特許第6964503号(P6964503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6964503マルチ式空気調和システムにおける接続形態決定支援装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6964503
(24)【登録日】2021年10月21日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】マルチ式空気調和システムにおける接続形態決定支援装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/46 20180101AFI20211028BHJP
   F24F 11/49 20180101ALI20211028BHJP
【FI】
   F24F11/46
   F24F11/49
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-235703(P2017-235703)
(22)【出願日】2017年12月8日
(65)【公開番号】特開2019-100680(P2019-100680A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 正樹
【審査官】 瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−094150(JP,A)
【文献】 特開2016−003805(JP,A)
【文献】 特開2009−020640(JP,A)
【文献】 特開2019−035531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00−11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間内において同じ方角のペリメータゾーンに設置されている室内機をまとめて同じ室外機に接続する際に、前記空間の各方角からかかる日射による負荷に基づいて、1台の室外機に接続する方角の組を決定する決定手段を有することを特徴とするマルチ式空気調和システムにおける接続形態決定支援装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記空間と前記空間の周囲にある建物との位置関係を参照して1台の室外機に接続する方角の組を決定することを特徴とする請求項1に記載のマルチ式空気調和システムにおける接続形態決定支援装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記空間に対して各方角からの直達日射の当たる程度を参照して、1台の室外機に接続する方角の組を決定することを特徴とする請求項1に記載のマルチ式空気調和システムにおける接続形態決定支援装置。
【請求項4】
ペリメータゾーンに設置されている室内機を、方角毎に異なる室外機に接続した場合に対する前記決定手段により決定された組で室外機に接続した場合における室外機の能力削減効果指標を算出する算出手段を有することを特徴とする請求項1に記載のマルチ式空気調和システムにおける接続形態決定支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ式空気調和システムにおける接続形態決定支援装置、特に室外機と、ペリメータゾーンに設置されている室内機との接続の組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチ式の空気調和システムにおいては、1台の室外機に対して複数の室内機を接続する。比較的に大きい居室には、多数の室内機が設置されることになるが、全ての室内機を1台の室外機で対応するには性能上負荷がかかり過ぎてしまう場合がある。このような場合、複数の室外機を用意して、室内機をそれぞれに振り分けることになる。例えば、居室を大きく東西南北に分け、方角毎に室内機をまとめて1台の室外機に接続する。更に、あるいは、外周の影響を受けやすいペリメータゾーンと影響を受けにくいインテリアゾーンに分け、ゾーン毎方角毎に室内機をまとめて室外機に振り分ける。
【0003】
ところで、マルチ式の空気調和システムにおいては、1台の室外機で複数の室内機を同時に空調運転することになるので、接続されている室内機の合計能力を考慮して、室外機の能力を決める必要がある。ただ、室外機の能力を室内機の合計能力とほぼ同等に設定すると、室外機にかかる費用が膨らんでしまう。
【0004】
そこで、従来においては、室外機の能力をあげる代わりに、1台の室外機に接続されている室内機をローテーションさせて運転させるなどの空調制御が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−13784号公報
【特許文献2】特開平08−61751号公報
【特許文献3】特開平07−35390号公報
【特許文献4】特開平02−126053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来においては、室外機の能力を超えないようにするために、1台の室外機に接続されている複数の室内機をどのように運転させるかなどの空調制御に着目しており、1台の室外機と複数の室内機との接続形態に着目していない。
