質のN末端から318番目〜347番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から323番目〜342番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。
【0048】
Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から345番目のアルギニン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基を含む領域の別の表記として、以下の部分アミノ酸配列(h−1)が挙げられる。ピリドキサミン合成酵素は、部分アミノ酸配列(h)の代わりに部分アミノ酸配列(h−1)を含んでいてもよい。
(h−1)X
1X
2X
3X
4X
5RX
6X
7HMGX
8X
9AX
10X
11(配列番号116)
X
1は、L、Q、K、A、F、Y又はWを表し、
X
2は、G、N、H又はDを表し、
X
3は、K、R又はNを表し、
X
4は、L又はVを表し、
X
5は、T、I、V又はLを表し、
X
6は、I、V又はLを表し、
X
7は、G又はSを表し、
X
8は、P、A又はRを表し、
X
9は、T、V又はSを表し、
X
10は、Q、R、E、K、H、Y又はGを表し、
X
11は、P又はGを表す。
部分アミノ酸配列(h−1)は、Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼのN末端から340番目〜355番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当する。部分アミノ酸配列(h−1)は、タンパク質のN末端から330番目〜365番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から335番目〜360番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。
【0049】
あるいは、ピリドキサミン合成酵素は、例えば、配列番号4のアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよいし、配列番号4のアミノ酸配列に対してアミノ酸残基の置換、欠失、挿入及びアミノ酸配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のアミノ酸残基の付加のうち1つ以上を行ったアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。アミノ酸残基の置換、欠失、挿入及びアミノ酸配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のアミノ酸残基の付加の程度の例については、上記のとおりである。
あるいは、ピリドキサミン合成酵素は、配列番号4のアミノ酸配列を有するタンパク質又は配列番号4のアミノ酸配列に対して例えば80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。
上記のような、配列番号4のアミノ酸配列に類似するアミノ酸配列を有するタンパク質を使用する場合には、該タンパク質はピリドキサミン合成酵素としての活性(ピリドキサールからピリドキサミンを合成する酵素活性)を有しているべきである。ピリドキサールからピリドキサミンを合成する酵素活性は、例えば、基質としてのピリドキサール及び必要なアミノ酸(配列番号4のアミノ酸配列に類似するアミノ酸配列を有するタンパク質の場合は例えばL−グルタミン酸若しくはL−アスパラギン酸又はその塩)を含む水溶液に試験対象のタンパク質を加え、生成したピリドキサミンの量を高速液体クロマトグラフィーなどで定量することにより測定できる。
【0050】
また、アミノ酸再生酵素は、例えば、Shewanella sp. AC10由来アミノ酸再生酵素のアミノ酸配列(配列番号36)に対してD198Aのアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列(配列番号5)を有するタンパク質を用いてもよい。このタンパク質は、酵素番号1.4.1.1で表されるアラニンデヒドロゲナーゼである。これに限らず、酵素番号1.4.1.1で表されるアラニンデヒドロゲナーゼに対して、NADP
+対応アミノ酸置換を行ったアラニンデヒドロゲナーゼを使用可能である。下記のJournal of Molecular Catalysis B: Enzymatic 30 (2004) 173-176に記載のとおり、アラニンデヒドロゲナーゼはほとんどのものが補酵素としてNAD
+(酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を使用できるが、NADP
+(酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)は使用できない。しかし、上記D198Aのアミノ酸置換を行った配列番号5のアミノ酸配列を有するタンパク質は、補酵素としてNAD
+とNADP
+のどちらも使用できる(上記文献参照)。なお、配列番号5のアミノ酸配列を有するタンパク質は、逆反応(ピルビン酸及びNH
3からのL−アラニン再生)の際には、もちろん、NADHとNADPHのどちらも使用できる。
【0051】
Shewanella sp. AC10由来アラニンデヒドロゲナーゼ以外のアラニンデヒドロゲナーゼについても同様のアミノ酸置換を行うことができる。ここで、アラニンデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列中における、配列番号36のアミノ酸配列のN末端から198番目のアスパラギン酸残基にアラインメント上対応する残基を、アラニン残基に置換することを、NADP
+対応アミノ酸置換と称する。アミノ酸再生酵素としてのアラニンデヒドロゲナーゼは、エロモナス ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)に由来するアラニンデヒドロゲナーゼにNADP
+対応アミノ酸置換(この場合はD198A)を行ったアミノ酸配列(配列番号45)を有するタンパク質、リゾビウムsp. LPU83(Rhizobium sp. LPU83)に由来するアラニンデヒドロゲナーゼにNADP
+対応アミノ酸置換(この場合はD198A)を行ったアミノ酸配列(配列番号46)を有するタンパク質、シュードモナス メンドシナ(Pseudomonas mendocina)に由来するアラニンデヒドロゲナーゼにNADP
+対応アミノ酸置換(この場合はD198A)を行ったアミノ酸配列(配列番号47)を有するタンパク質、ブラディリゾビウム ジャポニカム(Bradyrhizobium japonicum)に由来するアラニンデヒドロゲナーゼにNADP
+対応アミノ酸置換(この場合はD198A)を行ったアミノ酸配列(配列番号48又は配列番号49)を有するタンパク質、ストレプトマイセス オーレオファシエンス(Streptomyces aureofaciens)に由来するアラニンデヒドロゲナーゼにNADP
+対応アミノ酸置換(この場合はD198A)を行ったアミノ酸配列(配列番号50)を有するタンパク質、アナベナ シリンドリカ(Anabaena cylindrica)に由来するアラニンデヒドロゲナーゼにNADP
+対応アミノ酸置換(この場合はD198A)を行ったアミノ酸配列(配列番号51)を有するタンパク質、バチルス サブティリス(Bacillus subtilis)に由来するアラニンデヒドロゲナーゼにNADP
+対応アミノ酸置換(この場合はD196A)を行ったアミノ酸配列(配列番号52)を有するタンパク質などであってもよい。
【0052】
なお、NAD
+が利用可能な反応条件の場合には、上記のアミノ酸再生酵素をNADP
+対応アミノ酸置換無しに用いることができ、これ以外にも、酵素番号1.4.1.1で表されるアラニンデヒドロゲナーゼを一般的に用いることができる。
【0053】
また、アミノ酸再生酵素は、例えば配列番号6のアミノ酸配列を有する、大腸菌由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼであってもよい。グルタミン酸デヒドロゲナーゼは、NADH又はNADPHを補酵素として用いて2−オキソグルタル酸及びNH
3からL−グルタミン酸を生成する酵素活性を有する。
【0054】
また、アミノ酸再生酵素は、例えば、配列番号5のアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよいし、配列番号5のアミノ酸配列に対してアミノ酸残基の置換、欠失、挿入及びアミノ酸配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のアミノ酸残基の付加のうち1つ以上を行ったアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。アミノ酸残基の置換、欠失、挿入及びアミノ酸配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のアミノ酸残基の付加の程度の例については、上記のとおりである。
あるいは、アミノ酸再生酵素は、配列番号5のアミノ酸配列を有するタンパク質又は配列番号5のアミノ酸配列に対して例えば80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。
上記のような、配列番号5のアミノ酸配列に類似するアミノ酸配列を有するタンパク質を使用する場合には、該タンパク質はアラニン再生酵素活性を有しているべきである。また、配列番号5のアミノ酸配列のN末端から198番目のAla残基又はこれに配列アラインメント上対応するAla残基を保持していることが好ましい。
【0055】
あるいは、アミノ酸再生酵素は、配列番号5及び配列番号45〜配列番号52のうちいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質、又は配列番号5、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51及び配列番号52のアミノ酸配列に対して例えば80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。
上記のような、配列番号5、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51及び配列番号52のアミノ酸配列に類似するアミノ酸配列を有するタンパク質を使用する場合には、該タンパク質はアラニン再生酵素活性を有しているべきである。また、配列番号5のアミノ酸配列のN末端から198番目のAla残基又はこれに配列アラインメント上対応するAla残基を保持していることが好ましい。
【0056】
あるいは、アミノ酸再生酵素は、例えば、配列番号6のアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよいし、配列番号6のアミノ酸配列に対してアミノ酸残基の置換、欠失、挿入及びアミノ酸配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のアミノ酸残基の付加のうち1つ以上を行ったアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。アミノ酸残基の置換、欠失、挿入及びアミノ酸配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のアミノ酸残基の付加の程度の例については、上記のとおりである。
あるいは、アミノ酸再生酵素は、配列番号6のアミノ酸配列を有するタンパク質又は配列番号6のアミノ酸配列に対して例えば80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。
上記のような、配列番号6のアミノ酸配列に類似するアミノ酸配列を有するタンパク質を使用する場合には、該タンパク質はグルタミン酸再生酵素活性を有しているべきである。
【0057】
アミノ酸再生酵素活性は、例えば、必要な基質及び必要に応じてNADP若しくはNADPHを含む水溶液に試験対象のタンパク質を加え、反応生成物としての所望のアミノ酸の量を高速液体クロマトグラフィーなどで定量することにより測定できる。例えば、アラニン再生酵素活性は、例えばピルビン酸、NH
3及びNADH若しくはNADPHを含む水溶液に試験対象のタンパク質を加え、反応生成物としてのL−アラニンの量を高速液体クロマトグラフィーなどで定量することにより測定できる。また、グルタミン酸再生酵素活性は、例えば2−オキソグルタル酸、NH
3及びNADH若しくはNADPHを含む水溶液に試験対象のタンパク質を加え、反応生成物としてのL−グルタミン酸の量を高速液体クロマトグラフィーなどで定量することにより測定できる。
【0058】
あるいは、アラニンデヒドロゲナーゼは、部分アミノ酸配列(i)、部分アミノ酸配列(j)、部分アミノ酸配列(k)及び部分アミノ酸配列(l)のうち少なくとも1つを含み、且つピルビン酸及びNH
3からL−アラニンを生成する活性を有する酵素であってもよい。このようなアラニンデヒドロゲナーゼについても、Shewanella sp. AC10のN末端から198番目のアスパラギン酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基をアラニン残基に置き換えることによって、補酵素としてNAD
+とNADP
+のどちらも使用できるようにすることができる。
(i) EX
41KX
42X
43EX
44RX
45X
46(配列番号105)
(X
41は、I、T、S、F、N又はVを表し、
X
42は、N、M、A、V、L、T又はDを表し、
X
43は、H、N、L又はQを表し、
X
44は、Y、N又はFを表し、
X
45は、V、又はIを表し、
X
46は、G又はAを表す)
(j) X
47X
48X
49KVKEPX
50(配列番号106)
(X
47は、M又はLを表し、
X
48は、I、L又はVを表し、
X
49は、V、L、I又はMを表し、
X
50は、Q、L、V、N又はIを表す)
(k) LX
51TYLHLA(配列番号107)
(X
51は、F又はYを表す)
(l) X
52DX
53AX
54DQGG(配列番号108)
(X
52は、V又はAを表し、
X
53は、V又はIを表し、
X
54は、I又はVを表す)
【0059】
図3−1及び
図3−2には、配列番号36〜配列番号44の配列のアラインメントを示す。
図3−1及び
図3−2中、SsAdhはShewanella sp. AC10のアラニンデヒドロゲナーゼを、AhAdhはAeromonas hydrophilaのアラニンデヒドロゲナーゼを、RsAdhはRhizobium sp. LPU83のアラニンデヒドロゲナーゼを、PmAdhはPseudomonas mendocinaのアラニンデヒドロゲナーゼを、BjAdh1はBradyrhizobium japonicumのアラニンデヒドロゲナーゼのうちの一つを、BjAdh2はBradyrhizobium japonicumのアラニンデヒドロゲナーゼの別の一つを、SaAdhはStreptomyces aureofaciensのアラニンデヒドロゲナーゼを、AcAdhはAnabaena cylindricaのアラニンデヒドロゲナーゼを、BsAdhはBacillus subtilisのアラニンデヒドロゲナーゼを表す。部分アミノ酸配列(i)は、Shewanella sp. AC10のアラニンデヒドロゲナーゼのN末端から8番目〜17番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当し、部分アミノ酸配列(j)は、Shewanella sp. AC10のアラニンデヒドロゲナーゼのN末端から70番目〜78番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当し、部分アミノ酸配列(k)は、Shewanella sp. AC10のアラニンデヒドロゲナーゼのN末端から91番目〜98番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当し、部分アミノ酸配列(l)は、Shewanella sp. AC10のアラニンデヒドロゲナーゼのN末端から265番目〜273番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当する。部分アミノ酸配列(i)は、タンパク質のN末端から2番目〜27番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から3番目〜22番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。部分アミノ酸配列(j)は、タンパク質のN末端から60番目〜88番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から65番目〜83番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。部分アミノ酸配列(k)は、タンパク質のN末端から81番目〜108番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から86番目〜103番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。部分アミノ酸配列(l)は、タンパク質のN末端から255番目〜283番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から260番目〜278番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。
【0060】
図3−1及び
図3−2から分かるように、部分アミノ酸配列(i)、部分アミノ酸配列(j)、部分アミノ酸配列(k)及び部分アミノ酸配列(l)は、一群のアラニンデヒドロゲナーゼの間で高度に保存された領域である。したがって、部分アミノ酸配列(i)〜部分アミノ酸配列(l)のうち少なくとも1つを含むアラニンデヒドロゲナーゼのバリエーションは、本開示におけるアミノ酸再生酵素として機能する蓋然性が高いと考えられる。また、Shewanella sp. AC10のアラニンデヒドロゲナーゼのN末端から15番目のアルギニン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基及びN末端から75番目のリジン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基はNADHとの結合に重要であり、N末端から96番目のヒスチジン残基及びN末端から270番目のアスパラギン酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基はタンパク質の構造形成上重要であると考えられており(J. Mol. Biol., 2008, 377, 1161-1173、Enzyme and Microbial Technology, 2018, 110, 61-68)、アラニンデヒドロゲナーゼの機能上、重要な残基である。これらの残基が保存されていれば、本開示におけるアミノ酸再生酵素として機能する蓋然性が高いと考えられる。
【0061】
Shewanella sp. AC10のアラニンデヒドロゲナーゼのN末端から15番目のアルギニン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基を含む領域の別の表記として、以下の部分アミノ酸配列(i−1)が挙げられる。アラニンデヒドロゲナーゼは、部分アミノ酸配列(i)の代わりに部分アミノ酸配列(i−1)を含んでいてもよい。
(i−1)GX
1PX
2EX
3KX
4X
5EX
6RX
7X
8X
9X
10PX
11X
12X
13X
14X
15X
16(配列番号117)
X
1は、V、I、L又はCを表し、
X
2は、T、K又はRを表し、
X
3は、I、V、T、S、F又はNを表し、
X
4は、N、M、A、D、V、L又はTを表し、
X
5は、H、N、Q又はLを表し、
X
6は、Y、N又はFを表し、
X
7は、V又はIを表し、
X
8は、G又はAを表し、
X
9は、M、L又はIを表し、
X
10は、V、T、I又はSを表し、
X
11は、S、A、T、Q、H、N、L又はGを表し、
X
12は、S、A、N、G又はVを表し、
X
13は、V又はAを表し、
X
14は、R、K、N、Q、S、A、L又はHを表し、
X
15は、E、Q、D、V又はAを表し、
X
16は、L、A、V、F又はYを表す。
部分アミノ酸配列(i−1)は、Shewanella sp. AC10のアラニンデヒドロゲナーゼのN末端から4番目〜26番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当する。部分アミノ酸配列(i−1)は、タンパク質のN末端から2番目〜36番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から3番目〜31番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。
【0062】
Shewanella sp. AC10のアラニンデヒドロゲナーゼのN末端から75番目のリジン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基を含む領域の別の表記として、以下の部分アミノ酸配列(j−1)が挙げられる。アラニンデヒドロゲナーゼは、部分アミノ酸配列(j)の代わりに部分アミノ酸配列(j−1)を含んでいてもよい。
(j−1)X
1X
2X
3X
4KVKEPX
5X
6X
7EX
8X
9X
10(配列番号118)
X
1は、D、E、Q又はKを表し、
X
2は、M又はLを表し、
X
3は、I、L又はVを表し、
X
4は、V、L、I又はMを表し、
X
5は、Q、L、I、V又はNを表し、
X
6は、A、T、S、P、M、K、R、Q、V、I又はEを表し、
X
7は、V、I、E、N、Q、T、A、D、H、M、N、V、A、S、I、D、G、W又はKを表し、
X
8は、R、C、Y又はWを表し、
X
9は、A、E、R、Q、K、T、S、M、N、V、P、G、C又はHを表し、
X
10は、M、L、K、R、Q、E、W、F又はYを表す。
部分アミノ酸配列(j−1)は、Shewanella sp. AC10のアラニンデヒドロゲナーゼのN末端から69番目〜84番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当する。部分アミノ酸配列(j−1)は、タンパク質のN末端から59番目〜94番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から64番目〜89番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。
【0063】
Shewanella sp. AC10のアラニンデヒドロゲナーゼのN末端から96番目のヒスチジン残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基を含む領域の別の表記として、以下の部分アミノ酸配列(k−1)が挙げられる。アラニンデヒドロゲナーゼは、部分アミノ酸配列(k)の代わりに部分アミノ酸配列(k−1)を含んでいてもよい。
(k−1)X
1X
2X
3X
4X
5X
6LX
7TYLHLAX
8X
9X
10X
11X
12X
13X
14X
15LX
16X
17X
18X
19(配列番号119)
X
1は、L又はFを表し、
X
2は、R、K、C、S、H、G又はQを表し、
X
3は、H、E、P、S、D、R、K、Q又はAを表し、
X
4は、D、G、Q、H、E、S、N又はMを表し、
X
5は、Q又はHを表し、
X
6は、I、L、V、T、C又はAを表し、
X
7は、F又はYを表し、
X
8は、P又はAを表し、
X
9は、D、S、N、H又はEを表し、
X
10は、L、M、P、R、V、Q、E又はKを表し、
X
11は、P、A、V、Q、K、E、D、T、N、R、S又はMを表し、
X
12は、Q、C又はLを表し、
X
13は、T、A又はVを表し、
X
14は、E、I、Q、A、R、K、T、D又はNを表し、
X
15は、E、D、L、A、G、H、Y又はSを表し、
X
16は、I、M、V、L、T又はKを表し、
X
17は、T、K、S、D、H、E、A、N、R、G又はQを表し、
X
18は、S、G、C、A又はKを表し、
X
19は、G、K、R、Q又はDを表す。
