(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
木造建物の架構に長さ方向の両端が接合される第1筋交いの幅方向両側縁それぞれに、当該架構と長さ方向の一端が接合される一対の第2筋交いの長さ方向の他端それぞれを、これら一対の第2筋交いと第1筋交いとが同じ面内でX字状に交差するように接続するための木造建物用筋交い接続金物であって、
上記第1筋交いを跨いで一対の上記第2筋交いに達する長さ寸法で形成され、該第1筋交いを跨ぐ箇所が第1接合領域となり、該第2筋交いそれぞれに達する箇所が一対の第2接合領域となる金属製のプレート体と、
該プレート体に、その長さ方向に沿って、上記第1接合領域と上記第2接合領域とに亘って延在するように形成される突条部と、
上記プレート体の上記第1接合領域に、上記突条部を避けて複数配設され、該第1接合領域を上記第1筋交いに固定するための固定具が設けられる第1固定用孔と、
上記プレート体の一対の上記第2接合領域それぞれに、上記突条部を避けて複数配設され、上記各第2接合領域をそれぞれ上記各第2筋交いにそれぞれ固定するための固定具が設けられる第2固定用孔とを備えたことを特徴とする木造建物用筋交い接続金物。
前記突条部は、前記プレート体の幅方向中心線から等距離を隔てて、該プレート体の長さ方向に沿って一対形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の木造建物用筋交い接続金物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の接手は、X字形をなす三つの筋かい材に渡り、両側短尺筋かい材の側面全幅に密着し、釘の打設でこれら筋交い材に固定される本体プレート部が、単なる平坦な平板状である。このため、筋かい材への本体プレート部の確実かつ強固な取り付けを確保するためには、予め多数の釘孔を形成しなければならない。そしてまた、これら釘孔には多数の釘を打設しなければならない。従って、長尺筋かい材へ2本の短尺筋かい材を取り付ける組立作業効率が良くないという課題がある。
【0006】
筋かい材に外力が作用した際には、短尺筋かい材と長尺筋かい材とは、つき当たるだけで不連続である。このため、力の伝達において、本体プレート部が大きな応力を負担しなければならない。そして、この応力負担を確実にするためには、短尺筋かい材と長尺筋かい材とがつき当たる箇所で、多数の釘の打設によって、本体プレート部をしっかりと筋かい材に固定しなければならない。
【0007】
本体プレート部を筋かい材に固定する釘を打設する釘孔は、金属製の本体プレート部に予め形成される。また、三つの筋かい材は、X字形に作られる前に、長尺筋かい材の両端部、並びに短尺筋かい材の、長尺筋かい材につき当たる端部と反対側の端部それぞれが、木造建物の矩形四頂点位置、すなわち木造建物の柱・梁架構の四隅に接合され、その後、対角線交点付近で接手により連結固定される。
【0008】
このため、三つの筋かい材の架構への設置における施工誤差などにより、短尺筋かい材と長尺筋かい材とがつき当たる箇所において、隙間が生じたり、角度が変わってしまうと、予め設けられている本体プレート部の釘孔から筋かい材に向けて所定本数の釘を打設することができないという事態が生じるおそれがある。
【0009】
所定本数の釘を打設することができないと、筋かい材に外力が作用した際、応力を負担する本体プレート部が単なる平坦な平板状であるために、座屈等の変形が発生しやすくなってしまい、所定の補強性能を発揮できないおそれがあるという問題があった。本体プレート部の板厚を厚くすることも考えられるが、このようにすると、全体重量が重くなり、施工性が悪化するという課題があった。