【0007】
本発明は、マルチ式の空気調和システムにおいて、1台の室外機に接続する室内機を日射による負荷に基づき決定することで、室外機にかかる設備費用の削減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るマルチ式空気調和システムにおける接続形態決定支援装置は、空間内において同じ方角のペリメータゾーンに設置されている室内機をまとめて同じ室外機に接続する際に、前記空間の各方角からかかる日射による負荷に基づいて、1台の室外機に接続する方角の組を決定する決定手段を有することを特徴とする。
【0010】
また、前記決定手段は、前記空間と前記空間の周囲にある建物との位置関係を参照して1台の室外機に接続する方角の組を決定することを特徴とする。
【0011】
また、前記決定手段は、前記空間に対して各方角からの直達日射の当たる程度を参照して、1台の室外機に接続する方角の組を決定することを特徴とする。
【0012】
また、ペリメータゾーンに設置されている室内機を、方角毎に異なる室外機に接続した場合に対する前記決定手段により決定された組で室外機に接続した場合における室外機の能力削減効果指標を算出する算出手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、1台の室外機に接続する室内機を日射による負荷に基づき決定することで、室外機にかかる設備費用の削減を図ることができる。
【0014】
また、室外機に接続する室内機を決定する際に、室内機が設置されている空間と、その空間の周囲の建物との位置関係を考慮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態におけるマルチ式空気調和システムの室内機が設置されている空間を示す概略平面図である。
図2】マルチ式空気調和システムにおける室外機と室内機の典型的な接続形態の一例を示す図である。
図3】本実施の形態における接続形態決定支援装置を形成するコンピュータのハードウェア構成図である。
図4】本実施の形態における接続形態決定支援装置を示すブロック構成図である。
図5】時刻と日射量との関係を示す図である。
図6】本実施の形態において、複数の方角に設置されている室内機に対して室外機を統合した接続形態の例を示す図である。
図7】本実施の形態における負荷状況情報記憶部に記憶される負荷状況情報のデータ構成の一例を示す図である。
図8】室外機の負荷率と効率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態におけるマルチ式空気調和システムの室内機が設置されている空間を示す概略平面図である。空間は、ビルのある階にある居室を想定している。図示していないが、居室は、1つの階全体を占有しており、図示していないが、東西南北の各方角共に窓が設けられている。
【0018】
図1に示すように、居室内は、コアを中心としたインテリアゾーンと、インテリアゾーンを四方から取り囲むペリメータゾーンに区域分けされる。インテリアゾーンは、日差しや外気により温度が影響されにくいエリアである。一方、ペリメータゾーンは、外壁からの熱的影響を受けやすいエリアである。比較的広い空間の居室には、図1に示すように、インテリアゾーン及びペリメータゾーンそれぞれに室内機2が設置される。なお、図1に示す各ゾーンにおける室内機の配置及び数は、一例であってこれに限定されるものではない。
【0019】
図1に例示したように、比較的広い空間の居室には、数多くの室内機が散在設置される。マルチ式空気調和システムにおいては、1台の室外機に対して複数台の室内機2が接続されるが、室外機と室内機の典型的な接続形態の一例を図2に示す。図2に示すように、各室内機を、設置されている方角及びゾーンによって分類して室内機2の組2E,2W,2S,2N、2IS,2INを形成する。そして、1台の室外機3E,3W,3S,3N,3IS,3INに対してゾーン毎方角毎にグループ分けされた室内機2の組2E,2W,2S,2N、2IS,2INが接続される。なお、本実施の形態では、室内機2を単独で取り扱うことはないので、以降の説明では、「室内機の組」を単に「室内機」とも称することにする。また、室外機3E,3W,3S,3N,3IS,3INを区別して説明しない場合、また、図2及び図6のように図示していない接続形態での室外機に対しては、単に「室外機3」と総称する。
【0020】
図3は、本実施の形態における接続形態決定支援装置10を形成するコンピュータのハードウェア構成図である。本実施の形態において接続形態決定支援装置10を形成するコンピュータは、パーソナルコンピュータ(PC)等の従前から存在する汎用的なハードウェア構成で実現できる。すなわち、接続形態決定支援装置10は、図3に示したようにCPU21、ROM22、RAM23、ハードディスクドライブ(HDD)24、入力手段として設けられたマウス25とキーボード26、及び表示手段として設けられたディスプレイ27をそれぞれ接続する入出力コントローラ28、通信手段として設けられたネットワークインタフェース(IF)29を内部バス30に接続して構成される。