部分アミノ酸配列(k−1)は、Shewanella sp. AC10のアラニンデヒドロゲナーゼのN末端から85番目〜111番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当する。部分アミノ酸配列(k−1)は、タンパク質のN末端から75番目〜121番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から80番目〜116番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。
【0064】
Shewanella sp. AC10のアラニンデヒドロゲナーゼのN末端から270番目のアスパラギン酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基を含む領域の別の表記として、以下の部分アミノ酸配列(l−1)が挙げられる。アラニンデヒドロゲナーゼは、部分アミノ酸配列(l)の代わりに部分アミノ酸配列(l−1)を含んでいてもよい。
(l−1)X
1X
2X
3X
4X
5DX
6AX
7DQGGX
8X
9X
10X
11(配列番号120)
X
1は、G、R又はSを表し、
X
2は、S、A又はGを表し、
X
3は、A又はVを表し、
X
4は、I、L、M又はVを表し、
X
5は、V又はAを表し、
X
6は、V又はIを表し、
X
7は、I又はVを表し、
X
8は、C又はIを表し、
X
9は、V、I、A、F、S又はCを表し、
X
10は、E又はAを表し、
X
11は、T又はDを表す。
部分アミノ酸配列(l−1)は、Shewanella sp. AC10のアラニンデヒドロゲナーゼのN末端から261番目〜277番目のアミノ酸残基にアラインメント上対応するアミノ酸残基に相当する。部分アミノ酸配列(l−1)は、タンパク質のN末端から251番目〜287番目のアミノ酸残基の領域内に存在することが好ましく、N末端から256番目〜282番目のアミノ酸残基の領域内に存在することがより好ましい。
【0065】
<ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子、及びアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子>
ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、上述のピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする任意の遺伝子であってよい。ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子は、上述のピリドキサミン合成酵素をコードする任意の遺伝子であってよい。アミノ酸再生酵素をコードする遺伝子は、上述のアミノ酸再生酵素をコードする任意の遺伝子であってよい。これらの遺伝子がコードする酵素は、当該酵素活性を有する既知のアミノ酸配列(例えば、生物中に天然に存在する遺伝子によってコードされるアミノ酸配列)に限られず、前記既知のアミノ酸配列とは異なる改変されたアミノ酸配列を有する酵素であってもよい。
【0066】
このような遺伝子は、各酵素を有する微生物として上に例示された微生物(由来となる微生物)が天然に有する遺伝子等の、既知の遺伝子であってもよいし、所望の酵素活性が得られる範囲内において、上述のように当該酵素の既知のアミノ酸配列から改変された改変アミノ酸配列をコードするようにヌクレオチド配列を改変させた遺伝子であってもよい。そのような改変アミノ酸配列の例としては、上記のような、配列番号1〜6のアミノ酸配列のいずれかに類似するアミノ酸配列が挙げられる。また、特定のアミノ酸配列をコードする遺伝子のヌクレオチド配列は、コドンの縮重の範囲内で変化させることができる。この場合、組換え微生物の宿主となる微生物において使用頻度が高いコドンを使用した方が、遺伝子の発現効率の点からは好ましい。
【0067】
なお、遺伝子のヌクレオチド配列は、コードすべきアミノ酸配列からコドン表を元に設計することもできる。設計したヌクレオチド配列は、既知のヌクレオチド配列を遺伝子組換え技術を利用して改変することで得てもよいし、ヌクレオチド配列を化学的に合成することで得てもよい。
ヌクレオチド配列を改変する方法としては、例えば、部位特異的変異法(Kramer,W. and frita,H.J., Methods in Enzymology,vol.154,P.350(1987))、リコンビナントPCR法(PCR Technology,Stockton Press(1989)、特定の部分のDNAを化学合成する方法、遺伝子をヒドロキシアミン処理する方法、遺伝子を保有する菌株を紫外線照射処理、又は、ニトロソグアニジンや亜硝酸などの化学薬剤で処理する方法、市販の突然変異導入キットを使用する方法などが挙げられる。
【0068】
例えば、前記ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、前記ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子、及び前記アミノ酸再生酵素をコードする遺伝子は、いずれも、当該酵素活性を有するポリヌクレオチドをコードする既知のヌクレオチド配列(例えば、上記例示した微生物等の生物中に天然に存在する遺伝子が有するヌクレオチド配列)を未改変のまま有するDNAであってもよいし、このようなヌクレオチド配列に対して、コードされる酵素がその酵素活性(上述の酵素活性)を失わない範囲で配列の改変を加えたヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。このような改変としては、ヌクレオチドの挿入、欠失、置換及びヌクレオチド配列5’末端若しくは3’末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加が挙げられる。ヌクレオチドの挿入、欠失及び置換のうち1つ以上がある場合は、挿入、欠失及び置換の各々は、存在する場合は、例えば1〜90ヌクレオチド、あるいは1〜60ヌクレオチド、あるいは1〜30アミノ酸残基、あるいは1〜20アミノ酸残基、あるいは1〜15ヌクレオチド、あるいは1〜10ヌクレオチド、あるいは1〜5ヌクレオチドであってもよく、ヌクレオチドの挿入、欠失及び置換の総数は例えば1〜100ヌクレオチド、あるいは1〜50ヌクレオチド、あるいは1〜30ヌクレオチド、あるいは1〜10ヌクレオチド、あるいは1〜5ヌクレオチドであってもよい。ヌクレオチドの挿入や欠失は局所的には存在していてもよいが、ヌクレオチド配列全体としては大規模なフレームシフトを生じていないことが好ましい。また、末端に付加されるヌクレオチドの数としては、存在する場合は一末端当たり例えば1〜150ヌクレオチド、あるいは1〜100ヌクレオチド、あるいは1〜50ヌクレオチド、あるいは1〜30ヌクレオチド、あるいは1〜10ヌクレオチド、あるいは1〜5ヌクレオチドであってもよい。このような追加のヌクレオチドは、細胞外への分泌等のためのシグナル配列をコードしていてもよい。
【0069】
あるいは、各酵素をコードする遺伝子は、当該酵素活性を有するポリヌクレオチドをコードする既知のヌクレオチド配列(例えば、生物中に天然に存在する遺伝子のヌクレオチド配列)そのものを有するDNA、又は前記既知のヌクレオチド配列に対して80%以上、あるいは85%以上、あるいは90%以上、あるいは95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有し、所望の酵素活性(上述の酵素活性)を有する酵素をコードするDNAであってもよい。ここで、配列同一性は例えばBLAST(登録商標、National Library of Medicine)プログラムを用いてデフォールトパラメータで評価することができる。
【0070】
あるいは、各酵素をコードする遺伝子は、当該酵素活性を有するポリヌクレオチドをコードする既知のヌクレオチド配列(例えば、生物中に天然に存在する遺伝子のヌクレオチド配列)そのものを有するDNA、又は前記既知のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を有し、所望の酵素活性(上述の酵素活性)を有する酵素をコードするDNAであってもよい。また、ストリンジェントな条件でのハイブリダイゼーションとは以下のようにして行うことができる。
ハイブリダイゼーションでは、基準となるヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列又はその部分配列からなるDNAをプローブとして、対象とするDNAに対してハイブリダイゼーションを行い、ストリンジェントな条件下で洗浄後にプローブが対象とする核酸に有意にハイブリダイズしているかを確認する。プローブの長さは例えば連続した20ヌクレオチド以上、好ましくは50ヌクレオチド以上、さらに好ましくは100ヌクレオチド以上、さらに好ましくは200ヌクレオチド以上を用いることができる。基準となるヌクレオチド配列と同じヌクレオチド長を有し、全長に渡って相補的なDNAをプローブとして用いることも好ましい。ハイブリダイゼーションのための条件とは、特定のハイブリダイゼーションシグナルを検出するために当業者が一般的に用いている条件を例示できる。好ましくは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とストリンジェントな洗浄条件を意味する。例えば、6×SSC(saline sodium citrate)(1×SSCの組成:0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mlニシン精子DNAを含む溶液中でプローブとともに55℃で一晩保温するという条件等が挙げられる。ついでフィルターを0.2×SSC中42℃で洗浄するなどを例示することができる。ストリンジェントな条件としては、フィルターの洗浄工程における0.1×SSC、50℃の条件であり、更にストリンジェントな条件としては、同工程における0.1×SSC、65℃の条件を挙げることができる。
【0071】
例えば、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、例えば、配列番号7のヌクレオチド配列(Saccharomyces cerevisiaeのピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)を有するDNAであってもよいし、配列番号7のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つピリドキシンデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
あるいは、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、例えば、配列番号7のヌクレオチド配列を有するDNAであってもよいし、配列番号7のヌクレオチド配列に対してヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列の5’末端若しくは3’末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加のうち1つ以上を行ったヌクレオチド配列であって、ピリドキシンデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。ヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加の程度の例については、上記のとおりである。
あるいは、ピリドキシンデヒドロゲナーゼは、配列番号7のヌクレオチド配列を有するDNA又は配列番号7のヌクレオチド配列に対して例えば80%以上、若しくは85%以上、若しくは90%以上、若しくは95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列であって、ピリドキシンデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
【0072】
あるいは、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、例えば、配列番号8のヌクレオチド配列(Schizosaccharomyces pombeのピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)を有するDNAであってもよいし、配列番号8のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つピリドキシンデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
あるいは、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、例えば、配列番号8のヌクレオチド配列を有するDNAであってもよいし、配列番号8のヌクレオチド配列に対してヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列の5’末端若しくは3’末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加のうち1つ以上を行ったヌクレオチド配列であって、ピリドキシンデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。ヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加の程度の例については、上記のとおりである。
あるいは、ピリドキシンデヒドロゲナーゼは、配列番号8のヌクレオチド配列を有するDNA又は配列番号8のヌクレオチド配列に対して例えば80%以上、若しくは85%以上、若しくは90%以上、若しくは95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列であって、ピリドキシンデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
【0073】
あるいは、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、例えば、配列番号7及び配列番号53〜配列番号59のうちいずれかのヌクレオチド配列を有するDNAであってもよいし、配列番号7及び配列番号53〜配列番号59のうちいずれかのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つピリドキシンデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
あるいは、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、例えば、配列番号7及び配列番号53〜配列番号59のうちいずれかのヌクレオチド配列を有するDNAであってもよいし、配列番号7及び配列番号53〜配列番号59のうちいずれかのヌクレオチド配列に対してヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列の5’末端若しくは3’末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加のうち1つ以上を行ったヌクレオチド配列であって、ピリドキシンデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。ヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加の程度の例については、上記のとおりである。
あるいは、ピリドキシンデヒドロゲナーゼは、配列番号7及び配列番号53〜配列番号59のうちいずれかのヌクレオチド配列を有するDNA、又は配列番号7のヌクレオチド配列、配列番号53のヌクレオチド配列(Saccharomyces eubayanusのピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)、配列番号54のヌクレオチド配列(Torulaspora delbrueckiiのピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)、配列番号55のヌクレオチド配列(Zygosaccharomyces bailiiのピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)、配列番号57のヌクレオチド配列(Kluyveromyces marxianusのピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)、配列番号56のヌクレオチド配列(Aspergillus oryzaeのピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)、配列番号58のヌクレオチド配列(Candida albicansのピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)、及び配列番号59のヌクレオチド配列(Yarrowia lipolyticaのピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)のうち少なくとも1つに対して例えば80%以上、若しくは85%以上、若しくは90%以上、若しくは95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列であって、ピリドキシンデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
【0074】
大腸菌などの原核生物を宿主とした組換え微生物において発現させる場合、発現を容易とするためにコドンを最適化してもよい。例えば、宿主となる原核生物において各アミノ酸をコードするコドンのうち最も使用頻度が高いものを当該アミノ酸のコドンとして高い頻度で使用するようにヌクレオチド配列を改変してもよい。このような観点からは、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含むDNAとして、例えば、配列番号13及び配列番号75〜配列番号81のうちいずれかのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域を有するDNAを用いてもよいし、配列番号13及び配列番号75〜配列番号81のうちいずれかのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域と相補的なヌクレオチド配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つピリドキシンデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAを用いてもよい。配列番号13及び配列番号75〜配列番号81のヌクレオチド配列は、いずれも、その5’末端から17ヌクレオチドは上流領域となっており、18番目のヌクレオチド〜20番目のヌクレオチドに開始コドンがある。このため、これらのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域をピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子領域として用いてもよい。
あるいは、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、例えば、配列番号13及び配列番号75〜配列番号81のうちいずれかのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域を有するDNAであってもよいし、配列番号13及び配列番号75〜配列番号81のうちいずれかのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域に対してヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列の5’末端若しくは3’末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加のうち1つ以上を行ったヌクレオチド配列であって、ピリドキシンデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。ヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加の程度の例については、上記のとおりである。
あるいは、ピリドキシンデヒドロゲナーゼは、配列番号13及び配列番号75〜配列番号81のうちいずれかのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域を有するDNA、又は配列番号13のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Saccharomyces cerevisiaeのピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号75のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Saccharomyces eubayanusのピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号76のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Torulaspora delbrueckiiのピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号77のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Zygosaccharomyces bailiiのピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号79のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Kluyveromyces marxianusのピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号78のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Aspergillus oryzaeのピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号80のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Candida albicansのピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、及び配列番号81のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Yarrowia lipolyticaのピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)のうち少なくとも1つに対して例えば80%以上、若しくは85%以上、若しくは90%以上、若しくは95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列であって、ピリドキシンデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
【0075】
ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子は、例えば、配列番号9のヌクレオチド配列(Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)を有するDNAであってもよいし、配列番号9のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つピリドキサミン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
あるいは、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子は、例えば、配列番号9のヌクレオチド配列を有するDNAであってもよいし、配列番号9のヌクレオチド配列に対してヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列の5’末端若しくは3’末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加のうち1つ以上を行ったヌクレオチド配列であって、ピリドキサミン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。ヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加の程度の例については、上記のとおりである。
