【実施例】
【0104】
以下で、開示の実施例を行うための本明細書に記載するモデルの具体的実施態様の例を開示する。行動モデルを識別するためにこれらのモデルの変形を実装してもよい。
【0105】
遷移行列の事前分布
粘着性HDP事前分布を、濃度パラメータα、γ>0および粘着性パラメータκ>0を有する遷移行列πに配置した。
式中、δ
ijは、i=jの場合は1であり、それ以外の場合は0であり、π
iは、πの第i行を表す。ガンマ事前分布は、αとγとに配置され、α〜Gamma(1,1/100)とγ〜Gamma(1,1/100)とを設定する。
【0106】
離散状態系列の生成
遷移行列が与えられると、離散状態系列xの事前分布は、
であった。式中、x
1は、πの下で定常分布によって生成される。
【0107】
自己回帰パラメータの事前分布
各状態i=1,2,...の自己回帰パラメータ
を、行列正規逆Wishart(Matrix Normal Inverse-Wishart)事前分布からサンプリングした。
または同等に、
式中、
は、クロネッカー積を表し、(A,b)はAにbを列として付加することによって形成された行列を表す。加えて、K
0のブロックARD事前分布を使用して、情報価値がないラグをゼロに縮小するよう促す。
【0108】
3Dポーズ系列主成分の生成
自己回帰パラメータと離散状態系列が与えられると、データ系列yは、アフィン自己回帰に従って生成された。
式中、
はK個のラグのベクトルを表す。
【0109】
代替のモデルは、AR-HMMの特殊例であり、制約を加えることによって構築した。特に、ガウス出力HMM(G-HMM)は、各状態インデックスiについてA
(i)=0に制約することに対応する。同様に、自己回帰混合(AR-MM)およびガウス混合(GMM)は、AR-HMMおよびG-HMMでそれぞれ、遷移行列を行全体にわたって一定になるように、すなわち、各iおよびi'についてπ
ij=π
i'j=π
jになるように制約することに対応する。
【0110】
実施例に対する推論アルゴリズムの具体的な実施態様
上述したように、ギブスサンプリング推論アルゴリズムは、固定された遷移行列および自己回帰パラメータが与えられるとデータのモジュールへのセグメント化を更新する段階と、固定されたセグメント化が与えられると遷移行列および自己回帰パラメータを更新する段階の2つの主要な段階を交互に行った。数学的には、セグメント化を更新することにより、データy、自己回帰パラメータθ、および遷移行列πの各値を条件とするラベル系列xがサンプリングされた。すなわち、条件付き確率変数x|θ,π,yをサンプリングした。同様に、セグメント化が与えられた場合に遷移行列および自己回帰パラメータを更新することにより、それぞれ、π|xおよびθ|x,yがサンプリングされた。
【0111】
AR-HMMにおける推論のために、無限モデルを有限モデルで近似する、ディリクレ過程への弱極限近似を使用した。すなわち、ある有限近似パラメータLを選択して、βおよびπを、サイズLの有限ディリクレ分布を使用してモデル化した。
式中、π
kは遷移行列の第i行を表す。遷移行列のこの有限表現により、状態系列xをブロックとして再サンプリングすることが可能になり、大きなLでは、無限ディリクレ過程の任意に良好な近似を提供する。
【0112】
弱極限近似を使用して、AR-HMMのギブスサンプラは、条件付き確率変数
の再サンプリングを反復した。
【0113】
簡潔にするために、この項全体にわたって、ハイパーパラメータの調整のための表記法および複数の観測系列に対する上付き文字表記を行わない。
【0114】
x|π,θ,yのサンプリング
動的パラメータπおよびθとデータyを与えられて状態ラベルxをサンプリングすることは、3Dビデオシーケンスをセグメント化し、各セグメントをその統計量を記述する行動モードに割り当てることに対応する。
【0115】
観測パラメータθおよび遷移パラメータπが与えられると、隠れた状態系列xは、連鎖グラフに対してマルコフとなる。標準HMM逆方向メッセージパッシング再帰は、t=1,2,...,T-1およびk=1,2,...,Kについて、
である。式中、B
T(k)=1であり、y
t+1:T=(y
t+1,y
t+2,...,y
T)である。これらのメッセージを使用すると、第1の状態x
1の条件付き分布は、すべての将来の状態x
2:Tを無視すると、
であり、これは効率的にサンプリングすることができる。サンプリングされた値
が与えられると、第2の状態x
2の条件付き分布は、
である。
【0116】
したがって、HMMメッセージを逆方向に受け渡した後、状態系列を順方向に再帰的にサンプリングすることができる。
【0117】
θ|x,yのサンプリング
状態系列xおよびデータ系列yを与えられて自己回帰パラメータθをサンプリングすることは、各モードに割り当てられた3Dビデオデータセグメントを記述するように各モードの動的パラメータを更新することに対応する。
【0118】
状態系列xおよび観測値yの固定サンプルを条件として観測パラメータθを再サンプリングするために、自己回帰尤度とMNIW事前分布との間の共役性を利用することができる。すなわち、条件付きもMNIW分布に従う。
式中、(S
n,v
n,M
n,K
n)は、状態kに割り当てられたyの要素ならびにラグのある先行する観測値の関数である事後ハイパーパラメータである。
式中、
【0119】
したがって、θ|x,yを再サンプリングすることは次の3つの工程を含む:各状態に割り当てられたデータから統計量を収集する工程と、各状態の事後ハイパーパラメータを形成する工程と、各状態の観測パラメータを、適切なMNIWからの引出しをシミュレートすることによって更新する工程。(Α,Σ)〜MNIW(S
n,v
n,M
n,K
n)をシミュレートすることは、
のように進む。
【0120】
β,π|xのサンプリング
状態系列xを与えられて遷移パラメータπおよびβをサンプリングすることは、状態系列内で観測された遷移パターンを反映するように行動モジュール間の遷移の確率を更新することに対応する。βを更新することにより、冗長な行動モードがモデルから取り除かれるよう促され、各π
ijを更新することにより、状態iから状態jへの観測された遷移が適合される。
【0121】
弱極限近似から(粘着性)HDPへの引出しである遷移パラメータβおよびπの再サンプリングを、補助変数サンプリング方式を使用して行った。すなわち、最初に補助変数m|β,xをサンプリングすることによって、β,\pi|xを生成した。次いで、β,\pi|x,mを、最初に限界のβ|mから、次いで条件付きのπ|β,xからサンプリングすることによって生成した。
【0122】
サンプリングされた状態系列xにおける遷移カウントの行列は、
である。
【0123】
簡潔にするために条件表記を省略すると、補助変数m={m
kj:k,j=1,2,...,K}は、
によってサンプリングされる。式中、Bernoulli(p)は、確率pで値1を取り、そうでない場合に値0を取るベルヌーイ確率変数を表す。粘着性バイアスなしのHDP-HMMの更新は、これらの更新においてκ=0に設定することに対応することに留意されたい。
【0124】
補助変数が与えられると、βに対する更新はディリクレ多項共役のものであり、その場合、
である。式中、j=1,2,...,Kについて、
である。π|β,xの更新も同様であり、
である。
【0125】
実施例へのモデルの適用
検定力を高めるために、オープンフィールド実験、匂い実験、および遺伝子操作実験のデータセットを一緒にモデル化した。光遺伝学実験と関連付けられた神経移植は、動物のプロファイルをわずかに変化させたので、これらのデータは別々にモデル化した。すべての実験において、各画像化マウスのフレームごとの最初の10の主成分を集めた。次いで、データを細分化し、3:1の訓練:試験の比率で「訓練」または「試験」のいずれかのラベルを割り当てた。「試験」とラベル付けされたマウスを訓練プロセスからホールドアウトし、それらを使用して測定ホールドアウト尤度によって汎化性能を試験した。この手法により、その構成が行動の異なる基礎構造を反映するアルゴリズムを直接比較することができた。
【0126】
本発明者らは、本明細書に記載する手順を使用してデータでモデルを訓練した。モデル化は、初期設定とパラメータおよびハイパーパラメータの設定(カッパを除く、以下を参照)の両方に対してロバストであった。具体的には、本発明者らのAR観測分布で使用したラグの数と、HDP事前分布を有する本発明者らの遷移行列における使用状態の数とは、どちらの事前分布でも特定のハイパーパラメータ設定に対してロバストであることが分かった。本発明者らは、本発明者らのスパーシファイARD事前分布のハイパーパラメータを数オーダー変化させ、ホールドアウト尤度、使用ラグの数、および使用状態の数はごくわずかに変化した。また本発明者らは、本発明者らのHDP事前分布のハイパーパラメータも数オーダー変化させ、やはり、使用状態の数やホールドアウト尤度には変化が観測されなかった。すべての共同訓練されたデータは観測分布を共有したが、各処置クラスはそれ自体の遷移行列を可能とした。各モデルを、1000回のギブスサンプリングの反復によって更新した。ギブスサンプリングの最後の反復でモデル出力を保存した。この最終更新ですべてのさらなる分析を行った。
【0127】
本発明者らの行動モジュールの持続時間分布の「粘着性」は、モデルのカッパ設定によって定義され、AR-HMMによって発見された行動モジュールの平均持続時間に影響を与えた。これにより、本発明者らは行動をモデル化するための時間スケールを制御することができた。主文で論じたように、自己相関、パワースペクトル密度、および変化点アルゴリズムは、(変化点の持続時間分布によってカプセル化され、スペクトログラムおよびオートコレログラムによって反映される)スイッチングダイナミクスを特定のサブ秒時間スケールで識別した。したがって本発明者らは、持続時間分布のカッパ粘着性パラメータを、変化点検出によって発見される持続時間分布に最適にマッチするように経験的に設定した。これらの分布が最適にマッチするカッパ設定を見つけるために、本発明者らは、高密度グリッドサーチによって、変化点間間隔分布と事後行動モジュール持続時間分布との間のコルモゴロフ-スミルノフ距離を最小化した。
【0128】
マウスの系統、飼育および馴化
特に明記しない限り、すべての実験は6〜8週齢のC57/BL6雄(Jackson Laboratories)で行った。rorβおよびrbp4系統由来のマウスを、参照C57/BL6マウスと全く同様に馴化させ試験した。マウスを4週齢で本発明者らのコロニーに移し、そこで2週間にわたって12時間明/12時間暗の反転サイクルでグループ飼育した。試験当日、マウスを遮光容器に入れて実験室に運び入れ、そこで試験前に30分間暗闇に馴化させた。
【0129】
実施例1.行動アッセイ:生得的探索
これらの可能性に対処するために、本発明者らはまず、AR-HMMを使用して、オープンフィールドにおけるマウスの探索行動のベースラインアーキテクチャを定義し、次いで、この行動テンプレートが外界の異なる操作によってどのように変更されたかを問うた。
