特許第6964468号(P6964468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6964468
(24)【登録日】2021年10月21日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】繊維製品の洗濯方法
(51)【国際特許分類】
   D06L 1/16 20060101AFI20211028BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20211028BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20211028BHJP
   C11D 1/83 20060101ALI20211028BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20211028BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20211028BHJP
   C11D 1/40 20060101ALI20211028BHJP
   C11D 1/62 20060101ALI20211028BHJP
   D06M 13/328 20060101ALI20211028BHJP
   D06M 13/463 20060101ALI20211028BHJP
   D06M 15/356 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   D06L1/16
   C11D3/37
   C11D17/08
   C11D1/83
   C11D1/04
   C11D3/43
   C11D1/40
   C11D1/62
   D06M13/328
   D06M13/463
   D06M15/356
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-164658(P2017-164658)
(22)【出願日】2017年8月29日
(65)【公開番号】特開2019-44278(P2019-44278A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】田井 亜衣子
(72)【発明者】
【氏名】前田 泉
(72)【発明者】
【氏名】桶田 翔太
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/032995(WO,A1)
【文献】 特開2011−047065(JP,A)
【文献】 特開2008−190091(JP,A)
【文献】 特開2010−209294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06L1/00−4/75
C11D1/00−19/00
D06M13/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分と下記(B)成分を含む液体洗浄剤を水で希釈して洗浄液とし、前記洗浄液中で繊維製品を洗浄処理する洗浄工程を1回以上行った後に、下記(E)成分を含むすすぎ水で前記繊維製品をすすぎ処理するすすぎ工程を有し、
前記(B)成分が、下記(B−1)成分及び下記(B−2)成分を含み、(B−1)/(B−2)で表される、前記(B−2)成分に対する前記(B−1)成分の質量比が1.2〜5である、繊維製品の洗濯方法。
(A)成分:下式(a−1)で表される構成単位、及び下式(a−2)で表される構成単位の少なくとも一方を有するポリマー。
(B)成分:界面活性剤(ただし高級脂肪酸塩を除く)。
(B−1)成分:ノニオン界面活性剤。
(B−2)成分:アニオン界面活性剤(ただし、高級脂肪酸塩を除く。)。
(E)成分:3級アミン酸塩型カチオン界面活性剤及び4級アンモニウム型カチオン界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上の柔軟基剤。
【化1】
(式中、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、Xは対イオンである。)
【化2】
(式中、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、Xは対イオンである。)
【請求項2】
(B)/(A)で表される、前記(A)成分に対する前記(B)成分の質量比が30以上である、請求項1に記載の繊維製品の洗濯方法。
【請求項3】
(B−1)/(A)で表される、前記(A)成分に対する前記(B−1)成分の質量比が10以上である、請求項またはに記載の繊維製品の洗濯方法。
【請求項4】
前記(B)成分が、下記(C)成分を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の繊維製品の洗濯方法。
(C)成分:高級脂肪酸またはその塩。
【請求項5】
前記液体洗浄剤が、下記(D)成分を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の繊維製品の洗濯方法。
(D)成分:炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基と炭素数2または3のアルキレングリコール単位とを有するアルキレングリコールエーテル、および下式(d−1)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上の溶剤。
【化3】
(式中、R51〜R53は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基、R54は、水素原子又はアセチル基である。)
【請求項6】
前記(B−1)成分が、下記式(b−1−1−MEE)で表される化合物を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の繊維製品の洗濯方法。
11−C(=O)O−[(EO)/(PO)]−(EO)−R12 ・・・(b−1−1−MEE)
式(b−1−1−MEE)中、R11は炭素数7〜22の炭化水素基であり、R12はメチル基であり、sはEOの平均繰り返し数を表し、6〜20の数であり、tはPOの平均繰り返し数を表し、0であり、uはEOの平均繰り返し数を表し、0〜20の数であり、EOはオキシエチレン基を表し、POはオキシプロピレン基を表す。
【請求項7】
前記(B−1)成分が、さらに下記式(b−1−2−AE)で表される化合物を含み、前記式(b−1−2−AE)で表される化合物に対する、前記式(b−1−1−MEE)で表される化合物の質量比を表す、MEE/AEが0.4〜20である、請求項6に記載の繊維製品の洗濯方法。
21−O−[(EO)/(PO)]−(EO)−H ・・・(b−1−2−AE)