【0010】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、プレート体の強度を、その板厚を増すこと無しに高めること、そしてまた、筋交い同士の接続位置において高く確保してスムーズな応力伝達を図ることが可能で、軽量化や筋交いに対する固定用孔の形成数の削減を達成して施工作業性を向上できると共に、既存の木造建物の架構への筋交いの設置において施工誤差があっても、プレート体を確実かつ強固に筋交いに固定してプレート体の変形を防止することが可能で、筋交いによる補強性能を確実に発揮させることができる木造建物用筋交い接続金物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる木造建物用筋交い接続金物は、木造建物の架構に長さ方向の両端が接合される第1筋交いの幅方向両側縁それぞれに、当該架構と長さ方向の一端が接合される一対の第2筋交いの長さ方向の他端それぞれを、これら一対の第2筋交いと第1筋交いとが同じ面内でX字状に交差するように接続するための木造建物用筋交い接続金物であって、上記第1筋交いを跨いで一対の上記第2筋交いに達する長さ寸法で形成され、該第1筋交いを跨ぐ箇所が第1接合領域となり、該第2筋交いそれぞれに達する箇所が一対の第2接合領域となる金属製のプレート体と、該プレート体に、その長さ方向に沿って、上記第1接合領域と上記第2接合領域とに亘って延在するように形成される突条部と、上記プレート体の上記第1接合領域に、上記突条部を避けて複数配設され、該第1接合領域を上記第1筋交いに固定するための固定具が設けられる第1固定用孔と、上記プレート体の一対の上記第2接合領域それぞれに、上記突条部を避けて複数配設され、上記各第2接合領域をそれぞれ上記各第2筋交いにそれぞれ固定するための固定具が設けられる第2固定用孔とを備えたことを特徴とする。
【0012】
前記突条部は、前記プレート体の表面から断面凸状に隆起させて形成されることを特徴とする。
【0013】
前記突条部は、前記プレート体の幅方向中央に、該プレート体の長さ方向に沿って形成されることを特徴とする。
【0014】
前記突条部は、前記プレート体の幅方向中心線から等距離を隔てて、該プレート体の長さ方向に沿って一対形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる木造建物用筋交い接続金物にあっては、プレート体の強度を、その板厚を増すこと無しに高めること、そしてまた、筋交い同士の接続位置において高く確保してスムーズな応力伝達を図ることができ、軽量化や筋交いに対する固定用孔の形成数の削減を達成して施工作業性を向上できると共に、既存の木造建物の架構への筋交いの設置において施工誤差があっても、プレート体を確実かつ強固に筋交いに固定してプレート体の変形を防止することができ、筋交いによる補強性能を確実に発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる木造建物用筋交い接続金物の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1には、本実施形態に係る木造建物用筋交い接続金物を用いた既存の木造建物の改修施工の様子の一例が示されている。
【0018】
既存の木造建物を、耐震補強等のために改修するときには、当該木造建物の架構1の内部に、X字状の筋交い構造体2が設置される。既存の木造建物の架構1は、下方の木製土台1aもしくは木製梁材と上方の木製梁材1b、並びに左右の木製柱材1c,1dとによって、縦長の長方形状に構築されていて、真壁の場合、この架構1の内部には、壁(図示せず)が設けられている。
【0019】
改修にあたり、外壁を維持するために室内側からしか施工できない場合、あるいは反対に、内壁を維持するようにして木造建物の外壁側からのみ施工する場合、筋交い構造体2を設置施工する壁の奥行き方向(壁厚方向)の施工スペースは、深さが浅く、薄いスペースとなる。
【0020】
深さの浅い施工スペースに設置するX字状の筋交い構造体2は、背景技術でも説明したように、壁の奥行き方向の寸法が厚くならないようにする必要がある。筋交い構造体2のX字状の一方の斜め方向については、長尺な一本の木製帯板状の筋交い(以下、第1筋交いという)3を、その板厚方向が壁厚方向に向くように設置して用いる。