【0130】
オープンフィールドアッセイ(OFA)では、マウスを上記のように馴化させ、次いで、高さ15インチの壁を有する直径18インチの円形の囲い(US Plastics)の中央に入れ、その直後に3Dビデオ記録を開始した。動物は30分間の実験期間にわたって囲いを自由に探索することができた。四角形の箱内で行動を評価したマウスは、後述する匂い箱内のものを除いて、OFAと全く同様に扱い測定した。
【0131】
AR-HMMは、実験室での正常なマウスの探索行動を表す円形オープンフィールドのデータセット(
図6A、n=25匹の動物、20分の試験)から、確実に使用できる約60の行動モジュールを識別した(51のモジュールは画像化フレームの95%を説明し、65のモジュールは画像化フレームの99%を説明した、
図5Aおよび
図5B)。
図5Aに、使用頻度でソートされたモジュールセット(X軸)に対してプロットした、各モジュールによって説明されたフレームの割合(Y軸)を示す。フレームの95%は51の行動モジュールによって説明され、フレームの99%はオープンフィールドのデータセットにおける62の行動モジュールによって説明された。
【0132】
図5Bに、指示されたベイズ確信区間を用いて使用頻度(Y軸)でソートされたモジュール(X軸)を示す。すべての確信区間は、ブートストラップ推定値に基づいて計算されたSEよりも小さいことに留意されたい(
図5B)。上記のように、これらのモジュールの多くは、人間が記述できる行動の構成要素(例えば、立ち上がり、歩行、休止、旋回)を符号化している。
【0133】
AR-HMMは、任意の所与のモジュールが任意の他のモジュールに先行するまたは後に続く確率も測定する。言い換えると、モデルの訓練後、各モジュールに、セット内の他のすべてのモジュールとの対遷移確率を割り当てる。これらの確率は、行動中にマウスによって発現されたモジュールの順序を要約している。これらの遷移確率をマトリックスとしてプロットすると、それらは非常に不均一であり、各モジュールはあるモジュールには時間的に優先して接続し、他のモジュールにはそうではないことが明らかになった(
図6B、閾値設定なしで平均ノード次数16.82±0.95、バイグラム確率を5%未満に閾値設定した後は、4.08±0.10)。モジュール対間のこの特定の接続性により、データセット内で観測されたモジュール系列が制限され(8900/約125,000の可能なトライグラム)、ある特定のモジュール系列を好むことを示した。この観測は、マウスが任意の所与の瞬間に何をしているか知ることにより、観測者にはマウスが次に何をする可能性が高いかが分かるため、マウスの行動が予測可能であることを示唆している。遷移行列の情報理論分析により、マウスの行動は大いに予測可能であり、1フレーム当たりの平均のエントロピーレートは一様な遷移行列と比べて低く(自己遷移なし3.78±0.03ビット、自己遷移あり0.72±0.01ビット、一様な行列のエントロピーレート6.022ビット)、相互接続されたモジュール間の平均相互情報量はゼロを大きく上回る(自己遷移なし1.92±0.02ビット、自己遷移あり4.84ビット±0.03ビット)ことが確認された。この行動に対する決定論的な質は、マウスがコヒーレントな動きパターンを発することを確実にするように働く可能性が高い。この可能性と合致するように、検査時に、頻繁に観測されるモジュール系列は、探索行動の種々の局面を符号化していることが判明した。
【0134】
円形オープンフィールドにおいてマウスによって発現された行動は、歩行運動探索のコンテキスト特有のパターンを反映している。本発明者らは、マウスが、環境の特定の物理的特徴と相互作用する新しいポーズダイナミクスを生成するように行動の構造を限局的に変更することによって、装置形状の変化に適応するであろうと仮定した。この仮説を検証するために、本発明者らは、より小さい四角形の箱内でマウスを画像化し、次いで、円形オープンフィールドデータと四角形のデータの両方で本発明のモデルを同時に訓練し、それによって、両条件下でのモジュールおよび遷移の直接比較を可能にした(各条件ともn=25匹のマウス)。マウスは四角形の箱の隅および円形オープンフィールドの壁を探索する傾向があったが、ほとんどのモジュールの全体的な使用頻度は、探索行動がアリーナ間で多くの共通の特徴を共有することと合致して、これらの装置間で類似していた(
図6C)。またAR-HMMは、異なる物理環境は新しい行動モジュールの発現を駆動するという考えと合致して、あるコンテキストでは広範に展開されるが、その他のコンテキストではごくわずかしかまたは全く展開されない少数の行動モジュールも識別した(
図6C、後述するすべての使用頻度の差異について、ブートストラップ推定に基づきp<10
-3)。
【0135】
興味深いことに、これらの「新しい」モジュールは、新しいポーズダイナミクスを引き出すと予測される、装置の特定の特徴との物理的相互作用中に展開されるだけでなく、無制約の探索期間中も展開される。例えば、1つの円形アリーナ特有のモジュールは、壁の曲率に一致する身体姿勢でマウスがアリーナ壁の近くを動き回る接触走性行動を符号化した。このモジュールは、マウスが円形アリーナの中心に近く、壁と物理的に接触していないときにも発現され、このモジュールの発現は単なる壁との物理的相互作用の直接的な結果ではなく、むしろ湾曲したアリーナにおけるマウスの行動状態を反映していることを示した。接触走性は四角形の箱でも発生したが、関連付けられた行動モジュールは、まっすぐな身体での歩行運動を符号化しており、四角形の装置と円形装置の両方でまっすぐな軌跡の間に使用された(
図6D〜6E、中央パネル)。同様に、四角形の箱内で、マウスは、四角形の中心から隣接する隅のうちの1つへの突進を符号化するコンテキスト特有のモジュールを発現した。この動きパターンはおそらくは、四角形が小さい中央オープンフィールドを有していることの結果であり、マウスに課された物理的制約の特有の産物ではなかった。
【0136】
いくつかのさらなるモジュールは、あるコンテキストまたは他のコンテキストで優先的に発現されることが判明した。これらの上方制御されたモジュールは、アリーナの形状によって特定された他者中心的パターンで展開された行動を符号化しているように見えた。円形アリーナでは、例えば、マウスは、オープンフィールドの中心付近で休止しながらマウスの身体が外側を向く立ち上がりを優先的に発現し、より小さな四角形の箱では、マウスは、箱の隅で高い立ち上がりを優先的に実行した(
図6E、データは示さず)。これらの結果は、マウスが何をするか(すなわち、その自己中心的行動)は、マウスが空間内のどこにいるか(すなわち、その他者中心的位置)に基づいて調節されることを示唆している。まとめると、これらのデータは、マウスが、少なくとも部分的に、(コンテキストに適したポーズダイナミクスを符号化している)コンテキスト特有の行動モジュールの限定されたセットを採用してベースライン動作パターンにすることによって、新しい物理環境に適応することを示している。これらの新しいモジュールは、その発現があるコンテキストまたはその他のコンテキストで豊富である他のモジュールと共に、環境の変化に対応するために空間において差次的に展開される。
【0137】
実施例2.行動アッセイ:刺激駆動型の生得的行動-匂い物質に対する反応
マウスは同じ基礎的な行動状態、すなわち歩行運動探索を、円形と四角形の両方で発現するため、この場合の行動モジュールへの観測される変化は限局的であり、程度が限定されると予測されうる。したがって、本発明者らは、マウスが、他は一定の物理環境内で、新しい動機付けされた動作の発現を含む行動状態の全体的変化を駆動する感覚手がかりに曝露されたときに、行動の基礎構造がどのように変化するかを問うた。
【0138】
揮発性匂い物質に対する生得的行動反応を評価するために、本発明者らは、四角形の箱の特定の象限内に匂いを空間的に分離する匂い送達システムを開発した。3/4インチの穴が箱の底に十字形に形成されており、1/16インチの厚さのガラスカバー(Tru Vue)を有する、各12インチ×12インチの箱を、1/4インチの黒い艶消しアクリル(Altech Plastics)で構築した。これらの穴をPTFEチューブで象限内の匂いを分離する陰圧を提供する真空マニホールド(Sigma Aldrich)に接続した。匂いは、1/2インチのNPT〜3/8インチの管継手(Cole-Parmer)を経由して箱に注入した。バキュテナー・シリンジ・バイアル(Covidien)の底に配置した匂い物質を吸わせた吸取紙(VWR)上にろ過した空気(1.0L/分)を吹き付けた。次いで、匂いをつけた空気流を、波形PTFEチューブ(Zeus)を通して匂い箱の隅の4つの管継手のうちの1つに送った。
【0139】
本発明者らは、低出力手持ち式HeNeレーザを用いた箱のシート照明により気化した匂いまたは煙を視覚化することによって、匂い箱が特定の象限内に匂いを分離する能力を確認した。この手法により、真空流と匂い流の速度を調整して匂い分離を達成することができ、これを光イオン化装置(Aurora Scientific)を使用して確認した。実験間の交差汚染の可能性を排除するために、匂い箱を1%Alconox溶液に一晩浸し、次いで70%エタノール溶液で完全に洗浄した。マウスを実験開始前に実験室に30分間馴化させた。対照条件下では、空気を含むジプロピレングリコール(1.0L/分)を装置の四隅の各々に送ってから、1匹のマウスを箱の中央に置き、3Dビデオ記録を20分間にわたって取得する間自由に探索させた。4つの象限のうちの1つに送られた匂い付き空気を用いた実験を続いて繰り返すことにより、同じコホートの動物の匂い応答を試験した。すべての3Dビデオ記録を完全な暗闇で行う。TMTはPherotechから取得し、5%濃度で使用した。
【0140】
したがって、四角形の箱を探索しているマウスを、嗅覚計を経由して箱の1象限に送られた嫌悪性のキツネ臭のトリメチルチアゾリン(TMT)に曝露した。この匂い物質により、匂い調査行動、ならびにコルチコステロイドおよび内因性オピオイドレベルの増加を伴う逃避行動およびすくみ行動を含む、複雑かつ重大な行動状態変化が開始する。これらの公知の作用と合致するように、マウスは匂いを含有する象限を嗅ぎ、次いで、捕食者手がかりを含む象限を避け、従来からすくみ行動として説明されてきた長期間の不動状態を示した(
図7)。
図7に、データセット内の他のすべてのモジュールと比較した、TMT曝露「すくみ」の後に差次的に上方制御され相互接続されたモジュールの平均速度を表したヒストグラムを示す。
【0141】
驚くべきことに、この一組の新しい行動は、通常の探索中に発現された行動モジュールの同じセットによって符号化された。いくつかのモジュールはTMT曝露後に上方制御または下方制御されたが、対照と比べて新しいモジュールの導入も除去もなかった(対照条件ではn=25匹の動物、TMTではn=15匹、モデルを両方のデータセットで同時に訓練した)。その代わりに、TMTは、特定のモジュールの使用頻度およびそれらの間の遷移確率を変更し、TMT制御行動を符号化する新しい好みの行動系列をもたらした(後述するすべての使用頻度および遷移の差異について、ブートストラップ推定に基づきp<10
