特許第6964545号(P6964545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立産機システムの特許一覧

<>
  • 特許6964545-気体圧縮機 図000002
  • 特許6964545-気体圧縮機 図000003
  • 特許6964545-気体圧縮機 図000004
  • 特許6964545-気体圧縮機 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6964545
(24)【登録日】2021年10月21日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】気体圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/10 20060101AFI20211028BHJP
【FI】
   F04B49/10 331H
   F04B49/10 331L
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-57504(P2018-57504)
(22)【出願日】2018年3月26日
(65)【公開番号】特開2019-167911(P2019-167911A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2021年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 航平
(72)【発明者】
【氏名】紙屋 裕治
【審査官】 大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/212623(WO,A1)
【文献】 特開2016−211584(JP,A)
【文献】 特開2010−31874(JP,A)
【文献】 特開2009−13843(JP,A)
【文献】 特開2006−138297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/06、49/10
F04C 28/00−28/28、29/04
F04D 27/00、29/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を圧縮する圧縮機本体と、
冷却風を生起するファン装置と、
前記ファン装置で生起された冷却風によって、前記圧縮機本体に循環させる液体を冷却する液体冷却器と、
前記圧縮機本体から吐き出された圧縮気体の温度又は前記圧縮機本体に循環させる液体の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサで検出された温度に応じて前記ファン装置の回転数を可変制御すると共に、前記温度センサで検出された温度が予め設定された第1閾値に達した場合に、前記圧縮機本体を停止又は縮退運転させる制御装置と、を備えた気体圧縮機において、
前記制御装置は、
前記温度センサで検出された温度が予め前記第1閾値より低く設定された第2閾値未満である場合に、前記ファン装置の回転数を連続定格値以下に制限しつつ可変制御し、
前記温度センサで検出された温度が前記第2閾値以上かつ前記第1閾値未満である場合に、前記ファン装置の回転数を前記連続定格値より高い短時間定格値まで上昇させ、その状態が所定時間継続した場合に、前記ファン装置を停止させると共に前記圧縮機本体を停止又は縮退運転させることを特徴とする気体圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の気体圧縮機において、
前記制御装置は、前記温度センサで検出された温度が予め前記第2閾値より低く設定された基準値未満である場合に、前記ファン装置の回転数を前記連続定格値以下に制限しつつ下げ、前記温度センサで検出された温度が前記基準値以上かつ前記第2閾値未満である場合に、前記ファン装置の回転数を前記連続定格値以下に制限しつつ上げており、
前記第2閾値は、前記第1閾値と前記第2閾値との差分が前記第1閾値と前記基準値との差分に対して三分の一以下となるように設定されたことを特徴とする気体圧縮機。
【請求項3】
請求項1に記載の気体圧縮機において、
前記温度センサで検出された温度が前記第2閾値以上かつ前記第1閾値未満である場合に、第1段階の警報を出し、前記ファン装置の回転数が前記短時間定格値である状態が前記所定時間継続した場合と、前記温度センサで検出された温度が前記第1閾値に達した場合に、前記第1段階の警報とは異なる第2段階の警報を出す警報装置を備えたことを特徴とする気体圧縮機。
【請求項4】
請求項1に記載の気体圧縮機において、
前記圧縮機本体から吐き出された圧縮気体とこれに含まれる液体を分離する気液分離器を備え、