式(b−1−2−AE)中、R21は炭素数10〜18の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基であり、vはEOの平均繰り返し数を表し、3〜20の数であり、wはPOの平均繰り返し数を表し、0であり、xはEOの平均繰り返し数を表し、0〜20の数であり、かつ(v+x)が7〜16であり、EOはオキシエチレン基を表し、POはオキシプロピレン基を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品の洗濯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、柔軟性付与や香り付けを目的に柔軟剤を使用する消費者が増えている。洗浄後のすすぎ水に柔軟剤を含有させると、タオルや衣類等の繊維製品がやわらかい仕上がりになる一方で、親水性が低下して吸水性が低下しやすいという特徴もある。
特許文献1では、柔軟剤処理に起因する親水性の低下を防止するために、−S(=O)−で表される構成単位と、カチオン性基を有する構成単位とを有する高分子化合物で布帛を処理する方法が提案されている。実施例では、洗濯機に給水した水道水に、市販の衣料用粉末洗剤と前記高分子化合物を溶解させ、そこに試験布を入れて洗濯(洗い15分、ためすすぎ2回)し、ためすすぎ2回目の最初に市販の柔軟仕上げ剤を投入する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−190091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来の方法では、柔軟処理後の繊維製品の柔軟性および吸水性が必ずしも充分ではない。
本発明は、洗濯し乾燥した後の繊維製品が、ふっくらしたボリュームのある触感に優れるとともに、柔軟剤処理に起因する吸水性の低下を抑制できる洗濯方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の態様を有する。
[1] 下記(A)成分と下記(B)成分を含む液体洗浄剤を水で希釈して洗浄液とし、前記洗浄液中で繊維製品を洗浄処理する洗浄工程を1回以上行った後に、下記(E)成分を含むすすぎ水で前記繊維製品をすすぎ処理するすすぎ工程を有する、繊維製品の洗濯方法。
(A)成分:下式(a−1)で表される構成単位、及び下式(a−2)で表される構成単位の少なくとも一方を有するポリマー。
(B)成分:界面活性剤(ただし高級脂肪酸塩を除く)。
(E)成分:3級アミン酸塩型カチオン界面活性剤及び4級アンモニウム型カチオン界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上の柔軟基剤。
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、Xは対イオンである。)
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、Xは対イオンである。)
【0010】
[2] (B)/(A)で表される、前記(A)成分に対する前記(B)成分の質量比が30以上である、[1]の繊維製品の洗濯方法。
[3] 前記(B)成分が、下記(B−1)成分及び下記(B−2)成分の少なくとも一方を含む、[1]または[2]の繊維製品の洗濯方法。
(B−1)成分:ノニオン界面活性剤。
(B−2)成分:アニオン界面活性剤(ただし、高級脂肪酸塩を除く。)。
[4] 前記(B)成分が、前記(B−1)成分及び前記(B−2)成分を含み、(B−1)/(B−2)で表される、前記(B−2)成分に対する前記(B−1)成分の質量比が0.9〜5である、[3]の繊維製品の洗濯方法。
[5] (B−1)/(A)で表される、前記(A)成分に対する前記(B−1)成分の質量比が10以上である、[3]または[4]の繊維製品の洗濯方法。
[6] 前記(B)成分が、下記(C)成分を含む、[1]〜[5]のいずれかの繊維製品の洗濯方法。
(C)成分:高級脂肪酸またはその塩。
[7] 前記液体洗浄剤が、下記(D)成分を含む、[1]〜[6]のいずれかの繊維製品の洗濯方法。
(D)成分:炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基と炭素数2または3のアルキレングリコール単位とを有するアルキレングリコールエーテル、および下式(d−1)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上の溶剤。
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、R51〜R53は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基、R54は、水素原子又はアセチル基である。)
【0013】
[8]洗浄液の総質量に対して、(A)成分の含有量が0.3〜15質量ppmである、[1]〜[7]のいずれかの繊維製品の洗濯方法。
[9]すすぎ水の総質量に対して、(E)成分の含有量が10〜200質量ppmである、[1]〜[8]のいずれかの繊維製品の洗濯方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の洗濯方法によれば、洗濯し乾燥した後の繊維製品が、ふっくらしたボリュームのある触感(以下、単に「ふっくら感」ということもある。)に優れるとともに、柔軟剤処理に起因する吸水性の低下を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪液体洗浄剤≫
本実施形態の液体洗浄剤は、(A)成分と(B)成分を含む。
<(A)成分>
(A)成分は、下式(a−1)で表される構成単位(以下、構成単位(a−1)ともいう。)、及び下式(a−2)で表される構成単位(以下、構成単位(a−2)ともいう。)の少なくとも一方を有するポリマーである。
構成単位(a−1)、(a−2)は、下式(a−4)で表されるジアルキルジアリルアンモニウム塩モノマーに由来する構成単位である。
(A)成分は、液体洗浄剤を水で希釈した洗浄液中で(B)成分と複合体を形成することによって繊維に吸着し、形状保持効果を発揮して乾燥後の繊維にふっくら感を与え、柔軟剤処理に起因する吸水性の低下抑制に寄与する。
(A)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
【化4】
【0017】
【化5】
【0018】
式(a−4)において、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。
式(a−1)中のR、R、および式(a−2)中のR、Rは、それぞれ(a−4)中のR、Rと同じである。
式(a−1)、式(a−2)および式(a−4)におけるXは対イオンであり、例えば塩素イオン、臭素イオン等のハロゲンイオン;硫酸イオン、硝酸イオン、亜硫酸イオン等の無機酸イオン;メチル硫酸イオン、酢酸イオン、乳酸イオン等の有機酸イオン;が挙げられる。
【0019】
(A)成分は、構成単位(a−1)、(a−2)以外に、上式(a−4)で表されるモノマーと共重合可能な他のモノマーに由来する構成単位を有してもよい。
(A)成分は、下式(a−3)で表される構成単位(以下、構成単位(a−3)ともいう。)を有することが、ふっくら・ボリューム感付与、及び製剤化の点で好ましい。
式(a−3)において、Rは、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、または炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。