あるいは、ピリドキサミン合成酵素は、配列番号9のヌクレオチド配列を有するDNA又は配列番号9のヌクレオチド配列に対して例えば80%以上、若しくは85%以上、若しくは90%以上、若しくは95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列であって、ピリドキサミン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
【0076】
あるいは、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子は、例えば、配列番号10のヌクレオチド配列(Escherichia coliのピリドキサミン−オキサロ酢酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)を有するDNAであってもよいし、配列番号10のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つピリドキサミン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
あるいは、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子は、例えば、配列番号10のヌクレオチド配列を有するDNAであってもよいし、配列番号10のヌクレオチド配列に対してヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列の5’末端若しくは3’末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加のうち1つ以上を行ったヌクレオチド配列であって、ピリドキサミン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。ヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加の程度の例については、上記のとおりである。
あるいは、ピリドキサミン合成酵素は、配列番号10のヌクレオチド配列を有するDNA又は配列番号10のヌクレオチド配列に対して例えば80%以上、若しくは85%以上、若しくは90%以上、若しくは95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列であって、ピリドキサミン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
【0077】
あるいは、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子は、例えば、配列番号9及び配列番号60〜配列番号66のうちいずれかのヌクレオチド配列を有するDNAであってもよいし、配列番号9及び配列番号60〜配列番号66のうちいずれかのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つピリドキサミン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
あるいは、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子は、例えば、配列番号9及び配列番号60〜配列番号66のうちいずれかのヌクレオチド配列を有するDNAであってもよいし、配列番号9及び配列番号60〜配列番号66のうちいずれかのヌクレオチド配列に対してヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列の5’末端若しくは3’末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加のうち1つ以上を行ったヌクレオチド配列であって、ピリドキサミン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。ヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加の程度の例については、上記のとおりである。
あるいは、ピリドキサミン合成酵素は、配列番号9及び配列番号60〜配列番号66のうちいずれかのヌクレオチド配列を有するDNA、又は配列番号9のヌクレオチド配列、配列番号60(Mesorhizobium sp. YR577のピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)のヌクレオチド配列、配列番号61(Pseudaminobacter salicylatoxidansのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)のヌクレオチド配列、配列番号62(Bauldia litoralisのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)のヌクレオチド配列、配列番号63(Skermanella stibiiresistensのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)のヌクレオチド配列、配列番号64(Rhizobium sp. AC44/96のピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)のヌクレオチド配列、配列番号65(Erwinia toletanaのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)のヌクレオチド配列、及び配列番号66(Herbiconiux ginsengiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)のヌクレオチド配列のうち少なくとも1つに対して例えば80%以上、若しくは85%以上、若しくは90%以上、若しくは95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列であって、ピリドキサミン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
【0078】
大腸菌などの原核生物を宿主とした組換え微生物において発現させる場合、発現を容易とするために上記のようにコドンを最適化してもよい。このような観点からは、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子を含むDNAとして、例えば、配列番号14のヌクレオチド配列における18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域又は配列番号82〜配列番号88のうちいずれかのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域を有するDNAを用いてもよいし、配列番号14のヌクレオチド配列における18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域又は配列番号82〜配列番号88のうちいずれかのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域と相補的なヌクレオチド配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つピリドキサミン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAを用いてもよい。配列番号14のヌクレオチド配列は、その5’末端から17ヌクレオチドは上流領域となっており、18番目のヌクレオチド〜20番目のヌクレオチドに開始コドンがある。このため、これのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域をピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子領域として用いてもよい。同様に、配列番号82〜配列番号88のヌクレオチド配列は、いずれも、その5’末端から17ヌクレオチドは上流領域となっており、18番目のヌクレオチド〜20番目のヌクレオチドに開始コドンがある。このため、これらのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域をピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子領域として用いてもよい。
あるいは、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子は、例えば、配列番号14のヌクレオチド配列における18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域又は配列番号82〜配列番号88のうちいずれかのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域を有するDNAであってもよいし、配列番号14のヌクレオチド配列における18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域又は配列番号82〜配列番号88のうちいずれかのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域に対してヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列の5’末端若しくは3’末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加のうち1つ以上を行ったヌクレオチド配列であって、ピリドキサミン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。ヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加の程度の例については、上記のとおりである。
【0079】
あるいは、ピリドキサミン合成酵素は、配列番号14のヌクレオチド配列における18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域若しくは配列番号82〜配列番号88のうちいずれかのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域を有するDNA、又は配列番号14のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Mesorhizobium lotiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号82のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Mesorhizobium sp. YR577のピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号83のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Pseudaminobacter salicylatoxidansのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号84のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Bauldia litoralisのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号85のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Skermanella stibiiresistensのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号86のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Rhizobium sp. AC44/96のピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号87のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Erwinia toletanaのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、及び配列番号88のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Herbiconiux ginsengiのピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)のうち少なくとも1つに対して例えば80%以上、若しくは85%以上、若しくは90%以上、若しくは95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列であって、ピリドキサミン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
【0080】
アミノ酸再生酵素をコードする遺伝子は、例えば、配列番号11のヌクレオチド配列(Shewanella sp. Ac10のアラニンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)を有するDNAであってもよいし、配列番号11のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つアラニン再生酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
あるいは、アミノ酸再生酵素をコードする遺伝子は、例えば、配列番号11のヌクレオチド配列を有するDNAであってもよいし、配列番号11のヌクレオチド配列に対してヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列の5’末端若しくは3’末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加のうち1つ以上を行ったヌクレオチド配列であって、アラニン再生酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。ヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加の程度の例については、上記のとおりである。
あるいは、アミノ酸再生酵素は、配列番号11のヌクレオチド配列を有するDNA又は配列番号11のヌクレオチド配列に対して例えば80%以上、若しくは85%以上、若しくは90%以上、若しくは95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列であって、アラニン再生酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
【0081】
あるいは、アミノ酸再生酵素をコードする遺伝子は、例えば、配列番号12のヌクレオチド配列(Escherichia coliのグルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)を有するDNAであってもよいし、配列番号12のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つグルタミン酸再生酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
あるいは、アミノ酸再生酵素をコードする遺伝子は、例えば、配列番号12のヌクレオチド配列を有するDNAであってもよいし、配列番号12のヌクレオチド配列に対してヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列の5’末端若しくは3’末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加のうち1つ以上を行ったヌクレオチド配列であって、グルタミン酸再生酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。ヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加の程度の例については、上記のとおりである。
あるいは、アミノ酸再生酵素は、配列番号12のヌクレオチド配列を有するDNA又は配列番号12のヌクレオチド配列に対して例えば80%以上、若しくは85%以上、若しくは90%以上、若しくは95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列であって、グルタミン酸再生酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
【0082】
アミノ酸再生酵素をコードする遺伝子は、例えば、配列番号11及び配列番号67〜配列番号74のうちいずれかのヌクレオチド配列を有するDNAであってもよいし、配列番号11及び配列番号67〜配列番号74のうちいずれかのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つアラニン再生酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
あるいは、アミノ酸再生酵素をコードする遺伝子は、例えば、配列番号11及び配列番号67〜配列番号74のうちいずれかのヌクレオチド配列を有するDNAであってもよいし、配列番号11及び配列番号67〜配列番号74のうちいずれかのヌクレオチド配列に対してヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列の5’末端若しくは3’末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加のうち1つ以上を行ったヌクレオチド配列であって、アラニン再生酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。ヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加の程度の例については、上記のとおりである。
あるいは、アミノ酸再生酵素は、配列番号11及び配列番号67〜配列番号74のうちいずれかのヌクレオチド配列を有するDNA、又は配列番号11のヌクレオチド配列、配列番号67のヌクレオチド配列(Aeromonas hydrophilaのアラニンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)、配列番号68のヌクレオチド配列(Rhizobium sp. LPU83のアラニンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)、配列番号69のヌクレオチド配列(Pseudomonas mendocinaのアラニンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)、配列番号70のヌクレオチド配列(Bradyrhizobium japonicumのアラニンデヒドロゲナーゼのうちの一つをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)、配列番号71のヌクレオチド配列(Bradyrhizobium japonicumのアラニンデヒドロゲナーゼのうちの別の一つをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)、配列番号72のヌクレオチド配列(Streptomyces aureofaciensのアラニンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)、配列番号73のヌクレオチド配列(Anabaena cylindricaのアラニンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)、及び配列番号74のヌクレオチド配列(Bacillus subtilisのアラニンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列)のうち少なくとも1つに対して例えば80%以上、若しくは85%以上、若しくは90%以上、若しくは95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列であって、アラニン再生酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
【0083】
大腸菌などの原核生物を宿主とした組換え微生物において発現させる場合、発現を容易とするために上記のようにコドンを最適化してもよい。このような観点からは、アミノ酸再生酵素をコードする遺伝子を含むDNAとして、例えば、配列番号15及び配列番号89〜配列番号96のうちいずれかのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域を有するDNAを用いてもよいし、配列番号15及び配列番号89〜配列番号96のうちいずれかのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域と相補的なヌクレオチド配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つアラニン再生酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAを用いてもよい。配列番号15及び配列番号89〜配列番号96のヌクレオチド配列は、いずれも、その5’末端から17ヌクレオチドは上流領域となっており、18番目のヌクレオチド〜20番目のヌクレオチドに開始コドンがある。このため、これらのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域をアラニン再生酵素をコードする遺伝子領域として用いてもよい。
あるいは、アミノ酸再生酵素をコードする遺伝子は、例えば、配列番号15及び配列番号89〜配列番号96のうちいずれかのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域を有するDNAであってもよいし、配列番号15及び配列番号89〜配列番号96のうちいずれかのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域に対してヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列の5’末端若しくは3’末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加のうち1つ以上を行ったヌクレオチド配列であって、アラニン再生酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。ヌクレオチドの置換、欠失、挿入及びヌクレオチド配列のN末端若しくはC末端若しくはその両方への追加のヌクレオチドの付加の程度の例については、上記のとおりである。
あるいは、アミノ酸再生酵素は、配列番号15及び配列番号89〜配列番号96のうちいずれかのヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域を有するDNA、又は配列番号15のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Shewanella sp. AC10のアラニンデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列に対してD198Aのアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号89のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Aeromonas hydrophilaのアラニンデヒドロゲナーゼにNADP
