(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6964526
(24)【登録日】2021年10月21日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】熱源装置
(51)【国際特許分類】
F25B 41/40 20210101AFI20211028BHJP
F25B 13/00 20060101ALI20211028BHJP
F24F 1/40 20110101ALI20211028BHJP
F24F 13/24 20060101ALI20211028BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
F25B41/40 A
F25B13/00 P
F24F1/40
F24F13/24
F04B39/00 101N
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-5247(P2018-5247)
(22)【出願日】2018年1月17日
(65)【公開番号】特開2019-124402(P2019-124402A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2020年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 茂基
(72)【発明者】
【氏名】木村 康剛
【審査官】
森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−237140(JP,A)
【文献】
特開2014−098516(JP,A)
【文献】
中国実用新案第205842087(CN,U)
【文献】
実開昭61−054163(JP,U)
【文献】
特開2005−233179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 41/40
F25B 13/00
F24F 1/40
F24F 13/24
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、該圧縮機に接続される吐出配管と、該吐出配管の先に消音器と、四方弁と、を備えた熱源装置であって、
前記吐出配管は前記圧縮機から略直線状に延出した先に曲げ部を有し、かつ銅材によって構成され、前記吐出配管の曲げ部と前記消音器を接続する配管、消音器、および前記消音器から前記四方弁に至るまでの配管は、ステンレス鋼材によって構成されたことを特徴とする熱源装置。
【請求項2】
前記熱源装置は、吸込配管と、アキュムレータを備え、
前記吸込配管は前記アキュムレータから略直線状に延出した先に曲げ部を有し、かつ銅材によって構成され、前記吸込配管の曲げ部と前記四方弁を接続する配管は、ステンレス鋼材によって構成されたことを特徴とする請求項1に記載の熱源装置。
【請求項3】
前記吐出配管の曲げ部のRは該吐出配管の直径の2倍以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱源装置。
【請求項4】
前記吸込配管の曲げ部のRは該吸込配管の直径の2倍以上であることを特徴とする請求項2に記載の熱源装置。
【請求項5】
前記四方弁に接続される配管は、該四方弁から延出し、熱交換器と接続する接続管は銅製であり、それ以外の前記四方弁に接続される配管はステンレス鋼材であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱源装置。
【請求項6】
吐出配管及び吸込配管の外径はφ5〜φ15までである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の熱源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和機の室外機等の熱源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクル部品を収納する熱源装置の一例である空気調和機の室外機では、四方弁の切り替えによって冷房運転と暖房運転とが可能であって、冷房運転時は凝縮器、暖房運転時は蒸発器として動作する室外熱交換器と、室外熱交換器を収容する室外機筐体と、を備える空気調和機が知られている。このような室外機内の冷媒配管などに、安価なステンレス(SUS304など)を用いることが考えられている。このような冷媒配管では、材料が硬いため応力が集中しやすく、圧縮機から発生する振動により配管に加わる応力が生じ、冷媒配管に割れ等が発生するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−151327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、圧縮機の振動に強く、信頼性の高い熱源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため本発明の実施形態に係る熱源装置は、
圧縮機と、該圧縮機に接続される吐出配管と、該吐出配管の先に消音器と、四方弁と、を備えた熱源装置であって、
前記吐出配管は前記圧縮機から略直線状に延出した先に曲げ部を有し、かつ銅材によって構成され、前記吐出配管の曲げ部と前記消音器を接続する配管、消音器、および前記消音器から前記四方弁に至るまでの配管は、ステンレス鋼材によって構成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本実施形態に係る熱源装置のブロック図である。