【0020】
【化6】
【0021】
(A)成分の質量平均分子量は、通常1,000〜5,000,000であり、10,000〜3,000,000が好ましく、100,000〜2,000,000がより好ましく、さらに500,000〜2,000,000がより好まし。なお、本明細書における質量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準物質として、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた値を意味する。
(A)成分の重合の形態は、特に限定されず、ブロック重合、ランダム重合又はグラフト重合のいずれであってもよい。
【0022】
(A)成分の全構成単位に対して、構成単位(a−1)と構成単位(a−2)の合計は10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましい。
(A)成分が構成単位(a−3)を有する場合、[構成単位(a−1)と構成単位(a−2)の合計]:構成単位(a−3)のモル比は、1:9〜7:3が好ましく、2:8〜6:4がより好ましい。
【0023】
(A)成分としては、式(a−4)で表されるジアリルジアルキルアンモニウム塩に由来する構成単位と、アクリルアミドに由来する構成単位(上記(a−3)においてR、R、Rが水素原子である構成単位)とを有するポリマーが好ましく、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(上記(a−4)においてR、Rがメチル基、Xが塩素イオンである化合物)とアクリルアミドとのコポリマーがより好ましい。
【0024】
(A)成分は、合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
(A)成分は、通常のラジカル重合により製造できる。例えば(A)成分を構成するモノマーを、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の重合方法により重合することで製造できる。また、重合の際には、通常のラジカル重合に用いられる重合開始剤を使用することが好ましく、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、過硫酸カリウム等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物を用いることができる。
【0025】
<(B)成分>
(B)成分は界面活性剤である。(B)成分は洗浄効果を発揮するとともに、(A)成分と複合体を形成することによって、(A)成分の繊維への吸着に寄与する。その結果、(A)成分による形状保持効果が発揮されて洗濯、乾燥後の繊維製品にふっくら感が与えられ、柔軟剤処理に起因する吸水性の低下が抑制される。
(B)成分としては、繊維製品の洗浄剤に用いられる公知の界面活性剤を使用できる。 (B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
より高い洗浄力が得られ、(A)成分と複合体を形成して(A)成分を繊維へ吸着させる効果に優れる点で、(B)成分が下記(B−1)成分及び下記(B−2)成分の少なくとも一方を含むことが好ましい。
(B−1)成分:ノニオン界面活性剤。
(B−2)成分:アニオン界面活性剤(ただし、高級脂肪酸塩を除く。)。
【0027】
[(B−1)成分]
(B−1)成分であるノニオン界面活性剤としては、下式(b−1−1)で表される化合物または下式(b−1−2)で表される化合物が好ましい。
11−C(=O)O−[(EO)/(PO)]−(EO)−R12 ・・・(b−1−1)
21−O−[(EO)/(PO)]−(EO)−H ・・・(b−1−2)
式(b−1−1)中、R11は炭素数7〜22の炭化水素基であり、R12は炭素数1〜6のアルキル基であり、sはEOの平均繰り返し数を表し、6〜20の数であり、tはPOの平均繰り返し数を表し、0〜6の数であり、uはEOの平均繰り返し数を表し、0〜20の数であり、EOはオキシエチレン基を表し、POはオキシプロピレン基を表す。tが1以上である場合、[(EO)/(PO)]において、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とは、ランダム重合であってもよいし、ブロック重合であってもよい。
式(b−1−2)中、R21は炭素数6〜22の炭化水素であり、vはEOの平均繰り返し数を表し、3〜20の数であり、wはPOの平均繰り返し数を表し、0〜6の数であり、xはEOの平均繰り返し数を表し、0〜20の数であり、EOはオキシエチレン基を表し、POはオキシプロピレン基を表す。wが1以上である場合、[(EO)/(PO)]において、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とは、ランダム重合であってもよいし、ブロック重合であってもよい。
なお、平均繰り返し数は、ガスクロマトグラフィー等によって測定することができる。
【0028】
式(b−1−1)において、R11の炭素数は、9〜21が好ましく、11〜21がより好ましい。R11は、アルキル基、アルケニル基が好ましい。R11は直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。洗浄力により優れる点で、R11は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数7〜22のアルキル基、または直鎖もしくは分岐鎖の炭素数7〜22のアルケニル基が好ましい。
12は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。なかでもメチル基、エチル基が好ましい。
s+uは6〜20が好ましく、6〜18がより好ましく、11〜18がさらに好ましく、14〜18が特に好ましい。tは0〜3が好ましく、0がより好ましい。
【0029】
式(b−1−2)において、R21の炭素数は、10〜20が好ましく、10〜18がさらに好ましい。式(b−1−2)において、R21は直鎖の炭化水素基であってもよく、分岐鎖の第1級の炭化水素基及び直鎖の第2級炭化水素基から選ばれる基であってもよい。
式(b−1−2)において、R21が直鎖の炭化水素基の場合、v+xは3〜20が好ましく、5〜18がより好ましく、6〜18がさらに好ましく、11〜18が特に好ましい。wは0〜6の数であり、0〜3が好ましい。
式(b−1−2)において、R21が分岐鎖の第1級の炭化水素基及び直鎖の第2級炭化水素基から選ばれる基である場合、v+xは3〜8が特に好ましく、wは0が好ましい。
【0030】
(B−1)成分が、式(b−1−1)中のtが0である化合物(すなわち、ポリオキシエチレン脂肪酸アルキルエステル)を含むことが好ましい。式(b−1−1)中のtが0であり、R12がメチル基であるポリオキシエチレン脂肪酸メチルエステル(以下「MEE」と表記する。)を含むことがより好ましい。
(B−1)成分が、式(b−1−2)中のR21が炭素数10〜18の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基であり、wが0、かつ(v+x)が7〜16であるアルコールエトキシレート(以下「AE」と表記する。)と、MEEを含むことが好ましい。
