(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0004】
ところで、近年は環境意識の高まりや社会の省エネ志向によってハイブリッド自動車やアイドリングストップ等の省エネ機構を搭載したいわゆるエコカーの普及が進んでいる。これらの車種では運転中であってもエンジンが頻繁に停止する。エンジン始動時(特に比較的コールドな状態でのエンジン始動時)には、比較的多量の未燃状態のHC(炭化水素)が排出される傾向にある。そのため、始動時において排出されるHCの浄化は、上記のようなエコカーが普及するにつれ益々重要な課題となっている。
しかしながら、従来のOSC材を含有するタイプの排ガス浄化用触媒は、その構成(構造)に関してなお改善の余地があった。即ち、本発明は、エンジン始動時のようなHCの排出量(エミッション量)が比較的多い場合においても良好なHC浄化(HCの酸化処理)が実現できるOSC材含有タイプの排ガス浄化用触媒の提供を目的として創出されたものである。
【0005】
本発明者らは、内燃機関(ガソリンエンジン等)の始動から暖機運転の過程において排出される排ガス(典型的には空燃比がリッチな状態で燃焼した後の排ガス)からのHCの酸化浄化処理は、先ず、周囲にOSC材が存在しないPd含有触媒層に当該排ガスを導入することによって向上させ得ることを見出した。さらに、排ガス浄化用触媒の排ガス流動方向(排ガス導入方向)に沿う全長における上記OSC材非存在Pd含有触媒層の長さを所定の範囲に規定することにより、HCの酸化浄化処理(主にPdによる)と、NOxの還元浄化処理(主にRhによる)とを、ともに高い次元で両立させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明によって内燃機関の排気管に配置されて該内燃機関から排出される排ガスの浄化を行う排ガス浄化用触媒が提供される。
即ち、ここで開示される排ガス浄化用触媒は、基材と、該基材上に形成された触媒層であって、
(1)酸化及び/又は還元触媒として機能する金属(触媒金属)として少なくともパラジウム(Pd)およびロジウム(Rh)、
(2)該金属を担持する担体、ならびに、
(3)酸素貯蔵・放出能力(Oxygen Storage Capacity)を備えるOSC材(酸素貯蔵材ともいう。)、を含む触媒層と、
を備えている。
そして、上記触媒層は、上記排気管に配置された際に該排気管内の排ガス流動方向の上流側に位置するフロント部と、該フロント部よりも排ガス流動方向の下流側に位置するリア部とを有している。かかるフロント部は、上記金属としてパラジウム(Pd)を含有し且つOSC材を含有していない。ここで上記排ガス流動方向において、上記基材の排ガス流動方向に沿う全長を100%としたときに、フロント部が形成されている割合が上流側の先端から10%以上40%以下であることを特徴とする。
なお、ここで「上流側の先端」とは、排ガス浄化用触媒を排気管(排ガス流路)の所定の位置に配置した状態で、当該配置場所における排気管の最も上流側に位置する触媒層の先端部位をいう。
【0007】
ここで開示される排ガス浄化用触媒では、上記のとおり、排ガス流動方向の上流側に位置するフロント部においてOSC材が含まれていない。OSC材が共存しない触媒層においては、PdのHCとの反応性が高くなる(後述する各試験例参照)。そして、フロント部には、HCとともに酸化成分(O
2、NO
x等)および水蒸気を含む排ガスが最初に導入され得る部位である。このため、当該フロント部に配置されるPdによるHCの酸化処理効率を向上させることができ、HCの排出量(エミッション)を低減することができる。
また、ここで開示される排ガス浄化用触媒では、かかるフロント部の排ガス流動方向における長さが、上記基材の排ガス流動方向に沿う全長を100%としたときに上流側の先端から10%以上40%以下である。これにより、フロント部におけるHCの酸化処理効率と、リア部における排ガス浄化処理効率とを、高レベルで両立することができる。
【0008】
ここで開示される排ガス浄化用触媒の好適な一態様では、上記基材の表面から垂直方向にみて、上記フロント部の少なくとも一部の上面には、触媒金属としてロジウム(Rh)を含有し且つOSC材を含有するOSC材存在Rh含有触媒層が形成されていることを特徴とする。