【0021】
筋交い構造体2のX字状の他方の斜め方向については、第1筋交い3に対し壁厚方向に重ね合わせて交差させて当該第1筋交い3の面外に位置させるのではなく、第1筋交い3と同じ面内に面一で位置するように、第1筋交い3の両側に、短尺な二本で一対の木製帯板状の筋交い(以下、第2筋交いという)4,4を配列し、これら第2筋交い4,4を、第1筋交い3と同様に、それらの板厚方向が壁厚方向に向くように設置して用いる。
【0022】
そして、X字状の筋交い構造体2は、これら一対の第2筋交い4,4を、第1筋交い3に対しその両側から接続して、これら一対の第2筋交い4,4が、第1筋交い3を挟んで真っ直ぐに直列となるようにして構成される。下記に説明する本実施形態に係る木造建物用筋交い接続金物5は、第1筋交い3とその両側に位置する一対の第2筋交い4,4とを接続するために用いられる。
【0023】
筋交い構造体2を上述した長方形状の架構1に設置施工するときには、架構1の一方の対角線方向の一組の隅角部(仕口部:
図1中、右上及び左下の隅角部)の金具1e,1fに対し、第1筋交い3の長さ方向の両端3aを接合する。また、架構1の他方の対角線方向の一組の隅角部(仕口部:
図1中、左上及び右下の隅角部)の金具1g,1hそれぞれには、一対の第2筋交い4,4各々の長さ方向の一端4aを接合する。
【0024】
具体的には、例えば図示するように、左上の上第2筋交い4の上端4aを左上隅角部に、右下の下第2筋交い4の下端4aを右下隅角部に接合する。
【0025】
これにより、一方の対角線方向に沿う第1筋交い3と、他方の対角線方向に沿う一対の第2筋交い4,4とは、第1筋交い3の、長さ方向と直交する幅方向の両側縁3b,3bそれぞれに、一対の第2筋交い4,4の長さ方向の他端4b,4bそれぞれが、突き当たる向きで配置される位置関係となる(
図6参照)。
【0026】
そしてその後、一対の第2筋交い4,4の長さ方向の他端4b,4bそれぞれを、これら第2筋交い4,4と第1筋交い3とが同じ面内で、すなわち第1及び第2筋交い3,4,4が相互に段差なく平坦に連続するように、筋交い接続金物5によって、第1筋交い3の幅方向両側縁3b,3bそれぞれにX字状に交差するように接続する。
【0027】
本実施形態に係る木造建物用筋交い接続金物5は、これら第1筋交い3と一対の第2筋交い4,4を同じ面内でX字状に交差するように接続するために適用される。
【0028】
図2〜
図6に示すように、第1実施形態に係る木造建物用筋交い接続金物5は主に、第1筋交い3とその幅方向の両側縁3b,3b外方に配置される一対の第2筋交い4,4とに一連に亘るように設けられる鋼製等の金属製のプレート体6と、このプレート体6に、その圧縮強度を増強して応力伝達性能の向上を図るために形成される突条部7a,7bと、プレート体6に形成され、プレート体6を第1及び第2筋交い3,4,4それぞれに固定する固定具を設けるための固定用孔8,9とから構成される。
【0029】
プレート体6は、薄肉平板状の金属板から、長さと幅を有するおおよそ長方形状の肉薄な部材として形成される。プレート体6は、X字状の筋交い構造体2を構成する第1筋交い3と一対の第2筋交い4,4とがX字状に交差する箇所に、一方の上第2筋交い4から、第1筋交い3を経て、他方の下第2筋交い4に亘る範囲に設けられる。言い換えれば、プレート体6は、第1筋交い3を跨いで、一対の各第2筋交い4,4それぞれに達する長さ寸法を有して形成される。
【0030】
これにより、プレート体6は、その長さ方向中央部分が第1筋交い3の位置に、長さ方向の両端側部分がそれぞれ、第1筋交い3の脇で、各第2筋交い4,4の位置に位置される。
【0031】
プレート体6は、板厚方向の表裏面のうち、裏面6aが帯板状の第1及び第2筋交い3,4,4の板面3c,4c,4c上に載せて重ね合わされて、これら筋交い3,4,4に設置される。プレート体6の裏面6aは、第2筋交い4,4に対する長さ方向の位置合わせを自在とするために、突起等のない平坦に形成されて、第2筋交い4,4の板面4c,4cに沿って長さ方向へスライド可能に構成される。