(B−1)成分の総質量に対して、AEとMEEの合計が30〜100質量%であることが好ましく、50〜100質量%がより好ましく、70〜100質量%がさらに好ましい。
(B−1)成分がAEとMEEを含む場合、MEE/AEの質量比は0.4〜20が好ましく、0.5〜10がより好ましく、0.8〜5がより好ましい。MEE/AEの質量比が上記の範囲内であると、すすぎ性がより良好になり、すすぎ工程後に界面活性剤が残留しにくく、吸水性の低下がより抑制される。またふっくら感もより高くなる。
【0031】
[(B−2)成分]
(B−2)成分であるアニオン界面活性剤としては、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩(LAS);α−オレフィンスルホン酸塩(AOS);直鎖又は分岐鎖のアルキル硫酸エステル塩(AS);アルキルエーテル硫酸エステル塩又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩(AES);アルキル基を有するアルカンスルホン酸塩;α−スルホ脂肪酸エステル塩(MES)等が挙げられる。
アニオン界面活性剤における塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン塩などが挙げられる。
【0032】
(B−2)成分がLASまたはAESを含むことが好ましい。
LASとしては、直鎖アルキル基の炭素数が8〜16のものが好ましく、炭素数10〜14のものが特に好ましい。
AESとしては、下式(b−2−1)で表される化合物が好ましい。
31−O−(EO)−SOM ・・・(b−2−1)
(式中、R31は炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、jはEOの平均繰り返し数を表し、1〜10の数であり、Mは対イオンである。)
【0033】
(B−2)成分の総質量に対して、LASの含有量は20〜100質量%が好ましく、50〜100質量%がより好ましく、70〜100質量%がさらに好ましい。LASの含有量が上記範囲の下限値以上であると、再汚染防止性能により優れ、液体洗浄剤のハンドリング性にもより優れる。
【0034】
液体洗浄剤において、(B)/(A)の質量比が30以上であることが好ましく、40以上がより好ましく、70以上がさらに好ましく、80以上が特に好ましい。上限は1000以下が好ましく、400以下がより好ましく、200以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると液体洗浄剤中での(A)成分の分散性がより優れる。上限値以下であると、(A)成分と(B)成分との複合体が充分に形成され、洗濯、乾燥後の繊維製品にふっくら感を与え、また柔軟剤処理に起因する吸水性の低下を抑制する効果により優れる。
【0035】
液体洗浄剤が(B−1)成分を含む場合、(B−1)/(A)の質量比が10以上であることが好ましい。この値が大きいほど、洗濯、乾燥後の繊維製品にふっくら感を与える効果に優れる。
【0036】
(B)成分が(B−1)成分及び(B−2)成分を含む場合、(B−1)/(B−2)の質量比は0.9〜5が好ましく、1〜2.5がより好ましく、1.2〜2がさらに好ましい。
(B−1)成分/(B−2)成分が上記範囲の下限値以上であると、繊維製品にふっくら感を与える効果により優れ、上限値以下であると、液体洗浄剤中での(A)成分の分散性がより優れる。
【0037】
(B)成分の総質量に対して、(B−1)成分と(B−2)成分の合計の含有量は、50〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%がさらに好ましい。(B−1)成分と(B−2)成分の合計の含有量が上記範囲の下限値以上であると、洗濯、乾燥後の繊維製品にふっくら感を与える効果により優れる。
【0038】
<(C)成分>
液体洗浄剤は、(C)成分である高級脂肪酸またはその塩を含むことが好ましい。(C)成分を含有させることにより、(B)成分による泡立ちが低減されてすすぎ性がより良好になり、すすぎ工程後に界面活性剤が残留しにくく、吸水性の低下がより抑制される。
「高級脂肪酸」とは、炭素数8〜22の脂肪酸を意味する。高級脂肪酸としては、炭素数8〜18の鎖状モノカルボン酸が好ましい。具体的には、一般式:R41−COOH(式中、R41は炭素数7〜21の脂肪族炭化水素基である。)で表される化合物が挙げられる。式中、R41の脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基が好好ましい。R41の脂肪族炭化水素基における炭素数は10〜20が好ましい。
【0039】
(C)成分における塩の形態としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、又はアンモニウム塩等が挙げられる。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、又はカリウム塩等が挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、又はマグネシウム塩等が挙げられる。アミン塩としては、アルカノールアミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、又はトリエタノールアミン塩など)等が挙げられる。
(C)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
また、(C)成分は、単一鎖長の混合物であってもよく、2以上の鎖長の混合物であってもよい。
液体洗浄剤に(C)成分を含有させる場合、(B)/(C)の質量比が1〜35であることが好ましく、4〜35がより好ましく、6〜35がさらに好ましい。上限値以下であると、すすぎ性により優れる。下限値以上であると液体洗浄剤の安定性により優れる。
特に、(C)成分がヤシ脂肪酸またはその塩を含むことがすすぎ性及び製剤化の点で好ましい。(C)成分の総質量に対して、ヤシ脂肪酸とヤシ脂肪酸塩の合計の割合が60〜100質量%であることが好ましく、80〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%がさらに好ましい。
【0040】
<(D)成分>
液体洗浄剤は、下記(D)成分を含むことが好ましい。
(D)成分:炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基と炭素数2または3のアルキレングリコール単位とを有するアルキレングリコールエーテル(以下「特定のアルキレングリコール」という。)、および下式(d−1)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上の溶剤。
液体洗浄剤に(D)成分を含有させることにより、液体洗浄剤を調製する際に(A)成分、(B)成分および任意成分を混合し易くなる。
(D)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
【化7】
