特許第6964544号(P6964544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6964544
(24)【登録日】2021年10月21日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】造形物の製造方法及び造形物
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/04 20060101AFI20211028BHJP
   B23C 3/18 20060101ALI20211028BHJP
   B24B 19/14 20060101ALI20211028BHJP
   F04D 29/60 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   B23K9/04 G
   B23C3/18
   B24B19/14
   F04D29/60 E
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-50029(P2018-50029)
(22)【出願日】2018年3月16日
(65)【公開番号】特開2019-155463(P2019-155463A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸志
(72)【発明者】
【氏名】山田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】山崎 雄幹
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0151833(US,A1)
【文献】 特開昭62−33067(JP,A)
【文献】 特開2017−121656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/04
B23C 3/18
B24B 19/14
F04D 29/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の周囲に複数のブレードが周方向へ間隔をあけて設けられ、前記ブレードの間に曲面形状の凹部を有する造形物を製造する造形物の製造方法であって、
前記凹部の最底部を通る底部円よりも大径の断面視円形状のベース材に対して、その周面に溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを積層させ、前記ブレードとなる造形部を形成する造形工程と、
前記造形部の表面及び前記ベース材の周面の一部を切削し、前記ブレードを形成するとともに、前記ブレード間の凹部を形成する切削工程と、
を含む造形物の製造方法。
【請求項2】
前記溶着ビードの高さをH、前記ベース材の径方向の最大切削寸法をTとしたときに、
T≧1/2H
とする請求項1に記載の造形物の製造方法。
【請求項3】
前記底部円の径をR0、前記ベース材の径をR1としたときに、
R1≧R0+H
とする請求項2に記載の造形物の製造方法。
【請求項4】
軸体の周囲に複数のブレードが周方向へ間隔をあけて設けられ、前記ブレードの間に曲面形状の凹部を有する造形物であって、
前記ブレードは、溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを積層させた造形部から形成され、
前記造形部とともに前記凹部における前記軸体の一部が切削されている
造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形物の製造方法及び造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生産手段として3Dプリンタを用いた造形のニーズが高まっており、金属材料を用いた造形の実用化に向けて研究開発が進められている。金属材料を造形する3Dプリンタは、レーザや電子ビーム、更にはアーク等の熱源を用いて、金属粉体や金属ワイヤを溶融させ、溶融金属を積層させることで造形物を作製する。
【0003】
例えば、ポンプや圧縮機などの流体機械に設けられるインペラやロータ等の回転部材を製造する技術として、ハブとなるベース材の表面にビードを積層して複数のブレードとなる造形部を造形し、その後、造形部を切削してブレードを形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/149774号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の製造技術によれば、材料からの削り出しと比べ、歩留りが高く、製造時間も短縮させることができる。また、複雑な鋳型を組み合わせて製造する鋳造と比べ、鋳型の組合せ部分に生じるバリの除去や鋳型のずれによる製造不良をなくすことができる。
【0006】