-3)。
【0142】
TMTへの曝露後に変更されたモジュール遷移をプロットすることにより、行動状態マップ内の2つの近傍が定義された。第1の近傍は、TMTによって中程度に下方制御された広範なモジュールおよび相互接続のセットを含むものであり、第2の近傍は、TMTによって上方制御された集中したモジュールおよび遷移のセットを含むものであった)。通常の行動中は、これらの新たに相互接続されたモジュールは一時的に分散されおり、休止または固まる(balling up)という異なる形態学的形態を符号化しているように個々に見える。対照的に、TMTの影響下では、これらのモジュールは連結されて、検査および定量化するとすくみ行動を符号化していることが判明した新しい系列になった(系列中平均速度は、0.14±0.54mm/秒、他のモジュールでは34.7±53mm/秒)。例えば、最も一般的に発現するすくみトライグラムは、(480分間の画像化において)対照条件下ではわずか17回であったのに対し、(300分間の画像化において)TMT曝露後に716回発現した。すくみを生じるようにこれらの休止モジュールに課されたTMT誘導性の近傍構造は、遷移確率の限局的変化によって行動を変更できることを示している。この遷移確率の局所的書き換えは、マウスの行動の全体的決定論の増加を伴い、TMT曝露の結果としてその全体的な動作パターンはより予測可能になり(1フレーム当たりのエントロピーレートは、自己遷移なしでは3.92±0.02ビットから3.66±0.08ビットに、自己遷移ありでは0.82±0.01ビットから0.64±0.02ビットに低下した)、これはマウスが決定論的回避戦略を実行することと合致する。
【0143】
匂い源への近接性もまた、特定の行動モジュールの発現パターンを決定した(
図8D〜
図8E)。例えば、すくみ関連モジュールのセットは、匂い源から最も遠位にある象限において発現される傾向があり、(その全体的な使用頻度がTMTによって変更されなかった)調査立ち上がりモジュールの発現は、匂い象限内で特に豊富であった(
図8D〜
図8E)。まとめると、これらの知見は、マウスの神経系が新しい適応行動を生成するための2つのさらなる機構を示唆している。第1に、通常は、歩行運動探索などの異なる行動状態と関連付けられる個々のモジュール間の遷移構造を、すくみなどの新しい行動を生成するように変更することができる。第2に、既存のモジュールおよび系列の展開の空間パターンを、匂いの調査や回避などの動機付けされた行動をサポートするように制御することができる。したがって、行動モジュールは単純に経時的に再利用されるのではなく、その発現が時間と空間の両方で動的に調整される、行動系列の柔軟に相互リンクされる構成要素として機能する。
【0144】
実施例3.遺伝子および神経回路がモジュールに及ぼす作用
上記のように、行動の細かい時間スケールの構造は、分単位の時間スケールにわたる動作に影響を及ぼす物理的または感覚的環境の変化に対して選択的に脆弱である。さらに、AR-HMMは、マウスによって発現された行動パターンを(本発明者らの画像化の限界内で)包括的にカプセル化するように見える。これらの所見は、AR-HMMは、サブ秒時間スケールのマウスの行動への系統的な窓を提供し、明確な行動表現型を定量化すると共に、ある範囲の空間時間的スケールにわたって行動に影響を及ぼす実験操作後に含まれる新しいまたは微妙な表現型を明らかにすることもできる可能性があることを示唆している。
【0145】
マウスの寿命の時間スケールに作用する個々の遺伝子の変化が、速い行動モジュールおよび遷移にどのように影響しうるかを探索するために、本発明者らは、脳および脊髄ニューロンで発現するレチノイド関連オーファン受容体1β(Ror1β)遺伝子についての突然変異マウスの表現型を特徴付けた。本発明者らがこのマウスを分析のために選択したのは、ホモ接合変異動物が、本発明者らがAR-HMMによって検出されると予期する異常歩行を示す
37-40からである。画像化およびモデル化の後、同腹仔対照マウスは、完全近交系C57/Bl6マウスとほとんど区別がつかないことが判明し、他方、突然変異マウスは動揺歩行を符号化している固有の行動モジュールを発現した(
図9A、
図9C)。この行動の変化はその逆を伴い、すなわち、野生型およびC57マウスでの、異なる速度での正常な前方移動を符号化する5つの行動モジュールの発現が、Ror1β突然変異体において下方制御された(
図9A、モジュール中平均速度=114.6±76.3mm/秒)。加えて、短い休止および頭の揺れを符号化している4つのモジュールのセットの発現も上方制御された(
図9A、モジュール中平均速度=8.8±25.3mm/秒)。この休止表現型はこれまで文献に報告されていなかった。興味深いことに、ヘテロ接合マウスは、報告された表現型はなく
37-40、目では正常に見え、野生型の回し車行動を示し
40、やはり、完全浸透性の突然変異表現型を発現することが判明した。ヘテロ接合マウスは、完全Ror1β突然変異体において上方制御された同じ休止モジュールのセットを過剰発現し、より劇的な動揺歩行表現型を発現しなかった(
図9A)。
【0146】
したがって、AR-HMMは、Ror1βマウスの病理学的行動を、単一の新形態の動揺歩行モジュールと、休止行動を符号化している生理学モジュールの小グループの増加した発現との組合せとして記述する。ヘテロ接合体マウスは、これらの行動異常の定義されたサブセットを発現し、その浸透度は、中間ではなく突然変異体で観測されるものと等しい。これらの結果は、AR-HMMの感受性が、同腹仔の動物の重篤かつ微妙な行動異常の分画を可能にし、新しい表現型の発見を可能にし、遺伝子型間の比較を容易にすることを示唆する。またこれらの実験は、ゲノム中の特定の遺伝子の消えることのない生涯にわたる変化の結果である、行動の遺伝子型依存性の変化が、ミリ秒の時間スケールで作用するモジュール発現および遷移統計量に影響を及ぼしうることも示している。
【0147】
実施例4.行動アッセイ:光遺伝学-神経活動がモジュールに及ぼす作用
最後に、本発明者らは、AR-HMMによって捕捉された行動構造が、行動の一過性のまたは不確実な変化への洞察を与えるかどうかを問おうとした。したがって、本発明者らは、運動回路における神経活動を短く誘発し、異なる強度の刺激が行動の瞬間ごとの構築にどのような影響を及ぼすかを問うた。本発明者らは、光開閉性イオンチャネルChannelrhodopsin-2を皮質線条体系ニューロンにおいて片側だけ発現させ
41,42、運動皮質の光媒介活性化の前、その間およびその2秒後の行動反応を評価した(n=4匹のマウス、モデルは以前の実験とは分離して訓練した)。
【0148】
4匹の成体雄Rbp4-Cre(The Jackson Laboratory)マウスを1.5%イソフルランで麻酔し、定位固定フレーム(Leica)に入れた。顕微注射ピペット(O.D.10〜15μm)を左運動皮質に挿入した(ブレグマからの座標:0.5AP,-1ML,0.60DV)。各マウスにAAV5.EFla.DIO.hChR2(H134R)-eYFP.WPRE.hGH (約10
12感染単位/mL、Penn Vector Core)0.5μlを10分間かけて注入し、その後さらに10分間、注入部位からウイルス粒子を拡散させた。注入後、ジルコニアフェルール(O.D.200μm、開口数0.37)を有する裸光ファイバを注入部位の100μm上に挿入し、アクリルセメント(Lang)で頭蓋骨に固定した。ウイルス注射の28日後、マウスを円形アリーナに入れ、光学インプラントをパッチコードおよび回転ジョイント(Doric Lenses)を介してレーザポンプ(488nm、CrystaLaser)に結合した。レーザはPCから直接制御した。アリーナへの慣化の20分後、光刺激を開始した。レーザ出力、パルス幅、パルス間間隔および訓練間間隔は、カスタムメードのソフトウェア(NI Labview)によって制御した。各レーザパルス訓練は、15Hzで30パルス(パルス幅:50ms)からなっていた。連続訓練間の間隔は18秒に設定した。レーザ強度ごとに50の訓練を送達した。動物は、実験の過程にわたってより高いレーザ強度に漸進的に曝露させた。
【0149】
最低出力レベルでは、光誘発性の行動の変化は観測されなかったが、最高出力レベルでは、AR-HMMは、その発現が確実に光によって誘発された2つの行動モジュールを識別した(
図10A)。これらのモジュールのいずれも正常なマウスの歩行運動中には発現されなかった。検査により、これらのモジュールは、マウスが空間で半円形またはドーナツ形をたどる、2つの形態の回転行動(その長さおよび旋回角度が異なる)を符号化することが明らかになった(
図10B)。強力な片側運動皮質刺激後に新形態行動が誘発されることは驚くべきことではないが、AR-HMMはこれらの行動を新しいものとして認識すると共に、それらを2つの固有の行動モジュールとしてカプセル化したことに注目することは重要である。しかし、本発明者らは、約40%の時間、行動の全体的パターンが光オフセット後数秒間ベースラインに戻らなかったことに気付いた。ベースラインからのこの逸脱は、光オンセット時に誘発されたモジュールの継続的な発現によるものではなかった。その代わりに、マウスはしばしば、光オフセット時に、あたかも不随意運動後の「リセット」のように、休止モジュールを発現した(モジュール中平均速度=0.8±7mm/秒)。
【0150】
高強度の光遺伝学的刺激によって誘発された行動変化は、本質的にすべての試験で、動物は2つの回転モジュールのうちの1つを発したので、信頼できた。本発明者らは次いで、AR-HMMの感度が、特定の行動モジュールの信頼できない放出を引き出す運動皮質刺激の中間領域で発生するような、行動のより微妙な変化の定量分析を可能にするかどうかを問うた。したがって、本発明者らは、2つの新形態行動モジュールのうちの一方がもはや検出されなくなり、他方が試験のわずか25%で発現されるまで光刺激のレベルの量を設定した。驚くべきことに、本発明者らは次いで、行動モジュールの第2セットの上方制御を検出することができ、その各々が時間の約25パーセントで発現された(
図10A)。これらのモジュールは新形態ではなく、むしろ生理学的探索の間に通常発現され、旋回および頭部揺れ行動を符号化していた(データは示さず)。これらの個々の光調節されるモジュールの各々は不確かに放出されたが、集約すると、すべてのモジュールにわたる行動変化は、低レベルの神経活性化は行動に確実に影響を及ぼすが、大きくは、新形態の動作ではなく生理学的動作を誘発することによってであることを示唆した(