【0042】
式(d−1)において、R51〜R53は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基、R54は、水素原子又はアセチル基である。
51〜R53のうち、2つ以上が水素原子であることが好ましい。R51〜R53のいずれかがアルキル基である場合、該アルキル基の炭素数は、1〜2が好ましく、1がより好ましい。R54は、水素原子が好ましい。
【0043】
式(d−1)で表される化合物としては、3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシ−2−メチルブタノール、3−メトキシ−1−メチルブタノール、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテートが好ましく、3−メトキシ−3―メチルブタノールがより好ましい。
前記「特定のアルキレングリコール」としては、(ポリ)アルキレングリコール(モノ又はジ)アルキルエーテルが好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(別名:ブチルカルビトール)がより好ましい。
【0044】
液体洗浄剤に(D)成分を含有させる場合、(D)/(B)の質量比が0.03〜0.8であることが好ましく、0.05〜0.5がより好ましく、0.1〜0.3がさらに好ましい。
【0045】
<任意成分>
液体洗浄剤は、上記の成分以外に、繊維製品用の液体洗浄剤において公知の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。
例えば、水、酵素、キレート剤、ハイドロトロープ剤、洗浄性ビルダー、安定化剤、アルカリ剤(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン等)、シリコーン等の風合い向上剤、防腐剤、蛍光剤、移染防止剤、パール剤、酸化防止剤、着色剤として汎用の色素又は顔料、乳濁化剤、香料、pH調整剤などが挙げられる。
液体洗浄剤は、(A)成分、(B)成分、および必要に応じて配合する成分を混合することによって得られる。すなわち、液体洗浄剤において、(A)成分と(B)成分は混合された状態で含まれている。
≪柔軟剤組成物≫
<(E)成分>
本実施形態の柔軟剤組成物は、下記(E)成分を含む。
(E)成分:3級アミン酸塩型カチオン界面活性剤及び4級アンモニウム型カチオン界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上の柔軟基剤。
(E)成分としては、柔軟剤の基材として公知の3級アミン酸塩型カチオン界面活性剤及び4級アンモニウム型カチオン界面活性剤を用いることができる。
【0046】
(E)成分は、繊維製品に吸着することで、乾燥後の繊維製品に柔らかい触感を与え、ふっくら感の向上に寄与する。
【0047】
(E)成分として、例えば、エステル基またはアミド基で分断されていてもよい炭素数10〜26の炭化水素基(以下、「長鎖炭化水素基」ともいう。)を1〜3個、好ましくは2〜3個有する3級アミン化合物、その塩およびその4級化物からなる群より選ばれる化合物の1種以上を用いることができる。
長鎖炭化水素基の炭素数は17〜26が好ましく、19〜24がより好ましい。長鎖炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよい。長鎖炭化水素基は、鎖状(直鎖状または分岐鎖状)でもよく環構造を有していてもよい。鎖状の炭化水素基が好ましい。鎖状の炭化水素基は、アルキル基またはアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
長鎖炭化水素基は、その炭素鎖中に、エステル基およびアミド基からなる群より選択される少なくとも1種の分断基を有し、該分断基によって炭素鎖が分断されたものであってもよい。なお、炭素鎖中に分断基を有する場合、分断基が有する炭素原子は、長鎖炭化水素基の炭素数にカウントするものとする。
長鎖炭化水素基は、通常、工業的に使用される牛脂由来の未水添脂肪酸、不飽和部を水添もしくは部分水添して得られる脂肪酸、パーム椰子、油椰子などの植物由来の未水添脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、あるいは不飽和部を水添もしくは部分水添して得られる脂肪酸または脂肪酸エステル等を使用して導入された一価基であることが好ましい。
【0048】
3級アミン化合物の塩は、3級アミン化合物を酸で中和することにより得られる。3級アミン化合物の中和に用いる酸としては、有機酸でも無機酸でもよく、例えば塩酸、硫酸、メチル硫酸等が挙げられる。
アミン化合物の4級化物は、このアミン化合物に4級化剤を反応させて得られる。アミン化合物の4級化に用いる4級化剤としては、例えば塩化メチル等のハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸等のジアルキル硫酸などが挙げられる。これらの4級化剤をアミン化合物と反応させると、アミン化合物の窒素原子に4級化剤のアルキル基が導入され、4級アンモニウムイオンとハロゲンイオンまたはモノアルキル硫酸イオンとの塩が形成される。4級化剤により導入されるアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0049】
<その他の成分>
柔軟剤組成物は、水、水溶性溶剤、ノニオン界面活性剤、環状デキストリン、酵素安定剤、キレート剤、香料、染料、顔料、防腐剤、紫外線吸収剤、抗菌剤など、柔軟剤組成物において公知の成分を含んでよい。
環状デキストリンは再汚染防止効果に寄与する。環状デキストリンは、分子内に1以上の環状構造を有するデキストリンであればよく、例えば、シクロデキストリン、高度分岐環状デキストリンが挙げられる。中でも、高度分岐環状デキストリンが好ましい。
【0050】
≪洗濯方法≫
本実施形態の洗濯方法は液体洗浄剤を水で希釈して洗浄液とし、洗浄液中で繊維製品を洗浄処理する洗浄工程を1回以上行った後に、(E)成分を含むすすぎ水で繊維製品をすすぎ処理するすすぎ工程を有する。
液体洗浄剤を水で希釈する方法は特に限定されず、洗浄工程の開始前または洗浄工程中に、液体洗浄剤を水中に分散させることができる方法であればよい。
繊維製品としては、例えば、衣料、布帛、シーツ、カーテン、絨毯等が挙げられる。
繊維製品の素材は特に限定されず、綿、絹、羊毛等の天然繊維、ポリエステル、ポリアミド等の化学繊維等が挙げられる。
【0051】
洗浄工程では、洗浄液中で、繊維製品に外力を加えて汚れを洗浄液中に移行させた後、脱水等を行って、繊維製品を洗浄液から分離する。
すすぎ工程では、洗浄工程を行った後、液体洗浄剤を添加せず、(E)成分を含むすすぎ水中で、好ましくは繊維製品に外力を加えて、繊維製品中に残留している液体洗浄剤の成分をすすぎ水中に移行させた後、脱水等を行って、繊維製品をすすぎ水から分離する。
洗浄工程は通常1回行う。2回以上繰り返してもよい。すすぎ工程は1回でもよく、2回以上繰り返してもよい。
すすぎ工程を2回以上行う場合は、少なくとも1回において、すすぎ水中に(E)成分を含有させる。好ましくは最後に行うすすぎ工程において、すすぎ水中に(E)成分を含有させる。(A)成分による形状保持効果がより発揮されやすい点で、すすぎ工程は1回が好ましい。