かかる構成の排ガス浄化用触媒によると、フロント部におけるHCの酸化処理効率と、該フロント部に隣接するOSC材存在Rh含有触媒層における排ガス浄化処理効率(特にNOxの還元処理)とを、高レベルで両立することができる。
【0009】
また、ここで開示される排ガス浄化用触媒の好適な他の一態様では、上記リア部は、触媒金属としてロジウム(Rh)を含有し且つOSC材を含有しており、該リア部の一部が前記OSC材存在Rh含有触媒層を構成していることを特徴とする。
かかる構成の排ガス浄化用触媒によると、リア部においてHCの酸化処理効率と、該フロント部に隣接するOSC材存在Rh含有触媒層における排ガス浄化処理効率(特にNOxの還元処理)とを、高レベルで両立することができる。
【0010】
また、ここで開示される排ガス浄化用触媒の好適な他の一態様では、触媒層は、基材の表面から垂直方向にみて、相互に構成の異なる少なくとも2層からなる積層構造である。そして、この基材上に形成された上記フロント部および上記リア部を触媒第1層とし、且つ、該第1層上に形成された層を触媒第2層としたとき、かかる触媒第1層のフロント部は触媒金属としてパラジウム(Pd)を含有し且つOSC材を含有していない。また、かかる触媒第1層のリア部は、触媒金属としてパラジウム(Pd)を含有し且つOSC材を含有している。さらに上記触媒第2層は、触媒金属としてロジウム(Rh)を含有し且つOSC材を含有していることを特徴とする。
かかる積層構造を有する排ガス浄化用触媒によると、触媒第1層のフロント部において効果的にHCを酸化処理するとともに、触媒第1層のリア部におけるOSC材およびPdならびに触媒第2層におけるOSC材およびRhにより、良好な三元触媒として機能し得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を適宜参照しつつ本発明の好適ないくつかの実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術知識とに基づいて実施することができる。なお、後述する
図1〜
図3は、本発明の内容を理解するために模式的に示したものであり、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さなど)は、実際の寸法関係を必ずしも反映するものではない。
【0013】
ここで開示される排ガス浄化用触媒は、触媒層のうち排気管に配置された際に該排気管の上流側に位置するフロント部が、Pdを含有し且つOSC材を含有していない触媒領域として規定されており、排ガス流動方向において、基材の全長を100%としたときに、フロント部が形成されている割合が上流側の先端から10%以上40%以下であることで特徴付けられる。したがって、その他の構成は特に限定されない。本発明の排ガス浄化用触媒は、後述する基材、担体(OSC材である場合を含む)、触媒金属、等を適宜選択し用途に応じて所望する形状に成形することによって、種々の内燃機関、特に自動車のガソリンエンジンやディーゼルエンジンの排気系(排気管)に配置することができる。
【0014】
<基材>
基材は、排ガス浄化用触媒の骨格を構成するものである。該基材としては、従来この種の用途に用いられる種々の素材および形態のものを採用することができる。例えば、高耐熱性を有するコージェライト、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素(SiC)などのセラミックス製、或いはステンレス鋼などの合金製の基材を使用することができる。
形状についても従来の排ガス浄化用触媒と同様でよい。一例として、
図1に示すように外形が円筒形状であるハニカム基材1であって、その筒軸方向に排ガス流路としての貫通孔(セル)2が複数設けられ、各セル2を仕切る隔壁(リブ壁)4に排ガスが接触可能となっているものが挙げられる。基材1の容量(セル2の体積)は、通常0.1L以上(好ましくは0.5L以上)であり、例えば5L以下(好ましくは3L以下、より好ましくは2L以下)であるとよい。また、基材1の排ガス流動方向に沿う全長は、通常10〜500mm(例えば50〜300mm)程度とすることができる。なお、基材1の形状はハニカム形状の他にフォーム形状、ペレット形状などとすることができる。また基材1全体の外形については、円筒形に替えて、楕円筒形、多角筒形などを採用してもよい。