図10A)。まとめると、行動モジュールの刺激ロックされた誘発と、モジュール使用頻度の刺激の残存する効果の両方の検出は、神経誘発性の行動の変化が、行動のサブ秒構造に影響を及ぼしうることを示している。さらに、その誘発が強刺激条件下では明らかにならなかった、生理学的に発現される光調節される行動モジュールのセットの識別も、AR-HMMが神経回路と行動の時系列構造との微妙な関係を明らかにできることを示唆している。
【0151】
実施例5:次元削減-確率的グラフィカルモデルおよび変分オートエンコーダ
図3に示すように、画像の向きの補正後、データの次元を削減する方法が使用されうる。例えば、各画像は900次元ベクトルであり、したがって次元を削減することがモデル解析にとってきわめて重要である。いくつかの態様では、モデルフリーアルゴリズム320またはモデルフィッティング315アルゴリズムを含む両方で、各画素で捕捉された情報は多くの場合、高い相関性がある(近傍の画素)か、または情報価値がない(マウスの身体を決して表すことがない画像の境界上の画素)。冗長な次元を削減すると共にモデル化を計算的に扱いやすくするために、様々な技術を使用して各画像を次元削減することができる。
【0152】
いくつかの例では、いくつかの態様における向き補正された画像は、主成分分析時系列310またはデータ点を削減するための他の統計的方法へと出力される。しかし、PCAは次元を削減して線形空間にする。本発明者らは、次元を削減して線形空間にすることは、行動に関連しないマウスにおける様々な変化に適応しない可能性があることを発見した。これには、マウスのサイズ、マウスの種などの変化が含まれる。
【0153】
したがって、本発明者らは、多層パーセプトロンなどの特定の種類のニューラルネットワークを使用すると、画像の次元を効果的に削減できることを発見した。さらに、これらの次元削減された画像は、マウスまたは他の動物のサイズに依存しないモデルを構築する有効な方法を提供し、行動に関連しない他の変化を説明することができる。例えば、次元を10次元画像多様体に削減するいくつかのニューラルネットワークが利用されうる。
【0154】
本発明者らは、ディープラーニング法を用いて確率的グラフィカルモデルを構成し、それぞれの強みを組み合わせて次元を削減する、教師なし学習のための新しいフレームワークを構築した。本発明者らの方法は、グラフィカルモデルを使用して構造化された確率分布を表現し、ディープラーニングからの最新の成果を使用して柔軟な特徴モデルおよびボトムアップ認識ネットワークを学習する。これらのモデルのすべての構成要素は、単一の目的を使用して同時に学習され、したがって本発明者らは、自然勾配確率的変分推論、グラフィカルモデルメッセージパッシング、および再パラメータ化トリックを用いたバックプロパゲーションを利用できるスケーラブルなフィッティングアルゴリズムを構築した。
【0155】
教師なしの確率的モデル化は、多くの場合2つの目標を有する:第1に、画像または音声録音などの複雑な高次元データを表現するのに十分なほど柔軟なモデルを学習することであり、第2に、解釈可能であり、有意味の事前分布を許容し、新しいタスクに汎化するモデル構造を学習することである。すなわち、多くの場合、データの確率密度を学習するだけでは不十分であり、有意味の表現を学習することも求められる。確率的グラフィカルモデル(Koller&Friedman, 2009; Murphy, 2012)は、そのような構造化表現を構築する多くのツールを提供するが、その能力が限られる可能性があり、データに適用される前にかなりの特徴エンジニアリングを必要としうる。代わりに、ディープラーニングの進歩により、画像のような複雑なデータのための柔軟でスケーラブルな生成モデルのみならず、自動特徴学習およびボトムアップ推論のための新しい技術ももたらされている(Kingma&Welling, 2014; Rezende et al., 2014)。
【0156】
図23に示す、追跡された自由行動マウスの深度ビデオのための教師なし生成モデルを学習する問題を考える。そのようなデータの解釈可能な表現を学習し、それらの表現が、動物の遺伝的特質が編集されるかまたは動物の脳内の化学成分が変更されるとどのように変化するかを研究することにより、神経科学や高スループット創薬のための強力な行動表現型決定ツールを作成することができる(Wiltschko et al., 2015)。ビデオの各フレームは特定のポーズでのマウスの深度画像であり、そのため、各画像が30×30=900画素として符号化されていたとしても、データは低次元の非線形多様体の近くに存在する。優れた生成モデルは、この多様体を学習するのみならず、データの多くの他の顕著な面も表現しなければならない。
【0157】
例えば、あるフレームから次のフレームまで、対応する多様体点は互いに接近していなければならず、実際、多様体に沿った軌道は非常に構造化されたダイナミクスに従いうる。これらのダイナミクスの構造を知らせるために、動物行動学および神経生物学で使用される仮説の自然なクラス(Wiltschko et al., 2015)は、マウスの行動が突進、立ち上がり、グルーミングバウトなどの短い再利用される動作で構成されるということである。したがって、自然な表現は、各状態が特定の基本動作、教師なしリカレントニューラルネットワークモデルにおいて符号化するのが困難となる表現の単純なダイナミクスを捕捉する離散状態を含むことになる。
【0158】
画像多様体を学習し、構造化ダイナミクスモデルを学習するというこれら2つのタスクは補完的である。すなわち、本発明者らは、画像多様体を、セットとしてのみならず、構造化ダイナミクスモデルがデータによく適合する多様体座標に関して学習することも求める。同様のモデル化の課題が発話においても生じ(Hinton et al., 2012)、発話では、高次元データは、比較的自由度の低い物理システムによって生成される(Deng, 1999)が、音素、単語、および文法の離散潜在力学的構造も含む(Deng, 2004)ため、低次元多様体の近くに存在する。
【0159】
これらの課題に対処するために、本発明者らは、構造化された確率分布を表すためのグラフィカルモデルを構築し、非線形特徴多様体だけでなくボトムアップ認識ネットワークも学習して推論を向上させるために変分オートエンコーダからの概念を使用した(Kingma&Welling, 2014)。よって、本方法は、ノンパラメトリックモデルを含む構造化されたベイズ事前分布と柔軟なディープラーニング特徴モデルとの組み合わせを可能にする。
【0160】
この手法は、モデルのすべての構成要素が同時に学習される単一の変分推論目的をもたらす。さらに、本発明者らは、確率的変分推論(Hoffman et ah, 2013)、グラフィカルモデルメッセージパッシング(Roller&Friedman, 2009)、および再パラメータ化トリックを用いたバックプロパゲーション(Kingma&Welling, 2014)を含む、効率的な推論におけるいくつかの進歩を組み合わせたスケーラブルなフィッティングアルゴリズムを構築する。よって、本発明者らのアルゴリズムは、いくつかの変分パラメータに対する自然勾配を効率的に計算し、効果的な二次最適化(Martens, 2015)を可能にすると同時に、バックプロパゲーションを使用してすべての他のパラメータに対する勾配を計算する共役指数分布族構造を利用することができる。一般的な手法は、構造化変分オートエンコーダ(structured variational autoencoder(SVAE))と呼ばれうる。本明細書ではSVAEを、スイッチング線形力学系(SLDS)(Murphy, 2012; Fox et al., 2011)に基づくグラフィカルモデルを使用して例示する。
【0161】
自然勾配確率的変分推論
確率的変分推論(SVI)(Hoffman et al., 2013)は、指数分布族共役性を利用して自然勾配を効率的に計算する(Amari, 1998; Martens, 2015)やり方で、確率的勾配上昇を平均場変分推論目的に適用する。大域潜在変数、局所潜在変数で構成されたモデルを考える。ここで、θ、局所潜在変数
であり、式中、ρ(θ)は指数分布族p(x
n,y
n|θ)に対する自然な指数分布族共役事前分布である。
平均場族q(θ)q(x)=q(θ)Π
nq(x
n)を考える。共役構造のために、最適な大域平均場因子q(θ)は、事前分布ρ(θ)と同じ族内にある。
その場合、局所変分因子q(x)を最適化する、大域変分パラメータに関する平均場目的を、
と書くことができ、目的(5)の自然勾配は、局所期待十分統計量の合計に分解される(IHoffman et al., 2013)。
式中、q
*(x
n)は局所最適局所平均場因子である。よって、データ点y
nをサンプリングし、局所平均場因子q(x
n)を最適化し、スケーリングされた期待十分統計量を計算することによって、本発明の大域平均場目的のための確率的自然勾配の更新を計算することができる。
【0162】
2.2.変分オートエンコーダ
変分オートエンコーダ(VAE)(Kingma&Welling, 2014; Rezende et al., 2014)は、ニューラルネットワークオートエンコーダ(Vincent et al., 2008)を平均場変分ベイズと結びつける最近提案されたモデルおよび推論方法である。画像の集合などの高次元データセットが与えられた場合、VAEは各観測値ynを、低次元潜在変数y
nおよびパラメータを有する非線形観測モデルに関してモデル化する。
式中、
この特定のMLP構成を再利用することになるため、本発明者らは以下の表記を導入する。
事後分布を近似するために、変分オートエンコーダは平均場族を使用する。
図2.変分オートエンコーダのグラフィカルモデル
【0163】
変分オートエンコーダの重要な洞察は、条件付き変分密度q(xn|yn)を使用することであり、変分分布のパラメータは対応するデータ点に依存する。特に、q(xn\yn)の平均値および共分散のパラメータを、それぞれ、n(yn\(p)およびE(yrl;</>)であるように取ることができ、その場合、
はMLPパラメータのセットを表す。よって、変分分布q(xn|ijn)は、観測値から潜在変数の分布への確率的エンコーダのように働き、一方、順モデルp(yn|xn)は潜在変数値から観測値の分布への確率的デコーダのように働く。
【0164】
結果として得られる平均場目的は、オートエンコーダの変分ベイズバージョンを表す。変分パラメータはその場合、エンコーダパラメータおよびデコーダパラメータであり、目的は、
である。
【0165】
この目的を効率的に最適化するために、Kingma&Welling(2014)は、再パラメータ化トリックを適用する。表記および計算を簡単にするために、本発明者らは、まず、目的を、
と書き換える。項KL(q(x\y)\\p(x))は、2つのガウス分布間のKLダイバージェンスであり、fに対するその勾配を閉じた形で計算することができる。期待値項の確率的勾配を計算するには、確率変数を、
としてパラメータ化することができるため、期待値項を、モンテカルロ法によって近似されたその勾配に関して書き換えることができる。
