(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の計測用コンデンサの容量、前記第1の分圧用コンデンサの容量、前記第2の計測用コンデンサおよび前記第2の分圧用コンデンサと、測定された前記電圧および前記電圧とに基づいて前記電線の心線に加わる電圧を演算する演算手段を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の非接触電圧計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る非接触電圧計測装置の構成を示す図である。
図2は、
図1の非接触電圧計測装置の等価回路図である。
図3は、
図1の非接触電圧計測装置の固定部で把持された電線の断面図である。
図1および
図2に示すように、非接触電圧計測装置100は、電線10(
図3参照)を両側から挟んで把持する筒状の固定部110と、固定部110の電線把持側の内周面に距離D2離隔して設けられた第1の電極121および第2の電極122と、第1の電極121に接続された第1の計測用コンデンサC3および分圧用コンデンサC2(第1の分圧用コンデンサ)と、第2の電極122に接続された第2の計測用コンデンサC3’と、第1の計測用コンデンサC3に加わる電圧V1を測定するための端子131(電圧測定手段)と、第2の計測用コンデンサC3’に加わる電圧V2を測定するための端子132(電圧測定手段)と、を備える。
【0013】
図3に示すように、電線10は、銅材料等からなる心線(撚り線の場合を含む)11の外周部を絶縁体12で被覆したケーブルである。心線11の外周部から第1の電極121または第2の電極122までの半径方向の距離をD1とする。距離D1のうち、大部分は絶縁体12の絶縁被膜で占められるが、心線(撚り線の場合は空隙が多い)11と絶縁被膜との界面、および絶縁被膜と第1の電極121または第2の電極122との界面には僅かに空気層が存在する。
図2に示すように、電線10の心線11と第1の電極121の間の絶縁被膜(
図2破線囲み部分参照)の静電容量C1、電線10の心線11と第2の電極122の間の絶縁被膜の静電容量C2とする。この静電容量C1,C2と、心線11の交流電圧E(以下、電圧Eという)とが未知の値である。第1の計測用コンデンサC3、分圧用コンデンサC2、第2の計測用コンデンサC3’、電圧V1および電圧V2は、既知の値または測定可能な値である。
非接触電圧計測装置100は、第1の計測用コンデンサC3、分圧用コンデンサC2、第2の計測用コンデンサC3’、電圧V1、および電圧V2を基に、絶縁体12で被覆された心線11に加わる電圧Eを心線11と非接触で計測するものである。
【0014】
<固定部>
図1に示すように、固定部110は、電線10(
図3参照)を下側から支える断面視して半円環状の下側固定部110aと、下側固定部110aと組み合わされて電線10を上側から押圧する断面視して半円環状の上側固定部110bと、下側固定部110aの底部を固定するとともに端子131,132を引き出す台座110cと、を備える。また、図示は省略するが、下側固定部110aと上側固定部110bとを、同心円状に重ね合わせて固定する固定手段を備える。この固定手段は、例えば下側固定部110aおよび上側固定部110bの一方の端部に設けられたヒンジ部(図示省略)と、他方の端部に設けられたフック部(図示省略)である。また、この固定手段は、後記する
図10に示す下側固定部110aおよび上側固定部110bのフランジ部同士を締結するボルト/ナットである。
固定部110は、下側固定部110aと上側固定部110bとを同心円状に重ね合わせて円筒部として電線10(
図3参照)を把持し、固定手段(図示省略)によって電線10を半径方向に押圧する。固定部110は、第1の電極121および第2の電極122がそれぞれ等しい押圧力で電線10を挟んで把持するように構成される。
【0015】
固定部110の設置位置について説明する。
固定部110を設置する位置としては、特に限定されないが、モータの振動等で動かない位置やグランド(GND)と接続し易い位置に設置することが望ましい。モータ端子台の内部、モータ筺体、インバータボックスの内部、またはケーブル引き回し部のうちから、上記観点で選ぶことができる。また、経年変化を考慮して、振動で動きにくい位置、例えばインバータボックスの内部、またはケーブル引き回し部のケーブルラック(天井から吊られている配線を通す梯子状の器具)に固定してもよい。
【0016】
固定部110は、第1の計測用コンデンサC3、分圧用コンデンサC2、および/または第2の計測用コンデンサC3’を、内部に収容する構成を採る。あるいは、固定部110は、第1の計測用コンデンサC3、分圧用コンデンサC2、および/または第2の計測用コンデンサC3’を、固定部110に備えられた第1の電極121および第2の電極122と端子131,132に接続するための端子を備える。すなわち、非接触電圧計測装置100は、固定部110内部に各コンデンサを収容する構造と、前記各コンデンサを固定部110外部に外付けする構成のいずれでもよい。前者の構成は、取扱が容易であることと、コンデンサが露出しないので安全性がより高い利点がある。後者の構成は、コンデンサを内蔵しないので低コスト化を図ることができることと、コンデンサの選択が容易である利点がある。
【0017】
<第1の電極および第2の電極>
図1に示すように、第1の電極121および第2の電極122は、固定部110の内周部に湾曲して形成された金属プレートまたは金属箔である。第1の電極121および第2の電極122は、電気的に絶縁されている。
第1の電極121および第2の電極122は、固定部110が、下側固定部110aと上側固定部110bとに2分割される構成を採る関係で、下側固定部110aと上側固定部110aの内周部にそれぞれ形成されているが、下側固定部110aと上側固定部110bとが1つに組み合わされた場合(電線押圧時)には、電気的に接続されてリング状電極を形成する。
