特許第6964568号(P6964568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6964568-静脈検出装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6964568
(24)【登録日】2021年10月21日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】静脈検出装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/42 20060101AFI20211028BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   A61M5/42 520
   G06T1/00 400B
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-200380(P2018-200380)
(22)【出願日】2018年10月24日
(65)【公開番号】特開2019-217244(P2019-217244A)
(43)【公開日】2019年12月26日
【審査請求日】2018年10月24日
【審判番号】不服2020-7964(P2020-7964/J1)
【審判請求日】2020年6月9日
(31)【優先権主張番号】107121617
(32)【優先日】2018年6月22日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】518378341
【氏名又は名称】林 世民
【氏名又は名称原語表記】Lin,Shih−Min
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】林 世民
【合議体】
【審判長】 内藤 真徳
【審判官】 栗山 卓也
【審判官】 津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6047847(JP,B1)
【文献】 中国特許出願公開第107788949(CN,A)
【文献】 特表2015−507493(JP,A)
【文献】 米国特許第6230046(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M5/42
A61M5/00
A61B5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に設けられ、被照射体に密着されると共に赤外線を発射して前記被照射体に照射し、かつ前記被照射体に密着され、魚眼レンズであるレンズを更に含むエミッタと、
前記基台に設けられ、少なくとも1つの関節が設けられた検出アームと、
前記検出アームに設けられ、前記被照射体から発せられる、赤外線から変換された第1赤外線画像を受信する第1レシーバと、
前記基台に設けられると共に前記第1レシーバと電気的に接続し、前記第1赤外線画像から変換された第1静脈画像を表示し、フィルタ回路、デジタル信号プロセッサ等の組み合わせとする第1画像フィルタモジュールを含む表示部と、
を含み、前記第1レシーバは、前記第1画像フィルタモジュールと接続し、前記被照射体及び前記エミッタと同一直線上に調整されることを特徴とする、静脈検出装置。
【請求項2】
前記基台は、頭部装着型表示装置と有線或いは無線で接続し、前記頭部装着型表示装置に第2レシーバが更に設けられ、かつ前記被照射体Hから発せられた第2赤外線画像は第2レシーバに受信されて前記第2赤外線画像を第2静脈画像に変換した後前記頭部装着型表示装置に表示させ、前記第2レシーバは、前記被照射体及び前記エミッタと同一直線上に調整されることを特徴とする、請求項1に記載の静脈検出装置。
【請求項3】
前記第1赤外線画像では、第1輝度区間画像、静脈輝度区間画像及び第2輝度区間画像を包括し、前記第1輝度区間画像の輝度は前記静脈輝度区間画像の輝度より高く、前記静脈輝度区間画像の輝度が前記第2輝度区間画像の輝度より高いことを特徴とする、請求項1に記載の静脈検出装置。
【請求項4】
記第1画像フィルタモジュールは前記第1輝度区間画像及び前記第2輝度区間画像をフィルタリングして前記静脈輝度区間画像を前記第1静脈画像に形成させることを特徴とする、請求項3に記載の静脈検出装置。
【請求項5】
前記第2赤外線画像では、第1輝度区間画像、静脈輝度区間画像及び第2輝度区間画像を包括し、前記第1輝度区間画像の輝度は前記静脈輝度区間画像の輝度より高く、前記静脈輝度区間画像の輝度が前記第2輝度区間画像の輝度より高く、前記頭部装着型表示装置は第2画像フィルタモジュールを更に含み、前記第2画像フィルタモジュールが前記第2レシーバと接続し、かつ前記第2画像フィルタモジュールは前記第1輝度区間画像及び前記第2輝度区間画像をフィルタリングして前記静脈輝度区間画像を前記第2静脈画像に形成させることを特徴とする、請求項2に記載の静脈検出装置。