【0015】
<触媒層>
触媒層は、排ガスを浄化する場として排ガス浄化用触媒の主体をなすものであり、酸化及び/又は還元触媒として機能する触媒金属粒子と該触媒金属粒子を担持する担体とを備えている。例えば上述した
図1に示すハニカム基材1を採用した場合には、基材1のリブ壁4上に所定の性状(例えば長さや厚み)の触媒層が形成されており、その表面の空間部にガス流路が形成されている。排ガス浄化触媒に供給された排ガスは、基材1の流路内(例えばセル2内)を流動している間に触媒層に接触することによって有害成分が浄化される。例えば、排ガスに含まれるHCやCOは触媒層の触媒機能によって酸化され、水(H
2O)や二酸化炭素(CO
2)などに変換(浄化)される。また、NO
xは触媒層の触媒機能によって還元され、窒素(N
2)に変換(浄化)される。
【0016】
図2は、ここで開示される排ガス浄化用触媒10で構成される触媒層20の典型的な一実施形態を模式的に示す断面図である。この図および後述する
図3では、図示しない内燃機関の排気管を排ガスが各図中の矢印方向に流れる向きで描かれている。即ち、図中の左側が排ガス流路(排気管)の上流側であり、右側が排ガス流路の下流側である。具体的には、
図2に示す触媒層20は、排ガス流動方向の上流側の先端に相当する先端部24aを包含するフロント部24と、排ガス流動方向の下流側の後端に相当する後端部26bを包含するリア部26とから構成されている。
【0017】
<触媒金属>
触媒層に備えられる酸化及び/又は還元触媒として機能する貴金属としては、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)などが挙げられる。或いは、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、金(Au)などを使用してもよい。また、これらの金属が合金化したものを用いてもよい。更には、他の金属種を含むもの(典型的には合金)であってもよい。なかでも、還元活性が高いロジウムと、酸化活性が高いパラジウムを組み合わせて用いることが好ましい。
ここで開示される排ガス浄化用触媒10では、フロント部24に上記貴金属として少なくともPdを含有するが、その他の部位(例えばにリア部26)については、特に限定はない。例えば、リア部26には、上記貴金属としてRhを含有させることができる。これにより、フロント部24におけるPdでHC、CO等の酸化処理を行い、リア部26におけるRhでNO
x等の還元処理を行うことができる。
【0018】
かかる触媒金属は、排ガスとの接触面積を高める観点から十分に小さい粒径の微粒子として使用されることが好ましい。上記触媒金属粒子の平均粒径(TEM観察により求められる粒径の平均値。以下同じ。)は通常1〜15nm程度であり、10nm以下、7nm以下、更には5nm以下であることが特に好ましい。
また、特に限定しないが、触媒単位容積(1L)あたりの触媒金属含有量は、0.1〜5g/L程度が適当であり、0.2〜2g/L程度が好ましい。触媒金属含有量が多すぎるとコスト的に好ましくなく、少なすぎると排ガス浄化能が低いために好ましくない。なお、本明細書において触媒単位容積(1L)というときは、基材の純容積に加えて内部の空隙(セル)容積を含む嵩容積1Lをいう。
【0019】
<担体ならびにOSC材>
触媒層20を構成し、上述した触媒金属を担持する担体としては、従来の排ガス浄化用触媒と同様の無機化合物が使用され得る。なかでも、比表面積(ここではBET法により測定される比表面積をいう。以下同じ。)が比較的大きな多孔質担体を好ましく用いることができる。好適例として、アルミナ(Al
2O
3)、セリア(CeO
2)、ジルコニア(ZrO
2)、シリカ(SiO
2)、チタニア(TiO
2)、およびこれらの固溶体(例えば、セリア−ジルコニア複合酸化物(CZ複合酸化物))、或いはこれらの組み合わせなどが挙げられる。
但し、ここで開示される排ガス浄化用触媒においては、フロント部24にOSC材を含有しないことを特徴とする。このため、上記担体の好適例のうち、フロント部24には、セリアやCZ複合酸化物のようなOSC材として機能し得る担体は使用しない。したがって、フロント部24の担体としては、例えばアルミナ、ジルコニア、等が担体として好適である。