第1の電極121と第2の電極122の内周面の面積Sは、等しく形成される。また、第1の電極121と第2の電極122は、固定部110によって、ほぼ同じ押圧力で電線10(
図3参照)に押し当てられる。
【0018】
第1の電極121は、円筒状の固定部110の一方の端部側に設けられ、第2の電極122は、第1の電極121と所定距離D2離隔した他方の端部側に設けられる。第1の電極121と第2の電極122とは、距離D2離隔した上で、できるだけ近接して設置されることが望ましい。第1の電極121と第2の電極122とを近接して設置することで、固定部110による電線10への押圧力を等しくすることができるとともに、第1の電極121および第2の電極122が固定部110の外部から受ける湿気・振動などの環境変化の影響を揃えることができる。
ここで、電線10(
図3参照)の心線11から第1の電極121または第2の電極122までの半径方向の距離D1と、第1の電極121と第2の電極122間の距離D2は、D2>D1である。
【0019】
また、電線10が、撚り線の場合、単線の場合よりも心線11の外周面に空隙が多い。このような撚り線の電線10の電圧を測定する用途に用いる非接触電圧計測装置100では、固定部110に設ける第1の電極121および第2の電極122の内周面の面積Sをより大きくすることが望ましい。
図1の構成では、第1の電極121および第2の電極122を長手方向に長くする。
【0020】
図1に示すように、第1の電極121は、直列接続された分圧用コンデンサC2および第1の計測用コンデンサC3を介してGNDに接続される。分圧用コンデンサC2と第1の計測用コンデンサC3間の接続点N1は、電圧V1を測定するための端子131に接続される。
また、第2の電極122は、第2の計測用コンデンサC3’を介してGNDに接続される。第2の電極122と第2の計測用コンデンサC3’間の接続点N2は、電圧V2を測定するための端子132に接続される。
【0021】
以下、上述のように構成された非接触電圧計測装置100の電圧計測方法について説明する。
非接触電圧計測装置100は、電線10の心線11に電圧Eが印加されている場合、心線11に加わる電圧Eを心線11と非接触で計測するものである。
図1に示すように、非接触電圧計測装置100は、電線10(ケーブル)(
図3参照)を覆う固定部110を備え、固定部110には面積Sが同じ2つの第1の電極121および第2の電極122を形成する。電線10の心線11から第1の電極121または第2の電極122までの半径方向の距離D1、第1の電極121と第2の電極122間の距離D2とする。
また、第1の電極121には、既知の第1の計測用コンデンサC3および分圧用コンデンサC2が接続され、第2の電極122には、既知の第2の計測用コンデンサC3’が接続される。端子131を介して第1の計測用コンデンサC3に加わる電圧V1を測定することができ、端子132を介して第2の計測用コンデンサC3’に加わる電圧V2を測定することができる。
【0022】
図1に示すように、非接触電圧計測装置100の固定部110に面積Sが同じ2つの第1の電極121および第2の電極122を形成し、固定部110によって2つの第1の電極121および第2の電極122をほぼ同じ押圧力で電線10(
図3参照)に押し当てる。第1の電極121および第2の電極122は、電気的に絶縁されている必要がある。
電線10の絶縁被覆の静電容量(C1,C1’)と分圧用コンデンサC2および第1の計測用コンデンサC3の静電容量(C2,C3)で分圧された電圧V1,V2を、電線10の2箇所で計測する。
電線10の絶縁被覆の静電容量(C1,C1’)は未知の値であり、分圧用コンデンサC2および第1の計測用コンデンサC3の静電容量(C2,C3)および電線10の2箇所で計測した電圧(V1,V2)は既知の値である。
本実施形態では、固定部110に面積Sが同じ2つの第1の電極121および第2の電極122を形成し、2つの第1の電極121および第2の電極122をほぼ同じ押圧力で電線10に押し当てている。このことから、電線10の絶縁被覆(
図2破線囲み部分参照)の静電容量(C1,C1’)には、C1≒C1’の関係が成立する。以下、電線10の静電容量Cについて説明する。
電線10の静電容量Cは、式(1)で示される。
【0023】
C=2πε
0ε
rL(log((a+b)/a))
−1 …(1)
ただし、
ε
0:真空の誘電率
ε
r:絶縁被膜の比誘電率
L:電極の長さ
a:電線の心線の半径
b:電線の心線の外周部から電極までの距離
【0024】
上述したように、
図3に示す電線10の心線11の外周部から第1の電極121または第2の電極122までの絶縁体12において、大部分は絶縁被膜で占められる。また、心線11と絶縁被膜との界面、および絶縁被膜と第1の電極121または第2の電極122との界面の一部には僅かに空気層が存在し、電線10の心線11の外周部から第1の電極121または第2の電極122までの合成の比誘電率をε
rと表している。
また、上記式(1)の半径aは、
図3に示す心線11の中心から心線11の外周部までの半径方向の距離である。距離bは、
図3に示す心線11の外周部から第1の電極121または第2の電極122までの半径方向の距離D1である。上記式(1)の長さLは、固定部110における第1の電極121(または第2の電極122)の心線11の軸方向の距離である。第1の電極121の内周面の面積Sは2πL(a+b)で表され、第2の電極122と等しい面積である。
ここで、固定部110が電線10を両側から挟んで押圧することで、絶縁体12の絶縁被膜は圧縮され、上記式(1)の距離bは、小さくなる。
【0025】
第1の計測用コンデンサC3、分圧用コンデンサC2、第2の計測用コンデンサC3’、電圧V1および電圧V2は、既知の値である。また、2箇所で電圧(V1,V2)の値を計測する。電線10の心線11と第1の電極121の間の絶縁被膜(
図2破線囲み部分参照)の静電容量C1、電線10の心線11と第2の電極122の間の絶縁被膜の静電容量C2と、電圧Eとが未知の値である。