ところで、流体機械の回転部材では、流体抵抗を低減させるために、ブレード間に曲面形状の凹部を形成する。これにより、ブレードの根元部分をなだらかな曲面形状となるように形成する。したがって、ブレードの根元部分には、なだらかな曲面形状を切削して形成するために、広い範囲に溶着ビードを形成することとなり、溶着ビードを形成するトーチのパス数が多くなる。このため、溶着ビードを形成して造形部を造形するために時間を要する。また、ブレードの根元部分のなだらかな曲面部分では、形成した溶着ビードの多くの部分を切削することとなり、無駄が多くなる。
【0007】
本発明の目的は、曲面形状を有する部位を備えた造形物を無駄なく高精度に製造することができ、しかも、製造時間を極力抑えることが可能な造形物の製造方法及び造形物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は下記構成からなる。
(1) 軸体の周囲に複数のブレードが周方向へ間隔をあけて設けられ、前記ブレードの間に曲面形状の凹部を有する造形物を製造する造形物の製造方法であって、
前記凹部の最底部を通る底部円よりも大径の断面視円形状のベース材に対して、その周面に溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを積層させ、前記ブレードとなる造形部を形成する造形工程と、
前記造形部の表面及び前記ベース材の周面の一部を切削し、前記ブレードを形成するとともに、前記ブレード間の凹部を形成する切削工程と、
を含む造形物の製造方法。
(2) 軸体の周囲に複数のブレードが周方向へ間隔をあけて設けられ、前記ブレードの間に曲面形状の凹部を有する造形物であって、
前記ブレードは、溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを積層させた造形部から形成され、
前記造形部とともに前記凹部における前記軸体の一部が切削されている
造形物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、曲面形状を有する部位を備えた造形物を無駄なく高精度に製造することができ、しかも、製造時間を極力抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本発明の製造方法で製造する造形物であるロータの斜視図である。
図1B】本発明の製造方法で製造する造形物であるロータの軸方向に直交する断面図である。
図2】造形物を製造する製造システムの模式的な概略構成図である。
図3A】本実施形態に係る造形物の製造方法における積層工程を説明するロータの一部の概略断面図である。
図3B】本実施形態に係る造形物の製造方法における積層工程を説明するロータの一部の概略断面図である。
図4A】本実施形態に係る造形物の製造方法における切削工程を説明するロータの一部の概略断面図である。
図4B】本実施形態に係る造形物の製造方法における切削工程を説明するロータの一部の概略拡大断面図である。
図5】ベース材の切削寸法及び選定するベース材の径の設定について説明する模式図である。
図6A】参考例に係る造形物の製造方法における切削工程を説明するロータの一部の概略断面図である。
図6B】参考例に係る造形物の製造方法における切削工程を説明するロータの一部の概略拡大断面図である。
図7A】最大切削寸法TをT=0としたときのブレードの根元の縁部の切削を説明する模式図である。
図7B】最大切削寸法TをT=1/2Hとしたときのブレードの根元の縁部の切削を説明する模式図である。
図8】ベース材の径R1をR1=R0+Hとしたときの溶着ビードの溶着量及び切削量を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1A及び図1Bは、それぞれ本発明の製造方法で製造する造形物であるロータを示す図であり、図1Aはロータの斜視図、図1Bはロータの軸方向に直交する断面図である。
【0012】
図1A及び図1Bに示すように、本実施形態に係る製造方法によって製造する造形物Wは、柱状の軸体51と、軸体51の外周に径方向外側へ突出する複数条(図示例では6条)の螺旋状のブレード53とを備える。この造形物Wは、例えば、圧縮機などの流体機械に設けられるロータ55である。
【0013】
ロータ55は、軸体51の軸方向中間部で、複数のブレード53が周方向に沿って等間隔に設けられたスクリュー形状となっている。このロータ55は、各ブレード53同士の間にU字状に凹んだ曲面形状の凹部57を有している。
【0014】
このロータ55は、軸体51となる棒状のベース材61の周面に、ブレード53となる溶着ビード63を形成して積層させ、その後、切削加工によって溶着ビード63及びベース材61を切削し、ブレード53及びブレード53の間の凹部57を形成することで得られる。
【0015】
次に、上記のロータ55からなる造形物Wを製造する製造システムについて説明する。
図2は造形物を製造する製造システムの模式的な概略構成図である。
【0016】
図2に示すように、本構成の製造システム100は、積層造形装置11と、切削装置12と、積層造形装置11及び切削装置12を統括制御するコントローラ15と、を備える。
【0017】
積層造形装置11は、先端軸にトーチ17を有する溶接ロボット19と、トーチ17に溶加材(溶接ワイヤ)Mを供給する溶加材供給部21とを有する。トーチ17は、溶加材Mを先端から突出した状態に保持する。