【
図2】同実施形態に係る熱源装置の一例を示す概略図である。
【
図3】同実施形態に係る熱源装置において、天板と機械室に面する側板とを外した状態を示す斜視図である。
【
図4】同実施形態に係る熱源装置の吐出配管と消音器部分を示す正面図である。
【
図5】同実施形態に係る吐出配管の一部拡大図である。
【
図6】同実施形態に係る接続管の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は本発明の実施形態に係る熱源装置である空気調和機の室外機11を用いた空気調和機10のブロック図である。室外機11は、液側連絡配管13及びガス側連絡配管14を介して熱の利用側となる室内機12と接続されている。そして、室外機11、室内機12、液側連絡配管13及びガス側連絡配管14によって冷凍サイクル20が形成されている。
【0008】
室外機11は、冷凍サイクル20として、その内部に圧縮機21、四方弁22、室外熱交換器23、膨張弁24、室内熱交換器25、アキュムレータ26、及び消音器(マフラー)29を備えている。さらに、室外機11には、室外熱交換器23へ室外空気を供給する室外ファン15(送風ファン)が設けられる。一方、室内熱交換器25は、室内機12に収容されている。室内機12には、室内熱交換器25へ室内空気を供給する室内ファン16が設けられる。
【0009】
圧縮機21は、その吐出側が吐出配管27を介して四方弁22のAポートに、その吸入側が吸入配管28を介して四方弁22のBポートに、それぞれ接続されている。吐出配管27には上記消音器29が接続され、圧縮機21から吐出される高圧冷媒による騒音を低減する。圧縮機21の吸入配管28には、アキュムレータ26が接続される。また、冷凍サイクル20において、四方弁22のCポートからDポートへ向かって順に、上記室外熱交換器23、上記膨張弁24、及び上記室内熱交換器25が配管によって接続されている。
【0010】
圧縮機21は、ロータリ型の密閉型圧縮機である。四方弁22は、AポートがCポートと連通し且つBポートがDポートと連通する第1状態(
図1に実線で示す状態)と、AポートがDポートと連通し且つBポートがCポートと連通する第2状態(
図1に破線で示す状態)とに切り換わる。この切り替えによって冷房運転と暖房運転お切り替えが可能である。膨張弁24は、制御器(図示しない)から入力される駆動パルス信号のパルス数に応じて開度が変化するいわゆるパルスモータバルブである。制御器が、膨張弁24の開度を冷凍サイクルの状態に応じて制御することで効率的な冷凍サイクル運転が可能となる。
【0011】
室外熱交換器23は、フィンアンドチューブ形の熱交換器で、室外ファン15によって通風される室外空気をその内部の冷媒と熱交換させる。アキュムレータ26は、冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離し、液冷媒を内部に貯留し、ガス冷媒を流出させる気液分離器である。これにより圧縮機21には、ガス冷媒が吸い込まれる。
【0012】
次に、室外機11について、
図2及び
図3を参照して説明する。なお、ここでの説明で用いる「前」「後」「左」「右」は、特に断わらない限り、
図3に示す方向を意味する。
【0013】
室外機11は、筐体40を備えている。この筐体40は、横長で略直方体状に形成された鋼板製の箱体である。この筐体40は、底となる底板41と、その底板上に立設された4つの側板42と、各側板の上端に取り付けられ、上から全体を覆う天板43とを有している。
【0014】
室外機11の筐体40内部は、仕切板44によって、送風機室(S1)と機械室(S2)とに区画されている。送風機室(S1)には、室外熱交換器23と、室外ファン15とが収容される。室外熱交換器23は、平面視略L字状に形成され、2つの面が筐体40の左側の側板42と後側の側板42とに形成された吸込口に対向するように設置されている。室外ファン15は、プロペラファンであり、筐体40の前側の側板に形成された吹出口46と室外熱交換器23との間に設けられる。なお、吹出口には、使用者が指を挿入して怪我をしないようにファングリルが嵌め込まれている。
【0015】
一方、機械室(S2)には、圧縮機21と、消音器29と、四方弁22と、膨張弁24と、アキュムレータ26とが収容される。圧縮機21は、機械室(S2)の前側部分であって筐体40の底板41上に設置されている。消音器29は、機械室(S2)の中層部に配置されている。四方弁22は、機械室(S2)の上層部、具体的には、圧縮機21の右後方に設けられている。膨張弁24は、機械室(S2)の下層部、具体的には、圧縮機21の右後方に設けられている。
【0016】
空気調和機10は、四方弁22を切換えることで、冷房運転と暖房運転を選択的に行う。なお、四方弁22は、膨張弁24と同様に制御器により切換え制御される。
【0017】
冷房運転中の冷凍サイクル20では、四方弁22を第1状態に切り換えた状態で、圧縮機21を動作させる。具体的には、圧縮機21から吐出された冷媒は、吐出配管27を介して消音器29に流入し、該消音器29において冷媒の流通による脈動が低減される。消音器29から流出した冷媒は、吐出配管27を介して四方弁22に流入し、室外熱交換器23、膨張弁24、室内熱交換器25、アキュムレータ26の順に通過して再び四方弁22に流入し、吸入配管28を介して圧縮機21に吸入される。このように冷凍サイクル20において冷媒が循環することで、室外熱交換器23が凝縮器として機能し、室内熱交換器25が蒸発器として機能する。そして、蒸発器として機能する室内熱交換器25において冷媒に吸熱されて冷却された空気が、室内ファン16によって室内へ供給され、室内が冷房される。