【0021】
図4は、本実施の形態における接続形態決定支援装置10を示すブロック構成図である。本実施の形態における接続形態決定支援装置10は、接続形態決定部11、効果算出部12、表示制御部13及び負荷状況情報記憶部14を有している。なお、本実施の形態の説明に用いない構成要素については図から省略している。本実施の形態では、図2に例示したように同じ方角のペリメータゾーンに設置されている室内機2を組にして同じ室外機3に接続することになるが、接続形態決定部11は、居室に対して各方角からかかる日射による負荷に基づいて、1台の室外機3に接続する方角の組を決定する。効果算出部12は、東西南北の各ペリメータゾーンに設置されている室内機2E,2W,2S,2Nを、方角毎に異なる室外機3に接続した場合に対する接続形態決定部11により決定された組で室外機3に接続した場合における室外機3の能力削減効果指標を算出する。表示制御部13は、接続形態決定部11及び効果算出部12の処理結果の表示を制御する。
【0022】
負荷状況情報記憶部14には、居室における冷房熱負荷の状況を示す情報が記憶されるが、この情報の詳細については、動作の説明と合わせて説明する。
【0023】
接続形態決定支援装置10における各構成要素11〜13は、接続形態決定支援装置10を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPU21で動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、負荷状況情報記憶部14は、接続形態決定支援装置10に搭載されたHDD34にて実現される。あるいは、RAM23又は外部にある記憶手段をネットワーク経由で利用してもよい。
【0024】
また、本実施の形態で用いるプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROMやUSBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。通信手段や記録媒体から提供されたプログラムはコンピュータにインストールされ、コンピュータのCPUがプログラムを順次実行することで各種処理が実現される。
【0025】
図5は、時刻と日射量との関係を示す図である。この図は、空気調和ハンドブック 改訂5版(丸善)から引用している。「天空(散乱)日射」とは、全天からの散乱光のことをいう。また、直射光を「直達日射」というが、図5の「全天日射」とは、外壁面が受ける直達日射と天空散乱日射を合わせたものをいう。
【0026】
全天日射に着目すると、図5から明らかなように、窓面や外壁からの日射熱による最大冷房負荷の影響は、東側と西側の日射量が大半を占めている。そして、東側は午前中であり、西側は午後であり、時間的に重なっていない。また、南側は正午前後であり、北側は朝と夕方であり、時間的に重なっていない。
【0027】
図2に例示したように、ペリメータゾーンに設置されている室内機2を方角毎に分けて室外機3に接続する接続形態の場合、各室外機3の能力を、接続されている室内機2の合計能力とほぼ同等に設定すれば、室内機2が最大能力で運転されようとも正常に運転制御できるので好ましいと考えられる。図5によると、東西の日射量の最大値はほぼ同等なので、例えば、東西の室内機2E,2Wに対する室外機3E,3Wの処理能力も同等でよい。従って、ここでは、室外機3E,3Wの処理能力を割合で示してそれぞれ100とする。室外機3Eは、午前中では100の能力が要求される可能性があるが、午後にはないと考えられる。一方、室外機3Wは、午後では100の能力が要求される可能性があるが、午前中にはないと考えられる。つまり、室外機3Eにおける午後及び室外機3Wに午前中において、各室外機3E,3Wの処理能力には余裕があり非効率である。
【0028】
そこで、本実施の形態においては、図5に示された、居室の各方角からかかる日射による負荷を参照することによって1台の室外機3に接続する方角の組を決定するようにした。本実施の形態において、複数の方角に設置されている室内機2に対して室外機3を統合した接続形態の例を図6に示す。
【0029】
図6には、1台の室外機3EWには、東側の室内機2Eと西側の室内機2Wが接続されている例が示されている。すなわち、接続形態決定部11が、図5に例示した情報をもとに1台の室外機3EWに接続する方角の組、この例では東と西の組と決定した場合に例が示されている。また、1台の室外機3SNに接続する方角の組、この例では南と北の組と決定した場合に例が示されている。
【0030】