+対応アミノ酸置換を行ったアミノ酸配列をコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号90のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Rhizobium sp. LPU83のアラニンデヒドロゲナーゼにNADP
+対応アミノ酸置換を行ったアミノ酸配列をコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号91のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Pseudomonas mendocinaのアラニンデヒドロゲナーゼにNADP
+対応アミノ酸置換を行ったアミノ酸配列をコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号92のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Bradyrhizobium japonicumのアラニンデヒドロゲナーゼのうちの一つにNADP
+対応アミノ酸置換を行ったアミノ酸配列をコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号93のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Bradyrhizobium japonicumのアラニンデヒドロゲナーゼのうちの別の一つにNADP
+対応アミノ酸置換を行ったアミノ酸配列をコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号94のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Streptomyces aureofaciensのアラニンデヒドロゲナーゼにNADP
+対応アミノ酸置換を行ったアミノ酸配列をコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、配列番号95のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Anabaena cylindricaのアラニンデヒドロゲナーゼにNADP
+対応アミノ酸置換を行ったアミノ酸配列をコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)、及び配列番号96のヌクレオチド配列の18番目のヌクレオチド〜3’末端までの領域(Bacillus subtilisのアラニンデヒドロゲナーゼにNADP
+対応アミノ酸置換を行ったアミノ酸配列をコードする遺伝子のコドン最適化ヌクレオチド配列)のうち少なくとも1つに対して例えば80%以上、若しくは85%以上、若しくは90%以上、若しくは95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列であって、アラニン再生酵素活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するDNAであってもよい。
【0084】
<ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子、及びアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子を有する組換え微生物>
本開示に係る組換え微生物内において、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子、及び該ピリドキサミン合成酵素が消費するアミノ酸を再生する酵素活性を有するアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子の各々は、菌体に内在する遺伝子であってもよいし、菌体に内在するがその発現を強化した遺伝子であってもよいし、菌体外から菌体内へと導入された遺伝子であってもよい。ただし、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子、及び該ピリドキサミン合成酵素が消費するアミノ酸を再生する酵素活性を有するアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子のうち少なくとも2つは菌体外から導入された遺伝子であるか又は菌体に内在するがその発現が強化された遺伝子である。
言い換えると、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子、及び該ピリドキサミン合成酵素が消費するアミノ酸を再生する酵素活性を有するアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子の各々は、組換え前の宿主微生物のゲノムに内在する遺伝子であってもよいし、宿主微生物のゲノムに内在するがプロモーターの置換等の操作を行うことによってその発現を強化した遺伝子であってもよいし、プラスミド等のベクターを用いて菌体外から菌体内へと導入された遺伝子であってもよい。第1の態様においては、前記3種類の酵素の組み合わせによるピリドキサミン生産能力を発揮すると共に、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子、及び該ピリドキサミン合成酵素が消費するアミノ酸を再生する酵素活性を有するアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子のうち少なくとも2つについて、それぞれ、宿主微生物の細胞外から導入するか、あるいはプロモーターの置換等によって宿主微生物の細胞に内在する当該遺伝子の発現を強化することによって、当該遺伝子の発現を上昇させ、前記3種類の酵素の組み合わせによるピリドキサミン生産能力をさらに増強している。ここで、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子、及び該ピリドキサミン合成酵素が消費するアミノ酸を再生する酵素活性を有するアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子の各々については、導入又は発現強化を行う場合には、宿主微生物の細胞外からの導入と、プロモーターの置換等による当該遺伝子発現の強化のうち、一方のみを行ってもよいし、両方を行ってもよい。
【0085】
ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子、及び該ピリドキサミン合成酵素が消費するアミノ酸を再生する酵素活性を有するアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子のうち少なくとも2つについて、上記のような遺伝子発現の上昇を行わなければ、ピリドキサミン又はその塩の高生産のための十分な生産能力は得られない。なお、ここでいうアミノ酸再生酵素とは、ピリドキサミン合成酵素が消費する特定のアミノ酸種を再生する酵素活性を有するアミノ酸再生酵素のことを指すため、ピリドキサミン合成酵素とアミノ酸再生酵素とは一種のペアともとらえることが可能である。ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子、及び該ピリドキサミン合成酵素が消費するアミノ酸を再生する酵素活性を有するアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子のうち少なくとも2つについて、上記のような遺伝子発現の上昇が行われることから、組換え微生物の菌体内には上記のペアが存在し、且つ上記のペアのうち少なくとも一方については遺伝子発現の上昇が行われていることになる。
【0086】
菌体外からの導入及び菌体に内在する遺伝子の発現強化のうちの少なくとも一方を行う対象は、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子、及び該ピリドキサミン合成酵素が消費するアミノ酸を再生する酵素活性を有するアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子のうち2つだけであっても構わない。ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子、及び前記ピリドキサミン合成酵素が消費するアミノ酸を再生する酵素活性を有するアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子のうち2つについて、それぞれ、菌体外からの導入及び菌体に内在する遺伝子の発現強化のうち少なくとも一方を行う場合には、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子及びピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子について、それぞれ、菌体外からの導入及び菌体に内在する遺伝子の発現強化のうち少なくとも一方を行ってもよいし、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子及びアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子について、それぞれ、菌体外からの導入及び菌体に内在する遺伝子の発現強化のうち少なくとも一方を行ってもよいし、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子及びアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子について、それぞれ、菌体外からの導入及び菌体に内在する遺伝子の発現強化のうち少なくとも一方を行ってもよい。
【0087】
ピリドキサミン又はその塩の生産における生産効率向上の観点からは、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子、及びアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子のうち全てについて、それぞれ、菌体外からの導入及び菌体に内在する遺伝子の発現強化のうち少なくとも一方を行うことが好ましい。少なくともアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子については、菌体外からの導入及び菌体に内在する遺伝子の発現強化のうち少なくとも一方を行うことが、ピリドキサミン又はその塩の生産効率向上の観点から好ましい。なお、菌体外からの酵素遺伝子の導入は、必ずしも、宿主微生物に存在しない酵素遺伝子を補うための導入に限られず、宿主微生物に内在する酵素遺伝子についても発現を増大させることを目的に行ってもよい。宿主微生物に存在しない酵素遺伝子については、例えばKEGGやBRENDAといった酵素データベースを用いて容易に確認することができる。
【0088】
宿主微生物に内在する遺伝子のプロモーターを別のプロモーターで置換することによって当該遺伝子の発現を強化する場合、そのような別のプロモーター(新たに導入するプロモーター)としては宿主微生物中で遺伝子の発現を強化できる(プロモーター置換前よりも強化することができる)ものであれば特に制限はなく、構成型プロモーターでも誘導型プロモーターでもよい。プロモーターの置換は、一般的な遺伝子組換え技術を用いて行うことができる。なお、宿主微生物に内在するプロモーターの配列は、新たに導入したプロモーターによる発現に実用上問題となる悪影響を与えなければ、部分的に又は完全に残しておいても構わない。
宿主微生物が例えば原核生物である場合には、新たに導入するプロモーターとして使用可能なプロモーターの例としては、大腸菌由来のtrpプロモーター、lacプロモーター、GAPDHプロモーター、ラムダファージ由来のPLプロモーター及びPRプロモーターや、枯草菌由来のグルコン酸合成酵素プロモーター(gnt)、アルカリプロテアーゼプロモーター(apr)、中性プロテアーゼプロモーター(npr)、α−アミラーゼプロモーター(amy)等が挙げられる。また、tacプロモーターのように独自に改変又は設計されたプロモーター配列も利用できる。
【0089】
宿主微生物が例えば糸状菌である場合には、新たに導入するプロモーターとして使用可能なプロモーターの例としては、セロビオヒドロラーゼ(cbh)プロモーター、エンドグルカナーゼ(egl)プロモーター、キシラナーゼIII(xyn3)プロモーター、U6プロモーター、α−アミラーゼ(amy)プロモーター、などが挙げられる。
【0090】
宿主微生物が例えば酵母である場合には、新たに導入するプロモーターとして使用可能なプロモーターの例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH1)プロモーター、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK1)プロモーター、ペプチド鎖伸長因子(TEF)プロモーター、グリセロール3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GPD)プロモーター、ガラクトキナーゼ(GAL1)プロモーター、メタロチオネイン(CUP1)プロモーター、抑制性酸性ホスファターゼ(PHO5)プロモーター、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)プロモーターなどが挙げられる。なお、上記プロモーターの配列の由来は宿主微生物となる酵母に限定されない。サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターなどのように、外来のプロモーターを用いてもよい。
【0091】
宿主微生物の菌体外から遺伝子(外来(heterogenous)遺伝子)を導入する場合には、その方法としては、菌体内(細胞内)に遺伝子を導入し、該遺伝子にコードされる酵素を発現させることができれば、特に制限はなく、酵素遺伝子を保有するプラスミドによる形質転換、酵素遺伝子のゲノムへの導入、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。遺伝子を導入する際には、該遺伝子を組み込んだ発現ベクターを菌体内に導入してもよい。該発現ベクターは、前記遺伝子のヌクレオチド配列を組み込んだものであれば特に限定されるものではないが、形質転換効率や翻訳効率を向上させるなどの観点より、以下に示すような構成を示すプラスミドベクターやファージベクターであることがより好ましい。
【0092】
発現ベクターは、前記遺伝子のヌクレオチド配列を含み、前記宿主微生物を形質転換しうるものであれば特に限定されない。必要に応じて、該ヌクレオチド配列の他に、他の領域を構成するヌクレオチド配列(以下、単に「他の領域」とも言う。)を含んでいてもよい。他の領域としては、例えば、形質転換によって得られる組換え微生物が、所望の酵素を産生するために必要とする制御領域や、自律複製に必要な領域などが挙げられる。
また、前記組換え微生物の選択を容易にするという観点より、選択マーカーとなりうる選択遺伝子をコードするヌクレオチド配列をさらに含んでいてもよい。
所望の酵素を産生するために必要となる制御領域としては、プロモーター配列(転写を制御するオペレーター配列を含む。)、リボゾーム結合配列(SD配列)、転写終結配列等を挙げることができる。
【0093】
酵母を宿主微生物とした場合に使用可能な発現ベクターは、前記遺伝子のヌクレオチド配列の他に、前記遺伝子の発現効率の観点より、プロモーター配列を含んでいることが好ましい。プロモーター配列としては、酵母を宿主微生物とする形質転換体中で前記遺伝子を発現できるものであればいずれを用いてもよい。例としては、宿主微生物が酵母である場合に新たに導入するプロモーターとして使用可能なプロモーターの例として上に記載したプロモーターが挙げられる。
【0094】
また、前記発現ベクターは、分泌シグナルを含んでいてもよい。これにより、組換え微生物が所望の酵素を産生した場合、細胞外に該酵素を分泌することが可能となる。
分泌シグナルとしては、宿主微生物となる酵母から所望の酵素を分泌できるものであれば、特に限定されない。分泌効率の観点より、αファクターシグナル配列、インベルターゼシグナル配列、酸ホスファターシグナル配列、グルコアミラーゼシグナル配列などを用いることが好ましい。
【0095】
以上のようなプロモーター配列や分泌シグナルを有する発現ベクターとしては、具体的にはpRS423、pRS424、YEplac195等が挙げられる。
【0096】
糸状菌を宿主微生物とした場合に使用可能な発現ベクターは、前記遺伝子のヌクレオチド配列の他に、前記遺伝子の発現効率の観点より、プロモーター配列を含んでいることが好ましい。プロモーター配列としては、糸状菌を宿主微生物とする形質転換体中で前記遺伝子を発現できるものであればいずれを用いてもよい。例としては、宿主微生物が糸状菌である場合に新たに導入するプロモーターとして使用可能なプロモーターの例として上に記載したプロモーターが挙げられる。
【0097】
糸状菌に対して適切な発現ベクターは、van den Hondel,C.A.M. J.J.et al.(1991)In:Bennett,J.W.and Lasure, L.L.(eds.)More gene Manipulations in Fungi.Academic Press,pp.396−428に記載されている。
また、pUC18、pBR322,pUC100、pSL1180(ファルマシア インク社製)、pFB6及びアスペルギルス(Aspergillus)pRAX、トリコデルマ(Trichoderma)pTEX等のような一般的に用いられる他の発現ベクターを用いることもできる。
【0098】
大腸菌、枯草菌、放線菌などの原核生物を宿主微生物とする場合に使用可能な発現ベクターは、前記遺伝子のヌクレオチド配列の他に、前記遺伝子の発現効率の観点より、プロモーター配列を含んでいることが好ましい。また、プロモーター配列の他にリボゾーム結合配列や転写終結配列等を含んでいてもよい。
【0099】
プロモーター配列の例としては、宿主微生物が原核生物である場合に新たに導入するプロモーターとして使用可能なプロモーターの例として上に記載したプロモーターが挙げられる。
【0100】
リボゾーム結合配列としては、大腸菌由来又は枯草菌由来の配列が挙げられるが、大腸菌や枯草菌等の所望の宿主微生物内で機能する配列であれば特に限定されるものではない。
前記リボゾーム結合配列としては、例えば、16SリボゾームRNAの3’末端領域に相補的な配列のうち、4ヌクレオチド以上連続したコンセンサス配列をDNA合成により作成した配列などが挙げられる。
転写終結配列は必ずしも必要ではないが、ρ因子非依存性のもの、例えばリポプロテインターミネーター、trpオペロンターミネーター等が利用できる。
これら制御領域の発現ベクター上での配列順序は、特に制限されるものではないが、転写効率を考慮すると5’末端側上流からプロモーター配列、リボゾーム結合配列、目的酵素をコードする遺伝子、転写終結配列の順に並ぶことが望ましい。
【0101】
宿主微生物が原核生物である場合に使用可能な発現ベクターの具体例としては、大腸菌中での自律複製可能な領域を有しているpBR322、pUC18、Bluescript II SK(+)、pKK223−3、pSC101や、枯草菌中での自律複製可能な領域を有しているpUB110、pTZ4、pC194、ρ11、φ1、φ105等が挙げられる。
また、2種類以上の宿主微生物内での自律複製が可能な発現ベクターの例として、pHV14、TRp7、YEp7及びpBS7等を発現ベクターとして利用することができる。
【0102】
なお、宿主微生物の菌体外から遺伝子を導入する場合には、当該遺伝子は宿主微生物のゲノム中には存在しないヌクレオチド配列を有する遺伝子であってもよいが、宿主微生物のゲノム中に存在するヌクレオチド配列を有する遺伝子であってもかまわない。たとえ、宿主微生物のゲノム中に元々同じ遺伝子が存在していたとしても、菌体外からの遺伝子の導入によりより強い遺伝子発現が得られ、増強された酵素活性によって、ピリドキサミン又はその塩の生産効率をさらに向上することができる。
【0103】
菌体外(細胞外)から菌体内(細胞内)へ遺伝子を導入する際に必要なゲノムDNAの調製、DNAの切断及び連結、形質転換、PCR(Polymerase Chain Reaction)、プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの設計、合成等の方法は、当業者によく知られている通常の方法で行うことができる。これらの方法は、Sambrook, J., et al., ”Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition”, Cold Spring Harbor Laboratory Press,(1989)などに記載されている。例えば、コンピテントセルを用いる方法や、エレクトロポレーションを用いる方法が挙げられる。
【0104】
宿主微生物としては、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子、及びアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子が存在する場合にこれらを発現可能な微生物であれば、特に限定されない。宿主微生物の例としては、酵母、糸状菌、及び原核生物が挙げられる。酵母の例としては、Saccharomyces cerevisiae等のサッカロミセス(Saccharomyces)属の酵母、Schizosaccharomyces pombe等のシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属の酵母、ハンゼヌラ(Hansenula)属の酵母、及びピキア(Pichia)属の酵母、が挙げられる。糸状菌の例としては、Trichoderma reesei若しくはviride等のトリコデルマ(Trichoderma)属糸状菌、Aspergillus niger若しくはoryzae等のアスペルギルス(Aspergillus)属糸状菌、Humicola insolens等のフミコラ(Humicola)属糸状菌、及びAcremonium cellulolyticus若しくはfusidioides等のアクレモニウム(Acremonium)属の糸状菌、が挙げられる。また、原核生物の例としては、Escherichia coli等のエシェリヒア(Escherichia)属細菌、Schewanella sp.AC10等のシェワネラ(Schewanella)属細菌、Mesorhizobium loti等のメゾリゾビウム(Mesorhizobium)属細菌、Rhizobium meliloti等のリゾビウム(Rhizobium)属細菌、Bacillus subtilis等のバチルス(Bacillus)属枯草菌等の枯草菌、Streptomyces lividans等のストレプトマイセス(Streptomyces)属放線菌等の放線菌が挙げられる。
【0105】
これらの宿主微生物中に、例えば所望の遺伝子を含む発現ベクターを導入する(形質転換する)ことによって、所望の遺伝子を宿主微生物中に導入することができる。そして、導入された遺伝子は、例えば発現ベクター中に含まれたプロモーターの活性により、得られた組換え微生物中で高発現させることが可能である。
【0106】
宿主微生物の細胞に発現ベクター等の組換えDNAを移入する方法としては、例えば宿主微生物が大腸菌の場合には、カルシウム処理によるコンピテントセル法やエレクトロポレーション法などが用いることができる。このようにして得られた組換え微生物は、培養されることにより、導入された遺伝子がコードする酵素を高い発現量で安定に生産することができる。
また、これらの酵素をコードするDNAは、組換え微生物から取り出すことができ、他の微生物に移入させることも可能である。また、このDNAを鋳型として用いて、PCRにより酵素をコードするDNA断片を増幅し、制限酵素等で処理した後、他のベクターDNA断片と結合させ、宿主微生物に新たに導入することも容易に実施できる。
【0107】
<ピリドキサミン又はその塩の製造方法>
一実施形態においては、ピリドキサミン又はその塩の製造方法は、第1の態様に係る組換え微生物、前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物と、ピリドキシン又はその塩とを接触させて、ピリドキサミン又はその塩を生産させることを含む。
ピリドキシンの塩の例としては、ピリドキシンと酸との塩が挙げられる。酸の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。ピリドキシンの塩は、例えばピリドキシン塩酸塩である。
【0108】