これらの勾配項を、標準的なバックプロパゲーションを使用して計算することができる。スケーラビリティのために、データ点全体の合計もモンテカルロ法によって近似される。
【0166】
生成モデルおよび変分族
したがって、これらのアルゴリズムに基づき、本発明者らは、SVAE生成モデルおよび対応する変分族を構築した。具体的には、本発明者らは、SVAEが離散潜在変数と連続潜在変数の両方を、高い確率的依存性と共にどのようにして組み込むことができるかを例示する、スイッチング線形力学系(SLDS)(Murphy, 2012; Fox et al, 2011)に基づく時系列のための特定の生成モデルに焦点を当てる。
【0167】
ここで説明する手法は、広範な確率的グラフィカルモデルのセットに適用され、時系列にのみ限定されない。まず、セクション3.1で、観測値を生成するための、潜在構造を表すグラフィカルモデルと柔軟なニューラルネットとの組み合わせを示す生成モデルについて説明する。次に、セクション3.2で、グラフ構造化された平均場近似と柔軟な認識ネットワークの両方を利用する構造化変分族について説明する。
【0168】
3.1非線形観測値を用いたスイッチング線形力学系
スイッチング線形力学系(SLDS)は、線形ダイナミクスの離散集合に従って発展する連続潜在状態に関するデータを表す。各時点において、力学モードにインデックス付けする離散値潜在状態と、力学モードの線形ガウシアンダイナミクスに従って発展する連続値潜在状態とがある。
図24に、SLDS生成モデルおよび対応する構造CRF変分族のグラフィカルモデルを示す。
離散潜在状態はマルコフダイナミクスに従って発展する。
初期状態は別々に生成される。
【0169】
よって、SLDSの潜在変数およびパラメータの推論により、異なる線形ダイナミクス間のマルコフスイッチングに加えて、各々が潜在状態に関する線形力学系として記述された再利用される力学モードのセットが識別される。力学パラメータは以下で表されうる。
各時点において、連続潜在状態は、条件付きガウス分布である観測値
を生じる。典型的なSLDS(Fox et al., 2011)では、
と書くことができる。
【0170】
しかし、画像および他の複雑な特徴の柔軟なモデル化を可能にするために、アルゴリズムは、依存をより一般的な非線形モデルとすることができる。特に、本発明者らはMLPについて以下の式を考える。
【0171】
構築について、密度は指数分布族内にあることに留意されたい。事前分布p(0)が自然な指数分布族共役事前分布であることを選択し、
と書くことができる。
【0172】
また、ベイジアンノンパラメトリック事前分布を使用し、階層ディリクレ過程(HDP)HMM(Fox et al., 2011)に従って離散状態系列を生成することもできる。ベイジアンノンパラメトリックの事例についてはこれ以上論じないが、ここで構築したアルゴリズムは、Johnson&Willsky(2014)の方法を使用してHDP-HMMに直ちに拡張される。
【0173】
この構成は、上述したVAEの生成モデルを特殊事例として含む。具体的には、VAEは同じクラスのMLP観測モデルを使用するが、各潜在値xtは独立同分布のガウシアンとしてモデル化されると共に、ここで提案するSVAEモデルは豊富な同時確率的構造を可能にする。SLDS生成モデルはまた、特殊事例として、混合ガウスモデル(GMM)、ガウス出力離散状態HMM(G-HMM)、およびガウス線形力学系(LDS)も含み、よってSLDSのためにここで構築したアルゴリズムはこれらのモデルに直接特殊化される。
【0174】
各状態内で条件付き線形ダイナミクスを使用することには限界があるように見えるかもしれないが、柔軟な非線形観測分布はそのようなモデルの能力を大幅に拡張する。実際、ニューラル単語埋め込み(Mikolov et al., 2013)およびニューラル画像モデル(Radford et al., 2015)に関する最近の研究は、線形構造が有意味のセマンティクスに対応する学習された潜在空間を実証している。
【0175】
例えば、単語ベクトルの加算および減算を単語間の意味的関係に対応させることができ、画像モデルの潜在空間における並進を、オブジェクトの回転に対応させることができる。したがって、学習された潜在空間内の線形モデルは、高速の確率的推論、解釈可能な事前分布およびパラメータ、ならびに多数の他のツールを使用可能にしながら、顕著な表現力をもたらすことができる。特に、線形ダイナミクスは、時間スケールおよび頻度に関する情報を学習または符号化することを可能にする。すなわち、各遷移行列A
(k)の固有値スペクトルは、その特有の時間スケールを直接表し、そのため、非線形ダイナミクスモデルが許容しないやり方で線形ダイナミクスの構造を制御し解釈することができる。
【0176】
3.2.変分族およびCRF認識ネットワーク
ここでは、セクション3.1の生成モデルの事後分布における変分推論を行うための構造化された平均場族について説明する。この平均場族は、SVAEがどのようにしてグラフィカルモデルおよび指数分布族構造を利用するだけでなくボトムアップ推論ネットワークを学ぶこともできるかを示す。以下に示すように、これらの構造は、SVI、メッセージパッシング、バックプロパゲーション、および再パラメータ化トリックを含むいくつかの効率的な推論アルゴリズムを構成することを可能にする。
【0177】
平均場変分推論では、事後分布における依存関係を断ち切ることによって扱いやすい変分族を構築する(Wainwright&Jordan, 2008)。セクション3.1で開発された生成モデルのための構造化された平均場族を構築するために、ダイナミクスパラメータθと観測パラメータと離散状態系列と連続状態系列との間の事後分布依存関係を断ち切り、対応する因数分解された密度を
と書くことができる。
【0178】
この構造化された平均場族は、離散状態間または連続状態間の依存関係を断ち切らないことに留意されたい。というのも、これらの確率変数は事後分布において高い相関性があるからである。依存関係を長期間にわたって維持することによって、これらの構造化された因子は、事後分布のより一層正確な表現を提供すると同時に、グラフィカルモデルメッセージパッシングによる扱いやすい推論も可能にする(Wainwright&Jordan, 2008)。
【0179】
ボトムアップ推論ネットワークを利用するために、因子を条件付き確率場(CRF)としてパラメータ化することができる(Murphy, 2012)。すなわち、最適な因子は連鎖グラフに従ったマルコフであることを使用して、本発明者らは因子を、ペアワイズポテンシャルおよびノードポテンシャルに関して
と書く。ここでノードポテンシャルは観測値の関数である。具体的には、本発明者らは、セクション2.2の表記を使用して、各ノードポテンシャルが、精度行列およびポテンシャルベクトルがMLPによる対応する観測に依存するガウス型因子であることを選択する。
これらの局所認識ネットワークは、各観測値からの回帰を、対応する潜在状態における確率的推測に適合させることを可能にする。グラフィカルモデル推論を使用して、これらの局所推測をダイナミクスモデルと合成して、状態系列全体にわたるコヒーレントな結合因子にすることができる。
【0180】
この構造化された平均場族を、上述した変分オートエンコーダで使用される完全因数分解族と直接比較することができる。すなわち、VAEの潜在変数間にはグラフ構造がない。SVAEは、認識ネットワークの出力が、本明細書で考察したノードポテンシャルなど、グラフィカルモデル内の任意のポテンシャルであることを可能にすることによって、VAEを一般化する。さらに、SVAEでは、グラフィカルモデルポテンシャルのいくつかは、認識ネットワークの出力ではなく、確率モデルによって誘導される。例えば、最適なペアワイズポテンシャルは、力学パラメータおよび潜在的離散状態に関する変分因子、ならびに順方向生成モデル(セクション4.2.1参照)によって誘導される。よって、SVAEは、柔軟な推論ネットワークからのボトムアップ情報を、構造化された確率モデルにおける他の潜在変数からのトップダウン情報と組み合わせる方法を提供する。
【0181】
式(23)と同様に、p(θ)が共役事前分布として選択される場合、最適な因子q(θ)は同じ指数分布族にある。
表記を簡単にするために、セクション2.2と同様に、本発明者らは、観測パラメータに関する変分因子を特異分布であるものとみなし、大域変分パラメータに関する平均場目的は、その場合、
であり、式(5)と同様に、最大化は局所変分因子の自由パラメータ全体に及ぶものである。セクション4では、この変分目的をどのように最適化するかを示す。
【0182】
4.学習および推論
このセクションでは、式(29)のSVAE目的の確率的勾配を計算するための効率的なアルゴリズムを開示する。これらの確率的勾配は、確率的勾配上昇やAdam(Kingma&Ba, 2015)などの一般的な最適化ルーチンで使用することができる。
【0183】
開示されるように、SVAEアルゴリズムは本質的には、セクション2.1およびセクション2.2にそれぞれ記載されているSVI(Hoffman et ah, 2013)とAEVB(Kingma&Welling, 2014)の組み合わせである。SVAEアルゴリズムは、SVIを利用することにより、指数分布族共役構造が利用可能な場合に、これを利用していくつかの変分パラメータに関する自然勾配を効率的に計算することができる。自然勾配は変分族の形状に適合され、モデル再パラメータ化に対して不変であるため(Amari&Nagaoka, 2007)、自然勾配上昇は効果的な二次最適化法を提供する(Martens&Grosse, 2015; Martens, 2015)。これらのアルゴリズムは、AEVBを利用することにより、一般的な非線形観測モデルと柔軟なボトムアップ認識ネットワークの両方に適合することができる。
【0184】
アルゴリズムは2つの部分に分割される。まず、セクション4.1で、モデル特有の推論サブルーチンからの結果に関して目的の勾配を計算するための一般的なアルゴリズムを開示する。次に、セクション4.2で、このモデルのSLDSの推論サブルーチンへの適用を開示する。
【0185】
4.1.SVAEアルゴリズム
ここでは、モデル推論サブルーチンの結果を使用してSVAE平均場目的(29)の計算確率的勾配が計算される。このアルゴリズムは、アルゴリズム1に要約されている。
【0186】
スケーラビリティのために、ここで使用される確率的勾配はデータのミニバッチに対して計算される。表記を簡単にするために、データセットは各々長さTのN個の系列の集合であると仮定する。ランダムに1つの系列を一様にサンプリングし、それを用いて確率的勾配を計算することができる。また、部分列をサンプリングし、制御可能にバイアスされた確率的勾配を計算することも可能である(Foti et al., 2014)。
【0187】
SVAEアルゴリズムは、自然勾配および標準勾配を計算する。これらの勾配を計算するために、セクション2.2と同様に、本発明者らは、目的を