【0032】
プレート体6の幅寸法については、各第2筋交い4,4それぞれの板面4c,4c上に当該プレート体6の両端側部分が載せられ、重ね合わされれば良く、第2筋交い4,4の幅寸法より狭くても、あるいは広くても良くて、その広狭は問われない。図示例では、プレート体6の幅寸法は、第2筋交い4,4の幅寸法と等しくされている。
【0033】
プレート体6は、裏面6aが第1筋交い3の板面3c上に重ね合わされて、当該第1筋交い3を跨ぐ箇所である長さ方向中央部分が第1接合領域(
図6中、梨地部分で示す)Xとなる。また、プレート体6は、裏面6aが一対の各第2筋交い4,4それぞれの板面4c,4c上に重ね合わされて、当該第2筋交い4,4に達する箇所である長さ方向両端側部分が一対の第2接合領域(
図6中、無地部分で示す)Y,Yとなる。
【0034】
そして、架構1の他方の対角線方向で、上第2筋交い4の下端4b及び下第2筋交い4の上端4bそれぞれと第1筋交い3の幅方向両側縁3b,3bそれぞれとが向かい合う箇所が、第1接合領域Xと第2接合領域Y,Yとの境界Bとなる。
【0035】
プレート体6は、架構1の他方の対角線方向(第2筋交い4,4の直列方向)に作用する圧縮力を、一対の第2筋交い4,4及びこれら第2筋交い4,4に挟まれる第1筋交い3が一体で負担するように、第2筋交い4,4に生じた圧縮応力を第1筋交い3へ向けて伝達し、またこの応力伝達で第1筋交い3に生じた圧縮応力を第2筋交い4,4へ向けて伝達する作用を、相互的に確保できる板厚寸法で形成される。
【0036】
プレート体6は、板形態であれば足りるが、本実施形態では、プレート体6の長さ方向両端部には、プレート体6の幅方向両側外方へ突出されかつ裏面6a側に第2筋交い4,4の板厚方向(架構1の壁厚方向)へ折り曲げて形成され、第2筋交い4,4にその幅方向両側から係止して、プレート体6を第2筋交い4,4へ嵌め合うように取り付けてガタツキや無用の動きを規制するための爪部10が形成される。爪部10は、形成しなくてもよい。
【0037】
爪部10を形成した場合にはさらに、各爪部10には、プレート体6を第2筋交い4,4に保持させて取付状態を安定的に維持するために、第2筋交い4,4にその幅方向から弾接するグリップ11を設けることが好ましい。グリップ11は、爪部10の折り曲げ箇所から間隔を隔てた一対の爪部10の先端側を、それらの間隔が狭まるプレート体6の幅方向内方へ向けて「く」の字状に折り曲げることで構成される。
【0038】
グリップ11は、プレート体6を第2筋交い4,4に取り付けると、爪部10がプレート体6の幅方向外方へ押し出されることの反力により、爪部10の折り曲げ箇所を基点として第2筋交い4,4に弾接されるようになっている。
【0039】
このように形成されたプレート体6には、その長さ方向に沿って上記境界B,Bを介し、第1接合領域Xと第2接合領域Y,Yとに亘って延在するように突条部7a,7bが形成される。従って、突条部7a,7bは、相当の長さ寸法を有するように形成される。第1及び第2接合領域X,Y,Yに「亘って延在する」とは、言い換えれば、第1領域Xから第2領域Y,Yへ「境界B,Bを跨ぎ越して、一連に連続的にかつ一体に設けられている」状態をいう。
【0040】
図6を参照することで理解されるように、突条部7a,7bは、第1筋交い3の位置から、一対の各第2筋交い4,4それぞれの位置へ向けて延出され、一端部側が第1筋交い3に位置し、他端部側が必ず、第2筋交い4,4に位置するように形成される。本実施形態では、突条部7a,7bは、第1筋交い3と上第2筋交い4との間に形成される第1突条部7aと、第1筋交い3と下第2筋交い4との間に形成される第2突条部7bとから構成される。
【0041】
これら第1突条部7a及び第2突条部7bは