【請求項6】
前記第1レシーバ及び前記第2レシーバは、赤外線カメラであることを特徴とする、請求項2に記載の静脈検出装置。
【請求項7】
前記静脈検出装置が更に補助エミッタと接続し、前記補助エミッタは補助赤外線を発射して前記被照射体に照射することを特徴とする、請求項1に記載の静脈検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静脈検出装置に関し、特に、赤外線センシング技術を用いて静脈画像を表示する静脈検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の西洋医学にとって、投薬治療方法は、数多くのタイプがある。内服薬、注射薬、点滴剤或いは坐剤等が挙げられ、全て普通に見られる方法である。
【0003】
しかしながら、注射法による投薬は、早くからすでに医療行為内において不可欠な一部である。一般的に、最もよく見られる注射法は、静脈注射法を通じた投薬が最も安全である。その理由は、静脈の血圧が比較的低くいため、侵襲式治療後に大量出血のリスクが比較的ないことである。
【0004】
ただし、従来の静脈注射は医療従事者の経験に依存しているものの、経験問題を無視し、臨床上やはり多くの患者に血管を見つけにくい問題があった。その原因は、生まれつき血管が細い可能性があり、また体脂肪率が高過ぎることで、皮膚外部から肉眼で血管を見つけにくいという可能性もあった。バンド等の方式を通じて静脈を浮かび上がらせることもできるが、その効用にも限度がある。
【0005】
上記原因を踏まえ、現代医療において実際すでに現代化の静脈検出装置が開発され、従来の静脈検出装置の原理は、主に血管中のヘモグロビンの近赤外光に対する吸収率が他の組織と異なることを利用することである。近赤外光結像後の画像処理を通じて皮下血管位置を投影して皮膚表面に表示し、医療従事者に患者の皮下血管の分布を明確に識別させることができる。
【0006】
更に詳細に説明すると、従来技術の静脈検出装置において、近赤外光が人体の部位に照射した時、特定波長の赤外線が血管に吸収される。吸収が多くなればなるほど反射が少なくなり、そのため皮膚上に投射された画面が黒色の態様を呈し、その他の組織が少なく吸収するため、反射が多くなる。よって、輝度が高い色光を呈する。
【0007】
しかしながら、従来の静脈検出装置は血管画像を皮膚表面に可視光で投影するため、投射された血管画像と静脈血管の実際の位置のずれが容易に存在する。このようなことから注射針を正確な注射位置に刺入できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行技術内で言及された課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
静脈検出装置であって、基台とエミッタと検出アームと第1レシーバと表示部とを含む。該エミッタは、該基台に設けられ、かつ該エミッタが被照射体に密着されると共に赤外線を発射して該被照射体に照射する。検出アームは、該基台に設けられ、該第1レシーバを載置するため用いられる。該第1レシーバは、該被照射体から発せられた第1赤外線画像を受信し、かつ該第1赤外線画像が該赤外線から変換されたものである。
【0010】
該表示部は、該基台に設けられ、該第1レシーバと電気的に接続する。かつ該表示部は、該第1赤外線画像から変換された第1静脈画像を表示する。本発明において、該エミッタは、レンズを更に含み、該被照射体に密着される。
【0011】
以上の本発明に対する略述は、本発明の幾つかの態様及び技術的特徴について基本的な説明を行うことを目的とする。発明の略述が本発明に対する詳述ではないため、その目的は特別に本発明の関鍵性或いは重要な構成要素を列挙することではなく、本発明の範囲を特定することではなく、簡明な方式で本発明の幾つかの概念のみを呈することである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例に係る外観構造を示す模式図である。
図2】本発明の別の実施例に係るシステム構成図である。
図3】本発明の更なる実施例に係る外観構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の技術的特徴及び実用効果を理解させると共に明細書の内容に基づいて実施できるため、更に図面に示す好ましい実施例で、以下に詳細に説明する。
【0014】
図1を参照すると、図1は、本発明の一実施例に係る外観構造を示す模式図である。図1に示すように、図1の実施例において本発明の静脈検出装置10aの構造を示し、主に基台100、エミッタ200と検出アーム300と第1レシーバ400aと表示部500とを含む。