のように分割する。
【0188】
第2項のみが変分ダイナミクスパラメータに依存することに留意されたい。さらに、これは同じ指数分布族の2つのメンバー(式(23)および式(28))間のKLダイバージェンスであり、そのため、Hoffman et al.(2013)およびセクション2.1と同様に、本発明者らは、(30)の自然勾配を
と書くことができる。式中、q(z)およびq(x)は、式(6)と同様に局所最適局所平均場因子とみなされる。したがって、系列インデックスnをランダムに一様にサンプリングすることにより、自然勾配のバイアスのない推定値が以下によって与えられる。
本発明者らは
と略記する。これらの期待十分統計量は、セクション4.2に記載されるモデル推論サブルーチンを使用して効率的に計算される。
【0189】
よって、本発明者らは、モデル推論サブルーチンがこれらの量を計算するために使用する手順を差別化しなければならない。この差別化をSLDSに対して効率的に行うことは、メッセージパッシングによるバックプロパゲーションに相当する。
【0190】
4.2.モデル推論サブルーチン
VAEは限られた潜在確率構造を有する特定のSVAEに対応するため、この推論サブルーチンはAEVBアルゴリズム(Kingma&Welling, 2014)における2つの工程の一般化とみなすことができる。しかし、SVAEの推論サブルーチンは一般に他の計算を行いうる。第1に、SVAEは他の潜在確率変数およびグラフ構造を含むことができるため、推論サブルーチンは局所平均場因子を最適化するか、メッセージパッシングを実行しうる。第2に、SVAEは大域因子に対して確率的自然勾配の更新を行うことができるため、推論サブルーチンは期待十分統計量の計算も行いうる。
【0191】
表記を簡単にするために、系列インデックスnを省いて、y(
n)の代わりにyと書くことができる。このアルゴリズムは、アルゴリズム2に要約されている。
【0192】
4.2.1.局所平均場因子の最適化
セクション2.1のSVIアルゴリズムと同様に、所与のデータ列yについて、局所平均場因子を最適化することができる。すなわち、自然パラメータを有する固定大域パラメータ因子と認識ネットワークによって出力された固定ノードポテンシャルとについて、本発明者らは、離散潜在状態の局所変分因子と連続潜在状態の局所変分因子の両方に関して変分目的を最適化する。この最適化を、SLDS指数分布族形式と構造化変分族を利用することによって効率的に行うことができる。
【0193】
4.2.2.サンプル、期待統計量、およびKL
局所変分因子を最適化した後、モデル推論サブルーチンは、最適化された因子を使用してサンプルを抽出し、期待十分統計量を計算し、KLダイバージェンスを計算する。次いでこれらの推論計算の結果は、SVAE目的の勾配を計算するのに使用される。
【0194】
6.実験
6.1.IDの跳ね返りドット
代表的なトイプロブレムとして、ドットが画像の一方の端から他方の端まで一定の速度で跳ね返る1次元画像シーケンスを考える。
図25に、この問題に適合されたLDS SVAEにおける推論の結果を示す。最上部のパネルには、経時的なノイズの多い画像の観測値が示されている。2番目のパネルには、過去の画像と未来の画像の両方に関するモデルの推論が示されている。モデルは、垂直な赤線の左側の観測値を条件としており、よってフィルタリングを行っており、垂直な赤線の右側でモデルは予測を行っている。この図には、モデルが、適切な低次元表現およびダイナミクスを学習しており、遠い将来まで一貫して予測することができることが示されている。
【0195】
また、ドット問題を使用して、変分ダイナミクスパラメータに関して自然勾配によって提供される顕著な最適化の利点を例示することもできる。
図6では、自然勾配の更新が、3つの異なる学習率での標準勾配の更新と比較されている。自然勾配アルゴリズムは、ずっと高速で学習するだけでなく、より安定している。すなわち、自然勾配の更新は0.1のステップサイズを使用したが、標準勾配ダイナミクスは0.1と0.05のどちらのステップサイズでも不安定であり、早期に打ち切られた。0.01のステップサイズでは安定した標準勾配の更新が得られたが、訓練は自然勾配アルゴリズムの場合よりも桁違いに遅い。
【0196】
6.2.マウスの行動表現型決定
行動表現型決定の目標は、行動のパターンを識別し、動物の環境、遺伝的特質、または脳機能が変化したときにそれらのパターンがどのように変化するかを調べることである。ここで、本発明者らは、SLDS SVAEがそのようなビデオデータの柔軟でしかも構造化された生成モデルをどのようにして学習できるかを示すために、Wiltschko et al.(2015)の3D深度カメラデータセットを使用する。
【0197】
VAEの非線形観測モデルは、マウスの深度画像の多様体を学習する上で重要である。
図7(
図25で参照されている)には、潜在空間内のランダム2Dグリッド上の点に対応する画像が示されており、非線形観測モデルがどのようにして正確な画像を生成できるかが示されている。SVAEは、構造化された潜在確率モデルを適合させながら同時にこの特徴多様体を学習する。
【0198】
図4(
図25で参照されている)には、生成ビデオ完成タスクを示す学習された力学構造の一部が示されている。この図は、モデル生成データと対応する実データとを交互に含んでいる。モデル生成データ内では、2本の赤線の間のデータは、対応する観測値に条件を付けずに生成されたものであり、2本の赤線外のデータは条件付きで生成されたものである。
【0199】
結論
本明細書では、確率的グラフィカルモデルとディープラーニングからの柔軟な特徴表現の両方を利用する新しいモデルクラスおよび対応する推論アルゴリズムが開示されている。時系列の文脈では、この手法は、推論、推定、さらには制御にさえも使用できるいくつかの新しい非線形モデルを提供する。例えば、SVAEにおいて潜在的線形構造を維持することによって、いくつかの動的プログラミング制御問題が扱いやすいままにとどまりうる。
【0200】
本開示では時系列モデル、特にSLDSおよび関連モデルに焦点を当てたが、ここで提示した構成はより一般的である。すなわち、CRFポテンシャルの柔軟なボトムアップ推論ネットワークを学習し、次いでそのボトムアップ情報を構造化モデルにおいてコヒーレントな確率的推論と組み合わせるという基本戦略は、グラフィカルモデルが有用であることが判明している場合には常に該当しうる。SVAEはまた、確率モデル化の他の多くのツールが、階層モデル化、構造化された正則化および関連度自動決定、ならびに欠損データの容易な処理を含む、より新しいディープラーニングの手法と組み合わされることも可能にする。
【0201】
参考文献
【0202】
選択された態様
以上の説明および添付の特許請求の範囲は、本発明のいくつかの態様を開示しているが、本発明の他の代替態様を以下のさらなる態様において開示する。
1. 対象の動きを表す3次元ビデオデータを少なくとも1つのモジュールセットと少なくとも1つのモジュール間遷移統計量セットとに区分するために、計算モデルを使用して前記ビデオデータを処理する工程、および
前記少なくとも1つのモジュールセットを、動物行動のタイプを表すカテゴリに割り当てる工程
を含む、対象の動きを分析してモジュールに分離するための方法。
2. 前記処理する工程が、前記ビデオデータにおいて前記対象を背景から分離する工程を含む、態様1の方法。
3. 前記処理する工程が、前記ビデオデータのフレームセット上の、各フレームに共通の座標系に対する前記対象の特徴の向きを識別する工程をさらに含む、態様2の方法。
4. 前記処理する工程が、位置合わせされたフレームのセットを出力するために、前記特徴が前記座標系に対して同じ方向に向けられるように前記フレームセットの少なくとも1つのサブセット内の前記対象の前記向きを修正する工程をさらに含む、態様3の方法。
5. 前記処理する工程が、主成分空間を通る各位置合わせされたフレームについての前記対象のポーズを表すポーズダイナミクスデータを出力するために、主成分分析(PCA)を使用して前記位置合わせされたフレームを処理する工程をさらに含む、態様4の方法。
6. 前記処理する工程が、多様体空間を通る各位置合わせされたフレームについての前記対象のポーズを表すポーズダイナミクスデータを出力するために、多層パーセプトロン(MLP)を使用して前記位置合わせされたフレームを処理する工程をさらに含む、態様4の方法。
7. 前記処理する工程が、前記ポーズダイナミクスデータを別々のモジュールセットに時間的にセグメント化するために、計算モデルを用いて前記位置合わせされたフレームを処理する工程をさらに含み、モジュールセット内の各サブ秒モジュールが類似したポーズダイナミクスを示す、態様5の方法。
8. 前記モデルがスイッチング線形力学系(SLDS)モデルである、態様7の方法。
9. 前記多層パーセプトロンが構造化変分オートエンコーダである、態様7の方法。
10. 前記モデルが勾配降下およびバックプロパゲーションを使用して訓練される、態様6の方法。
11. MLPを用いて前記位置合わせされたフレームを処理する工程が、計算モデルを用いて前記フレームを処理する工程と同時に行われる、態様7の方法。
12. 前記3次元ビデオデータにおいて閾値を上回る頻度で発生するモジュールセットの各々の表現を表示する工程をさらに含む、態様5の方法。
13. 前記計算モデルが、サブ秒モジュールを、PCA空間を通る定型化した軌跡を表すベクトル自己回帰過程としてモデル化することを含む、態様1の方法。
14. 前記計算モデルが、隠れマルコフモデルを使用してサブ秒モジュール間の遷移期間をモデル化することを含む、態様1の方法。
15. 前記3次元ビデオデータが、多次元ベクトル空間における一連の点を出力するためにまず処理され、各点が前記対象の3Dポーズダイナミクスを表す、態様1の方法。
16. 前記対象が動物試験における動物である、態様1〜10のいずれかの方法。
17. 前記対象がヒトである、態様1〜10のいずれかの方法。
18. 対象を背景から分離するために、前記対象の動きを表す3次元ビデオデータを前処理する工程、
前記ビデオデータのフレームセット上の、各フレームに共通の座標系に対する前記対象の特徴の向きを識別する工程、
位置合わせされたフレームのセットを出力するために、前記特徴が前記座標系に対して同じ方向に向けられるように前記フレームセットの少なくとも1つのサブセット内の前記対象の前記向きを修正する工程、
3次元グラフィカル空間を通る各位置合わせされたフレームについての前記対象のポーズを表すポーズダイナミクスデータを出力するために、多層パーセプトロン(MLP)を使用して前記位置合わせされたフレームを処理する工程、
前記ポーズダイナミクスデータを別々のサブ秒モジュールセットに時間的にセグメント化するために、前記位置合わせされたフレームを処理する工程であって、モジュールセット内の各サブ秒モジュールが類似したポーズダイナミクスを示す、工程、および