ピリドキサミンの塩の例としては、ピリドキサミンと酸との塩が挙げられる。酸の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸、などが挙げられる。医薬としての使用の観点からは、ピリドキサミンの塩は、医薬用途への応用が最も進んでいるピリドキサミン二塩酸塩であることが好ましい。
なお、このような組換え微生物、前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物を用いるピリドキサミン又はその塩の製造方法のことを、単に「組換え微生物を用いたピリドキサミン又はその塩の製造方法」とも称する。
【0109】
組換え微生物の培養物とは、組換え微生物を培養して得られる、菌体と周囲の培地等からなる産物を指す。培養物は使用しなくともよく、例えば、予め調製された乾燥若しくは凍結させた組換え微生物の細胞を、直接反応系に添加してもよい。
【0110】
組換え微生物の培養の際には、培地としては、炭素源、窒素源、無機物及びその他の栄養素を適量含有する培地ならば、合成培地又は天然培地のいずれでも使用できる。培養は前記培養成分を含有する液体培地中で、振とう培養、通気攪拌培養、連続培養又は流加培養などの通常の培養方法を用いて行うことができる。
【0111】
より具体的には、前記組換え微生物の培養の条件は、元々の宿主微生物の培養条件と同様であり、公知の条件を用いることができる。
培地に使用する成分としては、公知のものを用いることができる。例えば、肉エキス、酵母エキス、麦芽エキス、ペプトン、NZアミン及びジャガイモ等の有機栄養源、グルコース、マルトース、しょ糖、デンプン及び有機酸等の炭素源、硫酸アンモニウム、尿素及び塩化アンモニウム等の窒素源、リン酸塩、マグネシウム、カリウム及び鉄等の無機栄養源、ビタミン類を適宜組み合わせて使用できる。
なお、前記選択マーカーを含む発現ベクターにより形質転換した組換え微生物の培養においては、例えば、前記選択マーカーが薬剤耐性である場合には、それに対応する薬剤を含む培地を使用し、前記選択マーカーが栄養要求性である場合には、それに対応する栄養素を含まない培地を使用する。
【0112】
培養条件は、前記組換え微生物、培地、培養方法の種類により適宜選択すればよく、組換え微生物が生育し、ピリドキシンデヒドロゲナーゼ、ピリドキサミン合成酵素、及びアミノ酸再生酵素を産生できる条件であれば特に制限はない。
培地のpHは、例えば4〜8の範囲で選べばよく、5〜8の範囲であってもよい。
培養温度は例えば20℃〜45℃であり、好ましくは24℃〜37℃である。培養は、微生物の種類に応じて、好気的に行ってもよいし、嫌気的に行ってもよい。
培養期間は例えば1日間〜7日間である。培養期間は、目的の酵素の産生量が最大になるように設定してもよい。
【0113】
また、前記組換え微生物の処理物とは、組換え微生物が産生するピリドキシンデヒドロゲナーゼ、ピリドキサミン合成酵素、及びアミノ酸再生酵素の活性を失わない範囲で、組換え微生物に対して任意の処理を行った産物を指す。このような処理としては、例えば、加熱処理、冷却処理、機械的破壊、超音波処理、凍結融解処理、乾燥処理、加圧又は減圧処理、浸透圧処理、自己消化、界面活性剤処理及び酵素処理(例えば細胞溶解処理)からなる群から選択される1つ以上を含む処理などが挙げられる。たとえ、このような処理によって組換え微生物自体が死滅したとしても、当該微生物が産生した酵素の活性が残存していれば、反応に用いることが可能である。
【0114】
前記培養物の処理物とは、組換え微生物が産生するピリドキシンデヒドロゲナーゼ、ピリドキサミン合成酵素、及びアミノ酸再生酵素の活性を失わない範囲で、組換え微生物の培養物に対して任意の処理を行った産物を指す。このような処理としては、加熱処理、冷却処理、細胞の機械的破壊、超音波処理、凍結融解処理、乾燥処理、加圧又は減圧処理、浸透圧処理、細胞の自己消化、界面活性剤処理、酵素処理(例えば細胞破壊処理)、細胞分離処理、精製処理及び抽出処理からなる群から選択される1つ以上を含む処理が挙げられる。例えば、組換え微生物の細胞を培地等から分離して、分離された細胞を反応系に添加してもよい。このような分離には、濾過又は遠心分離などの手段が使用可能である。あるいは、ピリドキシンデヒドロゲナーゼ、ピリドキサミン合成酵素、及びアミノ酸再生酵素を夾雑物から分離するための精製処理を行い、該精製処理により得られた酵素を含む溶液を反応系に添加してもよい。あるいは、培養物を、メタノールやアセトニトリル等の有機溶媒又は有機溶媒と水との混合溶媒を用いて抽出した抽出物を反応系に添加してもよい。このような精製物又は抽出物は、組換え微生物の細胞を含まないものであってもよい。当該微生物の細胞が存在しなくても、酵素の活性が残存していれば、反応に用いることが可能である。
【0115】
上記のような細胞の破砕あるいは溶解処理は、リゾチーム処理、凍結融解、超音波破砕などの公知の方法に従い組換え微生物の細胞膜を破壊することにより、行うことができる。
【0116】
第1の態様に係る組換え微生物、前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物と、ピリドキシン又はその塩との接触は、以下のような条件で行うことが好ましい。
接触は基質としてのピリドキシン又はその塩を含む溶液中で行うことが好ましい。溶液のpHは、ピリドキシンデヒドロゲナーゼ、ピリドキサミン合成酵素、及びアミノ酸再生酵素の酵素活性が維持される限りは特に制限されないが、6.0〜9.0であることが好ましく、7.0〜8.5であることがより好ましい。溶液の温度も、溶液のpHは、ピリドキシンデヒドロゲナーゼ、ピリドキサミン合成酵素、及びアミノ酸再生酵素の酵素活性が維持される限りは特に制限されないが、20〜70℃であることが好ましく、25℃〜50℃であることがより好ましい。
溶液の媒体としては、水若しくは水性媒体、有機溶媒又は水若しくは水性媒体と有機溶媒の混合液が用いられる。水性媒体としては、例えばリン酸緩衝液、HEPES(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N−エタンスルホン酸)緩衝液、トリス[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]塩酸緩衝液等の緩衝液が用いられる。有機溶媒としては反応を阻害しないものであればいずれでもよく、例えばアセトン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、キシレン、メタノール、エタノール、ブタノール等が用いられる。
【0117】
第1の態様に係る組換え微生物、前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物と、ピリドキシン又はその塩との接触は、振盪若しくは攪拌下で行うのが好ましい。例えば、このような接触は溶液中で行うことができる。例えば、前記組換え微生物、前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物を含む溶液に、ピリドキシン又はその塩を基質溶液の形態であるいは固体の形態で添加してもよい。また、前記組換え微生物、前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物を含む溶液には、ピリドキサミン合成酵素によって消費されるアミノ酸をさらに添加してもよい。前記アミノ酸は、ピリドキシン又はその塩を基質溶液に含まれていてピリドキシン又はその塩と共に、前記組換え微生物、前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物を含む溶液に添加されてもよい。また、ピリドキシン又はその塩を基質溶液とは別の基質溶液に含まれて、あるいは固体の形態で、前記組換え微生物、前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物を含む溶液に添加されてもよい。
【0118】
反応開始時若しくは反応途中において、反応液のpHを適切な範囲に維持するため、酸やアルカリを添加してもよい。反応溶液に添加可能なアルカリの例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の他、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、リン酸二カリウム、リン酸二ナトリウム、ピロリン酸カリウム、アンモニアなど水に溶解して、液性を塩基性とするものが挙げられる。反応溶液に添加可能な酸の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸などが挙げられる。
【0119】
上記接触は、例えば、空気雰囲気下で行ってもよく、脱酸素雰囲気下で行ってもよい。脱酸素雰囲気は、不活性ガスによる置換、減圧、沸騰やこれらを組み合わせることにより達成できる。少なくとも、不活性ガスによる置換、即ち、不活性ガス雰囲気を用いるのが好適である。上記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、炭酸ガス等を挙げることができ、好ましくは窒素ガスである。
【0120】
好ましい実施形態では、使用される、組換え微生物、前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物は、前記ピリドキシンデヒドロゲナーゼ、前記ピリドキサミン合成酵素、及び前記ピリドキサミン合成酵素が消費するアミノ酸を再生する酵素活性を有するアミノ酸再生酵素を含んでいる。このため、前記接触により、反応溶液中に共に存在している前記ピリドキシンデヒドロゲナーゼ、前記ピリドキサミン合成酵素、及び前記ピリドキサミン合成酵素が消費するアミノ酸を再生する酵素活性を有するアミノ酸再生酵素が協働的に作用し、ピリドキサミン又はその塩を高い生産効率で生産する。なお、前記組換え微生物の処理物若しくは前記培養物の処理物が生きた状態の前記組換え微生物を含んでいることは必須ではないが、反応に関与する物質を代謝により継続的に供給することができるという観点からは、生きた状態の前記組換え微生物を含むことが好ましい。
【0121】
組換え微生物、前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物の添加時期は、反応開始時に一括で添加しても構わないし、反応中に分割して又は連続して添加しても構わない。同様に、原料となるピリドキサミンも、反応開始時に一括で添加しても構わないし、反応中に分割して又は連続して添加しても構わない。
【0122】
反応溶液は、ピリドキサミン合成酵素によりピリドキサミン又はその塩を生成する際に消費されるアミノ酸を含んでいてもよい。このアミノ酸も、反応開始時に一括で添加しても構わないし、反応中に分割して又は連続して添加しても構わない。例えば、ピリドキサミン合成酵素としてピリドキサミン−ピルビン酸トランスアミナーゼを用いる場合には、反応溶液はL−アラニン又はD−アラニンを含んでいてもよい。また、ピリドキサミン合成酵素としてピリドキサミン−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ又はアスパラギン酸トランスアミナーゼを用いる場合には、反応溶液はL−アスパラギン酸、D−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、及びD−グルタミン酸のうち少なくとも1つを含んでいてもよい。なお、アミノ酸は周囲の環境によって塩としても存在しうるが、本明細書においては、これらも含めてアミノ酸として記載している例えばL−グルタミン酸との記載は塩を形成していないL−グルタミン酸だけでなく、塩を形成しているL−グルタミン酸(例えばL−グルタミン酸ナトリウム一水和物)をも包含している。塩を形成している場合の対イオンは、カチオンとしてはナトリウムイオン、カリウムイオンなどが挙げられ、アニオンとしては塩化物イオン、酢酸イオン、硝酸イオンなどが挙げられる。
【0123】
ピリドキシン又はその塩の反応溶液中における濃度は、例えば10mM〜1Mであり、あるいは50mM〜800mMであっても、あるいは70mM〜500mMでもよい。また、前記アミノ酸(ピリドキサミン合成酵素によりピリドキサミン又はその塩を生成する際に消費されるアミノ酸)の反応溶液中における濃度は、例えば0.1mM〜2Mであり、あるいは1mM〜1Mでもよく、あるいは2mM〜500mMでもよく、あるいは2mM〜400mMでもよく、あるいは5mM〜150mMでもよく、あるいは10mM〜100mMでもよい。あるいは、5mM〜800mM、10mM〜400mM、又は10mM〜200mMであってもよい。
【0124】
第1の態様に係るピリドキサミン又はその塩の製造方法においては、反応溶液中の前記アミノ酸の濃度が比較的低濃度であっても高い生産効率でピリドキサミン又はその塩の製造が可能である。このように比較的低濃度のアミノ酸濃度であっても高い生産効率でピリドキサミン又はその塩の製造が可能であることは、驚くべき効果である。これまで、ピリドキサールからのピリドキサミンの製造については、Journal of Molecular Catalysis B: Enzymatic、2010、vol. 67、p. 104-110においては比較的高濃度のグルタミン酸を用いており、国際公開第2007/142222号の実施例においては比較的高濃度のアラニン及びグルタミン酸が用いられている。ピリドキサミンはアミノ基を有しており、その提供源としてアミノ酸が消費されると考えられる。このため、Journal of Molecular Catalysis B: Enzymatic、2010、vol. 67、p. 104-110や国際公開第2007/142222号においては、アミノ酸の消費を考慮して高濃度のアミノ酸を反応溶液に含ませていると考えられる。第1の態様に係るピリドキサミン又はその塩の製造方法において、上記のような効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、第1の態様に係る組換え微生物においては、アミノ酸再生酵素の存在により、アミノ酸を再生できるため、高濃度のアミノ酸が存在しなくても、ピリドキサミン又はその塩の生産が停止せず、高い生産効率での生産が可能になっていると考えられる。この結果、第1の態様に係るピリドキサミン又はその塩の製造方法によれば、アミノ酸を大量に添加するためのコストを省くことができ、また、反応中にアミノ酸の濃度を監視して高いアミノ酸濃度を維持するための操作を行う手間も省くことができる。
【0125】
前記組換え微生物、前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物と、ピリドキシン又はその塩とを接触させる方法としては、前記組換え微生物、前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物をピリドキシン又はその塩を含む溶液に加え、攪拌しながら反応を進行させる方法、前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物をピリドキシン又はその塩を含む溶液に加え、振とうしながら反応を進行させる方法、前記組換え微生物、前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物とピリドキシン又はその塩とを溶液中で充分に混和の後、静置して反応を進行させる方法などが挙げられる。好ましくは、反応効率の観点より、前記組換え微生物、前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物をピリドキシン又はその塩を含む溶液に加え、攪拌しながら反応を進行させる方法が挙げられる。
【0126】
反応に使用可能な反応容器としては特に制限はない。好ましくは、添加した前記組換え微生物、前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物とピリドキシン又はその塩を含む溶液とが十分混和されるように攪拌できるとともに、ピリドキシンデヒドロゲナーゼ、ピリドキサミン合成酵素、及びアミノ酸再生酵素の最適温度範囲内に保てるように温度調節機能を有する反応容器であることが好ましい。
【0127】
前記組換え微生物、前記組換え微生物の培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物と、ピリドキシン又はその塩との接触時間(反応時間)は、ピリドキシンデヒドロゲナーゼ、ピリドキサミン合成酵素、及びアミノ酸再生酵素の酵素活性が維持される限りは特に制限されないが、例えば30分〜100時間であり、あるいは2時間〜50時間であってもよい。また、反応はバッチ式で行ってもよく、反応途中で、基質及び前記微生物、前記培養物若しくは前記処理物のうち一方又は両方を逐次添加するセミバッチ式で行ってもよく、連続式で行ってもよい。セミバッチ式や連続式の場合は、新たな原料及び前記組換え微生物、前記培養物若しくは前記処理物のうち一方又は両方が供給される等の操作が行われるため、反応時間の上限は特に限定はされない。
【0128】
上記の方法においては、ピリドキシン又はその塩を原料として第1の態様に係る組換え微生物若しくは前記培養物又は前記組換え微生物若しくは前記培養物の処理物を用いることにより、化学的合成方法における場合のように煩雑なステップを経ることなく、安価に、ピリドキサミンその塩を高い生産効率で製造することができる。上記の方法により得られたピリドキサミン又はその塩は、例えばその生理活性を利用した製品の製造に用いることができる。例えば、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、慢性腎不全、アルツハイマー型認知症等のAGEの蓄積に起因する疾患や統合失調症の予防や治療、健康食品、化粧品といった用途に利用可能である。
【0129】
<第2の態様>
ピリドキシンを基質としてピリドキサールを選択的かつ高効率に生産する組換え微生物は、これまで知られていなかった。
ピリドキシン及びピリドキサールの構造を以下に示す。なお、本開示において、ピリドキシン及びピリドキサールの語は、特に塩を除外する旨が明示されない限り、それぞれその塩も含む意味で使用される。ピリドキシンの塩は、例えば、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキシン硫酸塩、ピリドキシン硝酸塩、ピリドキシンリン酸塩を含む。ピリドキサールの塩は、例えば、ピリドキサール塩酸塩、ピリドキサール硫酸塩、ピリドキサール硝酸塩、ピリドキサールリン酸塩を含む。
【化2】
【0130】
<第2の態様に係る組換え微生物>
[配列番号1のアミノ酸配列]
配列番号1のアミノ酸配列は、Saccharomyces cerevisiaeに由来するピリドキシンデヒドロゲナーゼである。ピリドキシンデヒドロゲナーゼは、以下に示す通り、ピリドキシンとNADP
+とから、ピリドキサールとNADPHとH
+とを生成する反応、及びその逆方向の反応を触媒する酸化還元酵素である。Saccharomyces cerevisiaeに由来するピリドキシンデヒドロゲナーゼは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号EC1.1.1.65に分類される。
【化3】
【0131】
第2の態様に係る組換え微生物において宿主微生物に導入されるポリヌクレオチドは、以下の(1)〜(7)のいずれかに示されるポリヌクレオチドの少なくとも1つである。
[(1)配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド]
第2の態様に係る組換え微生物において宿主微生物に導入されるポリヌクレオチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドであることが好ましい。配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドであれば、いかなるコドンが使用されていてもよい。好ましくは、配列番号13のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドが用いられる。
【0132】
[(2)配列番号1のアミノ酸配列において、1個〜50個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド]
第2の態様に係る組換え微生物において宿主微生物に導入されるポリヌクレオチドは、配列番号1のアミノ酸配列において、1個〜50個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドでもよい。前記タンパク質はピリドキシン又はピリドキサールの合成活性を有する。好ましくは、EC1.1.1.65に分類される酵素活性を有している。
【0133】
第2の態様において、ピリドキシンの合成活性とは、ピリドキサールを基質としてピリドキシンを合成する能力を指し、ピリドキサールの合成活性とは、ピリドキシンを基質としてピリドキサールを合成する能力を指す。
【0134】
配列番号1のアミノ酸配列において欠失、付加又は置換されているアミノ酸残基数は、1〜40個又は1〜30個であることが好ましく、1〜20個又は1〜15個であることがさらに好ましく、1〜10個又は1〜5個であることが特に好ましい。
【0135】
ピリドキシンの合成活性は、例えば、上述の(1)〜(7)のいずれかのポリヌクレオチドがコードするタンパク質を、リン酸緩衝生理食塩水などの適切な環境下で、ピリドキサール及びNADPHと接触させてピリドキシンの生成を検出することによって確認することができる。ピリドキサールの合成活性は、上述の(1)〜(7)のいずれかのポリヌクレオチドがコードするタンパク質を、リン酸緩衝生理食塩水などの適切な環境下で、ピリドキシン及びNADP
+と接触させてピリドキサールの生成を検出することによって確認することができる。
ピリドキサール又はピリドキシンの検出は、公知の方法、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって行うことができる。
【0136】
[(3)配列番号1のアミノ酸配列と60%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド]
第2の態様に係る組換え微生物において宿主微生物に導入されるポリヌクレオチドは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも60%の配列同一性を有し、ピリドキシン又はピリドキサールの合成活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドでもよい。前記タンパク質は、好ましくは、EC1.1.1.65に分類される酵素活性を有している。
配列同一性は、少なくとも70%であることが好ましく、少なくとも80%又は少なくとも85%以上であることがさらに好ましく、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%であることが特に好ましい。
【0137】
[(4)配列番号13のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド]
第2の態様に係る組換え微生物において宿主微生物に導入されるポリヌクレオチドは、配列番号13のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドであることが好ましい。
配列番号13のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質であるSaccharomyces cerevisiaeのピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードしている。
【0138】
[(5)配列番号13のヌクレオチド配列において、1個〜150個のヌクレオチドが欠失、付加又は置換されているヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド]
第2の態様に係る組換え微生物において宿主微生物に導入されるポリヌクレオチドは、配列番号13の
ヌクレオチド配列において、1個〜150個のヌクレオチドが欠失、付加又は置換されているヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドでもよい。前記ポリヌクレオチドがコードするタンパク質は、ピリドキシン又はピリドキサールの合成活性を有しており、好ましくは、EC1.1.1.65に分類される酵素活性を有している。
【0139】
配列番号13のヌクレオチド配列において欠失、付加又は置換されているヌクレオチド数は、1〜140個、1〜120個、1〜100個、1〜90個、1〜80個、1〜70個、1〜60個又は1〜50個であることが好ましく、1〜40個、1〜30個、1〜20個又は1〜15個であることがさらに好ましく、1〜10個又は1〜5個であることが特に好ましい。