図6に示すように、東西の室内機2E,2Wを1台の室外機3EWに接続する場合、室外機3EWに要求される能力を、図5に示す日射量に基づくと200(=100+100)とする必要はないと考えられ、100から200の範囲でよいと考えられる。なお、居室の広さ、窓の大きさや数、室外機3の能力等によって、室外機3EWに100から200の間のどの程度の能力が必要になるかは決定される。いずれにしても、各方角からかかる日射による負荷を参照し、組み合わせる方角を決定して1台の室外機3に当該方角の室内機2を接続することによって、室外機3には、統合前に要求される能力は必要がなくなる。上記例に従うと、図5に示す各方角からかかる日射による負荷(日射量)を参照することによって、東と西を組み合わせる、具体的には東側のペリメータゾーンに設置されている室内機2Eと、西側のペリメータゾーンに設置されている室内機2Wと、を統合して、1台の室外機3EWに接続することによって、室外機3EWには、200の処理能力が必要なくなる。このように、図2に例示した2台の室外機3E,3Wを設置する場合に比して、1台の室外機3EWを設置する場合の設備費用を削減することができる。1台に統合することによって1台の室外機3に要求される能力が向上し、1台分の費用は増えることがあるかもしれないが、それでも2台より1台の室外機3に統合した方が設備費用を削減することになる。
【0031】
前述したことは、南と北の関係についても同様で、例えば、室内機2Sに対する室外機3Sの処理能力を50、室内機2Nに対する室外機3Nの処理能力を30、とすると、図6に示すように南北の室内機2S,2Nを1台の室外機3SNに接続する場合、室外機3SNに要求される能力は、80(=50+30)とする必要はないと考えられ、50から80の範囲でよいと考えられる。
【0032】
以上説明したように、図5に示す日射による負荷に基づくと、東と西、南と北、というように、対向する方角を組み合わせることで室内機2の統合後の室外機3の能力を削減することができるが、以下、具体的な数値をあげてより詳細に説明する。
【0033】
図7は、本実施の形態における負荷状況情報記憶部14に記憶される負荷状況情報のデータ構成の一例を示す図である。図7において、「最大冷房負荷(W/m)」(a)は、方角毎の最大冷房負荷であり、空気調和・衛生工学会規格 冷暖房熱負荷簡易計算法(SHASE−S122)に示されている数値である。「直達日射が当たらない場合の冷房負荷(W/m)」(b)は、いずれも同値とする。また、ここでは、図1に示すように南北の辺が東西より長い横長の居室を想定し、「床面積(m)」(c)は、東と西のペリメータゾーンの床面積より南と北のペリメータゾーンの床面積の方が若干広くなっている。
【0034】
以上の前提条件となる数値のもと、各方角の「最大冷房負荷(kW)」(d)は、a×cと算出できる。図7では、以下の説明の便宜上、各値に「東Max」などのように文字でも表現できるようにした。また、「直達日射が当たらない場合の冷房負荷(kW)」(e)は、b×cと算出できる。図7では、以下の説明の便宜上、各値に「東0」などのように文字でも表現できるようにした。
【0035】
効果算出部12は、上記負荷状況情報の数値例を参照して、室外機3を統合したときの効果を示す能力削減効果指標を次のようにして算出する。
【0036】
まず、図2に示すように、東側ペリメータゾーンと西側ペリメータゾーンの各室内機2E,2Wに対応する室外機3を室外機3E,3Wと別個に設けた場合、室外機3E,3Wの能力の合計は、東Max+西Max=17.3+20.1=37.4kWとなる。
【0037】
これに対し、東側ペリメータゾーンと西側ペリメータゾーンの各室内機2E,2Wに対応する室外機3を室外機3EWに統合した場合、室外機3EWの能力の合計は、東Max+西0=17.3+10.0=27.4kWと、東0+西Max=10.0+20.1=30.1kWのうち、大きい値の30.1kWとなる。
【0038】
すなわち、室内機2Eと室内機2Wの室外機3を室外機3EWに統合することによって、37.4−30.1=7.3kWの削減効果が期待でき、また、室外機3の能力を30.1/37.4≒0.81と小さくすることが可能となる。
【0039】
図8は、室外機3の負荷率と効率との関係を示す図である。図8から、負荷率が60%以上になると室外機3を効率的に運転させることができることが理解できる。ところで、室外機3の負荷率は、年間を通して50%以下になっていることが大半である。室外機3の能力が低下すると、相対的に室外機3にかかる負荷が増えることになる。これにより、負荷率が上昇することになるので、室外機3の効率も向上することになる。例えば、室外機の能力を0.8に低減できたらその効率は1/0.8=1.25程度に向上する。つまり、室外機3の能力を0.8に低減できたら、室外機3の消費電力をほぼ0.8に低減できる。上記数値例の場合、室内機2Eと室内機2Wの室外機3を統合することによって消費電力をほぼ0.81に低減できる。
【0040】
続いて、南側ペリメータゾーンと北側ペリメータゾーンの各室内機2S,2Nに対応する室外機3を室外機3S,3Nと別個に設けた場合、室外機3S,3Nの能力の合計は、南Max+北Max=24.5+18.7=43.2kWとなる。
【0041】
これに対し、南側ペリメータゾーンと北側ペリメータゾーンの各室内機2S,2Nに対応する室外機3を室外機3SNに統合した場合、室外機3SNの能力の合計は、南Max+北0=24.5+14.0=38.5kWと、南0+北Max=14.0+18.7=32.7kWのうち、大きい値の38.5kWとなる。
【0042】