前記液体冷却器は、前記気液分離器から前記圧縮機本体の圧縮室に供給する液体を冷却することを特徴とする気体圧縮機。
【請求項5】
請求項1に記載の気体圧縮機において、
前記気体が空気であることを特徴とする気体圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載の圧縮機は、空気を吸い込んで圧縮空気を生成するものであり、圧縮室に油を注入しつつ空気を圧縮する圧縮機本体と、圧縮機本体から吐き出された圧縮空気とこれに含まれる油を分離する気液分離器と、冷却ファン及びこれを駆動するモータを有するファン装置と、ファン装置で生起された冷却風によって、気液分離器から圧縮機本体(詳細には、圧縮室及び軸受等)に供給する油を冷却する油冷却器と、圧縮機本体から吐き出された圧縮空気の温度(以降、吐出温度という。)を検出する温度センサと、温度センサで検出された吐出温度等に基づいてファン装置の回転数を可変制御する制御装置(コントローラ)とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−316696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、周囲温度(例えば、吸気温度)が高いことや圧縮機本体の負荷が高いこと等の一時的な要因が重なった場合に、吐出温度が著しく上昇する可能性がある。そのため、機器保守の観点から、温度センサで検出された吐出温度が予め設定された閾値に達したときに、圧縮機本体を停止させるか若しくは縮退運転させることが好ましい。
しかし、その一方で、圧縮気体の供給低減は、圧縮気体を使用する使用者側機器(例えば、製造ライン)の運転も低減させることとなる。吐出温度の著しい上昇が一時的なものである場合や使用者側機器の運転タイミングによっては機器停止を避けたい場合等もあり、圧縮機本体の停止又は縮退運転を極力回避したいという要望がある。
【0005】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、圧縮機本体の停止又は縮退運転を極力回避することを課題の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、特許請求の範囲に記載の構成を適用する。本発明は、上記課題を解決するための手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、気体を圧縮する圧縮機本体と、冷却風を生起するファン装置と、前記ファン装置で生起された冷却風によって、前記圧縮機本体に循環させる液体を冷却する液体冷却器と、前記圧縮機本体から吐き出された圧縮気体の温度又は前記圧縮機本体に循環させる液体の温度を検出する温度センサと、前記温度センサで検出された温度に応じて前記ファン装置の回転数を可変制御すると共に、前記温度センサで検出された温度が予め設定された第1閾値に達した場合に、前記圧縮機本体を停止又は縮退運転させる制御装置と、を備えた気体圧縮機において、前記制御装置は、前記温度センサで検出された温度が予め前記第1閾値より低く設定された第2閾値未満である場合に、前記ファン装置の回転数を連続定格値以下に制限しつつ可変制御し、前記温度センサで検出された温度が前記第2閾値以上かつ前記第1閾値未満である場合に、前記ファン装置の回転数を前記連続定格値より高い短時間定格値まで上昇させ、その状態が所定時間継続した場合に、前記ファン装置を停止させると共に前記圧縮機本体を停止又は縮退運転させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧縮機本体の停止又は縮退運転を極力回避することができる。
【0008】
なお、上記以外の課題、構成及び効果は、以下の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態における空気圧縮機の構成を表す概略図である。
図2】本発明の一実施形態における制御装置の処理内容を表すフローチャートである。
図3】本発明の一変形例における空気圧縮機の構成を表す概略図である。
図4】本発明の一変形例における制御装置の処理内容を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本発明を適用した実施形態の一例である空気圧縮機の構成を表す概略図である。
【0012】
本実施形態の空気圧縮機は、駆動源としての電動機1と、電動機1によって駆動される圧縮機本体2とを備えている。駆動源としては、内燃機関やエネルギを回転力に変換する他の機械的構造体であってもよい。圧縮機本体2は、例えば、互いに噛み合う雌雄一対のスクリューロータと、スクリューロータを回転可能に支持する軸受と、それらを収納するケーシングとを有しており、スクリューロータの歯溝に圧縮室が形成されている。圧縮機本体2は、空気を吸い込んで圧縮し、圧縮空気を吐き出す。圧縮機本体2は、圧縮熱の冷却、ロータの潤滑及び圧縮室のシールなどを目的として、圧縮室に油を注入するようになっている。