【0140】
[(6)配列番号13のヌクレオチド配列と60%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド]
第2の態様に係る組換え微生物において宿主微生物に導入されるポリヌクレオチドは、配列番号13のヌクレオチド配列と60%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドでもよい。前記ポリヌクレオチドがコードするタンパク質は、ピリドキシン又はピリドキサールの合成活性を有しており、前記タンパク質は、好ましくは、EC1.1.1.65に分類される酵素活性を有している。
配列同一性は、少なくとも70%であることが好ましく、少なくとも80%又は少なくとも85%以上であることがさらに好ましく、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%であることが特に好ましい。
【0141】
[(7)配列番号13のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド]
第2の態様に係る組換え微生物において宿主微生物に導入されるポリヌクレオチドは、配列番号13のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドでもよい。前記ポリヌクレオチドがコードするタンパク質は、ピリドキシン又はピリドキサールの合成活性を有しており、前記タンパク質は、好ましくは、EC1.1.1.65に分類される酵素活性を有している。
ここで、ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。ストリンジェントな条件は、Molecular Cloning 3rd(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,2001)の記載に基づいて、比較する配列に応じた条件を適宜設定することができる。この文献は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
典型的なストリンジェントな条件は、例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とストリンジェントな洗浄条件を意味する。例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mlニシン精子DNAを含む溶液中でプローブとともに55℃で一晩保温するという条件等が挙げられる。ついでフィルターを0.2×SSC中42℃で洗浄するなどを例示することができる。ストリンジェントな条件としては、フィルターの洗浄工程における0.1×SSC、50℃の条件であり、更にストリンジェントな条件としては、同工程における0.1×SSC、65℃の条件を挙げることができる。
【0142】
ここで、配列番号1のアミノ酸配列との配列同一性は、比較対象とされるアミノ酸配列と最適なアライメントを行った場合に、同一であるアミノ酸の数を配列番号1のアミノ酸残基数である345で除した値に100を乗じて%で表示したものである。
また、配列番号13のポリヌクレオチド配列との配列同一性は、比較対象とされるポリヌクレオチド配列と最適なアライメントを行った場合に、同一であるヌクレオチドの数を配列番号13のポリヌクレオチドのヌクレオチド数である1055で除した値に100を乗じて%で表したものである。
最適なアラインメントとは、2つの配列間で一致するアミノ酸又はヌクレオチドの数が最も大きくなるアラインメントを指す。配列同士の最適なアラインメントは、公知の方法、例えば、BLAST(登録商標、National Library of Medicine)プログラムのデフォルトパラメータにおいてマスクフィルタリングをオフにして使用することによって行うことができる。
【0143】
前述の(2)、(3)、(5)又は(6)のいずれかに記載のポリヌクレオチドにおいて、配列番号1のアミノ酸配列又は配列番号13のヌクレオチド配列において欠失、付加又は置換されているアミノ酸残基数又はヌクレオチド数は少ない方が好ましく、また、配列番号1のアミノ酸配列又は配列番号13のヌクレオチド配列との同一性は高い方が好ましい。しかし、酵素活性に影響をおよぼさない又は影響が少ない変異であれば欠失、付加又は置換されているアミノ酸残基数又はヌクレオチド数が多くても第2の態様に係る組換え微生物による効果を発揮することができる。例えば、類似する性質を有するアミノ酸同士の置換がタンパク質の機能に影響が少ないことは当業者に周知である。別の例として、1つのアミノ酸をコードするコドンには複数の種類があり、同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドであっても、使用コドンの相違により配列番号13のヌクレオチド配列との相違が多くなる場合があることは当業者に周知である。
【0144】
第2の態様に係る組換え微生物は、導入された遺伝子から、ピリドキシンを基質としてピリドキサールを合成する能力を有するタンパク質、又はピリドキサールを基質としてピリドキシンを合成する能力を有するタンパク質が発現しており、好ましくは、EC1.1.1.65に分類される酵素活性を有するタンパク質が発現している。
第2の態様に係る組換え微生物が、導入された遺伝子からピリドキシンを基質としてピリドキサールを合成する能力を有するタンパク質、又はピリドキサールを基質としてピリドキシンを合成する能力を有するタンパク質を発現していることは、公知の方法で確認すればよい。遺伝子を導入された組換え微生物を、基質としてのピリドキシン又はピリドキサールと接触させて酵素反応の結果物としてのピリドキシン又はピリドキサールの生成を検出することによって、前記タンパク質の発現を確認することができる。ピリドキシン又はピリドキサール合成の前後に別の反応を行う組換え微生物である場合には、当該前後の反応を勘案して基質としてのピリドキシン又はピリドキサールから、酵素反応の結果物としてのピリドキシン又はピリドキサールの生成がなされていることを理論的に確認することができる。
【0145】
<第2の態様に係る組換え微生物の調製>
[宿主]
第2の態様に係る組換え微生物を調製する際に宿主となる微生物は、一般的にタンパク質の発現に用いられる微生物を宿主として使用することができる。宿主微生物の例としては、酵母、糸状菌、及び原核生物が挙げられる。酵母の例としては、Saccharomyces cerevisiaeなどのサッカロミセス(Saccharomyces)属の酵母、Schizosaccharomyces pombe等のシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属の酵母、ハンゼヌラ(Hansenula)属の酵母、及びピキア(Pichia)属の酵母、が挙げられる。Saccharomyces cerevisiaeを宿主とした場合には、内在性のピリドキシンデヒドロゲナーゼに加えて、前述の(1)〜(7)のいずれか1つのポリヌクレオチドを導入することによって、ピリドキサールを選択的に効率的に生産することができる微生物を得ることができる。
糸状菌の例としては、Trichoderma reesei若しくはviride等のトリコデルマ(Trichoderma)属糸状菌、Aspergillus niger若しくはoryzae等のアスペルギルス(Aspergillus)属糸状菌、Humicola insolens等のフミコラ(Humicola)属糸状菌、及びAcremonium cellulolyticus若しくはfusidioides等のアクレモニウム(Acremonium)属の糸状菌、が挙げられる。
細菌の例としては、エシェリヒア属(Escherichia)細菌、バチルス属(Bacillus)細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属等が例示される。工業的な使用の実績が豊富な大腸菌(Escherichia coli)が特に好適に使用される。大腸菌以外の宿主としては、例えば、ブレビバチルス(Bacillus brevis)、Bacillus megaterium、Brevibacillus choshinensis、Corynebacterium glutamicum及びRhodococcus erythropolisが挙げられる。
【0146】
[ポリヌクレオチドの宿主への導入]
ポリヌクレオチドを宿主に導入する方法は公知である。例えば「Molecular Cloning 3rd Edition」(J.Sambrookら;Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001)等に記載されている分子生物学、生物工学、及び遺伝子工学の分野において公知の一般的な方法によって、目的のポリヌクレオチドを宿主に導入することができる。例えば、前記(1)〜(6)に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを用意し、この発現ベクターにより任意の宿主微生物を形質転換して組換え微生物を得ることができる。
宿主が最近である場合、宿主細菌の細胞に発現ベクター等の組換えDNAを導入する方法としては、カルシウム処理によるコンピテントセル法やエレクトロポレーション法などが用いることができる。このようにして得られた組換え細菌は、培養されることにより、多量のピリドキシンデヒドロゲナーゼを安定的に発現させることができる。
【0147】
発現ベクターは、前述の(1)〜(7)のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含んでいれば特に限定されず、遺伝子工学の分野において公知の一般的な発現ベクターを採用することができる。発現ベクターは、前記ポリヌクレオチドの発現に必要な制御領域及び自律複製に必要な領域などの、組換え微生物によるタンパク質の産生を可能にする要素を必要に応じて含んでいてもよい。発現に必要な制御領域としては、プロモーター配列(転写を制御するオペレーター配列を含む。)、リボゾーム結合配列(SD配列)、転写終結配列、制限酵素切断配列等、あるいは他の遺伝子を挙げることができる。他の遺伝子は、例えば、生成したピリドキシン又はピリドキサールを中間体として、他の物質に変換する作用を持つタンパク質であってもよい。
【0148】
プロモーター配列の例としては、大腸菌由来のトリプトファンオペロンのtrpプロモーター、ラクトースオペロンのlacプロモーター、ラムダファージ由来のPLプロモーター及びPRプロモーターや、枯草菌由来のグルコン酸合成酵素プロモーター(gnt)、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)プロモーター、グルタミン酸デカルボキシラーゼA(gadA)プロモーター、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(glyA)プロモーター、アルカリプロテアーゼプロモーター(apr)、中性プロテアーゼプロモーター(npr)又はα−アミラーゼプロモーター(amy)等が挙げられる。
また、tacプロモーターのように独自に改変又は設計されたプロモーター配列も利用できる。
【0149】
リボゾーム結合配列としては、大腸菌由来又は枯草菌由来の配列が挙げられるが、大腸菌や枯草菌等の所望の宿主細胞内で機能する配列であれば特に限定されるものではない。
前記リボゾーム結合配列としては、例えば、16SリボゾームRNAの3’末端領域に相補的な配列のうち、4ヌクレオチド以上連続したコンセンサス配列をDNA合成により作成した配列などが挙げられる。
転写終結配列は必ずしも必要ではないが、ρ因子非依存性のもの、例えばリポプロテインターミネーター、trpオペロンターミネーター等が利用できる。
これら制御領域の発現ベクター上での配列順序は、特に制限されるものではないが、転写効率を考慮すると5’末端側上流からプロモーター配列、リボゾーム結合配列、目的蛋白質をコードする遺伝子、転写終結配列の順に並ぶことが望ましい。
【0150】
ここでいう発現ベクターの具体例としては、大腸菌中での自律複製可能な領域を含んでいるpBR322、pUC18、Bluescript II SK(+)、pKK223−3、pSC101や、枯草菌中での自律複製可能な領域を含んでいるpUB110、pTZ4、pC194、ρ11、φ1、φ105等を発現ベクターとして利用することができる。
また、2種類以上の宿主内での自律複製が可能な発現ベクターの例として、pHV14、TRp7、YEp7及びpBS7等を発現ベクターとして利用することができる。
【0151】
<ピリドキサールの製造方法>
第2の態様に係るピリドキサールの製造方法は、第2の態様に係る組換え微生物とピリドキシンとを接触させることを含む。上述した発現ベクターを所望の宿主微生物に導入して得られた組換え微生物は、前記発現ベクターが含むポリヌクレオチドがコードするタンパク質を生産する。生産されたタンパク質は、ピリドキシンを基質としてピリドキサールを生成する。
【0152】
第2の態様に係る組換え微生物を培養することによって増殖させてもよい。培養の条件は、宿主細胞の培養条件と同様であり、公知の条件を用いることができる。
培地としては炭素源、窒素源、無機物及びその他の栄養素を適量含有する培地ならば合成培地又は天然培地のいずれでも使用可能である。培地に使用する成分としては、公知のものを用いることができる。例えば、肉エキス、酵母エキス、麦芽エキス、ペプトン、NZアミン及びジャガイモ等の有機栄養源、グルコース、マルトース、しょ糖、デンプン及び有機酸等の炭素源、硫酸アンモニウム、尿素及び塩化アンモニウム等の窒素源、リン酸塩、マグネシウム、カリウム及び鉄等の無機栄養源、ビタミン類を適宜組み合わせて使用できる。
なお、前記選択マーカーを含む発現ベクターにより形質転換した組換え微生物の培養においては、例えば、前記選択マーカーが薬剤耐性である場合には、それに対応する薬剤を含む培地を使用し、前記選択マーカーが栄養要求性である場合には、それに対応する栄養素を含まない培地を使用する。培地のpHは、pH4〜pH8の範囲で選べばよい。
培養は前記培地を含有する液体培地中で、組換え微生物を振とう培養、通気攪拌培養、連続培養、流加培養などの通常の培養方法を用いて行なうことができる。
培養条件は、宿主、培地、培養方法の種類により適宜選択すればよく、組換え微生物が生育し、第2の態様に係る組換え微生物を産生できる条件であれば特に制限はない。
培養温度は20℃〜45℃、好ましくは24℃〜37℃で好気的に培養を行う。
【0153】
例えば、宿主が大腸菌の場合、組換え大腸菌を培養する培地としてLB(Lysogeny Broth)培地やM9培地などが一般的に用いられるが、より好ましくはそのような培地に成分としてFeイオン及びCoイオンを0.1μg/mL以上含ませた培地である。組換え大腸菌を培地に植菌した後、適当な培養温度(一般的には、20℃〜50℃)で生育させればよい。
【0154】
ピリドキサールを製造するためには、第2の態様に係る組換え微生物を培養して得られる培養物又は培養物の処理物と、基質としてのピリドキシンとを接触させればよい。第2の態様に係る組換え微生物が生成する組換えタンパク質が、ピリドキシンを基質としてピリドキサールを生成することができる。
組換え微生物を培養して得られる培養物は、組換え微生物の培養から得られたものであれば特に限定はされない。培養物は、培地から回収した菌体であってもよいし、培地から回収した上述の(1)〜(7)のいずれかに記載のポリヌクレオチドがコードするタンパク質でもよい。あるいは、菌体を含む培地又は菌体を含まないが組換え微生物が生成する組換えタンパク質を含む培地をそのまま用いてもよい。
【0155】
培養物の処理物とは、第2の態様に係る組換え微生物が産生する組換えタンパク質の活性を失わない範囲で、組換え微生物の培養物に対して任意の処理を行った産物を指す。このような処理としては、加熱処理、冷却処理、細胞の機械的破壊、超音波処理、凍結融解処理、乾燥処理、加圧又は減圧処理、浸透圧処理、細胞の自己消化、界面活性剤処理、酵素処理(例えば細胞破壊処理)、細胞分離処理、精製処理及び抽出処理からなる群から選択される1つ以上を含む処理が挙げられる。例えば、組換え微生物の細胞を培地等から分離して、分離された細胞を反応系に添加してもよい。このような分離には、濾過又は遠心分離などの手段が使用可能である。あるいは、第2の態様に係る組換え微生物が産生する組換えタンパク質を夾雑物から分離するための精製処理を行い、該精製処理により得られた酵素を含む溶液を反応系に添加してもよい。あるいは、培養物を、メタノールやアセトニトリル等の有機溶媒又は有機溶媒と水との混合溶媒を用いて抽出した抽出物を反応系に添加してもよい。このような精製物又は抽出物は、組換え微生物の菌体を含まないものであってもよい。当該菌体が存在しなくても、第2の態様に係る組換え微生物が産生する組換えタンパク質の活性が残存していれば、ピリドキシン又はピリドキサールの製造に使用することが可能である。
上記のような細胞の破砕あるいは溶解処理は、リゾチーム処理、凍結融解、超音波破砕などの公知の方法に従い組換え微生物の細胞膜を破壊することにより、行うことができる。
【0156】
第2の態様において、培養物の処理物は、菌体又は上述の(1)〜(7)のいずれかに記載のポリヌクレオチドがコードするタンパク質を、例えば、ビーズや膜等の固相に固定化したものでもよい。菌体又はタンパク質を固相に固定化する方法は従来知られている方法を用いることができる。
【0157】
ピリドキサールを製造するためには、第2の態様に係る組換え微生物の培養中に、組換え微生物と、基質としてのピリドキシンとを接触させてもよい。組換え微生物とピリドキシンとを接触させるためには、例えば、培地にピリドキシンを加えればよい。ピリドキシンは培養の当初から培地に含まれていてもよいし、培養を開始した後、例えば、微生物が増殖期に入ってから加えてもよい。
【0158】
第2の態様に係るピリドキサールの製造方法において、生成されたピリドキサールは、培養された組換え微生物自体、培地その他から回収してもよいし、回収せずに直接に所望の次の工程に供してもよい。ピリドキサールを回収する方法は、この分野で慣用されている方法を使用することができる。また、次の工程は、ピリドキサールを用いるものであれば特に限定されない。次の工程の例としては、ピリドキサールをリン酸化する工程などが挙げられる。
【0159】
上記のとおり、第2の態様に係る組換え微生物及びピリドキサールの製造方法によって、選択的に、かつ高効率でピリドキサールを製造することができる。
【0160】
なお、本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【実施例】
【0161】
以下の実施例により実施形態を更に説明するが、本開示は以下の実施例によって何等限定されるものではない。また、実施例の組成物における含有成分量を示す「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0162】
<分析条件>
ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサール塩酸塩、ピリドキサミン二塩酸塩は高速液体クロマトグラフィーにより定量した。これらの分析条件は次の通りである。
カラム:Shodex(登録商標) Asahipak ODP−50 6E(昭和電工株式会社)
ガードカラム:Shodex(登録商標) Asahipak ODP−50G 6A(昭和電工株式会社)
カラム温度:30℃
ポンプ流速:1.0ml/min
溶離液:50mMリン酸緩衝液(pH2.0)
検出:UV254nm
【0163】
比較例1 ppat発現株の作成
Mesorhizobium loti MAFF303099由来ピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列を大腸菌にコドン最適化したものをGenScript社に委託して合成し、配列番号14のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAを鋳型として用い配列番号18のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド及び配列番号19のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRにより目的遺伝子を含むDNA断片を増幅した。この増幅されたDNA断片をEcoRI及びBamHIで処理し、得られたDNA断片と、pUC18(Takara製)のEcoRI及びBamHIによる処理物とを、ライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
【0164】
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号14のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppatと命名した。ここで、ppatはピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子の略称である。
【0165】
比較例2.ppat-plr発現株の作成
Saccharomyces cerevisiae由来ピリドキサールレダクターゼ遺伝子のヌクレオチド配列を大腸菌にコドン最適化したものをGenScript社に委託して合成し、配列番号13のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAを鋳型として用い配列番号16のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド及び配列番号17のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRにより目的遺伝子を含むDNA断片を増幅した。この増幅されたDNA断片をSalI及びHindIIIで処理し、得られたDNA断片と、比較例1で作製したpUC18-ppatをSalI及びHindIIIで処理した処理物とを、ライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
【0166】
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号13のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppat-plrと命名した。ここで、plrはピリドキサールレダクターゼ遺伝子(ピリドキシンデヒドロゲナーゼに該当)の略称である。なお、大腸菌DH5αは、元来、ピリドキシンデヒドロゲナーゼの遺伝子を有していない。また、大腸菌DH5αは、元来、ピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼが消費するL−アラニンを再生できるアラニン再生酵素の遺伝子は有していない。したがって、ここで得られたppat-plr発現株は、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、前記ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子及び前記アミノ酸再生酵素をコードする遺伝子のうち2つが菌体外から導入されているものの、導入されたピリドキサミン合成酵素が消費するアミノ酸を再生する酵素活性を有するアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子は有していないため、比較例に相当する。
【0167】
比較例3 ppat-adh発現株の作成
Shewanella sp. AC10由来アラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に、コードするアミノ酸配列においてD198Aとなる変異を導入し、かつ大腸菌にコドン最適化したものをGenScript社に委託して合成し、配列番号15のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAを鋳型として用い配列番号20のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド及び配列番号21のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRにより目的遺伝子を含むDNA断片を増幅した。この増幅されたDNA断片をBamHI及びSalIで処理し、得られたDNA断片と、比較例1で作製したpUC18-ppatをBamHI及びSalIで処理した処理物とを、ライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。この形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