なお、本明細書において、触媒金属を含む触媒層フロント部に関して「OSC材を含有しない」とは、500℃における1molあたりのO
2吸蔵放出量が0.002molを超えるようなO
2吸蔵放出能を示す物質を含有していないことをいう。
フロント部24をOSC材が共存しないOSC材非存在Pd含有触媒層として構成することにより、PdのHCとの反応性を高くすることができる。また、フロント部24にはO
2、NO
x等の酸化成分をHC、水蒸気とともに含む排ガスが導入されるため、PdによるHCの酸化処理効率を向上させることができる。したがって、特にエンジン始動時のようなHCの発生が比較的多い状態のときのHC排出量(エミッション)を効果的に低減することができる。
【0020】
一方、
図2に示すようなリア部26には、典型的には、アルミナ等の一般的な担体に加えてOSC材として機能する無機酸化物(典型的には担体としても機能し得る。)を含有させる。
かかるOSC材自体は、従来からこの種の排ガス浄化用触媒にOSC材として使用されているものであればよく、特に制限はない。典型的には、Ceを含む酸化物、例えばセリア、セリアとジルコニアとを主体とする複合酸化物(即ちCZ複合酸化物)が挙げられる。かかるOSC材たるCZ複合酸化物としては、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)および酸素(O)の3元素のみからなる酸化物であってもよく、或いは例えばイットリウム(Y)、ランタン(La)、ニオブ(Nb)、プラセオジム(Pr)その他の希土類元素を含む4元素又はそれ以上の種類の元素からなる複合酸化物であってもよい。
なお、担体およびOSC材(例えばアルミナ粉末やCZ複合酸化物の粉末)は、耐熱性や構造安定性の観点から、比表面積が50〜500m
2/g(例えば200〜400m
2/g)程度であるとよい。また、平均粒径は、典型的には1〜500nm以下(例えば10〜200nm以下)程度であるとよい。
【0021】
<その他の成分>
また、触媒層20には、担体、OSC材(フロント部24を除く)、触媒金属に加えて、他の種々の助触媒成分を含ませることができる。かかる助触媒成分の好適例として、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属が挙げられる。例えば、Ba等のアルカリ土類金属成分(例えば触媒層全体の1質量%以上10質量%以下程度)を含有することにより、排ガス中に含まれるNO
xを一時的に吸蔵することができるとともに、Pdと共存させることによって、BaからPdへの電子供与によりPdのシンタリングを抑制し、Pdの触媒活性を向上することができる。一方、RhとBaとが共存すると、BaからRhへの電子供与によって不活性なRh構造が安定化される虞があり、NO
xの浄化性能が低下し得るため、好ましくない。
【0022】
<フロント部とリア部の存在形態>
ここで開示される排ガス浄化用触媒では、排気管内の排ガス流動方向における基材1の全長を100%としたとき、フロント部24の比率(割合)は、上流側の先端(先端部24a)から10%以上40%以下が適当であり、20%以上35%以下程度(例えば、基材1の全長の凡そ3分の1程度)が好ましい。量的には、触媒層20のフロント部24を構成する部分の含有量が触媒単位容積あたりで20g/L以上200g/L以下が適当であり、50g/L以上150g/L以下(例えば100±20g/L程度)が好ましい。
このような割合でフロント部24(即ち、OSC材非存在Pd含有触媒層)を設けることにより、エンジン始動時のような比較的多量の未燃状態のHCが排出される時期においてフロント部24におけるPdによるHCの酸化処理を効果的に行うことができる。
【0023】
一方、ここで開示される排ガス浄化用触媒におけるリア部26の比率(割合)は、下流側の後端(後端部26b)から60%以上90%以下が適当である。また、
図2に示すように、基材1の表面から垂直方向にみて、リア部26の一部が、フロント部24と重なっていてもよい。この場合、フロント部24とリア部26の重なる割合は特に限定されないが、重なっている部分の割合が、排ガス流動方向に沿う基材の全長における10%以上30%以下程度が好ましい。