【0013】
本実施形態の空気圧縮機は、気液分離器3、空気冷却器4、油冷却器5(液体冷却器)、ファン装置6、温度調節弁7及びフィルタ8を更に備えている。気液分離器3は、圧縮機本体2から吐き出された圧縮空気とこれに含まれる油を分離する。気液分離器3で分離された圧縮空気は、空気冷却器4を介して使用先に供給される。ファン装置6は、冷却ファン及びこれを駆動するモータを有し、図中白抜き矢印で示すように冷却風を生起する。空気冷却器4は、ファン装置6で生起された冷却風によって圧縮空気を冷却する。
【0014】
気液分離器3で分離された油は、油冷却器5、温度調節弁7及びフィルタ8を介して圧縮機本体2(詳細には、上述した圧縮室及び軸受等)に供給される。即ち油は、圧縮機本体2と気液分離器3の間で循環するようになっている。油冷却器5は、ファン装置6で生起された冷却風によって油を冷却する。温度調節弁7は、油の温度に応じて、油冷却器5に供給する油の冷却流量と油冷却器5をバイパスする油のバイパス流量との割合を調整する。具体的には、油の温度が所定の設定値(詳細には、後述する吐出温度の基準値tA3に対応する油温度の基準値より低く設定された値)以上である場合に、例えば冷却流量を100%、バイパス流量を0%に調整する。一方、油温度が所定の設定値より低い場合に、冷却流量を減少し、バイパス流量を増加する。フィルタ8は、油中の不純物を除去する。
【0015】
本実施形態の空気圧縮機は、温度センサ9、インバータ10、制御装置11及び表示装置12を更に備えている。温度センサ9は、圧縮機本体2から吐き出された圧縮空気の温度(以降、吐出温度という。)を検出し、検出した吐出温度を制御装置11へ出力する。制御装置11は、プログラムに基づいて演算処理や制御処理を実行する演算制御部(例えばCPU)と、プログラムや演算処理の結果を記憶する記憶部(例えばROM、RAM)等を有するものである。制御装置11は、温度センサ9で検出された吐出温度に基づき、インバータ10を介してファン装置6を制御すると共に電動機1及び表示装置12を制御するようになっている。この制御装置11の処理内容を、図2を用いて説明する。
【0016】
図2は、本実施形態における制御装置11の処理内容を表すフローチャートである。なお、図2で示す制御装置11の処理は、圧縮機本体2の運転中(即ち電動機1の駆動中)に行われるものとする。
【0017】
ステップS101にて、制御装置11は、温度センサ9で検出された吐出温度が予め設定された第1閾値tA1(例えば110℃)未満であるかどうかを判定する。吐出温度が第1閾値tA1未満である場合は、ステップS101の判定がYESとなり、ステップS102に移る。
【0018】
ステップS102にて、制御装置11は、温度センサ9で検出された吐出温度が予め第1閾値tA1より低く設定された第2閾値tA2(例えば107℃)未満であるかどうかを判定する。吐出温度が第2閾値tA2未満である場合は、ステップS102の判定がYESとなり、ステップS103に移る。なお、第2閾値tA2は、第1閾値と第2閾値との差分(tA1−tA2)が第1閾値と後述の基準値との差分(tA1−tA3)に対して三分の一以下(例えば十分の一程度)となるように設定されている。
【0019】
ステップS103にて、制御装置11は、温度センサ9で検出された吐出温度が予め第2閾値tA2より低く設定された基準値tA3(例えば78℃)未満であるかどうかを判定する。吐出温度が基準値tA3未満である場合は、ステップS103の判定がYESとなり、ステップS104に移る。ステップS104にて、制御装置11は、ファン装置6の回転数を下限値N(例えば600rpm)以上となるように制限しつつ下げる。一方、吐出温度が基準値tA3以上かつ第2閾値tA2未満である場合は、ステップS103の判定がNOとなり、ステップS105に移る。ステップS105にて、制御装置11は、ファン装置6の回転数を連続定格値NH1(例えば1100rpm)以下となるように制限しつつ上げる。
【0020】
ステップS104又はS105の終了後、ステップS106に進み、制御装置11は、ファン通常運転時間Tをカウントアップする。その後、ステップS101に戻って同様の手順を繰り返す。なお、後述のファン非常運転時間Tのカウントアップからファン通常運転時間Tのカウントアップに移行する際は、ファン通常運転時間Tをリセットしてから、ファン通常運転時間Tのカウントアップを開始する。
【0021】