【0168】
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号15のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppat-adhと命名した。ここで、adhはアラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子の略称である。先に述べたように、大腸菌DH5αは、元来、ピリドキシンデヒドロゲナーゼの遺伝子を有していないため、ここで得られたppat-adh発現株は比較例に相当する。
【0169】
実施例1 ppat-adh-plr発現株の作成
Shewanella sp. AC10由来アラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に、コードするアミノ酸配列においてD198Aとなる変異を導入し、かつ大腸菌にコドン最適化したものをGenScript社に委託して合成し、配列番号15のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAを鋳型として用い配列番号20のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド及び配列番号21のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRにより目的遺伝子を含むDNA断片を増幅した。この増幅されたDNA断片をBamHI及びSalIで処理し、得られたDNA断片と、比較例2で作製したpUC18-ppat-plrをBamHI及びSalIで処理した処理物とを、ライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。この形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
【0170】
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号15のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppat-adh-plrと命名した。
【0171】
試験1 ピリドキシンを原料としたピリドキサミンの製造
pUC18、比較例1〜3及び実施例1で作製したプラスミドのそれぞれで形質転換したDH5αを、500mlのバッフル付き三角フラスコ中のアンピシリン100μg/mlを含むLB培地100mlに接種し、30℃にて24時間振盪培養した。培養液を8000rpmで20分間遠心分離し、沈殿物として得られた菌体を水1mlに懸濁して菌体懸濁液を調製した。
ピリドキシン塩酸塩及びL−アラニンを水で溶解し、ピリドキシン塩酸塩(600mM)及びL−アラニン(600mM)を含む基質液を調製した。基質液のpHを、25%アンモニア水でpH8.0に調整した。基質液500μlと菌体懸濁液1000μlを混合し、37℃で24時間反応させた。反応液を一部採取し、上記に示す分析条件で分析した。結果を表1に示す。なお、表1に示す収率とは、基質液中のピリドキシン塩酸塩のモル量に対する得られたピリドキサミン二塩酸塩のモル量の比を表す。
【0172】
【表1】
【0173】
表1に示されたように、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ピリドキサミン合成酵素をコードする遺伝子、及び前記ピリドキサミン合成酵素が消費するアミノ酸を再生する酵素活性を有するアミノ酸再生酵素をコードする遺伝子の全てが揃い、かつ、これらの遺伝子の2つ以上が細胞外から導入された場合には、ピリドキサミン二塩酸塩が高い生産効率で生産された。
【0174】
試験2 ピリドキシンを原料としたピリドキサミンの製造(L−アラニン濃度の検討)
実施例1で作製したプラスミド(pUC18-ppat-adh-plr)で形質転換したDH5αを、500mlのバッフル付き三角フラスコ中のアンピシリン100μg/mlを含むLB培地100mlに接種し、30℃にて24時間振盪培養した。培養液を8000rpmで20分間遠心分離し、沈殿物として得られた菌体を水0.5mlに懸濁して菌体懸濁液を調製した。
【0175】
ピリドキシン塩酸塩を水で溶解し、25%アンモニア水でpH8.0に調整して、ピリドキシン塩酸塩(600mM)を含む基質液(1)を調製した。L−アラニンを水で溶解し、25%アンモニア水でpH8.0に調整して、L−アラニン(1,200mM)を含む基質液(2)を調製した。基質液(1)を500μlと所定量の基質液(2)とを混合した。各混合液に、菌体懸濁液500μlを加え、さらに水を加えることで1,500μlの反応液を調製し、37℃で24時間反応させた。この際の基質液(2)の量は、反応液中におけるL−アラニンの濃度がそれぞれ0mM,1mM,5mM,10mM,50mM,200mM,400mM,及び800mMとなるように、変化させた。反応液を一部採取し、上記に示す分析条件で分析することで、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサール塩酸塩、ピリドキサミン二塩酸塩を定量した。結果を表2に示す。なお、表2に示す収率とは、基質液中のピリドキシン塩酸塩のモル量に対する得られたピリドキサミン二塩酸塩のモル量の比を表す。
【0176】
【表2】
【0177】
表2に示されるように、基質混合液中のL−アラニンの濃度について、広い範囲のL−アラニン濃度で高い収率が達成された。L−アラニンの濃度が0mMから50mMの濃度範囲においては、L−アラニン濃度以上のピリドキサミンが生成した。これは、アラニンデヒドロゲナーゼを導入したことにより、ピリドキサミン生成のための反応で消費されたL−アラニンを再生することが可能となり、L−アラニン濃度が低い場合であってもL−アラニンの再生によりピリドキサミン生成反応が進んだことを示している。
【0178】
試験3 ピリドキシンを原料としたピリドキサミンの製造(L−アラニン濃度の検討)
実施例1で作製したプラスミド(pUC18-ppat-adh-plr)を形質転換したDH5αを、500mlのバッフル付き三角フラスコ中のアンピシリン100μg/mlを含むLB培地100mlに接種し、30℃にて24時間振盪培養した。培養液を8000rpmで20分間遠心分離し、沈殿物として得られた菌体を水0.5mlに懸濁して菌体懸濁液を調製した。
ピリドキシン塩酸塩を水で溶解し、25%アンモニア水でpH8.0に調整して、ピリドキシン塩酸塩(600mM)を含む基質液を調製した。この基質液を500μl、菌体懸濁液500μl、及び残量の水を混合して1,500μlの反応液を調製し、L−アラニン粉末を飽和溶解度となるように添加し、37℃で24時間反応させた。反応液を一部採取し、上記に示す分析条件で分析することで、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサール塩酸塩、ピリドキサミン二塩酸塩を定量した。その結果、反応収率は39%であった。つまり、L−アラニンをより低濃度で用いた場合の方が高い収率を達成できていた。
【0179】
このように、第1の態様に係るピリドキサミン又はその塩の製造方法によれば、消費されるアミノ酸を大量に添加するのではなく比較的少量用いるだけでも、ピリドキシン又はその塩から高い生産効率で安価にピリドキサミン又はその塩を生産することができることが示された。
【0180】
実施例2 ppat-adh-Seplr発現プラスミドの作成
Saccharomyces eubayanus由来ピリドキサールレダクターゼ遺伝子のヌクレオチド配列を大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、5’末端にSalI、3’末端にHindIIIを導入した遺伝子をeurofins社に委託して合成し、配列番号75のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをSalI/HindIIIで処理し、得られたDNA断片と、比較例3で作製したpUC18-ppat-adhをSalI及びHindIIIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体はLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号75のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppat-adh-Seplrと命名した。
【0181】
実施例3 ppat-adh-Tdplr発現プラスミドの作成
Torulaspora delbrueckii由来ピリドキサールレダクターゼ遺伝子のヌクレオチド配列を大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、5’末端にSalI、3’末端にHindIIIを導入した遺伝子をeurofins社に委託して合成し、配列番号76のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをSalI/HindIIIで処理し、得られたDNA断片と、比較例3で作製したpUC18-ppat-adhをSalI及びHindIIIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号76のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppat-adh-Tdplrと命名した。
【0182】
実施例4 ppat-adh-Zbplr発現プラスミドの作成
Zygosaccharomyces bailii 由来ピリドキサールレダクターゼ遺伝子のヌクレオチド配列を大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、5’末端にSalI、3’末端にHindIIIを導入した遺伝子をGenScript社に委託して合成し、配列番号77のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをSalI/HindIIIで処理し、得られたDNA断片と、比較例3で作製したpUC18-ppat-adhをSalI及びHindIIIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号77のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppat-adh-Zbplrと命名した。
【0183】
実施例5 ppat-adh-Aoplr発現プラスミドの作成
Aspergillus oryzae 由来ピリドキサールレダクターゼ遺伝子のヌクレオチド配列を大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、5’末端にSalI、3’末端にHindIIIを導入した遺伝子をGenScript社に委託して合成し、配列番号78のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをSalI/HindIIIで処理し、得られたDNA断片と、比較例3で作製したpUC18-ppat-adhをSalI及びHindIIIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号78のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppat-adh-Aoplrと命名した。
【0184】
実施例6 ppat-adh-Kmplr発現プラスミドの作成
Kluyveromyces marxianus 由来ピリドキサールレダクターゼ遺伝子のヌクレオチド配列を大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、5’末端にSalI、3’末端にHindIIIを導入した遺伝子をGenScript社に委託して合成し、配列番号79のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをSalI/HindIIIで処理し、得られたDNA断片と、比較例3で作製したpUC18-ppat-adhをSalI及びHindIIIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号79のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppat-adh-Kmplrと命名した。
【0185】
実施例7 ppat-adh-Caplr発現プラスミドの作成
Candida albicans由来ピリドキサールレダクターゼ遺伝子のヌクレオチド配列を大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、5’末端にSalI、3’末端にHindIIIを導入した遺伝子をeurofins社に委託して合成し、配列番号80のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをSalI/HindIIIで処理し、得られたDNA断片と、比較例3で作製したpUC18-ppat-adhをSalI及びHindIIIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号80のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppat-adh-Caplrと命名した。
【0186】
実施例8 ppat-adh-Ylplr発現プラスミドの作成
Yarrowia lipolytica 由来ピリドキサールレダクターゼ遺伝子のヌクレオチド配列を大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、5’末端にSalI、3’末端にHindIIIを導入した遺伝子をGenScript社に委託して合成し、配列番号81のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをSalI/HindIIIで処理し、得られたDNA断片と、比較例3で作製したpUC18-ppat-adhをSalI及びHindIIIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号81のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppat-adh-Ylplrと命名した。
【0187】
試験4 ピリドキシンを原料としたピリドキサミンの製造
実施例2〜8で作製したプラスミドのそれぞれで形質転換したDH5αを、500mlのバッフル付き三角フラスコ中のアンピシリン100μg/mlを含むLB培地100mlに接種し、30℃にて24時間振盪培養した。培養液の40mlを取り、5000rpmで5分間遠心分離し、沈殿物として得られた菌体を水0.9mlに懸濁して菌体懸濁液を
調製した。
ピリドキシン塩酸塩及びL−アラニンを水で溶解し、ピリドキシン塩酸塩(500mM)及びL−アラニン(500mM)を含む基質液を調製した。基質液のpHを、25%アンモニア水でpH8.0に調整した。基質液400μl、水500μl及び菌体懸濁液100μlを混合し、37℃で1時間反応させた。反応液を一部採取し、上記した分析条件で分析した。結果を表3に示す。なお、表3に示すピリドキサミン生産量とは、実施例1で作製したppat-adh-plr発現株が生産するピリドキサミン二塩酸塩のモル量を100とした相対量で表す。
【0188】
【表3】
【0189】
表3に示されたように、ピリドキシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子として、実施例1にて使用したSaccharomyces cerevisiae由来ピリドキサールレダクターゼ遺伝子に代えて、Saccharomyces eubayanus由来ピリドキサールレダクターゼ遺伝子、Torulaspora delbrueckii由来ピリドキサールレダクターゼ遺伝子、Zygosaccharomyces bailii 由来ピリドキサールレダクターゼ遺伝子、Aspergillus oryzae 由来ピリドキサールレダクターゼ遺伝子、Kluyveromyces marxianus 由来ピリドキサールレダクターゼ遺伝子、Candida albicans由来ピリドキサールレダクターゼ遺伝子、又はYarrowia lipolytica 由来ピリドキサールレダクターゼ遺伝子を導入することによっても、ピリドキシン塩酸塩からピリドキサミン二塩酸塩を生産することができた。
【0190】
比較例4 adh-plr発現プラスミドの作成
比較例2で作製したpUC18-ppat-plrをSalI及びHindIIIで処理し、回収したピリドキサールレダクターゼ遺伝子(plr)断片と、比較例3で作製したpUC-ppat-adhをBamHI及びSalIで処理し、回収したアラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子(adh)断片とpUC18のBamHI及びHindIIIによる処理物とを、ライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出し、得られたプラスミドをpUC18-adh-plrと命名した。
【0191】
実施例9 Msppat-adh-plr発現プラスミドの作成
Mesorhizobium sp. YR577由来ピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列を大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、5’末端にEcoRI、3’末端にBamHIを導入した遺伝子をeurofins社に委託して合成し、配列番号82のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをEcoRI/BamHIで処理し、得られたDNA断片と、比較例4で作製したpUC18-adh-plrをEcoRI及びBamHIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号82のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-Msppat-adh-plrと命名した。
【0192】
実施例10 Psppat-adh-plr発現プラスミドの作成
Pseudaminobacter salicylatoxidans由来ピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列を大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、5’末端にEcoRI、3’末端にBamHIを導入した遺伝子をeurofins社に委託して合成し、配列番号83のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをEcoRI/BamHIで処理し、得られたDNA断片と、比較例4で作製したpUC18-adh-plrをEcoRI及びBamHIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号83のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-Psppat-adh-plrと命名した。
【0193】
実施例11 Blppat-adh-plr発現プラスミドの作成
Bauldia litoralis由来ピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列を大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、5’末端にEcoRI、3’末端にBamHIを導入した遺伝子をeurofins社に委託して合成し、配列番号84のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをEcoRI/BamHIで処理し、得られたDNA断片と、比較例4で作製したpUC18-adh-plrをEcoRI及びBamHIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号84のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-Blppat-adh-plrと命名した。
【0194】
実施例12 Ssppat-adh-plr発現プラスミドの作成
Skermanella stibiiresistens由来ピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列を大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、5’末端にEcoRI、3’末端にBamHIを導入した遺伝子をeurofins社に委託して合成し、配列番号85のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをEcoRI/BamHIで処理し、得られたDNA断片と、比較例4で作製したpUC18-adh-plrをEcoRI及びBamHIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号85のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-Ssppat-adh-plrと命名した。
【0195】
実施例13 Rsppat-adh-plr発現プラスミドの作成
Rhizobium sp. AC44/96由来ピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列を大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、5’末端にEcoRI、3’末端にBamHIを導入した遺伝子をeurofins社に委託して合成し、配列番号86のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをEcoRI/BamHIで処理し、得られたDNA断片と、比較例4で作製したpUC18-adh-plrをEcoRI及びBamHIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号86のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-Rsppat-adh-plrと命名した。
【0196】
実施例14 Etppat-adh-plr発現プラスミドの作成
Erwinia toletana由来ピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列を大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、5’末端にEcoRI、3’末端にBamHIを導入した遺伝子をeurofins社に委託して合成し、配列番号87のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをEcoRI/BamHIで処理し、得られたDNA断片と、比較例4で作製したpUC18-adh-plrをEcoRI及びBamHIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号87のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-Etppat-adh-plrと命名した。
【0197】
実施例15 Hgppat-adh-plr発現プラスミドの作成
Herbiconiux ginsengi由来ピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列を大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、5’末端にEcoRI、3’末端にBamHIを導入した遺伝子をeurofins社に委託して合成し、配列番号88のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをEcoRI/BamHIで処理し、得られたDNA断片と、比較例4で作製したpUC18-adh-plrをEcoRI及びBamHIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号88のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-Hgppat-adh-plrと命名した。