フロント部24(即ちOSC材非存在Pd含有触媒層)と、リア部26(例えばOSC材存在Rh含有触媒層)とが、上記垂直方向にみて一部重なり合うことにより、例えば、エンジン始動時のような比較的多量のHCが排出される時期において、フロント部のPdによるHCの酸化処理と、該フロント部に隣接するOSC材存在Rh含有触媒層における排ガス浄化処理効率(特にNOxの還元処理)とを、高レベルで両立することができる。
【0024】
<その他の形態>
ここで開示される排ガス浄化用触媒の触媒層20は、
図2に示すような、排ガス流動方向に配列するフロント部24およびリア部26からなる1層構造のものに限定されない。例えば、
図3に示すような、積層構造(
図3に示すものは二層構造)のものであってもよい。具体的には、
図3に示す実施形態の触媒層30は、
図2に示す積層構造の触媒層30は、基材1に沿って相対的に該基材1に近接する触媒第1層(下層)34,36と、触媒層30の表層部分を構成する触媒第2層(上層)38との二層からなる積層構造で構成されている。
このような積層構造の触媒層30によれば、従来の三元触媒と同様、第1層34,36と第2層38との間で、担体、該担体に担持される触媒金属、OSC材、助触媒成分等の種類や含有率をそれぞれ異ならせることができる。
【0025】
ここで開示される排ガス浄化用触媒では、かかる実施形態においても、フロント部34においてOSC材非存在Pd含有触媒層34を設けることを特徴とする。例えば、触媒第1層の先端部34aから後端部36bまでを先端部34からみて2:8〜4:6(例えば3:7〜4:6)程度に配分し、その上流側をフロント部34、下流側をリア部36とすることができる。フロント部34については、上述した
図2に示す実施形態と同様の構成(即ち、OSC材非存在Pd含有触媒層)とすることができる。
一方、触媒第1層のリア部36ならびに触媒第2層38については、種々の担体、OSC材、触媒金属、助触媒成分を採用することができる。
【0026】
例えば、
図3に示す二層構造の触媒層30において、触媒第1層のリア部36には、触媒金属としてPdを担持し、且つ、アルミナ等の一般的な担体に加えてセリア、CZ複合酸化物等のOSC材、BaやSr(例えば硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム)等の助触媒成分を含有させることができる。
また、触媒第2層38においては、その先端部38aから後端部38bに至るまでの全体を一つのOSC材存在Rh含有触媒層とし、触媒金属としてRhを担持し、且つ、アルミナ等の一般的な担体に加えてセリア、CZ複合酸化物等のOSC材を含有させることができる。或いは、触媒第1層と同様に触媒第2層38についても排ガス流動方向に沿ってフロント部およびリア部に分割し、相互に異なる構成(例えばフロント部をPd及び/又はPt含有触媒層とするとともにリア部をRh含有触媒層とする。)としてもよい。
【0027】
ここで開示される排ガス浄化用触媒は、従来の排ガス浄化用触媒を製造するのと同様の製造方法によって製造することができる。
例えば、
図2に示すようなフロント部24とリア部26とで触媒層20の構成が異なる排ガス浄化用触媒10を製造するには、先ず、Pd等の触媒金属粒子、アルミナ、ジルコニア等の担体粒子(或いは、Pd等の触媒金属粒子を予め表面に担持した担体でもよい。)、硫酸バリウム等の助触媒成分を含むフロント部形成用スラリーを公知のウォッシュコート法等によってハニカム基材1のフロント部24に相当する部分に先端部24a側からコートする。
次いで、Rh等の触媒金属粒子、アルミナ、ジルコニア等の担体粒子(或いは、Rh等の触媒金属粒子を予め表面に担持した担体でもよい。)、CZ複合酸化物等のOSC材、硫酸バリウム等の助触媒成分を含むリア部形成用スラリーをウォッシュコート法等によってハニカム基材1のリア部26に相当する部分に後端部26b側からコートする。