固定部110に面積Sが同じ2つの第1の電極121および第2の電極122を形成し、2つの第1の電極121および第2の電極122をほぼ同じ押圧力で電線10に押し当てている。このことから、電線10の絶縁被覆の静電容量(C1,C1’)には、C1≒C1’の関係が成立する。静電容量の差を無視して、C1=C1’と近似すると、以下の関係式(2)〜(4)が成立する。
【0027】
上記関係式(2)〜(4)から、心線11の電圧Eは、式(5)で示される。
【0028】
【数2】
ただし、上記式(5)において、V1−V2=0は禁止される。V1−V2=0の場合は、E=0のみ成立する。
【0029】
ここで仮に、電線10の絶縁被覆の静電容量(C1,C1’)が吸湿等により変化した場合であっても第1の電極121と第2の電極122とは近接した位置に形成されているため、C1とC1’は同じように劣化する。このため、環境の変化や経年変化に伴う電圧計測の影響を抑えることができる。
また、仮に心線11の電圧Eが既知の場合、その既知の電圧Eを補正用の電圧として使用し、C1,C1’の差異を補正してもよい。その場合は、C1−C1’の静電容量をC2に入れ込む方法が考えられる。もしくは、C1=C1’となるように電線10の押圧力を調整する方法が考えられる。
【0030】
図4は、非接触電圧計測装置100を使用した非接触電圧計測システム150の構成を示すブロック図である。
非接触電圧計測システム150は、非接触電圧計測装置100を使用し、非接触で電圧値(心線11の電圧E)を出力する。
図4に示すように、非接触電圧計測システム150は、第1の計測用コンデンサC3に加わる電圧V1を測定する第1電圧計測部151(電圧測定手段)と、第2の計測用コンデンサC3’に加わる電圧V2を測定する第2電圧計測部152(電圧測定手段)と、測定した電圧(V1,V2)、分圧用コンデンサC2および第1の計測用コンデンサC3の静電容量(C2,C3)を基に、式(5)に従って心線11の電圧Eを演算する演算部153(演算手段)と、演算した電圧Eを出力する出力部154と、を備える。
なお、第1電圧計測部151は、
図1に示す端子131に接続され、第2計測部152は、
図1に示す端子132に接続される。
【0031】
第1電圧計測部151および第2電圧計測部152は、電圧センサから構成される。第1電圧計測部151および第2電圧計測部152は、電線10(
図3参照)の2箇所で電圧(V1,V2)の値を計測し、演算部153に入力する。
演算部153は、マイクロコンピュータ等により構成される。演算部153は、
図1に示す分圧用コンデンサC2および第1の計測用コンデンサC3の静電容量(C2,C3)の値を記憶している。
演算部153は、計測した電圧(V1,V2)と、分圧用コンデンサC2および第1の計測用コンデンサC3の静電容量(C2,C3)とに基づいて、上記式(5)に従って心線11の電圧Eを推定演算する。
出力部154は、推定演算で得られた電圧Eの値をアナログまたはデジタルデータとして出力する。出力部154は、例えばモニタ等の表示部、プリンタ等の印刷部、データを送信する通信部である。
【0032】
図5は、非接触電圧計測システム150の非接触電圧計測の検証結果を示す図であり、
図5(a)は、心線11に印加した電圧の波形図、
図5(b)は、出力部154の出力電圧の波形図である。
電線10(
図3参照)の心線11に既知の電圧を印加し、出力部154の電圧と比較することで、非接触電圧計測システム150の非接触電圧計測を検証した。
図5に示すように、電線10の心線11に印加された電圧(
図5(a)参照)と出力電圧(
図5(b)参照)とが完全に一致し、本実施形態の効果を検証することができた。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の非接触電圧計測装置100は、電線10を両側から挟んで把持する筒状の固定部110と、固定部110の電線把持側の内周面に距離D2離隔して設けられた第1の電極121および第2の電極122と、第1の電極121に接続された第1の計測用コンデンサC3および分圧用コンデンサC2と、第2の電極122に接続された第2の計測用コンデンサC3’と、第1の計測用コンデンサC3に加わる電圧V1を測定するための端子131と、第2の計測用コンデンサC3’に加わる電圧V2を測定するための端子132と、を備える。また、非接触電圧計測システム150は、非接触電圧計測装置100を使用し、電線10の心線11に加わる電圧Eを、式(5)のE=(C3/C2)×(V1V2/(V1−V2))を用いて演算する。
【0034】
この構成により、
絶縁体12で被覆された電線10の心線11に加わる電圧Eを心線11と非接触で計測することができる。その結果、回転機などの機器の電圧情報を解線不要で取得することができる。
【0035】
また、本実施形態の非接触電圧計測装置100は、特許文献1,2に記載の装置のように、スイッチやスイッチ切り替え制御が不要であり、簡素な構成で電圧情報を取得することができる。しかも、本実施形態の非接触電圧計測装置100は、電圧(V1,V2)を常時計測できるので、過渡的に変動する電圧や想定外の周波数で変動する電圧波形を測定することができる。
【0036】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係る非接触電圧計測装置の構成を示す図である。
図1と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図6に示すように、非接触電圧計測装置200は、電線10(
図3参照)を両側から挟んで把持する筒状の固定部110と、固定部110の電線把持側の内周面に対向して設けられた第1の電極221および第2の電極222と、第1の電極221に接続された第1の計測用コンデンサC3および分圧用コンデンサC2と、第2の電極222に接続された第2の計測用コンデンサC3’と、第1の計測用コンデンサC3に加わる電圧V1を測定するための端子131と、第2の計測用コンデンサC3’に加わる電圧V2を測定するための端子132と、を備える。