【0015】
エミッタ200は、該基台100上に設けられる。本実施例のエミッタ200は、赤外線エミッタを選択した。かつエミッタ200は、被照射体Hに密着して赤外線R1を発射して被照射体Hに照射する。本実施例において、赤外線R1の波長は、780〜1400ナノメートル(nm)とし、かつ被照射体Hが人の手のひらである。実際は、被照射体Hも大腿、臀部、上腕等のよく見られる静脈注射部位とすることでもよく、本発明は制限しない。
【0016】
本実施例の検出アーム300は、基台100に設けられ、第1レシーバ400aを載置するために用いられる。本実施例において、検出アーム300は、第1レシーバ400aの位置を調整するため、更に少なくとも1つの関節301を設けることができる。また、本実施例の第1レシーバ400aは、赤外線カメラであり、かつ第1レシーバ400aが該被照射体Hから発せられた第1赤外線画像R2aを受け、該第1赤外線画像R2aは実際、赤外線R1が被照射体Hを透過した後で変換してきた画像である。第1赤外線画像R2a内には、非常に多く組織に赤外線R1を照射した後の画像情報を含む。
【0017】
本実施例から言うと、第1赤外線画像R2a内では、実際、第1輝度区間画像、静脈輝度区間画像及び第2輝度区間画像を包括する。前記第1輝度区間画像の輝度は、該静脈輝度区間画像の輝度より高く、該静脈輝度区間画像の輝度が該第2輝度区間画像の輝度より高い。
【0018】
実際の被照射体Hに含まれる可能性のある組織を例にすると、赤外線R1が殆ど静脈に吸収されるため、一定深度(インテンシティー)区間の画像を静脈輝度区間画像として取る。該静脈輝度区間画像の輝度より高い又は低い第1輝度区間画像及び第2輝度区間画像は、硬骨組織、結合組織、脂肪組織、軟骨組織或いはその他の組織細胞等とする可能性があり、本発明は制限しない。
【0019】
よって、本実施例の表示部500は、基台100に設けられると共に第1レシーバ400aと電気的に接続する。かつ表示部500は、第1赤外線画像R2aから変換された第1静脈画像V1を表示する。更に言えば、第1静脈画像V1は、前述静脈輝度区間画像から変換して形成された画像であり、静脈が存在する位置を明確に表示する。
【0020】
本実施例において、エミッタ200は、レンズ201を更に含む。レンズ201は被照射体Hに密着される。本発明において、用語の密着とは、近いことのみを意味することではなく、実際の物理的な接触の接近、寄せ等の意味を含んで本発明の定義範囲に属する。
【0021】
本実施例において、レンズ201は、魚眼レンズであり、更に言えば、魚眼レンズセットとしてもよい。その目的は、エミッタ200から発せられた赤外線R1の発射方向を自由に制御させることである。また被照射体Hと第1レシーバ400aの位置に応じて赤外線R1の光出射方向を調整する。よって、上記技術手段を通じて本実施例における第1レシーバ400a、被照射体H及びエミッタ200は同一直線上にある要求を容易に実現できる。
【0022】
言い換えると、エミッタ200は、実質的に被照射体H位置を全方位(Omnidirectional)追従する機能を含む。よって、第1レシーバ400aの位置は、必ずその他の手段(例えば少なくとも1つの関節301)を通じて調整することで、同一直線上にある定義に適合できる。
【0023】
同時に図2及び図3を参照すると、図2は、本発明の別の実施例のシステム構成図であり、図3は本発明の更なる実施例の外観構造を示す模式図である。図1の実施例に比べると、図2における実施例のシステム構成は、頭部装着型表示装置700及び補助エミッタ800を追加で設け、図3における実施例では頭部装着型表示装置700を追加で設けている。
【0024】
本発明の図1図3における実施例を運用させるため、基台100内には電源供給装置、メモリ、無線信号送受信モジュール又はマイクロコントローラ等の素子を含み、静脈検出装置10a或いは静脈検出装置10bの運転に必要な電力及び画像の計算と処理能力を提供するために用いられることが分かる。ただし、上記素子は、当業者がニーズによって自由に配置できるため、本実施例はここでその説明を省略する。
【0025】
図2及び図3の実施例において、静脈検出装置10b内の基台100は、実際、頭部装着型表示装置700と有線或いは無線で接続してもよい。更に言えば、頭部装着型表示装置700は、仮想現実(Virtual Reality、VR)表示装置又は拡張現実(Augmented Reality、AR)表示装置としてもよく、本発明は制限しない。よって、当業者であれば、頭部装着型表示装置700内にも運転に必要な無線信号送受信モジュール、電源供給装置、マイクロコントローラ、メモリ若しくはビデオカード等の素子を含むことができ、ここでその説明を省略する。