【0198】
試験5 ピリドキシンを原料としたピリドキサミンの製造
実施例9〜15で作製したプラスミドのそれぞれで形質転換したDH5αを、500mlのバッフル付き三角フラスコ中のアンピシリン100μg/mlを含むLB培地100mlに接種し、30℃にて24時間振盪培養した。培養液の40mlを取り、5000rpmで5分間遠心分離し、沈殿物として得られた菌体を水0.9mlに懸濁して菌体懸濁液を
調製した。
ピリドキシン塩酸塩及びL−アラニンを水で溶解し、ピリドキシン塩酸塩(500mM)及びL−アラニン(500mM)を含む基質液を調製した。基質液のpHを、25%アンモニア水でpH8.0に調整した。基質液400μl、水500μlと菌体懸濁液100μlを混合し、37℃で1時間反応させた。反応液を一部採取し、上記した分析条件で分析した。結果を表4に示す。なお、表4に示すピリドキサミン生産量とは、実施例1で作製したppat-adh-plr発現株が生産するピリドキサミン二塩酸塩のモル量を100とした相対量で表す。
【0199】
【表4】
【0200】
表4に示されたように、ピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子として、実施例1にて使用したMesorhizobium loti MAFF303099由来ピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子に代えて、Mesorhizobium sp. YR577由来ピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子、Pseudaminobacter salicylatoxidans由来ピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子、Bauldia litoralis 由来ピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子、Skermanella stibiiresistens 由来ピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子、Rhizobium sp. AC44/96由来ピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子、Erwinia toletana由来ピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子、又はHerbiconiux ginsengi 由来ピリドキサミン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子を導入することによっても、ピリドキシン塩酸塩からピリドキサミン二塩酸塩を生産することができた。
【0201】
実施例16 ppat-Ahadh-plr発現プラスミドの作成
Aeromonas hydrophila由来アラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に、コードするアミノ酸配列においてD198Aとなる変異を導入し、かつ大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、さらに5’末端にBamHI、3’末端にSalIを導入したものをeurofins社に委託して合成し、配列番号89のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをBamHI/SalIで処理し、得られたDNA断片と、比較例2で作製したpUC18-ppat-plrをBamHI及びSalIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号89のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppat-Ahadh-plrと命名した。
【0202】
実施例17 ppat-Rsadh-plr発現プラスミドの作成
Rhizobium sp. LPU83由来アラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に、コードするアミノ酸配列においてD198Aとなる変異を導入し、かつ大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、さらに5’末端にBamHI、3’末端にSalIを導入したものをeurofins社に委託して合成し、配列番号90のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをBamHI/SalIで処理し、得られたDNA断片と、比較例2で作製したpUC18-ppat-plrをBamHI及びSalIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号90のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppat-Rsadh-plrと命名した。
【0203】
実施例18 ppat-Pmadh-plr発現プラスミドの作成
Pseudomonas mendocina由来アラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に、コードするアミノ酸配列においてD198Aとなる変異を導入し、かつ大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、さらに5’末端にBamHI、3’末端にSalIを導入したものをeurofins社に委託して合成し、配列番号91のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをBamHI/SalIで処理し、得られたDNA断片と、比較例2で作製したpUC18-ppat-plrをBamHI及びSalIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号91のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppat-Pmadh-plrと命名した。
【0204】
実施例19 ppat-Bjadh1-plr発現プラスミド及びppat-Bjadh2-plr発現プラスミドの作成
Bradyrhizobium japonicum由来アラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子はBradyrhizobium japonicum中に2種存在する。これら2種のBradyrhizobium japonicum由来アラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に、コードするアミノ酸配列においてD198Aとなる変異を導入し、かつ大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、さらに5’末端にBamHI、3’末端にSalIを導入したものをeurofins社に委託して合成し、配列番号92及び配列番号93のヌクレオチド配列を有する合成DNA2種を得た。配列番号92を含む該合成DNAをBamHI/SalIで処理し、得られたDNA断片と、比較例2で作製したpUC18-ppat-plrをBamHI及びSalIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号92のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppat-Bjadh1-plrと命名した。
同様に配列番号93を含む該合成DNAをBamHI/SalIで処理し、得られたDNA断片と、比較例2で作製したpUC18-ppat-plrをBamHI及びSalIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号93のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppat-Bjadh2-plrと命名した。
【0205】
実施例20 ppat-Saadh-plr発現プラスミドの作成
Streptomyces aureofaciens由来アラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に、コードするアミノ酸配列においてD198Aとなる変異を導入し、かつ大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、さらに5’末端にBamHI、3’末端にSalIを導入したものをeurofins社に委託して合成し、配列番号94のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをBamHI/SalIで処理し、得られたDNA断片と、比較例2で作製したpUC18-ppat-plrをBamHI及びSalIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号94のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppat-Saadh-plrと命名した。
【0206】
実施例21 ppat-Acadh-plr発現プラスミドの作成
Anabaena cylindrica由来アラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に、コードするアミノ酸配列においてD198Aとなる変異を導入し、かつ大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、さらに5’末端にBamHI、3’末端にSalIを導入したものをeurofins社に委託して合成し、配列番号95のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをBamHI/SalIで処理し、得られたDNA断片と、比較例2で作製したpUC18-ppat-plrをBamHI及びSalIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号95のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppat-Acadh-plrと命名した。
【0207】
実施例22 ppat-Bsadh-plr発現プラスミドの作成
Bacillus subtilis由来アラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に、コードするアミノ酸配列においてD196Aとなる変異を導入し、かつ大腸菌にコドン最適化するようにデザインし、さらに5’末端にBamHI、3’末端にSalIを導入したものをeurofins社に委託して合成し、配列番号96のヌクレオチド配列を有する合成DNAを得た。該合成DNAをBamHI/SalIで処理し、得られたDNA断片と、比較例2で作製したpUC18-ppat-plrをBamHI及びSalIで処理したDNA断片とをライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションした。このライゲーション産物でエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。このようにして得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号96のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-ppat-Bsadh-plrと命名した。
【0208】
試験6 ピリドキシンを原料としたピリドキサミンの製造
実施例16〜22で作製したプラスミドのそれぞれで形質転換したDH5αを、500mlのバッフル付き三角フラスコ中のアンピシリン100μg/mlを含むLB培地100mlに接種し、30℃にて24時間振盪培養した。培養液の40mlを取り、5000rpmで5分間遠心分離し、沈殿物として得られた菌体を水0.9mlに懸濁して菌体懸濁液を
調製した。
ピリドキシン塩酸塩及びL−アラニンを水で溶解し、ピリドキシン塩酸塩(500mM)及びL−アラニン(500mM)を含む基質液を調製した。基質液のpHを、25%アンモニア水でpH8.0に調整した。基質液400μl、水500μlと菌体懸濁液100μlを混合し、37℃で1時間反応させた。反応液を一部採取し、上記した分析条件で分析した。結果を表5に示す。なお、表5に示すピリドキサミン生産量とは、実施例1で作製したppat-adh-plr発現株が生産するピリドキサミン二塩酸塩のモル量を100とした相対量で表す。
【0209】
【表5】
【0210】
表5に示されたように、アラニンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子として、実施例1にて使用したShewanella sp. AC10由来アラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子に代えて、Aeromonas hydrophila由来アラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子、Rhizobium sp. LPU83由来アラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子、Pseudomonas mendocina 由来アラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子、Bradyrhizobium japonicum 由来アラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子(Bradyrhizobium japonicum の2種のアラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子の各々)、Streptomyces aureofaciens 由来アラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子、Anabaena cylindrica由来アラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子、又はBacillus subtilis 由来アラニンデヒドロゲナーゼ遺伝子を導入することによっても、ピリドキシン塩酸塩からピリドキサミン二塩酸塩を生産することができた。
【0211】
実施例23 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質を発現する大腸菌の作成
Saccharomyces cerevisiaeのピリドキシンデヒドロゲナーゼ遺伝子(配列番号1)をコードするヌクレオチド配列を大腸菌にコドン最適化したDNAを、GenScript社に委託して作成した(配列番号13)。得られた合成DNAを鋳型として、配列番号18及び配列番号17に示すオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により目的遺伝子を増幅した。増幅したDNAをEcoRI/HindIIIで処理し、得られたDNA断片と、pUC18(Takara社製)のEcoRI/HindIII処理物とを、ライゲーション ハイ(東洋紡株式会社製)を用いてライゲーションして発現ベクターを得た。発現ベクターを含むライゲーション産物によってエシェリヒア コリDH5α(東洋紡株式会社製)を形質転換した。形質転換体をLB寒天培地で培養し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択した。
【0212】
選択した株が、配列番号13のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを含んでいることを確認するために、得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。通常のヌクレオチド配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片のヌクレオチド配列が配列番号13のヌクレオチド配列であることを確認した。得られたプラスミドをpUC18-plrと命名した。
【0213】
実施例24 ピリドキシンデヒドロゲナーゼ発現株によるピリドキシンを基質としたピリドキサール合成
pUC18-plrによって形質転換した大腸菌DH5α株をLB液体培地2mL(アンピシリン100μg/mL含有) へ接種し、試験管で37℃にて24時間振盪培養した。1mLの培養液を13000rpmで5分間遠心分離し、得られた菌体を水1mLに懸濁して菌体懸濁液を得た。
ピリドキシン塩酸塩及びβ−NADP
+をそれぞれ100mMとなるよう水に溶かして基質液を得た。100μLの基質液、100μLの1M Tris−HCl(pH8.0)、及び700μLの水を混合し、そこに100μLの菌体懸濁液を添加して反応を開始した。反応は37℃で1時間行った。
【0214】
反応終了後に反応液の一部を採取して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析を行った。
1時間の反応によって37.2μgのピリドキサールが得られ、OD660当たりのピリドキサール生成速度は2.1×10
−3μmol/min/OD660であった。
・HPLCの分析条件
カラム:Shodex Asahipak ODP−50 6E(商品名、昭和電工株式会社製)
ガードカラム:Shodex Asahipak ODP-50G 6A(商品名、昭和電工株式会社製)
カラム温度:30℃
ポンプ流速:1.0mL/分
溶離液:50mMリン酸緩衝液(pH2.0)
検出:UV294nm。
【0215】
比較例5 酵母によるピリドキシンを基質としたピリドキサール合成
Saccharomyces cerevisiae X−2180−1A(ATCC26486)を2mLのYPD液体培地へ接種し、試験管で30℃にて24時間振盪培養した。1mLの培養液を13000rpmで5分間遠心分離し、得られた菌体を1mLの水で懸濁して菌体懸濁液を得た。
基質液として、実施例24の基質液と同じ組成のものを調製し、実施例24の反応条件と同じ条件で反応を行った。
【0216】
反応終了後に反応液の一部を採取して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、実施例24と同様の条件で分析を行った。
1時間の反応によってピリドキサールは得られなかった。
【0217】
実施例25 ピリドキシンデヒドロゲナーゼ発現株によるピリドキサールを基質としたピリドキシン合成
実施例24と同様に菌体懸濁液を調製し、ピリドキサール塩酸塩及びβ−NADPHをそれぞれ100mMとなるよう水に溶かして基質液を得た。100μLの基質液、100μLの1M Tris−HCl(pH8.0)、及び700μLの水を混合し、そこに100μLの菌体懸濁液を添加して反応を開始した。
反応終了後に反応液の一部を採取して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、実施例24と同様の条件で分析を行った。
1時間の反応によって815.5μgのピリドキシンが得られ、OD660当たりのピリドキシン生成速度は4.5×10
−2μmol/min/OD660であった。
【0218】
比較例6 酵母によるピリドキサールを基質としたピリドキシン合成(OD660当たりのピリドキシン生成速度)
比較例5と同様に菌体懸濁液を調製し、基質液として実施例25の基質液と同じ組成のものを調製し、実施例25の反応条件と同じ条件で反応を行った。
反応終了後に反応液の一部を採取して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、実施例24と同様の条件で分析を行った。
1時間の反応によって10.9μgのピリドキシンが得られ、OD660当たりのピリドキシン生成速度は1.7×10
−4μmol/min/OD660であった。
【0219】
実施例24〜25及び比較例5〜6の結果を表6に示す。実施例24及び25では、比較例5及び6と比較して、ピリドキサール又はピリドキシンの収量及び生成速度は顕著に優れていた。特に、ピリドキサール合成においては、比較例5では検出感度以下であったピリドキサールを、実施例24では生産することができた。
【0220】
【表6】
【0221】
実施例26 ピリドキシンデヒドロゲナーゼ発現株によるピリドキシンを基質としたピリドキサール合成
pUC18-plrによって形質転換した大腸菌DH5α株をLB液体培地100mL(アンピシリン100μg/mL含有) へ接種し、バッフル付三角フラスコで37℃にて24時間振盪培養した。40mLの培養液を8000rpmで20分間遠心分離し、得られた菌体を水400μLに懸濁して菌体懸濁液を得た。基質液として実施例24の基質液と同じ組成のものを調製し、実施例24の反応条件と同じ条件で反応を行った。反応は37℃で30分行った。
反応終了後に反応液の一部を採取して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、実施例24と同様の条件で分析を行った。
30分の反応によって262.4μgのピリドキサールが得られ、乾燥菌体重量当たりのピリドキサール生成速度は5.8μmol/min/g−dry cellであった。
【0222】
比較例7 ドライイーストによるピリドキシンを基質としたピリドキサール合成
スーパーカメリヤ ドライイースト(商品名、日清)を100mg/mlになるよう水で懸濁し、菌体懸濁液を得た。
基質液として、実施例24の基質液と同じ組成のものを調製し、実施例24の反応条件と同じ条件で反応を行った。
反応終了後に反応液の一部を採取して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、実施例24と同様の条件で分析を行った。
30分の反応によって34.1μgのピリドキサールが得られ、乾燥菌体重量当たりのピリドキサール生成速度は0.9μmol/min/g−dry cellであった。
【0223】
実施例27 ピリドキシンデヒドロゲナーゼ発現株によるピリドキサールを基質としたピリドキシン合成
実施例26と同様に菌体懸濁液を調製し、基質液として実施例25の基質液と同じ組成のものを調製し、実施例25の反応条件と同じ条件で反応を行った。
反応終了後に反応液の一部を採取して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、実施例24と同様の条件で分析を行った。
30分の反応によって1457.4μgのピリドキシンが得られ、乾燥菌体重量当たりのピリドキシン生成速度は33.5μmol/min/g−dry cellであった。
【0224】
比較例8 ドライイーストによるピリドキサールを基質としたピリドキシン合成(乾菌体重量当たりのピリドキシン生成速度)
比較例7と同様に菌体懸濁液を調製し、基質液として実施例25の基質液と同じ組成のものを
調製し、実施例25の反応条件と同じ条件で反応を行った。
反応終了後に反応液の一部を採取して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、実施例24と同様の条件で分析を行った。
30分の反応によって325.3μgnoピリドキシンが得られ、乾燥菌体重量当たりのピリドキシン生成速度は13.9μmol/min/g−dry cellであった。
【0225】
実施例26〜27及び比較例7〜8の結果を表7に示す。実施例26及び27では、比較例7及び8と比較して、ピリドキサール又はピリドキシンの収量及び生成速度は顕著に優れていた。実施例26では、比較例7の約8倍のピリドキサール収量が得られ、乾燥菌体重量1g当たりの生成速度は約6.5倍であった。実施例27では比較例8の約4.5倍のピリドキシン収量が得られ、乾燥菌体重量1g当たりの生成速度は約2.5倍であった。
【0226】
【表7】
【0227】
2017年5月12日に出願された日本国特許出願2017−095571号及び2017年5月12日に出願された日本国特許出願2017−095573号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。