上述したように、電線10の心線11と第1の電極221の間の絶縁被膜の静電容量C1、電線10の心線11と第2の電極222の間の絶縁被膜の静電容量C2と、心線11の電圧Eとが未知の値である。第1の計測用コンデンサC3、分圧用コンデンサC2、第2の計測用コンデンサC3’、電圧V1および電圧V2は、既知の値または測定可能な値である。
【0037】
<第1の電極および第2の電極>
図6に示すように、第1の電極221および第2の電極222は、固定部110の内周部に湾曲して形成された金属プレートまたは金属箔である。第1の電極221および第2の電極222は、電気的に絶縁されている。
第1の電極221は、固定部110の下側固定部110aの半円内周部の中央に形成されている。第2の電極222は、固定部110の上側固定部110bの半円内周部の中央に形成されている。
下側固定部110aと上側固定部110bとが1つに組み合わされた場合(電線押圧時)には、第1の電極221と第2の電極222とは、電線10(
図3参照)を挟んで対向する。
第1の電極221と第2の電極222の内周面の面積Sは、等しく形成される。また、第1の電極221と第2の電極222は、固定部110によって、ほぼ同じ押圧力で電線10に押し当てられる。
【0038】
第1の電極221と第2の電極222とは、固定部110の内周面に対向して設置することで、固定部110による電線10への押圧力を等しくすることができるとともに、第1の電極221および第2の電極222が固定部110の外部から受ける湿気・振動などの環境変化の影響を揃えることができる。
【0039】
図6に示すように、第1の電極221は、直列接続された分圧用コンデンサC2および第1の計測用コンデンサC3を介してGNDに接続される。分圧用コンデンサC2と第1の計測用コンデンサC3間の接続点N1は、電圧V1を測定するための端子131に接続される。
また、第2の電極222は、第2の計測用コンデンサC3’を介してGNDに接続される(接地される)。第2の電極222と第2の計測用コンデンサC3’間の接続点N2は、電圧V2を測定するための端子132に接続される。
【0040】
以下、上述のように構成された非接触電圧計測装置200の電圧計測方法について説明する。
図6に示すように、非接触電圧計測装置200の固定部110の電線把持側に面積Sが同じ2つの第1の電極221および第2の電極222を対向して配置し、固定部110によって2つの第1の電極221および第2の電極222を同じ押圧力で電線10(ケーブル)(
図3参照)に押し当てる。固定部110は、第1の電極221と第2の電極222とを両側から把持するので、第1の電極
221と第2の電極
222の押圧力は同じとなる。
電線10の絶縁被覆の静電容量(C1,C1’)と分圧用コンデンサC2および第1の計測用コンデンサC3の静電容量(C2,C3)で分圧された電圧V1,V2を、電線10の2箇所で計測する。
本実施形態では、固定部110に面積Sが同じ2つの第1の電極221および第2の電極222を形成し、2つの第1の電極221および第2の電極222を同じ押圧力で電線10に押し当てている。このことから、前記式(5)が成立する。
【0041】
ここで仮に、電線10の絶縁被覆の静電容量(C1,C1’)が吸湿等により変化した場合であっても第1の電極221と第2の電極222とは対向した位置に形成されているため、C1とC1’は同じように劣化する。このため、環境の変化や経年変化に伴う電圧計測の影響を抑えることができる。
また、第1の実施の形態と同様に、仮に心線11の電圧Eが既知の場合、その既知の電圧Eを補正用の電圧として使用し、C1,C1’の差異を補正してもよい。その場合は、C1−C1’の静電容量をC2に入れ込む方法が考えられる。もしくは、C1=C1’となるように電線10の押圧力を調整する方法が考えられる。
本実施の形態の非接触電圧計測装置200を、
図4に示す非接触電圧計測システム150に適用することができ、同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態では、固定部110が、第1の電極221と第2の電極222とを両側から把持するので、第1の電極
221と第2の電極
222の押圧力は同じとなる。このため、押圧力を同じに揃える調整が不要となり装置をより簡略化できる。ただし、後記する第5の実施形態のような押圧力の調整による静電容量(C1,C1’)のキャリブレーションは制限される。また、本実施の形態では、固定部110の長手方向の寸法を短くすることができ、装置をより小型化できる。
【0042】
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態に係る非接触電圧計測装置の構成を示す図である。
図1と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図7に示すように、非接触電圧計測装置300は、電線10を挟んで把持する固定部310と、固定部310の電線把持側に設けられた第1の電極321および第2の電極322と、第1の電極321に接続された第1の計測用コンデンサC3および分圧用コンデンサC2と、第2の電極322に接続された第2の計測用コンデンサC3’と、第1の計測用コンデンサC3に加わる電圧V1を測定するための端子3
21と、第2の計測用コンデンサC3’に加わる電圧V2を測定するための端子3
22と、を備える。
電線10の心線11と第1の電極321の間の絶縁被膜の静電容量C1、電線10の心線11と第2の電極322の間の絶縁被膜の静電容量C2と、心線11の電圧Eとが未知の値である。第1の計測用コンデンサC3、分圧用コンデンサC2、第2の計測用コンデンサC3’、電圧V1および電圧V2は、既知の値または測定可能な値である。
【0043】
<固定部>