その後、所定の温度および時間で焼成することにより、基材1上にフロント部24とリア部26とからなる触媒層20を形成することができる。ウォッシュコートされたスラリーの焼成条件は基材または担体の形状およびサイズによって変動するので、特に限定しないが、典型的には400〜1000℃程度で約1〜5時間程度の焼成を行うことによって、目的の触媒層を形成することができる。
【0028】
図3に示すような積層構造の触媒層を備える排ガス浄化用触媒についてもウォッシュコート法等によって容易に製造することができる。
即ち、先ず、基材1上に触媒第1層のフロント部34とリア部36とを上記のようにして形成し、次いで触媒第2層38を形成するとよい。具体的には、上述したようなフロント部形成用スラリーをウォッシュコート法によって基材1の表面の排ガス流動方向の先端部34a側からコートする。次いで、所望の組成のリア部形成用スラリーをウォッシュコート法によって基材1の表面の排ガス流動方向の後端部36b側からコートする。次いで、所望の組成の触媒第2層形成用スラリーをウォッシュコート法等によって触媒第1層(フロント部34およびリア部36)の表面に積層コートする。そして、所定の温度および時間で乾燥し焼成することによって、基材1上に積層構造タイプの触媒層30を形成することができる。なお、積層構造は二層に限られず三層以上であってもよい。
或いはこのような一度の焼成プロセスに代えて、フロント部形成用スラリーおよびリア部形成用スラリーを基材の表面にコートした後に乾燥および焼成を行って先ず触媒第1層34,36を形成し、次いで、触媒第2層形成用スラリーを触媒第1層34,36の表面にコートして乾燥および焼成を行って触媒第2層38を形成する二段階焼成を行うプロセスでもよい。
【0029】
以下、本発明に関するいくつかの実施例につき説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0030】
<試験例1>
先ず、排ガス流動方向の触媒層の全長に占めるフロント部の割合(コート幅)が排ガス浄化性能(ここではHCおよびNO
xの排出量)に及ぼす影響を調べた。
本試験例では、直径:110mm、全長:95mmである円筒形状のハニカム基材(コージェライト製)を使用した。先ず、フロント部形成用スラリーを次のようにして調製した。
即ち、アルミナ粉末と硫酸バリウム粉末とを質量比95(アルミナ):5(硫酸バリウム)となるように混合し、さらに適当な濃度の硝酸パラジウム水溶液の適量を添加して250℃で8時間乾燥し、さらに500℃で4時間の焼成を行い、Pd担持率が3質量%であるPd担持混合粉末を得た。かかるPd担持混合粉末と純水とを混合し、フロント部形成用スラリーを調製した。
【0031】
一方、リア部形成用スラリーを次のようにして調製した。
即ち、CeO
2−ZrO
2複合酸化物(CZ複合酸化物)粉末とアルミナ粉末とを質量比1:1となるように混合し、さらに適当な濃度の硝酸ロジウム水溶液を加えて混合し、120℃付近で乾燥させ、600℃付近で2時間程度の焼成を行うことによって、Rh担持率が約0.05質量%であるRh担持混合粉末を調製した。かかるRh担持混合粉末と純水とを混合し、リア部形成用スラリーを調製した。
【0032】
これら調製したフロント部形成用スラリーとリア部形成用スラリーとを用いて上記ハニカム基材上に触媒層を形成した。具体的には、基材の全長のうち上流側の20%、30%、50%または70%に相当する部分にフロント部形成用スラリーを用いてウォッシュコートを施し、乾燥することにより、基材表面に触媒単位容積あたりの含有量が100g/Lとなるように、フロント部(即ちOSC材非存在Pd含有触媒層)を形成した。次いで、基材の全長のうち下流側の90%に相当する部分(したがってフロント部と一部分重複する。)にリア部形成用スラリーを用いてウォッシュコートを施し、乾燥することにより、基材表面に触媒単位容積あたりの含有量が100g/Lとなるように、リア部(即ちOSC材存在Rh含有触媒層)を形成した。
その後、500℃、1時間の焼成を行うことにより、基材上に上記フロント部とリア部とが、フロント部20%/リア部90%、フロント部30%/リア部90%、フロント部50%/リア部90%、および、フロント部70%/リア部90%、の配分でそれぞれ形成された計4種の排ガス浄化用触媒を製造した。
【0033】