すなわち、室内機2Sと室内機2Nの室外機3を室外機3SNに統合することによって、43.2−38.5=4.7kWの削減効果が期待でき、また、室外機3の能力を38.5/43.2≒0.89と小さくすることが可能となる。
【0043】
このように、2つの方角の室内機2S,2Nを接続する室外機3を統合することによって室外機3の消費電力をほぼ0.89に低減できる。
【0044】
効果算出部12は、以上のようにして室外機3の能力削減効果指標として削減できる消費電力量等を算出するが、表示制御部13は、接続形態決定部11が決定した方角の組及び効果算出部12が算出した当該方角の組合せによる能力削減効果指標をディスプレイ27に表示する。この表示内容を参照して、各関係者は、室外機3の見積、発注、工事計画等を行うことになる。
【0045】
ところで、上記説明では、室内機2が設置されている建物の周囲に、厳密には図1に示す居室(のある建物の階)の周囲に、直達日射を遮るような建物がない場合を想定して説明した。つまり、東西南北の全方角から直達日射が当たる場合を想定していた。ただ、実際には、いずれかの方角に直達日射を遮るような建物が存在しているかもしれない。
【0046】
そこで、本実施の形態においては、いずれかの方角に直達日射を遮るような建物が存在している場合についても言及する。いずれの方角に建物があっても考え方や計算方法は同じなので、ここでは、上記居室のある建物の東側に建物があって居室の東面に直達日射が当たらない場合、更に方角の組合せとして、対向する角度のみで組を形成しない東、南、西の3方角の室内機2E,2S,2Wを1台の室外機3に統合する場合を例にして説明する。
【0047】
まず、図2に示すように、東側、南側及び西側の各ペリメータゾーンの室外機3を別個に設けた場合、室外機3E,3S,3Wの能力の合計は、東0+南Max+西Max=10.0+24.5+20.1=54.6kWとなる。
【0048】
これに対し、東側、南側及び西側の各ペリメータゾーンの室外機3を統合した場合の室外機3の能力の合計は、東0+南0+西Max=10.0+14.0+20.1=44.1kWと、東0+南Max+西0=10.0+24.5+10.0=44.5kWのうち、大きい値の44.5kWとなる。
【0049】
すなわち、室内機2Eと室内機2Sと室内機2Wの室外機3を統合することによって、54.6−44.5=10.1kWの削減効果が期待でき、また、室外機3の能力を44.5/54.6≒0.82と小さくすることが可能となる。
【0050】
続いて、上記居室のある建物の西側に建物があって居室の西面に直達日射が当たらない場合で、方角の組合せは上記と同様に東、南、西の3方角の室内機2E,2S,2Wを1台の室外機3に統合する場合を例にして説明する。
【0051】
まず、図2に示すように、東側、南側及び西側の各ペリメータゾーンの室外機3を別個に設けた場合、室外機3E,3S,3Wの能力の合計は、東Max+南Max+西0=17.3+24.5+10.0=51.8kWとなる。
【0052】
これに対し、東側、南側及び西側の各ペリメータゾーンの室外機3を統合した場合の室外機3の能力の合計は、東Max+南0+西0=17.3+14.0+10.0=41.3kWと、東0+南Max+西0=10.0+24.5+10.0=44.5kWのうち、大きい値の44.5kWとなる。
【0053】
すなわち、室内機2Eと室内機2Sと室内機2Wの室外機3を統合することによって、51.8−44.5=7.3kWの削減効果が期待でき、また、室外機3の能力を44.5/51.8≒0.86と小さくすることが可能となる。
【0054】
本実施の形態では、東西南北の全方角から直達日射が当たる場合と東側から直達日射が当たらない場合を例にして説明した。つまり、直達日射が100%当たることによって最大冷房負荷がかかる場合(東Max等)及び直達日射が当たらないことによって所定の冷房負荷がかかる場合(東0等)、という直達日射の当たる程度として両極端の場合を例にして説明したが、実際に居室に直達日射の当たる程度に応じて重みを付けるなどして計算すればよい。
【0055】
本実施の形態においては、説明の便宜上、居室の窓は、東西南北を向いている場合で説明したが、各方角から若干外れている場合には、各方角からずれている比率(例えば、窓が東南東に向いているのであれば、南と東を0.25:0.75)を考慮して能力削減効果指標を算出すればよい。また、図7に提示した値は、冷房、窓にひさし無し、窓面積率が45%の場合の数値例である。従って、各建物の実際の状況を考慮して、数値を適宜補正して、能力削減効果指標を算出するのが好ましい。
【符号の説明】
【0056】
2 室内機、2E,2W,2S,2N 室内機の組、3E,3W,3S,3N,3IS,3IN,3EW,3SN 室外機、10 接続形態決定支援装置、11 接続形態決定部、12 効果算出部、13 表示制御部、14 負荷状況情報記憶部、21 CPU、22 ROM、23 RAM、24 ハードディスクドライブ(HDD)、25 マウス、26 キーボード、27 ディスプレイ、28 入出力コントローラ、29 ネットワークインタフェース(IF)、30 内部バス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8