図7に示すように、固定部310は、電線10を下側から挟む板状の下側固定部310a(第1の板状部材)と、下側固定部310aと組み合わされて電線10を上側から挟む板状の上側固定部
310b(第2の板状部材)と、電線把持側と反対側の端部で下側固定部310aと上側固定部
310bとを軸支する軸311と、下側固定部310aと上側固定部
310bとを電線10の把持方向に付勢するバネ312と、を備える。
固定部
310は、電線10を下側固定部310aと
上側固定部31
0bとで挟むクリップである。固定部310は、下側固定部
310aの第1の電極321側と上側固定部
310bの第2の電極322側をバネ312に抗して拡げることで電線10を把持し、電線10を軸311の周方向で押圧する。固定部
310は、第1の電極321および第2の電極322がそれぞれ等しい押圧力で電線10を挟んで把持する。
【0044】
固定部310は、第1の計測用コンデンサC3、分圧用コンデンサC2、および/または第2の計測用コンデンサC3’を、内部に収容する構成を採る。あるいは、固定部310は、第1の計測用コンデンサC3、分圧用コンデンサC2、および/または第2の計測用コンデンサC3’を、固定部310に備えられた第1の電極321および第2の電極322と端子331,332に接続するための端子を備える。すなわち、非接触電圧計測装置300は、固定部310内部に各コンデンサを収容する構造と、前記各コンデンサを固定部310外部に外付けする構成のいずれでもよい。前者の構成は、取扱が容易であることと、コンデンサが露出しないので安全性がより高い利点がある。後者の構成は、コンデンサを内蔵しないので低コスト化を図ることができることと、コンデンサの選択が容易である利点がある。特に、本実施形態のように、装着容易なクリップ形状であって、バネ312の付勢力で電線10を挟む構成の場合には、より簡便に使用することが想定される。そこで、固定部310内部に各コンデンサを収容しておくことが望ましく、使い勝手をより向上させることができる。
【0045】
<第1の電極および第2の電極>
図7に示すように、第1の電極321および第2の電極322は、固定部310の把持側に形成された金属プレートまたは金属箔である。第1の電極321および第2の電極322は、電気的に絶縁されている。
心線11の電圧Eの測定時、第1の電極321と第2の電極322とは、電線10を把持する。
第1の電極321と第2の電極322の面積Sは、等しく形成される。また、第1の電極321と第2の電極322は、固定部310によって、同じ押圧力で電線10に押し当てられる。
【0046】
図7に示すように、第1の電極321は、直列接続された分圧用コンデンサC2および第1の計測用コンデンサC3を介してGNDに接続される。分圧用コンデンサC2と第1の計測用コンデンサC3間の接続点N1は、電圧V1を測定するための端子131に接続される。
また、第2の電極322は、第2の計測用コンデンサC3’を介してGNDに接続される。第2の電極322と第2の計測用コンデンサC3’間の接続点N2は、電圧V2を測定するための端子132に接続される。
【0047】
以下、上述のように構成された非接触電圧計測装置300の電圧計測方法について説明する。
図7に示すように、非接触電圧計測装置300の固定部310の電線把持側に面積Sが同じ2つの第1の電極321および第2の電極322を対向して配置し、固定部310によって2つの第1の電極321および第2の電極322を同じ押圧力で電線10に押し当てる。固定部310は、電線10を下側固定部310aと下側固定部310aとで挟むクリップであることで、第1の電極321および第2の電極322は同じ押圧力で電線10に押し当てられる。
電線10の絶縁被覆の静電容量(C1,C1’)と分圧用コンデンサC2および第1の計測用コンデンサC3の静電容量(C2,C3)で分圧された電圧V1,V2を、電線10の2箇所で計測する。
本実施形態では、固定部310に面積Sが同じ2つの第1の電極321および第2の電極322を形成し、2つの第1の電極321および第2の電極322を同じ押圧力で電線10に押し当てている。このことから、前記式(5)が成立する。
【0048】
ここで仮に、電線10の絶縁被覆の静電容量(C1,C1’)が吸湿等により変化した場合であっても第1の電極
321と第2の電極
322とは対向した位置に形成されているため、C1とC1’は同じように劣化する。このため、環境の変化や経年変化に伴う電圧計測の影響を抑えることができる。
【0049】
本実施の形態の非接触電圧計測装置300を、
図4に示す非接触電圧計測システム150に適用することができ、同様の効果を得ることができる。
本実施の形態の非接触電圧計測装置300は、下側固定部110aと上側固定部110bとをバネ312で電線10を挟む構成とすることで、非接触電圧計測装置300を簡便に設置および取り外しをすることが可能になる。ただし、長期間設置し続ける場合は、第1および第2の実施形態のように、固定部310を電線10に対して動かないように固定することが望ましい。
【0050】
(第4の実施形態)
第1〜3の実施形態では、固定部の電極を電線に密着させる構成について説明した。本発明は、固定部の電極と電線とが密着していることは必須ではなく、空気層を介して接続されていてもよい。
図8は、本発明の第4の実施形態に係る非接触電圧計測装置の構成を示す図であり、
図8(a)はその全体構成を示す斜視図、
図8(b)はその要部斜視図である。
図1と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図8(a)に示すように、非接触電圧計測装置400は、電線10(
図3参照)を把持する筒状の固定部410と、固定部410の両端部に取り付けられ、電線10を固定部410の内周面上の空間で挟持する挟持部420と、固定部410の電線把持側の内周面に距離D2離隔して設けられた第1の電極121および第2の電極122と、第1の電極121に接続された第1の計測用コンデンサC3および分圧用コンデンサC2と、第2の電極122に接続された第2の計測用コンデンサC3’と、第1の計測用コンデンサC3に加わる電圧V1を測定するための端子131と、第2の計測用コンデンサC3’に加わる電圧V2を測定するための端子132と、を備える。