ステップS102にて吐出温度が第2閾値tA2以上かつ第1閾値tA1未満である場合は、その判定がNOとなり、ステップS107に移る。ステップS107にて、制御装置11は、ファン通常運転時間Tが予め設定された所定時間(例えば30分)以上であるかどうかを判定する。ファン通常運転時間Tが所定時間以上である場合は、ステップS107の判定がYESとなり、ステップS108に移る。なお、このステップS107は、後述のステップS109のファン非常運転を再開してよいかどうかを判定するためのものであり、最初の段階では(即ち後述のステップS110等を経由した後にステップS106等を経由してからステップS107に到達するまでは)、ステップS107の判定を行わずに、ステップS108に移ってもよい。
【0022】
ステップS108にて、制御装置11は、第1段階の警報指令を表示装置12に出力する。これに応じて、表示装置12は、例えば黄色のメッセージウインドウにて「吐出温度異常」のメッセージを表示する。その後、ステップS109に進み、制御装置11は、ファン装置6の回転数を連続定格値NH1より高い短時間定格値NH2(例えば1200rpm)まで上昇させる。なお、連続定格値とは、連続運転で使用できる定格値を意味し、短時間定格値とは、短時間(例えば10分)の運転であれば使用できる定格値を意味する。
【0023】
ステップS109の終了後、ステップS110に進み、制御装置11は、ファン非常運転時間Tをカウントアップする。なお、ファン通常運転時間Tのカウントアップからファン非常運転時間Tのカウントアップに移行する際は、ファン非常運転時間Tをリセットしてから、ファン非常運転時間Tのカウントアップを開始する。その後、ステップS111に進み、制御装置11は、ファン非常運転時間Tが予め設定された所定時間(例えば10分)以上であるかどうかを判定する。最初のうちはファン非常運転時間Tが所定時間未満であるから、ステップS111の判定がNOとなり、ステップS101に戻って同様の手順を繰り返す。
【0024】
吐出温度が第2閾値tA2以上かつ第1閾値tA1未満であってステップS108、S109及びS109が繰り返し行われて、ファン非常運転時間Tが所定時間に達すると、ステップS111の判定がYESとなり、ステップS112に移る。ステップS112にて、制御装置11は、第2段階の警報指令を表示装置12に出力する。これに応じて、表示装置12は、例えば赤色のメッセージウインドウにて「吐出温度異常」のメッセージを表示する。その後、ステップS113及びS114に進み、制御装置11は、ファン装置6を停止させると共に、電動機1(即ち圧縮機本体2)を停止させる。
【0025】
ステップS101にて吐出温度が第1閾値tA1に達した場合は、その判定がNOとなり、上述したステップS112、S113及びS114を行う。また、ステップS107にてファン通常運転時間Tが所定時間未満である場合は、その判定がNOとなり、上述したステップS112、S113及びS114を行う。
【0026】
以上のように本実施形態においては、温度センサ9で検出された吐出温度が第2閾値tA2以上かつ第1閾値tA1未満である場合に、一時的に、ファン装置6の回転数を短時間定格値NH2まで上昇させて、油冷却器5の冷却力を高める。これにより、圧縮機本体2に循環させる油の温度の上昇を抑制して、吐出温度の上昇を抑制することができる。したがって、温度センサ9で検出された吐出温度が第1閾値tA1に到達して圧縮機本体2が停止するのを極力回避することができる。
【0027】
また、第2閾値tA2は、第1閾値tA1と、第2閾値tA2との差分が第1閾値tA1と、基準値tA3との差分に対して三分の一以下となるように(言い換えれば、第1閾値tA1に近づけるように)設定されている。これにより、第1閾値tA1と、第2閾値tA2との差分が第1閾値tA1と、基準値tA3との差分に対して三分の一を超えるように(言い換えれば、第1閾値tA1から離れるように)設定された場合と比べ、温度センサ9で検出された吐出温度が第2閾値tA2に到達しファン装置6の回転数が短時間定格値NH2である状態が所定時間継続して圧縮機本体2が停止するのを極力回避することができる。
【0028】
なお、上記一実施形態においては、空気圧縮機は、圧縮機本体2から吐き出された圧縮空気の温度を検出する温度センサ9(吐出温度センサ)を備え、制御装置11は、温度センサ9で検出された吐出温度に基づき、インバータ10を介してファン装置6を制御すると共に電動機1及び表示装置12を制御する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。即ち例えば、図3で示す変形例のように、空気圧縮機は、気液分離器3から圧縮機本体2(詳細には、圧縮室及び軸受等)に供給する油の温度を検出する温度センサ9A(油温度センサ)を備え、制御装置11Aは、温度センサ9Aで検出された油温度に基づき、インバータ10を介してファン装置6を制御すると共に電動機1及び表示装置12を制御してもよい。この制御装置11Aの処理内容を、図4を用いて説明する。
【0029】