繊維製品に外力を加える方法は、例えば洗濯機により機械力を加える方法でもよく、手洗いによる方法でもよい。
【0052】
洗浄液の総質量に対して、(A)成分の含有量は0.3〜15質量ppmが好ましく、0.5〜10質量ppmがより好ましく、0.9〜3質量ppmがさらに好ましい。
(A)成分の含有量が上記の範囲内であると、乾燥後の繊維にふっくら感を与え、柔軟剤処理に起因する吸水性の低下抑制効果により優れる。
また、すすぎ水の総質量に対して、(E)成分の含有量は10〜200質量ppmが好ましく、20〜150質量ppmがより好ましく、30〜100質量ppmがさらに好ましい。
(E)成分の含有量が上記の範囲内であると、乾燥後の繊維にふっくら感を与える効果により優れる。
【0053】
柔軟剤組成物を水に分散させてすすぎ水とするときの希釈倍率は特に限定されないが、例えば、水1Lに対する柔軟剤組成物の添加量が0.3〜0.5gとなるように設計することが好ましい。
柔軟剤組成物の希釈倍率が上記の範囲であるとき、例えば、以下の組成を有する柔軟剤組成物が好ましい。
柔軟剤組成物の総質量に対して、(E)成分が5〜15質量%、水が70〜95質量%、合計が100質量%である柔軟剤組成物。
(E)成分が上記範囲の下限値以上であると、洗濯、乾燥後の繊維製品にふっくら感を付与する効果がより優れ、上記上限値以下であると凍結復元性を維持できる。
【0054】
<作用機序>
本実施形態の洗濯方法によれば、洗濯し乾燥した後の繊維製品が、ふっくらしたボリュームのある触感に優れるとともに、柔軟剤処理に起因する吸水性の低下を抑制できる。
その理由は以下のように考えられる。(A)成分と(B)成分を含む液体洗浄剤が水で希釈される過程で(A)成分と(B)成分の複合体が形成し、洗浄工程において該複合体が繊維に吸着した後、すすぎ工程で、さらに(E)成分が吸着することによって、乾燥後の繊維にふっくらしたボリュームのある触感を与え、柔軟剤処理に起因する吸水性の低下を抑制する効果が得られる。
また、(B)成分は、液体洗浄剤中における(A)成分の分散性に寄与し、液体洗浄剤に(A)成分と(B)成分とが混合した状態で含有されていると、液体洗浄剤が水で希釈される過程で前記複合体がより効率良く形成されると考えられる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0056】
(使用原料)
<(A)成分>
A−1:ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミドコポリマー(Lubrizol社製、商品名「Noverite300」)。
A−2:ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミドコポリマー(Lubrizol社製、商品名「Noverite302」)。
A−3:ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド・アクリル酸ポリマー(Lubrizol社製、商品名「マーコート3330PR」)。
a−4:ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド・アクリル酸ポリマー(Lubrizol社製、商品名「マーコート3331PR」)。
【0057】
<比較成分(A’)>
A’−5:Lubrizol社製、商品名「マーコート2003」。
A’−6:POE変性シリコーン(東レ・ダウシリコーン社製、商品名「CF1188N」、ポリオキシエチレン基が導入されたシリコーン化合物)。
【0058】
<(B)成分>
[(B−1)成分]
B−1−1(MEE):脂肪酸メチルエステルエトキシレート(脂肪酸の炭素数12〜14、EOの平均付加モル数15)、一般式(b−1−1)中、R11=炭素数11のアルキル基及び炭素数13のアルキル基、R12=メチル基、s=15、t=0、u=0。下記合成例1により合成されたもの。
B−1−2(AE(EO15)):天然アルコールに15モル相当のエチレンオキシドを付加したもの。上式(b−1−2)中、R21=炭素数12のアルキル基及び炭素数14のアルキル基、v=15、w=0、x=0。下記合成例2により合成されたもの。
B−1−3(AE(EO12)):天然アルコールに12モル相当のエチレンオキシドを付加したもの。上式(b−1−2)中、R21=炭素数12のアルキル基及び炭素数14のアルキル基、v=12、w=0、x=0。
B−1−4(EO/POノニオン):天然アルコール(質量比で炭素数12アルコール/炭素数14アルコール=7/3)に、8モル相当のエチレンオキシド、2モル相当のプロピレンオキシド、8モル相当のエチレンオキシドを、この順にブロック付加したもの。上式(b−1−2)中、R21=炭素数12のアルキル基及び炭素数14のアルキル基、v=8、w=2、x=8。
B−1−5:炭素数12の第2級アルコール及び炭素数14の第2級アルコールに、7モル相当のエチレンオキシドを付加したもの。商品名「ソフタノール70」、株式会社日本触媒製。上記上式(b−1−2)中、R21=炭素数12の第2級アルキル基及び炭素数14の第2級のアルキル基、v=7、w=0、x=0。
【0059】
[(B−2)成分]
B−2−1:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)、ライオン株式会社製、商品名「ライポンLH−200」、直鎖アルキル基の炭素数は10〜14。
B−2−2: ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(AES)、上式(b−2−1)で表され、R31=炭素数12〜14の直鎖アルキル基、j=1.0、M=ナトリウムである化合物。
[(C)成分]
C−1:ヤシ脂肪酸:消泡剤、商品名「椰子脂肪酸」、日油株式会社。
【0060】
<(D)成分>
D−1:ジエチレングリコールモノブチルエーテル、商品名「ブチルジグリコール」、日本乳化剤社製。
D−2:3−メトキシ−3−メチルブタノール、商品名「ソルフィット」、(株)クラレ社製。
【0061】
<任意成分(X)>
・BHT:ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤)、商品名「SUMILZER BHT−R」、住友化学株式会社製。配合量は液体洗浄剤の総質量に対して0.05質量%。
・エタノール:水混和性有機溶剤、「発酵アルコール含水1級」、日本アルコール販売株式会社製。配合量は液体洗浄剤の総質量に対して2質量%。
・金属イオン補足剤(キレート剤):クエン酸(一方社油脂工業株式会社製)。配合量は液体洗浄剤の総質量に対して0.3質量%。
・洗浄補助剤:アルキレンテレフタレート単位及び/又はアルキレンイソフタレート単位を含有し、かつ(ポリ)オキシアルキレン単位を有する水溶性ポリマー、商品名「TexCare SRN−170C」、クラリアントジャパン社製。配合量は液体洗浄剤の総質量に対して0.5質量%。
・保存安定性向上剤:安息香酸ナトリウム、東亜合成株式会社製。配合量は液体洗浄剤の総質量に対して0.2質量%。
・保存安定性向上剤:p−トルエンスルホン酸、商品名「パラトルエンスルホン酸」、協和発酵工業株式会社製。配合量は液体洗浄剤の総質量に対して0.2質量。