前記3次元ビデオデータにおいて閾値を上回る頻度で発生するモジュールセットの各々の表現を表示する工程
を含む、対象の動きを分析してモジュールに分離するための方法。
19. 前記位置合わせされたフレームを処理する工程が、モデルフリーアルゴリズムを使用して行われる、態様18の方法。
20. 前記モデルフリーアルゴリズムが、オートコレログラムを計算することを含む、態様19の方法。
21. 前記位置合わせされたフレームを処理する工程が、モデルベースアルゴリズムを使用して行われる、態様18の方法。
22. 前記モデルベースアルゴリズムがAR-HMMアルゴリズムである、態様21の方法。
23. 前記モデルベースアルゴリズムがSLDSアルゴリズムである、態様21の方法。
24. 前記多層パーセプトロンがSVAEである、態様18の方法。
25. SVAEおよびMLPが、変分推論目的を使用しかつ勾配上昇を行って訓練される、態様24の方法。
26. SVAEおよびMLPが同時に訓練される、態様25の方法。
27. 前記対象が動物試験における動物である、態様18〜22のいずれかの方法。
28. 前記対象がヒトである、態様18〜22のいずれかの方法。
29. 前記対象が、前記対象のサイズが変化するのに十分なほど長い期間にわたって分析される、態様18〜22のいずれかの方法。
30. SVAEおよびMLPが、異なるマウスまたはラットの系統に基づくデータを使用して訓練される、態様25の方法。
31. 試験化合物が試験対象に投与された後の前記試験対象においてモジュールセットを含む試験行動表現を識別する工程、
前記試験行動表現を複数の基準行動表現と比較する工程であって、各基準行動表現が各薬物クラスを表す、工程、および
前記試験行動表現が分類器によってある薬物クラスを表す基準行動表現と一致すると識別された場合に、前記試験化合物は前記薬物クラスに属すると決定する工程
を含む、試験化合物を分類する方法。
32. 前記試験行動表現が、
前記試験対象の動きを表す3次元ビデオデータを受け取る工程、
前記3次元データを少なくとも1つのモジュールセットと少なくとも1つのモジュール間遷移期間セットとに区分するために、計算モデルを使用して前記データを処理する工程、および
前記少なくとも1つのモジュールセットを動物行動のタイプを表すカテゴリに割り当てる工程
によって識別される、態様31の方法。
33. 前記計算モデルが、サブ秒モジュールを、主成分分析(PCA)空間を通る定型化した軌跡を表すベクトル自己回帰過程としてモデル化することを含む、態様32の方法。
34. 前記計算モデルが、サブ秒モジュールを、MLPがサブ秒モジュールの特徴多様体を学習している間に同時に適合されるSLDSとしてモデル化することを含む、態様32の方法。
35. MLPがSVAEである、態様34の方法。
36. 前記計算モデルが、隠れマルコフモデルを使用して前記遷移期間をモデル化することを含む、態様33の方法。
37. 前記3次元ビデオデータが、多次元ベクトル空間における一連の点を出力するためにまず処理され、各点は前記試験対象の3Dポーズダイナミクスを表す、態様31〜36のいずれかの方法。
38. 前記試験化合物が、小分子、抗体またはその抗原結合フラグメント、核酸、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣体、多糖、単糖、脂質、グリコサミノグリカン、およびそれらの組合せからなる群より選択される、態様31〜37のいずれかの方法。
39. 前記試験対象が動物試験における動物である、態様31〜38のいずれかの方法。
40. 対象への作用因子の投与前および投与後の前記対象の動きを表す3次元ビデオデータを受け取る工程、
前記対象を背景から分離するために前記3次元ビデオデータを前処理する工程、
前記ビデオデータのフレームセット上の、各フレームに共通の座標系に対する前記対象の特徴の向きを識別する工程、
位置合わせされたフレームのセットを出力するために、前記特徴が前記座標系に対して同じ方向に向けられるように前記フレームセットの少なくとも1つのサブセット内の前記対象の前記向きを修正する工程、
3次元特徴多様体を通る各位置合わせされたフレームについての前記対象のポーズを表すポーズダイナミクスデータを出力するために、多層パーセプトロン(MLP)を使用して前記位置合わせされたフレームを処理する工程、
前記ポーズダイナミクスデータを別々のモジュールセットに時間的にセグメント化するために、計算モデルを用いて前記位置合わせされたフレームを処理する工程であって、サブ秒モジュールセット内の各サブ秒モジュールが類似したポーズダイナミクスを示す、工程、
前記対象への前記作用因子の投与前の各サブ秒モジュールセット内のモジュール数を決定する工程、
前記対象への前記作用因子の投与後の各サブ秒モジュールセット内のモジュール数を決定する工程、
前記対象への前記作用因子の投与前と投与後の各サブ秒モジュールセット内のモジュール数を比較する工程、および
前記対象への前記作用因子の投与前と投与後の各モジュールセット内のモジュール数の発現頻度の変化の指示を出力する工程
を含む、対象の動きを分析してモジュールに分離するための方法。
41. 各サブ秒モジュールセットは、行動モジュールを表す基準データとの比較に基づいて所定の行動モジュールに分類される、態様40の方法。
42. 前記対象への前記作用因子の投与前と投与後の各モジュールセット内のモジュール数の発現頻度の変化が、公知のカテゴリの作用因子への曝露後のモジュールの発現頻度の変化を表す基準データと比較される、態様40または41の方法。
43. 公知のカテゴリの作用因子への曝露後の頻度の変化を表す基準データとの前記比較に基づいて、前記作用因子を複数の公知の作用因子カテゴリのうちの1つとして分類するさらなる工程を含む、態様42の方法。
44. 前記作用因子が、薬学的に活性な化合物である、態様40〜42のいずれかの方法。
45. 前記作用因子が、視覚刺激または聴覚刺激である、態様40〜42のいずれかの方法。
46. 前記作用因子が匂い物質である、態様40〜42のいずれかの方法。
47. 前記対象が動物試験における動物である、態様40〜46のいずれかの方法。
48. 前記対象がヒトである、態様40〜46のいずれかの方法。
【0203】
開示のコンピュータおよびハードウェア実装
本明細書の開示は、任意のタイプのハードウェアおよび/またはソフトウェアで実施してもよく、あらかじめプログラムされた汎用コンピューティングデバイスであってもよいことを最初に理解されたい。例えば、システムは、サーバ、パーソナルコンピュータ、ポータブルコンピュータ、シンクライアント、または任意の適切な1台もしくは複数の装置を使用して実装してもよい。本開示および/またはその構成要素は、電気ケーブル、光ファイバケーブルなどの任意の通信媒体上で、または無線方式で、任意の適切な通信プロトコルを使用して相互に接続された、単一の場所の単一の装置、または単一もしくは複数の場所の複数の装置としてもよい。
【0204】
また、本開示は、本明細書では、特定の機能を果たす複数のモジュールを有するものとして図示され、説明されていることにも留意されたい。これらのモジュールは、明確にするためにその機能に基づいて単に模式的に図示されており、必ずしも特定のハードウェアまたはソフトウェアを表すものではないことを理解されたい。これに関して、これらのモジュールは、論じた特定の機能を実質的に果たすように実装されたハードウェアおよび/またはソフトウェアであってもよい。さらに、各モジュールは、本開示内で一緒に組み合わされてもよく、所望の特定の機能に基づいて追加のモジュールに分割されてもよい。よって、本開示は、本発明を限定するものと解釈すべきものではなく、単に本発明の1つの例示的実施態様を示すものと理解すべきものである。
【0205】
コンピュータシステムは、クライアントとサーバとを含むことができる。クライアントとサーバは、一般に相互にリモートであり、通常、通信ネットワークを介して対話する。クライアントとサーバの関係は、各々のコンピュータ上で動作する、互いにクライアント/サーバ関係を有するコンピュータプログラムによって生じる。いくつかの実施態様では、サーバは、(例えば、クライアントデバイスと対話するユーザにデータを表示し、ユーザからユーザ入力を受信する目的で)データ(例えば、HTMLページ)をクライアントデバイスに送信する。クライアントデバイスで生成されたデータ(例えば、ユーザ対話の結果)は、サーバにおいてクライアントデバイスから受信することができる。
【0206】
本明細書に記載する主題の実施態様は、データサーバなどのバックエンドコンポーネントを含むコンピュータシステム、またはアプリケーションサーバなどのミドルウェアコンポーネントを含むコンピュータシステム、またはユーザが本明細書に記載される主題の実施態様と対話するためのグラフィカル・ユーザ・インターフェースやウェブブラウザを有するクライアントコンピュータなどのフロントエンドコンポーネントを含むコンピューティングシステム、または1つもしくは複数のそのようなバックエンドコンポーネント、ミドルウェアコンポーネントもしくはフロントエンドコンポーネントの任意の組合せにおいて実装することができる。システムの構成要素は、任意の形のディジタルデータ通信またはディジタルデータ通信の媒体、例えば、通信ネットワークによって相互接続することができる。通信ネットワークの例には、ローカル・エリア・ネットワーク(「LAN」)および広域ネットワーク(「WAN」)、インターネットワーク(例えばインターネット)、およびピアツーピアネットワーク(例えば、アドホック・ピアツーピアネットワーク)が含まれる。
【0207】
本明細書に記載する主題および動作の実施態様は、ディジタル電子回路として、または本明細書で開示した構造およびそれらの構造的均等物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェアとして、またはそれらのうちの1つもしくは複数の組合せとして実装することができる。本明細書に記載する主題の実施態様は、データ処理装置が実行するための、またはデータ処理装置の動作を制御するようにコンピュータ記憶媒体上で符号化されたモジュール1つまたは複数のコンピュータプログラム、すなわち、コンピュータプログラム命令の1つまたは複数のモジュールとして実装することができる。代替として、または加えて、プログラム命令は、データ処理装置が実行するための適切な受信側装置に送信するための情報を符号化するように生成される、人為的に生成された伝播信号、例えば、機会で生成された電気信号、光信号、または電磁信号上で符号化することもできる。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読記憶装置、コンピュータ可読記憶基板、ランダムもしくはシリアル・アクセス・メモリ・アレイもしくはデバイス、またはそれらの1つもしくは複数の組合せとすることができ、またはそれらに含めることができる。さらに、コンピュータ記憶媒体は伝播信号ではないが、コンピュータ記憶媒体は、人為的に生成された伝播信号において符号化されたコンピュータプログラム命令の発信元または宛先とすることができる。またコンピュータ記憶媒体は、1つまたは複数の別個の物理的構成要素または媒体(例えば、複数のCD、ディスク、または他の記憶装置)とすることもでき、またはそれらに含めることができる。