図2に示すように、プレート体6の長さ方向に沿ってプレート体6の幅方向中心線Cと平行に形成される。また、図示例では、第1突条部7a及び第2突条部7bは共に、プレート体6の幅方向中心線Cから等距離を隔てて、プレート体6の幅方向に一対で形成される。従って、突条部7a,7bは、4つ形成されている。
【0042】
図6に示すように、一対の第1突条部7a同士相互では、一方の第1突条部(図中、左側)7aの境界Bから第1筋交い3へ延在する下方側端部と、他方の第1突条部(図中、右側)7aの境界Bから第2筋交い4へ延在する上方側端部とは、等長の短い寸法である。また同様に、一方の第1突条部7aの境界Bから第2筋交い4へ延在する上方側端部と、他方の第1突条部7aの境界Bから第1筋交い3へ延在する下方側端部とは、等長の長い寸法である。
【0043】
従って、一対の第1突条部7aは、プレート体6の幅方向で第1及び上第2筋交い3,4に対し、第1突条部7aが占める面積は等しく、共に境界Bを経るように位置される。一対の第2突条部7b同士相互でも、同様の関係とされる。
【0044】
さらに、第2筋交い4,4の直列方向で見て、第1突条部7aと第2突条部7b相互では、
図6中、左側については、第1突条部7aの境界Bから第1筋交い3へ延在する下方側端部と、第2突条部7bの境界Bから下第2筋交い4へ延在する下方側端部とは、等長の短い寸法である。また同様に、第1突条部7aの境界Bから上第2筋交い4へ延在する上方側端部と、第2突条部7bの境界Bから第1筋交い3へ延在する上方側端部とは、等長の長い寸法である。
【0045】
従って、第1及び第2突条部7a,7b相互では、プレート体6の長さ方向で第1及び第2筋交い3,4,4に対して、第1及び第2突条部7a,7bが占める面積は等しく、共に境界B,Bを経るように位置される。図中、右側の第1及び第2突条部7a,7b同士相互でも、同様の関係とされる。
【0046】
突条部7a,7bの断面形状は、第1実施形態では、
図4及び
図5に示すように、プレート体6の、裏面6aとは反対側の表面6bから凸状に隆起させて、プレス成形などによって形成される。凸状の突条部7a,7bは、改修する架構1の壁内に充填される断熱材等を傷つけないように、表面に丸みをもたせて形成することが好ましい。
【0047】
プレート部6にはさらに、その長さ方向中央の第1接合領域Xに、突条部7a,7bを避けてかつ板厚方向に貫通させて、複数の第1固定用孔8が配設されると共に、その長さ方向両端部側の第2接合領域Y,Yそれぞれに、同様に突条部7a,7bを避けてかつ板厚方向に貫通させて、複数の第2固定用孔9が配設される。
【0048】
第1固定用孔8には、プレート体6の第1接合領域Xを第1筋交い3に固定するためのビスや釘などの固定具(図示せず)が設けられ、第1固定用孔8に設けられるこれら固定具によってプレート体6の長さ方向中央部が第1筋交い3に接合固定される。
【0049】
第2固定用孔9には、プレート体6の一対の第2接合領域Y,Yそれぞれを一対の第2筋交い4,4それぞれに固定するためのビスや釘などの固定具(図示せず)が設けられ、第2固定用孔9に設けられるこれら固定具によってプレート体6の長さ方向両端部側がそれぞれ一対の第2筋交い4,4に接合固定される。
【0050】
これら固定用孔8,9は、プレート体6に形成した突条部7a,7bを避けて設けることから、プレート体6の全面に均等に設ける場合の個数よりも少ない個数で設けられる。言い換えれば、突条部7a,7bによりプレート体6の圧縮強度が増強されるため、座屈を防止できて、そしてまたプレート体6の長さ方向に応力伝達がスムーズに行われるので、その分、プレート体6を筋交い3,4,4に接合する固定具の数、従って、固定用孔8,9の数が削減される。
【0051】
図示例にあっては、第1固定用孔8は、第1筋交い3の幅方向及び長さ方向に散在するように、プレート体6の幅方向に、突条部7a,7bの間及び突条部7a,7bの外側となる位置に設けられている。第2固定用孔9も、第2筋交い4,4の幅方向及び長さ方向に散在するように、突条部7a,7bの間等に設けられている。