【0018】
一方、暖房運転中の冷凍サイクルでは、四方弁22を第2状態に切り換えた状態で、圧縮機21を動作させる。具体的には、圧縮機21から吐出された冷媒は、吐出配管27を介して消音器29に流入し、消音器29から流出した冷媒は、吐出配管27を介して四方弁22に流入し、室内熱交換器25、膨張弁24、室外熱交換器23、アキュムレータ26の順に通過して再び四方弁22に戻り、吸入配管28を介して圧縮機21に吸入される。このように冷凍サイクル20において冷媒が循環し、室内熱交換器25が凝縮器として機能し、室外熱交換器23が蒸発器として機能する。そして、凝縮器として機能する室内熱交換器25において冷媒によって加熱された空気が、室内ファン16によって室内へ供給され、室内が暖房される。
【0019】
このような空気調和機10の運転が開始すると、室外機11内の圧縮機21が駆動される。この圧縮機21の冷媒の吸込み、圧縮、吐出過程におけるトルク変動に起因して圧縮機21が振動し、この振動は吐出配管27及び吸込配管28に伝わる。したがって、吐出配管27及び吸込配管28には大きな応力がかかることとなる。
【0020】
図4は本発明の実施形態にかかる吐出配管27、吸込み配管28、消音器29、四方弁22の一部拡大図である。吐出配管27は圧縮機21の頂部から上方向に向かって直線状に延出し、その後下方向に向けて略120度ほど曲げられている。この部分を屈曲部27aと呼ぶ。屈曲部27aを含む吐出配管27は銅材で構成されている。吐出配管27は、屈曲部27aの先でステンレス鋼の配管と接続され、その先で消音器29に接続される。この消音器29もステンレス鋼で構成されている。この消音器29から先の四方弁22に至るまでの配管も吐出配管27及び消音器29と同様にステンレス鋼で構成されている。吸込み配管28はアキュムレータ29の頂部から上方向に向って直線状に延出し、その後下方向に向けて略120度ほど曲げられている。この部分を屈曲部28aと呼ぶ。吸込み配管28及び屈曲部28aは銅で構成されている。屈曲部28aの先から先の四方弁22に至るまでの配管はステンレス鋼で構成されている。
【0021】
吐出配管27及び屈曲部27aを銅製とすることで、吐出配管27及び消音器29の両方をステンレスで構成した場合と比較して、圧縮機21から発生する応力を分散させることができる。熱源装置10は一度設置されると10年から20年と長期に渡って使用されるため、圧縮機21から発生する微弱な振動による金属疲労により、吐出配管27及び吸込配管28が割れやすい。しかし、本実施形態のように構成することで、吐出配管27が割れにくくなり、長期間に渡って信頼性の高い熱源装置10を提供することができる。そして、消音器29及び消音器29に接続される配管を銅製ではなく、ステンレス鋼製とすることでコスト安を実現することができる。銅よりもステンレス鋼は安価であり、本実施形態では、吐出配管27から消音器29の間の配管及び消音器29から四方弁22までの間の配管すべてをステンレス鋼としたため、最大限のコスト低減効果が得られる。また、資源的にも、銅よりもステンレス鋼(鉄)が豊富であるため、地球環境への貢献も大きい。
また、本実施形態では、圧縮機21の吐出側だけでなく、吸込側においても、吸込み配管28から四方弁22に至るまでの配管もステンレス鋼で構成したため、吐出側と同様に効果を得ることができる。
【0022】
また、本発明の実施形態では
図5に示すように、吐出配管27は屈曲部27aの曲げRを、吐出配管27の直径D1の2倍以上としている。屈曲部27aの曲げRが、あまり小さいと、圧縮機21からの振動が十分に吸収できず、応力集中の原因となる。屈曲部27aの曲げRを、吐出配管27の直径D1の2倍以上とすることで、応力集中が起こりにくく、疲労破壊強度の向上が図られる。同様に、吸込み配管28の屈曲部28aの曲げRも、吸込み出配管28の直径の2倍以上とし、同じ効果を得ている。
【0023】
図6は四方弁22から吐出された冷媒が室外熱交換器23に至るまでの配管を表した一部拡大図である。四方弁22から延出した接続管30は四方弁から上方に延出し、その後略180度ほど曲げられ下方に向かい、その先で略直角に2度曲げられ室外熱交換器23に接続される。この接続管30は四方弁22と室外熱交換器室外機23とで固定されている部分であるため、圧縮機21の振動や、室外機11の輸送時の振動で応力がかかりやすい部分である。したがって本実施形態では接続管30を銅製とすることで応力が集中することを防いでいる。また四方弁22に接続される他の配管はステンレス鋼で構成されている。このように構成することコスト安を実現することができる。
【0024】
また、
図4及び
図5で示す吐出配管27及び吸込配管28は外径がφ5からφ15の間で構成されている。これは配管の外径が大きいほど母材を多く使用するため固くなり、結果として応力集中しやすくなる。したがって圧縮機21から発生する振動により割れが生じる可能性が高まるので各配管の外径はφ5〜φ15の間が好ましい。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0026】
11…室外機、21…圧縮機、22…四方弁、27…吐出配管、27a…曲げ部、28…吸込配管、29…消音器、30…接続管