【0208】
本明細書に記載する動作は、1台または複数のコンピュータ可読記憶装置に格納されたデータまたは他のソースから受信されたデータに対して「データ処理装置」によって実行される動作として実装することができる。
【0209】
「データ処理装置」という用語は、例えば、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、システム・オン・チップ、または複数のそれらのもの、またはそれらの組合せを含む、データを処理するためのあらゆる種類の装置、デバイスおよび機械を包含する。装置は、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)やASIC(特定用途向け集積回路)などの専用論理回路を含むことができる。また装置は、ハードウェアに加えて、問題のコンピュータプログラムの実行環境を生成するコード、例えば、プロセッサファームウェアを構成するコード、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、クロスプラットフォームランタイム環境、仮想マシン、またはそれらのうちの1つもしくは複数の組合せも含むことができる。装置および実行環境は、ウェブサービス、分散コンピューティング、グリッド・コンピューティング・インフラストラクチャなど、様々な異なるコンピューティング・モデル・インフラストラクチャを実現することができる。
【0210】
コンピュータプログラムは(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、またはコードとも呼ばれ)、コンパイル言語やインタプリタ言語、宣言言語や手続き形言語を含む任意の形式のプログラミング言語で書くことができ、スタンドアロンプログラムや、モジュール、コンポーネント、サブルーチン、オブジェクトまたはコンピューティング環境で用いるのに適したその他のユニットを含む、任意の形式で配置することができる。コンピュータプログラムは、ファイルシステム内のファイルに対応しうるが、そうである必要はない。プログラムは、他のプログラムもしくはデータ(例えば、マークアップ言語文書に格納された1つもしくは複数のスクリプト)を保持するファイルの一部に、問題のプログラムに専用の単一ファイルに、または複数の連携したファイル(例えば、1つもしくは複数のモジュール、サブプログラム、もしくはコードの一部を格納するファイル)に格納することができる。コンピュータプログラムは、1台のコンピュータ上で、または1箇所に位置し、もしくは複数のサイトに分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように配置することができる。
【0211】
本明細書に記載するプロセスおよび論理フローは、入力データに作用して出力を生成することによって動作を実行する1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行する1つまたは複数のプログラマブルプロセッサによって実行することができる。またプロセスおよび論理フローは、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)やASIC(特定用途向け集積回路)などの専用論理回路によっても実行することができ、装置を専用論理回路として実装することもできる。
【0212】
コンピュータプログラムの実行に適するプロセッサには、例えば、汎用と専用両方のマイクロプロセッサや、任意の種類のディジタルコンピュータの任意の1つまたは複数のプロセッサなどが含まれる。一般に、プロセッサは、読取り専用メモリまたはランダム・アクセス・メモリまたはその両方から命令およびデータを受け取る。コンピュータの必須要素は、命令に従って動作を実行するためのプロセッサと、命令およびデータを格納するための1台または複数の記憶装置である。一般に、コンピュータは、データを格納するための1台または複数の大容量記憶装置、例えば、磁気、光磁気ディスクや光ディスクを含み、そこからデータを受け取り、かつ/またはそこにデータを転送するように動作可能に結合される。しかし、コンピュータはそのような装置を有する必要はない。さらに、コンピュータは、別の機器、例えば、いくつか例を挙げると、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、モバイルオーディオやビデオプレーヤ、ゲームコンソール、全地球測位システム(GPS)受信機、または携帯用記憶デバイス(例えば、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)・フラッシュ・ドライブ)に組み込むこともできる。コンピュータプログラム命令およびデータを格納するのに適したデバイスには、あらゆる形の不揮発性メモリ、媒体およびメモリデバイスが含まれ、これには、例えば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュ・メモリ・デバイスなどの半導体メモリデバイス、内蔵ハードディスクやリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、ならびにCD-ROMおよびDVD-ROMディスクが含まれる。プロセッサおよびメモリは、専用論理回路によって補うこともでき、かつ/または専用論理回路に組み込むこともできる。
【0213】
結論
上述した様々な方法および技術は、本発明を実施するためのいくつかの方法を提供する。当然ながら、必ずしも記載したすべての目的または利点を本明細書に記載した任意の特定の態様に従って達成できるわけではないことを理解されたい。よって、例えば、本明細書で教示または示唆される他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示される1つの利点または利点群を達成または最適化するように本方法を実施することもできることを当業者は理解するであろう。本明細書では様々な代替案が言及されている。ある態様は、ある特徴、別の特徴、または複数の特徴を特に含み、別の態様は、ある特徴、別の特徴、または複数の特徴を特に実行し、さらに別の態様は、ある有利な特徴、別の有利な特徴、または複数の有利な特徴を含めることによって特定の特徴を軽減することを理解されたい。
【0214】
さらに、当業者は、異なる態様からの様々な特徴の適用性を認めるであろう。同様に、当業者は、上述した様々な要素、特徴および工程、ならびにそのような要素、特徴または工程の各々についての他の公知の均等物を様々な組合せで使用して、本明細書に記載した原理に従って方法を実行することもできる。様々な要素、特徴、および工程の中には、様々な態様において特に含められるものと、特に除外されるものとがあるであろう。
【0215】
本出願は、特定の態様および実施例の文脈で開示されたが、当業者には、本出願の態様が、具体的に開示された態様を超えて他の代替態様および/または用途およびそれらの改変および均等物にまで及ぶことが理解されるであろう。
【0216】
いくつかの態様では、本出願の特定の態様を説明する文脈において(特に、添付の特許請求の範囲のいくつかの文脈において)使用される用語「a」および「an」および「the」ならびに類似の言及は、単数形と複数形の両方を含むものと解釈することができる。本明細書における値の範囲の記載は、単に、範囲内に該当する各別個の値に個々に言及する省略法として使用するためのものである。本明細書で特に指示しない限り、個々の値は、その値が本明細書に個々に記載された場合と同様に本明細書に組み込まれる。本明細書中に記載するすべての方法は、本明細書で特に指示しない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書の特定の態様に関して提供される任意のおよびすべての例、または例示的な言語(例えば、「〜など」)の使用は、単にその適用をより明らかにするためのものであり、それ以外に請求される適用の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言語も、本出願の実施に不可欠な非請求要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0217】
本明細書には本出願の特定の態様が記載されている。これらの態様の変形は、以上の説明を読めば、当業者には明らかになるであろう。当業者はこのような変形を適宜に用いることができ、本出願は本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施することができることが企図されている。したがって、本出願の多くの態様は、適用法によって許容されるように、添付の特許請求の範囲に記載された主題のすべての改変および均等物を含む。さらに、本明細書で特に指示しない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、すべての可能な変形における上述の要素の任意の組合せが本出願に包含される。
【0218】
以上、本主題の特定の実施態様について説明した。添付の特許請求の範囲には他の実施態様が含まれている。場合によっては、特許請求の範囲に記載されている動作を、異なる順序で実行し、しかも所望の結果を達成することができる。加えて、添付の図に示すプロセスは、所望の結果を達成するのに、必ずしも、図示された特定の順序、または順番を必要としない。
【0219】
本明細書中で参照されるすべての特許、特許出願、特許出願公開、および論文、書籍、仕様書、刊行物、文書、物などの他の資料は、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み入れられる。ただし、それらと関連付けられる任意の出願経過、本明細書と矛盾もしくは対立するそれらのいずれか、または本明細書と現在関連付けられており、または後で関連付けられる特許請求の最も広い範囲にすいて限定的な影響を及ぼしうるそれらのいずれかを除く。例として、組み込まれた資料のいずれかと関連付けられた用語の記述、定義、および/または使用と、本明細書と関連付けられたそれらとの間に矛盾または対立が存在する場合、本明細書におけるその用語の記述、定義、および/または使用が優先する。
【0220】
最後に、本明細書で開示する本出願の態様は、本出願の態様の原理を例示するものであることを理解されたい。本出願の範囲内には使用できる他の改変も含まれる。よって、限定ではなく例として、本明細書の教示に従って、本出願の態様の代替の構成を利用することができる。したがって、本出願の態様は、厳密に図示し説明した態様だけに限定されるものではない。