【0052】
固定用孔8,9のいくつかは、プレート体6の断面性能を向上する突条部7a,7b同士の間に配置されるので、プレート体6の長さ方向(第2筋交い4,4の直列方向;架構1の対角線方向)に圧縮力が作用しても、これら固定用孔8,9に設けられる固定具は、それらの両側に位置する突条部7a,7bが圧縮力に抵抗して、プレート体6と筋交い3,4,4との高い接合強度を保持することができる。
【0053】
次に、本実施形態に係る木造建物用筋交い接続金物5の作用について説明する。本実施形態の筋交い接続金物5は、架構1の隅角部に長さ方向両端3aが接合された状態の第1筋交い3に、架構1の他の隅角部に長さ方向の上端4a及び下端4aがそれぞれ接合された状態の一対の上・下第2筋交い4,4を接続するときに、筋交い構造体2に設けられる。
【0054】
筋交い接続金物5を取り付けるときには、筋交い構造体2に対し、室内側あるいは外壁側の一方から装着し、プレート体6の長さ方向両端部側を一対の第2筋交い4,4にそれぞれ重ね合わせると同時に、プレート体6の長さ方向中央を第1筋交い3に重ね合わせ、第1接合領域Xを第1筋交い3に位置合わせし、一対の第2接合領域Y,Yをそれぞれ第2筋交い4,4に位置合わせする。
【0055】
この際、プレート体6を、第2筋交い4,4の長さ方向にスライド移動させることで、容易かつ適切な位置に取り付けてセットすることができる。また、プレート体6の爪部10により、第2筋交い4,4に嵌め合うように取り付けて、筋交い接続金物5の取り付けに際し、ガタツキや無用の動きを規制することができ、スムーズに取付を完了することができる。
【0056】
さらに、グリップ11を備えた場合には、グリップ11で筋交い接続金物5を第2筋交い4,4に保持させて、取付状態を安定的に維持することができ、その後の筋交い接続金物5の筋交い構造体2への接合固定作業にあたり、作業者はプレート体6から両手を離した状態で、便利にかつ手際よく作業を行うことができる。
【0057】
筋交い接続金物5を筋交い構造体2の筋交い3,4,4に重ね合わせてセットした段階では、プレート体6の幅方向一対の第1突条部7aは、上第2筋交い4の下端4bと第1筋交い3の幅方向一方の上側に位置する側縁3bとが向かい合う箇所(第1及び第2接合領域X,Yの境界B)を跨ぎ越して、上第2筋交い4と第1筋交い3とに亘って位置づけられる。
【0058】
プレート体6の幅方向一対の第2突条部7bも同様に、下第2筋交い4の上端4bと第1筋交い3の幅方向他方の下側に位置する側縁3bとが向かい合う箇所(第1及び第2接合領域X,Yの境界B)を跨ぎ越して、下第2筋交い4と第1筋交い3とに亘って位置づけられる。
【0059】
一対の第2筋交い4,4の直列方向に見ると、第1突条部7aと第2突条部7bとは、第1接合領域Xにおいて、当該直列方向に沿って並ぶように位置づけられる。
【0060】
突条部7a,7bのこのような配列状態で、筋交い接続金物5の第1接合領域Xは、第1固定用孔8に設けられるビスや釘等の固定具によって、第1筋交い3に接合固定され、一対の第2接合領域Y,Yはそれぞれ、第2固定用孔9に設けられる同様の固定具によって、第1筋交い3両側の第2筋交い4,4に接合固定される。
【0061】
この固定具による接合固定によって、筋交い接続金物5の筋交い構造体2への取り付け作業、すなわち、第1筋交い3と一対の第2筋交い4,4との接続作業が完了する。
【0062】
架構1の一方の対角線方向に圧縮力が作用すると、第1筋交い3はこれに抵抗することができる。架構1で、一対の第2筋交い4,4が直列に並ぶ他方の対角線方向に圧縮力が作用すると、一対の第2筋交い4,4は、筋交い接続金物5によって第1筋交い3と共に一体に接続されていて、X字状に交差する箇所では、筋交い接続金物5が筋交い3,4,4相互間に圧縮応力を伝達しつつ、それ自体が圧縮力に抵抗する。これにより、木造建物の架構1を適切に補強することができる。
【0063】