・酵素:商品名「コロナーゼ(登録商標)48L」、ノボザイムズ社製。配合量は液体洗浄剤の総質量に対して0.5質量%。
・香料:着香剤、特開2002−146399号公報の表11〜18に記載の香料組成物A、配合量は液体洗浄剤の総質量に対して0.8%。
・色素:着色剤、商品名「黄色203号」、癸巳化成株式会社製、配合量は液体洗浄剤の総質量に対して1ppm。
・色素:着色剤、商品名「赤色106号」、癸巳化成株式会社製、配合量は液体洗浄剤の総質量に対して1.5ppm。
【0062】
<pH調整剤>
・MEA:モノエタノールアミン(アルカリ剤)、商品名「モノエタノールアミン」、株式会社日本触媒製。配合量は液体洗浄剤のpH(25℃)が表に示す値になる量(適量)。
【0063】
<(E)成分>
E−1(TES):4級アンモニウム型柔軟基剤(特開2003−12471号公報の実施例4に記載のカチオン界面活性剤。下記合成例4で得たもの)。
E−2(DES):4級アンモニウム型柔軟基剤、N,N−ジ(タローオイルオキシエチル)−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド。
【0064】
<任意成分(Y)>
・ノニオンEO60:ノニオン界面活性剤、1級イソトリデシルアルコールのエチレンオキシド60モル付加物、BASF社製ルテンゾールTO3にエチレンオキサイドを付加させた化合物。
・ノニオンEO21:ノニオン界面活性剤、ラウリルアルコールにエチレンオキサイドを平均21モル付加させた化合物。
・グリセリン:関東化学株式会社製、商品名「グリセリン」。
・塩化カルシウム:(酵素安定化剤)、関東化学株式会社製、商品名「塩化カルシウム(特級)」。
・香料:着香剤、特開2002−146399号公報の表11〜18に記載の香料組成物A。
・EDTA:エチレンジアミンテトラ酢酸塩、関東化学株式会社製、商品名「エチレンジアミン四酢酸」。
・HEDP:(キレート剤)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(ローディア社製、商品名「BRIQUEST ADPA−60A」)。
・クラスターデキストリン(登録商標、グリコ栄養食品株式会社製)。主成分は、分子量が3万〜100万程度であり、分子内に環状構造を1つ有し、さらにその環状部分に多数のグルカン鎖が結合した重量平均重合度2,500程度の高度分岐環状デキストリン。環状構造部分は16〜100個程度のグルコースで構成されており、この環状構造に非環状の分岐グルカン鎖が多数結合している。
【0065】
<合成例1:B−1−1(MEE)の合成>
特開2000−144179号公報に記載の合成方法に準じて合成した。
組成が2.5MgO・Al2O3・zH2Oである水酸化アルミナ・マグネシウム(キョーワード300(商品名)、協和化学工業株式会社製)を600℃で1時間、窒素雰囲気下で焼成して、焼成水酸化アルミナ・マグネシウム(未改質)触媒を得た。焼成水酸化アルミナ・マグネシウム(未改質)触媒2.2gと、0.5N水酸化カリウムエタノール溶液2.9mLと、ラウリン酸メチルエステル280gと、ミリスチン酸メチルエステル70gとを4Lオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内で触媒の改質を行った。次いで、オートクレーブ内を窒素で置換した後、温度を180℃、圧力を0.3MPaに維持しつつ、エチレンオキシド1052gを導入し、撹拌しながら反応させた。
得られた反応液を80℃に冷却し、水159gと、濾過助剤として活性白土及び珪藻土をそれぞれ5gとを添加し混合した後、触媒を濾別してB−1−1(MEE)を得た。
【0066】
<合成例2:B−1−2(AE(EO15))の合成>
プロクター・アンド・ギャンブル社製のCO−1214(商品名)224.4gと、30質量%NaOH水溶液2.0gとを耐圧型反応容器内に仕込み、該反応容器内を窒素置換した。次に、温度100℃、圧力2.0kPa以下で30分間脱水した後、温度を160℃まで昇温した。次いで、反応液を撹拌しながら、エチレンオキシド(ガス状)760.6gを反応液中に徐々に加えた。この時、反応温度が180℃を超えないように添加速度を調節しながら、エチレンオキシドを吹き込み管で加えた。
エチレンオキシドの添加終了後、温度180℃、圧力0.3MPa以下で30分間熟成した後、温度180℃、圧力6.0kPa以下で10分間、未反応のエチレンオキシドを留去した。
次に、温度を100℃以下まで冷却した後、反応物の1質量%水溶液のpHが約7になるように、70質量%p−トルエンスルホン酸を加えて中和し、B−1−2(AE(EO15))を得た。
【0067】
<合成例3:B−2−2(AES)の合成>
容量4Lのオートクレーブ中に、原料アルコールとしてP&G社製の商品名CO1270アルコール(炭素数12のアルコール/炭素数14のアルコールとの質量比=75/25の混合物)400gと、反応用触媒として水酸化カリウム0.8gとを仕込み、該オートクレーブ内を窒素で置換した後、攪拌しながら昇温した。続いて、温度を180℃、圧力を0.3MPa以下に維持しながらエチレンオキシド91gを導入し、反応させることによりアルコールエトキシレートを得た。
ガスクロマトグラフ質量分析計:Hewlett−Packard社製のGC−5890と、検出器:水素炎イオン化型検出器(FID)と、カラム:Ultra−1(HP社製、L25m×φ0.2mm×T0.11μm)とを用いて分析した結果、得られたアルコールエトキシレートは、エチレンオキシドの平均付加モル数が1.0であった。また、エチレンオキシドが付加していない化合物は、得られたアルコールエトキシレートの総質量に対して43質量%であった。
次に、上記で得たアルコールエトキシレート237gを、攪拌装置付の500mLフラスコに採り、窒素で置換した後、液体無水硫酸(サルファン)96gを、反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間攪拌を続け(硫酸化反応)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。次いで、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することによりB−2−2(AES)を得た。
【0068】
<合成例4:E−1(TES)の合成>
パーム油由来のステアリン酸メチル45質量%とオレイン酸メチル35質量%とパルミチン酸メチル20質量%とを含む脂肪酸低級アルキルエステルの混合物(ライオン株式会社、商品名「パステルM180」、「パステルM181」、「パステルM16」の混合物)785g(2.68モル)、トリエタノールアミン250g(1.68モル)、酸化マグネシウム0.52g、および、14%水酸化ナトリウム水溶液3.71g(エステル交換触媒;モル比(ナトリウム化合物/マグネシウム化合物)=1.01/1、前記脂肪酸低級アルキルエステルおよびトリエタノールアミンの総質量に対する触媒使用量:0.10質量%)を、攪拌器、分縮器、冷却器、温度計、および、窒素導入管を備えた2Lの4つ口フラスコに仕込んだ。窒素置換を行った後、窒素を0.52L/minの流量で流しておいた。1.5℃/minの速度で190℃まで昇温して、6時間反応させた。未反応メチルエステルが1質量%以下であることを確認し、反応を停止した。得られた生成物から触媒由来である脂肪酸塩をろ過除去し、中間体のアルカノールアミンエステルを得た。