【0026】
図2又は図3の実施例における頭部装着型表示装置700に第2レシーバ400bが更に設けられ、かつ被照射体Hから発せられた第2赤外線画像R2bは第2レシーバ400bに受信されて第2赤外線画像R2bを第2静脈画像V2に変換した後表示部500及び頭部装着型表示装置700上に表示させる(頭部装着型表示装置700のスクリーンはその内側に位置するため、図3内では第2静脈画像V2の表示位置を図示しない)。言い換えると、図3の実施例において、第2静脈画像V2も基台100の表示部500上に同期表示することで、周りの他人に頭部装着型表示装置700の視聴者が見た第2静脈画像V2を見させる。
【0027】
図2の図示を通じて図1及び図3の実施例において、第1画像フィルタモジュール600aを設けた表示部500及び第2画像フィルタモジュール600bを設けた頭部装着型表示装置700は、それぞれ第1レシーバ400a及び第2レシーバ400bに接続することが分かる。第1赤外線画像R2aが第1レシーバ400aに送信された後、又は第2赤外線画像R2bが第2レシーバ400bに送信された後、第1画像フィルタモジュール600a及び第2画像フィルタモジュール600bは、前記第1輝度区間画像及び該第2輝度区間画像をフィルタリングし、静脈輝度区間画像のみを保留し、該静脈輝度区間画像を第1静脈画像V1或いは第2静脈画像V2に形成させた後基台100の表示部500上若しくは頭部装着型表示装置700上に表示させる。
【0028】
よって、本実施例内で用いる画像フィルタモジュール600は、フィルタ、デジタル信号プロセッサ等の組み合わせとすることができ、本発明は、制限しない。
【0029】
図3に示されたことからも分かるように、エミッタ200、被照射体H及び第2レシーバ400bが必ず同一直線上にあることで、良好な検出効果を奏することができる。図2の実施例において、第2レシーバ400bの位置は、頭部装着型表示装置700の移動に伴い容易に調整できるため、同じ理由で、図1の実施例が頭部装着型表示装置700を含まない場合において、被照射体H或いはエミッタ200と第1レシーバ400aは同一直線上にあることができない時、図1〜3実施例における検出アーム300に少なくとも1つの関節301(検出アーム300の外皮内に埋め込む)を更に設けることができ、操作者に第1レシーバ400aの向く角度及び位置を自由に調整させることができる。上記少なくとも1つの関節301は、任意の種類の機械式関節構造とすることができ、枢軸関節、球体関節のみならず全方位(Omnidirectional)関節等の組み合わせとしてもよく、本発明は制限しない。
【0030】
図2の実施例において、静脈検出装置10bは、更に補助エミッタ800と接続してもよく、更に正確に言うと、静脈検出装置10b内の基台100と有線又は無線で接続できる。本実施例において、補助エミッタ800は、同様に赤外線エミッタであり、補助赤外線R3を発射して被照射体Hに照射するために用いられる。補助エミッタ800を使用する目的は、静脈検出装置10bが第1赤外線画像R2a或いは第2赤外線画像R2bを効果的に観測できなかった時、補助エミッタ800が別の次元(方位)から補助赤外線R3を発射して被照射体Hに照射できる。多方向光源の画像結像方式を通じて、第1レシーバ400a或いは第2レシーバ400bに検出できる第1赤外線画像R2a或いは第2赤外線画像R2bをより鮮明にさせる。
【0031】
その他の可能な実施様態において、検出アーム300にも無線通信送受信モジュールを内蔵できる。また検出アーム300を基台100から取り外した後も、やはり基台100との通信を保持でき、また第1レシーバ400aにより一層自由な方向から被照射体Hが発した第1赤外線画像R2aを検出させることができるが、本発明は制限しない。
【0032】
上述においては、ただ好ましい実施例を挙げて種々説明したが、本発明の実施範囲はこれに限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及び明細書の内容を逸脱しない範囲内において種々の改良変更をなし得ることは、本発明の意図した保護範囲内に網羅される。
【符号の説明】
【0033】
10a 静脈検出装置
10b 静脈検出装置
100 基台
200 エミッタ
201 レンズ
300 検出アーム
301 関節
400a 第1レシーバ
400b 第2レシーバ
500 表示部
600a 第1画像フィルタモジュール
600b 第2画像フィルタモジュール
700 頭部装着型表示装置
800 補助エミッタ
H 被照射体
R1 赤外線
R2a 第1赤外線画像
R2b 第2赤外線画像
R3 補助赤外線
V1 第1静脈画像
V2 第2静脈画像
図1
図2
図3