上述したように、電線10(
図3参照)の心線11と第1の電極121の間の絶縁被膜の静電容量C1、電線10の心線11と第2の電極122の間の絶縁被膜の静電容量C2と、心線11の電圧Eとが未知の値である。第1の計測用コンデンサC3、分圧用コンデンサC2、第2の計測用コンデンサC3’、電圧V1および電圧V2は、既知の値または測定可能な値である。
【0051】
<固定部および挟持部>
図8(a)に示すように、固定部410は、断面視して半円環状の下側固定部410aと、下側固定部410aと組み合わされ、断面視して半円環状の上側固定部410bと、下側固定部410aの底部を固定するとともに端子131,132を引き出す台座410cと、を備える。
図8(b)に示すように、下側固定部410aおよび上側固定部410bの両端部には、挟持部420の取付け部420cを差し込むための開口部411が形成されている。挟持部420は、固定部410から着脱自在である。
また、図示は省略するが、下側固定部410aと上側固定部410bとを、同心円状に重ね合わせて固定する固定手段を備える。この固定手段は、例えば下側固定部410aおよび上側固定部41
0bの一方の端部に設けられたヒンジ部(図示省略)と、他方の端部に設けられたフック部(図示省略)である。また、この固定手段は、後記する
図10に示す下側固定部
410aおよび上側固定部
410bのフランジ部同士を締結するボルト/ナットである。
【0052】
図8(b)に示すように、挟持部420は、板状部材の本体部420aと、本体部420aの上端部に形成されたV溝420bと、本体部420aの下端部から本体部420aと直交する方向に延出する取付け部420cと、からなる。取付け部420cは、下側固定部410aおよび上側固定部410bの両端部に形成された開口部411に差し込まれて固定される(
図8(a)参照)。取付け部420cは、幅広に形成された開口部411に隙間なく装着されるので、取付け後にガタつくことはない。
図9に示すように、挟持部420は、電線10(電線10
#1〜10
#3)の太さ(径方向の幅)に合わせて、本体部420a(
図8(a)参照)の長さの異なる複数のタイプ(挟持部420
#1〜420
#3)が用意されている。なお、本体部420aの長さの種別に代えてまたは併用して、V溝420b(
図8(a)参照)の傾斜角度が異なる複数のタイプを用意する態様でもよい。取付け部420c(
図8(a)参照)は、共通化されているので、電線10の太さに合わせて交換可能である。
【0053】
固定部410は、第1の計測用コンデンサC3、分圧用コンデンサC2、および/または第2の計測用コンデンサC3’を、内部に収容する構成を採る。あるいは、固定部410は、第1の計測用コンデンサC3、分圧用コンデンサC2、および/または第2の計測用コンデンサC3’を、固定部410に備えられた第1の電極121および第2の電極122と端子131,132に接続するための端子を備える。すなわち、非接触電圧計測装置400は、固定部410内部に各コンデンサを収容する構造と、前記各コンデンサを固定部410外部に外付けする構成のいずれでもよい。
【0054】
本実施形態では、第1〜第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
特に、本実施形態の非接触電圧計測装置400は、固定部410の一部として、挟持
部420を備える。挟持
部420を介して電線10を挟持することで電線10の太さによらず心線11の電圧を計測することができる。なお、本実施形態では、第1〜第3の実施形態のように、電極と電線が密着しておらず空気層を介して接続されているので、計測信号レベルは若干低下する。
【0055】
(第5の実施形態)
図10は、本発明の第5の実施形態に係る非接触電圧計測装置の構成を示す図である。
図1と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図10に示すように、非接触電圧計測装置500は、電線10(
図3参照)を両側から挟んで把持する筒状の固定部510と、固定部510の電線把持側の内周面に距離D2離隔して設けられた第1の電極121および第2の電極122と、第1の電極121に接続された第1の計測用コンデンサC3および分圧用コンデンサC2と、第2の電極122に接続された第2の計測用コンデンサC3’と、第1の計測用コンデンサC3に加わる電圧V1を測定するための端子131(電圧測定手段)と、第2の計測用コンデンサC3’に加わる電圧V2を測定するための端子132(電圧測定手段)と、を備える。
【0056】
<固定部>
図10に示すように、固定部510は、電線10(
図3参照)を下側から支える断面視して半円環状の下側固定部510aと、下側固定部510aと組み合わされて電線10を上側から押圧する断面視して半円環状の上側固定部510bと、下側固定部510aの底部を固定するとともに端子131,132を引き出す台座510cと、を備える。
下側固定部510aは、径方向に拡がるフランジ部511aを有し、上側固定部510bは、下側固定部510aのフランジ部511aに対向するように形成されたフランジ部511bを有する。フランジ部511aおよびフランジ部511bの両端部には、フランジ部511a,511b同士を締結するボルト512a〜512d(調整手段)を通すための貫通孔(図示省略)が形成されている。フランジ部511aとフランジ部511bは、ボルト512a〜512dおよびナット513a〜513d(調整手段)により締結され、下側固定部510aと上側固定部510bとが同心円状に重ね合わせて固定される。
【0057】
ここで、フランジ部511a,511bの両端部のボルト512a〜512dのうち、一方側(
図10では前方側)のボルト512a,512bと、他方側(