【0018】
溶接ロボット19は、多関節ロボットであり、先端軸に設けたトーチ17には、溶加材Mが連続供給可能に支持される。トーチ17の位置や姿勢は、ロボットアームの自由度の範囲で3次元的に任意に設定可能となっている。
【0019】
トーチ17は、不図示のシールドノズルを有し、シールドノズルからシールドガスが供給される。本構成で用いられるアーク溶接法としては、被覆アーク溶接や炭酸ガスアーク溶接等の消耗電極式、TIG溶接やプラズマアーク溶接等の非消耗電極式のいずれであってもよく、作製する造形物Wに応じて適宜選定される。
【0020】
例えば、消耗電極式の場合、シールドノズルの内部にはコンタクトチップが配置され、溶融電流が給電される溶加材Mがコンタクトチップに保持される。トーチ17は、溶加材Mを保持しつつ、シールドガス雰囲気で溶加材Mの先端からアークを発生する。溶加材Mは、ロボットアーム等に取り付けた不図示の繰り出し機構により、溶加材供給部21からトーチ17に送給される。そして、トーチ17を移動しつつ、連続送給される溶加材Mを溶融及び凝固させると、後述のベース材61上に溶加材Mの溶融凝固体である線状の溶着ビード63が形成される。
【0021】
なお、溶加材Mを溶融させる熱源としては、上記したアークに限らない。例えば、アークとレーザとを併用した加熱方式、プラズマを用いる加熱方式、電子ビームやレーザを用いる加熱方式等、他の方式による熱源を採用してもよい。電子ビームやレーザにより加熱する場合、加熱量を更に細かく制御でき、溶着ビードの状態をより適正に維持して、造形物Wの更なる品質向上に寄与できる。
【0022】
溶加材Mは、あらゆる市販の溶接ワイヤを用いることができる。例えば、軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ(JIS Z 3312)、軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ(JIS Z 3313)等で規定されるワイヤを用いることができる。
【0023】
切削装置12は、切削ロボット41を備えている。切削ロボット41は、溶接ロボット19と同様に、多関節ロボットであり、先端アーム43の先端部に、例えば、エンドミルや研削砥石などの金属加工工具45を備える。これにより、切削ロボット41は、コントローラ15により、その加工姿勢が任意の姿勢を取り得るように、3次元的に移動可能となっている。
【0024】
切削ロボット41は、積層造形装置11の溶接ロボット19によってベース材61に溶着ビード63が積層された造形物Wを金属加工工具45で切削してロータ55に加工する。
【0025】
コントローラ15は、CAD/CAM部31と、軌道演算部33と、記憶部35と、これらが接続される制御部37と、を有する。
【0026】
CAD/CAM部31は、作製しようとする造形物Wの形状データを作成した後、複数の層に分割して各層の形状を表す層形状データを生成する。軌道演算部33は、生成された層形状データに基づいてトーチ17の移動軌跡を求める。また、軌道演算部33は、形状データに基づいて、金属加工工具45の移動軌跡を求める。記憶部35は、造形物Wの形状データ、生成された層形状データ、トーチ17の移動軌跡及び金属加工工具45の移動軌跡等のデータを記憶する。
【0027】
制御部37は、記憶部35に記憶された層形状データやトーチ17の移動軌跡に基づく駆動プログラムを実行して、溶接ロボット19を駆動する。つまり、溶接ロボット19は、コントローラ15からの指令により、軌道演算部33で生成したトーチ17の移動軌跡に基づき、溶加材Mをアークで溶融させながらトーチ17を移動する。また、制御部37は、記憶部35に記憶された形状データや金属加工工具45の移動軌跡に基づく駆動プログラムを実行して、切削ロボット41を駆動する。これにより、切削ロボット41の先端アーム43に設けられた金属加工工具45によって造形物Wに対して切削加工を行う。なお、図2においては、鉛直方向に立設させた断面視円形状の柱状のベース材61の周面に、ブレード53となる溶着ビード63を螺旋状に形成して造形物Wを造形し、その後、造形物Wに対して切削加工を行う様子を示している。
【0028】
次に、本実施形態に係る造形物の製造方法について説明する。
図3A及び図3Bは本実施形態に係る造形物の製造方法における積層工程を説明する図であり、図3A及び図3Bはそれぞれロータの一部の概略断面図である。図4A及び図4Bは本実施形態に係る造形物の製造方法における切削工程を説明する図であり、図4Aはロータの一部の概略断面図、図4Bはロータの一部の概略拡大断面図である。
【0029】
(造形工程)
図3Aに示すように、製造システム100に、軸体51となる断面視円形状の柱状のベース材61をセットする。次いで、設定された層形状データから生成されるトーチ17の移動軌跡に沿って、積層造形装置11のトーチ17を溶接ロボット19の駆動により移動させながら、溶加材Mを溶融させ、溶融した溶加材Mをベース材61の周面に供給する。これにより、ベース材61の周面に対して複数の溶着ビード63を螺旋状に形成する。その後、図3Bに示すように、形成した溶着ビード63の層に対してさらに溶着ビード63を順に積層させ、ブレード53となる造形部65を有する造形物Wを作製する。