アミン価を測定し、分子量を求めると582であった。
得られたアルカノールアミンエステル(分子量582)270g(0.464モル)を、温度計、滴下ロートおよび冷却器を備えた4つ口フラスコに入れ窒素置換した。次いで、85℃に加熱し、ジメチル硫酸57.4g(0.455モル)を1時間かけて滴下した。ジメチル硫酸滴下終了後、95℃に保ち1時間攪拌した。反応終了後、約62gのイソプロパノールを滴下しながら冷却し、イソプロパノール溶液を調製し、TESを得た。すべての操作は窒素微量流通下で行った。
【0069】
[実施例1〜19、比較例1〜4]
実施例6〜8及び実施例16〜19は参考例である。
表1〜3に示す液体洗浄剤の各成分を混合して液体洗浄剤を調製した。また、表4に示す柔軟剤組成物の各成分を混合して柔軟剤組成物を得た。
なお、表に示す配合量は純分換算値である。また、表中に配合量が記載されていない成分は、配合されていない。
表1〜3に示す液体洗浄剤と柔軟剤組成物を用い、下記の方法で繊維製品を洗濯した。繊維製品としては下記の方法で前処理したバスタオルを使用した。洗濯後の繊維製品について、下記の方法で「ふっくらしたボリュームのある触感」及び「吸水性」を評価した。結果を表1〜3に示す。
[比較例5、6]
表4に示す柔軟剤組成物の各成分を混合して柔軟剤組成物を得た。
表3に示す液体洗浄剤の各成分のうち、(A)成分および(B)成分以外の成分を混合して混合物(1)を調製した。
得られた混合物(1)と、(A)成分と、(B)成分と、柔軟剤組成物を用い、下記の方法で繊維製品を洗濯した。ただし、使用水に液体洗浄剤をする際に、混合物(1)と、(A)成分と、(B)成分とを別々に添加した。実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。

【0070】
(被洗物の前処理方法)
JIS K 3362:1998記載の指標洗剤を用いて、綿バスタオル(木綿100%、約140cm×70cm、約250g/1枚当たり)6枚を日立全自動洗濯機NW−6CYで5回洗浄を繰り返し、室内乾燥することによって、過分の薬剤を除去して前処理した綿バスタオルを調製した(洗剤濃度0.0667質量%、水道水47L使用、水温20℃、洗浄10分、ためすすぎ2回)。
【0071】
(洗濯方法)
全自動電気洗濯機(Haier社製JW−Z23A)の洗濯槽に、JIS K3362:1998記載の使用水30L、および前処理した繊維製品(綿バスタオル6枚、1500g)を入れた。
前記使用水に、表に示す液体洗浄剤を、表に示す使用量(水1L当たりの液体洗浄剤の添加量、単位:g/L)で添加した洗浄液中で、標準モードで10分間洗浄した後、洗浄液を繊維製品から分離するために、1分間脱水した[洗浄工程]。
続いて、繊維製品が入っている洗濯槽に30Lの水道水を入れた。前記水道水に、表に示す柔軟剤組成物を、表に示す使用量(水1L当たりの柔軟剤組成物の添加量、単位:g/L)で添加したすすぎ水中で、標準モードで5分間攪拌すすぎを行った後、すすぎ水を繊維製品から分離するために、脱水処理を行った[すすぎ工程]。脱水後の繊維製品を、20℃、湿度65%RHの恒温恒湿室内で1日自然乾燥して、これを試験布とした。
【0072】
(対照布(1)の調製方法)
前記洗濯方法において、前記液体洗浄剤に代えて、標準液体洗浄剤(ラウリルアルコール1モル当たり平均15モルのエチレンオキシドを付加させたアルコールエトキシレートの20質量%水溶液)を用いたほかは、同様にして洗濯した綿バスタオル6枚を対照布(1)とした。
【0073】
(対照布(2)の調製方法)
前記洗濯方法において、洗浄工程を行わず、例1と同じ条件のすすぎ工程のみを行ったほかは、同様に処理した綿バスタオル6枚を対照布(2)とした。
【0074】
<評価方法>
[ふっくらしたボリュームのある触感]
上記試験布6枚から任意に1枚抽出した試験布と、上記対照布(1)から任意に1枚抽出した対照布を、それぞれ8つ折にしたものを比較する方法で、専門パネラー10人が試験布の「ふっくらしたボリュームのある触感」について下記採点基準により採点した。触感の評価は、上記恒温恒湿室(20mの密閉空間)で行った。
専門パネラー10人の採点結果の平均値に基づいて、下記評価基準で触感を評価した。評価結果が○、◎、◎◎であるものを合格とした。
≪採点基準≫
−1点:対照布と比較しふっくらしたボリュームがない。
0点:対照布と比較して同等。
1点:対照布と比較してややボリュームがあり、ふっくらしている。
2点:対照布と比較してボリュームがあり、ふっくらしている。
3点:対照布と比較して非常にボリュームがあり、ふっくらしている。
≪評価基準≫
◎◎:2.5点以上。
◎:2点以上2.5点未満。
○:1.5点以上2点未満。
△:1点以上1.5点未満。
×:1点未満。
【0075】
[吸水性]
上記試験布から、任意に2cm×2cmの試験片10枚を切り取り、20℃、湿度65%RHの恒温恒湿室に1日放置した。
1Lビーカーに水道水1Lを入れ、25℃に調温した。前記試験片1枚を水面に浮かべ、試験片に水が浸みわたりビーカーの底に沈むまでの時間を計測した。時間が短いほど吸水性が高いことを示す。試験片10枚が水に沈む時間の平均時間を求め、下記評価基準で評価した。
なお、上記対照布(2)から、任意に2cm×2cmの試験片10枚を切り取り、20℃、湿度65%RHの恒温恒湿室に1日放置したものについて、同様に測定した平均時間は50秒であった。よって、下記評価基準においてD評価以上を合格とした。
≪評価基準≫
A:平均時間が5秒未満。
B:平均時間が5秒以上15秒未満。
C:平均時間が15秒以上30秒未満。
D:平均時間が30秒以上45秒未満。
E:45秒以上。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
表1〜3に示すように、(A)成分と(B)成分を含む液体洗浄剤を用い、この液体洗浄剤を水で希釈した洗浄液中で繊維製品を洗浄処理した実施例1〜19は、洗濯し乾燥した後の繊維製品はふっくらしたボリュームのある触感に優れていた。また柔軟剤処理に起因する吸水性の低下が抑制された。
一方、液体洗浄剤が(A)成分を含まない比較例1で得られた試験布は、洗浄処理を行なわず柔軟剤処理のみを行った対照布(2)と吸水性が同等であり、柔軟剤処理に起因する吸水性低下の抑制効果が得られなかった。また、洗濯し乾燥した後の繊維製品はふっくらしたボリュームのある触感に劣るものであった。
また(A)成分に代えて、構成単位(a−1)および構成単位(a−2)のいずれも有さないポリマーを用いた比較例2、および、(A)成分に代えて、シリコーン系ポリマーを用いた比較例3は、洗濯し乾燥した後の繊維製品はふっくらしたボリュームのある触感に劣るものであった。また、柔軟剤処理に起因する吸水性低下の抑制効果が不充分であった。
(A)成分と(B)成分を別々に洗浄液に添加した比較例5は、洗濯し乾燥した後の繊維製品はふっくらしたボリュームのある触感に劣るものであった。また、柔軟剤処理に起因する吸水性低下の抑制効果が不充分であった。