図10では後方側)のボルト512c,512dとの締付け具合を調整することで、固定部510が第1の電極121に押し当てる押圧力と第2の電極122に押し当てる押圧力とを変えることができる。第1の電極121に押し当てる押圧力と第2の電極122に押し当てる押圧力とを変えることで、第1の電極121または第2の電極122までの半径方向の距離D1を異ならせることができ、その結果、電線10の絶縁被覆の静電容量(C1,C1’)を校正(キャリブレーション)時に異ならせることができる。
【0058】
<例1>
図11は、
図10の非接触電圧計測装置500の校正時における等価回路図である。
図11に示すように、非接触電圧計測装置500は、校正時には、電線10の絶縁被覆の静電容量(C1,C1’)を、コンデンサC4とスイッチ521を介して短絡する。また、分圧用コンデンサC2の両端を信号線522およびスイッチ523を介して短絡する。さらに、短絡時にC1’からコンデンサC4に流れる電流iを電流センサ524により測定する。
以上の構成において、非接触電圧計測装置500は、校正時には、C1’とC1をコンデンサC4とスイッチ521を介して短絡し、さらに分圧用コンデンサC2の両端をスイッチで短絡する。C1’=C1となるように、つまりコンデンサC4に流れる電流iが0になるように固定部510(
図10参照)の押圧力を調整する。具体的には、下側固定部510aと上側固定部510bとを重ね合わせる際、フランジ部511aとフランジ部511bのボルト512a〜512dおよびナット513a〜513dの締結力(締付ける力)を調整しながら行う。コンデンサC4に流れる電流iが0になるように、固定部510の押圧力を調整することで、校正完了後には、非接触電圧計測装置500は、
図2に示す等価回路図での電圧計測を実現することができ、精度の高い非接触電圧計測が可能になる。
ここで、本実施の形態では、スイッチ521,523を使用しているが、非接触電圧計測装置500の設置時または校正時にのみスイッチ521,523を使用し、それ以外はスイッチ521,523をオープンにする、または、コンデンサC4および短絡用の回路を取り外すようにしてもよい。
【0059】
非接触電圧計測装置500は、固定部510に面積Sが同じ2つの第1の電極121および第2の電極122を形成し、2つの第1の電極121および第2の電極122をほぼ同じ押圧力で電線10に押し当てている。このことから、電線10の絶縁被覆の静電容量(C1,C1’)には、C1≒C1’の関係が成立する。静電容量の差を無視して、C1=C1’と近似する(
図11破線囲み部分参照)と、以下の関係式(6)〜(8)が成立する。
【0061】
上記関係式(6)〜(8)から、心線11の電圧Eは、式(9)で示される。
【0063】
また、仮に心線11の電圧Eが既知の場合、その既知の電圧Eを補正用の電圧として使用し、C1,C1’の差異を補正してもよい。その場合は、C1−C1’の静電容量を分圧用コンデンサC2に入れ込む方法が考えられる。すなわち、前記式(
6)(
7)における電圧Eが既知であるとしたならば、前記式(
9)を用いて、前記式(4)のC1’=C1であることを検証することができる。また、C1,C1’の差異を補正する具体的方法としては、
図10に示す非接触電圧計測装置500の下側固定部510aおよび上側固定部510bのフランジ部511a,511bのボルト512a,512bの締結力と、ボルト512c,512dの締結力とを変える。例えば、校正によりC1’>C1であると判定した場合、第1の電極121側の絶縁被覆の静電容量(C1)を、第2の電極122側の絶縁被覆の静電容量(C1’)よりも相対的に大きくするよう補正する。具体的には、固定部510(
図10参照)のボルト512a,512bの締結力を、ボルト512c,512dの締結力よりも大きくするか、ボルト512c,512dを緩める方法がある。
【0064】
<例2>
図12は、
図10の非接触電圧計測装置500の校正時における等価回路図である。
図12に示すように、非接触電圧計測装置500は、校正時には、電線10の絶縁被覆の静電容量(C1,C1’)を、コンデンサC4を介して短絡する。校正例1(
図11参照)との違いは、分圧用コンデンサC2と、第1の計測用コンデンサC3と第2の計測用コンデンサC3’とが接続されていない点である。短絡時にC1’からコンデンサC4に流れる電流iを電流センサ524により測定する。
以上の構成において、非接触電圧計測装置500は、校正時には、C1’とC1をコンデンサC4介して短絡する。C1’=C1となるように、つまりコンデンサC4に流れる電流iが0になるように固定部510(
図10参照)の押圧力を調整する。コンデンサC4に流れる電流iが0になるように、固定部510の押圧力を調整することで、精度の高い非接触電圧計測が可能になる。
固定部510の押圧力調整が完了した後は、
図2に示す等価回路に付け替えることで、精度良く、心線の電圧を計測することができる。
また、仮に心線11の電圧Eが既知の場合、その既知の電圧Eを補正用の電圧として使用し、C1,C1’の差異を補正してもよい。その場合は、C1−C1’の静電容量を分圧用コンデンサC2に入れ込む方法が考えられる。
【0065】
(
参考例)
図13は、本発明の
参考例に係る非接触電圧計測装置の校正時における等価回路図である。
図13に示すように、
参考例に係る非接触電圧計測装置600は、第1の電極121(
図1参照)に接続された第1の計測用コンデンサC3および分圧用コンデンサC2と、第1の電極122(
図1参照)に接続された第2の計測用コンデンサC5および分圧用コンデンサ
C4’と、を備える。すなわち、非接触電圧計測装置600は、
図2の非接触電圧計測装置100にさらに、C1’側に分圧用のコンデンサ
C4’を追加した場合の
参考例である。
非接触電圧計測装置600は、C1側で分圧用コンデンサC2および第1の計測用コンデンサC3の静電容量(C2,C3)で分圧する場合と同様に、C1’側においても分圧用コンデンサ
C4’および第2の計測用コンデンサC5の静電容量(