【0030】
(切削工程)
切削ロボット41を駆動させて金属加工工具45によって造形物Wを切削加工する。これにより、図4A及び図4Bに示すように、造形部65の表面及びベース材61の一部を切削し、ブレード53を形成するとともに、ブレード53間の凹部57を形成する。これにより、柱状の軸体51の外周に複数のブレード53を備えたロータ55を形成する。
【0031】
ここで、本実施形態では、軸体51となるベース材61の切削寸法及び選定するベース材61の径を以下のように設定する。
図5はベース材の切削寸法及び選定するベース材の径の設定について説明する模式図である。
【0032】
図5に示すように、溶着ビード63の高さをH、ベース材61の径方向の最大切削寸法をTとしたときに、次式(1)となるように最大切削寸法Tを設定する。
【0033】
T≧1/2H…(1)
【0034】
また、それぞれの凹部57の最底部を通る底部円67の径をR0、ベース材61の径をR1としたときに、次式(2)となるように、ベース材61の径R1を設定する。
【0035】
R1≧R0+H…(2)
【0036】
そして、上記の式(1)及び式(2)から設定した最大切削寸法T及びベース材61の径R1に基づいて、ベース材61の選定及び造形しようとする造形物Wの形状データなどの作成を行う。
【0037】
ここで、参考例に係る造形物の製造方法について説明する。
図6A及び図6Bは参考例に係る造形物の製造方法における切削工程を説明する図であり、図6Aはロータの一部の概略断面図、図6Bはロータの一部の概略拡大断面図である。
【0038】
図6A及び図6Bに示すように、参考例では、選定するベース材61の径R1を、製造するロータ55の凹部57の最底部を通る底部円67の径R0としている。この場合、切削工程では、ベース材61を切削せず、溶着ビード63からなる造形部65だけを切削することとなる。
【0039】
このように、ベース材61を切削しない場合、ブレード53のなだらかな曲面形状の根元部分を形成するために、広い範囲に溶着ビード63を形成しなければならなくなる。また、凹部57の最底部付近の曲面がなだらかな部分では、溶着ビード63の多くの部分を切削することとなり、無駄が多くなってしまう。例えば、凹部57の最底部付近では、溶着ビード63の上半分以上を切削することとなり、無駄が生じてしまう。
【0040】
これに対して、本実施形態に係る造形物の製造方法によれば、凹部57を形成する際にベース材61の一部を切削する(図4A及び図4B参照)。したがって、ブレード53のなだらかな曲面形状の根元部分を形成するための溶着ビード63の形成範囲を極力狭くすることができる。これにより、溶着ビード63を形成するトーチ17のパス数を少なくして造形工程に要する時間を短縮させることができる。また、溶着ビード63の溶着量を減らすことができ、これにより、溶着ビード63の溶着量が多いことで生じる溶接変形による精度低下を抑制して精度向上を図ることができる。
【0041】
また、凹部57のなだらかな部分に溶着ビード63を極力形成しなくてよくなる。このため、溶着ビード63の多くの部分を切削することによる無駄を極力抑えることができる(図4B参照)。
【0042】
また、本実施形態では、溶着ビード63の高さをH、ベース材61の径方向の最大切削寸法をTとしたときに、T≧1/2Hとする。したがって、切削工程において、ベース材61に形成した溶着ビード63の切削量を極力抑える(1/2以下にする)ことができる。これにより、形成した溶着ビード63の切削による無駄を抑えることができ、コストを抑えることができる。
【0043】
ここで、ベース材61の最大切削寸法Tを、T=0としたときとT=1/2Hとしたときのブレード53の根元の縁部について比較検討する。T=0としたときでは、図7Aに示すように、ベース材61を切削しないことから、ブレード53の根元の縁部となる部分を形成するために溶着ビード63Aを造形することとなる。この溶着ビード63Aは、一部を残して略全ての領域(図7Aにおけるハッチング部分)が切削されることとなる。これに対して、T=1/2Hとしたときでは、図7Bに示すように、ベース材61の一部を切削することでブレード53の根元の縁部となる部分が形成されることとなる。この場合、T=0としたときに造形することとなる溶着ビード63Aの造形位置において、切削される領域はT=0のときの概ね半分程度(図7Bにおけるハッチング部分)に抑えられる。このように、ベース材61の最大切削寸法TをT≧1/2Hに設定することで、ブレード53の根元の縁部となる部分では、ベース材61の一部(図7Bにおけるハッチング部分)の領域を削る程度でよくなり、溶着ビード63Aの切削量を低減(およそ1/2以下)することができる。
【0044】
しかも、本実施形態では、底部円67の径をR0、ベース材61の径をR1としたときに、R1≧R0+Hとする。したがって、造形物Wを製造する際に、切削工程で溶着ビード63の切削による無駄を極力抑えることが可能なベース材61を容易に選定することができる。
【0045】