図4は、本変形例における制御装置11Aの処理内容を表すフローチャートである。なお、図4で示す制御装置11Aの処理は、圧縮機本体2の運転中(即ち電動機1の駆動中)に行われるものとする。
【0030】
ステップS201にて、制御装置11Aは、温度センサ9Aで検出された油温度が予め設定された第1閾値tB1未満であるかどうかを判定する。油温度が第1閾値tB1未満である場合は、ステップS201の判定がYESとなり、ステップS202に移る。
【0031】
ステップS202にて、制御装置11Aは、温度センサ9Aで検出された油温度が予め第1閾値tB1より低く設定された第2閾値tB2未満であるかどうかを判定する。油温度が第2閾値tB2未満である場合は、ステップS202の判定がYESとなり、ステップS203に移る。なお、第2閾値tB2は、第1閾値と第2閾値との差分(tB1−tB2)が第1閾値と後述の基準値との差分(tB1−tB3)に対して三分の一以下となるように設定されている。
【0032】
ステップS203にて、制御装置11Aは、温度センサ9Aで検出された油温度が予め第2閾値tB2より低く設定された基準値tB3未満であるかどうかを判定する。油温度が基準値tB3未満である場合は、ステップS203の判定がYESとなり、ステップS204に移る。ステップS204にて、制御装置11Aは、ファン装置6の回転数を下限値N(例えば600rpm)以上となるように制限しつつ下げる。一方、油温度が基準値tB3以上かつ第2閾値tB2未満である場合は、ステップS203の判定がNOとなり、ステップS205に移る。ステップS205にて、制御装置11Aは、ファン装置6の回転数を連続定格値NH1(例えば1100rpm)以下となるように制限しつつ上げる。
【0033】
ステップS204又はS205の終了後、ステップS206に進み、制御装置11Aは、ファン通常運転時間Tをカウントアップする。その後、ステップS201に戻って同様の手順を繰り返す。なお、後述のファン非常運転時間Tのカウントアップからファン通常運転時間Tのカウントアップに移行する際は、ファン通常運転時間Tをリセットしてから、ファン通常運転時間Tのカウントアップを開始する。
【0034】
ステップS202にて油温度が第2閾値tB2以上かつ第1閾値tB1未満である場合は、その判定がNOとなり、ステップS207に移る。ステップS207にて、制御装置11Aは、ファン通常運転時間Tが予め設定された所定時間(例えば30分)以上であるかどうかを判定する。ファン通常運転時間Tが所定時間以上である場合は、ステップS207の判定がYESとなり、ステップS208に移る。なお、ステップS207は、後述のステップS209のファン非常運転を再開してよいかどうかを判定するためのものであり、最初の段階では(即ち後述のステップS210等を経由した後にステップS206等を経由してからステップS207に到達するまでは)、ステップS207の判定を行わずに、ステップS208に移ってもよい。
【0035】
ステップS208にて、制御装置11Aは、第1段階の警報指令を表示装置12に出力する。これに応じて、表示装置12は、例えば黄色のメッセージウインドウにて「油温度異常」のメッセージを表示する。その後、ステップS209に進み、制御装置11Aは、ファン装置6の回転数を連続定格値NH1より高い短時間定格値NH2(例えば1200rpm)まで上昇させる。
【0036】
ステップS209の終了後、ステップS210に進み、制御装置11Aは、ファン非常運転時間Tをカウントアップする。なお、ファン通常運転時間Tのカウントアップからファン非常運転時間Tのカウントアップに移行する際は、ファン非常運転時間Tをリセットしてから、ファン非常運転時間Tのカウントアップを開始する。その後、ステップS211に進み、制御装置11Aは、ファン非常運転時間Tが予め設定された所定時間(例えば10分)以上であるかどうかを判定する。最初のうちはファン非常運転時間Tが所定時間未満であるから、ステップS211の判定がNOとなり、ステップS201に戻って同様の手順を繰り返す。
【0037】
油温度が第2閾値tB2以上かつ第1閾値tB1未満であってステップS208、S209及びS209が繰り返し行われて、ファン非常運転時間Tが所定時間に達すると、ステップS211の判定がYESとなり、ステップS212に移る。ステップS212にて、制御装置11Aは、第2段階の警報指令を表示装置12に出力する。これに応じて、表示装置12は、例えば赤色のメッセージウインドウにて「油温度異常」のメッセージを表示する。その後、ステップS213及びS214に進み、制御装置11Aは、ファン装置6を停止させると共に、電動機1(即ち圧縮機本体2)を停止させる。
【0038】
ステップS202にて油温度が第1閾値tB1に達した場合は、その判定がNOとなり、上述したステップS212、S213及びS214を行う。また、ステップS207にてファン通常運転時間Tが所定時間未満である場合は、その判定がNOとなり、上述したステップS212、S213及びS214を行う。