上記得られた4種の排ガス浄化用触媒を900℃のエンジン排ガスで50時間の耐久処理を行った後、排気量2.2Lのガソリンエンジンを備えた自動車の排気管に装着した。そして、FTP75に規定された米国におけるテストモードである「LA#4モード」で走行し、排ガス浄化性能評価試験を行った。結果を
図4のグラフに示す。このグラフの横軸は、上記製造した4種の排ガス浄化用触媒の基材全長に対するフロント部の形成割合(%)を示しており、縦軸は、当該評価試験において測定された1マイル走行あたりの炭化水素HC(具体的には非メタン炭化水素=NMHC)とNOxの合計排出量(mg/mile)を示している。
このグラフに示すように、OSC材非存在Pd含有触媒層であるフロント部の割合が40%以下(具体例としては20%および30%)であることが、この割合が50%以上である場合と比較してNMHCおよびNOxの合計排出量を低下させる効果が大きいことがわかる。
【0034】
<試験例2>
次に、排ガス流動方向の触媒層のフロント部にOSC材が含まれることが排ガス浄化性能(ここではHCの排出量)に及ぼす影響を調べた。
本試験例においても、上述した試験例1と同様、直径:110mm、全長:95mmである円筒形状のハニカム基材(コージェライト製)を使用した。
フロント部形成用スラリーとして、上記試験例1で調製した構成のスラリーの他、配合するアルミナ粉末の一部を上記試験例1のリア部形成用スラリーの調製に使用したCZ複合酸化物粉末に代えることにより、計4種の本試験例に係るフロント部形成用スラリー1〜4を上記試験例1での調製方法に準じて調製した。具体的には、各スラリーに含まれるPd担持混合粉末(Pd担持率:3質量%)の構成(質量比)は、以下のとおりである。
スラリー1=95(アルミナ):0(CZ複合酸化物):5(硫酸バリウム)
スラリー2=90(アルミナ):5(CZ複合酸化物):5(硫酸バリウム)
スラリー3=85(アルミナ):10(CZ複合酸化物):5(硫酸バリウム)
スラリー4=65(アルミナ):30(CZ複合酸化物):5(硫酸バリウム)
【0035】
これら調製したフロント部形成用スラリー1〜4と、試験例1で調製したリア部形成用スラリーとを用いて上記ハニカム基材上に触媒層を形成した。具体的には、基材の全長のうち上流側の30%に相当する部分にフロント部形成用スラリー1〜4のいずれかを用いてウォッシュコートを施し、乾燥することにより、基材表面に触媒単位容積あたりの含有量が100g/Lとなるように、フロント部を形成した。次いで、基材の全長のうち下流側の90%に相当する部分(一部フロント部と重複する。)に試験例1で調製したリア部形成用スラリーを用いてウォッシュコートを施し、乾燥することにより、基材表面に基材表面に触媒単位容積あたりの含有量が100g/Lとなるように、リア部(即ちOSC材存在Rh含有触媒層)を形成した。
その後、500℃、1時間の焼成を行うことにより、基材上に上記フロント部とリア部とがフロント部30%/リア部90%であり、フロント部の構成(CZ複合酸化物量)が相互に異なる計4種の排ガス浄化用触媒を製造した。
【0036】
上記得られた4種の排ガス浄化用触媒を900℃のエンジン排ガスで50時間の耐久処理を行った後、排気量2.2Lのガソリンエンジンを備えた自動車の排気管に装着した。そして、「LA#4モード」で走行し、Bag1フェーズにおける非メタン炭化水素(NMHC)の排出量(mg/mile)を測定した。結果を
図5のグラフに示す。
グラフの横軸は上記製造した4種の排ガス浄化用触媒のフロント部におけるOSC材の形成割合(%)を示しており、縦軸はNMHC排出量を示している。
なお、「LA#4モード」において、「Bag1」はコールドスタートフェイズを示し、「Bag2」はトランジェントフェイズを示し、「Bag3」はホットスタートフェイズを示している。
このグラフに示すように、フロント部(Pd含有触媒層)においては、OSC材(CZ複合酸化物)の含有量が少ないほど、NMHCの排出量が低下することがわかる。
【0037】
<試験例3>
次に、
図3に示す積層構造(二層構造)の排ガス浄化用触媒を製造し、その排ガス浄化性能を調べた。
本試験例では、基材として試験例1,2と同様の直径:110mm、全長:95mmである円筒形状のハニカム基材(コージェライト製)を使用した。先ず、触媒第1層のフロント部形成用スラリーを次のようにして調製した。