C4’,C5)で分圧する。このときの分圧された電圧V1,V2を、電線10の2箇所で計測する。
第1の実施形態と考え方は同様であり、以下の関係式(10)〜(12)が成立する。
【0067】
上記関係式(10)〜(12)から、心線11の電圧Eは、式(13)で示される。
【0069】
(第7の実施形態)
図14は、本発明の第7の実施形態に係る非接触電圧計測装置を使用したモータ診断装置の構成図である。
図14に示すように、電源1から給電線2a,2b,2cを介してモータ3(回転機)に電力が供給されている。ここでは、給電線を3本利用する3相モータの場合を示したが、異なる相数であってもよい。
電流センサ4a,4b,4cは、給電線2a,2b,2cそれぞれを囲むように配置され、相電流を測定している。電流センサ4dは、給電線2a,2b,2cを囲むように配置され、零相電流を測定している。電流センサ4a,4b,4c,4dの種類については限定されない。電流センサ4a,4b,4c,4dは、例えば貫通型電流センサ、クランプ型電流センサ、分割型電流センサ、磁気光学効果を用いた光ファイバセンサ等を使用することができる。
また、給電線2a,2b,2cには、非接触電圧センサ6a,6b,6cが接続されている。非接触電圧センサ6a,6b,6cには、上述した各実施形態の非接触電圧計測装置100〜600が備えられている。非接触電圧センサ6a,6b,6cは、それぞれ三相の給電線2a,2b,2cの電圧(電位)Eを非接触で検出し、低電圧の信号に変換してデータ処理装置5に伝達する。
データ処理装置5は、非接触電圧センサ6a,6b,6cの信号を基に三相の給電線2a,2b,2cの相電圧を検出する。ここで、3相全てに電流および非接触電圧センサが接続された例を示したが、センサ数は着目したい相のみに限定してもよい。また、零相電流センサ2dについては設置してもしなくてもよい。ただし、特に絶縁に起因する劣化の兆候を得るためには設置することが望ましい。
上記電流センサ4a,4b,4c,4d、非接触電圧センサ6a,6b,6c、およびデータ処理装置5は、電源1から給電線2a,2b,2cを介してモータ3に電力を供給する場合のモータ診断装置1000を構成する。
【0070】
図15は、非接触電圧計測装置の三相の電線を把持する固定部の断面図である。
図15に示すように、固定部710は、三相の電線(給電線2a,2b,2c)を下側から支える断面視して3つの半円環が連なる下側固定部710aと、下側固定部710aと組み合わされて三相の電線を上側から押圧する断面視して3つの半円環が連なる上側固定部710bと、を備える。また、固定部710の内周面には、三相分の第1の電極721a,72
1b,721cと第2の電極(図示省略)が設けられている。
三相全てに設置する場合は、
図15に示すように、一つの固定部710で三相分の第1の電極721a,722b,721cと第2の電極(図示省略)に対応させることができる。固定部710を設置する位置としては、モータの振動等で動かない位置に設置することが望ましい。これにより、3相全てに設置する際の設置容易性が向上する。
【0071】
<診断方法>
診断方法については特に限定されない。例えば、電流の閾値と非接触電圧センサ6a,6b,6cで計測した電圧情報による診断が考えられる。具体的には、予め閾値を超えて相電流および漏れ電流が流れた場合に、印加電圧の変化の有無を調べ、印加電圧が変化していない場合に異常と判断し、ユーザにその情報を伝達する。また、電流値を電圧値で割った値に対して閾値を設けて異常の有無を調べることもできる。
より微弱な信号を検知するためには、機械学習を適用することもできる。例えば、電流および非接触電圧計測装置100〜600の出力電圧を軸に設定し、それらの振幅から正常状態のクラスタを形成する。正常状態のクラスタから計測データまでの多次元空間上の距離から異常度を算出することができる。上記では信号の振幅を診断に使用したが、例えば信号を信号処理し得られた値を軸にとり、異常度を算出してもよい。信号処理とは、例えばフーリエ変換、ウェーブレット変換、ラプラス変換、平滑化処理、ノイズ除去処理、データ間引き、周波数フィルタリング、実効値変換などが挙げられ、それらを任意に組み合わせた処理を施してもよい。フーリエ変換、ウェーブレット変換、ラプラス変換を実行した場合は、各周波数成分の値を軸にとり異常度を算出すればよい。
また、異常度算出の指標として、正常状態のクラスタから計測データまでの多次元空間上の距離を、正常状態のクラスタの分散で割った値を使用してもよい。設定する軸はドメイン知識に基づき自由に設定することができる。
【0072】
図16は、電流および非接触電圧計測装置の出力電圧を軸に設定し、正常状態のクラスタから計測データまでの多次元空間上の距離から異常度を算出した計算結果を示す図である。
図16に示すように、劣化進行に伴う異常度の変化を検知することができた。
なお、上記各実施形態の非接触電圧計測装置100〜600により計測された電圧Eを用いるものであれば、どのような診断装置に適用してもよい。また、回転機には、モータ(電動機)のほか、風力発電機などの発電機が含まれる。また、回転機にかぎらず、電源から電線(ケーブル)により電圧を供給する機器であればどのような機器の診断装置にも適用可能である。例えば、適用できる装置の一例として、高電圧モータ/発電機、中〜定電圧モータ/発電機、インバータ、変圧器等の産業機器、電気機器全般が挙げられる。
【0073】
本発明は上記の実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
例えば、ある実施形態例の構成の一部を他の実施形態例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態例の構成に他の実施形態例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0074】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。