【0039】
以上のように本変形例においては、温度センサ9Aで検出された油温度が第2閾値tB2以上かつ第1閾値tB1未満である場合に、一時的に、ファン装置6の回転数を短時間定格値NH2まで上昇させて、油冷却器5の冷却力を高める。これにより、圧縮機本体2に循環させる油の温度の上昇を抑制して、吐出温度の上昇を抑制することができる。したがって、温度センサ9Aで検出された油温度が第1閾値tB1に到達して圧縮機本体2が停止するのを極力回避することができる。
【0040】
また、第2閾値tB2は、第1閾値tB1と第2閾値tB2との差分が第1閾値tB1と基準値tB3との差分に対して三分の一以下となるように(言い換えれば、第1閾値tB1に近づけるように)設定されている。これにより、第1閾値tB1と第2閾値tB2との差分が第1閾値tB1と基準値tB3との差分に対して三分の一を超えるように(言い換えれば、第1閾値tB1から離れるように)設定された場合と比べ、温度センサ9Aで検出された油温度が第2閾値tB2に到達しファン装置6の回転数が短時間定格値NH2である状態が所定時間継続して圧縮機本体2が停止するのを極力回避することができる。
【0041】
なお、上記一実施形態及び上記一変形例において、制御装置11又は11Aは、上述の図2のステップS114又は上述の図4のステップS214にて、圧縮機本体2を停止させる場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。即ち制御装置11又は11Aは、上述の図2のステップS114又は上述の図4のステップS214にて、圧縮機本体2を縮退運転させてもよい。具体的には、インバータ(図示せず)を介して電動機1の回転数(即ち圧縮機本体2の回転数)を低下させてもよいし、あるいは、圧縮機本体2の吸入側に設けられた吸込み絞り弁(図示せず)の開口率を低下させてもよい。この場合は、圧縮機本体2の縮退運転を極力回避することができる。
【0042】
また、上記一実施形態及び上記一変形例においては、警報装置として表示装置12を用い、具体的には、第1段階の警報として黄色のメッセージウインドウを表示し、第2段階の警報として赤色のメッセージウインドウを表示する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えば、警報装置として警報ランプ(図示せず)を用いてもよく、具体的には、第1段階の警報として点滅し、第2段階の警報として点灯してもよい。また、例えば、警報装置として警報ブザー(図示せず)を用いてもよく、具体的には、第1段階の警報として断続的に吹鳴し、第2段階の警報として連続的に吹鳴してもよい。これらの場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0043】
また、上記一実施形態及び上記一変形例において、圧縮機本体2は圧縮室に油を注入し、気液分離器3は圧縮空気とこれに含まれる油を分離しており、気液分離器3から圧縮機本体2の圧縮室等に供給する油を冷却する油冷却器5を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えば、圧縮機本体2は圧縮室に油以外の液体(例えば水)を注入し、気液分離器3は圧縮空気とこれに含まれる液体を分離してもよく、圧縮機本体2の圧縮室等に供給する液体を冷却する液体冷却器を備えてもよい。あるいは、例えば、圧縮機本体2は圧縮室に液体を注入せず、気液分離器3を備えなくてもよく、圧縮機本体2のケーシングを冷却するための流路等に循環させる液体を冷却する液体冷却器を備えてもよい。これらの場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0044】
また、上記一実施形態及び上記一変形例において、空気圧縮機は、スクリュー型の圧縮機本体2を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えば、容積型(回転式や往復動式等)やターボ型の圧縮機本体を適用することもでき、これらの場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、上記一実施形態及び上記一変形例において、空気圧縮機を例にとって説明したが、これに限らずこれに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。空気以外の他の気体を圧縮する圧縮機であっても、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0046】
2…圧縮機本体、3…気液分離器、5…油冷却器(液体冷却器)、6…ファン装置、9,9A…温度センサ、11,11A…制御装置、12…表示装置(警報装置)
図1
図2
図3
図4