即ち、アルミナ粉末と硫酸バリウム粉末とを質量比80(アルミナ):20(硫酸バリウム)となるように混合し、さらに適当な濃度の硝酸パラジウム水溶液の適量を添加して250℃で8時間乾燥し、さらに500℃で4時間の焼成を行い、Pd担持率が3質量%であるPd担持混合粉末を得た。かかるPd担持混合粉末と純水とを混合し、OSC材を含まない触媒第1層フロント部形成用スラリーを調製した。
一方、アルミナ粉末と硫酸バリウム粉末とCZ複合酸化物粉末とを質量比40(アルミナ):20(硫酸バリウム):100(CZ複合酸化物)となるように混合し、さらに適当な濃度の硝酸パラジウム水溶液の適量を添加して250℃で8時間乾燥し、さらに500℃で4時間の焼成を行い、Pd担持率が1質量%であるOSC材を含むPd担持混合粉末を得た。かかるPd担持混合粉末と純水とを混合し、OSC材を含む触媒第1層リア部形成用スラリーを調製した。
【0038】
これら調製した触媒第1層フロント部形成用スラリーと触媒第1層リア部形成用スラリーとを用いて上記ハニカム基材上に先ず触媒第1層を形成した。
具体的には、基材の全長のうち上流側の3分の1(約34%)に相当する部分に触媒第1層フロント部形成用スラリーを用いてウォッシュコートを施し、乾燥することにより、基材表面に触媒単位容積あたりの含有量が100g/Lとなるように、触媒第1層フロント部(即ちOSC材非存在Pd含有触媒層)を形成した。次いで、基材の全長のうち下流側の3分の2(約67%)に相当する部分に触媒第1層リア部形成用スラリーを用いてウォッシュコートを施し、150℃で1時間ほど乾燥することにより、基材表面に触媒単位容積あたりの含有量が100g/Lとなるように、触媒第1層リア部(即ちOSC材存在Pd含有触媒層)を形成した。
次いで、触媒第2層形成用スラリーとして上記試験例1で調製したリア部形成用スラリーを使用して基材に対してウォッシュコートを施し、150℃で1時間ほど乾燥することにより、触媒第1層(フロント部およびリア部)の表面に触媒単位容積あたりの含有量が100g/Lとなるように、触媒第2層(即ちOSC材存在Rh含有触媒層)を積層形成した。
その後、500℃、1時間の焼成を行うことにより、基材上に上記フロント部およびリア部からなる触媒第1層と触媒第2層とからなる上下二層構造の触媒層が形成されたサンプル1の排ガス浄化用触媒を製造した。
【0039】
比較対象として、アルミナ粉末と硫酸バリウム粉末と、さらにOSC材としてセリア粉末を質量比80(アルミナ):20(硫酸バリウム):10(セリア)となるように混合した以外は、上記と同様にして触媒第1層OSC材入りフロント部形成用スラリーを調製した。そして、当該スラリーを上記触媒第1層フロント部形成用スラリーに代えて使用して触媒第1層フロント部(即ちOSC材(セリア)存在Pd含有触媒層)を形成した以外は、サンプル1の触媒と同様の材料、製造プロセスにより、基材上にフロント部(OSC材(セリア)存在Pd含有触媒層)およびリア部(OSC材(CZ複合酸化物)存在Pd含有触媒層)からなる触媒第1層と触媒第2層(OSC材存在Rh含有触媒層)とからなる上下二層構造の触媒層が形成されたサンプル2の排ガス浄化用触媒を製造した。
【0040】
上記得られたサンプル1およびサンプル2の排ガス浄化用触媒を900℃のエンジン排ガスで50時間の耐久処理を行った後、それぞれ、排気量2.2Lのガソリンエンジンを備えた自動車の排気管に装着した。そして、「LA#4モード」で走行し、Bag1フェーズ、Bag2フェーズおよびBag3フェーズにおける非メタン炭化水素(NMHC)およびNO
xの排出量(mg/mile)をそれぞれ測定した。結果を以下の表1に示す。
【0042】
表1に示すように、試験例2で用いた排ガス浄化用触媒と同様、本試験例3のような二層構造の触媒層を備える排ガス浄化用触媒についても、フロント部(Pd含有触媒第1層)においては、OSC材(CZ複合酸化物)を含有しないことにより、Pdの触媒活性が向上し、Bag1(コールドスタート)フェーズにおいて、NMHCの排出量が低下することがわかる。また、同時に、RhによるNO
xの浄化処理効率も向上することが認められた。
【0043】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。