本実施形態に係る木造建物用筋交い接続金物5では、主体をなすプレート体6に、筋交い3,4,4同士が連続していない第1及び第2接合領域X,Y,Yの境界B,Bを跨ぎ越すと同時に、第1及び第2接合領域X,Y,Yに亘るようにして、突条部7a,7bを形成している。
【0064】
これにより、筋交い接続金物5を筋交い3,4,4に接合するすべての第1及び第2接合領域X,Y,Yに、プレート体6の断面性能を向上して圧縮強度を増強する突条部7a,7bが存在し、筋交い3,4,4相互におけるスムーズな応力伝達を確保できて、プレート体6に変形が生じることなく、筋交い3,4,4と筋交い接続金物5とからなる筋交い構造体2による補強性能を確実に発揮させることができる。
【0065】
突条部7a,7bによって、板厚を増すこと無しに、プレート体6、ひいては筋交い接続金物5の圧縮強度が増強されるため、座屈を防止することができる。従って、プレート体6を筋交い3,4,4に接合固定するための固定具の個数を削減することができ、これにより固定用孔8,9の形成個数も削減することができて、施工作業性を向上することができる。
【0066】
また、木造建物の架構1への筋交い構造体2の設置施工誤差により、第1筋交い3と一対の第2筋交い4,4それぞれとの間に、隙間が生じたり、角度が変わっていても、境界B,B付近は、プレート体6の突条部7a,7bが位置するようになるため、プレート体6を確実かつ強固に筋交い3,4,4に固定することができて、境界B,B付近で座屈等の変形が発生することを防止でき、筋交い3,4,4相互間でスムーズな応力伝達を確保して、この面からも、筋交い構造体2による補強性能を確実に発揮させることができる。
【0067】
突条部7a,7bは、プレート体6をプレス成形するなどして一体に形成されるので、軽量化を確保でき、これによっても施工作業性を向上することができる。
【0068】
第1突条部7a及び第2突条部7bの配置は、第1及び第2筋交い3,4,4に対し、均等であるので、これら筋交い3,4,4相互を均質な接続強度で強固に接続することができる。
【0069】
図7には、上記実施形態の木造建物用筋交い接続金物5の第1変形例が示されている。この第1変形例は、上記第1突条部7aと第2突条部7bとを一連に連続して一体に形成した突条部7を備えたものである。突条部7の形成個数が2個となり、上記実施形態よりも半減するので、より簡単に製作することができる。このような変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0070】
図8には、第2変形例が示されている。この第2変形例では、第1変形例の突条部7を、プレート体6の幅方向中央に位置させて、プレート体6の長さ方向に沿って一つ形成したものである。この場合、固定用孔8,9は、突条部7の周りに当該突条部6を取り囲む配置で散在させて設けられる。
【0071】
第2変形例では、突条部7の形成個数が1個となり、上記第1変形例よりも半減するので、より簡単に製作することができる。このような変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0072】
図9には、第3変形例が示されている。第3変形例では、突条部7は、プレート体6の幅方向両側外方へ突出されかつプレート体6の板厚方向(第2筋交い4,4の板厚方向)に、裏面6aとは反対側の表面6b側(当該第2筋交い4,4とは反対側)へ立ち上げるように折り曲げた一対のリブで形成される。
【0073】
このようなリブ形式の突条部7であっても、プレート体6の断面性能を向上して、筋交い接続金物5の圧縮強度が増強されるため、座屈を防止できて、上記実施形態と同様の作用効果を確保することができることはもちろんである。図示例では、プレート体6の爪部10の下部には、プレート体6の長さ方向に部分的に切り込み11aが入れられ、この切り込み11aよりも下方がプレート体6の幅方向内方に僅かに曲げられて、第2筋交い4,4を保持するグリップ11が形成されている。