ここで、ベース材61の径R1を、R1=R0としたときとR1=R0+Hとしたときの溶着ビード63の溶着量及び切削量について検討する。図8に示すように、ベース材61の径R1をR1=R0+Hとすると、R1=R0(図6A参照)としたときに比べ、ブレード53となる造形部65を形成するのに必要な溶着ビード63の層を一層分減らすことができる。したがって、造形部65を形成するのに必要な溶着ビード63の溶着量および溶着ビード63の切削量を低減することができる。つまり、溶着ビード63の溶着量及び切削量を低減するには、ベース材61の径R1をR1≧R0+Hとなるように選定すればよいこととなる。
【0046】
そして、本実施形態の製造方法で製造される造形物Wによれば、溶着ビード63を積層させた造形部65とともに、凹部57における軸体51の一部が切削されている。したがって、溶着ビード63の造形が容易で、しかも、凹部57を形成する際の溶着ビード63の切削による無駄を極力抑えることが可能な造形物Wとすることができる。また、溶着ビード63の溶着量を減らすことができ、これにより、溶着ビード63の溶着量が多いことで生じる溶接変形による精度低下を抑制して精度向上を図ることができる。
【0047】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0048】
例えば、上記実施形態では、造形物Wを切削する切削装置12として、多関節ロボットの先端アーム43に金属加工工具45を備えた切削ロボット41を用いた場合を例示したが、使用可能な切削装置12としては、切削ロボット41に限らない。切削装置12としては、例えば、5軸加工機やロータ専用の加工機(歯切り加工機)などの切削加工機を用いてもよい。
【0049】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 軸体の周囲に複数のブレードが周方向へ間隔をあけて設けられ、前記ブレードの間に曲面形状の凹部を有する造形物を製造する造形物の製造方法であって、
前記凹部の最底部を通る底部円よりも大径の断面視円形状のベース材に対して、その周面に溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを積層させ、前記ブレードとなる造形部を形成する造形工程と、
前記造形部の表面及び前記ベース材の周面の一部を切削し、前記ブレードを形成するとともに、前記ブレード間の凹部を形成する切削工程と、
を含む造形物の製造方法。
この造形物の製造方法によれば、凹部を形成する際にベース材の一部を切削する。したがって、ブレードのなだらかな曲面形状の根元部分を形成するための溶着ビードの形成範囲を極力狭くすることができる。これにより、溶着ビードを形成する造形工程に要する時間を短縮させることができる。
また、凹部のなだらかな部分に溶着ビードを極力形成しなくてよくなる。このため、溶着ビードの多くの部分を切削することによる無駄を極力抑えることができる。また、溶着ビードの溶着量を減らすことができ、これにより、溶着ビードの溶着量が多いことで生じる溶接変形による精度低下を抑制して精度向上を図ることができる。
【0050】
(2) 前記溶着ビードの高さをH、前記ベース材の径方向の最大切削寸法をTとしたときに、
T≧1/2H
とする(1)に記載の造形物の製造方法。
この造形物の製造方法によれば、切削工程において、ベース材に形成した溶着ビードの切削量を極力抑える(1/2以下にする)ことができる。これにより、形成した溶着ビードの切削による無駄を抑えることができ、コストを抑えることができる。
【0051】
(3) 前記底部円の径をR0、前記ベース材の径をR1としたときに、
R1≧R0+H
とする(2)に記載の造形物の製造方法。
この造形物の製造方法によれば、造形物を製造する際に、溶着ビードの積層層を減らすことができ、溶着ビードの溶着量を低減でき、しかも、切削工程で溶着ビードの切削による無駄を極力抑えることが可能なベース材を容易に選定することができる。
【0052】
(4) 軸体の周囲に複数のブレードが周方向へ間隔をあけて設けられ、前記ブレードの間に曲面形状の凹部を有する造形物であって、
前記ブレードは、溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを積層させた造形部から形成され、
前記造形部とともに前記凹部における前記軸体の一部が切削されている
造形物。
この造形物によれば、溶着ビードの造形が容易で、しかも、凹部を形成する際の溶着ビードの切削による無駄を極力抑えることが可能な造形物とすることができる。また、溶着ビードの溶着量を減らすことができ、これにより、溶着ビードの溶着量が多いことで生じる溶接変形による精度低下を抑制して精度向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0053】
51 軸体
53 ブレード
55 ロータ
57 凹部
61 ベース材
63 溶着ビード
65 造形部
67 底部円
H 溶着ビードの高さ
M 溶加材
R0 底部円の径
R1 ベース材の径
T 最大切削寸法
W 造形物
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8